JP3653447B2 - 被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層部品 - Google Patents
被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層部品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3653447B2 JP3653447B2 JP2000149963A JP2000149963A JP3653447B2 JP 3653447 B2 JP3653447 B2 JP 3653447B2 JP 2000149963 A JP2000149963 A JP 2000149963A JP 2000149963 A JP2000149963 A JP 2000149963A JP 3653447 B2 JP3653447 B2 JP 3653447B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- metal powder
- coated metal
- coated
- powder
- compound
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
- Ceramic Capacitors (AREA)
- Fixed Capacitors And Capacitor Manufacturing Machines (AREA)
- Conductive Materials (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層電子部品に関する。電子部品としては内部導体を有するもので、例えば、セラミックコンデンサ、共振器、フィルタ、インダクタ、基板がある。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子関連機器の発達はめざましく、新製品の開発に対応して組み込まれる側の電子部品に対しては小形化、高信頼性化および複合化を求める声が大きくなっている。積層セラミックコンデンサーにおいても、既存製品のレベルアップとして小形化、高容量化が盛んに進められており、誘電体層の薄層化、多層化が図られている。従来から高誘電率系積層セラミックコンデンサーには、チタン酸バリウム系の誘電体に貴金属であるPdが内部電極として用いられてきた。
【0003】
しかしながら、高価な貴金属を用いているために、多層化による内部電極層数の増加はコストの増大を招き、低価格化の要求に応えることが困難となっていた。そこで内部電極をより安価な卑金属のNiが広く使用されるようになった。
一般にNi内部電極用のNiペーストは、電極形成成分としてのNi粉末と、セルローズ系樹脂やアクリル系樹脂などの樹脂、およびその溶剤としてのトリメチルベンゼン、テルピネオールなどからなる有機バインダー成分とからなり、これらをスリーロールミルなどの機械的混練手段によって混練して混合分散させることにより製造されている。
【0004】
次に、上記したNiペーストを用いたセラミックコンデンサーの製造について説明すると、先ずチタン酸バリウム(BaTiO3)などで代表される誘電体粉末と、ポリビニルブチラールなどの有機バインダーからなる誘電体グリーンシートに該Niペーストを所定のパターンで印刷し、乾燥する。
次にNiペーストが印刷された誘電体グリーンシートを内部金属電極が交互に重なるように積層し、熱圧着する。次いでこの積層体を切断し、酸化性雰囲気中で500℃以下の温度で加熱して脱バインダーを行い、その後Ni内部電極が酸化しないように還元性雰囲気中で、約1300℃程度の温度に加熱して内部電極および誘電体を焼結させる。その後焼成チップの側面に内部電極と接続するように外部電極ペーストを塗布して再焼成し、最後に外部電極上にNiめっきなどを施してセラミックコンデンサーは完成する。
【0005】
上述したようにセラミックコンデンサーはセラミック誘電体と、金属内部電極とを同時焼成することにより得られるが、その際に誘電体と電極の焼成による収縮特性のマッチングを行うことが重要である。特に酸化性雰囲気中の脱バインダー工程では、Ni粉末が酸化し膨張するのに対して、誘電体グリーンシートはほとんど寸法変化がない。
したがって、Ni粉末の酸化膨張が大きい程誘電体グリーンシートと電極層との間には大きな応力が発生し、チップにクラックを生じたり、積層構造が破壊したりする(以下、この現象をデラミネーションという)という問題が発生する。
【0006】
また還元性雰囲気での焼成工程では、Ni粉末の還元反応による内部電極の収縮と高温での焼成収縮とが起こり、このとき電極層の収縮挙動と誘電体の収縮挙動が大幅に異なると、電極層と誘電体層との界面に応力が発生して先の脱バインダー工程の場合と同様にクラックやデラミネーションが発生する。なお、一般にセラミックコンデンサー製造に際し、常法で得られた純粋なNi粉末を使用した内部電極を用いるときには、誘電体シートの焼成による収縮が約1100℃で起こるのに対し、内部電極の焼成による収縮はこれより低温側の700℃近辺から始まるといわれている。
【0007】
これらの解決策として様々な改良がなされている。
例えば、表面の少なくとも1部に、LaとNiを含む複合酸化物層を有するニッケル粉末(特開平10-324906号公報)、Ni100モルに対して、Al、Co、CrまたはMnのうち少なくとも1種の元素を0.01モル以上で1モル以下含有させてなるNi粉末(特開平11-21644号公報)、表面の少なくとも一部に、式▲1▼で示される複合酸化物層を有するNi粉末。AxByO(x+2y)(但し、式中AはCa、Sr及びBaの1種又は2種以上の元素、BはTi及びZrの1種又は2種の元素を表す。xとyは次式を満足する数を表す。0.5≦y/x≦4.5)(特開平11-124602号公報)等が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのNi粉ではチタン酸バリウムなどの複合酸化物20〜30%を混合して電極ペーストとして、焼結時の熱収縮挙動をある程度コントロールする必要があった。積層コンデンサーでは誘電体層の厚さが3μm以下、積層数が数百層というものが製造されており、それにともなって内部電極層1層の厚さが1μm以下となるため、Ni粉は細かいもので0.2μmにまで超微粉化しなければならない。それにともなって、混合する複合酸化物も超微粉化しなければならないが0.1μm以下の粒子になると、凝集した粉体となり易く、これをNi粉と混合してもかえって電極層が厚くなってしまう問題があった。また、複合酸化物が不均一に混合されるため、焼結の過程で誘電体と収縮挙動の不一致が発生しデラミネーションが起こってしまうことがあった。
本発明者等は、上記問題に鑑み鋭意検討した結果、ある種の複合酸化物で被覆されたNi粒子は粒子それぞれが完全に複合酸化物層で被覆されていることから、焼結の初期においてNi同士の接触がないため、Ni粒子間の焼結速度を緩和し緻密な内部電極層を形成させることができることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、その第1の局面において、金属粉末の表面の少なくとも一部が無機化合物で被覆されている被覆金属粉末であって、前記金属粉末がNi粒子であり、前記被覆する無機化合物が、次式:
ABO 3−X/2 (OH) X
(式中、AはMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種又は2種以上の元素、BはTi,Zr,Hfから選ばれる1種あるいは2種以上の元素を示す。またxは式0<x<6を満足する数を表す。)で示される化合物であることを特徴とする被覆金属粉末を提供するものである。
【0010】
さらに又本発明はその第2の局面において、金属粉末の水性懸濁体にA元素の化合物とB元素の化合物とを添加して、金属粉末の表面に前記の無機化合物を沈積被覆することを特徴とする被覆金属粉末の製造方法を提供するものである。
【0011】
さらに又本発明はその第3の局面において、前記の被覆金属粉末と樹脂バインダーからなることを特徴とする被覆金属粉末ペーストを提供するものである。
【0012】
さらに又本発明はその第4の局面において、前記の被覆金属粉末を用いることを特徴とするセラミックス積層電子部品を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の被覆金属粉末は、金属粉末の表面に少なくとも一部無機化合物で被覆されている被覆金属粉末であって、かつ該被覆している無機化合物は化合物中にOH基を有することを特徴とするものである。
被覆している無機化合物としては、ABO3-X/2(OH)X(式中、AはMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種又は2種以上の元素、BはTi,Zr,Hfから選ばれる1種あるいは2種以上の元素を示す。またxは式0<x<6を満足する数を表す。)で示される化合物である。A、Bの好ましい組み合わせは、TiとBaである。
係る被覆する無機化合物は、金属粉末の水溶液中で表面に沈積するために、OH基を有する。係るOH基は、例えば300℃以上に焼成するとOH基は確認することができなくなるが、OH基の確認は赤外線吸収スペクトル(IR)のピ−クの有無にて行うものである。
即ち、OH基を確認できないとは、赤外線吸収スペクトル図上で吸収ピークがスペクトルベースに対してピークの存在が無いか、又はピークはあってもベースラインに対して僅かにブロードに盛り上がっている程度のものも含まれるものである。
【0014】
金属粉末表面に被覆される無機化合物は、 ABO3-X/2(OH)X で示されるように複合酸化物を沈積被覆するものであるが、この ABO3-X/2(OH)Xのモル比は、A/B=0.5〜1.5、好ましくは0.8〜1.2である。係る構造は、X線回折スペクトルにより確認することができる。
係る被覆無機化合物層は、水溶液中で被覆されるものであるが、被覆時に結晶化したもので擬似立方晶のペロブスカイト型構造を形成し、化合物中に水酸基を含有している。
被覆金属粉末の核となるものは、Ni粒子又はAg−Pd粒子である。好ましくはNi粒子であるが、何れにしてもセラミックス積層電子部品用として工業的に入手できるものであれば特に制限されない。
具体的には、平均粒子径0.1〜0.5μmであり、BET比表面積が1〜4m2/g程度、純度として99.9%以上、形状は球形であるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
更に、本発明の被覆金属粉末は、 ABO3-X/2(OH)X で示される複合酸化物が粒子表面に均一に被覆されているものであり、その粒径は基本的には原料であるNi粒子又はAg−Pd粒子の形状に依存し、Ni粒子又はAg−Pd粒子の特性を利用することができる。
本発明の被覆程度は、SEM写真観察により測定される平均粒径(X)とBET比表面積から計算される平均粒子径(Y)との粒径比(Z=X/Y)の割合で表される。
Ni粉において十分な酸化防止効果を得るためには、この割合が3以上、少なくとも2以上である。
【0016】
なお、電子顕微鏡写真から測定される粒子径は、測定個数は多ければ多いほどよいが、写真での測定上、粒子200個以上であればよい。
係る電子顕微鏡写真から測定される平均粒子径は、0.1〜1.0μmであるが、測定される粒子の最大粒子径が平均粒子径の4倍以下であることが好ましい。平均粒子径が、例えば1μmであった場合は、最大粒子径は4μm以下である。
これは、最大粒子径が4以上の粒子が存在すると内部電極層の厚みを越えてしまうことによる。
【0017】
また、BET比表面積から導き出される粒子径は次式(1)により計算される。
BET比表面積による粒子径=6/(密度×比表面積) (1)
【0018】
本発明の製造方法は、金属粉末の水性懸濁体にA元素の化合物とB元素の化合物とを添加して、金属粉末の表面に ABO3-X/2(OH)X を沈積被覆することである。
使用するA元素の化合物は、A元素の酸化物、水酸化物、アルコキシド等から選ばれる1種又は2種以上である。具体的には、Mg,Ca,Sr,Ba等の酸化物又は水酸化物、アルコキシドである。中でも好ましくは水酸化バリウムである。
また、他に使用するB元素の化合物は、B元素の酸化物、水酸化物、アルコキシド等から選ばれる1種又は2種以上である。具体的には、Ti,Zr,Hf等の酸化物又は水酸化物、アルコキシドである。中でも好ましくはチタニウムアルコキシドである。
ただし、A元素の化合物に水酸化物を使用した場合か、又はアルカリとしてNaOH、KOH、LiOHを用いた場合は、その他の原料は塩化物、硝酸塩、酢酸塩でよい。
【0019】
本発明の製法を更に具体的に説明すると、金属粉末を懸濁液としておき、その溶液にA元素の化合物およびB元素の化合物又はその溶液を連続的に添加して反応させるものである。反応温度は、特に限定されないが、通常20〜100℃程度である。また、反応時間も特に限定されないが、通常0.5〜24時間程度である。
反応終了後、所定の方法で濾過後、洗浄、乾燥をし、本発明の被覆金属粉末を得ることができる。
本発明の係る被覆金属粉末は、積層セラミックスコンデンサーの製造工程の1つである、内部電極を形成する時に使用するペーストを用いるスクリーン印刷に利用することができる。
係るペーストは、本発明の被覆金属粉末を有機バインダに分散させてスラリーにしたものである。使用される有機バインダとしては、各種の樹脂を有機溶剤に溶解した状態で使用する。代表的な有機バインダとしては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ロジンエステル、各種セルロース等である。また、有機溶剤としては、アルコール系、炭化水素系、エーテル系、エステル系がある。
【0020】
その他の添加剤として、ワックス類、界面活性剤、セラミックス粉末、有機ベントナイト等が使用される。
内部電極形成としては、スクリーン印刷法で行うことができ、通常の方法、例えば印刷、乾燥、脱バインダ及び本焼成等の焼成工程を経て形成する公知の方法により得ることができる。
さらに、本発明の被覆金属粉末ペーストは、セラミックス積層電子部品として使用することができる。電子部品としては内部導体を有するもので、例えば、セラミックコンデンサ、共振器、フィルタ、インダクタ、基板がある。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒径0.51μm、比表面積(1.27m2/g)のニッケル粉120g、水酸化バリウム50gをイオン交換水1リットルに加えて、80℃でよく攪拌する。続いてテトラブチルタイタネイト40gを30分で添加し、8時間熟成した。このスラリーを分離後、真空乾燥機にて120℃で乾燥し、粉砕した。この粉体をXRD測定、IR測定、SEM撮影を行ったところ水酸基を含有するチタン酸バリウムで全面が被覆されたニッケル粉であることが確認された。図1はこの粉体のIR測定チャートである。
図1において、OH基は3500cm-1のピークで確認できる。
比表面積は12.81m2/g、密度は7.92g/ccであった。このニッケル粉について熱重量分析(TG)及び 熱機械分析(TMA)を行って大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0022】
また、以下の手順で積層セラミックコンデンサを作製した。
(導電性ペーストの作製)
まず、上記した被覆ニッケル粉50重量%とビヒクル50重量%(エチルセルロース5%とα−テルピネオール95%)をスリーロールミルにより混合分散して導電性ペーストを作製した。
【0023】
(セラミックグリーンシートの作製)
チタン酸バリウムを主成分とする誘電体粉末に有機溶剤を分散媒として用い、有機系バインダ、可塑剤を添加して十分に湿式混合し、スラリーを作製した。
前記スラリーを使用して、ドクターブレード法によりシート成型を行って、誘電体セラミック用のグリーンシートを得て乾燥した。
【0024】
(積層体の作製)
得られたグリーンシートの一面に導電性ペーストを複数個の内部電極パターンに印刷し、乾燥後、複数のグリーンシートを積層して圧着し、切断して積層体を作製した。
【0025】
(焼結体の作製)
この積層体を空気中において330℃で5時間加熱して脱バインダ処理を行った後、H2/N2の体積比が2/100の還元ガス流中において1250℃で2時間焼成することにより焼結体を作製した。
【0026】
(再酸化、端子電極取付)
次に、前記焼成により欠乏した酸素を補うために、空気雰囲気において800℃で4時間焼成して再酸化した後、焼結体の両端部にCuペーストを塗布して焼き付けることにより、端子電極を形成して、積層セラミックコンデンサとした。
積層セラミックコンデンサの内部電極はその厚みを1.5μmとし、誘電体層の厚みを5μmとし、誘電体層の積層数を50層とした。外形寸法は3.2mm×1.6mm×1.2mmである。
【0027】
上述のようにして得られた積層セラミックコンデンサを、各試料100個ずつ樹脂で固めて研磨し、倍率400倍の顕微鏡観察を行い、クラックやデラミネーションの有無を検査した。さらに、この積層セラミックコンデンサに直流10Vを印加し、30秒後の絶縁抵抗が100MΩ以下のものを不良とした耐圧不良率(ショート不良率)試験を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0028】
(実施例2)
平均粒径0.51μm、比表面積(1.27m2/g)のニッケル粉120g、水酸化バリウム25gをイオン交換水1リットルに加えて、80℃でよく攪拌する。続いてテトラブチルタイタネイト20gを30分で添加し、8時間熟成した。このスラリーを分離後、真空乾燥機にて120℃で乾燥し、粉砕した。この粉体をXRD測定、IR測定、SEM撮影を行ったところチタン酸バリウムで全面が被覆されたニッケル粉であることが確認された。比表面積は7.92m2/g、密度は8.33g/ccであった。このニッケル粉について熱重量分析(TG)及び 熱機械分析(TMA)を行って大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製し、同様の試験を行った。それぞれの結果を表2及び表3に示す。
【0029】
(実施例3)
平均粒径0.51μm、比表面積(1.27m2/g)のニッケル粉120g、水酸化バリウム50gをイオン交換水1リットルに加えて、80℃でよく攪拌する。続いてメタチタン酸(TiO(OH)2)のスラリー(TiO2換算で408g/L)23.0gを添加し、8時間熟成した。このスラリーを分離後、真空乾燥機にて120℃で乾燥後、粉砕した。この粉体をXRD測定、IR測定、SEM撮影を行ったところチタン酸バリウムで全面が被覆されたニッケル粉であることが確認された。比表面積は4.31m2/g、密度は7.98g/ccであった。このニッケル粉を用いて大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製し、同様の試験を行った。それぞれの結果を表2及び表3に示す。
【0030】
(実施例4)
平均粒径0.25μm、比表面積(2.62m2/g)のニッケル粉120g、水酸化バリウム50gをイオン交換水1リットルに加えて、80℃でよく攪拌する。続いてテトラブチルタイタネイト40gを30分で添加し、8時間熟成した。このスラリーを分離後、真空乾燥機にて120℃で乾燥後、粉砕した。この粉体をXRD測定、IR測定、SEM撮影を行ったところチタン酸バリウムで全面が被覆されたニッケル粉であることが確認された。比表面積は15.64m2/g、密度は7.98g/ccであった。このニッケル粉を用いて大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製し、同様の試験を行った。それぞれの結果を表2及び表3に示す。
【0031】
(実施例5)
平均粒径0.51μm、比表面積(1.27m2/g)のニッケル粉120g、水酸化バリウム50gをイオン交換水1リットルに加えて、80℃でよく攪拌する。続いてテトラブチルタイタネイト40gを30分で添加し、8時間熟成した。このスラリーを分離後、真空乾燥機にて120℃で乾燥し、粉砕した。この粉体をXRD測定、IR測定、SEM撮影を行ったところ水酸基を含有するチタン酸バリウムで全面が被覆されたニッケル粉であることが確認された。比表面積は12.81m2/g、密度は7.92g/ccであった。このニッケル粉について熱重量分析(TG)及び 熱機械分析(TMA)を行って大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製し、同様の試験を行った。それぞれの結果を表2及び表3に示す。
【0032】
(比較例1)
平均粒径0.51μm、比表面積(1.27m2/g)のニッケル粉を用いて大気中酸化特性および還元雰囲気中収縮特性を評価した。
図2はこの粉体のIR測定チャートである。図2において、3500cm-1付近のOH基のピークは観察されない。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製し、同様の試験を行った。それぞれの結果を表2及び表3に示す。
【0033】
(比較例2)
(チタン酸バリウムの製造方法)
硫酸法二酸化チタン製造における中間生成物である硫酸チタニル(TiOSO4)の加水分解により生成したチタン水和物またはメタチタン酸(TiO(OH)2)のスラリー(TiO2換算で408g/L)に対し水酸化バリウムを1.2倍モル(Ba(OH)2・8H2O/TiO2=1.2)となるように添加して、メタチタン酸スラリーの4倍量の水を加え攪拌しながら温度を95℃に保持し、2時間反応を続行させた。次いで濾過装置により固液分離を行い、得られたウェットケーキを洗浄装置に入れ、温度80℃の温水で過剰の水酸化バリウムを十分洗い流す。次いで再び濾過を行い、得られた結晶粉末を105℃にて乾燥した。
【0034】
平均粒径0.51μm、比表面積(1.27m2/g)のニッケル粉120gと上述の方法で作製した平均粒径0.1μmのチタン酸バリウム24gをイオン交換水1リットルに入れ、ホモミキサーで5分間混合した。このスラリーを分離後、真空乾燥機にて120℃で乾燥し、粉砕した。比表面積は2.84m2/g、密度は7.97g/ccであった。このニッケル粉を用いて大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製し、同様の試験を行った。それぞれの結果を表2及び表3に示す。
【0035】
(比較例3)
粒径0.25μm、比表面積(2.62m2/g)のニッケル粉を用いて大気中酸化特性および非酸化雰囲気中収縮特性を評価した。
また、実施例1と同様の方法にて積層セラミックコンデンサを作製した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
本発明の被覆金属粉末は上記のように構成したので、表1、表2及び表3から判るように、大気中酸化特性や非酸化雰囲気中収縮特性に優れ、これを使用した積層セラミックコンデンサもクラックやデラミネーションがなく、ショート不良率も極めて低く、各種電子部品の製造に有利に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1により製造された被覆金属粉末のIR測定チャートである。
【図2】比較例1のIR測定チャートである。
Claims (8)
- 金属粉末の表面の少なくとも一部が無機化合物で被覆されている被覆金属粉末であって、前記金属粉末がNi粒子であり、前記被覆する無機化合物が、次式:
ABO 3−X/2 (OH) X
(式中、AはMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種又は2種以上の元素、BはTi,Zr,Hfから選ばれる1種あるいは2種以上の元素を示す。またxは式0<x<6を満足する数を表す。)で示される化合物であることを特徴とする被覆金属粉末。 - 被覆する無機化合物は、粒子の1次粒径が0.1μm以下である、請求項1に記載の被覆金属粉末。
- 被覆金属粉末のSEM写真測定により得られる平均粒子径(X)とBET比表面積から算出される粒子径(Y)との粒径比(Z=X/Y)は2以上である、請求項1または2に記載の被覆金属粉末。
- 金属粉末に対する無機化合物の被覆量が0.1〜50wt%である、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆金属粉末。
- Ni粉末の水性懸濁体にA元素の化合物とB元素の化合物とを添加して、金属粉末の表面に、次式:
ABO3−X/2(OH)X
(式中、AはMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種又は2種以上の元素、BはTi,Zr,Hfから選ばれる1種あるいは2種以上の元素を示す。またxは式0<x<6を満足する数を表す。)で示される無機化合物を沈積被覆することを特徴とする被覆金属粉末の製造方法。 - A元素の化合物及びB元素の化合物は、水酸化物又はアルコキシドである、請求項5に記載の被覆金属粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の被覆金属粉末と樹脂バインダーからなることを特徴とする被覆金属粉末ペースト。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の被覆金属粉末を用いることを特徴とするセラミックス積層電子部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000149963A JP3653447B2 (ja) | 2000-05-22 | 2000-05-22 | 被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000149963A JP3653447B2 (ja) | 2000-05-22 | 2000-05-22 | 被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層部品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001335805A JP2001335805A (ja) | 2001-12-04 |
JP3653447B2 true JP3653447B2 (ja) | 2005-05-25 |
Family
ID=18655744
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000149963A Expired - Fee Related JP3653447B2 (ja) | 2000-05-22 | 2000-05-22 | 被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3653447B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3947118B2 (ja) * | 2003-03-03 | 2007-07-18 | Jfeミネラル株式会社 | 表面処理金属超微粉、その製造方法、導電性金属ペースト及び積層セラミックコンデンサ |
CN100373507C (zh) * | 2003-08-08 | 2008-03-05 | 广东风华高新科技股份有限公司 | 多层陶瓷电容器及其制备方法 |
EP2549491B1 (en) | 2005-02-08 | 2017-07-26 | Murata Manufacturing Co., Ltd. | Surface mountable negative coefficient characteristic ceramic thermistor based on Mn, Co and Ti |
JP2009266716A (ja) * | 2008-04-28 | 2009-11-12 | Panasonic Corp | 導電性ペーストおよび積層セラミックコンデンサの製造方法 |
JP7199285B2 (ja) * | 2019-03-29 | 2023-01-05 | 株式会社ノリタケカンパニーリミテド | 銀パラジウム合金粉末およびその利用 |
-
2000
- 2000-05-22 JP JP2000149963A patent/JP3653447B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001335805A (ja) | 2001-12-04 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4110978B2 (ja) | 誘電体セラミックおよびその製造方法ならびに積層セラミックコンデンサ | |
TW419685B (en) | Dielectric ceramic, method for producing the same, laminated ceramic electronic element, and method for producing the same | |
JP3934352B2 (ja) | 積層型セラミックチップコンデンサとその製造方法 | |
JP4392821B2 (ja) | 誘電体セラミックおよびその製造方法ならびに積層セラミックコンデンサ | |
JP2001316114A (ja) | ペロブスカイト構造を有する酸化物、チタン酸バリウムおよびその製造方法ならびに誘電体セラミックおよびセラミック電子部品 | |
US20070045912A1 (en) | Production method of dielectric ceramic composition | |
JP2001023852A (ja) | 積層セラミック電子部品 | |
JP6986360B2 (ja) | 積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 | |
JP2018181941A (ja) | 積層セラミックコンデンサおよびその製造方法 | |
JP4097900B2 (ja) | 電子部品の製造方法 | |
JP4660935B2 (ja) | 正方晶ペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウム系セラミック粉末の製造方法 | |
JP3783678B2 (ja) | 誘電体セラミック用原料粉末の製造方法、誘電体セラミックおよび積層セラミックコンデンサ | |
KR20060110840A (ko) | 공재 입자, 그 제조 방법, 전극 페이스트, 전자 부품의제조 방법 | |
JP3653447B2 (ja) | 被覆金属粉末及びその製造方法、被覆金属粉末ペースト並びにセラミックス積層部品 | |
JP5423303B2 (ja) | 誘電体磁器組成物の製造方法 | |
JP2529410B2 (ja) | 誘電体磁器組成物とそれを用いた積層セラミックコンデンサとその製造方法 | |
JP4303715B2 (ja) | 導電性ペーストおよび積層型電子部品の製造方法 | |
JP7032916B2 (ja) | セラミックコンデンサおよびその製造方法 | |
CN100373507C (zh) | 多层陶瓷电容器及其制备方法 | |
JP3791264B2 (ja) | 耐還元性誘電体組成物の製造方法及び積層セラミックコンデンサの製造方法 | |
JP3772726B2 (ja) | ニッケル粉末の製造方法、ニッケル粉末、ニッケルペースト、積層セラミック電子部品 | |
JP5029717B2 (ja) | セラミック電子部品およびセラミック原料粉体の製造方法 | |
JP2003317542A (ja) | 導電性ペーストおよび積層セラミック電子部品 | |
JP5084657B2 (ja) | 積層セラミックコンデンサ | |
JP2006111468A (ja) | 誘電体磁器組成物の製造方法、電子部品及び積層セラミックコンデンサ |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20041122 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20041207 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050125 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050222 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050228 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080304 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090304 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100304 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100304 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110304 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110304 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130304 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140304 Year of fee payment: 9 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |