JP3660410B2 - エマルション被覆材組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線照射により基材上に耐磨耗性、表面平滑性、耐熱性、耐薬品性、耐水性、耐候性及び基材との密着性に優れた架橋硬化被膜を形成するエマルション被覆材組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂などから製造された合成樹脂成形品は、軽量で耐衝撃性に優れ、透明性も良好であることから、自動車用プラスチック材料として、ヘッドライト、グレージング、計器類などのカバーなどにも用いられている。しかしながら、これらの合成樹脂成形品は、その表面の耐磨耗性が不足しているため、他の硬い物との接触、摩擦、ひっかき等によって成形品表面に損傷を受けやすく、その耐磨耗性の改善が強く望まれている。
【0003】
合成樹脂成型品の耐磨耗性の改善については、従来から種々検討され、例えばシリコン系、メラミン系等の樹脂組成物からなる被覆材を合成樹脂成型品表面に塗布し、加熱により架橋被膜を形成し、耐磨耗性を向上させる方法が特開昭56−122840号公報等で提案されている。しかしながら、これらの方法では耐磨耗性はある程度改善されるものの、熱ショック、熱水等に対する耐久性や耐薬品性が不十分であるとともに、硬化に時間を要するため生産性にも問題がある。
【0004】
一方、活性エネルギー線硬化型の樹脂は、その良好な生産性、低温硬化性、無溶剤または低溶剤であることに由来する低公害性等から幅広い分野で用いられている。しかしながら、無溶剤・低溶剤とはいえ、これらの樹脂を塗料として用いる場合、粘度調整などの目的で溶剤を多量に添加しているのが現状である。
【0005】
近年、欧米では、揮発性有機溶剤の規制が実施されており、有機溶剤を用いた樹脂組成物は、無溶剤或いは非溶剤系への転換を余儀なくされている。これら規制に基づく環境保護は、地球的規模で行われていることから、日本でも近く規制強化が行われることが必至であり、溶剤系樹脂の代替品の早急な開発が望まれている。また、より向上した労働環境の改善が進められている現在、人体に及ぼす影響の大きさからも揮発性有機溶剤の使用は問題となるものであり、この点でも塗料等に用いられる樹脂の無溶剤化、非溶剤化が必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そのため、有機溶剤に代えて水を用いるエマルション樹脂組成物が高固形分でも粘度調整が容易である点等から広く検討がされ、溶剤系樹脂の代替え品として用いられるようになってきた。
ところが、一般的に、耐磨耗性、耐水性等を発現するために必要な樹脂は疎水性であり、単純に水に強制乳化させてもそのままでは安定したエマルション樹脂組成物を得ることは不可能であるため、界面活性剤の添加が検討されている。
しかし、添加された界面活性剤は硬化被膜中に遊離した状態で存在するため、硬化被膜の耐候性、耐水性等の低下を招くという問題点を有している。
【0007】
本発明の目的は、低公害・低毒性、及び高固形分での良好な塗工性を実現し、貯蔵安定性に優れ、耐磨耗性、表面平滑性、耐熱性、耐薬品性、耐水性、耐候性及び基材との密着性の良好な活性エネルギー線照射により基材上に架橋硬化被膜を形成し得るエマルション被覆材組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討をした結果、(メタ)アクリロイル基を有するモノ又はポリペンタエリスリトール、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物、及び光重合開始剤を特定の割合に配合した樹脂組成物に、ラジカル重合反応性界面活性剤及び水を添加し強制乳化することにより得られるエマルション被覆組成物を基材に塗布後、乾燥し、活性エネルギー線照射により硬化させることにより、耐磨耗性、耐候性、耐水性、耐熱性、耐薬品性に優れた硬化被膜が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)下記一般式[I]で表されるモノ又はポリペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の単量体10〜70重量部、
【化5】
(式中、X11、X12、X13、Xm2、Xm3、X14のうち、少なくとも3個はCH2=CR−COO−基(Rは水素原子又はメチル基)で、残りは−OH基、nは0〜4の整数を示す。)
(B)1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物5〜50重量部、
(C)ラジカル重合可能なモノマー或いはオリゴマーの少なくとも1種0〜50重量部、
(D)光重合開始剤0.1〜10重量部、
(E)ラジカル重合反応性界面活性剤2〜24重量部、
からなり、(A)〜(E)成分の合計量が100重量部となる組成物に対し、
(F)紫外線吸収剤0〜30重量部、
(G)ヒンダードアミン系光安定剤0〜5重量部、
(H)水10〜900重量部
を配合したことを特徴とするエマルション被覆材組成物にある。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味するものとする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物における(A)成分である、モノ又はポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線照射により良好な重合活性を示し、また高度な架橋密度を有する耐磨耗性に優れた重合体を生成するため、基材表面に耐磨耗性に優れた架橋被膜を形成することができる。
(A)成分としては、具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が用いられる。
また、これらは、単独或いは2種以上を混合して用いられる。
【0011】
(A)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部中に10〜70重量部、好ましくは25〜50重量部である。この(A)成分の含有量が10重量部より少ないと十分な耐磨耗性を有する硬化被膜が得られず、70重量部を超えると、硬化被膜にクラックが生じ易く、また硬化被膜の耐熱性が低下する。
【0012】
(B)成分の1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物は、硬化被膜の強靭性、可撓性、耐熱性、及び耐水性を向上させる成分であり、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とのウレタン化反応生成物や、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物にポリオール、ポリエステル、ポリアミド系のジオールを反応させて付加体を合成した後、残存のイソシアネート基にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを付加させたウレタン化反応生成物等が用いられ、特に後者のウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物が硬化被膜の強靭性、可撓性をより向上させることから好ましい。
また、用いるウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物は、分子量が1000〜5000であるものが好ましい。
【0013】
ウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物の合成に用いるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)イソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のポリイソシアネート単量体及びそのビューレットやトリマー、さらにそれらと各種ポリオールとの付加体等が挙げられる。
【0014】
付加体の合成に用いるポリオールは、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリンなどのアルキルポリオール、及びこれらのポリエーテルポリオールや多価アルコールと多塩基酸から合成されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0015】
また、ウレタンポリ(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートや、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のモノエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物や、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカプロラクトンジオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0016】
ポリイソシアネートと各種ジオールとヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとによるウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物は、ジラウリン酸ジn−ブチル錫等の錫系触媒存在下、イソシアネート基と水酸基がほぼ等量になるように用いて、60〜70℃で数時間加熱することにより合成される。
【0017】
(B)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部中にしめる量として5〜50重量部、より好ましくは15〜35重量部である。この(B)成分が5重量部より少ない場合には、十分な強靭性を有する硬化被膜が得られず、また、空気雰囲気下での硬化性が悪くなり、50重量部を越えると、硬化被膜の耐磨耗性が低下する。
【0018】
(C)成分のラジカル重合可能なモノマー或いはオリゴマーとしては、脂肪族、脂環族、芳香族系のモノまたはポリアルコールと(メタ)アクリル酸との縮合反応で得られるエステル型(メタ)アクリレート(a−1)、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのグリシジル基開環反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート、飽和または不飽和多価カルボン酸、多価アルコール及び(メタ)アクリル酸の縮合反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル官能性モノマー或いはオリゴマーや、スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジアリルフタレートジアリルビフェニレート等の(メタ)アリル化合物等が挙げられる。
【0019】
中でも、活性エネルギー線の照射により良好な重合活性を示し、また耐磨耗性を損なうことなく硬化被膜の強靭性、耐熱性を向上することができることから、下記一般式[II]または[III]で表される[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレートが好ましい。
【0020】
【化6】
(式中、X1、X2及びX3は(メタ)アクリロイル基、水素原子又はアルキル基を示し、かつこれらのうち少なくとも2個は(メタ)アクリロイル基であり、R1、R2及びR3は炭素数1〜4のオキシアルキレン基を示す。)
【0021】
ポリ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル](イソ)シアヌレートとしては、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジ(2−アクリロイルオキシプロピル)−2−ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、ジ(2−アクリロイルオキシプロピル)−2−ヒドロキシプロピルシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)シアヌレート等が挙げられる。これらは単独或いは2種以上混合して用いる。
【0022】
(C)成分は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部中にしめる量として0〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。この(C)成分が50重量部を越えると硬化被膜の耐磨耗性が低下する。
【0023】
(D)成分の光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン等のアシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
特に、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、メチルフェニルグリオキシレートが、空気硬化性、深部硬化性が良好であることからより好ましい。これら光重合開始剤は、1種或いは2種以上の混合系で用いる。
【0024】
(D)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部中にしめる量として、0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。この(C)成分が0.1重量部より少ない場合には、硬化性が不十分であり、10重量部を越えると硬化被膜の着色を招く。
【0025】
(E)成分のラジカル重合反応性界面活性剤は、均一なエマルションを得るうえでの必須の成分である。
かかるラジカル重合反応性界面活性剤は、分子中にラジカル反応性の不飽和結合を有するものをいい、具体的には(メタ)アクリレート系、アリル系、マレイン酸系、イタコン酸系などの界面活性剤が挙げられる。
【0026】
(E)成分の具体例としては、スルホエチルメタクリレートナトリウム塩、スルホエチルメタクリレートアンモニウム塩、アリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルマレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメタクリル酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリル酸エステル、アリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。
(E)成分は、1種又は2種以上の混合系で用いることができる。
【0027】
中でも、ラジカル重合可能なモノマー或いはオリゴマーに対する乳化能力が高い、エマルションの安定性が良好であるといった点から、前記一般式[IV]や一般式[V]で表されるラジカル重合反応性界面活性剤が特に好ましい。
【0028】
【化1】
(式中、R 4 は水素原子又はメチル基、R 5 は炭素数1〜20のアルキル基、pは8〜40の整数を示す。)
【0029】
【化2】
(式中、R 6 、R 9 は水素原子又は炭素数1〜25のアルキル基であって各々同一でも異なっていてもよく、R 7 、R 8 、R 10 、R 11 は水素原子或いは炭素数1〜25のアルキル基、ベンジル基、スチレン基であって各々同一であっても異なってもよい。R 12 は水素原子或いはメチル基を示す。qは5〜15の整数であり、Yはアルカリ金属原子又はアンモニウムを示す。)
【0030】
一般式[IV]、[V]で表される化合物のうち、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルメタクリレートや、エチレンオキサイドを10モル付加重合させたノニルフェノールホルムアルデヒド縮合物のエステル硫酸アンモニウム塩、エチレンオキサイドを8モル付加重合させたスチレン化オクチルフェノールホルムアルデヒド縮合物のエステル硫酸ナトリウム塩などが特に好ましい。
【0031】
(E)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部に対して、2〜24重量部、より好ましくは4〜16重量部である。
(E)成分が2重量部より少ない場合には安定したエマルションが得られず、24重量部を越えると、この硬化被膜の耐水性、耐候性が不良となり密着性の低下、あるいはクラックの発生、黄変等の性能が低下する。
【0032】
(F)成分の紫外線吸収剤は、本発明の被覆材組成物に添加することにより、得られた硬化被膜が紫外線を吸収し、基材、及び基材の内側を紫外線から保護することができる成分である。
従って、基材の耐候性が不良である場合に、高い耐候性が要求される場合、(F)成分を添加して基材を紫外線から保護する目的で、(F)成分を添加することができる。
本発明で用いる(F)成分としては、本発明の被覆材組成物に均一に溶解するものであれば特に限定されるものではないが、溶解性という点から、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、安息香酸フェニル系から誘導された化合物で、かつそれらの最大吸収波長が240〜380nmの範囲である紫外線吸収剤が好ましい。
また、本発明の被覆材組成物中に多量に含有させる必要がある場合には、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が特に好ましく、またポリカーボネート等のプラスチック基材の黄変を防ぐ点から、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましい。このため、これら2種を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0033】
(F)成分の具体例としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、ベンゾフェノン系の2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、および2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンや、ベンゾトリアゾール系の2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
また、(F)成分は、単独又は2種以上を混合して用いることができるが、各種性能を発現させるためには、これらを2種以上組み合わせて用いるのがより好ましい。
【0035】
(F)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部に対して、0〜30重量部、より好ましくは5〜15重量部である。
(F)成分が30重量部を越えると、被覆材組成物の硬化性が不十分となり、硬化被膜の強靭性、耐熱性、耐磨耗性が低下する。
【0036】
(G)成分のヒンダードアミン系光安定剤は、硬化被膜の耐候性を向上させる成分である。
(G)成分の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(ミックスド1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1、2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
これらのうち、硬化被膜の耐候性が良好であることから、ビス(1,2,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートが、特に好ましい。
【0037】
(G)成分の含有量は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部に対して、0〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。
(G)成分が5重量部を越えると、被覆材組成物の硬化性が不十分となり、硬化被膜の強靭性、耐熱性、耐磨耗性が低下する。
【0038】
(H)成分の水は、(A)〜(G)成分からなる配合物の粘度を低下させ、塗工を容易にする目的で配合される。(H)成分の水は、(A)〜(E)成分の合計量100重量部に対し、10〜900重量部、好ましくは40〜300重量部配合される。この配合量が10重量部より少ない場合には粘度が高すぎて塗工が困難であり、900重量部を越えると、基材に塗工したときに一様に塗れず、平滑な連続被膜が得られない。
【0039】
本発明のエマルション被覆材組成物には、必要に応じ、さらに酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈殿防止剤、帯電防止剤、防曇剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0040】
本発明のエマルション被覆材組成物を得るに際しては、(A)〜(G)成分からなる配合物を、(H)成分の水に、高速ディスパー、二重円筒ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ブレンダー、ミキサー等を用いる方法や膜乳化による方法等により乳化させてエマルションとする。
【0041】
本発明のエマルション被覆材組成物は、基材に刷毛塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコート等により塗布することができるが、塗工作業性、被膜の平滑性、均一性、基材への密着性等の点から、それぞれの塗布方法に適した粘度に被覆材組成物を適宜調整し、基材の形状に応じた方法で塗布することが好ましい。また、基材への塗布に当たっては、基材上で均一な被膜を形成し、かつ速やかに乾燥させるとともに、エマルション被覆材組成物の密着性をもさらに向上させることから、基材を加熱しておくことが好ましい。
【0042】
本発明のエマルション被覆材組成物は、基材に塗布した後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより架橋し、硬化被膜を形成する。
活性エネルギー線照射により硬化させる際には、エマルション被覆材組成物を基材上に硬化被膜厚が1〜50μm、好ましくは3〜20μmになるように塗布し、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用い、波長100〜400nmの紫外線を光量1000〜5000mJ/cm2となるように照射する。活性エネルギー線照射における雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中であってもよい。
【0043】
本発明のエマルション被覆材組成物が適用される基材は、合成樹脂、金属、木材、紙等の各種基材が挙げられ、また、適用の目的も、防水、防傷、防錆、防汚、防腐等の表面保護、帯電防止、防曇等の機能性付与、着色、艶出し、艶消し等の外観向上等各種目的に供することができる。
【0044】
本発明のエマルション被覆材組成物は、耐磨耗性が要求される各種合成樹脂成形品の表面の改質に用いられる。かかる基材となる樹脂としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(ポリエステル)カーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂などが挙げられ、フィルム状、シート状、板状、その他いずれの形状であってもよい。
なかでも、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は、その優れた透明性を保持する上で、耐磨耗性が強く要求されることから、本発明のエマルション被覆材組成物を用いることが特に好ましいものである。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中、部とあるのは重量部を意味する。また、評価項目は次の方法に拠って評価した。
【0046】
(1)エマルション安定性
再乳化直後のエマルション100mlを目盛り付き試験管に採り、乳化状態と目視による外観の評価した。
○:3ヶ月後でも全く分離しないか、又は分離していても手で試験管を振って混和することにより、容易に乳化状態に戻るもの
×:3ヶ月以内に分離し、手で試験管を振って混和しても再乳化しないもの
【0047】
(2)硬化被膜の外観
組成物の塗布直後、硬化後の被膜外観を目視評価し、表面が平滑でピンホール、ハジキ等の欠陥のないものを良好とし、それ以外は外観上の問題点を記述した。
【0048】
(3)耐磨耗性
#0000のスチールウールを、直径25mmの円筒先端に装着し、水平に置かれたサンプル面に接触させ、1Kgの荷重で50回転往復磨耗した後、拡散透過率(ヘイズ値)を測定し、耐磨耗性の判定を次の判定基準で行った。
○:増加ヘイズ値0〜0.5(殆ど傷が付いていないか、ごく僅かに傷が付く)
△:増加ヘイズ値0.5〜3.0(少し傷が付く)
×:増加ヘイズ値3.0以上(ひどく傷が付く)
【0049】
(4)密着性
硬化被膜に1mm間隔で基材面に達するクロスカットを入れ、1mm2の碁盤目を100個作り、その上に粘着テープを張りつけ急激に剥し、剥離した碁盤目の数を数えた。
○:剥離なし
△:1〜25個剥離
×:26個以上剥離
【0050】
(5)耐熱性
塗板サンプルを熱風乾燥機で120℃で24時間加熱し、硬化被膜の外観変化を目視により観察した。
○:変化がないもの
×:クラックが発生したもの
【0051】
(6)耐水性
被覆材組成物を塗布した塗板サンプルを80℃のウォーターバス中で2時間、及び10時間加熱し、硬化被膜の外観変化を目視により観察し、外観、クラックを目視により観察し、密着性を試験した。
【0052】
(7)耐候性
サンシャインカーボンウエザーオメーター(スガ試験機製、WEL−SUN−HC−B型)耐候性試験機を用いてブラックパネル温度63±3℃、照射降雨12分間、照射48分間のサイクルで300時間及び1000時間の暴露試験した。
・外観:硬化被膜の黄変度について△YI値(△YI=YI(耐候性試験後)−YI(初期))を測定した。
○:0≦△YI<1
△:1≦△YI<3
×:3≦△YI
・クラック:(5)の評価に準じた。
・密着性:(4)の評価に準じた。
【0053】
(8)対環境汚染性
被膜形成工程において溶剤の発生のないものを○、あるものを×とした。
【0054】
[実施例1、3〜7、9〜13、比較例1、3、5〜8、12〜14]
表1〜表4に示す成分及び配合比で超音波ホモジナイザーを用いて被覆材組成物を調製した。この組成物を、予め乾燥機で80℃で30分間加熱しておいた厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(ゼネラルエレクトリック社製、商品名:レキサンLS−II)に、硬化後の被膜が8μmになるようにスプレーコートした。加熱により水分を揮発させた後、空気中で高圧水銀ランプを用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化被膜を得た。得られた被膜の評価結果を表1〜表4に示した。
【0055】
[実施例2、8、14、比較例2、4、9〜11]
表1〜表4に示す成分及び配合比で超音波ホモジナイザーを用いて被覆材組成物を調製した。この組成物を、予め乾燥機で80℃で30分間加熱しておいた厚さ3mmのポリメチルメタクリレート樹脂板(三菱レイヨン(株)製;商品名:アクリペットVH)に、硬化後の被膜が8μmになるようにスプレーコートした。加熱により水分を揮発させた後、空気中で高圧水銀ランプを用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化被膜を得た。得られた被膜の評価結果を表1〜表4に示した。
【0056】
[比較例15]
表4に示す成分及び配合比の被覆材組成物を、溶剤としてイソブタノール/酢酸ノルマルブチル/ブチルセロソルブ/酢酸セロソルブが140/50/20/10の比率の混合したものに完全に溶解させ、予め乾燥機で80℃で30分間加熱しておいた厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(GE社製;商品名:レキサンLS−II)に、硬化後の被膜が8μmになるようにスプレーコートした。加熱により溶剤を揮発させた後、空気中で、高圧水銀ランプを用い、波長340〜380nmの積算光量が1000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化被膜を得た。得られた被膜の評価結果を表4に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表1及び表2中の記号は次の意味である。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
UA1:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート2モル、ノナブチレングリコール1モル、2−ヒドロキシエチルアクリレート2モルから合成した分子量2500のウレタンアクリレート
UA2:イソホロンジイソシアネート2モル、2,2’−(ヒドロキシエチルオキシフェニル)プロパン1モル、2−ヒドロキシプロピルアクリレート2モルから合成した分子量2200のウレタンアクリレート
TAIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
DAIC:ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート
BNP:ベンゾフェノン
MPG:メチルフェニルグリオキシレート
MS−60:ビス(ポリオキシエチレントリフェニルエーテル)メタクリレート化硫酸アンモニウム塩(日本乳化剤(株)製、商品名Antox MS−60)
RMA:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート(日本乳化剤(株)製、商品名RMA−506)
EM50:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル EO付加50モル
HBPB:2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
DHBP:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
BTMS:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
BPMS:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
PC:ポリカーボネート樹脂
PMMA:ポリメチルメタクリレート樹脂
【発明の効果】
本発明のエマルション被覆材組成物は、活性エネルギー線照射により基材表面に耐磨耗性、耐熱性、耐薬品性に優れ、しかも耐水性、耐候性、基材との密着性に優れた架橋硬化被膜を形成し得るものであり、また、溶剤の使用を必要としないことから、低公害・低毒性であり、環境に対して悪影響を与えず、さらにまた貯蔵安定性に優れた高固形分でも塗工性が良好な架橋硬化被膜を形成し得るものである。
Claims (3)
- (A)下記一般式[I]で表されるモノ又はポリペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の単量体10〜70重量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和二重結合を有するウレタンポリ(メタ)アクリレート化合物5〜50重量部、
(C)ラジカル重合可能なモノマー或いはオリゴマーの少なくとも1種0〜50重量部、
(D)光重合開始剤0.1〜10重量部、
(E)ラジカル重合反応性界面活性剤2〜24重量部、
からなり、(A)〜(E)成分の合計量が100重量部となる組成物に対し、
(F)紫外線吸収剤0〜30重量部、
(G)ヒンダードアミン系光安定剤0〜5重量部、
(H)水10〜900重量部
を配合したことを特徴とするエマルション被覆材組成物。 - (E)成分が、一般式[IV]で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート及び/又は一般式[V]で表されるビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)(メタ)アクリレート化硫酸エステル塩である請求項1記載のエマルション被覆材組成物。
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