JP3596317B2 - 車両駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の運転特性を変化させる装置に関し、特に、走行中の路面勾配に応じて駆動力を変化させる駆動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
登坂路等における走行性能を向上させるために、車両が受ける重量勾配抵抗力を推定し、推定された重量勾配抵抗力に応じて車両特性を変化させる車両が知られている。
【0003】
このような車両としては、例えば、特開平3−24362号公報に記載されている装置がある。しかし、これは車速やスロットル開度やその変化速度から勾配の大小を判断するだけのものであり、重量勾配抵抗力を精度よく推定することができなかった。したがって、このようにして推定された重量勾配抵抗力に基づいて駆動力制御を行っても適切な制御が行えず、運転者に違和感を与える原因となっていた。
【0004】
そこで、例えば、特開平9−242862号公報に記載された装置では、車両駆動トルクから平坦路走行抵抗トルクと加速抵抗トルクを減じて重量勾配抵抗トルクを算出し、この重量勾配抵抗トルクにに基づき重量勾配抵抗力を推定することで制御精度の向上を図っている。
【0005】
【発明が解決しようとしている問題点】
ところで、重量勾配抵抗トルクを車両駆動トルクから平坦路走行抵抗トルク、加速抵抗トルクを減じて算出する場合、重量勾配抵抗トルクを精度よく求めるためには車両駆動トルク、平坦路走行抵抗トルク及び加速抵抗トルクをそれぞれ正確に算出する必要がある。
【0006】
しかしながら、この従来装置においては、車速センサから入力される車速信号を微分して求めた加速度を基に加速抵抗トルクを算出していたので、車両駆動トルクに対して加速抵抗トルクが遅れ、重量勾配抵抗トルクを精度よく求めることができなかった。
【0007】
例えば、一定勾配を走行中にアクセルペダルを踏み込んだ場合、加速抵抗トルクは車両駆動トルクに比べて遅れて増加するが、車両駆動トルクから加速抵抗トルクをそのまま減じて重量勾配抵抗トルクを算出すると、一定勾配では一定値を保つはずの重量勾配抵抗トルクが変動する。このため、実際は路面勾配が一定であるのにもかかわらず、路面勾配が変化していると誤認してしまい、それに応じた駆動力補正を行うと運転者に違和感を与えてしまう。
【0008】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、車両駆動トルクと加速抵抗トルクとを同期させることにより重量勾配抵抗力を精度よく推定し、駆動力制御の精度を向上することを目的とする。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
第1の発明は、車両駆動力制御装置において、アクセルペダル踏み込み量を検出する手段と、車速を検出する手段と、検出されたアクセルペダル踏み込み量と車速に基づき平坦路における通常目標駆動力を設定する手段と、遅れ補正を施すことによりスロットル開度の変化よりも遅れて変化するように有効車両推進トルクを求め、該有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じて車両にかかる重量勾配抵抗力を推定する手段と、前記通常目標駆動力を重量勾配抵抗力で補正して補正目標駆動力を算出する手段と、補正目標駆動力を実現するようにエンジン、自動変速機のうち少なくとも一方を制御する手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、補正目標駆動力を演算する手段が、推定された重量勾配抵抗力に0.3から0.7の勾配抵抗係数を掛けたものを通常目標駆動力に加算することにより補正目標駆動力を算出することを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、重量勾配抵抗力を推定する手段が、エンジン出力トルク、エンジンイナーシャトルク、トルクコンバータのトルク比及び駆動系の変速比に基づき理想車両駆動トルクを算出する手段と、理想車両駆動トルクを駆動系損失トルクに基づき補正し、有効車両駆動トルクを算出する手段と、車速に基づき平坦路における走行抵抗トルクを算出する手段と、有効車両駆動トルクから走行抵抗トルクを減じて理想車両推進トルクを算出する手段と、理想車両推進トルクをむだ時間補正してむだ時間補正推進トルクを算出する手段と、むだ時間補正推進トルクを一次遅れ補正して有効車両推進トルクを算出する手段と、車速に基づき加速抵抗トルクを算出する手段と、前記有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じて重量勾配抵抗トルクを求め、この重量勾配抵抗トルクを基に走行中の重量勾配抵抗力を推定する手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
第4の発明は、第1または第2の発明において、重量勾配抵抗力を推定する手段が、エンジン出力トルク、エンジンイナーシャトルク、トルクコンバータのトルク比及び駆動系の変速比に基づき理想車両駆動トルクを算出する手段と、理想車両駆動トルクをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクを算出する手段と、車速に基づき平坦路における走行抵抗トルクを算出する手段と、車速に基づき加速抵抗トルクを算出する手段と、前記むだ時間補正駆動トルクから走行抵抗トルクを減じて有効車両推進トルクを求める手段と、前記有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じたものを一次遅れ補正して補正重量勾配抵抗トルクを求め、この補正重量勾配抵抗トルクを基に走行中の重量勾配抵抗力を推定する手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
【作用及び効果】
第1の発明によると、車両が平坦路を走行しているときはアクセルペダル踏み込み量と車速に応じて目標駆動力が設定され、この目標駆動力を実現するようにエンジンあるいは変速機が制御されるのに対し、車両が勾配のあるところを走行しているときは勾配を走行することで車両が受ける抵抗、すなわち重量勾配抵抗力に応じて目標駆動力が補正される。これにより、登坂路等においても運転者が加速不足を感じることはなく心地よい加速感を得ることができる。
【0014】
特に、重量勾配抵抗力は車両駆動トルク、平坦路走行抵抗トルク、加速抵抗トルク等に基づき推定されるが、本発明によると車両駆動トルクに対する加速抵抗トルクの遅れを考慮して重量勾配抵抗力が推定されるので、車両駆動トルクに対して加速抵抗トルクが遅れることによる重量勾配抵抗力の推定精度の低下が避けられる。
【0015】
第2の発明によると、目標駆動力は、重量勾配抵抗力に0.3から0.7の間の勾配抵抗係数を掛けた値を通常目標駆動力に加算した値に設定される。推定された重量勾配抵抗力をそのまま通常目標駆動力に加算した値を目標駆動力とすると、平坦路も登坂路も同じように加速するため運転者に違和感を与えてしまうが、このように重量勾配抵抗力よりも少ない値を加算するようにすることにより、このような違和感を与えるのを防止できる。
【0016】
第3の発明によると、理想車両推進トルクにむだ時間補正及び一次遅れ補正を施すことにより有効車両推進トルクが算出され、この有効車両推進トルクと加速抵抗トルクに基づき重量勾配抵抗力が推定される。このように、むだ時間補正及び一次遅れ補正を施すことにより有効車両推進トルク加速抵抗トルクの同期がとれるので、重量勾配抵抗力を精度よく推定することができる。
【0017】
第4の発明によると、理想車両駆動トルクにむだ時間補正を施すことにより、それに基づき算出される有効車両推進トルクと加速抵抗トルクとの増加の同期がとれ、重量勾配抵抗力の推定精度が向上する。また、一次遅れ補正を施した補正重量勾配抵抗トルクに基づき重量勾配抵抗力が算出されるので、重量勾配抵抗力の急激な変動を抑えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、この発明が適用されるCVT搭載車両101の概略構成を示す。この車両101の駆動システムは、トルクコンバータ104を内蔵したCVT103と、プロペラシャフト105と、ファイナルギア及びデファレンシャルギア106と、デファレンシャルギア106と駆動輪108とを連結するドライブシャフト107とを備え、エンジン102の出力がそれらを介して駆動輪108に伝達される構成となっている。
【0020】
ここでCVT103はベルト式無段変速機を意味するが、トロイダル式無段変速機等他の構造の無段変速機を備えていてもよい。また、図1に示す車両101は後輪駆動であるが、他の駆動方式であってもよい。
【0021】
エンジン102には、出力軸であるクランクシャフトの回転数Neを検出するクランク角センサ121が設けられている。また、エンジン102の吸気通路にはアクセルペダルの動きに応じて吸気通路を通る空気量を調節するスロットルバルブが設けられており、スロットルバルブの開度TVOはスロットル開度センサ122により検出される。
【0022】
CVT103は、コントロールバルブ等からなる油圧制御回路とステップモータを備え、ステップモータの回転位置に応じて無段階に変速を行うことができる。また、CVT103には、CVT入力軸回転数Ninを検出する入力軸回転数センサ123、前記油圧制御回路内の油圧Plを検出する油圧センサ125、油温Tmpを検出する油温センサ126が設けられている。
【0023】
トルクコンバータ104は、エンジン102のクランクシャフトに直結されているポンプと、CVT103の入力軸に直結されているタービンと、前記ポンプとタービンの間にオイルを介して設けられるステータと、クラッチ部材を利用したロックアップ機構とを有する。
【0024】
ファイナルギア及びデファレンシャルギア106には、車速に比例する出力軸回転数を検出する車速センサ124が設けられている。
【0025】
上記エンジン102及びCVT103はパワートレイン・コントロール・モジュール(以下PCM)111により制御される。PCM111はCPU、ROM及びRAM等から構成され、PCM111にはクランク角センサ121からのエンジン回転数Ne、スロットル開度センサ122からのスロットル開度TVO、油圧センサ125からの油圧Pl、油温センサ126からの油温Tmp、アクセルペダル踏み込み量センサ128からのアクセルペダル踏み込み量APO、車速センサ124からの車速信号VSP等の信号が入力される。PCM111はこれら各種信号に基づき、エンジン102の燃料供給量や点火時期の制御、CVT103の変速比や油圧の制御を行う。
【0026】
以下、このPCM111の構成及びその機能について詳しく説明する。
【0027】
図2は、PCM111をブロック線図で表したものである。PCM111は、通常目標駆動力設定部161、重量勾配抵抗推定部154、駆動力補正量演算部162、エンジントルク制御部169、目標入出力回転数比演算部165、CVT入出力回転数比制御部167、加算部163及び乗算部168を備える。
【0028】
通常目標駆動力設定部161は、所定のマップ153を参照して、アクセルペダル踏み込み量センサ128で検出されたアクセルペダル踏み込み量APOと、車速センサ124で検出された車速VSPに対応する通常目標駆動力tTd_n(平坦路における車両の駆動力目標値)を設定する。
【0029】
重量勾配抵抗推定部154は、車速VSP、スロットル開度TVOの他、各種信号に基づき、勾配のある路面を走行する際に車両が受ける重量勾配抵抗力RFORCEを推定する。重量勾配抵抗推定部154をブロック線図で表すと図3に示すようになるが、これについては後で説明する。
【0030】
駆動力補正量演算部162は、重量勾配抵抗力RFORCEよりも小さな駆動力補正量ΔRFORCEを演算する。駆動力補正量ΔRFORCEを演算するには、例えば、所定の勾配抵抗係数α(0<α<1)を予め設定しておき、
ΔRFORCE=α×RFORCE (1)
により演算する。
【0031】
加算部163は、通常目標駆動力設定部153で設定された通常目標駆動力tTd_nに駆動力補正量演算部162で演算された駆動力補正量ΔRFORCEを加算し、目標駆動力tTdを演算する。
【0032】
乗算部168は、目標駆動力tTdにCVT103の入出力回転数比RATIOを乗じて目標とするエンジントルクtTeを演算する。
【0033】
エンジントルク制御部169は、目標エンジントルクtTeを実現するためにエンジン10F2のスロットル開度、燃料噴射量、点火時期等を制御する。
【0034】
目標入出力回転数比演算部165は、所定のマップ171を参照して目標駆動力tTdと車速VSPに対応するCVT103の目標入出力回転数比tRATIOを演算する。なお、変速機の入出力回転数比制御には入力軸回転数の目標値を用いることが多いため、いったんこの入力軸回転数の目標値を求めてから車速との関係で目標入出力回転数比tRATIOを求めても良い。
【0035】
CVT入出力回転数比制御部167は、目標入出力回転数比tRATIOが実現されるようにCVT103を制御する。
【0036】
したがって、登坂路においては、通常目標駆動力tTd_nに勾配に応じた駆動力補正量ΔRFORCEが加算された値が目標駆動力tTdとなり、この目標駆動力tTdを実現するようにエンジン102及びCVT103が制御されることになる。
【0037】
なお、ここではエンジン102、CVT103両方を制御し、目標駆動力を実現する構成となっているが、どちらか一方を制御することにより目標駆動力を実現する構成であっても良い。
【0038】
また、駆動力補正量演算部162において重量勾配抵抗力RFORCEに勾配抵抗係数αを掛けて求めた駆動力補正量ΔRFORCEを出力するようになっているのは、通常目標駆動力tTd_nに重量勾配抵抗力RFORCEをそのまま加算した値に基づき駆動力制御を行うと、登坂路でも平坦路と同じように車が加速してしまい、運転者に違和感を与えてしまうのを防止するためである。勾配抵抗係数αは好ましくは0.3〜0.7の間の値に設定される。
【0039】
次に、上記重量勾配抵抗推定部154の構成について説明する。
【0040】
重量勾配抵抗推定部154をブロック線図で表すと図3のようになる。重量勾配抵抗推定部154は、スロットル開度TVO、エンジン回転数Neの他、各種入力信号に基づき有効車両駆動トルクToyを算出する車両駆動トルク算出部1と、車速VSPに基づき平坦路走行抵抗トルクTrlを算出する走行抵抗トルク算出部2と、同じく車速VSPに基づき加速抵抗トルクTrarを算出する加速抵抗トルク算出部4を備える。さらに、重量勾配抵抗推定部154は、推進トルク補正部5と、減算部3、6と、除算部7とを備える。
【0041】
減算部3は有効車両駆動トルクToyから平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて理想車両推進トルクTtrを算出する。推進トルク補正部5は、理想車両推進トルクTtrを車両特性に関連して実際に有効な有効車両推進トルクTtyに補正する。この推進トルク補正部5を備えたことが従来装置と大きく異なる点である。そして、減算部6は有効車両推進トルクTtyから加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出し、除算部7は重量勾配抵抗トルクTrgを駆動輪半径rで除して重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0042】
これら車両駆動トルク算出部1、走行抵抗トルク算出部2、加速抵抗トルク算出部4及び推進抵抗トルク5をブロック線図で表すと、それぞれ図4、図5、図6及び図7に示すようになる。以下、それぞれの構成について詳しく説明する。
【0043】
まず、図4を参照しながら車両駆動トルク算出部1について説明すると、この車両駆動トルク算出部1は、スロットル開度TVO、エンジン回転数Ne、CVT入力軸回転数Nin、変速比Ip及び油圧Plに基づき車両駆動トルクToyを算出するものである。
【0044】
車両駆動トルク算出部1は、理想車両駆動トルク算出部10と、損失トルク算出部12と、減算部35とを備える。理想車両駆動トルク算出部10は、エンジン出力トルク算出部21と、エンジンイナーシャトルク算出部22と、トルク比算出部24と、減算部23と、乗算部25、26、31とから構成される。
【0045】
エンジン出力トルク算出部21は、所定のエンジントルクマップ33を参照して、スロットル開度TVO、エンジン回転数Neに対応するエンジン出力トルクTeを求める。
【0046】
エンジンイナーシャトルク算出部22は、エンジン回転数Neを時間微分演算部27で微分してエンジン回転数微分値dNe/dtを算出し、これにエンジンイナーシャ定数Iengを乗算部22aで乗じてエンジンイナーシャトルクTeiを算出する。
【0047】
減算部23は、エンジン出力トルクTeiからエンジンイナーシャトルクTeiを減じて実エンジン出力トルクTe2を算出する。
【0048】
トルク比算出部24はトルクコンバータ104のトルク比τを算出するもので、除算部29にてCVT入力軸回転数Ninをエンジン回転数Neで除することにより回転速度比eを求め、トルコントルク比マップ34を参照して回転速度比eに対応するトルク比τを算出する。
【0049】
乗算部25は、実エンジン出力トルクTe2にトルク比τを乗じてCVT103への入力トルクTinを算出する。乗算部26は、入力トルクTinに変速比Ipを乗じてCVT103の出力トルクTsecを算出する。乗算部31は、CVT103の出力トルクTsecにファイナルギア比Finalを乗じて理想車両駆動トルクTorを算出する。
【0050】
損失トルク算出部12は、損失トルクマップ32を参照してCVT103の油圧Plに対応する駆動系損失トルクTlosを算出する。損失トルクマップ32では駆動系損失トルクTlosと油圧Plの関係は二次曲線で表される。なお、駆動系損失トルクTlosは油圧Pl以外にもエンジン回転数Ne、変速比Ip、油温Tmpにも影響を受けるため、エンジン回転数Ne、変速比Ip、油温Tmpのいずれか一つに基づいて損失トルクを算出するようにしても良い。
【0051】
減算部35は、理想車両駆動トルクTorから損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。
【0052】
以上のような構成により、車両駆動トルク算出部1は、スロットル開度TVO、エンジン回転数Ne、CVT入力軸回転数Nin、変速比Ipに基づきエンジン出力トルクTe、エンジンイナーシャトルクTei、トルク比τをそれぞれ算出し、これらに基づき理想車両駆動トルクTorを算出する。さらに、油圧Plに基づき算出した駆動系損失トルクTlosを理想車両駆動トルクTorから減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。
【0053】
次に、図5を参照しながら走行抵抗トルク算出部2について説明する。
【0054】
走行抵抗トルク算出部2は、車両が平坦路を走行しているときに受ける抵抗(ころがり摩擦抵抗、空気抵抗等)をトルクに換算して算出するものである。具体的には、平坦路走行抵抗トルクマップ20を参照して車速VSPに対応する平坦路走行抵抗トルクTrlを算出する。
【0055】
次に、図6を参照しながら加速抵抗トルク算出部4について説明する。
【0056】
加速抵抗トルク算出部4は、車両が加速するときに受ける抵抗(慣性力)をトルクに換算して算出するもので、車速センサ124からの車速VSPに基づき加速抵抗トルクTraを算出する。
【0057】
具体的には、時間微分演算部41、乗算部43、45を備え、車速VSPを時間微分演算部41にて微分して加速度Acelを算出し、この加速度Acelに車両重量Ivと駆動輪半径rを乗算部43、45にてそれぞれ乗じることで理想加速抵抗Trarを算出する。
【0058】
したがって、理想加速抵抗トルクTrarは、
Trar=(dVSP/dt)・Iv・r (2)
で表される。
【0059】
続いて、本発明の特徴である推進トルク補正部5について説明する。図7に示すように、この推進トルク補正部7は、むだ時間補正部60と、一次遅れ補正部70とを備える。
【0060】
ここで推進トルク補正部5に入力される理想車両推進トルクTtrがデジタル信号とすると、むだ時間補正部60は、理想車両推進トルクTtrをホールド部61にて保管し、mサンプリング周期前の理想車両推進トルクTtrをむだ時間補正推進トルクTtmとして出力する。
【0061】
一次遅れ補正部70は、ゲイン乗算部71、72、73と、ホールド部74と、加算部75を備える。加算部75では、ゲイン乗算部71においてむだ時間補正推進トルクTtmにゲイン係数Aを乗じた値に、ホールド部74で保管された1サンプリング周期前の有効車両推進トルクTtyにフィードバック係数Bを乗じた値を加える。そして、その値にゲイン乗算部72においてゲイン係数Aとフィードバック係数Bの和の逆数(1/A+B)を乗じることで有効車両推進トルクTtyを算出する。
【0062】
したがって、この推進トルク補正部5に理想車両推進トルクTtrが入力されると、それにむだ時間補正及び一次遅れ補正を施した値である有効車両推進トルクTtyが出力される。
【0063】
次に、重量勾配抵抗推定部154の処理内容を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
図8のステップS11からS20は有効車両駆動トルクToyを算出するステップであり、図4に示した車両駆動トルク算出部1に対応するステップである。
【0065】
まず、ステップS11では、クランク角センサ121からのエンジン回転数Neと、スロットル開度センサ122からのスロットル開度TVOと、入力軸回転数センサ123からのCVT入力軸回転数Ninと、PCM111のCVT制御部で演算される変速比Ipを読み込む。
【0066】
そして、ステップS12では、エンジントルクマップを検索してエンジン回転数Neとスロットル開度TVOに対応するエンジン出力トルクTeを求め、ステップS13では、エンジン回転数Neを時間微分してエンジン回転数微分値dNe/dtを算出し、これにエンジンイナーシャ定数Iengを乗じてエンジンイナーシャトルクTeiを算出する。
【0067】
ステップS14では、CVT入力軸回転数Ninをエンジン回転数Neで除してトルクコンバータ104の回転速度比eを演算し、ステップS15では、トルコントルク比マップを検索してこの回転速度比eに対応するトルク比τを求める。
【0068】
ステップS16では、ステップS12で求めたエンジン出力トルクTeからステップS13で算出したエンジンイナーシャトルクTeiを減じた値に、ステップS14で求めたトルク比τを乗じて駆動系の入力トルクTinを算出する。ステップS17では、この入力トルクTinに変速比Ipと最終減速比Finalを乗じて理想車両駆動トルクTorを算出する。
【0069】
ステップS18では、油圧センサ125からの油圧Plを読み込み、所定の損失トルクマップを参照して駆動系損失トルクTlosを求める。そして、ステップS20ではステップS17で求めた理想車両駆動トルクTorから駆動系損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。
【0070】
次のステップS21からステップS23は理想車両推進トルクTtrを算出するステップで、図5の走行抵抗トルク算出部2、図3の減算部3に対応するステップである。
【0071】
まず、ステップS21で車速VSPを読み込み、ステップS22で平坦路走行抵抗トルクマップを参照して車速VSPに対応する平坦路走行抵抗トルクTrlを求める。
【0072】
そして、ステップS23で、ステップS20で算出した有効車両駆動トルクToyからステップS22で求めた平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて理想車両推進トルクTtrを算出する。
【0073】
次のステップS24、ステップS25は理想車両推進トルクTtrを補正して有効車両推進トルクTtyを算出するステップである。図7に示した推進トルク補正部5に対応するステップで、ステップS24では、理想車両推進トルクTtrにむだ時間補正を施して無駄時間補正推進トルクTtmを算出し、ステップS25では、このむだ時間補正推進トルクTtmに一次遅れ補正を施して有効車両推進トルクTtyを算出する。
【0074】
次のステップS26、ステップS27は理想加速抵抗トルクTrarを算出するステップである。図6に示した加速抵抗トルク算出部4に対応するステップで、ステップS26では車速VSPを時間微分して加速度Acelを算出し、ステップS27では、この加速度Acelに車両重量Ivと駆動輪半径rを乗じて理想加速抵抗トルクTrarを算出する。
【0075】
以上のステップを経て有効車両推進トルクTty、理想加速抵抗トルクTrarを算出したら、ステップS28で有効車両推進トルクTtyから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出し、ステップS29でこの重量勾配抵抗トルクTrgを駆動輪半径rで除して重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0076】
したがって、このフローチャートを処理することにより、重量勾配抵抗推定部154は理想車両駆動トルクTorから駆動系損失トルクTlosを考慮して有効車両駆動トルクToyを算出し、この有効車両駆動トルクToyから、平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて理想車両推進トルクTtrを算出する。さらに、理想車両推進トルクTtrにむだ時間補正及び一次遅れ補正を施して有効車両推進トルクTtyを求め、そこから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrg、重量勾配抵抗力RFORCEを推定する。
【0077】
図9は本発明による作用効果を示すタイミングチャートである。
【0078】
これは車両が一定勾配を走行しているときに運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速した場合のスロットル開度、車速、推進トルク、加速抵抗トルク及び重量勾配抵抗トルクの変化の様子を示し、(a)が従来装置の場合、(b)が本発明による装置の場合を示す。
【0079】
従来の装置では、(a)に示すように運転者がアクセルペダルを踏み込んでスロットル開度TVOが増加すると、その直後に理想車両推進トルクも増加するが、加速抵抗トルクは理想車両推進トルクに比べて遅れて増加する。このため、理想車両推進トルクから加速抵抗トルクを差し引いて求まる重量勾配抵抗トルクは左最下段のグラフに示すように加速直後に増加してしまう。実際の勾配は一定であるにもかかわらず勾配が変化しているものと推定されてしまうので、これに基づき駆動力制御を行った場合、運転者に違和感を与えてしまう。
【0080】
これに対し、本発明による装置では、(b)に示すように、理想車両推進トルクに遅れ補正を施して求めた有効車両推進トルクと加速抵抗トルクが同期し、増加のタイミングが一致するので、重量勾配抵抗トルクは右最下段のグラフに示すように加速時もほぼ一定値に収まる。これにより、重量勾配抵抗力は加速時においても精度よく推定される。
【0081】
なお、ここでは一定勾配走行時にアクセルペダルを踏み込んだ状況を例に挙げて本発明が重量勾配抵抗力を正しく推定可能なことを示したが、他の状況であっても同様に重量勾配抵抗力を正しく推定できる。
【0082】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0083】
この第2の実施形態は、先の実施形態と比べ、重量勾配抵抗推定部154の構成が異なる。
【0084】
図10はその重量勾配抵抗推定部154のブロック線図である。この実施形態においては、推進トルク補正部5を持たない代わりに減算部6と除算部7間に勾配抵抗トルク補正部8を備えている。
【0085】
勾配抵抗トルク補正部8の構成は、図6に示した一次遅れ補正部70と同じであり、重量勾配抵抗トルクTrgが入力されるとそれを一次遅れ補正したTrg2を出力する。
【0086】
また、車両駆動トルク算出部1の構成も異なり、この実施形態では、図4に示す理想車両駆動トルク算出部10の後ろにむだ時間補正部を備える。このむだ時間補正部は図7に示したむだ時間補正部60と同じものであり、具体的には、図4の乗算部31と減算部35の間に設けられる。
【0087】
重量勾配抵抗推定部154における処理内容は図11に示すフローチャートのようになる。ステップS31以降の処理が図8に示したものと異なる。
【0088】
ステップS31以降の処理について説明すると、まず、ステップS31では理想車両駆動トルクTorをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクTor2を算出する。そして、ステップS32、S33では油圧Plに基づき駆動系損失トルクTlosを求め、ステップS34ではむだ時間補正駆動トルクTor2から駆動系損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する
ステップS35、S36では車速VSPに基づき平坦路走行抵抗トルクTrlを求め、ステップS37では有効車両駆動トルクToyから平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて有効車両推進トルクTtyを算出する。
【0089】
ステップS38、S39では車速VSPの微分値に基づき理想加速抵抗トルクTrarを算出し、ステップS40では有効車両推進トルクTtyから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出する。
【0090】
ステップS41では、重量勾配抵抗トルクTrgを一次遅れ補正して補正重量勾配抵抗トルクTrg2とし、ステップS42ではこの補正重量勾配抵抗トルクTrg2を駆動輪半径rで除して重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0091】
したがって、この実施形態において重量勾配抵抗推定部154は、理想車両駆動トルクTorを算出するまでは先の実施形態と同じ処理を行うが、理想車両駆動トルクTorを算出した後は、理想車両駆動トルクTorをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクTor2とし、ここから駆動系損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。そして、この有効車両駆動トルクToyから平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて有効車両推進トルクTtyを算出し、有効車両推進トルクTtyから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出する。
【0092】
さらに、この重量勾配抵抗トルクTrgに一次遅れ補正を施して補正重量勾配トルクTrg2を算出し、この補正重量勾配抵抗トルクTrg2に基づき重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0093】
したがって、図12のタイミングチャートに示すようにこの実施形態においても先の実施形態と同様に有効車両推進トルクTtyがスロットル開度TVOの増加よりも遅れて立ち上がるようになり、理想加速抵抗トルクTraと同期させることができる。
【0094】
また、重量勾配抵抗トルクTrgをそのまま重量勾配抵抗力演算に用いるのではなく、重量勾配抵抗トルクTrgに一次遅れ補正を施した補正重量勾配抵抗トルクTrg2に基づき重量勾配抵抗力RFORCEを算出するようにしているので、重量勾配抵抗力が急激に変動するのを抑えることができる。
【0095】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではエンジン出力トルクTeをエンジン回転数Neとスロットル開度TVOからエンジントルクマップ33を検索して求めているが、エンジン102の燃料噴射量TPとエンジン回転数Neに対するエンジン出力トルクTeの関係を規定するマップを用意しておき、燃料噴射量TPとエンジン回転数Neからそのマップを検索することによりエンジン出力トルクTeを求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される車両の概略構成を示す図である。
【図2】PCMのブロック線図である。
【図3】重量勾配抵抗推定部のブロック線図である。
【図4】車両駆動トルク算出部のブロック線図である。
【図5】走行抵抗トルク算出部のブロック線図である。
【図6】推進抵抗トルク補正部のブロック線図である。
【図7】加速抵抗トルク算出部のブロック線図である。
【図8】重量勾配抵抗推定部における処理内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の作用効果を示すタイミングチャートである。
【図10】第2の実施形態による重量勾配抵抗推定部のブロック線図である。
【図11】第2の実施形態による重量勾配抵抗推定部における処理内容を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態の作用効果を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
101 車両
102 エンジン
103 CVT
104 トルクコンバータ
111 PCM
124 車速センサ
128 アクセルペダル踏み込み量センサ
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の運転特性を変化させる装置に関し、特に、走行中の路面勾配に応じて駆動力を変化させる駆動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
登坂路等における走行性能を向上させるために、車両が受ける重量勾配抵抗力を推定し、推定された重量勾配抵抗力に応じて車両特性を変化させる車両が知られている。
【0003】
このような車両としては、例えば、特開平3−24362号公報に記載されている装置がある。しかし、これは車速やスロットル開度やその変化速度から勾配の大小を判断するだけのものであり、重量勾配抵抗力を精度よく推定することができなかった。したがって、このようにして推定された重量勾配抵抗力に基づいて駆動力制御を行っても適切な制御が行えず、運転者に違和感を与える原因となっていた。
【0004】
そこで、例えば、特開平9−242862号公報に記載された装置では、車両駆動トルクから平坦路走行抵抗トルクと加速抵抗トルクを減じて重量勾配抵抗トルクを算出し、この重量勾配抵抗トルクにに基づき重量勾配抵抗力を推定することで制御精度の向上を図っている。
【0005】
【発明が解決しようとしている問題点】
ところで、重量勾配抵抗トルクを車両駆動トルクから平坦路走行抵抗トルク、加速抵抗トルクを減じて算出する場合、重量勾配抵抗トルクを精度よく求めるためには車両駆動トルク、平坦路走行抵抗トルク及び加速抵抗トルクをそれぞれ正確に算出する必要がある。
【0006】
しかしながら、この従来装置においては、車速センサから入力される車速信号を微分して求めた加速度を基に加速抵抗トルクを算出していたので、車両駆動トルクに対して加速抵抗トルクが遅れ、重量勾配抵抗トルクを精度よく求めることができなかった。
【0007】
例えば、一定勾配を走行中にアクセルペダルを踏み込んだ場合、加速抵抗トルクは車両駆動トルクに比べて遅れて増加するが、車両駆動トルクから加速抵抗トルクをそのまま減じて重量勾配抵抗トルクを算出すると、一定勾配では一定値を保つはずの重量勾配抵抗トルクが変動する。このため、実際は路面勾配が一定であるのにもかかわらず、路面勾配が変化していると誤認してしまい、それに応じた駆動力補正を行うと運転者に違和感を与えてしまう。
【0008】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、車両駆動トルクと加速抵抗トルクとを同期させることにより重量勾配抵抗力を精度よく推定し、駆動力制御の精度を向上することを目的とする。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
第1の発明は、車両駆動力制御装置において、アクセルペダル踏み込み量を検出する手段と、車速を検出する手段と、検出されたアクセルペダル踏み込み量と車速に基づき平坦路における通常目標駆動力を設定する手段と、遅れ補正を施すことによりスロットル開度の変化よりも遅れて変化するように有効車両推進トルクを求め、該有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じて車両にかかる重量勾配抵抗力を推定する手段と、前記通常目標駆動力を重量勾配抵抗力で補正して補正目標駆動力を算出する手段と、補正目標駆動力を実現するようにエンジン、自動変速機のうち少なくとも一方を制御する手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、補正目標駆動力を演算する手段が、推定された重量勾配抵抗力に0.3から0.7の勾配抵抗係数を掛けたものを通常目標駆動力に加算することにより補正目標駆動力を算出することを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、重量勾配抵抗力を推定する手段が、エンジン出力トルク、エンジンイナーシャトルク、トルクコンバータのトルク比及び駆動系の変速比に基づき理想車両駆動トルクを算出する手段と、理想車両駆動トルクを駆動系損失トルクに基づき補正し、有効車両駆動トルクを算出する手段と、車速に基づき平坦路における走行抵抗トルクを算出する手段と、有効車両駆動トルクから走行抵抗トルクを減じて理想車両推進トルクを算出する手段と、理想車両推進トルクをむだ時間補正してむだ時間補正推進トルクを算出する手段と、むだ時間補正推進トルクを一次遅れ補正して有効車両推進トルクを算出する手段と、車速に基づき加速抵抗トルクを算出する手段と、前記有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じて重量勾配抵抗トルクを求め、この重量勾配抵抗トルクを基に走行中の重量勾配抵抗力を推定する手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
第4の発明は、第1または第2の発明において、重量勾配抵抗力を推定する手段が、エンジン出力トルク、エンジンイナーシャトルク、トルクコンバータのトルク比及び駆動系の変速比に基づき理想車両駆動トルクを算出する手段と、理想車両駆動トルクをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクを算出する手段と、車速に基づき平坦路における走行抵抗トルクを算出する手段と、車速に基づき加速抵抗トルクを算出する手段と、前記むだ時間補正駆動トルクから走行抵抗トルクを減じて有効車両推進トルクを求める手段と、前記有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じたものを一次遅れ補正して補正重量勾配抵抗トルクを求め、この補正重量勾配抵抗トルクを基に走行中の重量勾配抵抗力を推定する手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
【作用及び効果】
第1の発明によると、車両が平坦路を走行しているときはアクセルペダル踏み込み量と車速に応じて目標駆動力が設定され、この目標駆動力を実現するようにエンジンあるいは変速機が制御されるのに対し、車両が勾配のあるところを走行しているときは勾配を走行することで車両が受ける抵抗、すなわち重量勾配抵抗力に応じて目標駆動力が補正される。これにより、登坂路等においても運転者が加速不足を感じることはなく心地よい加速感を得ることができる。
【0014】
特に、重量勾配抵抗力は車両駆動トルク、平坦路走行抵抗トルク、加速抵抗トルク等に基づき推定されるが、本発明によると車両駆動トルクに対する加速抵抗トルクの遅れを考慮して重量勾配抵抗力が推定されるので、車両駆動トルクに対して加速抵抗トルクが遅れることによる重量勾配抵抗力の推定精度の低下が避けられる。
【0015】
第2の発明によると、目標駆動力は、重量勾配抵抗力に0.3から0.7の間の勾配抵抗係数を掛けた値を通常目標駆動力に加算した値に設定される。推定された重量勾配抵抗力をそのまま通常目標駆動力に加算した値を目標駆動力とすると、平坦路も登坂路も同じように加速するため運転者に違和感を与えてしまうが、このように重量勾配抵抗力よりも少ない値を加算するようにすることにより、このような違和感を与えるのを防止できる。
【0016】
第3の発明によると、理想車両推進トルクにむだ時間補正及び一次遅れ補正を施すことにより有効車両推進トルクが算出され、この有効車両推進トルクと加速抵抗トルクに基づき重量勾配抵抗力が推定される。このように、むだ時間補正及び一次遅れ補正を施すことにより有効車両推進トルク加速抵抗トルクの同期がとれるので、重量勾配抵抗力を精度よく推定することができる。
【0017】
第4の発明によると、理想車両駆動トルクにむだ時間補正を施すことにより、それに基づき算出される有効車両推進トルクと加速抵抗トルクとの増加の同期がとれ、重量勾配抵抗力の推定精度が向上する。また、一次遅れ補正を施した補正重量勾配抵抗トルクに基づき重量勾配抵抗力が算出されるので、重量勾配抵抗力の急激な変動を抑えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、この発明が適用されるCVT搭載車両101の概略構成を示す。この車両101の駆動システムは、トルクコンバータ104を内蔵したCVT103と、プロペラシャフト105と、ファイナルギア及びデファレンシャルギア106と、デファレンシャルギア106と駆動輪108とを連結するドライブシャフト107とを備え、エンジン102の出力がそれらを介して駆動輪108に伝達される構成となっている。
【0020】
ここでCVT103はベルト式無段変速機を意味するが、トロイダル式無段変速機等他の構造の無段変速機を備えていてもよい。また、図1に示す車両101は後輪駆動であるが、他の駆動方式であってもよい。
【0021】
エンジン102には、出力軸であるクランクシャフトの回転数Neを検出するクランク角センサ121が設けられている。また、エンジン102の吸気通路にはアクセルペダルの動きに応じて吸気通路を通る空気量を調節するスロットルバルブが設けられており、スロットルバルブの開度TVOはスロットル開度センサ122により検出される。
【0022】
CVT103は、コントロールバルブ等からなる油圧制御回路とステップモータを備え、ステップモータの回転位置に応じて無段階に変速を行うことができる。また、CVT103には、CVT入力軸回転数Ninを検出する入力軸回転数センサ123、前記油圧制御回路内の油圧Plを検出する油圧センサ125、油温Tmpを検出する油温センサ126が設けられている。
【0023】
トルクコンバータ104は、エンジン102のクランクシャフトに直結されているポンプと、CVT103の入力軸に直結されているタービンと、前記ポンプとタービンの間にオイルを介して設けられるステータと、クラッチ部材を利用したロックアップ機構とを有する。
【0024】
ファイナルギア及びデファレンシャルギア106には、車速に比例する出力軸回転数を検出する車速センサ124が設けられている。
【0025】
上記エンジン102及びCVT103はパワートレイン・コントロール・モジュール(以下PCM)111により制御される。PCM111はCPU、ROM及びRAM等から構成され、PCM111にはクランク角センサ121からのエンジン回転数Ne、スロットル開度センサ122からのスロットル開度TVO、油圧センサ125からの油圧Pl、油温センサ126からの油温Tmp、アクセルペダル踏み込み量センサ128からのアクセルペダル踏み込み量APO、車速センサ124からの車速信号VSP等の信号が入力される。PCM111はこれら各種信号に基づき、エンジン102の燃料供給量や点火時期の制御、CVT103の変速比や油圧の制御を行う。
【0026】
以下、このPCM111の構成及びその機能について詳しく説明する。
【0027】
図2は、PCM111をブロック線図で表したものである。PCM111は、通常目標駆動力設定部161、重量勾配抵抗推定部154、駆動力補正量演算部162、エンジントルク制御部169、目標入出力回転数比演算部165、CVT入出力回転数比制御部167、加算部163及び乗算部168を備える。
【0028】
通常目標駆動力設定部161は、所定のマップ153を参照して、アクセルペダル踏み込み量センサ128で検出されたアクセルペダル踏み込み量APOと、車速センサ124で検出された車速VSPに対応する通常目標駆動力tTd_n(平坦路における車両の駆動力目標値)を設定する。
【0029】
重量勾配抵抗推定部154は、車速VSP、スロットル開度TVOの他、各種信号に基づき、勾配のある路面を走行する際に車両が受ける重量勾配抵抗力RFORCEを推定する。重量勾配抵抗推定部154をブロック線図で表すと図3に示すようになるが、これについては後で説明する。
【0030】
駆動力補正量演算部162は、重量勾配抵抗力RFORCEよりも小さな駆動力補正量ΔRFORCEを演算する。駆動力補正量ΔRFORCEを演算するには、例えば、所定の勾配抵抗係数α(0<α<1)を予め設定しておき、
ΔRFORCE=α×RFORCE (1)
により演算する。
【0031】
加算部163は、通常目標駆動力設定部153で設定された通常目標駆動力tTd_nに駆動力補正量演算部162で演算された駆動力補正量ΔRFORCEを加算し、目標駆動力tTdを演算する。
【0032】
乗算部168は、目標駆動力tTdにCVT103の入出力回転数比RATIOを乗じて目標とするエンジントルクtTeを演算する。
【0033】
エンジントルク制御部169は、目標エンジントルクtTeを実現するためにエンジン10F2のスロットル開度、燃料噴射量、点火時期等を制御する。
【0034】
目標入出力回転数比演算部165は、所定のマップ171を参照して目標駆動力tTdと車速VSPに対応するCVT103の目標入出力回転数比tRATIOを演算する。なお、変速機の入出力回転数比制御には入力軸回転数の目標値を用いることが多いため、いったんこの入力軸回転数の目標値を求めてから車速との関係で目標入出力回転数比tRATIOを求めても良い。
【0035】
CVT入出力回転数比制御部167は、目標入出力回転数比tRATIOが実現されるようにCVT103を制御する。
【0036】
したがって、登坂路においては、通常目標駆動力tTd_nに勾配に応じた駆動力補正量ΔRFORCEが加算された値が目標駆動力tTdとなり、この目標駆動力tTdを実現するようにエンジン102及びCVT103が制御されることになる。
【0037】
なお、ここではエンジン102、CVT103両方を制御し、目標駆動力を実現する構成となっているが、どちらか一方を制御することにより目標駆動力を実現する構成であっても良い。
【0038】
また、駆動力補正量演算部162において重量勾配抵抗力RFORCEに勾配抵抗係数αを掛けて求めた駆動力補正量ΔRFORCEを出力するようになっているのは、通常目標駆動力tTd_nに重量勾配抵抗力RFORCEをそのまま加算した値に基づき駆動力制御を行うと、登坂路でも平坦路と同じように車が加速してしまい、運転者に違和感を与えてしまうのを防止するためである。勾配抵抗係数αは好ましくは0.3〜0.7の間の値に設定される。
【0039】
次に、上記重量勾配抵抗推定部154の構成について説明する。
【0040】
重量勾配抵抗推定部154をブロック線図で表すと図3のようになる。重量勾配抵抗推定部154は、スロットル開度TVO、エンジン回転数Neの他、各種入力信号に基づき有効車両駆動トルクToyを算出する車両駆動トルク算出部1と、車速VSPに基づき平坦路走行抵抗トルクTrlを算出する走行抵抗トルク算出部2と、同じく車速VSPに基づき加速抵抗トルクTrarを算出する加速抵抗トルク算出部4を備える。さらに、重量勾配抵抗推定部154は、推進トルク補正部5と、減算部3、6と、除算部7とを備える。
【0041】
減算部3は有効車両駆動トルクToyから平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて理想車両推進トルクTtrを算出する。推進トルク補正部5は、理想車両推進トルクTtrを車両特性に関連して実際に有効な有効車両推進トルクTtyに補正する。この推進トルク補正部5を備えたことが従来装置と大きく異なる点である。そして、減算部6は有効車両推進トルクTtyから加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出し、除算部7は重量勾配抵抗トルクTrgを駆動輪半径rで除して重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0042】
これら車両駆動トルク算出部1、走行抵抗トルク算出部2、加速抵抗トルク算出部4及び推進抵抗トルク5をブロック線図で表すと、それぞれ図4、図5、図6及び図7に示すようになる。以下、それぞれの構成について詳しく説明する。
【0043】
まず、図4を参照しながら車両駆動トルク算出部1について説明すると、この車両駆動トルク算出部1は、スロットル開度TVO、エンジン回転数Ne、CVT入力軸回転数Nin、変速比Ip及び油圧Plに基づき車両駆動トルクToyを算出するものである。
【0044】
車両駆動トルク算出部1は、理想車両駆動トルク算出部10と、損失トルク算出部12と、減算部35とを備える。理想車両駆動トルク算出部10は、エンジン出力トルク算出部21と、エンジンイナーシャトルク算出部22と、トルク比算出部24と、減算部23と、乗算部25、26、31とから構成される。
【0045】
エンジン出力トルク算出部21は、所定のエンジントルクマップ33を参照して、スロットル開度TVO、エンジン回転数Neに対応するエンジン出力トルクTeを求める。
【0046】
エンジンイナーシャトルク算出部22は、エンジン回転数Neを時間微分演算部27で微分してエンジン回転数微分値dNe/dtを算出し、これにエンジンイナーシャ定数Iengを乗算部22aで乗じてエンジンイナーシャトルクTeiを算出する。
【0047】
減算部23は、エンジン出力トルクTeiからエンジンイナーシャトルクTeiを減じて実エンジン出力トルクTe2を算出する。
【0048】
トルク比算出部24はトルクコンバータ104のトルク比τを算出するもので、除算部29にてCVT入力軸回転数Ninをエンジン回転数Neで除することにより回転速度比eを求め、トルコントルク比マップ34を参照して回転速度比eに対応するトルク比τを算出する。
【0049】
乗算部25は、実エンジン出力トルクTe2にトルク比τを乗じてCVT103への入力トルクTinを算出する。乗算部26は、入力トルクTinに変速比Ipを乗じてCVT103の出力トルクTsecを算出する。乗算部31は、CVT103の出力トルクTsecにファイナルギア比Finalを乗じて理想車両駆動トルクTorを算出する。
【0050】
損失トルク算出部12は、損失トルクマップ32を参照してCVT103の油圧Plに対応する駆動系損失トルクTlosを算出する。損失トルクマップ32では駆動系損失トルクTlosと油圧Plの関係は二次曲線で表される。なお、駆動系損失トルクTlosは油圧Pl以外にもエンジン回転数Ne、変速比Ip、油温Tmpにも影響を受けるため、エンジン回転数Ne、変速比Ip、油温Tmpのいずれか一つに基づいて損失トルクを算出するようにしても良い。
【0051】
減算部35は、理想車両駆動トルクTorから損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。
【0052】
以上のような構成により、車両駆動トルク算出部1は、スロットル開度TVO、エンジン回転数Ne、CVT入力軸回転数Nin、変速比Ipに基づきエンジン出力トルクTe、エンジンイナーシャトルクTei、トルク比τをそれぞれ算出し、これらに基づき理想車両駆動トルクTorを算出する。さらに、油圧Plに基づき算出した駆動系損失トルクTlosを理想車両駆動トルクTorから減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。
【0053】
次に、図5を参照しながら走行抵抗トルク算出部2について説明する。
【0054】
走行抵抗トルク算出部2は、車両が平坦路を走行しているときに受ける抵抗(ころがり摩擦抵抗、空気抵抗等)をトルクに換算して算出するものである。具体的には、平坦路走行抵抗トルクマップ20を参照して車速VSPに対応する平坦路走行抵抗トルクTrlを算出する。
【0055】
次に、図6を参照しながら加速抵抗トルク算出部4について説明する。
【0056】
加速抵抗トルク算出部4は、車両が加速するときに受ける抵抗(慣性力)をトルクに換算して算出するもので、車速センサ124からの車速VSPに基づき加速抵抗トルクTraを算出する。
【0057】
具体的には、時間微分演算部41、乗算部43、45を備え、車速VSPを時間微分演算部41にて微分して加速度Acelを算出し、この加速度Acelに車両重量Ivと駆動輪半径rを乗算部43、45にてそれぞれ乗じることで理想加速抵抗Trarを算出する。
【0058】
したがって、理想加速抵抗トルクTrarは、
Trar=(dVSP/dt)・Iv・r (2)
で表される。
【0059】
続いて、本発明の特徴である推進トルク補正部5について説明する。図7に示すように、この推進トルク補正部7は、むだ時間補正部60と、一次遅れ補正部70とを備える。
【0060】
ここで推進トルク補正部5に入力される理想車両推進トルクTtrがデジタル信号とすると、むだ時間補正部60は、理想車両推進トルクTtrをホールド部61にて保管し、mサンプリング周期前の理想車両推進トルクTtrをむだ時間補正推進トルクTtmとして出力する。
【0061】
一次遅れ補正部70は、ゲイン乗算部71、72、73と、ホールド部74と、加算部75を備える。加算部75では、ゲイン乗算部71においてむだ時間補正推進トルクTtmにゲイン係数Aを乗じた値に、ホールド部74で保管された1サンプリング周期前の有効車両推進トルクTtyにフィードバック係数Bを乗じた値を加える。そして、その値にゲイン乗算部72においてゲイン係数Aとフィードバック係数Bの和の逆数(1/A+B)を乗じることで有効車両推進トルクTtyを算出する。
【0062】
したがって、この推進トルク補正部5に理想車両推進トルクTtrが入力されると、それにむだ時間補正及び一次遅れ補正を施した値である有効車両推進トルクTtyが出力される。
【0063】
次に、重量勾配抵抗推定部154の処理内容を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
図8のステップS11からS20は有効車両駆動トルクToyを算出するステップであり、図4に示した車両駆動トルク算出部1に対応するステップである。
【0065】
まず、ステップS11では、クランク角センサ121からのエンジン回転数Neと、スロットル開度センサ122からのスロットル開度TVOと、入力軸回転数センサ123からのCVT入力軸回転数Ninと、PCM111のCVT制御部で演算される変速比Ipを読み込む。
【0066】
そして、ステップS12では、エンジントルクマップを検索してエンジン回転数Neとスロットル開度TVOに対応するエンジン出力トルクTeを求め、ステップS13では、エンジン回転数Neを時間微分してエンジン回転数微分値dNe/dtを算出し、これにエンジンイナーシャ定数Iengを乗じてエンジンイナーシャトルクTeiを算出する。
【0067】
ステップS14では、CVT入力軸回転数Ninをエンジン回転数Neで除してトルクコンバータ104の回転速度比eを演算し、ステップS15では、トルコントルク比マップを検索してこの回転速度比eに対応するトルク比τを求める。
【0068】
ステップS16では、ステップS12で求めたエンジン出力トルクTeからステップS13で算出したエンジンイナーシャトルクTeiを減じた値に、ステップS14で求めたトルク比τを乗じて駆動系の入力トルクTinを算出する。ステップS17では、この入力トルクTinに変速比Ipと最終減速比Finalを乗じて理想車両駆動トルクTorを算出する。
【0069】
ステップS18では、油圧センサ125からの油圧Plを読み込み、所定の損失トルクマップを参照して駆動系損失トルクTlosを求める。そして、ステップS20ではステップS17で求めた理想車両駆動トルクTorから駆動系損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。
【0070】
次のステップS21からステップS23は理想車両推進トルクTtrを算出するステップで、図5の走行抵抗トルク算出部2、図3の減算部3に対応するステップである。
【0071】
まず、ステップS21で車速VSPを読み込み、ステップS22で平坦路走行抵抗トルクマップを参照して車速VSPに対応する平坦路走行抵抗トルクTrlを求める。
【0072】
そして、ステップS23で、ステップS20で算出した有効車両駆動トルクToyからステップS22で求めた平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて理想車両推進トルクTtrを算出する。
【0073】
次のステップS24、ステップS25は理想車両推進トルクTtrを補正して有効車両推進トルクTtyを算出するステップである。図7に示した推進トルク補正部5に対応するステップで、ステップS24では、理想車両推進トルクTtrにむだ時間補正を施して無駄時間補正推進トルクTtmを算出し、ステップS25では、このむだ時間補正推進トルクTtmに一次遅れ補正を施して有効車両推進トルクTtyを算出する。
【0074】
次のステップS26、ステップS27は理想加速抵抗トルクTrarを算出するステップである。図6に示した加速抵抗トルク算出部4に対応するステップで、ステップS26では車速VSPを時間微分して加速度Acelを算出し、ステップS27では、この加速度Acelに車両重量Ivと駆動輪半径rを乗じて理想加速抵抗トルクTrarを算出する。
【0075】
以上のステップを経て有効車両推進トルクTty、理想加速抵抗トルクTrarを算出したら、ステップS28で有効車両推進トルクTtyから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出し、ステップS29でこの重量勾配抵抗トルクTrgを駆動輪半径rで除して重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0076】
したがって、このフローチャートを処理することにより、重量勾配抵抗推定部154は理想車両駆動トルクTorから駆動系損失トルクTlosを考慮して有効車両駆動トルクToyを算出し、この有効車両駆動トルクToyから、平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて理想車両推進トルクTtrを算出する。さらに、理想車両推進トルクTtrにむだ時間補正及び一次遅れ補正を施して有効車両推進トルクTtyを求め、そこから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrg、重量勾配抵抗力RFORCEを推定する。
【0077】
図9は本発明による作用効果を示すタイミングチャートである。
【0078】
これは車両が一定勾配を走行しているときに運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速した場合のスロットル開度、車速、推進トルク、加速抵抗トルク及び重量勾配抵抗トルクの変化の様子を示し、(a)が従来装置の場合、(b)が本発明による装置の場合を示す。
【0079】
従来の装置では、(a)に示すように運転者がアクセルペダルを踏み込んでスロットル開度TVOが増加すると、その直後に理想車両推進トルクも増加するが、加速抵抗トルクは理想車両推進トルクに比べて遅れて増加する。このため、理想車両推進トルクから加速抵抗トルクを差し引いて求まる重量勾配抵抗トルクは左最下段のグラフに示すように加速直後に増加してしまう。実際の勾配は一定であるにもかかわらず勾配が変化しているものと推定されてしまうので、これに基づき駆動力制御を行った場合、運転者に違和感を与えてしまう。
【0080】
これに対し、本発明による装置では、(b)に示すように、理想車両推進トルクに遅れ補正を施して求めた有効車両推進トルクと加速抵抗トルクが同期し、増加のタイミングが一致するので、重量勾配抵抗トルクは右最下段のグラフに示すように加速時もほぼ一定値に収まる。これにより、重量勾配抵抗力は加速時においても精度よく推定される。
【0081】
なお、ここでは一定勾配走行時にアクセルペダルを踏み込んだ状況を例に挙げて本発明が重量勾配抵抗力を正しく推定可能なことを示したが、他の状況であっても同様に重量勾配抵抗力を正しく推定できる。
【0082】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0083】
この第2の実施形態は、先の実施形態と比べ、重量勾配抵抗推定部154の構成が異なる。
【0084】
図10はその重量勾配抵抗推定部154のブロック線図である。この実施形態においては、推進トルク補正部5を持たない代わりに減算部6と除算部7間に勾配抵抗トルク補正部8を備えている。
【0085】
勾配抵抗トルク補正部8の構成は、図6に示した一次遅れ補正部70と同じであり、重量勾配抵抗トルクTrgが入力されるとそれを一次遅れ補正したTrg2を出力する。
【0086】
また、車両駆動トルク算出部1の構成も異なり、この実施形態では、図4に示す理想車両駆動トルク算出部10の後ろにむだ時間補正部を備える。このむだ時間補正部は図7に示したむだ時間補正部60と同じものであり、具体的には、図4の乗算部31と減算部35の間に設けられる。
【0087】
重量勾配抵抗推定部154における処理内容は図11に示すフローチャートのようになる。ステップS31以降の処理が図8に示したものと異なる。
【0088】
ステップS31以降の処理について説明すると、まず、ステップS31では理想車両駆動トルクTorをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクTor2を算出する。そして、ステップS32、S33では油圧Plに基づき駆動系損失トルクTlosを求め、ステップS34ではむだ時間補正駆動トルクTor2から駆動系損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する
ステップS35、S36では車速VSPに基づき平坦路走行抵抗トルクTrlを求め、ステップS37では有効車両駆動トルクToyから平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて有効車両推進トルクTtyを算出する。
【0089】
ステップS38、S39では車速VSPの微分値に基づき理想加速抵抗トルクTrarを算出し、ステップS40では有効車両推進トルクTtyから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出する。
【0090】
ステップS41では、重量勾配抵抗トルクTrgを一次遅れ補正して補正重量勾配抵抗トルクTrg2とし、ステップS42ではこの補正重量勾配抵抗トルクTrg2を駆動輪半径rで除して重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0091】
したがって、この実施形態において重量勾配抵抗推定部154は、理想車両駆動トルクTorを算出するまでは先の実施形態と同じ処理を行うが、理想車両駆動トルクTorを算出した後は、理想車両駆動トルクTorをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクTor2とし、ここから駆動系損失トルクTlosを減じて有効車両駆動トルクToyを算出する。そして、この有効車両駆動トルクToyから平坦路走行抵抗トルクTrlを減じて有効車両推進トルクTtyを算出し、有効車両推進トルクTtyから理想加速抵抗トルクTrarを減じて重量勾配抵抗トルクTrgを算出する。
【0092】
さらに、この重量勾配抵抗トルクTrgに一次遅れ補正を施して補正重量勾配トルクTrg2を算出し、この補正重量勾配抵抗トルクTrg2に基づき重量勾配抵抗力RFORCEを算出する。
【0093】
したがって、図12のタイミングチャートに示すようにこの実施形態においても先の実施形態と同様に有効車両推進トルクTtyがスロットル開度TVOの増加よりも遅れて立ち上がるようになり、理想加速抵抗トルクTraと同期させることができる。
【0094】
また、重量勾配抵抗トルクTrgをそのまま重量勾配抵抗力演算に用いるのではなく、重量勾配抵抗トルクTrgに一次遅れ補正を施した補正重量勾配抵抗トルクTrg2に基づき重量勾配抵抗力RFORCEを算出するようにしているので、重量勾配抵抗力が急激に変動するのを抑えることができる。
【0095】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではエンジン出力トルクTeをエンジン回転数Neとスロットル開度TVOからエンジントルクマップ33を検索して求めているが、エンジン102の燃料噴射量TPとエンジン回転数Neに対するエンジン出力トルクTeの関係を規定するマップを用意しておき、燃料噴射量TPとエンジン回転数Neからそのマップを検索することによりエンジン出力トルクTeを求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される車両の概略構成を示す図である。
【図2】PCMのブロック線図である。
【図3】重量勾配抵抗推定部のブロック線図である。
【図4】車両駆動トルク算出部のブロック線図である。
【図5】走行抵抗トルク算出部のブロック線図である。
【図6】推進抵抗トルク補正部のブロック線図である。
【図7】加速抵抗トルク算出部のブロック線図である。
【図8】重量勾配抵抗推定部における処理内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の作用効果を示すタイミングチャートである。
【図10】第2の実施形態による重量勾配抵抗推定部のブロック線図である。
【図11】第2の実施形態による重量勾配抵抗推定部における処理内容を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態の作用効果を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
101 車両
102 エンジン
103 CVT
104 トルクコンバータ
111 PCM
124 車速センサ
128 アクセルペダル踏み込み量センサ
Claims (4)
- アクセルペダル踏み込み量を検出する手段と、
車速を検出する手段と、
検出されたアクセルペダル踏み込み量と車速に基づき平坦路における通常目標駆動力を設定する手段と、
遅れ補正を施すことによりスロットル開度の変化よりも遅れて変化するように有効車両推進トルクを求め、該有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じて車両にかかる重量勾配抵抗力を推定する手段と、
前記通常目標駆動力を重量勾配抵抗力で補正して補正目標駆動力を算出する手段と、
補正目標駆動力を実現するようにエンジン、自動変速機のうち少なくとも一方を制御する手段と、
を備えることを特徴とする車両駆動力制御装置。 - 前記補正目標駆動力を演算する手段は、
推定された重量勾配抵抗力に0.3から0.7の勾配抵抗係数を掛けたものを前記通常目標駆動力に加算することにより補正目標駆動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両駆動力制御装置。 - 前記重量勾配抵抗力を推定する手段は、
エンジン出力トルク、エンジンイナーシャトルク、トルクコンバータのトルク比及び駆動系の変速比に基づき理想車両駆動トルクを算出する手段と、
理想車両駆動トルクを駆動系損失トルクに基づき補正し、有効車両駆動トルクを算出する手段と、
車速に基づき平坦路における走行抵抗トルクを算出する手段と、
有効車両駆動トルクから走行抵抗トルクを減じて理想車両推進トルクを算出する手段と、
理想車両推進トルクをむだ時間補正してむだ時間補正推進トルクを算出する手段と、
むだ時間補正推進トルクを一次遅れ補正して有効車両推進トルクを算出する手段と、
車速に基づき加速抵抗トルクを算出する手段と、
前記有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じて重量勾配抵抗トルクを求め、この重量勾配抵抗トルクを基に走行中の重量勾配抵抗力を推定する手段と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両駆動力制御装置。 - 前記重量勾配抵抗力を推定する手段は、
エンジン出力トルク、エンジンイナーシャトルク、トルクコンバータのトルク比及び駆動系の変速比に基づき理想車両駆動トルクを算出する手段と、
理想車両駆動トルクをむだ時間補正してむだ時間補正駆動トルクを算出する手段と、
車速に基づき平坦路における走行抵抗トルクを算出する手段と、
車速に基づき加速抵抗トルクを算出する手段と、
前記むだ時間補正駆動トルクから走行抵抗トルクを減じて有効車両推進トルクを求める手段と、
前記有効車両推進トルクから加速抵抗トルクを減じたものを一次遅れ補正して補正重量勾配抵抗トルクを求め、この補正重量勾配抵抗トルクを基に走行中の重量勾配抵抗力を推定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両駆動力制御装置。
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