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JP3652133B2 - ギヤポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに噛み合う一対のギアの回転によりポンプ作用をなすギヤポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ギヤポンプでは、一対のカバーにより両端が閉塞されるケーシングのキャビティ内に、互いに噛み合う一対のギアを両側から挟む一対のサイドプレートを嵌め入れ、各サイドプレートにそれぞれ形成された一対の支持孔によって、各支軸の両端部をそれぞれ支持している。また、ギヤ同士の噛み合い位置を挟んだ両側に作動オイルの吐出室と吸込室を形成している。さらに、サイドプレートがギヤに接触する面の背面と、これに対向するカバーの面との間に略3の字状のシールを介在し、このシールによって、キャビティ内を高圧エリアと低圧エリアに区画している。
【0003】
このシールは、従来、上記のような高圧エリアと低圧エリアとを区画するシール機能の他に、高圧発生時に、サイドプレートのギヤ側側面が受ける油圧力に抗してサイドプレートの背面を弾力的に押圧することにより、サイドプレートのギヤ側側面とギヤの端面との間の緊迫力を維持し、これにより、サイドプレートのギヤ側側面に沿っての圧抜けを防止する機能を果たしている。
【0004】
すなわち、高圧発生時においては、高圧を受けたサイドプレートのギヤ側側面とギヤの端面との間の接触隙間を通して、高圧の吐出室から低圧の吸込室へ作動油が漏れ、圧抜けが発生し易くなる。この高圧発生時の圧抜けをできるだけ防止するという観点からは、シールがサイドプレートに与える弾性反発力を高く設定しておけば良い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、そうした場合、圧抜けのおそれのない低圧低速回転時において、サイドプレートのギヤ側側面が受ける相対的に小さな油圧力と比較して、サイドプレートの背面を押すシールの弾性反発力が過大となり、ギヤ側側面とギアの端面との間のフリクションが大きくなり、摩擦トルクの増大により機械効率が低下するという問題がある。もともと、低圧低速回転時にはサイドプレートのギヤ側側面とギヤの端面との間に油膜が形成され難く、このことも摩擦トルクを大きくする要因となっている。
【0006】
ところで、近年、自動車における省エネの要請は顕著となっており、運転と停止が繰り返されるタイプのギヤポンプの出現も予想される。例えば、上記のギヤポンプを電動モータにより作動させて油圧源とするタイプのパワーステアリング装置では、直進走行時(非操舵時)にギヤポンプの作動を停止しておき、操舵時のみに対応してギヤポンプを作動させる、いわゆるオンデマンド方式による使用も考えられる。
【0007】
このような用途では、ギヤポンプを停止状態から所定の回転速度での運転状態まで立ち上げる動作が頻繁に行われる。したがって低圧低速回転でも頻繁に使用されることになり、低圧低速回転時の摩擦トルクの低減を達成しつつ、高圧時の圧抜けの防止しなければならない。
ところが、実際問題として、シールの弾性反発力の設定だけでは、高圧時の圧抜けの防止を達成できない。というのは、例えば外乱等の影響で、サイドプレートの背面がカバーに一旦密着してしまうと、互いに離れなくなり(いわゆる流体固着現象)、サイドプレートのギア側側面とギアとの間の緊迫力が低下したままの状態になるおそれがあるからである。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は低速回転時の摩擦トルクを小さくできしかも高速回転時の圧抜けの発生を防止することがきるギヤポンプを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための課題解決手段として、発明は、キャビティの端部を閉塞するカバーとギアとの間に介在するサイドプレートを、カバーおよびサイドプレートの互いの対向面の何れか一方に形成した収容溝に収容された3の字状のシールによって、ギアの支軸の軸方向に浮動状に支持するとともに、上記3の字状のシールによって、キャビティ内を高圧エリアと低圧エリアに仕切るギヤポンプにおいて、上記カバーおよびサイドプレートに、サイドプレートが対向するカバー側へ押圧される力を受けたときに互いに当接する当接部をそれぞれ設け、両当接部が互いに当接した状態で、サイドプレートと対向するカバーとの間の高圧エリア側部分に圧油を導入可能な隙間が形成され、上記両当接部はカバーおよびサイドプレートの低圧エリア側部分を含み、上記隙間は、サイドプレートおよびカバーの互いの対向面の少なくとも一方の高圧エリア側部分に設けられた凹部により区画され、上記凹部は、収容溝側に近づくにしたがってサイドプレートおよびカバーの互いの対向面間の距離が近くなるような傾斜面により構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様では、外乱等の影響でサイドプレートがカバー側へ押されてサイドプレートとカバーの当接部同士が互いに密着しても、サイドプレートと対向するカバーとの間の高圧エリア側部分に隙間を形成することができる。この隙間に圧油が導入されることにより、サイドプレートをシールによって浮動状に支持する状態に戻すことができる。したがって、流体固着現象の発生を確実に防止できるので、高速回転時の圧抜けを確実に防止することができる。
【0011】
一方、シールの弾性反発力としては、低速回転時の摩擦トルクを小さくすることのほうに重点をおいて弱めに設定することができる
【0012】
また、従来品に対してサイドプレートとカバーの対向面の少なくとも一方の高圧エリア側部分に凹部を形成するだけで、コスト安価に圧抜け対策が行える。また、収容溝からのシールのはみ出しを防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るギヤポンプの断面図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図であってハッチングを省略してある。また、図3は図1のIII −III 線に沿う断面図であり、図4はIV−IV線に沿う断面図である。
図1を参照して、本ギヤポンプは、その中央部を貫通する長円形断面のキャビティ14を有するケーシング10の両側を、これの全面を覆う態様にねじ止めされた一対のカバー11により塞いで構成されたハウジング1を備えている。
【0014】
上記キャビティ14には、互いに噛み合う駆動ギヤ3および従動ギヤ4が収容され、さらにこれらのギヤ3,4を両側から挟み込む一対の例えばアルミニウム合金製のサイドプレート12,12が嵌め入れられている。19は、カバー11の環状溝に収容され、カバー11とサイドプレート12との間に介在してキャビティ14内を密封するためのOリングである。
【0015】
サイドプレート12のギヤ側側面12aは各ギヤ3,4の端面と摺接されるようになっている。また、各サイドプレート12のギヤ側側面12aの背面12bと、これに対向するカバー11の面11aとの間には、図4および図5に示すような略3の字形形状のシール13が介在しており、このシール13は、キャビティ14内を低圧エリアLと高圧エリアHとに仕切っている。
【0016】
駆動ギヤ3および従動ギヤの支軸30,40は、長円形断面を有するキャビティ14の両側の半円部の軸心上にそれぞれ位置し、互いに平行をなして架設されている。すなわち、支軸30,40は各サイドプレート12にそれぞれ一対形成された支持孔31,41ににより両持ち支持されている。
一対の支持孔31によって支持された一方の支軸30は、一方のカバー11を貫通して外部に延長され、この延長端に伝達される図示しないモータからの駆動力により回転駆動される駆動軸を構成している。また、支軸30には駆動ギヤ3が一体回転可能に装着されている。支軸30がカバー11を貫通する部分にはオイルシール17が配置されている。
【0017】
また、一対の支持孔41によって支持された他方の支軸40は、各サイドプレート12の支持孔41内に軸端を有する従動軸を構成している。支軸40には従動ギヤ4が装着されている。従動ギヤ4の支軸40への装着では、軸回りの回転を拘束しても良いし軸回りの回転を許容しても良い。従動ギヤ4は両支軸30,40の軸心を含む平面内において駆動ギヤ3と噛み合い、支軸30により駆動される駆動ギヤ3の回転に伴って、支軸40と共に(或いは支軸40の回転を伴わずに)従動回転するようにしてある。
【0018】
図2には、駆動ギヤ3およびこれに連動する従動ギヤ4の回転方向が矢符により示してあり、両ギヤ3,4の噛み合い位置を挟んだ両側には、前記回転方向側に吸込室5が、反回転方向側に吐出室6が形成されている。これら吸込室5および吐出室6は、ケーシング10の対応位置に開口する吸込口15および吐出口16を介して、ハウジング1外の図示しない吸込先および吐出先にそれぞれ接続されるようにしてある。
【0019】
図3において、サイドプレート12のギヤ側側面12aには、両ギヤ3,4の噛み合い位置から吸込室5側へ延びる逃げ溝63および吐出室6側へ延びる逃げ溝64が形成されている。これらの逃げ溝63,64は、両ギヤ3,4の噛み合い位置で流体が各サイドプレート12と各噛合ギヤ歯とで形成される閉塞領域に閉じ込められる、いわゆる閉じ込みの発生を防止するためのものである。両逃げ溝63,64は両ギヤ3,4の噛み合い中心位置を避けるようにして設けられ、互いの間に所定の距離が確保されている。これは両逃げ溝63,64を連通させてしまうと、吸込室5側と吐出室6側が連通されて、ポンプ機能を果たせなくなるので、これを防止するためである。また、上記ギヤ側側面12aには、各支持孔31,41と吸込室5側とをそれぞれ連通する連通溝65が形成されている。
【0020】
一方、図4において、サイドプレート12の背面(反ギヤ側側面)12bには、略3の字形形状の収容溝20に上記のシール13を収容しており、このシール13を境界として、互いに対向するサイドプレート12とカバー11との間の空間が、吸込室5側に連通する低圧エリアLと吐出室6側に連通する高圧エリアHとに仕切られている。また、上記背面12bには、上記低圧エリアLにおいて各支持孔31,41と吸込室5側とをそれぞれ連通する各一対の連通溝66が形成されている。
【0021】
収容溝20の両端部はサイドプレート12の周縁に開放しており、シール13の両端部はU字状に折り返されてキャビティ14の内面に摺接するシュー21を形成している。
このような構成により、吸込口15を経て吸込室5に導入される作動流体は、該吸込室5に臨む駆動ギヤ3および従動ギヤ4の歯間に受け入れられ、両ギヤ3,4の回転により、それぞれの歯間とキャビティ14の内周面との間に封止された状態で搬送され、吐出室6に送り出される。吐出室6への送り出しを終えた駆動ギヤ3と従動ギヤ4とは、両ギヤ3,4の噛み合い位置を経て吸込室5側に向き、該吸込室5内の作動流体を再度受け入れて吐出室6側へ送り出す作用をなす。
【0022】
図4並びに図4のV−V線に沿う断面図である図5(a)および(b)を参照して、サイドプレート12の背面12bの高圧エリアH側の部分は、低圧エリアL側の部分23から最長で段差dだけ窪む傾斜面からなる凹部22を構成している。この凹部22はカバー11の対向面11a(キャビティ14側の面)に対して傾斜する面からなり、図4に示すように略3の字状をしている。凹部22とサイドプレート12の背面12bの低圧エリアL側の部分23との間には、シール13を収容する収容溝20が介在している。
【0023】
通常は、図5(a)に示すように、サイドプレート12の背面12bとカバー11の対向面11aとの間には低圧エリアLに対応して隙間SLが形成されるとともに、高圧エリアHに対応して隙間SHが形成されている。隙間SL,SHを通じてサイドプレート12の背面12bに負荷される背圧とシール13の弾性反発力とによって、サイドプレート12はギア4側へ押しつけられている。図示していないが、厳密には、サイドプレート12のギア側側面12aとギア4との間には、若干の隙間が存在し、サイドプレート12は圧力バランスによって支軸30の軸方向に浮動状に支持されている。
【0024】
ところが、外乱等の何らかの原因で、図5(b)に示すように、サイドプレート12がカバー11側へ押しつけられることがある。この場合、サイドプレート12の背面12bの低圧エリアL側の部分23が当接部としてカバー11の対向面11aに密接するが、高圧エリアH側の部分に相当する凹部22とカバー11の対向面11aとの間には、最長で段差dに相当する隙間SHが形成される。この隙間SHに圧油が導入されることにより、流体固着現象の発生を防止し、サイドプレート12をギア4側へ押しつける図5(a)の状態に戻すことができる。
【0025】
以上説明した本実施の形態によれば、サイドプレート12の背面12bの流体固着現象の発生を確実に防止できるので、高圧時においてサイドプレート12のギヤ側側面12aとギヤ3,4の端面との間の隙間を適正に維持して圧抜けを防止し、ポンプ効率を高く維持できる。しかも、これをサイドプレート12の背面12bの所定部に凹部22を設けるのみの簡単な構成にて達成することができる。また、シール13の弾性反発力を弱めに設定することが可能となり、低速回転時の摩擦トルクを小さくすることができる。
【0026】
また、凹部22を構成する傾斜面は、シール13の収容溝20の高圧エリアH側の縁部がカバー11に最も近く、ケーシング10側へ向かうにしたがってカバー11との距離を遠ざけるように傾斜している。これにより凹部22は背面12aの低圧エリアL側の部分23に対して最長で段差dを有している。
【0027】
したがって、下記の作用効果を奏することができる。すなわち、サイドプレート12の背面12bの低圧エリアL側の部分23がカバー11の対向面11aに密接した状態で、シール13の収容溝20の高圧エリアH側の縁部がカバー11に近接(当接しても良い)するので、収容溝20からシール13がはみ出してシール13の耐久性の悪影響を与えるようなことがない。
【0028】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、サイドプレート12の背面12bがカバー11の対向面11a側へ押しつけられるときに、両者12a,11aが互いに当接する部分と、高圧エリアHに対応して隙間SHを形成する部分とが存在すれば良い。
例えば、上記各実施の形態では、凹部22をサイドプレート12の背面12bの高圧エリアH側の部分の全体に形成したが、高圧エリアH側の部分の一部に収容溝20に達する溝として形成しても良い。
【0029】
また、上記各実施の形態では、凹部22をサイドプレート12の背面12bの高圧エリアH側の部分に形成したが、サイドプレート12の背面12bに対向するカバー11の対向面11aの高圧エリア側の部分に形成するようにしても良い。その他、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【0030】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、外乱等が原因となる流体固着現象の発生を防止し、サイドプレートを常に浮動状に支持して、圧抜けの発生を確実に防止することができる。また、シールの弾性反発力を弱めに設定することが可能となり、低速回転時の摩擦トルクを小さくすることができる。
【0031】
また、従来品に対してサイドプレートとカバーの対向面の少なくとも一方の高圧エリア側部分に凹部を形成するだけで、コスト安価に圧抜け対策が行える。また、収容溝からのシールのはみ出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態のギヤポンプの断面図である。
【図2】 図1のII−II線に沿う断面図であり、ハッチングを省略してある。
【図3】 図1のIII −III 線に沿う断面図である。
【図4】 図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】 図4のV−V線に沿う断面図であり、図5(a)は通常の状態を示し、図5(b)はサイドプレートがカバー側へ押しつけられる状態を示している
【符号の説明】
1 ハウジング
3 駆動ギヤ
4 従動ギヤ
5 吸込室
6 吐出室
10 ケーシング
11 カバー
12 サイドプレート
12a ギア側側面
12b 背面
13 シール
14 キャビティ
20 収容溝
2 凹
23 低圧エリア側の部分
30,40 支軸
31,41 支持孔
L 低圧エリア
H 高圧エリア

Claims (1)

  1. キャビティの端部を閉塞するカバーとギアとの間に介在するサイドプレートを、カバーおよびサイドプレートの互いの対向面の何れか一方に形成した収容溝に収容された3の字状のシールによって、ギアの支軸の軸方向に浮動状に支持するとともに、
    上記3の字状のシールによって、キャビティ内を高圧エリアと低圧エリアに仕切るギヤポンプにおいて、
    上記カバーおよびサイドプレートに、サイドプレートが対向するカバー側へ押圧される力を受けたときに互いに当接する当接部をそれぞれ設け、
    両当接部が互いに当接した状態で、サイドプレートと対向するカバーとの間の高圧エリア側部分に圧油を導入可能な隙間が形成され
    上記両当接部はカバーおよびサイドプレートの低圧エリア側部分を含み、
    上記隙間は、サイドプレートおよびカバーの互いの対向面の少なくとも一方の高圧エリア側部分に設けられた凹部により区画され、
    上記凹部は、収容溝側に近づくにしたがってサイドプレートおよびカバーの互いの対向面間の距離が近くなるような傾斜面により構成されていることを特徴とするギヤポンプ。
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