JP3648598B2 - インク吐出制御方法およびインク吐出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタ等におけるインク吐出制御方法およびインキ吐出装置に関し、さらに詳しくは、電歪素子によりインク吐出圧力を発生する剪断モード型のインクジェットヘッドを用いて、階調数分のインクの液滴を吐出することにより1画素(ドット)を形成するマルチドロップ方式のインク吐出制御方法およびインキ吐出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、印刷しようとする画像に対して2以上の多値化を行い、多値化の結果として得られたドットのオン・オフ信号に基づいて、インクジェットヘッドの各インク吐出ノズルによる記録用紙等の記録媒体へのドットの形成を制御している。
【0003】
インクジェットプリンタには、記録媒体上にインクを吐出するためのインク吐出装置が設けられる。
【0004】
インク吐出装置におけるインク吐出の手法は、基本的には、インク吐出ノズルに至るインク通路において、きわめて短時間、インクを加圧することにより、加圧されたインクがノズル先端から液滴となって吐出されるというものであり、インクに加える圧力の発生メカニズムの相違により、電歪素子の圧電剪断歪み効果を用いて圧力を発生する方法や、熱により発生する気泡を用いて圧力を加える方法等が知られている。
【0005】
電歪素子を用いてインク加圧力を発生するインク吐出装置として、たとえば特開昭63−247051号公報に記載されているように、圧電材料を利用した剪断モード型のものがある。
【0006】
剪断モード型のインク吐出装置は、図1に示すように、複数のインク加圧室(I)が並設されたインクジェットヘッド(2)と、各加圧室(I)ごとに複数の駆動パルスを選択的に印加することにより各加圧室(I)ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段である吐出制御装置(3)とを備えている。
【0007】
インクジェットヘッド(2)の1例が、図2および図3に示されている。
【0008】
ヘッド(2)は圧電材料製の直方体状のヘッド本体(4)を備えており、本体(4)には、その底壁のみを残して、多数のみぞ(スリット)(5)が1方向に等間隔をおいて形成されている。本体(4)の上面に、天板(6)が接着により固着されて、みぞ(5)の上部が塞がれている。本体(4)の前面(図2の左側の面)にノズル板(7)が固着されて、みぞ(5)の前部が塞がれている。各みぞ(5)の後部(図2の右側部)は、共通インク室(8)に連通している。そして、みぞ(5)の部分により、みぞ(5)の間の隔壁(9)で隔てられた加圧室(I)が形成されている。また、各加圧室(I)に対応するノズル板(7)の部分に、それぞれ、インク吐出ノズル(10)が形成されている。
【0009】
各加圧室(I)において、両側の隔壁(9)面の約上半部に板状の駆動電極(11)が設けられ、これら2つの駆動電極(11)が天板(6)の後面に設けられた接続電極(12)に接続されている。ヘッド(2)は、制御装置(3)が設けられた図示しない基板に取り付けられ、各接続電極(12)がそれぞれ制御装置(3)に接続されている。これにより、各加圧室(I)の両側の駆動電極(11)が接続電極(12)を介して制御装置(3)に接続され、制御装置(3)から各加圧室(I)ごとに個別に駆動パルスが印加される。
【0010】
本体(4)を構成する圧電材料は上下方向に分極処理されており、隔壁(9)の両側の駆動電極(11)間に電位差を与えることにより、分極方向と垂直な方向に電界が発生し、圧電剪断歪み効果により隔壁(9)が変形する。この隔壁(9)の変形により、加圧室(I)中に圧力波が発生し、ノズル(10)からインクが吐出される。
【0011】
上記のような剪断モード型のインクジェットヘッド(2)は、その構造上、隣接する加圧室(I)から同時にインクを吐出することができない。隣接する加圧室(I)は隔壁(9)を共有しており、隣接する加圧室(I)から同時にインクを吐出しようとすると、クロストークが発生するからである。そのため、加圧室(I)を3つ以上のグループに分け、各グループから順次インクを吐出するヘッド(2)のインク吐出制御方法が提案されている。
【0012】
次に、図12および図13を参照して、加圧室(I)をA、B、Cの3つのグループに分けた場合のインクの吐出制御動作について説明する。図12はインクを吐出するときの隔壁(9)および加圧室(IA)(IB)(IC)の状態変化を示し、図13はそのときに加圧室(IA)(IB)(IC)に印加される駆動パルスおよび駆動パルスにより発生する各隔壁(9)における駆動電極(11)間の電位差すなわち隣接する加圧室(IA)(IB)(IC)間の電位差を示している。
【0013】
図12において、加圧室を表す符号「I」の後の「A」、「B」および「C」は、グループ名を表している。加圧室は符号(I)で総称し、区別する必要があるときは、「I」の後に、グループ名を表す「A」、「B」あるいは「C」を付けることにする。図12には、3つの加圧室(IA)(IB)(IC)だけが示されているが、各グループは、等間隔をおいて配置された複数の加圧室(I)よりなり、複数の加圧室(I)が、図12の左から右に、(IA)(IB)(IC)(IA)(IB)(IC)………の順に並んでいる。そして、A、B、C、A、B、C、………の順に各グループの加圧室(I)から繰り返しインクが吐出される。
【0014】
図12および図13は、Bグループの加圧室(IB)からインクを吐出する場合を示しており、図13には、加圧室(IB)に印加される駆動パルス、加圧室(IA)(IC)に印加される駆動パルス、および加圧室(IB)とこれに隣接する加圧室(IA)(IC)との間の電位差が示されている。
【0015】
この場合、図13に示すように、1滴のインクの吐出を制御する期間である単滴吐出制御期間tの最初に、加圧室(IB)に第1駆動パルスP1が印加され、その後に、加圧室(IA)(IC)に第3駆動パルスP3が印加される。第1駆動パルスP1の立ち下がりと、第3駆動パルスP3の立ち上がりとは、同時であり、第3駆動パルスP3のパルス幅(印加時間)τ3は、第1駆動パルスP1のパルス幅τ1の2倍である。
【0016】
3つの加圧室(IA)(IB)(IC)のいずれにも駆動パルスが印加されていない場合は、加圧室(IB)と隣接する加圧室(IA)(IC)との間の電位差は0であり、図12(a)に示すように、隔壁(9)は変形のない正立状態であり、インク室(IB)は通常状態(自然状態)になっている。加圧室(IB)に第1駆動パルスP1が印加されると、加圧室(IB)と隣接する加圧室(IA)(IC)との間に正の電位差が生じるため、図12(b)に示すように、加圧室(IB)の両側の隔壁(9)に隣接する加圧室(IA)(IC)側への変形が生じ、加圧室(IB)が拡張状態になる。加圧室(IB)に対する第1駆動パルスP1がなくなって、加圧室(IA)(IC)に第3駆動パルスP3が印加されると、加圧室(IB)と隣接する加圧室(IA)(IC)との間に負の電位差が生じるため、図12(c)に示すように、加圧室(IB)の両側の隔壁(9)に加圧室(IB)側への変形が生じ、加圧室(IB)が収縮状態になる。第3駆動パルスP3がなくなると、加圧室(IB)と隣接する加圧室(IA)(IC)との間の電位差が0になり、図12(a)に示すように、隔壁(9)が変形のない正立状態になって、インク室(IB)が通常状態に戻る。そして、このように加圧室(IB)が通常状態から拡張状態および収縮状態に所定時間保持された後に通常状態に戻ることにより、加圧室(IB)からノズル(10)を通して1滴のインクが吐出される。この場合、第1駆動パルスP1の立ち上がり時に加圧室(IB)が拡張することにより発生する共通インク室(8)からのインク流入による圧力波と、第3駆動パルスP3の立ち上がり時にインク室(IB)が拡張状態から急激に収縮することにより発生する圧力波により、インク吐出力が得られる。
【0017】
インクの吐出速度(吐出力)は、加圧室(IB)を拡張状態にするときの駆動パルス(第1駆動パルスP1)のパルス幅(印加時間)τ1によって変わり、パルス幅τ1が、上記の圧力波が加圧室(IB)の長さ方向(図2の左右方向)を片道伝播する時間と等しい場合に、吐出速度が最大となる。たとえば、加圧室(IB)の長さをL、インク中の音速をUとすると、パルス幅τ1が(L/U)のときに、吐出速度が最大となる。
【0018】
上記のようにBグループのある加圧室(IB)からインクを吐出する場合、Bグループの中でインクの吐出を行わない加圧室(IB)については、それに隣接する加圧室(IA)(IC)と同様に、第3駆動パルスP3が印加される。このため、加圧室(IB)と隣接する加圧室(IA)(IC)との間の電位差は0であり、加圧室(IB)の両側の隔壁(9)に変形が生じず、加圧室(IB)の状態の変化も生じない。また、AグループまたはCグループの加圧室(IA)(IC)からインクを吐出する場合についても、上記と同様である。
【0019】
上記のインク吐出装置では、同一の加圧室(I)から印字データの階調数分の液滴を連続して吐出することによって1画素を形成するいわゆるマルチドロップ方式のインク吐出制御が行われる。
【0020】
そのため、従来は、図13に示す単滴吐出制御期間tを駆動周期とし、インクを吐出するグループの所定の加圧室(I)について、図12および図13に示す同じ動作を階調数分繰り返すようになっている。印字データの階調は、通常、0〜7の8階調であり、最大の階調数7の場合、図12および図13の動作が7回繰り返される。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなマルチドロップ方式のインク吐出制御においては、インク吐出周波数を高くすると、周波数によっては、ノズル内でのメニスカス振動の影響や、インク加圧室内での残留圧力波の影響により、インクの吐出が不安定になりやすい。そのため、たとえば、連続吐出時の液滴の吐出速度や体積が変動して不均一となり、印字品質が低下するといった問題があった。
【0022】
とくに上記の従来のインク吐出装置およびインク吐出制御方法では、単滴吐出制御期間を駆動周期として、印字データの階調数分、同じ駆動周期を繰り返すため、次に説明するように、階調数によって、インク吐出速度のばらつきおよび印字ドットの位置ずれが生じるという問題がある。
【0023】
マルチドロップ方式によりインクの液滴量を制御するには、液滴が記録用紙の紙面に到達する時点、もしくは、それ以前に、複数の液滴が合体し、一体となっていることが望ましく、そのためには、1発目の液滴の吐出速度よりも後続の液滴の吐出速度の方が速くなるように制御することが必要である。理想的には、n発目の吐出速度Vnは、1発目の吐出速度をV1、吐出周期(駆動周期)をt、インクジェットヘッドから紙面までの距離をLとすると、次の式の値になるように制御するとよい。
Vn=V1/{1−V1・t・(n−1)/L}
個々の液滴の吐出速度は、第1駆動パルスのパルス幅で制御が可能であるが、インク加圧室が収縮状態から通常状態に戻ることにより発生した負圧がインク吐出後のインク加圧室の残留振動に影響を与え、また、個々の液滴の吐出周期が次の液滴吐出時のメニスカスの初期状態に影響を与え、結果として、様々なパラメータが吐出速度に影響を与えることになる。したがって、従来のように、単滴吐出制御期間を駆動周期として、印字データの階調数分、同じ駆動周期を繰り返すだけでは、小液滴から大液滴の吐出速度を上記のように制御することは不可能である。このため、従来の方法では、連続して吐出する液滴数、すなわち、階調数によって、インク吐出速度や印字ドットの位置にばらつきが生じる。
【0024】
図14は、吐出液滴数による吐出速度の変化を示すグラフであり、横軸は吐出液滴数を、縦軸は吐出速度を表している。
【0025】
1、2、3、4、5、6および7の液滴数における理想的な吐出速度を、前記の式を用いて求めると、それぞれ、8、8.31、8.64、9、9.4、9.81および10.31(m/s)となり、これをプロットすると、図14に破線で示すようになる。ところが、実際には、図14に実線で示すように、前の液滴の残留振動の影響が小さい最初の液滴と前の液滴の残留振動の影響が大きい後続の液滴との吐出速度の差が大きく、理想的な吐出速度の制御は不可能である。
【0026】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、階調数によるインク吐出速度のばらつきや印字ドットの位置ずれを極力小さくすることができるインク吐出制御方法およびインク吐出装置を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によるインク吐出制御方法は、圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備えたインク吐出装置において、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するインク吐出制御方法であって、インク加圧室を、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分け、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみを該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとするとともに、各駆動周期ごとに各組のグループを順に吐出対象グループとし、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室を、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とするインク吐出制御方法において、駆動周期を、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とし、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とを予め定めておき、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにし、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加し、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅を予め定めておくことを特徴とするものである。
【0028】
たとえば、第3駆動パルスの立ち上がりは、第1駆動パルスの立ち下がりと同時である。第2駆動パルスと第3駆動パルスのパルス幅(印加時間)は、同じである。また、第2駆動パルスの立ち上がりは、第3駆動パルスの立ち上がりと同時にしてもよいし、少し異ならせてもよい。
【0029】
駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅は、たとえば、インク加圧室内のインクに作用する圧力波がインク加圧室を片道伝播する時間等を考慮して、決定される。
【0030】
本発明のインク吐出制御方法によれば、複数のグループのインク加圧室から順次インクを吐出することができ、しかも、駆動周期を、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とし、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とを予め定めておき、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにすることにより、階調数ごとに、所望の吐出速度に制御することが可能となり、階調数による吐出速度のばらつきや、インクの着弾位置すなわち印字ドットの位置のずれを極力小さくすることができる。
【0031】
各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加することにより、所望のインク加圧室から確実にインクを吐出し、所望のインク加圧室からインクを吐出しないようにすることができる。
【0032】
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅を予め定めておくことにより、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となり、インクの着弾位置のずれを極力小さくすることができる。
【0033】
本発明によるインク吐出制御方法は、また、圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備えたインク吐出装置において、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するインク吐出制御方法であって、インク加圧室を、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分け、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみを該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとするとともに、各駆動周期ごとに各組のグループを順に吐出対象グループとし、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室を、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とするインク吐出制御方法において、駆動周期を、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とし、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とを予め定めておき、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにし、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加し、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間を予め定めておくことを特徴とするものである。
【0034】
本発明のインク吐出制御方法によれば、上記同様、所望のインク加圧室から確実にインクを吐出し、所望のインク加圧室からインクを吐出しないようにすることができ、諧調数による吐出速度のばらつきや印字ドットの位置のずれを極力小さくすることができる。
【0038】
マルチドロップ方式のインク吐出制御において、複数の液滴で1画素を形成して階調を表現するためには、後発の液滴が紙面に到達する瞬間あるいはその前に先発の液滴に衝突し、1つの液滴となって紙面に着弾するのが望ましく、先発の液滴より後発の液滴の吐出速度が速くなるように吐出速度を調整することが必要となる。その場合、最後発の液滴は、吐出のタイミングが最も遅く、しかも吐出速度が最も速いため、合体した液滴の吐出速度を決定するのは、最後発の液滴ということになる。
【0039】
したがって、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間を予め定めておくことにより、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となり、インクの着弾位置のずれを極力小さくすることができる。
【0040】
上記のインク吐出制御方法において、たとえば、各単滴吐出制御期間において、第3駆動パルスのパルス幅を、直前の第1駆動パルスのパルス幅のほぼ2倍とし、第3駆動パルスの立ち上がりを、直前の第1駆動パルスの立ち下がりとほぼ同時とする。
【0041】
これによれば、吐出期間の吐出対象インク加圧室を拡張状態および収縮状態に変化させて、このインク加圧室から確実にインクを吐出することができる。
【0042】
上記のインク吐出制御方法において、たとえば、各単滴吐出制御期間において、第2駆動パルスと第3駆動パルスの位相を異ならせる。
【0043】
これによれば、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に、第2駆動パルスと第3駆動パルスの位相がずれた短い期間、液滴が吐出されない程度の圧力波を生じさせて、発熱を生じさせることができる。したがって、吐出対象グループのうちの連続してインクを吐出するインク加圧室と、連続してインクを吐出しないインク加圧室との間の発熱量の差を小さくして、これらの間に温度差が生じることによる不具合を解消することができる。
【0044】
上記のインク吐出制御方法において、たとえば、第1、第2および第3駆動パルスの電圧値が一定である。
【0045】
これによれば、吐出制御手段において、駆動パルス印加のために1つの共通の電源を用いることができ、コスト低減が可能である。
【0046】
本発明によるインク吐出装置は、圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備え、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するようにしたインク吐出装置であって、インク加圧室が、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分けられ、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみが該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとされるとともに、各駆動周期ごとに各組のグループが順に吐出対象グループとされ、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室が、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とされるインク吐出装置において、駆動周期が、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とされ、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とが予め定められており、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにするものであって、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加するものであり、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅が予め定められていることを特徴とするものである。
【0049】
本発明のインク吐出装置によれば、複数のグループのインク加圧室から順次インクを吐出することができ、しかも、駆動周期が、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とされ、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とが予め定められており、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにしたから、階調数ごとに、所望の吐出速度に制御することが可能となり、階調数による吐出速度のばらつきや、インクの着弾位置すなわち印字ドットの位置のずれを極力小さくすることができる。
【0050】
吐出制御手段が、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加することにより、インク吐出もしくは非吐出時の隣接インク加圧室へのクロストークの状態をほぼ同等とすることができる。
【0052】
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅が予め定められていることにより、上記同様、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となり、インクの着弾位置のずれを極力小さくすることができる。
【0053】
本発明によるインク吐出装置は、また、圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備え、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するようにしたインク吐出装置であって、インク加圧室が、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分けられ、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみが該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとされるとともに、各駆動周期ごとに各組のグループが順に吐出対象グループとされ、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室が、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とされるインク吐出装置において、駆動周期が、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とされ、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とが予め定められており、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにするものであって、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加するものであり、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間が予め定められていることを特徴とするものである。
【0054】
本発明のインク吐出制御装置によれば、上記同様、所望のインク加圧室から確実にインクを吐出し、所望のインク加圧室からインクを吐出しないようにすることができ、諧調数による吐出速度のばらつきや印字ドットの位置のずれを極力小さくすることができる。
【0055】
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間が予め定められていることにより、上記同様、駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となり、インクの着弾位置のずれを極力小さくすることができる。
【0056】
上記のインク吐出装置において、たとえば、各単滴吐出制御期間において、第3駆動パルスのパルス幅が、直前の第1駆動パルスのパルス幅のほぼ2倍とされ、第3駆動パルスの立ち上がりが、直前の第1駆動パルスの立ち下がりとほぼ同時とされている。
【0057】
これによれば、上記同様、吐出期間の吐出対象インク加圧室から最も効率的にインクを吐出することが可能となると同時に、残留振動を最も効率的にキャンセルすることができる。
【0058】
上記のインク吐出装置において、たとえば、各単滴吐出制御期間において、第2駆動パルスと第3駆動パルスの位相が異なっている。
【0059】
これによれば、上記同様、吐出対象グループのうちの連続してインクを吐出するインク加圧室と、連続してインクを吐出しないインク加圧室との間の発熱量の差を小さくして、これらの間に温度差が生じることによる不具合を解消することができる。
【0060】
上記のインク吐出装置において、たとえば、第1、第2および第3駆動パルスの電圧値が一定である。
【0061】
これによれば、上記同様、吐出制御手段において、駆動パルス印加のために1つの共通の電源を用いることができ、コスト低減が可能である。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図11を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0063】
インク吐出装置の全体構成は、既に説明した図1のものと同じであり、吐出制御装置(3)の動作が従来例と異なる。また、インクジェットヘッド(2)の構成も、既に説明した図2および図3のものと同じである。
【0064】
インクジェットヘッド(2)の1具体例を挙げると、次のとおりである。
【0065】
各インク加圧室(I)の高さは300μm、幅(図3における左右幅)は71μm、長さ(図2における左右長さ)は1mm、隔壁(9)の幅は70μm、加圧室(I)のピッチは180dpiである。ヘッド本体(4)に加圧室(I)を構成するみぞ(5)を形成して、隔壁(9)を形成した後、隔壁(9)の上半部(高さ150μm)にアルミニウムを斜め真空蒸着により形成し、蒸着後、隔壁(9)上面に付着したアルミニウムを研磨して除去することにより、隔壁(9)の両側に、互いに分離した駆動電極(11)を形成し、その後、適宜な手段により接続電極(12)を形成した天板(6)を隔壁(9)の上面に接着し、各みぞ(5)の両側の駆動電極(11)を天板(6)の対応する接続電極(12)に電気的に接続する。ヘッド本体(4)に対する天板(6)の接着層の厚さは、1μm以下である。ノズル板(7)に形成されたノズル(10)の吐出側の内径は20μmである。ノズル板(7)を構成するポリイミドフィルムに撥水膜を塗布した後、エキシマレーザでスルーホールを形成することにより、ノズル(10)を形成する。ノズル(10)のピッチは、加圧室(I)のピッチと同じ180dpiである。
【0066】
次に、図4〜図11を参照して、制御装置(3)の動作すなわちインク吐出制御方法の1例について説明する。
【0067】
図4は、図12と同様、インクを吐出するときのインクジェットヘッド(2)における隔壁(9)およびインク加圧室(I)の状態変化を示している。この場合も、従来例と同様、加圧室(I)はA、B、Cの3つのグループに分けられている。図4において、各グループの加圧室を表す符号「IA」、「IB」、「IC」の後の数字「1」、「2」、「3」、………は、各グループの加圧室の番号を表している。各グループの加圧室は符号(IA)(IB)(IC)で総称し、区別する必要があるときは、「IA」、「IB」、「IC」の後に、番号を表す数字を付けることにする。
【0068】
この例では、従来のように単滴吐出制御期間を駆動周期とするのではなく、図5あるいは図6に示すように、単滴吐出制御期間tの最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間を駆動周期Tとし、各駆動周期Tごとに、1組のグループの所定の加圧室(I)から印字データの階調数分の液滴を吐出するようになっている。印字データの階調は、従来例と同様、0〜7の8階調であり、最大階調数は7である。図5および図6において、C1、C2、C3、C4、C5、C6およびC7は、各駆動周期における単滴吐出制御期間tの番号を表している。
【0069】
また、この場合も、駆動周期Tごとに、A、B、C、A、B、C、………の順に各グループの加圧室(I)から繰り返しインクが吐出される。つまり、連続する駆動周期Tにおいて、各駆動周期について1組のグループのみをその駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとするとともに、各駆動周期ごとに各組のグループを順に吐出対象グループとする。そして、各駆動周期Tごとに、吐出対象グループのうちの所定の加圧室(I)を、その駆動周期にインクを吐出する吐出対象インク加圧室とする。なお、各駆動周期において、吐出対象グループ以外の2組のグループを非吐出対象グループといい、吐出対象グループのうち、吐出対象インク加圧室以外のインク加圧室(I)を非吐出対象インク加圧室という。また、駆動周期Tの7つの単滴吐出制御期間tについて、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とが予め定められ、各駆動周期Tごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間tにインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間tにはインクを吐出しないようになっている。なお、このように、駆動周期Tの7つの単滴吐出制御期間tについて、階調数によってどの単滴吐出制御期間tを吐出期間としてどの期間を非吐出期間とするかを予め定めたものを、吐出制御パターンと呼ぶことにする。
【0070】
図5は、階調数ごとに予め定められた吐出制御パターンの1例を示している。
【0071】
図5において、階調数が1の場合、第1単滴吐出制御期間C1が吐出期間で、他は非吐出期間である。階調数が2の場合、第2および第3単滴吐出制御期間C2、C3が吐出期間で、他は非吐出期間である。階調数が3の場合、第3、第4および第5単滴吐出制御期間C3、C4、C5が吐出期間で、他は非吐出期間である。階調数が4の場合、第3、第4、第5および第6単滴吐出制御期間C3、C4、C5およびC6が吐出期間で、他は非吐出期間である。階調数が5の場合、第3、第4、第5、第6および第7単滴吐出制御期間C3、C4、C5、C6およびC7が吐出期間で、他は非吐出期間である。階調数が6の場合、第2、第3、第4、第5、第6および第7単滴吐出制御期間C1、C2、C3、C4、C5、C6およびC7が吐出期間で、他は非吐出期間である。階調数が7の場合、7つの単滴吐出制御期間C1〜C7全てが吐出期間である。
【0072】
図6は、駆動周期Tの7つの単滴吐出制御期間tにおける、吐出対象インク加圧室に印加する駆動パルス、それに隣接する非吐出対象グループのインク加圧室に印加する駆動パルス、および吐出対象インク加圧室とその両側の非対象グループのインク加圧室との間の電位差を示している。なお、図6は、階調数が5の場合を示している。
【0073】
図4は、Bグループが吐出対象グループとなっており、Bグループの駆動対象加圧室(IB1)(IB2)(IB3)のうち、第2および第3加圧室(IB2)(IB3)が吐出期間で、第1加圧室(IB1)が非吐出期間である状態を示している。また、図7は、吐出期間であるBグループ第2および第3加圧室(IB2)(IB3)に印加される駆動パルス、これらに隣接する非吐出対象グループである加圧室(IA)(IC)に印加される駆動パルス、および加圧室(IB2)(IB3)とそれらの両側の加圧室(IA)(IC)との間の電位差を示し、図8は、非吐出期間であるBグループ第1加圧室(IB1)に印加される駆動パルス、これらに隣接する非吐出対象グループである加圧室(IA)(IC)に印加される駆動パルス、および加圧室(IB1)とその両側の加圧室(IA)(IC)との間の電位差を示している。
【0074】
インクジェットヘッド(2)におけるインクの吐出原理は、従来例と同様であるが、加圧室(I)に印加する駆動パルスが従来例の場合と異なっている。
【0075】
次に、図7および図8を参照して、加圧室(I)に印加する駆動パルスと、それによるインクの吐出動作について説明する。
【0076】
図7に示すように、吐出期間である加圧室(IB2)(IB3)には、単滴吐出制御期間tの最初に、第1駆動パルスP1が印加され、その後に、その両側にある非吐出グループの加圧室(IA)(IB)に第3駆動パルスP3が印加される。第1および第3駆動パルスP1、P3は、従来例のものと同様であり、第1駆動パルスP1の立ち下がりと、第3駆動パルスP3の立ち上がりは、同時である。また、第3駆動パルスP3のパルス幅τ3は、第1駆動パルスP1のパルス幅τ1の2倍である。そして、これにより、従来例の場合と同様に、加圧室(IB2)(IB3)から1滴のインクが吐出される。
【0077】
図8に示すように、非吐出期間である加圧室(IB1)には、第2駆動パルスP2が印加され、その両側にある非吐出グループの加圧室(IA)(IB)には、第3駆動パルスP3が印加される。第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3は、パルス幅τ2、τ3が互いに等しく、位相が互いに少しずれている。このため、位相がずれた部分で、加圧室(IB1)と加圧室(IA)(IC)との間に電位差が生じるが、その時間が短いため、インクの吐出は行われない。
【0078】
上記の制御装置(3)において、階調数ごとの吐出制御パターン、単滴吐出制御期間tの周期、第1駆動パルスP1のパルス幅τ1等は、駆動周期T中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、定められる。また、吐出制御パターンを定める際に、駆動周期T中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間を予め定めておくのが望ましい。
【0079】
上記のようなインク吐出装置では、個々の液滴の吐出速度は、第1駆動パルスP1のパルス幅τ1によって制御することが可能である。
【0080】
図9は、第1駆動パルスP1のパルス幅τ1と、一定の吐出速度を得る電圧値との関係を実験により求めた結果を示すグラフであり、横軸はパルス幅τ1を、縦軸は電圧値を表している。第1駆動パルスP1の電圧値が一定であるとすれば、図9のグラフにおいて電圧値の低い部分の方が吐出速度が大きいことになる。図9に示すような関係を利用して、たとえば、吐出速度が速すぎる場合は、吐出速度の小さいパルス幅を選択し、逆に吐出速度が遅すぎる場合は、吐出速度の大きいパルス幅を選択することにより、個々の液滴の吐出速度を制御することが可能である。
【0081】
図10は、液滴の連続吐出周期すなわち単滴吐出制御期間tの周期と、液滴の吐出速度との関係を実験により求めた結果を示すグラフであり、横軸は図6の吐出期間あるいは図7における第3駆動パルスP3の立ち下がりから次の第1駆動パルスP1の立ち上がりまでの休止時間を、縦軸は液滴の吐出速度を表している。図10より、休止時間によって吐出速度が周期的に変化していることがわかる。休止時間を変えると、単滴吐出制御期間(T)の周期が変わる。したがって、連続する液滴の吐出周期すなわち単滴吐出制御期間tの周期を変えることにより、液滴の吐出速度を制御することが可能である。
【0082】
上記の結果より、第1駆動パルスP1のパルス幅あるいは単滴吐出制御期間tの周期を変えることにより、液滴の吐出速度を制御することが可能である。
【0083】
さらに、図5に示すような吐出制御パターンを用いて、階調数ごとに液滴の吐出タイミングを変えることにより、記録媒体に対する液滴の着弾位置を制御して、着弾位置のずれを小さくすることが可能である。
【0084】
図11は、従来の吐出制御方法と上記の実施形態における吐出制御方法について、階調数に対する液滴の着弾位置のずれを比較した実験結果を示すグラフであり、横軸は階調数すなわち吐出液滴数を、縦軸は液滴の着弾位置ずれを表している。また、破線は、単滴吐出制御期間tを駆動周期とし、階調数分の液滴を連続して吐出する従来の吐出制御方法による結果を、実線は、吐出制御パターンを用いて、階調数ごとに吐出タイミングを変えた上記の実施形態における吐出制御方法による結果を示している。図11より、従来の吐出制御方法では、階調数によって液滴の着弾位置にかなり大きなずれが生じているが、上記の実施形態における吐出制御方法によれば、階調数による液滴の着弾位置のずれを小さくできることがわかる。
【0085】
また、上記の実施形態における吐出制御方法によれば、図8に示すように、非吐出期間である吐出対象加圧室(IB1)に印加する第2駆動パルスP2のパルス幅τ2と、その両側の非吐出対象グループの加圧室(IA1)(IC1)に印加する第3駆動パルスP3の周期τ3とを互いに等しくし、かつ第2および第3駆動パルスP2、P3の位相を互いに少し異ならせているので、次に説明するように、加圧室(I)の間の発熱量の差を小さくして、加圧室(I)の間に温度差生じることによる不具合を解消することができる。
【0086】
マルチドロップ方式の吐出制御においては、圧電材料よりなる加圧室(I)間の隔壁(9)を高周波数で変形させるため、ヒステリシス損による発熱が無視できない。とくに、前記の従来の吐出制御方法では、前記のように、吐出対象グループであっても、吐出を行わない加圧室(I)については、隔壁(9)に変形が生じないので、最大階調数分の吐出を繰り返す加圧室(I)と、吐出を行わない加圧室(I)との間の発熱量の差が大きく、これらの間に大きな温度差が生じる。とくに粘度等のインクの特性は温度によって変化し、加圧室(I)の間の温度差は、インクの吐出速度、吐出体積のばらつき等の不具合の原因となる。これに対し、上記の実施形態における吐出制御方法では、第2駆動パルスP2と第3駆動パルスP3の位相が少しずれていることにより、図8について前に説明したように、非吐出期間である吐出対象加圧室(IB1)の両側の隔壁(9)が変形し、ヒステリシス損による発熱が生じる。したがって、最大階調数分の吐出を繰り返す加圧室(I)と、吐出を行わない加圧室(I)との間の発熱量の差が小さく、これらの間の温度差も小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施形態を示すインク吐出装置の構成図である。
【図2】図2は、インクジェットヘッドの1例を示す垂直断面図である。
【図3】図3は、図2のIII線の断面図である。
【図4】図4は、インク吐出時のインクジェットヘッドの動作を示す説明図である。
【図5】図5は、階調数ごとに定めた吐出制御パターンの1例を示す説明図である。
【図6】図6は、1駆動周期における駆動パルスおよび隔壁の電位差の1例を示す説明図である。
【図7】図7は、吐出期間である吐出対象インク加圧室とその両側の非吐出対象グループのインク加圧室に印加する駆動パルスおよび隔壁の電位差の1例を示す説明図である。
【図8】図8は、非吐出期間である吐出対象インク加圧室とその両側の非吐出対象グループのインク加圧室に印加する駆動パルスおよび隔壁の電位差の1例を示す説明図である。
【図9】図9は、第1駆動パルスのパルス幅と、一定の吐出速度を得る電圧値との関係を実験により求めた結果を示すグラフである。
【図10】図10は、液滴の連続吐出周期と、液滴の吐出速度との関係を実験により求めた結果を示すグラフである。
【図11】図11は、従来の吐出制御方法と本発明の実施形態における吐出制御方法について、階調数に対する液滴の着弾位置のずれを比較した実験結果を示すグラフである。
【図12】図12は、従来のインク吐出制御方法におけるインク吐出時のインクジェットヘッドの動作を示す説明図である。
【図13】図13は、従来のインク吐出制御方法において、インク吐出時に各インク加圧室に印加する駆動パルスおよび隔壁の電位差を示す説明図である。
【図14】図14は、従来のインク吐出制御方法における吐出液滴数による吐出速度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
(2) インクジェットヘッド
(3) 制御装置
(9) 隔壁
(I) インク加圧室
Claims (10)
- 圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備えたインク吐出装置において、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するインク吐出制御方法であって、
インク加圧室を、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分け、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみを該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとするとともに、各駆動周期ごとに各組のグループを順に吐出対象グループとし、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室を、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とするインク吐出制御方法において、
駆動周期を、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とし、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とを予め定めておき、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにし、
各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加し、
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅を予め定めておくことを特徴とするインク吐出制御方法。 - 圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備えたインク吐出装置において、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するインク吐出制御方法であって、
インク加圧室を、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分け、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみを該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとするとともに、各駆動周期ごとに各組のグループを順に吐出対象グループとし、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室を、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とするインク吐出制御方法において、
駆動周期を、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とし、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とを予め定めておき、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにし、
各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加し、
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間を予め定めておくことを特徴とするインク吐出制御方法。 - 各単滴吐出制御期間において、第3駆動パルスのパルス幅を、直前の第1駆動パルスのパルス幅のほぼ2倍とし、第3駆動パルスの立ち上がりを、直前の第1駆動パルスの立ち下がりとほぼ同時とすることを特徴とする請求項1または2のインク吐出制御方法。
- 各単滴吐出制御期間において、第2駆動パルスと第3駆動パルスの位相を異ならせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項のインク吐出制御方法。
- 第1、第2および第3駆動パルスの電圧値が一定であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項のインク吐出制御方法。
- 圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備え、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するようにしたインク吐出装置であって、
インク加圧室が、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分けられ、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみが該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとされるとともに、各駆動周期ごとに各組のグループが順に吐出対象グループとされ、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室が、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とされるインク吐出装置において、
駆動周期が、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とされ、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とが予め定められており、
吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにするものであって、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加するものであり、
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、駆動周期中の単滴吐出制御期間の周期および第1駆動パルスのパルス幅が予め定められていることを特徴とするインク吐出装置。 - 圧電部材よりなる隔壁を介して並設された複数のインク加圧室を有するインクジェットヘッドと、各インク加圧室ごとに両側の隔壁面に複数種類の駆動パルスを選択的に印加することにより各インク加圧室ごとにインクの吐出・非吐出を制御する吐出制御手段とを備え、吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、所定の吐出対象インク加圧室から印字データの階調数分の液滴を吐出するようにしたインク吐出装置であって、
インク加圧室が、等間隔をおいて配置された複数のインク加圧室よりなる所定組数のグループに分けられ、連続する駆動周期において、各駆動周期について1組のグループのみが該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象グループとされるとともに、各駆動周期ごとに各組のグループが順に吐出対象グループとされ、各駆動周期ごとに、吐出対象グループのうちの所定のインク加圧室が、該駆動周期にインクの吐出を行う吐出対象インク加圧室とされるインク吐出装置において、
駆動周期が、単滴吐出制御期間の最大階調数分に相当する最大液滴吐出期間とされ、駆動周期中の複数の単滴吐出制御期間について、階調数により、インクを吐出する階調数分の吐出期間と、インクを吐出しない残りの非吐出期間とが予め定められており、
吐出制御手段が、各駆動周期ごとに、吐出対象インク加圧室について、吐出期間である単滴吐出制御期間にインクを吐出し、非吐出期間である単滴吐出制御期間にはインクを吐出しないようにするものであって、各単滴吐出制御期間ごとに、吐出対象グループのうちのインクを吐出するインク加圧室に対して第1駆動パルスを印加し、吐出対象グループのうちのインクを吐出しないインク加圧室に対して第2駆動パルスを印加し、吐出対象グループ以外のインク加圧室に対して第3駆動パルスを印加するものであり、
駆動周期中に吐出される最後発の液滴が記録媒体に着弾する時間が階調数によらずにほぼ同時となるように、階調数ごとに、最後発の液滴を吐出する吐出期間が予め定められていることを特徴とするインク吐出装置。 - 各単滴吐出制御期間において、第3駆動パルスのパルス幅が、直前の第1駆動パルスのパルス幅のほぼ2倍とされ、第3駆動パルスの立ち上がりが、直前の第1駆動パルスの立ち下がりとほぼ同時とされていることを特徴とする請求項6または7のインク吐出装置。
- 各単滴吐出制御期間において、第2駆動パルスと第3駆動パルスの位相が異なっていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項のインク吐出装置。
- 第1、第2および第3駆動パルスの電圧値が一定であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項のインク吐出装置。
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