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JP3539196B2 - 駆動力伝達装置 - Google Patents

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JP3539196B2
JP3539196B2 JP08372398A JP8372398A JP3539196B2 JP 3539196 B2 JP3539196 B2 JP 3539196B2 JP 08372398 A JP08372398 A JP 08372398A JP 8372398 A JP8372398 A JP 8372398A JP 3539196 B2 JP3539196 B2 JP 3539196B2
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正宣 大見
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のバランサ装置に適用して好適な駆動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車載用エンジン等の内燃機関においては、燃料の燃焼によってピストンを往復移動させ、そのピストンの往復移動をコンロッドによって出力軸であるクランクシャフトの回転へと変換して駆動力を得るようにしている。そのピストンが往復移動する際には同移動方向についてピストンの慣性力が生じるが、内燃機関を円滑に運転するためには同慣性力を可能な限り「0」に近づけることが好ましい。
【0003】
そこで従来は、内燃機関にバランサ装置を設けてピストンの慣性力を「0」に近づけるようにしている。このバランサ装置は、内燃機関のクランクシャフトと平行に延びるバランスシャフトを備えている。バランスシャフトは、自身の軸線を中心に回転可能に支持されるととともに、同シャフトの外周面にはウエイトが上記軸線に対して偏心した状態で取り付けられている。このバランスシャフトを回転させると、ウエイトが同シャフトに伴って回転してピストンの移動方向について往復変位する。
【0004】
従って、バランスシャフトをクランクシャフトと同期して回転させることにより、ウエイトの慣性力をピストンの移動方向について働かせ、そのウエイトの慣性力によってピストンの慣性力を打ち消して同慣性力を「0」にすることができるようになる。このように慣性力を「0」にするためには、クランクシャフトとバランスシャフトとを同期して回転させる必要があるが、その同期した回転はクランクシャフトの回転を駆動力伝達装置を介してバランスシャフトに伝達することによって実現される。
【0005】
ここで、上記駆動力伝達装置の一例として、実開昭61−106647号公報に記載された装置を図7に示す。同公報に記載された駆動力伝達装置は、バランスシャフト91に固定された円板状のホルダ92と、ホルダ92の外周面に嵌め込まれるとともにクランクシャフトのギヤ(図示せず)と噛み合う円環状のギヤ93とを備えている。そして、ホルダ92の外周面とギヤ93の内周面との間には、それら両者をそれぞれ凹ませることで切欠部94が形成される。更に、切欠部94内には、ホルダ92とギヤ93とをバランスシャフト91の軸線を中心とする回転方向について互いに連結するためのコイルスプリング95が配設されている。
【0006】
このように構成された駆動力伝達装置では、クランクシャフトの回転がギヤ93に伝達され、同ギヤ93の回転がコイルスプリング95を介して、ホルダ92及びバランスシャフト91に伝達される。上記クランクシャフトが回転する際には同シャフトに回転方向についてのトルク変動が生じるが、そのトルク変動はギヤ93からホルダ92への回転伝達時にコイルスプリング95が伸縮して吸収するようになる。従って、バランサ装置のバランスシャフト91にクランクシャフトのトルク変動が伝達されることはなく、そのトルク変動によってバランサ装置に振動等が生じて異音が生じるのを防止することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載された駆動力伝達装置を用いてクランクシャフトの回転をバランスシャフト91へ伝達することにより、クランクシャフトのトルク変動がバランサ装置側に伝達されるのを防止することができるようにはなる。
【0008】
しかし、上記トルク変動吸収のためにコイルスプリング95が圧縮されたときには、同スプリング95の長手方向両端部が拡径して同端部と切欠部94内壁面との間の距離が短くなり、それら両者が接触し易くなる。こうした接触が頻繁に生じるようになると、切欠部94の内壁面が摩耗してギヤ93の強度低下に繋がることとなる。
【0009】
そこで、上記接触を阻止するためにホルダ92及びギヤ93の径方向についての切欠部94の幅を大きくし、コイルスプリング95の両端部と切欠部94の内面との距離を大きくすることも考えられる。ところが、切欠部94の幅を上記のように大きくする場合には、ホルダ92及びギヤ93の強度を維持するために同ホルダ92及びギヤ93の径方向厚さを大きくする必要があり、その径方向厚さ拡大に基づくホルダ92及びギヤ93の大型化も無視できないものとなる。
【0010】
また、上記公報に記載の駆動力伝達装置では、ホルダ92とギヤ93とがバランスシャフトの径方向に並んでいるため、ギヤ93の径が大きくなって駆動力伝達装置が大型化する。特に、バランサ装置など内燃機関に組み付けられる装置に上記駆動力伝達装置を適用する場合には、上記ギヤ93の大型化が内燃機関の小型化に対する大きな妨げとなる。
【0011】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ギヤなどの駆動力伝達部材を極力小径にして小型化を図ることのできる駆動力伝達装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、同一軸線上に位置して同軸線を中心に回転可能な第1及び第2の駆動力伝達部材と、前記第1及び第2の駆動力伝達部材をその回転方向について互いに連結する緩衝機構とを備え、前記第1の駆動力伝達部材の回転を前記緩衝機構に設けられたコイルスプリングを介して第2の駆動力伝達部材に伝達する駆動力伝達装置において、前記第1及び第2の駆動伝達部材を前記軸線方向について並列に設け、前記コイルスプリングを前記第1及び第2の駆動伝達部材の間に配設するとともに、、同コイルスプリングは前記軸線と直交する方向へ延びるとともに、自身の長手方向中間部を前記軸線に接近する方向に湾曲させて配設され、同スプリングの長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成されてなる
【0013】
同構成によれば、第1及び第2の駆動力伝達部材が回転するとき、遠心力によってコイルスプリングが直線状に延びた状態になる。このように第1及び第2の駆動力伝達部材の回転時にコイルスプリングが直線状になるため、同スプリングと両駆動力伝達部材とが接触することのない当該両駆動力伝達部材の最小径を一層小さくすることができるようになる。
第1の駆動力伝達部材の回転がコイルスプリングを介して第2の駆動力伝達部材へと伝達されるとき、コイルスプリングが圧縮されて同スプリングの長手方向両端部と両駆動力伝達部材との距離が短くなると、それら両者が接触し易くなる。しかし、同構成によれば、コイルスプリングの長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成され、第1及び第2の駆動力伝達部材が軸線方向について並列となっているため、それら駆動力伝達部材の径を同駆動力伝達部材とコイルスプリングの長手方向両端部とが接触することのない最小値にしたとき、それら駆動力伝達部材をより小径にすることができるようになる。
【0020】
請求項記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記第1の駆動力伝達部材は内燃機関に設けられたバランサ装置のバランスシャフトに回転可能に取り付けられ、前記第2の駆動力伝達部材は前記バランスシャフトと一体回転可能に固定した。
【0021】
内燃機関のバランサ装置に適用された駆動力伝達装置の大型化は同機関小型化の大きな妨げとなるが、その駆動力伝達装置の第1及び第2の駆動力伝達部材を極力小径とすることのできる同構成によれば、同装置を小型化して内燃機関の好適な小型化を図ることができるようになる。
【0022】
請求項記載の発明では、請求項記載の発明において、前記第2の駆動力伝達部材の回転が伝達される第3の駆動力伝達部材を更に設け、前記第3の駆動力伝達部材を前記バランスシャフトと平行に設けられる別のバランスシャフトに一体回転可能に固定した。
【0023】
同構成によれば、バランスシャフトが二本設けられるバランサ装置において、駆動力伝達装置の第1及び第2の駆動力伝達部材を極力小径にすることで、それらバランスシャフトの間隔を最小限にとどめることができるようになる。従って、バランサ装置の小型化、ひいては内燃機関の小型化が好適に図られる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車用エンジンのバランサ装置に適用した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0026】
図1に示すように、エンジンの出力軸であるクランクシャフト11は、同エンジンのシリンダブロック12下端部において、同シャフト11の軸線を中心に回転可能に支持されている。このクランクシャフト11には、コンロッドを介してピストン(共に図示せず)が連結されている。そして、エンジンの運転時には、ピストンの図中上下方向への往復移動がコンロッドによってクランクシャフト11の回転へと変換されるようになる。また、クランクシャフト11には、斜歯13aを有する金属製のクランクシャフトギヤ13が同シャフト11と一体回転可能に固定されている。
【0027】
シリンダブロック12の下端には、エンジンの運転時にピストンの移動方向に働く同ピストンの慣性力を打ち消すためのバランサ装置15が取り付けられている。このバランサ装置15は、一対のハウジング16a,16b間にクランクシャフト11と平行な状態で回転可能に支持された第1及び第2のバランスシャフト(図1には第1のバランスシャフトのみ図示)17,18を備えている。これら第1及び第2のバランスシャフト17,18の外周面には、ウエイト19が同シャフト17,18の軸線に対して偏心した状態で取り付けられている。
【0028】
また、第1及び第2のバランスシャフト17,18には、クランクシャフト11の回転が上記クランクシャフトギヤ13と駆動力伝達装置21とを介して伝達される。このようにクランクシャフト11の回転が第1及び第2のバランスシャフト17,18に伝達されると、それらシャフト11,17,18が同期して回転するようになる。そして、第1及び第2のバランスシャフト17,18が回転すると、それらシャフト17,18に伴ってウエイト19が回転してピストンの移動方向(図中上下方向)について往復変位する。
【0029】
従って、クランクシャフト11と第1及び第2のバランスシャフト17,18との同期した回転により、ウエイト19が往復変位して同ウエイト19の慣性力がピストンの移動方向(図中上下方向)に働き、そのウエイトの慣性力によってピストンの慣性力が打ち消されて同慣性力が「0」になる。即ち、ウエイト19の慣性力とピストンの慣性力とが打ち消し合って「0」となるように、同ウエイト19の質量やシャフト17,18の周方向についての取付位置などが予め調整されている。
【0030】
次に、上記駆動力伝達装置21の詳細構造について説明する。
図2に示すように、駆動力伝達装置21は、クランクシャフト11の回転を第1のバランスシャフト17に伝達するためのギヤ機構22を備えている。このギヤ機構22の詳細構造を図3に示す。同図に示されるように、ギヤ機構22は、第1のバランスシャフト17の軸線上に並列に設けられた第1及び第2のギヤ23,24と、それらギヤ23,24を上記軸線を中心とする回転方向について連結する緩衝機構25とを備えている。
【0031】
第1のギヤ23は、樹脂により円板状に形成されて外周部に斜歯23aを有している。第1のギヤ23においては、その中心部に第1のバランスシャフト17よりも若干大径となる貫通孔26が設けられ、その貫通孔26に第1のバランスシャフト17が挿入されるようになる。こうして貫通孔26に第1のバランスシャフト17が挿入された状態にあっては、第1のギヤ23が第1のバランスシャフト17に対して回転可能になる。
【0032】
第2のギヤ24は、金属により円板状に形成されて外周部に斜歯24aを有している。第2のギヤ24においては、その中心部に第1のバランスシャフト17と同径の貫通孔27が設けられ、その貫通孔27に第1のバランスシャフト17が圧入されるようになる。こうして貫通孔27に第1のバランスシャフト17が圧入された状態にあっては、第2のギヤ24が第1のバランスシャフト17に対して一体回転可能に固定される。
【0033】
第2のギヤ24における第1のギヤ23との対向面はへこんでおり、そのへこみの内周面には第2のギヤ24の中心に向かって対向するように突出する一対の突部28が設けられている。これら突部28により、第2のギヤ24の上記へこみ内部が、円弧状に延びる一対の凹部29a,29bとして区画されている。また、突部28における周方向両側面28a,28bは、第2のギヤ24の中心に近づくほど、それら両側面28a、29b間の距離が小さくなる斜状に形成されている。
【0034】
緩衝機構25は、挟持プレート30a,30b,31a,31bと、コイルスプリング32a,32b,33a,33bと、ホルダ34とを備えている。挟持プレート30a,30b,31a,31bは、略円弧状に延びる板の長手方向両端部を同じ側に90゜屈曲させることによって形成されている。これら挟持プレート30a,30b,31a,31bの長手方向両端部は、それぞれシート部35a,35b,36a,36bとなっている。
【0035】
そして、挟持プレート30a,31aにおける一方の端部同士は、シート部35a,36aが対向する状態で、同プレート30a,31aの厚さ方向に重ねられる。この状態にあって、挟持プレート30a,31aにおける一方のシート部35a,36a間にコイルスプリング32aが配設されるとともに、他方のシート部35a,36a間にコイルスプリング33aが配設される。これらコイルスプリング32a,32bにおいては、その長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成されている。
【0036】
また、挟持プレート30b,31bにおける一方の端部同士も、シート部35b,36bが対向する状態で、同プレート30b,31bにおける一方のシート部35b,36bが対向する状態で、同プレート30b,31bの厚さ方向に重ねられる。この状態にあって、挟持プレート30b,31bにおける一方のシート部35b,36b間にコイルスプリング32bが配設されるとともに、他方のシート部35b,36b間にコイルスプリング33bが配設される。これらコイルスプリング32b,33bにおいても、その長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成されている。
【0037】
上記のように組み合わされた挟持プレート30a,31a及びコイルスプリング32a,33aと、挟持プレート30b,31b及びコイルスプリング32b,33bとは、第2のギヤ24の二つの凹部29a,29bにそれぞれ嵌め込まれる。
【0038】
ここで、挟持プレート30a,30b,31a,31bの拡大斜視図を図4に示す。挟持プレート30a,30bに設けられた一方のシート部35a,35b(図中上側のもの)において、その突出方向両縁部の外側面には面取り加工が施されて斜面37a,37bが形成されている。また、挟持プレート31a,31bに設けられた一方のシート部36a,36b(図中下側のもの)において、その突出方向両縁部の外側面には面取り加工が施されて斜面38a,38bが形成されている。これら斜面37a,37b,38a,38bの傾斜角度は、シート部35a,35b,36a,36bの外側面に対して例えば30゜と比較的鋭角になっている。
【0039】
このように挟持プレート30a,30b,31a,31bにおけるシート部35a,35b,36a,36bの縁部を面取り加工し、斜面37a,37b,38a,38bを形成することで、上記のような第2のギヤ24の凹部29a,29bへの挟持プレート30a,30b,31a,31b等の嵌め込みが容易になる。即ち、その嵌め込みを行う際に、上記面取り加工を施したことで、シート部35a,35b,36a,36bの縁部が第2のギヤ24に引っ掛かりにくくなる。
【0040】
挟持プレート30a,31a,30b,31b、及びコイルスプリング32a,33a,32b,33bとが第2のギヤ24に組み付けられた状態にあっては、図5に示すように同スプリング32a,33a,32b,33bがシート部35a,35b,36a,36bによって圧縮された状態で挟持される。
【0041】
このとき、挟持プレート30a,31aにおける一方のシート部35a,36a同士が互いに平行になるとともに、他方のシート部35a,36a同士が互いに平行になる。また、挟持プレート30b,31bにおける一方のシート部35b,36b同士が互いに平行になるとともに、他方のシート部35b,36b同士が互いに平行になる。即ち、シート部35a,35b,36a,36bが接触する第2のギヤ24における突部28の側面28a,28bの傾斜角度が、上記シート部35a,35b,36a,36bの平行配置に適した値に予め調整されている。
【0042】
従って、コイルスプリング32a,32b,33a,33bは、第2のギヤ24の径方向について直線状に延びた状態で圧縮されることとなり、同スプリング32a,32b,33a,33bの両端部がシート部35a,35b,36a,36bに片当たりすることはない。そのため、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの両端部とシート部35a,35b,36a,36bとの片当たりによる同シート部35a,35b,36a,36bの過度の摩耗が防止されるようになる。
【0043】
一方、図3に示すように、第1のギヤ23における第2のギヤ24と対向する面には、一対のピン39によりホルダ34が第1のギヤ23と一体回転可能に取り付けられる。このホルダ34はリング状に形成され、同ホルダ34の内周面にはホルダ34の中心に向かって対向するように突出する一対の突部40が設けられている。一対の突部40は、第2のギヤ24に設けられた一対の突部28に対応して位置するとともに、それら突部28と同形状に形成されている。即ち、突部40における周方向両側面40a,40bは、ホルダ34の中心に近づくほど、それら両側面40a,40b間の距離が小さくなる斜状に形成されている。
【0044】
こうしたホルダ34を第1のギヤ23に取り付けることで、第1のギヤ23における第2のギヤ24との対向面に、上記一対の突部40によって区画された円弧状に延びる一対の凹部41a,41bが形成される。そして、第1のギヤ23に取り付けられたホルダ34の突部40と、図5に示す第2のギヤ24の突部28とを位置合わせした状態で重ねると、その突部28と接触しているシート部35a,35b間、及びシート部36a,36b間に上記ホルダ34の突部40が嵌め込まれる。この嵌め込みは、シート部35a,35b,36a,36bの縁部が面取り加工されて斜面37a,37b,38a,38b(図4)が形成されていることから、その縁部とホルダ34との間に引っ掛かりがなく、容易に行われることとなる。
【0045】
このような嵌め込みが行われた状態にあっては、シート部35a,35b,36a,36bが、第2のギヤ24の突部28だけでなくホルダ34の突部40にも接触するようになる。従って、第1及び第2のギヤ23,24が相対回転すると、両突部28,40が周方向にずれて挟持プレート30a,31aを周方向について縮める側に押すとともに、挟持プレート30b,31bを周方向について縮める側に押す。その結果、各コイルスプリング32a,32b,33a,33bを挟持する各対のシート部35a,35b,36a,36b間の距離が短くなり、それらスプリング32a,32b,33a,33bが圧縮されるようになる。
【0046】
このように構成されたギヤ機構22においては、第1のギヤ23がクランクシャフト11(図1)に取り付けられたクランクシャフトギヤ13に噛み合わされ、第2のギヤ24が図2に示すように第3のギヤ42に噛み合わされる。この第3のギヤ42は、自身の外周部に斜歯42aを有し、第1のバランスシャフト17と平行に設けられた第2のバランスシャフト18に対して一体回転可能に固定されている。なお、本実施形態においては、その第3のギヤ42と上記ギヤ機構22によって駆動力伝達装置21が構成されている。
【0047】
そして、クランクシャフト11の回転は、クランクシャフトギヤ13及びギヤ機構22を介して第1のバランスシャフト17に伝達され、更にギヤ機構22及び第3のギヤ42を介して第2のバランスシャフト18に伝達されるようになる。こうしてクランクシャフト11と第1及び第2のバランスシャフト17,18が同期して回転することとなり、ピストンの慣性力がウエイト19の慣性力によって打ち消されるようになる。
【0048】
次に、上記のように構成された駆動力伝達装置21の作用を説明する。
ピストンの往復移動によりクランクシャフト11(図1)が回転すると、同シャフト11の回転がクランクシャフトギヤ13を介して駆動力伝達装置21におけるギヤ機構22の第1のギヤ23に伝達される。この第1のギヤ23は樹脂により形成されているため、クランクシャフトギヤ13から第1のギヤ23への回転伝達の際の静粛性が金属製のギヤを採用した場合に比べて向上するようになる。こうしたクランクシャフトギヤ13から第1のギヤ23への回転伝達により、第1のギヤ23が第1のバランスシャフト17に対して同シャフト17の軸線を中心に回転する。更に、第1のギヤ23が回転すると、その回転がギヤ機構22における緩衝機構25を介して第2のギヤ24及び第3のギヤ42(図2)に伝達される。
【0049】
第1のギヤ23の回転が緩衝機構25を介して第2のギヤ24に伝達されるとき、それらギヤ23,24が相対回転して、図3に示す第2のギヤ24及びホルダ34における互いに厚さ方向に重ねられた突部28,40が周方向にずれる。こうした突部28,40の周方向へのずれにより、図5に示す挟持プレート30a,31aが周方向について縮められるとともに、挟持プレート30b,31bが周方向について縮められる。その結果、各コイルスプリング32a,32b,33a,33bを挟持する各対のシート部35a,35b,36a,36b間の距離が短くなり、それらスプリング32a,32b,33a,33bが圧縮される。
【0050】
ピストンの往復によるクランクシャフト11の回転では、同シャフトの13の回転トルクにトルク変動が生じることとなる。しかし、そのトルク変動により、第1のギヤ23に第2のギヤ24との相対回転方向についての変動が生じたとしても、上記コイルスプリング32a,32b,33a,33bが伸縮することで、その第1のギヤにおける相対回転方向への変動が第2のギヤ24に伝達されることはなくなる。
【0051】
また、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの伸縮は、クランクシャフトギヤ13から第1のギヤ23への回転伝達の際の衝撃を吸収するという役割も果たす。即ち、上記回転伝達の際にクランクシャフトギヤ13から第1のギヤ23へ加えられる衝撃が、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの伸縮により緩和されることとなる。そのため、金属製のものよりも強度の低い樹脂製の第1のギヤ23にあって、同ギヤ23を強度向上のために厚さ方向に大型化させずとも同ギヤ23の強度が十分なものとなる。
【0052】
コイルスプリング32a,32b,33a,33bが圧縮されるとき、同スプリング32a,32b,33a,33bの長手方向両端部が拡径し、その両端部と第2のギヤ24及びホルダ34(図3)における凹部29a,29b,41a,41bの内周面との距離が短くなる。本実施形態では、第1及び第2のギヤ23,24が同一軸線上に並列に配設され、しかもコイルスプリング32a,32b,33a,33bの長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成されている。従って、第1及び第2のギヤ23,24の径を上記コイルスプリング32a,32b,33a,33bの両端部と凹部29a,29b,41a,41bの内周面との接触が生じない最小値にしたとき、それらギヤ23,24をより小径にすることができるようになる。
【0053】
また、このように第1及び第2のギヤ23,24を極力小径にすることで、第2のギヤ24から第3のギヤ42への回転伝達により自身の軸線を中心に回転する第2のバランスシャフト18と、上記第2のギヤ24が取り付けられる第1のバランスシャフト17との間隔が最小限にとどめられる。従って、第1及び第2のギヤ23,24の径を極力小さくし、且つ第1及び第2のバランスシャフト17,18の間隔を最小限にとどめることで、バランサ装置15の小型化、ひいてはエンジンの小型化が好適に図られれるようになる。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)駆動力伝達装置21における第1及び第2のギヤ23,24の径を最小にして、その駆動力伝達装置21の小型化を図ることができるようになる。
【0055】
(2)挟持プレート30a,31a,30b,31bにおいて、コイルスプリング32a,32b,33a,33bを挟持する各対のシート部35a,35b,36a,36bが平行となっている。そのため、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの両端部がシート部35a,35b,36a,36bに片当たりすることはない。従って、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの両端部とシート部35a,35b,36a,36bとの片当たりによる同シート部35a,35b,36a,36bの過度の摩耗を防止することができる。
【0056】
(3)エンジンのバランサ装置15に適用された駆動力伝達装置21の大型化はエンジンの小型化に対する大きな妨げとなるが、その駆動力伝達装置21における第1及び第2のギヤ23,24を極力小径とすることができるため、同装置21を小型化してエンジンの好適な小型化を図ることができる。
【0057】
(4)第1及び第2のバランスシャフト17,18が設けられるバランサ装置15において、駆動力伝達装置21における第1及び第2のギヤ23,24を極力小径にすることで、それらバランスシャフト17,18の間隔を最小限にとどめることができるようになる。従って、バランサ装置15の小型化、ひいてはエンジンの小型化を好適に図ることができる。
【0058】
(5)本実施形態では、挟持プレート30a,30b,31a,31bのシート部35a,35b,36a,36bに面取り加工を施して斜面37a,37b,38a,38bを形成した。そのため、第2のギヤ24の凹部29a,29bへの挟持プレート30a,30b,31a,31b等の嵌め込みの際、シート部35a,35b,36a,36bの縁部が第2のギヤ24に引っ掛かりにくくなる。また、ホルダ34の突部40と第2のギヤ24の突部28とを厚さ方向に重ねるとき、その突部28と接触しているシート部35a,35b間、及びシート部36a,36b間に上記ホルダ34の突部40が嵌め込まれるが、この嵌め込みの際にもシート部35a,35b,36a,36bの縁部がホルダ34に引っ掛かりにくくなる。従って、挟持プレート30a,30b,31a,31bを第1及び第2のギヤ23,24に対して容易に組み付けることができる。
【0059】
(6)また、上記シート部35a,35b,36a,36bの斜面37a,37b,38a,38bは、シート部35a,35b,36a,36bの外側面に対して30゜と比較的鋭角に形成されている。そのため、第1及び第2のギヤ23,24に対する挟持プレート30a,30b,31a,31bの組み付け時の嵌込作業が一層容易になる。
【0060】
(7)通常、静粛性向上などを意図して第1のギヤ23を樹脂により形成した場合、強度を確保するために第1のギヤ23を厚さ方向に大型化しなければならない。しかし、本実施形態では、クランクシャフトギヤ13から第1のギヤ23への回転伝達の際にギヤ13からギヤ23へ加えられる衝撃が、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの伸縮により緩和されることとなる。そのため、金属製のものよりも強度の低い樹脂製の第1のギヤ23を採用しても、同ギヤ23を強度向上のために厚さ方向に大型化させずに同ギヤ23の強度を十分なものとすることができる。従って、静粛性を向上させつつ第1のギヤ23の大型化を抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1のギヤ23を樹脂以外の材料(例えば金属)により形成してもよい。
・上記シート部35a,35b,36a,36bの斜面37a,37b,38a,38bの傾斜角度を、シート部35a,35b,36a,36bの外側面に対して30゜としたが、その他の値(例えば45゜)としてもよい。
【0062】
・各シート部35a,35b,36a,36bに二つづつ形成された斜面37a,37b,38a,38bの内の一つを省略してもよい。この場合、斜面37a,37b,38a,38bを形成する手間を軽減することができる。
【0063】
・また、斜面37a,37b,38a,38b全部を省略し、同斜面37a,37b,38a,38bを形成する手間を省いてもよい。
・本実施形態では、二つのバランスシャフト17,18を備えたバランサ装置15を例示したが、エンジンの気筒数に応じてバランスシャフトの数を適宜変更してもよい。
【0064】
・本実施形態では、駆動力伝達部材としてギヤ23,24,42を例示したが、これに代えてスプロケットやプーリ等を駆動力伝達部材として採用してもよい。これらの場合、回転伝達がギヤの噛み合いによってではなく、チェーンやベルトを介して行われることとなる。
【0065】
・本実施形態では、駆動力伝達装置21をエンジンのバランサ装置に適用したが、その他の装置に駆動力伝達装置21を適用してもよい。
・本実施形態では、コイルスプリング32a,32b,33a,33bを直線状となるようにしたが、これに代えて図6に一転鎖線で示すように、コイルスプリング32a,32b,33a,33bを長手方向について第2のギヤ24の中心へ接近する側に湾曲させてもよい。この場合、コイルスプリング32a,32b,33a,33bを挟持する各対のシート部35a,35b,36a,36bを、互いに平行にするのではなく、第2のギヤ24の中心に近づくほど拡開させる。このように構成すれば、駆動力伝達装置21のギヤ機構22が回転するとき、遠心力によってコイルスプリング32a,32b,33a,33bが直線状になる。そのため、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの両端部と凹部29a,29b,41a,41bの内周面とが接触することのない第1及び第2のギヤ23,24の最小径を一層小さくし、更なる駆動力伝達装置21の小型化を図ることができる。
【0066】
・本実施形態では、緩衝機構25に四つのコイルスプリング32a,32b,33a,33bを設けたが、その数を例えば二つなどに適宜変更してもよい。この場合、コイルスプリング32a,32b,33a,33bの数に応じて、挟持プレート30a,30b,31a,31b等の数も変更することになる。
【0067】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、第1及び第2の駆動力伝達部材が回転するとき、遠心力によってコイルスプリングが直線状に延びた状態になる。このように第1及び第2の駆動力伝達部材の回転時にコイルスプリングが直線状になるため、同スプリングと両駆動力伝達部材とが接触することのない当該両駆動力伝達部材の最小径を一層小さくすることができるようになる。
さらに、コイルスプリングの長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成され、第1及び第2の駆動力伝達部材が軸線方向について並列となっているため、それら駆動力伝達部材の径を同駆動力伝達部材とコイルスプリングの長手方向両端部とが接触することのない最小値にしたとき、それら駆動力伝達部材をより小径にすることができる。従って、第1及び第2の駆動力伝達部材を極力小径にして、駆動力伝達装置の小型化を図ることができるようになる。
【0071】
請求項記載の発明によれば、内燃機関のバランサ装置に適用された駆動力伝達装置の大型化は同機関小型化の大きな妨げとなるが、その駆動力伝達装置の第1及び第2の駆動力伝達部材を極力小径とすることができるため、同装置を小型化して内燃機関の好適な小型化を図ることができる。
【0072】
請求項記載の発明によれば、バランスシャフトが二本設けられるバランサ装置において、駆動力伝達装置の第1及び第2の駆動力伝達部材を極力小径にすることで、それらバランスシャフトの間隔を最小限にとどめることができる。従って、バランサ装置の小型化、ひいては内燃機関の小型化を好適に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の駆動力伝達装置が適用されたバランサ装置及びエンジンを示す側面図。
【図2】同駆動力伝達装置によるクランクシャフトとバランサ装置との連結態様を示すエンジンの正面図。
【図3】同駆動力伝達装置に設けられたギヤ機構の内部構造を示す分解斜視図。
【図4】同ギヤ機構の挟持プレートを示す拡大斜視図。
【図5】第2のギヤに対する挟持プレート及びコイルスプリングの組付態様を示す正面図。
【図6】第2のギヤに対する挟持プレート及びコイルスプリングの組付態様の他の例を示す正面図。
【図7】駆動力伝達装置の従来例を示す正面図。
【符号の説明】
15…バランサ装置、17…第1のバランスシャフト、18…第2のバランスシャフト、21…駆動力伝達装置、22…ギヤ機構、23…第1のギヤ、24…第2のギヤ、25…緩衝機構、30a,30b,31a,31b…挟持プレート、32a,32b,33a,33b…コイルスプリング、34…ホルダ、35a,35b,36a,36b…シート部、37a,37b,38a,38b…斜面、42…第3のギヤ。

Claims (3)

  1. 同一軸線上に位置して同軸線を中心に回転可能な第1及び第2の駆動力伝達部材と、前記第1及び第2の駆動力伝達部材をその回転方向について互いに連結する緩衝機構とを備え、前記第1の駆動力伝達部材の回転を前記緩衝機構に設けられたコイルスプリングを介して第2の駆動力伝達部材に伝達する駆動力伝達装置において、
    前記第1及び第2の駆動伝達部材を前記軸線方向について並列に設け、前記コイルスプリングを前記第1及び第2の駆動伝達部材の間に配設するとともに、同コイルスプリングは前記軸線と直交する方向へ延びるとともに、自身の長手方向中間部を前記軸線に接近する方向に湾曲させて配設され、同スプリングの長手方向両端部が長手方向中央部よりも小径に形成されてなる
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
  2. 前記第1の駆動力伝達部材は内燃機関に設けられたバランサ装置のバランスシャフトに回転可能に取り付けられ、前記第2の駆動力伝達部材は前記バランスシャフトと一体回転可能に固定される
    請求項1記載の駆動力伝達装置。
  3. 請求項2記載の駆動力伝達装置において、
    前記第2の駆動力伝達部材の回転が伝達される第3の駆動力伝達部材を更に設け、前記第3の駆動力伝達部材を前記バランスシャフトと平行に設けられる別のバランスシャフトに一体回転可能に固定した
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
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