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JP3669191B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は陽極酸化皮膜を形成した弁作用金属を陽極体とする固体電解コンデンサの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の固体電解コンデンサは、陽極体となるアルミニウム箔の表面に陽極酸化皮膜、二酸化マンガン層、導電性高分子層、陰極導電体層を順次形成し、これからリードを引き出した後、外装樹脂でモールドすることにより製造されていた。この一連の製造工程の中で、二酸化マンガン層は一般に硝酸マンガンを熱分解することにより形成されるため、特にアルミニウムを陽極体にした場合には陽極酸化皮膜が著しく損傷し、これにより製品の漏れ電流が大きくなるという欠点を有するものであった。
【0003】
これを解決する方法として、例えば、特開昭63−181310号公報や特開平2−260516号公報に開示されているように、導電性高分子層を形成した後、電解液中で再化成する方法や、特開平3−178117号公報に開示されるように、陽極酸化皮膜上に陰極部と陽極部を分離するための絶縁性のレジストテープを貼り付けた後、熱分解により二酸化マンガン層を形成させ、その後導電性高分子層を形成させる方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の特開昭63−181310号公報や特開平2−260516号公報に開示されている方法では、導電性高分子層を形成した後電解液中で再化成するようにしているため、電解液が陽極酸化皮膜に供給されにくく、これにより十分に陽極酸化皮膜を修復することができず、また、化成条件によっては導電性高分子層が劣化してインピーダンス特性が悪くなるという問題点を有していた。
【0005】
また、特開平3−178117号公報に開示されているものについては、熱分解により二酸化マンガン層を形成させた後、再化成を行わなければ陽極酸化皮膜が著しく劣化して漏れ電流が大きくなり、また再化成を行った場合でもレジストテープの粘着剤が染み出すことによってレジストテープ近傍の欠陥部の修復性が悪いという問題点を有していた。
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、漏れ電流が小さく、かつインピーダンス特性に優れた固体電解コンデンサを得ることが可能な固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、(a)電解エッチングを施したアルミニウム箔の表面に陽極酸化皮膜を形成し、(b)この陽極酸化皮膜上に陰極部と陽極部を分離するための絶縁性のレジストテープを貼り付けたコンデンサ素子を硝酸マンガン水溶液に浸漬し、これを引き上げてから熱分解することにより二酸化マンガン層を形成し、(c)続いてこのコンデンサ素子を水と相溶性のある有機極性溶媒の水溶液に浸漬し、(d)これを引き上げて上記有機極性溶媒の水溶液が乾燥しない間にアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して再化成を行った後、(e)上記二酸化マンガン層上に固体電解質層、(f)さらに陰極導電体層を形成するようにしたものである。
【0008】
本発明により、再化成時の陰極部の濡れ性が向上して、微細な陽極酸化皮膜の欠陥まで修復することができるようになり、結果として漏れ電流の小さい固体電解コンデンサを提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、(a)電解エッチングを施したアルミニウム箔の表面に陽極酸化皮膜を形成し、(b)この陽極酸化皮膜上に陰極部と陽極部を分離するための絶縁性のレジストテープを貼り付けたコンデンサ素子を硝酸マンガン水溶液に浸漬し、これを引き上げてから熱分解することにより二酸化マンガン層を形成し、(c)続いてこのコンデンサ素子を水と相溶性のある有機極性溶媒の水溶液に浸漬し、(d)これを引き上げて上記有機極性溶媒の水溶液が乾燥しない間にアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して再化成を行った後、(e)上記二酸化マンガン層上に固体電解質層、(f)さらに陰極導電体層を形成するようにしたもので、この製造方法により再化成時の陰極部の濡れ性が向上して、微細な陽極酸化皮膜の欠陥まで修復することができ、その結果、漏れ電流の小さい固体電解コンデンサを提供することができるという作用を有する。
【0010】
また、有機極性溶媒を水と相溶性のある溶媒にすることにより、再化成のアジピン酸アンモニウム水溶液との親和性がきわめて良くなり、短時間で再化成のアジピン酸アンモニウム水溶液がコンデンサ素子の陰極部に供給されるので、効率よく陽極酸化皮膜の欠陥を修復することができるという作用を有する。
【0011】
次に、本発明の具体的な実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
電解エッチングを施したアルミニウム箔に、絶縁性のレジストテープを貼り付けて陰極部と陽極部を分離し、有効面積が3.2mm×4.0mmとなるようにしたコンデンサ素子の陽極体を、液温が70℃で、かつ濃度が5重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液中に浸漬して12Vの直流電圧を20分間印加して陽極酸化皮膜を形成した。続いて、この陽極体を硝酸マンガン水溶液に浸漬して引き上げた後、300℃で5分間熱分解することにより陽極体の表面に二酸化マンガン層を形成した。
【0013】
この後、上記陽極体を濃度が6重量%の1−ブタノール水溶液に1分間浸漬して引き上げ、これが乾燥しない間に液温が70℃で、かつ濃度が5重量%のアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して10Vの直流電圧を10分間印加して再化成を行った。この後、陽極体に形成された二酸化マンガン層上に電解重合法によりポリピロール膜からなる導電性高分子層を形成した後、この導電性高分子層上にカーボンペーストと銀ペーストを順次塗布して陰極導電体層を形成し、この陽極体からリードを引き出した後、外装樹脂でモールドすることにより外装を施して固体電解コンデンサを作製した。
【0014】
(実施の形態2)
上記実施の形態1において、1−ブタノール水溶液を濃度が25重量%のイソプロピルアルコール水溶液とした以外は、実施の形態1と同様の内容により固体電解コンデンサを作製した。
【0015】
(実施の形態3)
上記実施の形態2において、イソプロピルアルコール水溶液への浸漬時間を5秒とした以外は、実施の形態2と同様の内容により固体電解コンデンサを作製した。
【0016】
(実施の形態4)
上記実施の形態1において、1−ブタノール水溶液を濃度が25重量%のアセトニトリル水溶液とした以外は、実施の形態1と同様の内容により固体電解コンデンサを作製した。
【0017】
(比較例1)
上記実施の形態1において、熱分解後に1−ブタノール水溶液に浸漬する工程を削除した以外は実施の形態1と同様の内容により固体電解コンデンサを作製した。
【0018】
このようにして作製された本発明の実施の形態1〜4および比較例1の固体電解コンデンサの初期特性を(表1)に示す。なお、測定は温度25〜30℃で行い、容量およびtanδは120Hz、インピーダンスは400kHz、漏れ電流は直流電圧6.3Vを印加した後30秒後の電流値を測定し、n=30個の平均値を示した。
【0019】
【表1】
Figure 0003669191
【0020】
(表2)は本発明の実施の形態1〜4および比較例1の固体電解コンデンサの各々5個の初期および85℃85%RHの高温高湿中に500時間無負荷放置して試験を行った後の漏れ電流の平均値を示したものである。なお、測定は温度25〜30℃で行い、漏れ電流は直流電圧6.3Vを印加した後、30秒後の電流値を測定した。
【0021】
【表2】
Figure 0003669191
【0022】
この(表1)、(表2)から明らかなように、本発明の実施の形態1〜4の製造方法により製造された固体電解コンデンサは、二酸化マンガン層を形成したコンデンサ素子を有機極性溶媒またはその水溶液に浸漬した後、この有機極性溶媒またはその水溶液が乾燥しない間に電解液に浸漬して再化成を行った後、上記二酸化マンガン層上に電解質を形成するようにしているため、熱分解時に起こるレジストテープの粘着剤染み出しによる陰極部の濡れ性の低下の影響を軽減し、再化成時に電解液が陰極部全体に均一に供給され、微細部の欠陥まで修復された緻密な陽極酸化皮膜を形成することができ、これらのことから、比較例1に比べて、製造時の漏れ電流の増大を抑制できるとともに、高温高湿下に無負荷で放置された時の漏れ電流の増大を低減することができるものである。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、製造時の漏れ電流の増大を抑制することができるため、高温高湿下に無負荷で放置された時の漏れ電流の増大を低減でき、かつ高周波領域でのインピーダンスも低い固体電解コンデンサを提供することができるものである。

Claims (1)

  1. (a)電解エッチングを施したアルミニウム箔の表面に陽極酸化皮膜を形成し、(b)この陽極酸化皮膜上に陰極部と陽極部を分離するための絶縁性のレジストテープを貼り付けたコンデンサ素子を硝酸マンガン水溶液に浸漬し、これを引き上げてから熱分解することにより二酸化マンガン層を形成し、(c)続いてこのコンデンサ素子を水と相溶性のある有機極性溶媒の水溶液に浸漬し、(d)これを引き上げて上記有機極性溶媒の水溶液が乾燥しない間にアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬して再化成を行った後、(e)上記二酸化マンガン層上に固体電解質層、(f)さらに陰極導電体層を形成するようにした固体電解コンデンサの製造方法。
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