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JP3666125B2 - 圧電型インクジェットヘッド - Google Patents

圧電型インクジェットヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電型インクジェットヘッド、特にマルチノズル型のインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のインクジェットヘッドとしては、例えば特開昭58−102775号公報に開示されているように、多数の加圧室を集積したマルチノズルヘッドが知られている。このヘッドは、加圧室を形成した基板上に振動板と圧電体とを積層接着したもので、圧電体にはPZT系圧電セラミックスが使用され、振動板にはABS樹脂のような硬い材料が使用されている。
【0003】
加圧室内のインクをノズルから吐出するには、圧電体と振動板とが一体となった屈曲変位が必要である。屈曲変位を効率よく発生させるには、振動板自体もある程度硬く、また圧電体と同程度以上の厚みが望ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、圧電体と振動板はエポキシ系接着剤などによる加熱接着により一体化されるものが多い。しかし、熱膨張差による変形や内部に残留応力が生じるため、屈曲変形が阻害されたり、インクの吐出方向が不安定になる等の特性劣化が発生していた。
また、振動板の厚みが厚いと、屈曲変位が基板と振動板の接合部を通して隣の加圧室まで波及したり、あるいは振動板の変形そのものが阻害される等の問題が発生した。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記のような問題点を解消できる圧電型インクジェットヘッドを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の加圧室が形成された基板と、上記各加圧室に設けられたノズルと、上記基板上に固着され、上記加圧室の1つの壁面を構成する可撓性膜と、上記可撓性膜上に接合固定された2層以上の積層構造の圧電セラミックスよりなる圧電体とを備え、上記圧電体の少なくとも1層は駆動時に電圧が印加されない層であり、他の少なくとも1層に電圧を印加することにより、上記圧電体は屈曲変位するものであり、上記可撓性膜は、そのヤング率が上記圧電体のヤング率の1/2以下の樹脂膜であり、上記圧電体の屈曲変位により各加圧室内のインクを加圧し、インクをノズルから吐出させるように構成した圧電型インクジェットヘッドを提供する。
【0007】
本発明では、可撓性膜は振動板として機能するのではなく、インクが圧電体側へ浸透したり、圧電体への印加電圧によってインクが劣化するのを防止する保護膜として機能する。そのため、可撓性膜が圧電体の変位に追随して容易に撓み、基本的に積層構造の圧電体のみで屈曲変位が可能であるため、屈曲変位が隣の加圧室まで波及したり、あるいは圧電体の変形を阻害するといった問題がない。また、圧電体と可撓性膜とを接合した際、内部に残留応力が発生しないので、振動板と圧電体とを接合した従来構造のような特性劣化がない。
【0008】
可撓性膜としては、圧電体に比べて柔らかい材料であればよく、樹脂膜や金属膜、ゴム膜など材料は問わない。好ましくは、膜の厚みが圧電体の1/2以下で、そのヤング率が圧電体の1/2以下のものが望ましい。
【0009】
例えば2層の積層構造の圧電体の場合、片側は分極方向と同方向で、他方は逆方向に電圧を印加する所謂バイモルフ型の圧電体とすることも可能である。しかし、この場合には、逆方向の電圧を印加した際に分極反転が生じ、両層とも同一方向での駆動電圧となり、屈曲変位が生じなくなる、所謂分極劣化に伴う特性劣化が生じる。これに対し、圧電体の少なくとも1層を、駆動時に電圧が印加されない層とした場合には、他の層にのみ分極時と同一方向の駆動用電圧を印加し、屈曲変位を生じさせることにより、バイモルフ型に比べて分極劣化に伴う特性劣化を少なくできる。
【0010】
可撓性膜上に圧電体を平面的に接合し、各加圧室の側壁上の圧電体に溝を設けることにより、複数の独立した変位部を形成するのが望ましい。この場合には、機械的な溝加工で変位部を形成できるので、個々の圧電体を可撓性膜に接合する場合に比べて、高精度化,低コスト化を実現できる。
【0011】
さらに、可撓性膜上に圧電体を平面的に接合し、各加圧室の中央部上の圧電体に溝を設けることにより、複数の独立した変位部を形成した場合には、圧電体がいわば片持ち支持構造となり、圧電体の変位量を大きく取ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1,図2は本発明にかかる圧電型インクジェットヘッドの第1実施例を示す。
このヘッドは、基板10上に可撓性膜20と圧電体21とをエポキシ系接着剤などを用いて接合一体化したものである。基板10は圧電体21と近似した熱膨張率を有する42Ni合金などの材料で構成されており、その上面にはフォトエッチングなどの手法で複数の略短冊形状の加圧室11が形成されている。各加圧室11の一端側の底部にはノズル12が形成されており、これらノズル12が一列に並んでいる。
なお、加圧室11とノズル12の配列や形状は図1に限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0013】
可撓性膜20は例えば10μm以下のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで構成されており、加圧室11の1つの壁面を構成している。圧電体21は層厚が例えば15μmの上層21aと下層21bとを積層した後、一体焼成したものである。これら圧電体21a,21bはいずれもPZT系セラミックスで構成されており、加圧室11上の可撓性膜20上に接合されている。圧電体21の幅寸法は加圧室11の幅よりやや幅狭であり、圧電体21の長手方向の両端部は、膜20を介して基板10で支持されている。圧電体21の上層21aの上面と、上下層21a,21bの間には、駆動用電極23,24が形成されている。
【0014】
上記実施例では、上層21aを圧電体として使用し、下層21bを振動板として利用しているため、少なくとも上層21aを分極してあればよいが、下層21bも分極処理してもよい。また、下層21bを圧電体として使用し、上層21aを振動板として利用することもできる。この場合には、駆動用電極23,24を下層21bの上下面に形成すればよい。
【0015】
この実施例の圧電体21の形成方法としては、予め個別に形成した圧電体21を可撓性膜20上に接合固定する方法、膜20上に平面的に接合された圧電体21を溝加工により分離する方法、グリーンシート状態の圧電体21の溝に相当する部分を打ち抜く方法などがある。
【0016】
電極23,24間に上層21aの分極方向と同一方向の電圧を印加すると、上層21aが屈曲変位し、これに伴って積層構造の圧電体21が加圧室11の幅方向(図2に破線で示す)および長手方向に屈曲変位し、加圧室11内のインクをノズル12から吐出することができる。このとき、幅方向に隣合う圧電体21間や加圧室11間で相互干渉が起こりやすいが、圧電体21の間に可撓性膜20が介在しているので、歪みが可撓性膜20で吸収され、隣合う圧電体21間や加圧室11間で相互干渉が起こりにくい。しかも、可撓性膜20が圧電体21の変位に追随して容易に撓むので、圧電体21の変位を阻害せず、変位効率が良好である。また、上層21aにのみ電圧を印加して屈曲変位を発生させた場合、片側は分極方向と同方向で、他方は逆方向に電圧を印加する所謂バイモルフ型の圧電体に比べて、分極劣化に伴う特性劣化が少ないという特徴がある。
【0017】
図3は本発明の第2実施例を示し、図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この実施例は圧電体21を分割形成せず、可撓性膜20上の全面に平面的に接合したものである。上層21aの上面と、上下層21a,21bの中間層には、それぞれ加圧室11に対応する位置に駆動用電極23,24が形成されている。中間電極24を共通電極とし、上面電極23を個別電極として外部に引き出してもよいし、上面電極23を共通電極とし、中間電極24を個別電極として外部に引き出してもよい。
また、電極23,24を下層21bの上下面に形成してもよい。
【0018】
中間電極24を外部に接続する手段としては、スルーホールを用いたり、側面から電極を引き出す方法が考えられる。この場合も、上下層21a,21bのうち、上層21aのみを分極してもよいし、両方の層を分極してもよい。
また、可撓性膜20に予め薄膜電極を形成しておくことによって、電極の引出方法や駆動方法の自由度を広げることが可能である。例えば、下層側の圧電体21bにスルーホールを形成し、中間電極24を可撓性膜20上の薄膜電極より引き出すことも可能である。
【0019】
この実施例も、第1実施例と同様な効果を有するだけでなく、圧電体21を可撓性膜20の全面に形成することにより、電極23,24の引出しが容易になるとともに、溝加工が不要となり、ヘッドの製作が容易となる。しかも、可撓性膜20の全面が圧電体21で覆われるので、膜20の耐久性を向上させることができる。
【0020】
図4は本発明の第3実施例を示し、図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この実施例は、第2実施例と同様に圧電体21を可撓性膜20上の全面に平面的に形成した後、加圧室11の側壁13上の圧電体21に溝25を形成することにより、変位部を分割形成したものである。
【0021】
上記溝25は例えばダイシングによる機械加工により形成されており、加圧室11の側壁13の厚みより幅広で、その深さ(例えば25μm)は上層21aの厚みより深く、上下層21a,21bの厚みの和(例えば30μm)より浅い。そのため、溝25の底部には下層21bの一部が残るが、可撓性膜20は十分薄くて柔らかいので、下層21bの一部が残っていても、隣合う加圧室11間の相互干渉の心配はなく、かつ変位効率を低下させる恐れはない。本発明者らの実験によれば、溝25が圧電体21の1/2以上の深さまで切り込まれておれば、十分な効果があった。
【0022】
従来の場合には、圧電体に比べて加工性の悪い振動板へもダイシング等で溝加工する必要があり、多大に時間を必要としていたのに対し、上記のように可撓性膜20に至らない程度の溝25を形成する方法では、溝加工が比較的簡単になり、かつ短時間で加工できる。
【0023】
図5は本発明の第4実施例を示し、図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この実施例は、第2実施例と同様に圧電体21を可撓性膜20上の全面に平面的に形成した後、加圧室11の中央部上の圧電体21に溝26を形成することにより、変位部を分割形成したものである。なお、この実施例の溝16は可撓性膜20まで至る深さに形成され、2層の圧電体21全体を完全に分割しているが、図4と同様に一部を残してもよい。圧電体21の上層21aの上面と、上下層21a,21bの間には駆動用電極23,24が形成されているが、これら電極23,24も上記溝26によって左右に分割されている。溝16により分割された左右一組の上面電極23同士、中間電極24同士はそれぞれ短絡されている。
【0024】
この実施例の場合、溝26により分割された加圧室11上の一組の圧電体21は、加圧室11の側壁13上に片持ち支持されており、可撓性膜20を介して柔らかく結合されている。ここで、溝26により分割された左右一組の上面電極23と中間電極24間に分極方向と同一方向の電圧を印加すると、左右一組の圧電体21が同一方向に屈曲変位する。このとき、圧電体21は加圧室11の側壁13上に片持ち支持され、しかも可撓性膜20が圧電体21の変位を制限しないので、加圧室11の中央部の変位量が両端支持構造に比べて約2倍程度になり、加圧室11内のインクを効率よく吐出させることができる。
【0025】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
可撓性膜は、インクが圧電体に浸透するのを遮蔽でき、十分な可撓性を有するものであれば、樹脂膜に限らず、金属膜など如何なる材料を用いてもよい。
また、圧電体は2層構造に限らず、3層以上であってもよい。圧電体は一体焼成型積層圧電体に限らないが、一体焼成型の場合には圧電体の強度が高く、取扱が容易である。
さらに、圧電体と可撓性膜との接合方法は、エポキシ系接着剤などによる加熱接着に限らず、他の接合方法を用いることも勿論可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、可撓性膜に積層構造の圧電体を接合固定することにより変位部を構成したので、可撓性膜が内部応力を吸収して伸縮し、接合時の残留応力などによる特性劣化がない。
また、可撓性膜が圧電体の変位に追随して容易に撓むので、屈曲変位が隣の加圧室まで波及するのを防止するとともに、圧電体の変位効率が良好となり、高性能のインクジェットヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるインクジェットヘッドの第1実施例の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明にかかるインクジェットヘッドの第2実施例の断面図である。
【図4】本発明にかかるインクジェットヘッドの第3実施例の断面図である。
【図5】本発明にかかるインクジェットヘッドの第4実施例の断面図である。
【符号の説明】
1 0 基板
11 加圧室
12 ノズル
20 可撓性膜
21 圧電体
23,24 電極

Claims (4)

  1. 複数の加圧室が形成された基板と、
    上記各加圧室に設けられたノズルと、
    上記基板上に固着され、上記加圧室の1つの壁面を構成する可撓性膜と、
    上記可撓性膜上に接合固定された2層以上の積層構造の圧電セラミックスよりなる圧電体とを備え、
    上記圧電体の少なくとも1層は駆動時に電圧が印加されない層であり、他の層に電圧を印加することにより、上記圧電体は屈曲変位するものであり、
    上記可撓性膜は、そのヤング率が上記圧電体のヤング率の1/2以下の樹脂膜であり、
    上記圧電体の屈曲変位により各加圧室内のインクを加圧し、インクをノズルから吐出させるように構成した圧電型インクジェットヘッド。
  2. 請求項1に記載の圧電型インクジェットヘッドにおいて、
    上記可撓性膜上には上記圧電体のうち駆動時に電圧が印加されない層が接合され、
    上記電圧が印加されない層の上に電圧が印加される層が積層されていることを特徴とする圧電型インクジェットヘッド。
  3. 請求項1または2に記載の圧電型インクジェットヘッドにおいて、
    上記可撓性膜上には圧電体が平面的に接合され、
    各加圧室の側壁上の圧電体に溝を設けることにより、複数の独立した変位部を形成したことを特徴とする圧電型インクジェットヘッド。
  4. 請求項1または2に記載の圧電型インクジェットヘッドにおいて、
    上記可撓性膜上には圧電体が平面的に接合され、
    各加圧室の中央部上の圧電体に溝を設けることにより、複数の独立した変位部を形成したことを特徴とする圧電型インクジェットヘッド。
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