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JP3654865B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物および該ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤに関する。さらに詳しくは、経時的なゴム硬度の上昇を防ぎ、長期にわたって良好な雪氷上性能を維持できるゴム組成物および該ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
スノータイヤの開発において、冬期の雪氷上で長期に安定して使用できるタイヤが求められている。たとえば、SBRを主成分としたゴム組成物に軟化剤としてナタネ油を配合することにより、低転がり抵抗、耐ウェットスキッド性を保持しながら、雪氷面上での牽引性、制動性を向上させた技術が知られている(特開平8−302077号公報)。しかしながら、SBRを主成分としているゴム組成物では、tanδピーク温度Tgが−50℃より高くなり、低温時の硬さが上昇するため、充分な雪氷上特性が得られないという問題があった。
【0003】
一方、天然ゴムおよびブタジエンゴムからなるゴム成分にパーム油を配合したゴム組成物が知られている(特開昭58−74731号公報)。しかしながら、パーム油を配合したゴム組成物からなるタイヤでは、低温時でのゴム硬度が高くなり、また、長期にわたって雪氷上性能を維持することもできないという問題があった。
【0004】
このように、雪氷上性能を長期にわたって維持する技術は、未だに充分とはいえない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、経時的なゴム硬度の上昇を防ぎ、長期にわたって良好な雪氷上性能を維持できるゴム組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定の植物油脂を軟化剤として使用すると、低温時のゴム硬度が低く、ゴムから抜けにくい性質を利用して、経時的なゴム硬度の上昇を防ぎ、長期にわたって良好な雪氷上性能が維持できるというものである。
【0007】
すなわち本発明は、(A)天然ゴムおよびブタジエンゴムの含有率が80重量%以上であるジエン系ゴム100重量部に対して、(B)ヨウ素価80以上で、炭素数18以上の不飽和脂肪酸が70重量%以上で構成された植物油脂5〜60重量部を含有してなり、
tanδピーク温度Tgが−50℃以下で、0℃におけるゴム硬度が64以下であるゴム組成物に関する。
【0008】
前記植物油脂(B)は、綿実油、なたね油、コーン油、ごま油、大豆油、サフラワー油、アマニ油からなる群から選択される1種以上の植物油脂であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、該ゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物は、(A)特定のジエン系ゴムと(B)特定の植物油脂とを含有し、tanδピーク温度Tgが−50℃以下で、0℃におけるゴム硬度が64以下である。
【0012】
ジエン系ゴム(A)としては、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群から選択される1種以上を主成分とするジエン系ゴムが用いられる。ここで主成分とは、ジエン系ゴム中に50重量%以上含有されることをいう。前記主成分が50重量%未満の場合、Tgが上昇し、低温時の硬さが上昇するため、雪氷上性能が低下する。よって、低温特性の向上の点から、ジエン系ゴム中における天然ゴムおよびブタジエンゴムの含有量は、80重量%以上であることが好ましい。
【0013】
ジエン系ゴム(A)は、前記主成分以外のゴム成分を含むことができる。たとえば、前記BR以外の低シス1,2ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどを含むことができる。これらは、単独または2種類以上を混合して用いてもよい。混合する場合の混合比にもとくに制限はない。
【0014】
特定の植物油脂(B)としては、ヨウ素価80以上、好ましくは100以上200以下のものを用いる。ヨウ素価が80未満では、ゴムを軟化させる効果が小さく、かつ加硫されたゴムから析出しやすく熱老化した場合のゴム硬度の上昇が大きい。
【0015】
植物油脂(B)は、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分が70重量%以上、好ましくは80重量%以上で構成される。炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分が70重量%以上の場合、添加による軟化効果を得るのとともに、その二重結合が反応するため、ゴムから抜けにくくなり熱老化によるゴム硬度上昇を抑えることができる。逆に70重量%未満の場合、植物油脂の凝固点が上昇するため、ゴムの低温特性を悪化させる。
【0016】
植物油脂中の不飽和脂肪酸の炭素数は、18以上である。不飽和脂肪酸の炭素数が18未満では融点が高くなるため、添加によりゴムの低温特性を悪化させる。
【0017】
このような植物油脂としては、たとえば、オリーブ油、綿実油、なたね油、コーン油、ごま油、大豆油、サフラワー油、アマニ油などがあげられる。なかでも炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分が多いという点で、綿実油、なたね油、コーン油、ごま油、大豆油、サフラワー油、アマニ油の群から選ばれた1種以上の植物油脂であることが好ましく、さらには、なたね油、コーン油、ごま油、大豆油、サフラワー油、アマニ油の群から選ばれた1種以上の植物油脂であることがより好ましい。
【0018】
植物油脂(B)は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して5〜60重量部、好ましくは5〜40重量部配合される。植物油脂の配合量が5重量部未満では添加による低温時のゴム硬度を小さくする効果が十分ではなく、雪氷上性能の向上が見込めない。また、植物油脂の配合量が60重量部をこえるとゴム組成物の粘度が下がりすぎて加工性が低下する。
【0019】
植物油脂(B)は、低温時のゴム硬度を低く抑えることができ、初期の雪氷上性能が良好である。また、ゴムに添加しても加硫されたゴムからは抜けにくく、長期にわたって軟化効果を発揮できるため、良好な雪氷上性能を維持できる。
【0020】
本発明のゴム組成物には、植物油脂(B)以外の軟化剤を配合してもよい。植物油脂(B)以外の軟化剤としては、たとえば、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどの通常ゴム工業で用いられる軟化剤があげられる。
【0021】
本発明のゴム組成物は、tanδピーク温度Tgが−50℃以下、好ましくは−50〜−70℃である。Tgが−50℃よりも高いと低温特性が悪化する。また、Tgが−70℃よりも低いと濡れた路面でのグリップ性が劣る傾向がある。
【0022】
また、本発明のゴム組成物は、0℃におけるゴム硬度が64以下、好ましくは40〜60である。0℃におけるゴム硬度が64よりも高いと充分な雪氷上性能が得られない。また、0℃におけるゴム硬度が40よりも低いとトレッドの剛性が低く、また、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
【0023】
本発明のゴム組成物には、カーボンブラック、シリカ、クレー、水酸化アルミニウムなどの充填剤を併用してもよく、酸化防止剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックスなどの添加剤、また硫黄、加硫促進剤などの加硫剤を適宜配合できる。
【0024】
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分、植物油脂およびそのほかの配合剤を、通常の加工装置、たとえば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて混練りすることにより得られる。
【0025】
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物を、タイヤのトレッドに用いて、通常の方法によって製造される。すなわち、前記ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッド部の形状に押し出し加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧してタイヤを得る。このようにして得られたタイヤは、長期にわたって軟化効果を発揮できるため、良好な雪氷上性能を維持できる。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例では、以下の各原料を用いた。
【0027】
植物油脂
アマニ油:日清製油(株)製のN/Bアマニ油(ヨウ素価191、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分91.5%)
大豆油:日清製油(株)製の大豆白絞油(S)(ヨウ素価131、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分84.9%)
コーン油:日清製油(株)製のコーンサラダ油(ヨウ素価121、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分84.8%)
なたね油:日清製油(株)製の菜種白絞油(S)(ヨウ素価116、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分91.3%)
パーム油:日清製油(株)製の精製パーム油J(S)(ヨウ素価52、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分49.7%)
やし油:日清製油(株)製の精製ヤシ油(S)(ヨウ素価9、炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分7.1%)
【0028】
その他の原料
NR:RSS#1
BR:日本ゼオン(株)製のBR150L
SBR:住友化学(株)製のSBR1502
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN339
シリカ:デグッサ社製のVN3
シランカップリング剤 TESPT:デグッサ社製のSi−69
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のプロセス X−140
ナフテンオイル:ジャパンエナジー社製のプロセス P−200
老化防止剤:精工化学(株)製のオゾノン6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
ステアリン酸:日本油脂(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
【0029】
実施例1〜5および比較例1〜5
表1に示す配合に基づき、各成分をバンバリーミキサーで混練してゴム組成物を調製し、165℃で25分間加硫し、試料を作製した。ついで、その試料を用いて以下の方法により、ゴム物性(tanδピーク温度(Tg)、ゴム硬度)を測定(評価)した。
【0030】
・tanδピーク温度Tg
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.25%および昇温速度2℃/分の条件下で測定したtanδの温度分布曲線からtanδピーク温度を求めた。
【0031】
・室温および0℃のゴム硬度
JIS K6253に準拠したタイプAデュロメータでゴム硬度を測定した。低い方が雪氷上性能は良好となる。なお、室温のゴム硬度は、23℃で測定したゴム硬度のことである。
【0032】
・熱老化後のゴム硬度
85℃のオーブンで14日間熱老化し、室温まで放冷したのちのゴム硬度をJIS K6253に準拠したタイプAデュロメータで測定した。熱老化後のゴム硬度変化が小さい方が、長期間にわたり最初の性能を維持することができる。
【0033】
結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003654865
【0035】
特定の植物油脂を軟化剤として用いていない比較例1は、熱老化後のゴム硬度上昇が大きく、また低温時にはゴム硬度が高くなり好ましくない。同じく比較例2は、室温から低温時(0℃)のゴム硬度上昇は小さいものの、熱老化後のゴム硬度の上昇が大きい。
【0036】
ヨウ素価が小さい植物油脂を用いた比較例3は、熱老化後および低温時のゴム硬度上昇ともに改良されていない。さらに炭素数18以上の不飽和脂肪酸成分が少ない比較例4は低温時のゴム硬度上昇が著しく大きくなり好ましくない。
【0037】
特定の植物油脂を使用しても、天然ゴムおよびブタジエンゴムの含有量が少なく、tanδのピーク温度Tgが−50℃より大きい比較例5も低温時のゴム硬度上昇が大きい。
【0038】
それらに比較し実施例は、特定の植物油脂を使用することにより、ゴムの軟化効果が大きく、熱老化後のゴム硬度上昇も小さく、0℃でのゴム硬度も低く抑えられ、長期間にわたり雪氷上性能が良好なゴム組成物を得ることができている。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、NRおよびBRの含有量が多いゴム成分および軟化剤として特定の植物油脂を使用することにより、経時的なゴム硬度の上昇を防ぎ、長期にわたって良好な雪氷上性能を維持できるゴム組成物が得られる。

Claims (3)

  1. (A)天然ゴムおよびブタジエンゴムの含有率が80重量%以上であるジエン系ゴム100重量部に対して、(B)ヨウ素価80以上で、炭素数18以上の不飽和脂肪酸が70重量%以上で構成された植物油脂5〜60重量部を含有してなり、
    tanδピーク温度Tgが−50℃以下で、0℃におけるゴム硬度が64以下であるゴム組成物。
  2. 植物油脂(B)が綿実油、なたね油、コーン油、ごま油、大豆油、サフラワー油、アマニ油からなる群から選択される1種以上の植物油脂である請求項1記載のゴム組成物。
  3. 請求項1またはに記載のゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤ。
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