JP3655507B2 - 燃料電池システムおよびこれを搭載した電気自動車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気自動車用の電源として、あるいはそれ以外の種々の用途の電源として好適に用いることができる燃料電池システムおよびこれを搭載した電気自動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、燃料としての水素を、プラチナなどの触媒と接触させることによって電子とプロトンに解離させるとともに、このプロトンを酸化剤としての酸素に反応させるという化学反応に基づき電気エネルギを直接的に発生させている。このため、燃料電池は、他の発電方式に比べてエネルギ効率が高い。また、燃料電池の排気ガスは、主として水蒸気であり、環境の保護の点においても優れている。そこで、近年においては、たとえば特開平11−220812号公報や特開平11−234807号公報に記載されているように、電気自動車に搭載される電源として、燃料電池を用いることが試みられている。
【0003】
電気自動車の電源として燃料電池を用いる場合には、その燃料電池は電気自動車を走行させるのに充分な電力を発生させ得るものでなければならない。その一方、燃料電池は、それ単体では出力電力が小さい。そこで、従来においては、たとえば図11に示すような燃料電池システムがある。この燃料電池システムは、複数の燃料電池スタック9を備えている。各燃料電池スタック9は、複数の燃料電池(図示略)を直列に接続するようにして1纏めに重ね合わせたものであり、燃料電池を単体で用いる場合よりも高圧かつ大電流の電力を出力可能である。各燃料電池スタック9には、水素ガスの供給配管90と空気(酸素)の供給配管91とが接続されており、各燃料電池スタック9への水素ガスの供給とその停止とは、供給配管90に設けられた1つのバルブ92の開閉動作により行えるようになっている。このため、複数の燃料電池スタック9は、それらの駆動と停止とが一斉に行われるようになっている。また、複数の燃料電池スタック9どうしは、たとえば電気的に直列に接続されており、これらは一対の出力端子93に繋がっている。複数の燃料電池スタック9によって発生された電力は、一対の出力端子93から所望の供給先に供給されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の燃料電池システムにおいては、次のような問題点があった。
【0005】
第1に、電気自動車に必要とされる電力は、電気自動車の運転状況やその他の状況によって大きく相違する。たとえば、坂道を登るときと平坦な道路を走行するときとでは、駆動輪の回転に必要なトルクが大きく相違し、モータ駆動に必要とされる電力値も大きく相違する。ところが、従来においては、複数の燃料電池スタック9は、それら全てが一斉に駆動されるか、あるいはその駆動が一斉に停止されるかに過ぎない。したがって、従来においては、大きな電力を必要としない場合であっても、複数の燃料電池スタック9の全てが駆動されることとなり、無駄を生じていた。
【0006】
第2に、従来においては、複数の燃料電池スタック9から一対の出力端子93に電力が供給されるときには、それら複数の燃料電池スタック9の全てが駆動しているために、たとえば一対の出力端子93に供給される電力の電圧値は、常に一定である(ただし、厳密には燃料電池の特性に起因する電圧値の多少の変動はある)。このため、一対の出力端子93に供給された電力を電気自動車のモータ駆動に実際に利用する場合には、たとえば変圧機能を有する電気回路を用いることによって、モータに印加される電圧を殆ど常に調整する必要がある。また、この場合には、出力端子93における一定の電圧を高い電圧や低い電圧に変圧しなければならないため、その電圧の調整幅も大きい。したがって、従来においては、燃料電池システムから得られる電力を利用するときの電圧の調整なども面倒なものとなっていた。
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、燃料電池システムを構成する複数の燃料電池スタックを効率的に駆動させるようにし、必要な電力が容易に得られるようにすることをその課題としている。
【0008】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される燃料電池システムは、複数の燃料電池スタックと、これら複数の燃料電池スタックのそれぞれに燃料および酸化剤を供給する手段とを有している燃料電池システムであって、上記複数の燃料電池スタックは、複数のブロックに分けられているとともに、これらのブロック単位ごとに駆動およびその停止が行えるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る燃料電池システムにおいては、次のような効果が得られる。
【0011】
第1に、必要電力量が多い場合には、多数の燃料電池スタックを駆動させることによってそれに見合った多くの電力を発生させることができる。また反対に、必要電力量が少ない場合には、少数の燃料電池スタックを駆動させることによってそれに見合った少ない電力を発生させることができる。したがって、複数の燃料電池スタックの一部分が無駄に駆動されないようにして、必要な電力を効率良く発生させることができる。
【0012】
第2に、多数の燃料電池スタックを駆動させる場合には、少数の燃料電池スタックを駆動させる場合よりも大きな電力を発生させることが可能であり、複数の燃料電池スタック全体から得られる電力量は、実際に駆動される燃料電池スタックの数を変更することによって増減調整することが可能となる。したがって、本発明に係る燃料電池システムにおいては、外部機器において実際に必要とされる電力量またはそれに近い電力量の電力を外部機器に供給することが可能となり、便利となる。本発明においては、従来とは異なり、たとえば変圧手段を備えた電気回路などを用いなくても、外部機器に出力される電力の電圧値を増減調整することが可能となる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各燃料電池スタックは、個々に駆動およびその停止が行えるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、上記複数の燃料電池スタックが2つずつブロック分けされたり、あるいは3つずつブロック分けされている場合と比較すると、上記複数の燃料電池スタックを駆動させる場合のバリエーションを多くし、その選択の幅を広げることができる。したがって、上記複数の燃料電池スタックの一部が不必要に駆動されるといったことを、よりきめ細かに防止することが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の燃料電池スタックのそれぞれに燃料を供給するための配管を有しており、かつこの配管には、上記ブロック単位ごとに上記複数の燃料電池スタックへの燃料供給とその停止とが切り替え自在な複数のバルブが設けられている。
【0016】
このような構成によれば、上記複数のバルブを開閉させて、上記複数の燃料電池スタックへの燃料の供給とその停止とを行わせることにより、上記複数の燃料電池スタックを上記ブロック単位ごとに駆動させ、または停止させることが簡単に行えることとなる。また、たとえば複数の燃料電池スタックのうちの一部が破損したような場合には、破損した燃料電池スタックに対する燃料供給を停止することも可能となり、その部分からの燃料漏れなどの事態も適切に防止できることとなる。
【0017】
本発明の他の好ましい実施の形態においては、必要電力量に対応して上記複数のバルブの開閉動作を制御する制御手段をさらに有している。
【0018】
このような構成によれば、上記制御手段が上記複数のバルブの開閉動作を制御することによって、上記複数の燃料電池スタックからは必要電力量に対応した電力が得られることとなり、より便利となる。
【0019】
本発明の他の好ましい実施の形態においては、上記複数の燃料電池スタックから電力を受け取るとともに、その電力を外部機器に出力するための1対または複数対の出力端子を有している出力制御部をさらに備えており、かつこの出力制御部は、上記複数の燃料電池スタックどうしの接続構成および上記出力端子に対する上記複数の燃料電池スタックの接続構成を変更可能とされている。
【0020】
このような構成によれば、上記出力制御部において上記複数の燃料電池スタックどうしの接続構成を変化させ、あるいは上記出力端子に対する上記複数の燃料電池スタックの接続構成を変化させることにより、上記出力端子から出力される電力量を変化させることができる。たとえば、上記複数の燃料電池スタックどうしを並列に接続したり、直列にしたり、あるいは直列に接続されて駆動される燃料電池スタックの個数を変更させれば、出力制御部の出力端子から出力される電圧あるいは電力量を変更することが可能となる。したがって、上記複数の燃料電池スタックで発生された電力を利用するのに、一層便利となる。
【0021】
本発明の第2の側面によって提供される電気自動車は、本発明の第1の側面によって提供される燃料電池システムが搭載されていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係る電気自動車においては、本発明の第1の側面によって得られるのと同様な効果が期待できる。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る燃料電池システムの一例を示している。本実施形態の燃料電池システムAは、たとえば計16個の燃料電池スタック6、水素ガス供給源21、水素ガス供給配管2、水素ガス回収配管20、空気供給配管3、空気回収配管30、複数のバルブ4、駆動制御部10、および出力制御部11を具備して大略構成されている。
【0026】
図2は、各燃料電池スタック6の斜視図である。図3は、その一部分の断面図である。図2によく表れているように、この燃料電池スタック6は、複数の燃料電池60が直列的に積層されて構成されている。これら複数の燃料電池60は、複数のボルト68aおよびナット68bを用いて連結された一対のエンドプレート69a,69bの間に挟持されている。
【0027】
図3によく表れているように、各燃料電池60は、一対のプレート64,64の間に、正極部61、負極部62および電解部63が挟まれた構成を有している。互いに隣り合う燃料電池60どうしは、1枚のプレート64を共用するとともに、このプレート64により実質的に仕切られている。
【0028】
正極部61および負極部62は、集電体61a,62aと触媒層61b,62bとからなる。各集電体61a,62aは、たとえば導体粒を固めた多孔質体として形成されており、触媒層61b,62bは、たとえば炭素粒からなる多孔質マトリクスに、プラチナなどの適宜の触媒粉末を担持させたものとして形成されている。正極部61および負極部62のそれぞれの周縁部は、枠状のガスケット65によって囲まれている。電解部63は、プロトン導電性を有しており、プロトンとしての水素イオンを選択的に透過させるイオン交換膜により構成されている。
【0029】
各プレート64は、たとえばステンレス鋼やチタン合金製の導体である。各プレート64の片面には、水素ガス流通用の複数条の溝部64Aが互いに繋げられて設けられている。各プレート64の反対の片面には、空気(酸素ガス)流通用の複数条の溝部64Bが互いに繋げられて設けられている。各プレート64、各ガスケット65および各電解部63には、水素ガス供給用の孔66aと空気供給用の孔66bとがそれぞれ一連に設けられている。水素ガス供給用の孔66a内に供給された水素ガスは、各溝部64A内に進入するようになっている。空気供給用の孔66b内に供給された空気は、各溝部64B内に進入するようになっている。図面上は省略しているが、各プレート64、各ガスケット65および各電解部63には、各溝部64Aを通過した未消費の水素ガスと各溝部64Bを通過した酸素とを燃料電池スタック6の外部に排気するための水素ガス回収用の孔および空気回収用の孔も設けられている。
【0030】
図2によく表れているように、エンドプレート69a,69bには、2つずつの貫通孔67a,67bが設けられている。2つの貫通孔67aは、水素ガス供給用の孔66aと上記水素ガス回収用の孔とにそれぞれ連通しており、水素ガスの供給口または水素ガスの排出口として利用される。2つの貫通孔67bは、空気供給用の孔66bと上記空気回収用の孔とにそれぞれ連通しており、空気の供給口または空気の排出口として利用される。したがって、各貫通孔67aには、水素ガス供給配管2または水素ガス回収配管20が接続される。各貫通孔67bには、空気供給配管3または空気回収配管30が接続される。
【0031】
以上のように構成された燃料電池スタック6においては、水素ガスが孔66aに供給され、各溝部64Aに達すると、この水素ガスは、負極部62の集電体62aを通過して触媒層62bに達する。すると、この水素ガスは、水素イオンと電子とに解離され、水素イオンは電解部63を透過して正極部61の触媒層61bに達する。電子は、集電体62aを再び通過してプレート64に達し、隣り合う燃料電池60の正極部61の触媒層61bに達する。一方、溝部64Bに達した空気は、正極部61の集電体61aを通過して触媒層61bに達する。すると、この空気中の酸素ガスは、電解部63を透過した水素イオンと、隣の燃料電池60からの電子と反応して水を生成する。上記した水素ガスの電子の移動は、複数の負極部62と複数の正極部61との各間において行われる。その結果、複数の燃料電池60のうち、この燃料電池スタック6の両端に位置する正極部61と負極部62とから、またはそれらの隣りに位置する一対のプレート64からは、電流が直流である所定電圧を有する電力を取り出すことができる。複数の燃料電池60は直列に繋がっているために、上記電力の電圧は、複数の燃料電池60の各電圧をトータルしたものとなる。図2および図3においては省略しているものの、燃料電池スタック6には、そのような電力を配線コードを用いて外部に取り出すことを容易とする正極および負極としての一対の電極が設けられている。
【0032】
図1において、水素ガス供給源21としては、たとえば水素ガスが高圧で充填されたボンベ、液化水素が充填されたボンベ、水素ガスを吸蔵した水素吸蔵合金、または水素含有化合物から水素ガスを分離させて取り出す装置を適用することができる。
【0033】
水素ガス供給配管2は、水素ガス供給源21から供給される水素ガスを、計16個の燃料電池スタック6のそれぞれに供給するためのものであり、各燃料電池スタック6に繋がった複数の分岐配管22を有している。水素ガス供給源21から各分岐配管22に至るまでの主配管経路途中には、バルブ50が設けられている。このバルブ50は、たとえば遠隔操作が可能な電磁バルブであり、駆動制御部10の制御により、各燃料電池スタック6に向けての水素ガスの供給を停止させるとともに、水素ガス供給配管2内に存在する水素ガスを大気中に排出する動作が可能である。このバルブ50は、各燃料電池スタック6の駆動を何らかの事情により緊急に停止させるのに有効である。水素ガス回収配管20は、各燃料電池スタック6内に供給された水素ガスのうち、各燃料電池スタック6から未消費で排出された水素ガスを回収するものである。この水素ガス回収配管20は、回収した水素ガスを水素ガス供給源21に戻して再利用できるように設けられている。
【0034】
複数のバルブ4は、水素ガス供給配管2の各分岐配管22に1つずつ設けられている。これら複数のバルブ4は、バルブ50と同様に、遠隔操作が可能なたとえば電磁バルブであり、後述するように、駆動制御部10の制御により燃料電池スタック6への水素ガスの供給とその停止とを個別に切り替えことができるように開閉動作が自在である。複数の燃料電池スタック6は、対応するバルブ4が開とされ、水素ガスが供給されているときにのみ駆動可能である。また、図面上は省略しているが、好ましくは、各分岐配管22には、各燃料電池スタック6に供給される水素ガス量を調整可能な流量調整バルブも別途設けられている。
【0035】
空気供給配管3は、たとえばブロア(図示略)によって送られてくる空気を各燃料電池スタック6に供給するためのものであり、水素ガス供給配管2と同様な分岐配管を有している。この空気供給配管3にも、バルブ50と同様な1つのバルブ51が設けられており、駆動制御部10の制御により、空気供給配管3内の空気を外部に緊急に排出させることが可能ななっている。また、好ましくは、空気供給配管3の分岐配管にも、水素ガス供給配管2と同様に、各燃料電池スタック6に供給される空気量を調整可能な流量調整バルブが設けられている。空気回収配管30は、各燃料電池スタック6を通過した空気を回収するためのものである。この空気回収配管30によって回収された空気は、たとえば大気中に放出されるように構成されている。
【0036】
駆動制御部10は、複数のバルブ4の開閉動作を制御することにより、結果的に複数の燃料電池スタック6のそれぞれの駆動を制御するものである。この駆動制御部10は、所定の外部機器から送信されてくる制御コマンドにそのまま対応して複数のバルブ4の開閉動作を単に行わせるだけのものでもよいし、あるいは外部機器から送信されてくる各種の信号に基づいて、複数のバルブ4のいずれを開閉させるかを一定のプログラムにしたがって演算し、その演算結果に基づいて各バルブ4の開閉動作を行わせるものとして構成されていてもよい。この後者の場合には、たとえばCPUやそれに付属するメモリを備えた演算処理手段がこの駆動制御部10に具備されることとなる。本発明においては、この駆動制御部10に、各燃料電池スタック6の電極間の電圧をモニタする機能を具備させておくこともできる。このようにすれば、燃料電池スタック6の駆動が適正か否かを判断することができ、その異常を検出することができる。より具体的には、種々の事情により一部の燃料電池スタック6が損傷した場合には、水素ガスが供給されているにもかかわらず、その燃料電池スタック6が駆動されなくなる場合がある。このような場合には、駆動制御部10がこれを検出し、バルブ4を動作させることによって、その燃料電池スタック6への水素ガスの供給を停止させることができる。その結果、たとえば損傷している燃料電池スタック6から水素ガスが漏出するといった事態を適切に回避することができるのである。
【0037】
出力制御部11は、複数対の出力端子19a,19bを有しており、複数の燃料電池スタック6で発生された電力を受け取ってからこの電力を出力端子19a,19bから所望の電力供給先(外部機器)に出力させるためのものである。したがって、複数対の出力端子19a,19bは、各燃料電池スタック6の電極と電気的に接続されている。ただし、この出力制御部11は、後述するように、複数対の出力端子19a,19bに対する複数の燃料電池スタック6の電気的な接続形態を種々に変更可能な電気回路を有している。なお、本発明においては、出力制御部11に出力端子19a,19bが一対のみ具備された構成とすることも可能である。
【0038】
図4は、出力制御部11の電気回路の一部分の構成を示している。同図においては、理解を容易にするために、4つの燃料電池スタック6(6a〜6d)に対応する電気回路の構成を代表的に示している。図示された電気回路12は、4つの燃料電池スタック6(6a〜6d)の各正極69cと各負極69dとが、出力端子19a,19bにそれぞれ並列に接続されている。ただし、互いに隣り合う燃料電池スタック6のそれぞれの負極69dどうしの間には、スイッチS1〜S3が設けられている。3つの燃料電池スタック6(6b〜6d)のそれぞれの正極69cと出力端子19aとの各間にもスイッチS5,S7,S9が設けられている。さらに、3つの燃料電池スタック6(6b〜6d)のそれぞれの正極69cは、スイッチS5,S7,S9に並列なスイッチS4,S6,S8を有する配線を介して負極の出力端子19bに対しても並列に接続可能とされている。
【0039】
上記構成の電気回路12においては、まず図4に示したように、スイッチS1,S2,S3,S5,S7,S9をオンにするとともに、スイッチS4,S6,S8をオフにすると、4つの燃料電池スタック6(6a〜6d)は、互いに並列に接続されて一対の出力端子19a,19bに繋がった状態となる。次いで、図5に示すように、上記とは反対に、スイッチS1,S2,S3,S5,S7,S9をオフにするとともに、スイッチS4,S6,S8をオンにすると、4つの燃料電池スタック6(6a〜6d)は、互いに直列に接続されて一対の出力端子19a,19bに繋がった状態となる。さらに、図6に示すように、スイッチS1,S2,S3をオンにするとともに、他のスイッチS4〜S9をオフにすると、1つの燃料電池スタック6(6a)のみが一対の出力端子19a,19bに接続された状態となる。図7に示すように、スイッチS2,S3,S4をオンにするとともに、他のスイッチS1,S5〜S9をオフにすると、2つの燃料電池スタック6(6a,6b)のみが直列に接続されて一対の出力端子19a,19bに繋がった状態となる。これら以外の燃料電池スタック6の接続配列態様の図示説明は省略するが、この電気回路12においては、上記と同様にしてスイッチS1〜S9のオン・オフを切り替えることにより、3つの燃料電池スタック6のみが直列に接続されて一対の出力端子19a,19bに繋がった構成にすることもできる。上記したスイッチの切り替え動作は、たとえば駆動制御部10または駆動制御部10とは別個に設けられた他の制御機器の制御によりなされるように構成されている。
【0040】
出力制御部11は、上記したような構成の電気回路12が計16個の燃料電池スタック6に対応して設けられた構成を有している。この結果、この出力制御部11においては、計16個の燃料電池スタック6のうちの適宜の個数を並列に接続してそれらで発生される電力を出力端子19a,19bから出力させたり、あるいは適宜の個数の燃料電池スタック6を直列に接続してそれらで発生される電力を出力端子19a,19bから出力させることができるようになっている。
【0041】
次に、上記構成の燃料電池システムAの作用について説明する。
【0042】
まず、図1において、計16個のバルブ4の全てを開にして、各燃料電池スタック6に水素ガスを供給させるとともに、空気供給配管3からは各燃料電池スタック6に空気を供給させると、計16個の燃料電池スタック6の全てを駆動させることができる。したがって、この場合には、それら計16個の燃料電池スタック6のそれぞれから出力制御部11に電力を供給し、この電力を出力制御部11の複数対の出力端子19a,19bから外部機器に対して供給することができる。この場合、出力制御部11の電気回路においては、図4に示したように、複数の燃料電池スタック6を並列に接続させた状態と、図5に示したように複数の燃料電池スタック6を直列に接続させた状態とのいずれをも選択することができる。前者の場合よりも後者の場合の方が出力端子19a,19bに加わる電圧は高い。したがって、この燃料電池システムAにおいては、全ての燃料電池スタック6を駆動させている状態であっても、それらを並列に接続するか直列に接続させるかによって、出力端子19a,19bから出力される電力の電圧値を適宜変更することができる。
【0043】
一方、出力端子19a,19bに接続されている外部機器が多くの電力を必要としなくなる場合がある。このような場合には、計16個の燃料電池スタック6のうち、たとえば図6に示した燃料電池スタック6(6a)に対応するバルブ4を開にするとともに、他の複数の燃料電池スタック6(6b〜6d)に対応する複数のバルブ4を閉にする。すると、燃料電池スタック6(6a)のみが駆動される。他の複数の燃料電池スタック6(6b〜6d)については、水素ガスの供給が停止されることにより、もはや電力を発生させるための化学反応は中断されることとなり、その駆動は停止する。各燃料電池スタック6に対する空気供給はそのまま続行しておけばよい。また、上記のように燃料電池スタック6(6a)のみを駆動させた場合には、出力制御部11の電気回路を、図6に示した構成に切り替える。
【0044】
このようにすると、燃料電池スタック6(6a)のみが一対の出力端子19a,19bに有効に接続されることとなり、1つの燃料電池スタック6(6a)によって発生された電力を外部機器に対して適切に供給することができる。駆動が停止された複数の燃料電池スタック6(6b〜6d)の各電極69c,69d間は、電気を通さない絶縁状態となる。しかし、図6に示した構成にすれば、それらの絶縁状態とは関係なく、駆動状態にある燃料電池スタック6(6a)において発生された電力を一対の出力端子19a,19bから適切に出力させることができる。
【0045】
また、この燃料電池システムAにおいては、次のような使用態様にすることもできる。すなわち、たとえば図7に示す2つの燃料電池スタック6(6a,6b)に対応するバルブ4を開にするとともに、他の2つの燃料電池スタック6(6c,6d)に対応するバルブ4を閉にする。これにより、2つの燃料電池スタック6(6a,6b)を駆動させることができるとともに、他の2つの燃料電池スタック6(6c,6d)を駆動停止状態にすることができる。また、この場合、出力制御部11の電気回路を、同図に示した構成に切り替える。このようにすれば、2つの燃料電池スタック6(6a,6b)で発生された電力を一対の出力端子19a,19bから外部機器に対して適切に出力させることができる。この場合、2つの燃料電池スタック6(6a,6b)は直列に接続されているために、一対の出力端子19a,19bから出力される電力の電圧値は、図6に示した場合の2倍となる。
【0046】
さらに、上記とは異なる態様として、3つの燃料電池システム(6a〜6c)を駆動状態とし、かつこれらを直列に接続して一対の出力端子19a,19bに繋がげることもできる。この場合には、一対の出力端子19a,19bから出力される電力の電圧値は、図6に示した場合の3倍となる。
【0047】
以上の説明から理解されるように、この燃料電池システムAにおいては、複数のバルブ4のいずれを開または閉とするかによって、計16個の燃料電池スタック6の全てを選択的に駆動させることができる。したがって、大きな電力を必要とする場合にも好適に対処できることは勿論のこと、大きな電力を必要としない場合には、それに見合う個数の燃料電池スタック6のみを駆動させることにより、他の燃料電池スタック6が無駄に駆動されないようにすることができる。したがって、必要電力量に見合った効率の良い電力供給が行えることとなる。また、この燃料電池システムAにおいては、駆動される燃料電池スタック6の個数の変更により、および出力制御部11の電気回路の切り替えにより、一対の出力端子19a,19bから出力される電力の電圧値を適宜変更することもできる。したがって、外部機器に必要とされる電圧値またはそれに近い電圧値の電力を容易に得ることができ、便利となる。
【0048】
図8は、上記した燃料電池システムAを搭載した電気自動車の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図8に示す電気自動車Bは、燃料電池システムAに加え、駆動輪Wを駆動させるためのモータM、モータ駆動制御部80、主制御部81、アクセルペダル操作量検出器82、ブレーキペダル操作量検出器83、および電気機器類85を具備して大略構成されている。
【0050】
モータMは、たとえば直流モータである。モータ駆動制御部80は、主制御部81からの指令に基づいてモータMに印加される電圧をたとえばチョッパ制御するための回路を備えている。このモータ駆動制御部80には、燃料電池システムAの出力制御部11から出力される電力がチッパ制御されるモータ駆動用の電力として供給される。電気機器類85には、モータM以外の電気機器類が含まれ、たとえば各種の照明装置、ワイパ駆動用のモータ、エアコン用のコンプレッサおよびその他の装置がある。この電気機器類85にも燃料電池システムAの出力制御部11から電力が供給されるようになっており、この電気機器類85において必要とされる電力量は主制御部81によってモニタされるようになっている。
【0051】
主制御部81は、燃料電池システムAの駆動制御部10やモータ駆動制御部80を制御するものである。この主制御部81は、アクセルペダル操作量検出器82やブレーキペダル操作量検出器83から送信されてくる信号の内容に応じて、モータMの駆動に必要な電圧を算出するとともに、その電圧を得るのに必要とされる電力が燃料電池システムAからモータ駆動制御部80に供給されるように、駆動制御部10および出力制御部11に制御コマンドを送出するように構成されている。また、主制御部81は、電気機器類85において必要とされる電力が燃料電池システムAから電気機器類85に適切に供給されるように、駆動制御部10および出力制御部11を制御する制御コマンドをも送出するように構成されている。駆動制御部10は、これらの制御コマンドに応じて、複数のバルブ4の開閉動作を行い、必要個数の燃料電池スタック6を駆動させるようになっている。また同様に、出力制御部11は、上記制御コマンドに応じて、計16個の燃料電池スタック6の電気的な接続の構成を変更するようになっている。
【0052】
計16個の燃料電池スタック6は、たとえばそれらのうちの一部の燃料電池スタック6がモータMの駆動用電源として、またそれ以外の残余の燃料電池スタック6が電気機器類85用の電源として利用されるようにされている。電気機器類85に供給される電力については、その電圧を変化させる必要がなく、またはその必要性が少ないため、電気機器類85用の電源として利用される複数の燃料電池スタック6については、出力制御部11の出力端子19a,19bに並列接続されたままにしていてもかまわない。
【0053】
上記構成の電気自動車Bにおいては、たとえばアクセルペダル(図示略)の操作量が多い場合には、主制御部81および駆動制御部10の制御により、燃料電池システムAのモータ駆動用の複数の燃料電池スタック6の全部またはそれらの大部分が駆動され、出力制御部11からモータ駆動制御部80には高い電圧の電力が供給される。したがって、モータ駆動制御部80によってモータMに印加される電圧を高くすることが容易となり、モータMの回転トルクを大きくすることが適切に行えることとなる。これに対し、アクセルペダルの操作量が少ない場合やプレーキペダルの操作量が多い場合には、モータ駆動用の複数の燃料電池スタック6のうちの少数部分が駆動されるに過ぎず、出力制御部11からモータ駆動制御部80には低い電圧の電力が供給される。したがって、この場合には、モータ駆動制御部80によってモータMに印加される電圧を低くすることが容易となり、モータMの回転トルクを小さくすることも適切に行えることとなる。
【0054】
一方、電気機器類85において、多くの電力が必要とされる場合には、主制御部81や駆動制御部10の制御により、電気機器類用の複数の燃料電池スタック6の全部またはそれらの大部分が駆動される。反対に、必要電力量が少ない場合には、燃料電池スタック6の駆動個数は少なくされる。
【0055】
このように、この電気自動車Bにおいては、駆動走行用のモータMや電気機器類85のいずれに対しても、必要電圧または必要電力量に見合った電力を燃料電池システムAから供給することができる。そして、複数の燃料電池スタック6が不必要に駆動されないようにし、効率の良い電力供給が行えることとなる。
【0056】
図9および図10は、本発明の他の例を示している。ただし、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一符号を付している。
【0057】
図9に示す構成においては、複数並べられた燃料電池スタック6のうち、互いに隣り合う2つの燃料電池スタック6に対して1つのバルブ4が共用して設けられている。すなわち、同図に示す構成においては、複数の燃料電池スタック6が、2個1組を1ブロックとして、複数のブロックに分けられており、1つのバルブ4を開閉させることによって、2つの燃料電池スタック6への水素ガスの供給またはその停止が同時に行えるようになっている。このように、本発明においては、燃料電池スタック6を2個一組にして、それらに対する水素ガスの供給やその停止が同時に行えるように構成されていてもかまわない。むろん、本発明においては、燃料電池スタック6の3個分を1ブロックとしたり、あるいはそれ以上の個数分を1ブロックとしてもかまわない。ただし、不必要に駆動される燃料電池スタック6の個数を少なくしたり、あるいは複数の燃料電池スタック6によって発生される電力の種類数を多くする観点からすれば、図1に示した実施形態のように、燃料電池スタック6の1個分を1ブロックとすることが好ましい。
【0058】
図10に示す構成においては、複数並べられた燃料電池スタック6を2つのブロックN1,N2に分けている。このような構成であっても、複数の燃料電池スタック6の全部を駆動させる場合と、2つのブロックN1,N2のいずれか一方の燃料電池スタック6のみを駆動させる場合とに切り替えることによって、必要電力量に対応した電力供給が可能である。このように、本発明においては、複数の燃料電池スタック6が少なくとも2以上のブロックに分けられていればよく、そのブロック数の具体的な数値はとくに限定されるものではない。また、燃料電池スタック6の個数も、要は複数であればよく、その具体的な個数も限定されない。
【0059】
本発明に係る燃料電池システムおよび電気自動車の各部の具体的な構成は、上述の実施形態に限定されず、種々に設計変更自在である。
【0060】
たとえば、本発明においては、燃料電池に空気を供給するための配管に対しても複数のバルブを設けて、燃料電池スタックへの水素ガスの供給が停止されるときには、それに連動してその燃料電池スタックへの空気の供給も同時に停止されるように構成してもかまわない。また、燃料電池スタックの駆動およびその停止を行わせるための手段としては、たとえば燃料電池スタックには水素ガスを供給し続ける一方、燃料電池スタックへの空気供給を制御する手段を用いることも可能である。ただし、この場合には、燃料電池スタックに常時供給される水素ガスのイオンが燃料電池スタック内の各部と化学反応を起こし、燃料電池にダメージを与える虞れがあるため、実用には適さない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの一例を示す概略説明図である。
【図2】燃料電池スタックの一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す燃料電池スタックの一部分の断面図である。
【図4】出力制御部の電気回路の一部分の構成を示す説明図である。
【図5】図4に示す電気回路の動作説明図である。
【図6】図4に示す電気回路の動作説明図である。
【図7】図4に示す電気回路の動作説明図である。
【図8】本発明に係る電気自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の他の例を示す要部説明図である。
【図10】本発明の他の例を示す要部説明図である。
【図11】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
A 燃料電池システム
B 電気自動車
2 水素ガス供給配管
3 空気供給配管
4 バルブ
6 燃料電池スタック
10 駆動制御部
11 出力制御部
Claims (5)
- 複数の燃料電池スタックと、これら複数の燃料電池スタックのそれぞれに燃料および酸化剤を供給する手段と、を有している、燃料電池システムであって、
上記複数の燃料電池スタックは、複数のブロックに分けられているとともに、これらのブロック単位ごとに駆動およびその停止が行えるように構成されており、
上記複数の燃料電池スタックから電力を受け取るとともに、その電力を外部機器に出力するための1対または複数対の出力端子を有している出力制御部をさらに備えており、
この出力制御部は、上記複数の燃料電池スタックの一部又は全てを選択して、相互に直列に接続される状態と相互に並列に接続される状態とを切り換えて上記出力端子に対して接続できるように構成されていることを特徴とする、燃料電池システム。 - 上記各燃料電池スタックは、個々に駆動およびその停止が行えるように構成されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
- 上記複数の燃料電池スタックのそれぞれに燃料を供給するための配管を有しており、かつこの配管には、上記ブロック単位ごとに上記複数の燃料電池スタックへの燃料供給とその停止とが切り替え自在な複数のバルブが設けられている、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
- 必要電力量に対応して上記複数のバルブの開閉動作を制御する制御手段をさらに有している、請求項3に記載の燃料電池システム。
- 請求項1ない4のいずれかに記載の燃料電池システムが搭載されていることを特徴とする、電気自動車。
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