JP3654473B2 - 改良された感熱ダイレクト平版原版の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、現像不要で耐刷性に優れた感熱ダイレクト平版原版の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータの普及につれ、版材構成とともに種々の平版の製版方法が提案されている。実用面からは、版下からポジ若しくはネガフィルムを作成して平版印刷原版に焼き付ける方法が一般に行われているが、該フィルムを介することなく版下から直接製版する電子写真版や銀塩写真版、あるいは、電子組版、DTPで編集・作成された印刷画像情報を可視画像化することなく、直接版材にレーザー若しくはサーマルヘッドで印字し製版する、所謂コンピュータ・ツー・プレート(CTP)タイプの平版材が登場するにいたっている。これらはまだ普及していないが、特にCTPタイプは製版工程の合理化と短縮化、材料費節減が可能となることからCTS化が完了した新聞製作等の分野で大いに期待されている。
【0003】
かかるCTP版材としては、感光性、感熱性あるいは電気エネルギーで製版する版材が知られている。感光性タイプの版材は、有機半導体、銀塩+感光性樹脂系、高感度感光性樹脂等の材料を塗布しArレーザー、半導体レーザー等で光照射による印字を行い、引き続き現像して製版される。しかしながら、これらの版材は、その製造装置が大型かつ高価であり、版価格も従来のPS版に比べ割高である。そのため、これらの版材および製版工程は、市場が要求するコスト削減を十分に満足するには至っていないうえに、明室での作業が困難であるため普及するには至っていない。さらに、これらは現像液の廃棄処理の問題も有する。このほか、軽印刷向けに銀塩写真版があるが、耐刷性が低いため、軽印刷や限られた範囲での商業印刷に用いられている。
【0004】
本発明者らは、先行技術が有する版性能、製版装置、製版作業性、あるいは版材や製版、装置のコストの点で商業レベルでの実施上の問題を解決すべく特開平7−001849号公報で改良された感熱ダイレクト平版原版とその製版方法を提供した。しかしながら、該発明においてはマイクロカプセルの構造とバインダーポリマーの構造の組み合わせに応じて、版最表面側のバインダーポリマー厚を管理範囲に収める条件検討が必要であるという煩雑さがあった。また、収率などの観点から、更なる経済性も要求されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のダイレクト型オフセット版材の上記問題点を解決する本発明者らが提案した特徴を維持しながら、その製造に於いて版材の性能発現の安定性を増し、かつ低価格に版材を得ることを目的とするものである。即ち、本発明の目的は、高耐刷性、高寸法精度の平版印刷版が容易に得られる製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記のとおりである。
(1) 熱により画像部に転換する親油性成分を内包するマイクロカプセルと親水性かつ撥インキ性ポリマー及び支持体とから構成される感熱平版印刷原版であって、該親水性かつ撥インキ性ポリマーが、三次元架橋しうる官能基と、上記マイクロカプセル中の親油性成分とカプセルの破壊後化学結合する官能基とを有しており、上記マイクロカプセル中の親油性成分は、カプセルの破壊後上記親水性かつ撥インキ性ポリマーと化学結合する官能基を有している感熱ダイレクト平版原版の製造方法において、支持体上に少なくとも上記マイクロカプセルを含有するMC層を設け、次いで上記親水性かつ撥インキ性ポリマー層を設けることを特徴とする感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
(2) 親水性かつ撥インキ性ポリマー層を形成後、画像描画前に該ポリマー層を三次元架橋することを特徴とする上記1の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
(3) MC層にマイクロカプセルを結合するバインダーポリマーを含有することを特徴とする上記1または2の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
(4) MC層のバインダーポリマーが親水性ポリマーであることを特徴とする上記3の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
(5) MC層のバインダーポリマーが三次元架橋しうる官能基を含有していることを特徴とする上記3または4の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
(6) MC層のバインダーポリマーがMC層のマイクロカプセル中の親油性成分とカプセルの破壊後化学結合する官能基を有しており、該マイクロカプセル中の親油性成分はカプセルの破壊後該バインダーポリマーと化学結合する官能基を有していることを特徴とする上記3、4または5の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
【0007】
本発明に於いて、支持体上に少なくとも熱により画像部に転換する親油性成分を内包するマイクロカプセルを含有するMC層を形成し、次いで親水性かつ撥インキ性ポリマー層を形成するが、該方法によって感熱ダイレクト平版原版を製造することにより、マイクロカプセルの版最表面側に存在する親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みを容易に制御することができる。その結果、感度、非画像部の耐刷性などが安定した感熱平版印刷材料の原版を効率よくかつ安定に製造することができる。
【0008】
本発明を詳細に説明する。
本発明に於いて、MC層にはマイクロカプセルを分散、固定するバインダーポリマーを含有することが好ましい。MC層にバインダーポリマーを含有することによりマイクロカプセルが固定され耐刷性が向上する。また、バインダーポリマーが親水性である場合は、親水性かつ撥インキ性ポリマー層の均一性を容易に保つことができことから、より好ましい。
【0009】
また、MC層のバインダーポリマーが三次元架橋しうる官能基を有している場合や、MC層のバインダーポリマーがマイクロカプセル中の親油性成分とカプセルの破壊後化学結合する官能基を有し、一方、マイクロカプセル中の親油性成分がカプセルの破壊後該バインダーポリマーと化学結合する官能基を有している場合は、耐刷性が更に向上し、高い耐刷性能が要求される印刷分野に供することができ、特に好ましい。
【0010】
本発明の製造方法によって製造される感熱ダイレクト平版原版において、親水性かつ撥インキ性ポリマー層は、インキを撥き非画像部を構成するが、印刷時には三次元架橋構造を有していることが必要である。三次元架橋構造とすることで、親水性かつ撥インキ性ポリマー層は、湿し水で膨潤することなく、機械的物性やMC層との接着強度を維持し、高い耐刷性を示すことができる。三次元架橋構造は製版前に形成されていても、印字と同時或いは印字後に形成されてもよい。取扱い時の傷付け防止、およびサーマルヘッドで印字する場合の熱溶融した構成成分のサーマルヘッドへの付着を防止する観点からは、製版前に三次元架橋構造を形成しているのが好ましいが、製版前に該ポリマー層が三次元架橋構造をとっていないものも、平版原版として用いることができる。
【0011】
本発明でいう三次元架橋しうる官能基を有するとは、ポリマー主鎖または側鎖に化学結合をすることにより、網目構造を形成できる官能基を有すること、かつ/または、架橋剤を介して化学結合し、網目構造を形成できる官能基を有することを表す。
本発明でいう三次元架橋しうる官能基を有する親水性かつ撥インキ性ポリマーとは、炭素−炭素結合から構成されたポリマーに側鎖として、カルボキシル基、アミノ基、リン酸基、スルフォン酸基、またはこれらの塩、水酸基、アミド基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種類以上かつ複数個含有する親水性のポリマー、または炭素原子、炭素−炭素結合の何れかが、少なくとも一種以上の酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子で連結されたポリマー若しくはその側鎖に、カルボキシル基、アミノ基、リン酸基、スルフォン酸基、またはこれらの塩、水酸基、アミド基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種類以上かつ複数個含有する親水性のポリマーに、具体的には、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系或いはその複合系等の親水性のポリマーに、後述する方法で架橋性反応基を導入したものまたは親水性官能基の一部を架橋性官能基として用いたものである。
【0012】
本発明において用いられる親水性かつ撥インキ性ポリマーとしては、セグメントの側鎖に水酸基、カルボキシル基またはそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン塩、アミノ基またはそのハロゲン化水素塩、スルホン酸基またはそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン塩、アミド基のいずれかをまたはこれらを組み合わせたものを繰り返し有するもの、さらにこれらの親水性官能基と主鎖セグメントの一部にポリオキシエチレン基を重ね有するものは親水性が高く好ましい。上記の親水性官能基の親水性かつ撥インキ性ポリマー中の割合は、前述の主鎖セグメントの種類と使用する親水性官能基の種類により、それぞれの試料について次に記載する方法で実験的に適宜求めていけばよい。すなわち、本発明の親水性かつ撥インキ性ポリマーの親水性は、支持体上に親水性かつ撥インキ性ポリマー層を設け、架橋し、実施例に記載する印刷試験を行い、印刷用紙へのインキの付着の有無、あるいは、印刷前後の非画像部の用紙の反射濃度差(例えば、大日本スクリーン製造(株)製、反射濃度計DM400で測定)で評価するか、水−ケロシンを用いた水中油滴法接触角測定法(例えば、協和界面科学製接触角計、型式CA−A)でケロシンが試料に付着するか否かで評価する。前者の方法で評価する場合、肉眼で観察し、インキ汚れが認めらなければ可、認められれば不可とするか、印刷後の非画像部の用紙反射濃度と印刷前の用紙反射濃度との差が0.02以下を可、0.02を越える場合を不可とする。後者の方法で評価する場合、新聞印刷のように低粘度インキを使用する印刷版向けには、試料の該接触角が約150度より大きいことが必要であり、さらには160度以上が好ましい。印刷前に練ってから使用する高粘度インキを使用する印刷版向けには、約135度より大きいことが必要である。
【0013】
次に本発明の三次元架橋しうる親水性かつ撥インキ性ポリマーの具体例を挙げる。
(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属、アミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属、アミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属、アミン塩、ビニルスルフォン酸若しくはそのアルカリ金属、アミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属、アミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属、アミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩等の水酸基、カルボキシル基あるいはその塩、スルフォン酸基あるいはその塩、リン酸あるいはその塩、アミド基、アミノ基、エーテル基といった親水性基を有する親水性モノマーの中から少なくとも一種を用いて親水性ホモ若しくはコポリマーを合成する。
【0014】
次に、これらの親水性ポリマー中に水酸基、カルボキシル基、アミノ基或いはその塩、エポキシ基といった官能基を含有する場合は、これらの官能基を利用し、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等のエチレン付加重合性不飽和基或いはシンナモイル基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基,p−フェニレンジアクリレート基等の環形成基を導入した不飽和基含有ポリマーを得る。これに、必要により、該不飽和基と共重合し得る単官能、多官能モノマーと後述の重合開始剤と後述の他の成分とを加え、水、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン類、ジエチレングリコールジエチルエテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン、ジエチレングリコールといったエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル類、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素、n−ヘキサン、デカリンといった脂肪族炭化水素、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、アセトニトリル或いはこれらの混合溶剤に溶解または分散し、ドープを調整する。これをMC層上に設け乾燥後或いは乾燥を兼ねて三次元架橋させる。
【0015】
親水性かつ撥インキ性ポリマー中に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルフォン酸基といった活性水素を含有する場合は、イソシアネート化合物或いはブロックポリイソシアネート化合物および後述の他の成分と共に上記の溶剤中に添加しドープを調合しMC層上に塗布し乾燥後或いは乾燥を兼ねて反応させ三次元架橋させる。この場合の溶剤として活性水素化合物を用いる場合は、イソシアネート化合物との反応を温度、濃度などで制御する必要がある。
【0016】
親水性かつ撥インキ性ポリマーの共重合成分にグリシジル(メタ)アクリレトなどのグリシジル基、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマーを併用することができる。グリシジル基を有する場合は、架橋剤として、1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸といったα,ω−アルカン若しくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、α,ω−ビス−(3−アミノプロピル)−ポリエチレングリコルエーテル等のポリアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のオリゴアルキレンまたはポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリストール、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物を用い、これらとの開環反応を利用して三次元架橋出来る。
【0017】
カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基を有する場合は、架橋剤として、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物を用い、エポキシ開環反応等を利用して三次元架橋することが出来る。
【0018】
セルロース誘導体などの多糖類やポリビニルアルコールあるいはその部分鹸化物、グリシドールホモ若しくはコポリマー若しくはこれらをベースとした場合は、これらが含有する水酸基を利用し、前述の架橋反応し得る官能基を導入し、前述の方法で三次元架橋構造をもたらすことが出来る。
ポリオキシエチレングリコール等の水酸基またはアミノ基をポリマー末端に含有するポリオールあるいはポリアミンと、後述する2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートとから合成した親水性ポリウレタン前駆体に、エチレン付加重合性不飽和基あるいは環形成基を導入したポリマーを用い前述の方法で三次元架橋できる。
【0019】
合成された親水性ポリウレタン前駆体が、イソシアネート基末端を有する場合は、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリリルアミド、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、桂皮アルコール等の活性水素を有する化合物と、または、水酸基あるいはアミノ基末端を有する場合は、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどと反応させる。
【0020】
多塩基酸とポリオールや多塩基酸とポリアミンとを塗布後、加熱により三次元架橋化させたり、カゼイン、グルー、ゼラチン等の水溶性コロイド形成化合物を用い加熱により親水性かつ撥インキ性ポリマー層を三次元架橋させて網目構造を形成してもよい。
さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコールといった水酸基含有モノマーやアリルアミンから合成したホモもしくはコポリマー、部分鹸化ポリビニルアルコール、セルロース誘導体といった多糖類、グリシドールホモ若しくはコポリマー等の、水酸基、アミノ基含有親水性ポリマーと一分子中に二個以上の酸無水基を有する多塩基酸無水物との反応を用い親水性かつ撥インキ性ポリマー層を三次元架橋させて網目構造を形成する方法もある。
【0021】
多塩基酸無水物としては、エチレングリコール−ビス−アンヒドロトリメリテート、グリセロール−トリス−アンヒドロトリメリテート、1,3,3a,4,5,9b ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカル酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等を例示できる。
【0022】
末端にイソシアネート基を残したポリウレタンとポリアミン或いはポリオール等の活性水素含有化合物と後述の他の成分とを溶剤中に溶解若しくは分散させ支持体に塗布して溶剤を除去した後、マイクロカプセルが破壊しない温度でキュアリングし三次元架橋させることも出来る。この場合、親水性はポリウレタン若しくは活性水素含有化合物のいずれか若しくは両方のセグメント、側鎖に親水性官能基を導入することにより付与すればよい。親水性を発現するセグメント、官能基としては上記記載の中から適宜選択すればよい。
【0023】
ポリウレタンおよびポリウレタン前駆体の原料として使用することの出来るポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が例示できる。
【0024】
塗布工程前後のハンドリング時、イソシアネート基が変化するのを防ぐことを目的に、イソシアネート基を公知の方法でブロック化(マスク化)しておくのが好ましい場合もある。たとえば、岩田敬治著「プラスチック材料講座▲2▼ポリウレタン樹脂」日刊工業新聞社刊(1974)、頁51−52、岩田敬治著「ポリウレタン樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(1987)、頁98、419、423、499、等に従い、酸性亜硫酸ナトリウム、芳香族2級アミン、3級アルコール、アミド、フェノール、ラクタム、複素環化合物、ケトオキシム等が使用できる。イソシアネート再生温度が低温であって親水性のものが好ましく、例えば酸性亜硫酸ナトリウムがあげられる。
【0025】
前述の非ブロック化或いはブロック化ポリイソシアネートの何れかに付加重合性不飽和基を導入し、架橋の強化や親油性成分との反応に利用してもよい。
本発明の親水性かつ撥インキ性ポリマー層およびMC層のバインダーポリマーは必要に応じ、後述する種々のその他の成分を含んでよい。
架橋間平均分子量等架橋度の程度は、使用するセグメントの種類、会合性官能基の種類と量等により異なるが、要求される耐刷性に応じ決めていけばよい。通常、架橋間平均分子量は500〜5万の範囲で設定される。500より短いとかえって脆くなる傾向があり、5万より長いと湿し水で膨潤し耐刷性が損なわれるので好ましくない場合もある。耐刷性、親水性のバランス上、800〜3万さらには1000〜1万程度が実用的である。本発明の親水性かつ撥インキ性ポリマー層およびMC層のバインダーポリマーには、下記の単官能モノマー、多官能モノマーを併用させてもよい。
【0026】
具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊(1989)、加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会(1985)、赤松清監修「新・感光性樹脂の実際技術」シーエムシー、頁102−145、(1987)等に記載されているN,N’−メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、パラスチレンスルホン酸とその塩、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量600)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(PPG数平均分子量400)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパンまたはそのアクリレート体、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチハドロジェンサクシネート、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートまたはそのメタクリル体、グリセリンモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはそのメタクリル体、N−フェニルマレイミド、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、N−ビニルカルバゾール、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素等がある。
本発明の親水性かつ撥インキ性ポリマーは、マイクロカプセル中の親油性成分と化学結合する官能基を有している必要がある。両者が化学結合することによって、高い耐刷性が得られる。耐刷性を向上させるためには、該化学結合が三次元架橋構造をとることが好ましい。マイクロカプセル中の親油性成分と親水性かつ撥インキ性ポリマーとを反応させるためには、後述する親油性成分の反応性官能基に合わせ、それと反応する官能基を親水性かつ撥インキ性ポリマーの共重合モノマー中に導入するか、ポリマー合成後導入すればよい。反応速度の速い反応が好ましく、例えば、不飽和基の付加重合反応、イソシアネート基と活性水素との反応であるウレタン化反応、尿素化反応、アミノ基とエポキシ基との反応が適用出来る。この他、カルボキシル基、水酸基とエポキシ基の反応、アミノ基と(メタ)アクリロイル基のマイケル付加反応、酸無水基と水酸基、アミノ基、イミノ基との反応等の開環付加反応や不飽和基とチオールとの付加反応等も使用出来る。
【0027】
また、本発明に於いては、親水性かつ撥インキ性ポリマーを三次元架橋させるための官能基とマイクロカプセル中の親油性成分と親水性かつ撥インキ性ポリマーとを反応させるための官能基とは、同一の構造であっても構わない。この場合は、架橋剤の濃度や反応時間などにより反応度を制御して取り扱えばよい。
親水性かつ撥インキ性ポリマーの三次元架橋反応をエチレン付加重合性不飽和基を用いて行うときは、公知の光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等の光重合開始剤若しくは熱重合開始剤を用いることが反応効率上好ましい。
【0028】
光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−[ 4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロライド、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。これらの中から、製造工程で用いる光源の波長領域に吸収を持ち、親水性かつ撥インキ性ポリマー層のドープを調合する際使用する溶媒に溶解若しくは分散するものを適宜選択すればよい。通常、使用する溶媒に溶解するものが反応効率が高く好ましい。
【0029】
光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等がある。この開始剤を用いるときは、架橋反応種としてエポキシ基も併用できる。前記のエポキシ基含有化合物を架橋剤または親水性かつ撥インキ性ポリマーとして用いてもよいし、親水性かつ撥インキ性ポリマーにエポキシ基を導入してもよい。親水性かつ撥インキ性ポリマーに含有される官能基の光二量化反応によって三次元架橋させる場合は、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン等、該反応に一般的によく知られた各種増感剤も使用できる。
【0030】
上記以外にも、徳丸克巳他著「増感剤」、2章、4章、講談社刊(1987)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊)、頁62−147(1989)、ファインケミカル、Vol.20 No4、p.16(1991)に記載されている公知の重合開始剤も使用できる。
光重合開始剤や光二量化反応の増感剤などの添加量は、親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成用ドープ中の溶媒を除いた有効成分に対し、0.01〜20重量%の範囲で使用できる。0.01重量%より少ないと光重合開始剤や光二量化反応の増感剤など効果が発揮されず、20重量%より多いと、活性光線の光重合開始剤や光二量化反応の増感剤などによる自己吸収のため内部への光の到達が不良となり所望する耐刷力を発揮することが出来なくなることがある。実用的には0.1〜10重量%の範囲で開始剤としての効果と非画像部の地汚れとのバランスで組成に応じて決定するのが好ましい。
【0031】
照射光源としては、活性光線の種類については公知の光源が使用でき、光重合開始剤や光二量化反応の増感剤などまたは併用する該重合開始剤用増感剤の波長特性に合わせ選択すればよい。具体例として、ケミカルランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、殺菌線ランプ、メタルハライドランプ等々がある。照射光源からの熱によりカプセル破壊の恐れがある場合、冷却しながら照射する必要がある。
【0032】
熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミヂン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[ 2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン] ジハイドロクロライド、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等のアゾ化合物、過酸化物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。使用に際しては、マイクロカプセルを破壊する温度或いは親油性成分の熱重合反応開始剤として使用する後述の熱重合開始剤の分解温度の低い方よりさらに低温で反応させなければならない。従って、光重合法に比べ低温で親水性かつ撥インキ性ポリマー層のドープ調合、塗布を行う必要がある。熱重合開始剤の使用量は、ドープ溶媒を除いた成分に対し、0.01〜10重量%の範囲がよい。0.01重量%より少ないと硬化時間が長くなりすぎ、10重量%より多いとドープ調合中に生じる熱重合開始剤の分解によりゲル化が起こることがある。効果と取扱い性を考慮すると、好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0033】
本発明のマイクロカプセル中の親油性成分は、上記親水性かつ撥インキ性ポリマーと反応する官能基を有している。熱印字によりカプセル外に放出された親油性成分が親水性かつ撥インキ性ポリマーと反応し化学結合が形成された場合は耐刷性が高い画像部を形成できる。耐刷性をさらに向上させるためには、画像部が架橋構造をとることが好ましい。
【0034】
親水性かつ撥インキ性ポリマーと親油性成分との反応は、反応速度の速い反応、例えば、水酸基もしくはカルボキシル基、あるいはアミノ基を有する親水性かつ撥インキ性ポリマーとイソシアネート基を有する親油性成分とのウレタン化反応、あるいは尿素化反応、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を有する親水性かつ撥インキ性ポリマーとエポキシ基を有する親油性成分との反応、あるいはエチレン付加重合性二重結合の付加重合反応、不飽和基とアミノ基のマイケル付加反応が好ましい。酸無水基を有する親水性かつ撥インキ性ポリマーと水酸基、アミノ基またはイミノ基を有する親油性成分との開環付加反応や不飽和基とチオールとの付加反応でもよい。耐刷性を向上させるためには、これらの反応で形成される化学結合は三次元架橋構造をとることが好ましい。
【0035】
本発明の親油性成分としては、例えばスチレン、ジビニルベンゼン、N,N’−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N’−ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(PPG数平均分子量400)、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはそのメタクリル体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルモノマー類;プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシド化合物;フェニルイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート、3,3’−ジクロロビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等のイソシアネート;トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートあるいは2,6−トリレンジイソシアネートといった上記ジイソシアネートとの1対3モル付加体等のポリイソシアネート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのオリゴマーまたはポリマーなどのイソシアネート化合物等が使用できる。また、既存のPS版の画像成分として使用されている架橋前の公知の、(メタ)アクリルコポリマーやウレタンアクリレート、ジアゾ樹脂も使用出来る。更には、前記のポリイソシアネート化合物中の一部のイソシアネート基と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ若しくはジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等の水酸基、カルボキシル基等の活性水素含有単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物との付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、前記の多官能グリシジル化合物中の一部のグリシジル基と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ若しくはジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等の水酸基、カルボキシル基等の活性水素含有単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物との付加体、前記の多塩基酸無水物中の一部の酸無水基と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ若しくはジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単官能または多官能(メタ)アクリレート化合物との付加体等が例示できる。
【0036】
これらの中で、イソシアネート基を含有する化合物を用いる際は、マイクロカプセル化時に水を分散媒として用いた場合、水との反応性が高いため、例えばパラフィンワックス、カルナウバワックスなどのワックス類、ヒマシ油、アマニ油等の鉱油およびジメチルシリコーン等のオイル類、ジエチルケトン、フェニルエチルケトン、ジフェニルケトン、メチルエチルケトンといったケトン類、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルといったエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル類、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素、n−ヘキサン、デカリンといった脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルムといったハロゲン化炭化水素等の溶剤類或いはこれらの混合溶剤など非水溶性化合物などで希釈するなどして反応を制御する必要がある場合がある。
【0037】
また、イソシアネート基含有化合物を内包物としウレタン/ウレア壁を持つマイクロカプセルを作製する場合のように、内包物中の反応性基と壁形成用に油性成分に添加される反応性化合物が似通った反応性を有する場合や、内包物と壁形成材料が同一の場合は、マイクロカプセル化時に分散媒側に添加される反応対の濃度などにより反応を制御し、壁厚などをコントロールする必要がある場合がある。
【0038】
親油性成分中に含まれるエチレン付加重合性モノマー、オリゴマーの二重結合反応を利用して、親油性成分と親水性かつ撥インキ性ポリマーとを化学反応させる場合、あるいは前記のごとく、耐刷性を向上させるために親油性成分自身を架橋反応させる場合は、以下の熱重合開始剤を用いることができる。熱重合開始剤は、50℃以下で貯蔵しても安定であるものが好ましく、60℃以下で安定であれば、さらに好ましい。
【0039】
たとえば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]などの過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
【0040】
熱重合開始剤添加の方法としては、これをマイクロカプセル化して親油性成分のマイクロカプセル中にカプセル−イン−カプセルの形で用いても良く、親水性かつ撥インキ性ポリマー層やMC層のバインダーポリマー中にそのまま分散させてもよい。親油性成分の硬化は、重合反応だけでなく、親油性成分と親水性かつ撥インキ性ポリマーやMC層のバインダーポリマーとの化学結合の際の反応を利用することもできる。
【0041】
熱重合開始剤の使用量は、親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成用ドープやMC層のバインダーポリマー用ドープの溶媒を除いた成分に対し、0.01〜10重量%の範囲がよい。0.01重量%より少ないと硬化時間が長くなりすぎ、10重量%より多いとドープ調合中に生じる熱重合開始剤の分解によりゲル化が起こることがある。効果と取扱い性を考慮すると、好ましくは、0.1〜5重量%である。また、マイクロカプセル中にカプセル−イン−カプセルの形で添加する場合は、熱重合開始剤の使用量は、通常、カプセル−イン−カプセルの総重量に対し、0.01〜10重量%の範囲で用いられる。
【0042】
本発明では熱印字後に形成される画像部の親油性成分の反応度を高める目的で光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等の光重合開始剤を使用することができる。該開始剤は親油性成分中に含まれる光反応性の官能基の反応を活性光線照射により進行させる。熱印字前に活性光線を照射してもマイクロカプセルが破壊していないので画像部が形成されておらず、上記目的を達成出来ず意味がない。熱印字後に活性光線を照射することで画像部の親油性成分の反応度を高めることができ、画像部の耐刷性を大幅に向上することが可能となる。
【0043】
かかる光ラジカル重合開始剤としては、次の公知の化合物が例示出来る。ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−プロピオフェノン、ベンゾインアルキルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、
ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィド、ジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイト、キノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン メソクロライド等がある。
【0044】
さらに光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等がある。上記以外にも多くの公知の重合開始剤が使用出来、それらは例えば、徳丸克巳他著「増感剤」講談社刊(1987)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊(1989)等の成書、ファインケミカル、Vol.20 No4、16(1991)等の雑誌に記載されている。
【0045】
光重合開始剤の添加量は支持体上に形成された塗膜の乾燥後の成分に対し0.01〜20重量%の範囲で使用できる。0.01重量%より少ないと光重合開始剤の効果が発揮されない、また20重量%より多いと、活性光線の開始剤による自己吸収のため内部への光の到達が不良となり所望する耐刷力を発揮することが出来なくなるケースが見られたので好ましくない。実用的には0.1〜10重量%の範囲で開始剤としての効果と非画像部の地汚れとのバランスで組成に応じて決定するのが好ましい。
【0046】
該光重合開始剤は親油性成分と同一のマイクロカプセル中に包含させるか、親水性かつ撥インキ性ポリマー層やMC層のバインダーポリマー中に分散させるか何れでもよいが、効率良く光反応をさせるには親油性成分と同一のマイクロカプセル中に包含させるのが好ましい。もし、包含させることで親油性成分の貯蔵安定性が低下する場合は、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、パラメトキシフェノール等の公知のフェノール系熱安定剤を併用するか、親油性成分を包むマイクロカプセルより小さい径のマイクロカプセルに一旦包み、親油性成分のマイクロカプセル化時に親油性成分と一緒に混合しカプセル−イン−カプセルの形態で使用することができる。
【0047】
もし、親水性かつ撥インキ性ポリマー層やMC層のバインダーポリマーの三次元架橋反応を光重合によって行い、かつ、親油性成分を包含するマイクロカプセル中に熱印字後の光反応を行うための上記光重合開始剤を共存させる場合は、前者の光重合開始剤の励起波長と後者の光重合開始剤の励起波長と異ならせ、さらに、照射光源の使用する発光波長もそれぞれ異ならせ、親水性かつ撥インキ性ポリマー層やMC層のバインダーポリマーの光架橋反応を行っている際、親油性成分がマイクロカプセル中で硬化するのを避けなければならない。使用する波長を異ならせるには、発光波長分布の異なる光源をそれぞれ使用するか、バンドパスフィルターの組み合わせにより異なる波長を取り出せばよい。
【0048】
親油性成分のカプセル化は、例えば経営開発センター経営教育部編「マイクロカプセル化の新技術とその用途開発・応用実例」経営開発センター出版部刊(1978)記載の公知の方法に従う。たとえば、互いに溶解しあわない二つの液体の界面で、予め各々の液体に添加してあるリアクタントを重縮合や重付加によって反応させ、両溶媒に不要なポリマー膜を形成させ、カプセル膜を作る界面重合法、芯物質の内側または外側のどちらか一方のみからリアクタントを供給し、芯物質の周囲にポリマー壁を形成させるin−situ法、親水性ポリマー溶液中に分散させた疎水性物質の表面に、親水性ポリマーを相分離させ、カプセル膜を作るコンプレックスコアセルベート法、有機溶液系からの相分離法等により行うことができる。中でも、界面重合法、in−situ法が比較的多くの芯物質のカプセル化が行いやすく好ましい。親油性成分とは異なる材料でカプセル化してもよい。
【0049】
本発明でいうカプセル化は、室温で固体のポリイソシアネート化合物を微粉末化し、該微粉末表面を前記ブロック化剤等でブロック化することにより周囲の活性水素と室温で反応出来ないようにする方法や室温で固体のポリイソシアネート化合物を微粉末化し、表面を水、多官能アルコール、多官能アミンと反応させて壁を形成する方法なども含む。何れにしろ印字の際の熱でカプセル内の親油性成分がカプセル外に放出され、最初のカプセルの形態が破壊されることが必要である。例えば、カプセル壁の膨張、圧縮、溶融、化学分解により、親油成分が放出されたり、カプセルの該壁材が膨張することにより密度が低下し親油性成分が壁材層を透過して放出される場合等がある。
【0050】
カプセル外殻表面は、特に限定されるものではないが、その分散媒に分散し易くかつ溶解しない材料であることが好ましい。マイクロカプセルのサイズは、平均10μm以下、高解像力の用途には平均5μm以下が好ましい。カプセル全体に対する親油性成分の割合が低すぎると画像形成効率が低下するので平均0.01μm以上であることが好ましい。
【0051】
本発明において、他の成分として、カプセルの熱破壊促進、親油性成分と該成分と反応する官能基を有する反応物質との反応促進、親油性成分と親水性かつ撥インキ性ポリマーやMC層のバインダーポリマーとの反応促進を目的としてさらに、増感剤を添加することが出来る。添加により、印字感度の高感度化、耐刷性の向上および高速製版が可能となる。かかる増感剤として、例えばニトロセルロース等の自己酸化性物質、置換されたシクロプロパン、キュバン等高歪み化合物がある。
【0052】
親油性成分の重合反応触媒も増感剤として使用できる。例えば、親油性成分の反応がイソシアネート基の反応であれば、ジブチルチンジラウレート、塩化第二スズ、アミン化合物等のウレタン化触媒、エポキシ基の開環反応であれば第四級アンモニウム塩等の開環触媒が例示出来る。増感剤は、MC層のドープ調合時に添加する方法、親油性成分のマイクロカプセル化の際に同時に包含させる方法、あるいは支持体とMC層の中間にバインダー樹脂と一緒に設ける方法、親水性かつ撥インキ性ポリマー層に混合する方法がある。その使用量は用いる増感剤の効果、非画像部の非画像性、耐刷性、といった観点から決めればよい。
【0053】
レーザー印字の場合、用いるレーザーの発光波長領域に吸収帯を有する光−熱変換物質をさらに使用することも出来る。かかる物質としては、例えば、松岡 賢著「JOEM ハンドブック2 アブソープション スペクトル オブ ダイズ フォー ダイオード レイザーズ」ぶんしん出版(1990)、シーエムシー編集部「90年代 機能性色素の開発と市場動向」シーエムシー(1990)第2章2.3に記載されているポリメチン系色素(シアニン色素)、フタロシアニン系色素、ジチオール金属錯塩系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、トリフェニルメタン系色素、アミニウム、ジインモニウム系色素、アゾ系分散染料、インドアニリン金属錯体色素、分子間型CT色素等の染料、顔料および色素がある。
【0054】
具体的には、N−[4−[5−(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−2,4−ペンタジエニリデン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N,N−ジメチルアンモニウムアセテート、N−[4−[5−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−フェニル−2−ペンテン−4−イン−1−イリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N,N−ジメチルアンモニウム パークロレート、N,N−ビス(4−ジブチルアミノフェニル)−N−[4−[N,N−ビス(4−ジブチルアミノフェニル)アミノ]フェニル]−アミニウム ヘキサフルオロアンチモネート、5−アミノ−2,3−ジシアノ−8−(4−エトキシフェニルアミノ)−1,4−ナフトキノン、N’−シアノ−N−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−1,4−ナフトキノンジイミン、4,11−ジアミノ−2−(3−メトキシブチル)−1−オキソ−3−チオキソピロロ[3,4−b]アントラセン−5,10−ジオン、5,16(5H,16H)−ジアザ−2−ブチルアミノ−10,11−ジチアジナフト[2,3−a:2’3’−c]−ナフタレン−1,4−ジオン、ビス(ジクロロベンゼン−1,2−ジチオール)ニッケル(2:1)テトラブチルアンモニウム、テトラクロロフタロシアニン アルミニウムクロライド、ポリビニルカルバゾール−2,3−ジシアノ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン錯体、N,N−ジエチル−N−[4−[1,5,5−トリス(4−ジエチルアミノフェニル)−2,4−ペンタジエニリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]アンモニウムパークロレート等が例示出来る。
マイクロカプセルの熱破壊を促進する目的で、親油性成分と共に加熱されると気化または体積膨張しやすい物質をカプセル中に親油性成分と共に入れることができる。例えば、シクロヘキサン、ジイソプロピルエーテル、エチルアセテート、エチルメチルケトン、テトラハイドロフラン、t−ブタノール、イソプロパノール、1,1,1−トリクロロエタンといった、沸点が、室温より十分高く、60〜100℃付近の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトン化合物である。
【0055】
印字部のみが発色する公知の感熱色素を親油性成分と併用し、印字部の可視化を図ると検版を行ないやすいので好ましい。例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランとビスフェノールAなどのロイコ染料および粉砕した顕色剤の組合せ等がある。大河原信他編「色素ハンドブック」講談社刊(1986)等の成書に開示されている感熱色素が使用できる。
【0056】
親水性かつ撥インキ性のポリマーやMC層のバインダーポリマーとは別に、親油性成分の架橋度を高めるために親油性成分と反応する官能基を有する反応性物質を用いることができる。その添加量は、親水性かつ撥インキ性ポリマー層の撥インキ性、親水性の程度に従い、地汚れを引き起こさない程度の量とする。かかる反応性物質として、例えば、親油性成分の架橋反応がウレタン生成なら水酸基、アミノ基、カルボキシル基を複数個有する化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリアミン、ポリアクリル酸、トリメチロールプロパン等が例示できる。
【0057】
親水性の調整を目的として、使用するMC層のバインダーポリマー、親油性成分および親水性かつ撥インキ性ポリマーと反応しない非反応性親水性ポリマーを耐刷性を損なわない範囲で親水性かつ撥インキ性ポリマー層やMC層のバインダーポリマーに添加してもよい。
サーマルヘッドで印字する場合、加熱により生ずる溶融物がサーマルヘッドに付着するのを防止する目的で溶融物の吸収剤として、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、カオリン、焼成カオリン、加水ハロイサイト、アルミナゾル、ケイソウ土、タルク等公知の化合物を添加することが出来る。
【0058】
さらに、版の滑り性向上、版と版とを重ねたときの密着防止を兼ね、ステアリン酸、ミリスチン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛等の常温固体の滑剤を親水性かつ撥インキ性ポリマー層に少量添加することが出来る。
本発明に使用されるMC層のバインダーポリマーは、分子量500以上、好ましくは1000以上の高分子材料であればいかなる物質であっても構わない。しかしながら、親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成材料として例示したような親水性の化合物を用いた場合は、親水性かつ撥インキ性ポリマー層を形成する際にいわゆるはじきが発生しにくく、親水性かつ撥インキ性ポリマー層を容易に均一に設けることができるため好ましい。また、MC層のバインダーポリマーにおいても親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成材料で例示したような方法で三次元架橋した場合は、印刷時にMC層が膨潤することがなく、特に耐刷性を要求される印刷分野に用いる版を提供する際に好ましい。
【0059】
更に、MC層のバインダーポリマーがマイクロカプセル内に内包された親油性官能基と反応しうる反応基を有した場合は、画像部の耐刷性能の高い版を得る上で好ましく、具体的には親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成材料として例示したような官能基を使用できる。以上のように、MC層のバインダーポリマーの構成としては親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成材料と似通った性能を保有する物質が好ましく用いられるが、親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成材料と同一の組成である必要はない。すなわち、親水性かつ撥インキ性ポリマー層形成材料は印刷時に非画像性能を発現しかつ高い耐刷性能を保有する三次元架橋された撥インキ性のポリマーであることが必須であるのに対し、MC層のバインダーポリマーはその性能を保有する必要はなく、むしろマイクロカプセルを良好に分散し且つ強固につなぎ止めるポリマーであることが必須の要件となる。
【0060】
また、MC層のバインダーポリマーとしては、マイクロカプセル作製時の保護コロイド剤などを用いることもできる。保護コロイド剤に関しては、近藤保他編「マイクロカプセルその機能と応用」(財)日本規格協会刊(1991)等に記載されている公知の物質や本発明者らが特願平08−181937号で示した水溶性アルギン酸またはその誘導体等が例示できる。
【0061】
また、MC層内には親水性かつ撥インキ性ポリマー層の所で例示した開始剤、反応触媒、架橋剤その他の添加剤を適宜使用することができる。
本発明に使用される支持体は、印刷分野に要求される性能とコストを勘案して公知の材料から選択すればよい。多色刷りといった高寸法精度が要求される場合、版胴への装着方式が金属支持体に合わせて出来上がっている印刷機で用いる場合には、アルミ、スチール製等の金属支持体が好ましい。多色印刷せず高耐刷性が要求される場合はポリエステル等のプラスチック支持体、さらに低コストが要求される分野には紙、合成紙、防水樹脂ラミネート或いはコート紙支持体が使用できる。支持体と接触する材料との接着性向上のために支持体自身の表面処理を施したものを使用してもよい。かかる表面処理の例としてアルミシートの場合、各種研摩処理、陽極酸化処理があり、プラスチックシートの場合、コロナ放電処理、ブラスト処理等がある。
【0062】
耐刷力等必要に応じ上記材料を基材とし、その上に接着剤層を設けた支持体を使用することが出来る。一般的に高耐刷性を必要とする場合、接着剤層を設ける。接着剤はMC層成分と使用する基材に合わせ選択・設計する必要がある。山田章三郎監「接着・粘着の事典」朝倉書店刊(1986)、日本接着協会編「接着ハンドブック」日本工業新聞社刊(1980)等に記載のアクリル系、ウレタン系、セルロース系、エポキシ系等接着剤を基材上に設けた支持体が使用できる。更に、本発明者らが特願平07−334866号で提案した平版印刷版用支持体なども例示できる。
【0063】
本発明の感熱ダイレクト平版原版は以下の方法で製造できる。MC層の分散液を前記の成分に応じ選択した溶媒と共に撹拌モーター、ペイントシェーカー、ボールミル、超音波ホモジナイザー、サンドグラインダー等でよく分散し、ドクターブレード法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ディップコート法等で支持体上に設け、必要に応じ乾燥し、必要に応じバインダーポリマーを架橋し、さらに、親水性かつ撥インキ性ポリマーの溶液または分散液を上記のMC層と同様な方法によって重ねて設け、乾燥し、必要に応じ親水性かつ撥インキ性ポリマーやMC層のバインダーポリマーを架橋して感熱ダイレクト平版印刷原版を得る。エチレン付加重合性不飽和基を含有する成分を使用する場合、貯蔵安定性上必要ならMC層成分や親水性かつ撥インキ性ポリマー層成分のドープ中に前記の公知の熱安定剤を0.01〜5%の範囲で添加してもよい。
【0064】
MC層成分や親水性かつ撥インキ性ポリマー層成分のドープ溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン類、ジエチレングリコールジエチルエテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン、ジエチレングリコールといったエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル類、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素、n−ヘキサン、デカリンといった脂肪族炭化水素、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、アセトニトリル或いはこれらの混合溶剤を使用することができる。
【0065】
MC層の厚みは数μm〜100μmの間で任意に設定すればよい。通常は性能とコストの関係から1〜10μmの厚みが好ましい。表面平滑性を高める必要があれば、塗布・乾燥後、若しくはMC層のバインダーポリマーの三次元架橋化反応後にカレンダー処理を行えばよい。特に高度の平滑性が必要なら塗布・乾燥後に行うのが好ましい。
【0066】
MC層ドープ中のマイクロカプセル濃度は特に限定されるものではないが、通常はそのハンドリング性などの観点から0.5重量%から70重量%の範囲で用いられ、更に好ましくは1重量%から50重量%の範囲で用いられる。
また、親水性かつ撥インキ性ポリマー層の塗布厚みは、ドープ濃度によって任意に設定でき、乾燥後にマイクロカプセルの外郭表面から版最表面側までの厚みが0.005μm〜5μmの厚みに収まるようにするのが好ましい。通常は、ドープの濃度は0.05〜30重量%の範囲で用いられる。0.05重量%未満の場合は、MC層上に塗布した場合にはじきが発生し不均一となる場合がある。また、30重量%より高濃度の場合は、粘度が高くなりすぎ取り扱いが困難になる。また、乾燥前のドープの溶媒を含む塗布厚みは、特に限定されないが、通常は0.5〜500μmの範囲で用いられる。
【0067】
マイクロカプセルの外郭表面から版最表面側までの厚みは、用いられる印刷分野及び構成する材料に応じて0.005μm〜5μmの間で設定されるのが好ましい。同一の材料を用いた場合、マイクロカプセルの外郭表面から版最表面側までの厚みが厚いほど耐刷性能が高くなるが、感度が低下する。従って、高感度を要求され耐刷性能がそれほど重要でない印刷分野ではマイクロカプセルの外郭表面から版最表面側までの厚みは薄目の設定とするといった具合である。しかしながら、該ポリマー層厚みが0.005μmより薄い場合は、非画像部の耐刷性能が低くなりすぎ好ましくない。また、5μmより厚い場合は感度が低くなり好ましくない。また、より好ましくは0.01〜2μmの範囲の厚みで用いられ、特に好ましくは0.05〜1μmの範囲である。
【0068】
マイクロカプセルの外郭表面から版最表面側までの厚みは、その厚みによって公知の厚み測定法の中から適宜選択した方法を用い測定できる。すなわち、厚みが薄い場合は超薄切片を作製し透過型電子顕微鏡を用いて測定する方法や断面を作製し走査型電子顕微鏡で測定することができる。また、該層の厚みが厚い場合は、接触式の膜厚計で測定することもできる。蛍光X線分析法やX線光電子分光分析法を用い検量線を利用して厚みを特定する方法によっても厚みは測定できる。さらに、MC層内に親水性かつ撥インキ性ポリマーが流れ込まない場合は、該ポリマー層の塗布重量より厚みを算出することもできる。
【0069】
本発明の感熱平版原版を製版するには、電子組版機、DTP、ワードプロセッサー、パーソナルコンピュータ等で作製・編集された文書・画像をサーマルヘッド、熱モードのレーザーで描画・印字するだけで現像工程は一切行なわず完了する。印字後、カプセルが破壊しない温度で加温(ポストキュアー)若しくは版全面に活性光線照射することにより画像部や非画像部の架橋度を高めることが出来る。後者の方法を実行する場合、親水性かつ撥インキ性ポリマー層やMC層のバインダーポリマー中に前記の光重合開始剤や光カチオン重合開始剤とそれによって反応が進む官能基を有する化合物とを併用するか親油性成分に該官能基を導入することが必要である。該開始剤、官能基を有する化合物は前述のほか、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊(1989)、加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会(1985)等の成書に記載の公知のものを使用しうる。
【0070】
以上のようにして得られた印刷版は、市販のオフセット印刷機にセットし通常の方法で印刷することができる。印刷する際、必要ならば印刷版に通常のエッチング処理を施してから印刷することが出来る。
【0071】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、文中、部と記してあるのは特に断りの無い限り重量部である。
<親水性ポリマーの製造例1[P−1]>
アクリル酸36.0g、あらかじめモレキュラーシーブスで乾燥したN,N−ジメチルフォルムアミド150gの混合溶液を乾燥窒素をバブリングし、撹拌しながら60℃に昇温した。この溶液に2,4−アゾビス(ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略記する。)0.20gを添加し2時間反応した。引き続き乾燥窒素を乾燥空気に切り替え、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール(以下、BHTと略記する。)0.40gを添加し80℃に昇温し4時間撹拌を続けた。その後、撹拌を続けながら60℃まで放冷した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、MOIと略記する。)10.0gとジブチル錫ジラウレート0.1gを添加し3時間反応した。約3時間攪拌したところで赤外分光法におけるイソシアネート基の特性吸収がほぼ無視できるまでに反応が進行した。次いで水酸化ナトリウムでカルボキシル基の80当量%を部分中和し、アセトンを加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄して精製し親水性ポリマー[P−1](NMR法で測定した不飽和基の導入率は8.2当量%。GPCによる数平均分子量:7.5×104 、水−ケロシン系の水中油滴法接触角:160度以上)を得た。
<親水性ポリマーの製造例2[P−2]>
アクリル酸36.0g、トルエン150gの混合溶液を乾燥窒素をバブリングし、撹拌しながら60℃に昇温した。この溶液にADVN0.20gを添加し2時間反応した。得られたポリマーの沈殿物を濾取洗浄を繰り返した後、ポリマー18gを精製水100gに溶解し、次いで水酸化ナトリウムでカルボキシル基の80当量%を部分中和し親水性ポリマー[P−3](GPCによる数平均分子量:6.5×104 、水−ケロシン系の水中油滴法接触角:160度以上)の水溶液を得た。
<親水性ポリマーの製造例3[P−3]>
セパラブルフラスコにアセトン300g、2−スルフォエチルメタクリレート21g、アクリル酸15.8gを仕込み、窒素雰囲気下、45℃に加温し攪拌しているところに、アセトンに溶解したAIBN0.52gを約30分間かけて滴下した。6時間攪拌したところで生成したポリマーを濾過しアセトン洗浄を数回繰り返し、開始剤、モノマーの残存がほぼないことを確認した。このポリマーを真空乾燥し一次ポリマーを得た(GPC法による数平均分子量:16.4×104。元素分析から求めたポリマー中のモノマー組成比率は上記の順に、33/67と概ね仕込みモル比率に合致していた。)。
【0072】
次いで、該一次ポリマー10.8gをトルエン133g、BHT0.012gが既に仕込んであるセパラブルフラスコに計り取り、乾燥空気気流中、攪拌しながら90℃に昇温した。そこにMOI1.6gとジブチル錫ジラウレート0.03gを徐々に滴下した。約9時間攪拌したところで赤外分光法におけるイソシアネート基の特性吸収がほぼ無視できるまでに反応が進行した。分散しているポリマーを濾過しアセトンで数回洗浄し、真空乾燥した(NMR法で測定した不飽和基の導入率は5.6当量%。)。得られたポリマーを水に溶解し、水酸化カリウムでカルボキシル基とスルフォン酸基との60当量%を部分中和し親水性ポリマー[P−3](GPCによるカリウム塩化前の数平均分子量:17.3×104 、水−ケロシン系の水中油滴法接触角:160度以上)を得た。
<親油性成分を内包したマイクロカプセルの製造例1[M−1]>
3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナート10g、近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製 KayasorbCY−10)0.5gをトルエン20gアセトン200g中に溶解、混合した後、乾燥させて得られた固化物を乳鉢で粉砕し、この中に該固化物とほぼ同量の水/エタノール(5.5/2.5重量比)溶液とアルミナボールと加え、ペイントシェーカーで1時間振とう、粉砕しマイクロカプセル化した親油性成分[M−1]を調製した。一次分散粒子の平均サイズは3.0μmであった。
<親油性成分を内包したマイクロカプセルの製造例2[M−2]>
トリレンジイソシアネート3モル/トリメチロールプロパン1モル付加物(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製、25重量%酢酸エチル含有物)1.26g、近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製 KayasorbIR−820B)0.3gをグリシジルメタクリレート7.2g中に均一に溶解させて油性成分を調整した。次いで、精製水120gに、アルギン酸プロピレングリコールエステル(ダックロイドLF、紀文フードケミファ(株)製)2g、ポリエチレングリコール(PEG 400、三洋化成(株)製)0.86gを混合した水相を調整した。続いて、上記油性成分と水相をホモジナイザーを用いて6000rpmで室温下混合乳化した後、60℃で3時間反応させ、平均粒径1.8μmのマイクロカプセル[M−2]を得た。
<親油性成分を内包したマイクロカプセルの製造例3[M−3]>
3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート13.2g,2−ヒドロキシエチルアクリレート5.9gと触媒のジブチルチンジラウレート0.05gとを酢酸エチル80gに溶解し、50℃、15分間撹拌した後70℃、2時間反応しアクリロイル基とイソシアネート基とを同一分子中に有する化合物を合成し、真空乾燥した。得られた固化物を乳鉢で粉砕し、この中に該固化物とほぼ同量の水/エタノール(5.5/2.5重量比)溶液とアルミナボールと加え、ペイントシェーカーで3時間振とう、粉砕しマイクロカプセル化した親油性成分[M−3]を調製した。一次分散粒子の平均粒径は1.6μmであった。
<支持体の作製条件>
ウレタン系接着材が塗布してあるPET表面に、ポリアリルアミン(日東紡績製PAA−10C、10wt%水溶液)10部、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=9)0.8部、アセトン8部の混合溶液を平均1μm厚になるように塗布し50℃で硬化をかねて乾燥した。
【0073】
【実施例1】
上記ポリアリルアミン系アンカー層が塗布してある支持体の上に、あらかじめペイントシェーカーで室温下30分間よく分散させたのち脱泡した下記組成のドープをブレードコーターで塗布した。
親水性ポリマー:[P−1](15%固形分): 6.0部
マイクロカプセル:[M−1](20%固形分): 6.0部
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン: 0.1部
水: 8.0部
次いで、30分間風乾し、乾燥機で30℃、3時間乾燥し、次にカレンダー処理を行った。次に親水性かつ撥インキ性ポリマーとして親水性ポリマー[P−1]が3重量%、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウムが0.1重量%溶解した水溶液をブレードコーターのギャップを15μmとして塗布し、30分間風乾し、乾燥機で30℃、3時間乾燥した。版の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところマイクロカプセルの外郭表面から版最表面までのポリマー厚みは10点測定の平均で0.5μmであった。その後でケミカルランプ(λmax.365nm、UV強度;5mW/cm2 )で全面を紫外線照射し原版を得た。
【0074】
この原版を電子組版装置と接続した、1W半導体レーザー素子搭載の印字装置で印刷画像を熱印字し、55℃で30分間反応させ印刷版を得た。この版を所定の寸法にトリミングしオフセット印刷機(ハマダ印刷機械株式会社製、HAMADA611XL、ハードブランケット使用)に装着し上質紙に対し印刷した(用いたインキはBSD オフセットインキ ニューラバー 墨 ゴールド、エッチ処理あり、湿し水はエッチ液を水で50倍希釈したものを使用した。)。2万部を過ぎても地汚れがなく、安定した印刷物が得られた。
【0075】
【実施例2】
MC層上に塗布する親水性かつ撥インキ性ポリマーを[P−3]とし、該ポリマーの濃度を5重量%とした以外は実施例1と同様にして原版を作製した。版の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところマイクロカプセルの外郭表面から版最表面までのポリマー厚みは10点測定の平均で0.8μmであった。この原版を実施例1と同様の方法で評価したところ3万部を過ぎても地汚れがなく、安定した印刷物が得られた。
【0076】
【実施例3】
マイクロカプセルを[M−2]、MC層上に塗布する親水性かつ撥インキ性ポリマーを[P−3]、ブレードコーターのギャップを10μm、該ポリマーの濃度を1重量%とし、カレンダー処理、ケミカルランプによる全面露光を行わなかった以外は実施例1と同様にして原版を作製した。塗布重量より求めた親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みは0.1μmであった。この原版を電子組版装置と接続した、1W半導体レーザー素子搭載の印字装置で印刷画像を熱印字し、次いで現像工程を経ず版全面を高圧水銀灯で1分間照射し、印刷版を得た。この版をトリミングし、実施例1同様に印刷したところ、2万部を過ぎても安定した印刷物が得られた。
【0077】
【実施例4】
マイクロカプセルを[M−3]、MC層上に塗布する親水性かつ撥インキ性ポリマーを[P−3]、ブレードコーターのギャップを40μm、該ポリマーの濃度5重量%とし、ケミカルランプによる全面露光を行わなかった以外は実施例1と同様にして原版を作製した。版の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところマイクロカプセル外郭表面から版最表面までのポリマー厚みは10点測定の平均で2.0μmであった。電子組版機と接続した、サーマルヘッド(東芝製 TPH−293R7)搭載の印字装置(製版装置)で印刷画像を印字し、その後でケミカルランプ(λmax.365nm、UV強度;5mW/cm2 )で全面を紫外線照射し現像することなく製版を行なった。この版を所定の寸法にトリミングしオフセット印刷機(ハマダ印刷機械株式会社製、HAMADA611XL、ハードブランケット使用)に装着し上質紙に対し印刷した(用いたインキはBSD オフセットインキ ニューラバー 墨 ゴールド、エッチ処理あり、湿し水はエッチ液を水で50倍希釈したものを使用した。)ところ3万部を過ぎても安定した印刷物が得られた。
【0078】
【実施例5】
マイクロカプセル[M−2]の合成ドープを実施例1と同様の支持体上に塗布してMC層を作製した。次いで、ブレードコーターのギャップを25μmとした以外は実施例3と同様の方法で親水性かつ撥インキ性ポリマー層を設け、実施例3と同様にして原版を作製した。版の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところマイクロカプセル外郭表面から版最表面までのポリマー厚みは10点測定の平均で0.2μmであった。更に、実施例3と同様の方法で製版、印刷を行ったところ1万部を過ぎても安定した印刷物が得られた。
【0079】
【実施例6】
ブレードコーターのギャップを5μm、親水性かつ撥インキ性ポリマー[P−3]の濃度を0.2重量%とした以外は実施例3と同様の方法で原版を作製した。塗布重量より求めた親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みは0.01μmであった。この原版を実施例3と同様の方法で製版印刷したところ、3千部過ぎても安定した印刷物が得られた。
【0080】
【実施例7】
ブレードコーターのギャップを50μm、親水性かつ撥インキ性ポリマー[P−3]の濃度を10重量%とした以外は実施例3と同様の方法で原版を作製した。塗布重量より求めた親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みは5.5μmであった。この原版を実施例3と同様の方法で製版印刷したところ、非画像部は安定して印刷できたが刷り出しからしばらくの間画像部の濃度が不足した。
【0081】
【実施例8】
ブレードコーターのギャップを5μm、親水性かつ撥インキ性ポリマー[P−3]の濃度を0.08重量%とした以外は実施例3と同様の方法で原版を作製した。塗布重量より求めた親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みは0.003μmであった。この原版を実施例3と同様の方法で製版印刷したところ、100部程度まで安定した印刷物が得られた。
【0082】
【実施例9】
マイクロカプセルM−2を遠心分離器を用い精製水で5回洗浄した後、実施例1と同様にしてMC層を作製した。次いで、実施例5と同様の方法で親水性かつ撥インキ性ポリマー層を設置し原版を得た。版の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところマイクロカプセル外郭表面から版最表面までのポリマー厚みは10点測定の平均で0.1μmであった。この原版を、実施例3と同様の方法で製版、印刷を行ったところ6千部を程度まで安定した印刷物が得られた。
【0083】
【比較例1】
実施例1と同様の支持体上に、あらかじめペイントシェーカーで室温下30分間よく分散させたのち脱泡した下記組成のドープをブレードコーターで塗布した。
親水性ポリマー:[P−1](15%固形分): 8.0部
マイクロカプセル:[M−1](20%固形分): 6.0部
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン:0.3部
部分鹸化PVA: 0.1部
界面活性剤(三洋化成(株)製ノニポール85) 0.2部
炭酸カルシウム: 0.8部
水: 8.0部
次いで、1分間風乾し、真空乾燥機中で35℃、3時間乾燥し、次にカレンダー処理を行った。透過型電子顕微鏡を用いた切片観察により求めたマイクロカプセル外郭表面から版最表面までのポリマー厚みは10点測定の平均で0.2μmであった。その後でケミカルランプ(λmax.365nm、UV強度;5mW/cm2 )で全面を紫外線照射し原版を得た。
【0084】
この原版を電子組版装置と接続した、1W半導体レーザー素子搭載の印字装置で印刷画像を熱印字し、55℃で30分間反応させ印刷版を得た。この版を所定の寸法にトリミングしオフセット印刷機(ハマダ印刷機械株式会社製、HAMADA611XL、ハードブランケット使用)に装着し上質紙に対し印刷した(用いたインキはBSD オフセットインキ ニューラバー 墨 ゴールド、エッチ処理あり、湿し水はエッチ液を水で50倍希釈したものを使用した)ところ、耐刷性能1万部の版を得られたが、マイクロカプセルの版面側に存在するバインダーポリマーの厚みを制御するために乾燥条件の検討、分散媒組成の検討に多大な労力を要した。
【0085】
【比較例2】
MC層上に塗布する親水性かつ撥インキ性ポリマーを[P−2]とした以外は実施例3と同様に原版を作製した。塗布重量より求めた親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みは0.1μmであった。この原版を実施例3と同様の方法で製版印刷したところ、1千部あたりから非画像部に地汚れが発生した。
【0086】
【比較例3】
実施例4においてマイクロカプセル[M−1]を使用する代わりに反応性基を有しない平均粒径1.0μmのワックスを同量添加し、ブレードコーターのギャップを40μm、親水性かつ撥インキ性ポリマー[P−3]の濃度1重量%とした他はまったく同じドープ組成を調合し、実施例4と同様にして塗布して原版を作製した。塗布重量より求めた親水性かつ撥インキ性ポリマー層の厚みは0.4μmであった。この原版を実施例4と同様の方法で製版、印刷した。その結果、6百部あたりから印刷物の画像部がカスレ始めた。
【0087】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、マイクロカプセルの最表面側に存在する親水性かつ撥インキ性ポリマー層厚みの制御が簡単であることから、安定して非画像部を形成しうる、高耐刷性、高寸法精度の感熱ダイレクト平版原版が容易に得られるようになり、産業上、大いに有用である。
Claims (6)
- 熱により画像部に転換する親油性成分を内包するマイクロカプセルと親水性かつ撥インキ性ポリマー及び支持体とから構成される感熱平版印刷原版であって、該親水性かつ撥インキ性ポリマーが、三次元架橋しうる官能基と、上記マイクロカプセル中の親油性成分とカプセルの破壊後化学結合する官能基とを有しており、上記マイクロカプセル中の親油性成分は、カプセルの破壊後上記親水性かつ撥インキ性ポリマーと化学結合する官能基を有している感熱ダイレクト平版原版の製造方法において、支持体上に少なくとも上記マイクロカプセルを含有するMC層を設け、次いで上記親水性かつ撥インキ性ポリマー層を設けることを特徴とする感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
- 親水性かつ撥インキ性ポリマー層を形成後、画像描画前に該ポリマー層を三次元架橋することを特徴とする請求項1に記載の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
- MC層にマイクロカプセルを結合するバインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
- MC層のバインダーポリマーが親水性ポリマーであることを特徴とする請求項3に記載の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
- MC層のバインダーポリマーが三次元架橋しうる官能基を含有していることを特徴とする請求項3または4に記載の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
- MC層のバインダーポリマーがMC層のマイクロカプセル中の親油性成分とカプセルの破壊後化学結合する官能基を有しており、該マイクロカプセル中の親油性成分はカプセルの破壊後該バインダーポリマーと化学結合する官能基を有していることを特徴とする請求項3、4または5に記載の感熱ダイレクト平版原版の製造方法。
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JP27202396A JP3654473B2 (ja) | 1996-10-15 | 1996-10-15 | 改良された感熱ダイレクト平版原版の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP27202396A JP3654473B2 (ja) | 1996-10-15 | 1996-10-15 | 改良された感熱ダイレクト平版原版の製造方法 |
Publications (2)
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JPH10114168A JPH10114168A (ja) | 1998-05-06 |
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