JP3646793B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,プラズマ処理装置にかかり,特に高周波アンテナに高周波電力を印加することにより処理室内に誘導プラズマを励起する誘導結合プラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年,半導体デバイスやLCDの超高集積化に伴って,サブミクロン単位,さらにサブハーフミクロン単位の超微細加工を行う必要が生じている。そして,かかるプロセスをプラズマ処理装置により実施するためには,高真空雰囲気(例えば1〜70mTorr)において,高密度のプラズマを高い精度で制御することが重要であり,しかもそのプラズマは大口径ウェハや大型のLCD基板にも対応できるように,大面積で高均一なものであることが必要である。
【0003】
このような技術的要求に対して,新しいプラズマソースを確立すべく,多くのアプローチがなされている。例えば,欧州特許公開明細書第379828号には,高周波アンテナを用いる高周波誘導結合プラズマ処理装置が開示されている。この高周波誘導プラズマ処理装置10は,図8に示すように,被処理体12を載置する載置台14と対向する処理室16の一面(天井面)を石英ガラスなどの誘電体18で構成して,その外壁面に,例えば渦巻きコイルから成る高周波アンテナ20を設置し,この高周波アンテナ20に高周波電源22よりマッチング回路24を介して高周波電力を印加することにより処理室16内に高周波による電界を形成し,この電界内を流れる電子を処理ガスの中性粒子に衝突させてガスを電離させ,プラズマを生成するように構成されている。なお,載置台14には,被処理体12の処理面へのプラズマ流の入射を促進するように,高周波電源26よりバイアス用の高周波電力を印加することが可能である。また,処理室16の底部には,処理室16内を所定の圧力雰囲気にするように不図示の排気手段に連通する排気口28が設けられるとともに,処理室16の天井面を成す誘電体18の中央部には所定の処理ガスを処理室16内に導入するための処理ガス導入口30が設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,上記のような従来の高周波誘導結合プラズマ処理装置においては,高周波アンテナが設置される誘電体は,高真空雰囲気に保持される処理室の天井部を構成しているので,外気と処理室内との圧力差に抗するために,誘電体の肉厚を厚くせねばならず,その結果,高周波電源からの投入エネルギーの利用効率が悪いという問題があった。そして,上記問題は,特に大口径ウェハや大面積LCD基板を処理するための大型のプラズマ処理装置において顕著であった。
【0005】
さらに,高周波誘導結合プラズマ処理装置においては,高周波アンテナのピッチおよび誘電体の厚みにより,処理室内に励起されるプラズマの分布および密度が変化する。しかし,上記のような従来の高周波誘導結合プラズマ処理装置では,誘電体の厚みの調整には限界があるため,プラズマの分布および密度の調整にも自ずと限界が生じざるを得なかった。そして,この問題も,特に,大口径ウェハや大面積のLCD基板を処理するための大型のプラズマ処理装置において顕著であった。
【0006】
さらに,高周波誘導結合プラズマ処理装置においては,高周波アンテナに高周波電力を印加すると,高周波アンテナが過熱し熱膨張することが知られている。したがって,高周波アンテナを,熱膨張率の異なる他の材料,例えば誘電体中に埋設することは困難であった。
【0007】
本発明は,従来の高周波誘導結合プラズマ処理装置が有する上記のような問題点に鑑みて成されたものであり,その目的は,高周波電源から投入されるエネルギーの利用効率を高め,高真空条件下であってもより高密度で均一なプラズマを発生させることが可能であり,さらにまた熱膨張率の異なる材料中に高周波アンテナを埋設することが可能な新規かつ改良された高周波誘導結合プラズマ処理装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために,本発明よれば,高周波アンテナに高周波電力を印加することにより,誘電体を介して処理室内に誘導結合プラズマを励起し,上記処理室内の被処理体,例えばLCD基板に対して所定のプラズマ処理を施すように構成されたプラズマ処理装置において,上記高周波アンテナは,密に配される領域と疎に配される領域とを有することを特徴とする,プラズマ処理装置が提供される。
このとき,上記高周波アンテナは,前期被処理体の中心点と略対向する部分を中心として略渦巻き状に数ターン巻かれて密に配される内周部と,この内周部から所定の間隔離れて数ターン巻かれて密に配される外周部と,上記内周部と上記外周部との間にて疎に配される中間部とからなるように構成される。上記高周波アンテナは,上記処理室内に載置される被処理体に対して略点対称状に配置されるように構成してもよい。上記高周波アンテナは被処理体の形状に対応するように中心から外方へターンするように構成することも可能である。特に,上記内周部は,上記中心から略渦巻き状に数ターン巻かれた導電体から構成され,上記外周部は,上記内周部から所定の間隔離れて数ターン巻かれた導電体から構成され,上記中間部は,上記内周部の導電体と上記内周部から所定の間隔離れた上記外周部の導電体とを繋ぐように配された導電体から構成されていてもよい。また,上記高周波アンテナは,被処理体の形状に対応するように中心から分岐した導電体のそれぞれが,外方へ数ターン巻かれるように構成されていてもよい。また,上記高周波アンテナは,複数備えているように構成することも可能である。かかる構成によれば,上記高周波アンテナが,数ターン巻かれて密に配される内周部と,この内周部から所定の間隔離れて数ターン巻かれて密に配される外周部と,上記内周部と上記外周部との間にて疎に配される中間部とからなるように構成されることにより,各々処理室内に伝達される電界を均一にすることができるため,処理室内に均一な高密度プラズマを安定して励起することができる。また,ガス経路を,高周波アンテナが疎に配される領域,すなわち高周波アンテナが密に配される領域よりも相対的に高い電界が形成される領域に対応する誘電体本体内に設け,ガス経路内でプラズマを励起させれば,高周波アンテナが疎に配される領域から処理室内に伝達される電界を減衰させることができる。その結果,高周波アンテナが密に配される領域と疎に配される領域から各々処理室内に伝達される電界を均一にすることができるため,処理室内に均一な高密度プラズマを安定して励起することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に,添付図面を参照しながら本発明にかかるプラズマ処理装置をLCD基板用のエッチング装置に適用した実施の一形態について詳細に説明する。
【0010】
図1に示すプラズマエッチング装置100は,導電性材料,例えば表面に酸化アルマイト処理が施されたアルミニウムやステンレスなどからなる円筒あるいは矩形の角筒状に成形された処理容器102を有しており,所定のエッチング処理は,この処理容器102内に形成される処理室102a内で行われる。
【0011】
前記処理容器102は接地されており,さらにその底部には,被処理体,例えばLCD基板Lを載置するための略矩形状の載置台106が設けられている。載置台106は,例えば表面に酸化アルマイト処理が施されたアルミニウムやステンレスなどの導電性材料からなる電極部106aと,その電極部106aの載置面以外の部分を覆うセラミックスなどの絶縁材料から成る電極保護部106bとから構成されている。
載置台106は,処理容器102の底部に貫装された昇降軸106c上に取り付けられている。この昇降軸106cは,不図示の昇降機構により昇降自在であり,必要に応じて載置台106全体を昇降させることができる。また昇降軸106cの外周部には,処理室102a内を気密に保持するための収縮自在のベローズ108が設けられている。
【0012】
載置台106の電極部106aには,マッチング回路110を介して高周波電源112が電気的に接続されており,プラズマ処理時に,所定の高周波,例えば2MHzの高周波電力を印加することにより,バイアス電位を生じさせ,処理室102a内に励起されたプラズマをLCD基板Lの処理面に効果的に引き込むことが可能である。なお図1に示す装置では,載置台106にバイアス用の高周波電力を印加する構成を示したが,単に載置台106を接地させる構成を採用することもできる。
【0013】
さらに載置台106の電極部106aには,冷却ジャケット114が内設されている。この冷却ジャケット114内には,たとえばチラーにより温調されたエチレングリコールなどの熱媒を,熱媒導入管114aを介して導入可能であり,導入されたエチレングリコールは同冷却ジャケット114内を循環して冷熱を生じる。かかる構成により,エチレングリコールの冷熱が冷却ジャケット114から載置台106を介してLCD基板Lに対して伝熱し,LCD基板Lの処理面を所望する温度まで温調することが可能である。
冷却ジャケット114を循環したエチレングリコールは熱媒排出管114bより容器外へ排出される。なお,図1に示す装置では省略しているが,載置台106に加熱ヒータなどの加熱手段を設け,LCD基板Lの処理面の温調を行うように構成してもよい。また,載置台106の載置面には多数の孔115aが穿設されており,ガス供給管115から,所定の伝熱ガス,例えばヘリウムガスを載置台106の載置面とLCD基板Lの裏面との間に供給することにより伝熱効率を高め,減圧雰囲気下であっても,効率的にLCD基板Lの温調を行うことが可能である。
【0014】
また,載置台106の上部には,LCD基板Lの外縁部をクランプすることが可能なクランプフレーム116が設けられている。このクランプフレーム116は,載置台106の周囲に立設された,例えば4本の支持柱116aにより支持されており,LCD基板Lが載置された載置台106を上昇させ,LCD基板Lの外縁部にクランプフレーム116を当接させることにより,LCD基板Lを載置台106上に載置固定することが可能である。なお,載置台106には,不図示のプッシャピンも設けられており,このプッシャピンを昇降させることにより,LCD基板Lを載置台106上に載置したり,載置台106から持ち上げたりすることが可能である。
【0015】
また,載置台106のLCD基板Lの載置面とほぼ対向する処理容器102の天板部102bに接するように,高周波アンテナ120が埋設された誘電体118が設けられている。この誘電体118は,積層構造を有しており,図示の例では,それぞれ誘電体部材から成る4層構造を成している。すなわち,天板部102b側から,パイレックス層118a,石英層118b,マイカなどの紛状誘電体材料中に高周波アンテナ120が埋設された高周波アンテナ層118c,石英中に処理ガス経路が内設された処理ガス供給層118dから構成されている。
積層される誘電体材料は,高周波電力の印加により高周波アンテナ120が加熱した場合に,その熱により剥離等の現象が生じないように,熱膨張率が等しい材料を用いることが好ましい。また,図示の例では,加工性およびコストに鑑みマイカやパイレックスを利用しているが,もちろんすべてを石英層から構成することも可能である。また,積層する数も4層に限定されず,数の誘電体層を積層することも可能である。あるいは,積層構造にせずに,単に誘電体材料中に高周波アンテナを埋設するように構成することも可能である。
なお,本明細書にいう「埋設」とは,誘電体内部に高周波アンテナを文字通り埋め込む場合のみならず,後述するように,誘電体を複数の誘電体層から構成し,その一部の層に高周波アンテナを埋め込む場合も含むものとする。また高周波アンテナの一部,例えば高周波電力供給経路が誘電体の外部に露出する場合も含むものとする。
【0016】
処理容器102の天板部102bは,誘電体118および高周波アンテナ120とともに取り外し自在であり,誘電体118および高周波アンテナ120のメンテナンスを容易に行うことが可能なように構成されている。
【0017】
高周波アンテナ層118cは,図2に示すように,マイカなどの紛状誘電体を焼結して構成した誘電体層118c中に帯状の導電体,例えば銅板,アルミニウム板,ステンレス板などを高周波アンテナ120として挟み込んだ構造を有している。ここで,マイカなどの誘電体層118cと高周波アンテナ120の熱膨張率は相違するため,高周波アンテナ120に高周波電力が印加され,高周波アンテナ120およびその周囲が加熱された場合に,高周波アンテナ120の熱膨張によりひずみが生じ,剥離等の現象が生じるおそれがある。
この点,本実施の形態にかかる装置では,高周波アンテナ120は,マイカなどの粉末状の誘電体材料を焼結することにより構成される誘電体118内に埋設されており,さらに,高周波アンテナ120のところどころに切欠き部120aが設けられているので,粉末状材料を焼結して成る誘電体中の多くの微小空間,およびこの切欠き部120aにより高周波アンテナ120の熱膨張分が吸収され,ひずみが生じにくく,剥離等の好ましくない現象を未然に防止することが可能である。
【0018】
なお,本実施の形態によれば,高周波アンテナ120の熱膨張対策として,高周波アンテナ120に切欠き部を設けるとともに,高周波アンテナ120が埋設される誘電体118を紛状誘電体から構成しているが,もちろんいずれか一方の対策のみを採用することも可能である。
【0019】
また,図示の例では,高周波アンテナ120は,数ターンの渦巻き状に構成されているが,この高周波アンテナ120はプラズマを発生するためのアンテナ作用を呈する機能があればよく,周波数が高くなれば数ターンでも良い。
【0020】
再び,図1を参照すると,パイレックス層118aおよび石英層118bを貫通し,さらにマイカ層118c中の高周波アンテナ120に至るまで,給電経路122aおよび接地経路122bが設けられている。給電経路122aには,マッチング回路124を介して高周波電源126が接続されており,処理時には,この高周波電源126から所定の周波数,例えば13.56MHzの高周波電力を高周波アンテナ120に印加し,処理室102a内に誘導プラズマを励起することが可能である。
【0021】
さらに,処理ガス供給層118dについて説明すると,処理ガス供給層118dは,石英などの誘電体中にガス流通路128が形成されており,さらに,処理ガス供給層118の載置台106側の面には,このガス流通路128に連通する多数の孔128aが穿設されている。従って,処理ガス源130から流量制御装置(MFC)132を介してガス流通路128に供給される所定の処理ガス,例えば,酸化膜処理の場合にはCF4ガス,アルミニウム膜処理の場合にはBCl3+Cl2の混合ガスは,上記孔128aからシャワー状に処理室102a内に吹き出し,処理室102a内の処理ガス濃度を均一化し,従って均一な密度のプラズマを処理室102a内に励起することが可能である。
【0022】
なお,図示の例では,処理ガス供給層118dを層構造に構成したが,図4に示すように,石英などの誘電体材料製の処理ガス供給管路134を高周波アンテナ層118cの載置台106側に配し,その処理ガス供給管路134の載置台106側に多数の孔134aを穿設し,その孔134aから処理ガスを処理室102a内に吹き出すような構成を採用することも可能である。
【0023】
さらにまた,上記誘電体118中に冷却水が循環する経路を内設し,冷却水を循環させることにより,高周波電力の印加により加熱した高周波アンテナ120を冷却し,高周波アンテナ120および誘電体118の寿命を延ばすように構成することも可能である。
【0024】
以上のように本実施の形態にかかるエッチング装置100の誘電体118および高周波アンテナ120は,処理容器102の内部に一体的に設けられているので,大気圧と処理室内との圧力差にかかわらず,高周波アンテナ120よりも被処理体側の誘電体層の肉厚を薄く構成することができる。従って,高周波電源126より高周波アンテナ120に印加される高周波電力により,より強い電界を処理室102a内に形成することができるので,高周波エネルギーの有効利用が図れる。また誘電体の肉厚を自由に調整することができるので,処理室内に励起される誘導プラズマの分布および密度をより高い精度で制御することが可能となる。また,本実施の形態によれば,誘電体118とシャワーヘッドとを一体化することが可能である。
【0025】
また,前記処理容器102の底部には排気管136が接続されて,この処理室102a内の雰囲気を不図示の排気手段,例えば,真空ポンプにより排出し得るように構成されており,処理室102aの雰囲気を任意の減圧度にまで真空引きすることが可能である。
【0026】
なお前記処理容器102の側部にはゲートバルブ138が設けられており,隣接して設置されるロードロック室より,搬送アームなどを備えた搬送機構により,未処理のLCD基板Lを処理室102a内に搬入するとともに,処理済みのLCD基板Lを搬出することができる。
【0027】
次に,以上のように構成された本実施例に係るプラズマエッチング装置の動作について説明する。
【0028】
まず,ゲートバルブ138を介してLCD基板Lを,不図示の搬送アームにより処理室102a内に収容する。この時,載置台106は,下方位置にあり,不図示のプッシャピンが上昇しており,不図示の搬送アームは,LCD基板Lをこの不図示のプッシャピン上に置き,ゲートバルブ138から処理容器102外に待避する。次いで,不図示のプッシャピンが下降し,LCD基板Lは載置台106の載置面に載置される。次いで,不図示の昇降機構により,載置台106が上昇し,クランプ106の下面にLCD基板Lの周縁部が押圧され,LCD基板Lが載置台106に固定される。
【0029】
この処理室102a内は,排気管136に接続される不図示の真空ポンプにより真空引きされ,同時に処理ガス供給層118dの処理ガス供給孔128aより所定の処理ガス,例えば,酸化膜処理の場合にはCF4ガス,アルミニウム膜処理の場合にはBCl3+Cl2の混合ガスが処理室102a内に導入され,処理室102a内は,例えば30mTorr程度の高真空状態に保持される。
【0030】
そして,高周波電源126よりマッチング回路124を介して,例えば13.56MHzの高周波エネルギーを誘電体118の高周波アンテナ層118cに埋設された高周波アンテナ120に印加する。すると,高周波アンテナ120のインダクタンス成分の誘導作用により処理室102a内に電界が形成される。その際,本実施の形態によれば,高周波アンテナ120は,処理容器102の天井部102bに接して設けられた誘電体118の高周波アンテナ層118cに埋設され,被処理体に対する対向面側の誘電体層の肉厚を従来のものに比較して薄く形成することが可能なので,従来の装置に比較してより強い電界が処理室102a内に形成される。その結果,より高密度のプラズマを処理室102a内に生成することができる。
【0031】
さて,このようにして処理室102a内に励起されたプラズマは,載置台106に印加されるバイアス電位により載置台106上のLCD基板Lの方向に移動し,処理面に対して所望のエッチング処理を施すことが可能である。そして,所定のエッチング処理が終了した後,処理済みのLCD基板Lは不図示の搬送アームによりゲートバルブ138を介してロードロック室に搬出され,一連の動作が終了する。
【0032】
以上,本発明に係るプラズマ処理装置をLCD基板用のエッチング装置に適用した一実施例に即して説明したが,上記装置においては,渦巻状の高周波アンテナ120が埋設される誘電体118が平板状に構成されているので,高周波アンテナ120が密に配置される中間部においてより強い電界が形成され,その結果,処理室の中間領域のプラズマ密度が高くなり,図7(A)に示されるように,中間領域(M)と,中央領域(C)および周縁領域(S)とのエッチングレート(ER)が不均一になるおそれがある。
【0033】
なお本明細書において,被処理体の処理面の中央領域の正投影に属する処理室またはアンテナ室内の領域を中央領域(C),該処理面の中央領域を囲む中間領域の正投影に属する処理室またはアンテナ室内の領域を中間領域(M),該処理面の中間領域を囲む外縁領域(すなわち,最外側領域)の正投影に属する処理室またはアンテナ室内の領域を周縁領域(S)とそれぞれ称しているが,これらの中央領域(C),中間領域(M),周縁領域(S)の概念は,相対的な概念であり,被処理体の寸法および載置位置,処理室およびアンテナ室の寸法および配置位置に応じて相対的に決定されるものである。
【0034】
そして,本発明の別の実施形態によれば,上記のように,中央領域(C),中間領域(M),周縁領域(S)において異なるプラズマ密度を,処理室内において均一にするための様々な構成を加えることができる。以下,プラズマ密度を均一化するためのいくつかの態様について説明するが,これらの態様に用いられる構成部材のうち,図1に示す装置と同じ機能構成を有するものについては同じ参照番号を付することにより詳細説明は省略する。
【0035】
上記実施の形態においては,図2に示すように,一系統の高周波電源より高周波電力を印加される高周波アンテナ120を用いた結果,中間領域(M)と,中央領域(C)および周縁領域(S)においてプラズマ密度の不均一を招くおそれがあった(図7(A)参照)。これに対して,本発明の別の実施の形態によれば,図3に示すように,二系統の高周波電源222a,222bより,それぞれマッチング回路224a,224bを介して二系統の高周波アンテナ202a,202bに,それぞれ異なる電力の高周波電力を印加する構成を採用することも可能である。図示のように,高周波アンテナを多系統構造とすることにより,例えば,プラズマ密度の薄い場所に対して高周波アンテナを密に配置し,および/または高い高周波電力を印加し,プラズマ密度の高い場所に対して高周波アンテナを疎に配置し,および/または低い高周波電力を印加することが可能となり,処理室内のプラズマ密度の均一化を図ることができる。なお,図示の例では,第1の高周波アンテナ202aの外周を囲むように電界シールド210により相互干渉しないよう第2の高周波アンテナ202bを配置することにより,プラズマ密度が薄くなりがちな処理室の周縁部に対してより強い電波を供給することが可能なように構成している。
【0036】
あるいは,図5に示すように,誘電体118内に埋設される高周波アンテナ204の中間部204Mを,中心部204C(端子112a付近)および周縁部204S(端子112b付近)とLCD基板との間隔よりも,中間部204MとLCD基板Lとの間隔が広くなるように配置してもよい。この結果,中間部204Mにおいては被処理体L側の誘電体の厚さが厚くなるため,プラズマ密度が濃くなりがちな中間領域(M)における高周波エネルギーの伝播力を弱めることが可能となり,図7(B)に示すように,処理室内に生成するプラズマ密度を均一化し,エッチングレート(ER)の面内均一を達成することができる。
【0037】
また,図6に示すように,誘電体118の被処理体L側の底面118bを高周波アンテナ204の設置位置に合わせて,段々形状に構成し,高周波アンテナ204と被処理体Lとの間に存在する誘電体118の肉厚を均等に構成することもできる。
【0038】
以上,添付図面を参照しながら,本発明にかかるプラズマ処理装置をLCD基板用のエッチング装置に適用した実施の一形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において,当業者であれば,各種の修正および変更を施すことが可能であり,これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
例えば,上記実施の形態においては,高周波アンテナ120の構造として,渦巻き状のものを示したが,これ以外にも,1または2以上のループを成す形状の高周波アンテナや,コイル状の高周波アンテナを使用することも可能である。また,ターン数やピッチについても,処理装置の大きさや処理プロセスに応じて,最適なものを選択することが可能であることは言うまでもない。
【0040】
さらに,上記実施の形態においては,1つの高周波電源126より高周波アンテナ120に高周波電力を印加する構成を示したが,高周波アンテナを,例えば,中央に渦巻き状のアンテナ部材を配し,そのアンテナ部材を囲むようにループ状アンテナを配するような複数の高周波アンテナ部材から構成し,各高周波アンテナに対して個別独立に制御可能な複数の高周波電源より高周波電力を印加するような構成を採用することも可能である。
かかる構成によれば,例えば処理室内の中央部とその周囲部とのプラズマ密度を個別独立に制御することが可能となり,プラズマ密度の均一化を図ることが可能である。なお,このように高周波アンテナを複数の高周波アンテナ部材から構成する場合には,各高周波アンテナ部材間の干渉を防止するために,シールドを設けることが好ましい。
【0041】
高周波アンテナ120に印加される高周波電力についても,位相制御,周波数変調制御,パルス制御などの各種制御を行い,処理室内に励起されるプラズマの最適化を図ることが可能であり,また載置台106に印加されるバイアス電位についても,同様に,位相制御,周波数変調制御,パルス制御などの各種制御を行い,プラズマの引き込みタイミングの最適化を図ることが可能である。
【0042】
また,上記実施例においては,LCD基板Lを被処理体として処理する例を示したが,本発明は,半導体ウェハを被処理体とする処理装置に対しても適用できる。また上記実施例では,本発明をエッチング装置に適用した例を示したが,本発明は,プラズマを利用した各種装置,例えばアッシング装置やプラズマCVD装置に対しても適用することが可能である。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明に基づいて構成されたプラズマ処理装置によれば,高周波アンテナが密に配される領域と疎に配される領域から各々処理室内に伝達される電界を均一にすることができるため,処理室内に均一な高密度プラズマを安定して励起することができる。また,ガス経路を,高周波アンテナが疎に配される領域,すなわち高周波アンテナが密に配される領域よりも相対的に高い電界が形成される領域に対応する誘電体本体内に設け,ガス経路内でプラズマを励起させれば,高周波アンテナが疎に配される領域から処理室内に伝達される電界を減衰させることができる。その結果,高周波アンテナが密に配される領域と疎に配される領域から各々処理室内に伝達される電界を均一にすることができるため,処理室内に均一な高密度プラズマを安定して励起することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるプラズマ処理装置をLCD基板用エッチング装置に適用した実施の一形態を示す概略的な断面図である。
【図2】図1に示すエッチング装置の誘電体に埋設される高周波アンテナの概略構成を示す概略的な説明図である。
【図3】本発明にかかるエッチング装置に適用可能な高周波アンテナの別の実施例を示す略水平方向断面図である。
【図4】図1に示すエッチング装置の処理ガス供給経路の実施の一態様を示す概略的な説明図である。
【図5】本発明にかかるエッチング装置に適用可能な高周波アンテナおよび誘電体のさらに別の実施例を示す略垂直方向断面図である。
【図6】本発明にかかるエッチング装置に適用可能な高周波アンテナおよび誘電体のさらに別の実施例を示す略垂直方向断面図である。
【図7】高周波アンテナの配置とエッチングレートとの関係を示す説明図であり,(A)は高周波アンテナを平面状に配置した場合,(B)は高周波アンテナの中間部が盛り上がるように配置した場合をそれぞれ示している。
【図8】従来の高周波誘導結合プラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
102 処理容器
102a 処理室
106 載置台
110 マッチング回路
112 高周波電源
118 誘電体
118a パイレックス層
118b 石英層
118c 高周波アンテナ層
118d 処理ガス供給層
120 高周波アンテナ
122a 給電経路
122b 接地経路
124 マッチング回路
126 高周波電源
128 処理ガス流通路
128a 処理ガス供給孔
Claims (6)
- 高周波アンテナに高周波電力を印加することにより,誘電体を介して処理室内に誘導結合プラズマを励起し,前記処理室内の被処理体に対して所定のプラズマ処理を施すように構成されたプラズマ処理装置において:
前記高周波アンテナは,密に配される領域と疎に配される領域とを有し,
前記高周波アンテナの密に配される領域は,前記被処理体の中心点と略対向する部分を中心として略渦巻き状に数ターン巻かれて密に配される内周部と,この内周部から所定の間隔離れて数ターン巻かれて密に配される外周部とからなり,
前記高周波アンテナの疎に配される領域は,前記内周部と前記外周部との間にて疎に配される中間部からなることを特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記高周波アンテナは,前記処理室内に載置される被処理体に対して略点対称状に配置されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
- 前記高周波アンテナは,前記被処理体の形状に対応するように前記中心から外方へターンするように構成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 前記内周部は,前記中心から略渦巻き状に数ターン巻かれた導電体から構成され,
前記外周部は,前記内周部から所定の間隔離れて数ターン巻かれた導電体から構成され,
前記中間部は,前記内周部の導電体と,前記内周部から所定の間隔離れた前記外周部の導電体と,を繋ぐように配された導電体から構成されることを特徴とする請求項1,2または3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。 - 前記高周波アンテナは,前記被処理体の形状に対応するように前記中心から分岐した導電体のそれぞれが,外方へ数ターン巻かれるように構成されていることを特徴とする請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
- 前記高周波アンテナは,複数備えられていることを特徴とする請求項1,2,3,4または5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
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