JP3595567B2 - 磁気浮上装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、産業用や医療用のモータ、ロボット等に用いられる非接触浮上装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、固定部に対し可動部を非接触浮上させるために電磁石や永久磁石、強磁性体を用いた吸引形あるいは反発形磁気浮上装置が用いられている。
一方、モータへの応用例として特開昭63−262056号公報に示されるような、高温超電導体と永久磁石との間に働く反発力、すなわちマイスナー効果による力を用いた浮上装置がある。
【0003】
同様に、高温超電導体と永久磁石を組み合わせたものに、永久磁石で発生する磁束の一部が高温超電導体内に捕捉されることにより発生する、永久磁石と高温超電導体との相対位置を保持しようとする力、いわゆるピン止め効果による力を可動部の浮上・保持力として利用した機構の発表も行われている(LD−91−111,P.127〜136)。このような場合、特別な制御や付加機構がなくても、可動部は固定部に対して所定の空隙を保って安定に浮上し、かつ高温超電導体に印加される永久磁石からの磁界が変化しないように、空隙の大きさ方向と垂直方向に対しても安定に保持することができる。
【0004】
また、このピン止め効果による力は、前述のマイスナー効果による力に比べて数段強いため、浮上剛性を高くすることができる。なお、このピン止め効果を用いた磁気浮上装置を作製する場合、高温超電導体の冷却・保温の容易さから通常は固定部に高温超電導体、可動部に永久磁石を配置している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電磁石や永久磁石、強磁性体を用いた浮上装置では、可動部を浮上させている間は、電磁石に常に電流を流し続けなければならず、強力な浮上力を得るためには、多くの電力あるいは大きな電磁石が必要であり、また可動部を所定位置に安全保持するためには、複数の方向に電磁石を配置する必要があった。
【0006】
更に、固定部と可動部との間の空隙を制御する場合、常に空隙の大きさを制御部にフィードバックしながら、電磁石に流す電流を制御する必要があり、制御回路の処理速度や空隙のサンプリング速度等の関係で、可動部が若干振動するという問題があった。
一方、特開昭63−262056号公報に示されるような、超電導体のマイスナー効果を用いた浮上装置では、電磁石を使用しなくても常に浮上力が得られるが、この場合、超電導体と永久磁石との間に働く磁気力が、反発力のみであるためそのままでは非常に不安定であり、所定の空隙及び位置を保持するために、別途の機構が必要であった。また、このマイスナー効果による反発力は、磁石の磁気的吸引力に比べて非常に小さく、装置の大きさに比べて浮上力が小さいという問題があった。
【0007】
他方、ピン止め効果を利用した従来の浮上機構は、前述のマイスナー効果を用いた浮上機構と同様、浮上力を得るためには永久磁石が必要で、そのために浮上装置のコストアップを招くという問題があった。また、高温超電導体を可動部に配置すると、高温超電導体の冷却・保冷が困難となることから、固定部に高温超電導体、可動部に永久磁石を配置することが一般的であるが、この場合は永久磁石の機械的強度が他の構造部材に比べて低く、可動部全体の強度低下を招くという問題があった。
【0008】
更に、高温超電導体と組み合わせるものが永久磁石だけであるため、浮上対象が限定される。加えて、浮上方向と垂直方向に広い可動範囲を取る場合、いずれも高価な高温超電導体又は永久磁石を、広範囲にわたって並べなければならないという問題があった。
本発明は、このような問題点を解決するために、安定かつ強力な浮上・保持力が得られ、しかも安価で機械的強度が高く、装置設計の自由度が高い磁気浮上装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、固定部に対し所定の空隙を介して可動部を非接触で浮上させる磁気浮上装置において、固定部の高温超電導体と相対する方に強磁性体を配置し、高温超電導体を磁場中で臨界温度以下に冷却して超電導状態とし、高温超電導体にピン止めされた磁束を強磁性体に通すことにより発生する高温超電導体と、強磁性体との間の吸引力を可動部の保持力として利用し、かつ強磁性体は空隙が所定の値以下となった場合には、強磁性体がこの吸引力が減少するような形状を有するとともに、空隙内でピン止めされた磁束を絞り込むように構成し、該磁束の絞り込みを前記高温超電導体に対向する前記強磁性体の表面積を前記高温超電導体において磁束がピン止めされている領域の面積より小さくすることにより行い、これにより前記所定の空隙以下では前記磁束の絞り込みがピン止め力により妨げられることにより前記吸引力の減少が発生するようにし、高温超電導体と強磁性体との組み合わせのみで、無制御かつ非接触で安定な浮上を行うようにしたものである。
【0010】
【作用】
本発明によれば、上記したように、固定部の高温超電導体と相対する方に強磁性体を配置し、通常配置される永久磁石を省くことができる。また、鉄のように安価で加工の容易な強磁性部材を高温超電導体と対応させることができるので、浮上装置の低コスト化、機械的強度の向上が可能となる。
【0011】
加えて、永久磁石を用いる場合のように、N,S磁極の位置にとらわれる必要がないので、装置設計の自由度が増大する。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施例を示す磁気浮上装置の断面図である。
この図に示すように、主に固定部1は強力なピン止め力を有する高温超電導体11と保冷容器12とで構成される。一方、浮上体である可動部2は強磁性体21とワーク22とで構成され、高温超電導体11と対向する部分の面積が、高温超電導体11内で磁束(図示せず)を、ピン止めしている領域の面積よりも小さくなるように配置されている。
【0013】
保冷容器12には窒素注入口12bから冷媒である液体窒素を注入することにより、内部の高温超電導体11を臨界温度以下に冷却し、超電導状態を保つ。外部からの熱侵入や高温超電導体11内での各種損失を原因とする発熱により発生する窒素ガスは、窒素排出口12aから排出する。
可動部2は、固定部1内の高温超電導体11にピン止めされた磁束が、強磁束体21を貫くことで発生する磁気的吸引力と、可動部2に作用する重力とがバランスし、固定部1に対して所定の空隙を持って安定に吊り下げられる。
【0014】
次に、本発明の第1の実施例の動作について説明する。
図2は本発明の第1の実施例の動作の概略説明図である。
上記した図1における高温超電導体11と強磁性体21との間の空隙部分を拡大したものである。なお、保冷容器12と冷媒は図示していない。図2(a)は、磁場中冷却後の高温超電導体11による強磁性体21がない場合でのピン止めされた磁束3の分布を模式的に表している。これに、図2(b)に示すように、強磁性体21を近づけると、高温超電導体11の周囲に比べて、強磁性体21の透磁率が非常に高いので、磁束3は強磁性体21に集中し、周知の通り高温超電導体11と強磁性体21との間に磁気的吸引力が発生する。
【0015】
更に、図2(c)に示すように、高温超電導体11に強磁性体21を近づけると、強磁性体21に集中する磁束3の量が増え、空隙部での磁束密度が増加することにより磁気的吸引力が増大する。
通常、このままでは磁気的吸引力の増加が、強磁性体21の接近を招き、更に、これが磁気的吸引力の増加を招くという悪循環を起こして、強磁性体21は高温超電導体11に接触してしまう。したがって、所定の空隙を保って強磁性体21を浮上・保持することは非常に困難となってしまう。
【0016】
しかし、この実施例では、強磁性体21の高温超電導体11と対向する部分を、高温超電導体11内で磁束をピン止めしている領域よりも、十分小さな面積を有する構造とすることで、この悪循環を次のように打破している。
すなわち、強磁性体21の面積が小さいと、図2に示すように、強磁性体21へ流れ込む磁束3は空隙部で大きく歪む。空隙が小さくなると、この歪みを更に大きくしなければならなくなるが、あまり極端に曲がることはできないので、この歪みを緩やかにするように、磁束3は高温超電導体11内で集中方向と同方向へ移動しようとする。
【0017】
しかし、この磁束3には高温超電導体11のピン止め力が働いており、移動しようとする力よりピン止め力が勝る場合には、磁束3は移動できず、一部極端な歪みが必要な磁束3は強磁性体21への集中という状態を維持できなくなる。すなわち、空隙が所定値以下に小さくなると、それまで集中していた磁束3の一部が、図2(d)に示すように、強磁性体21を通らなくなり、空隙部の磁束密度が低下する。
【0018】
したがって、高温超電導体11と強磁性体21との間に働く磁気的吸引力も減少する。この作用を活用することで、可動部2の非接触かつ安定な保持が可能となる。
図3は本発明の第1実施例の磁気浮上装置を用いた場合の磁気中冷却した高温超電導体に強磁性体を接近させる過程と、遠ざける過程での磁気的吸引力の変化を表す曲線図である。
【0019】
この図に示すように、高温超電導体11に強磁性体21を近づける過程で増加する磁気的吸引力は、空隙長がL1よりも小さくなる場合、F1からF2へと逆に減少する。また、この高温超電導体11を近づける過程を経験した後は、磁束3のピン止め位置が若干ずれたことによりヒステリシスを生じ、空隙長がL2からL1になるよう強磁性体21を遠ざける過程では、磁気的吸引力がF2からF3へと増加する。空隙長がL1を越えると、近づける過程の曲線に寄り添う形で磁気的吸引力が減少していく。
【0020】
図3と図2を対比させると、空隙が長く磁気的吸引力の発生していない部分が図2(a)、吸引力が発生し空隙長がL1に至るまで増加する過程が図2(b)及び図2(c)、L1とL2の間の空隙長で磁気的吸引力が減少傾向を示す部分は図2(d)に相当する。この図3からも明らかなように、F2からF1あるいはF2からF3の範囲内の磁気的吸引力に相当する重量の強磁性体21を、磁場中冷却した高温超電導体11の下側、かつ空隙長がL1からL2の範囲となる位置に持ってくると、磁気的吸引力と重力がバランスして、この強磁性体21を安定かつ非接触で吊り下げることができる。
【0021】
なお、この実施例における強磁性体の形状は種々の変化が可能である。
図4は本発明の第2の実施例を示す磁気浮上装置の断面図である。
この図において、固定部1は前記第1の実施例と同様であり、一方、可動部30は球形の強磁性体31で構成されている。保冷容器12に窒素注入口12bから冷媒である液体窒素を注入することにより、内部の高温超電導体11を臨界温度以下に冷却し、超電導状態を保つ。外部からの熱侵入や高温超電導体11内での各種損失を原因とする発熱により発生する窒素ガスは、窒素排出口12aから排出する。
【0022】
可動部30は、固定部1内の高温超電導体11にピン止めされた磁束(図示せず)が、球形の強磁性体31を貫くことで発生する磁気的吸引力と、可動部30に作用する重力とがバランスし、固定部1に対して所定の空隙を持って安定に吊り下げられる。すなわち、可動部30の表面が球形であるため、強磁性体31において、高温超電導体11と対向する面の面積が小さいことと同等となり、第1の実施例の場合と同様に、ピン止めされた磁束を絞り込みつつ、空隙内で強制的に歪ませることで、空隙が所定の値以下となった場合の磁気的吸引力の減少を起こし、これにより浮上の安定化を図っている。
【0023】
更に、可動部30を構成する強磁性体31が球形であり、かつ永久磁石のような磁極を具備しないため、この可動部30は自身の真ん中を中心として、あらゆる方向に回転させることができるという特徴を有する。
図5は本発明の第3の実施例を示す磁気浮上装置の断面図である。
この図において、固定部1は前記第1及び第2の実施例と同様である。一方、浮上体である可動部40は、強磁性体41とワーク42とで構成される。強磁性体41は、高温超電導体11と対向する歯部を3つ有している。保冷容器12には、窒素注入口12bから冷媒である液体窒素を注入することにより、内部の高温超電導体11を臨界温度以下に冷却し、超電導状態を保つ。外部からの熱侵入や高温超電導体11内での各種損失を原因とする発熱により発生する窒素ガスは、窒素排出口12aから排出する。
【0024】
可動部40は、固定部1内の高温超電導体11にピン止めされた磁束(図示せず)が、強磁性体41を貫くことで発生する磁気的吸引力と、可動部40に作用する重力とがバランスし、固定部1に対して所定の空隙を持って安定に吊り下げられる。
次に、本発明の第3の実施例の動作について説明する。
【0025】
図6は本発明の第3の実施例の動作の概略説明図である。
上記した図5における高温超電導体11と強磁性体41との間の空隙部分を拡大したものである。なお、保冷容器12と冷媒は図示していない。図6(a)は、中心部付近に磁場をかけて冷却した後の高温超電導体11の、強磁性体41がない場合でのピン止めされた磁束3の分布を模式的に表している。
【0026】
これに、図6(b)に示すように、強磁性体41を近づけると、高温超電導体11の周囲に比べて、強磁性体41の透磁率が非常に高いので、磁束3は強磁性体41に集中し、周知の通り高温超電導体11と強磁性体41との間に、磁気的吸引力が発生する。更に、図6(c)に示すように、強磁性体41を近づけると、強磁性体41に集中する磁束3の量が増え、空隙部での磁束密度が増加することにより、磁気的吸引力が増大する。
【0027】
この時、この実施例では高温超電導体11の中心部付近の磁束が、図6(d)に示すように、ピン止めされた領域から空隙、強磁性体41の真ん中の歯部、両側の歯部、空隙と流れて、高温超電導体11の磁束3がピン止めされていない領域付近にバイパスされる。バイパスされた磁束の一部は高温超電導体11の反磁性で反発され、所定の空隙以下ではこの反発する力が強くなることにより、高温超電導体11と強磁性体41との間に働く磁気的吸引力が減少する。この作用により、磁気的吸引力と重力がバランスしてこの強磁性体41を安定かつ非接触で吊り下げることができる。
【0028】
図7は本発明で用いる高温超電導体を磁場中冷却する場合の第1の実施例を示す断面図である。
この図において、磁場発生源である永久磁石51,52は、お互いが引き合う方向に磁極を向け、高温超電導体11及び保冷容器12を挟んで上下に配置している。固定部1は予めこのような配置にしておき、保冷容器12に窒素注入口12bから冷媒である液体窒素を注入することにより、高温超電導体11を臨界温度以下に冷却し、磁場中冷却を行う。高温超電導体11の温度が十分に下がり、磁束(図示せず)のピン止めが完了した時点で、少なくとも可動部(図示せず)が、来るべき側の永久磁石52を取り除き、続いて可動部を所定の位置に配置する。
【0029】
なお、この図では永久磁石51,52を保冷容器12の外側に配置しているが、それ自体の特性が冷却温度でもあまり変化しない場合は、永久磁石51,52を保冷容器12の内側に配置しても良い。
このように構成することにより、高温超電導体11の磁場中冷却を容易に行うことができ、本発明による磁気浮上装置を簡単に実現させることができる。
【0030】
また、磁場中冷却後も、可動部が存在する側と反対側の永久磁石51を配置したままとすることにより、磁場中冷却後永久磁石52を取り除く際のピン止めされる磁束の減少を抑えることができる。この場合、高温超電導体11と強磁性体21,31,41との間に働く磁気的吸引力も大きくなり、さらに磁束の絞り込みあるいはバイパスにより、所定以下の空隙で起こる磁気的吸引力の減少傾向も強いものとなる。
【0031】
したがって、磁気浮上装置としての負荷容量、安定性を高めることが可能となる。
図8は本発明で用いる高温超電導体を磁場中冷却する場合の第2の実施例を示す断面図である。
この図において、磁場発生源である電磁石61,62は、高温超電導体11及び保冷容器12を挟んで上下に配置している。固定部1は予め電磁石61,62にお互いの発生磁界が強め合う方向で所定の電流を流しておき、保冷容器12に窒素注入口12bから冷媒である液体窒素を注入することにより、高温超電導体11を臨界温度以下に冷却し、磁場中冷却を行う。高温超電導体11の温度が十分に下がり、磁束(図示せず)のピン止めが完了した時点で、電磁石61,62の電流を切る。
【0032】
なお、この場合、高温超電導体11の磁場中冷却後に可動部(図示せず)を配置しても良いが、この可動部が冷却時の固定が可能であり、電磁石61,62の発生磁界により吸引されて保冷容器12に衝突する恐れのない場合は、冷却以前から可動部を所定の位置に配置しておいても良い。
また、この図では電磁石61,62を保冷容器12の外側に2個配置しているが、電流通電時のジュール発熱が問題にならない場合は、これを保冷容器12の内側、かつ高温超電導体11を取り囲むように配置しても良い。この場合、1つの電磁石があれば十分となる。
【0033】
このように構成することにより、高温超電導体11の磁場中冷却を容易に行うことができ、本発明による磁気浮上装置を簡単に実現することができる。
また、磁場中冷却後も、電磁石61,62の何れか一方に、所定の電流を流し続けることにより、磁場中冷却後において発生する、ピン止めされる磁束の減少を抑えることができる。この場合、高温超電導体11と強磁性体21,31,41との間に働く磁気的吸引力も大きくなり、また磁束の絞り込みあるいはバイパスにより、所定以下の空隙で起こる磁気的吸引力の減少傾向も強いものとなる。
【0034】
したがって、磁気浮上装置としての負荷容量、安全性を高めることが可能となる。
更に、磁場中冷却後可動部が浮上している状態で、高温超電導体11と強磁性体21との間の空隙を観察し、可動部の荷重増加や外乱により空隙長が所定の範囲を上回る場合は、ピン止めされる磁束を増やす向きで、逆に可動部の荷重減少や外乱により空隙長が所定の範囲を下回る場合は、ピン止めされる磁束を減らす向きで、電磁石61,62に所定の電流を流すことにより、空隙長及び浮上力のフィードバック制御が可能となる。
【0035】
また、高温超電導体と強磁性体とでなる磁気浮上装置を、電磁石と強磁性体、電磁石と永久磁石、高温超電導体と永久磁石、あるいは高温超電導体と電磁石とからなる通常の磁気浮上装置と組み合わせることで、装置全体における制御の簡略化、性能向上を図ることができることは言うまでもない。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0036】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、少なくとも高温超電導体と強磁性体の組み合わせのみで、無制御で、非接触かつ安定な浮上を行うことができる。しかも、機械的強度が高く、シンプルで、かつ低コストであり、設計の自由度も大きな磁気浮上装置を提供することができる。
【0037】
特に、磁気浮上装置の軸受としてもつ電力貯蔵用フライホイールに、本発明を適用する場合、可動部であるフライホイールに永久磁石を取り付ける必要がない。
したがって、永久磁石の機械的強度でホイールの回転速度が限定されてしまうこともなくなり、その実用的効果は著大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す磁気浮上装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の動作の概略説明図である。
【図3】本発明の第1実施例の磁気浮上装置を用いた場合の磁気中冷却した高温超電導体に強磁性体を接近させる過程と遠ざける過程での磁気的吸引力の変化を表す曲線図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す磁気浮上装置の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施例を示す磁気浮上装置の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例の動作の概略説明図である。
【図7】本発明で用いる高温超電導体を磁場中冷却する場合の第1の実施例を示す断面図である。
【図8】本発明で用いる高温超電導体を磁場中冷却する場合の第2の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 固定部
2,30,40 可動部
3 磁束
11 高温超電導体
12 保冷容器
12a 窒素排出口
12b 窒素注入口
21,31,41 強磁性体
22,42 ワーク
51,52 永久磁石
61,62 電磁石
Claims (7)
- 固定部に対し所定の空隙を介して可動部を非接触で浮上させる磁気浮上装置において、
前記固定部に強力なピン止めを有する高温超電導体、もう一方に強磁性体を配置し、前記高温超電導体を磁場中で臨界温度以下に冷却して超電導状態とし、前記高温超電導体にピン止めされた磁束を前記強磁性体に通すことにより発生する前記高温超電導体と前記強磁性体との間の吸引力を前記可動部の保持力として利用し、かつ前記強磁性体は前記空隙が所定の値以下となった場合には、前記吸引力が減少するような形状を有するとともに、前記空隙内で前記ピン止めされた磁束を絞り込むように構成し、該磁束の絞り込みを前記高温超電導体に対向する前記強磁性体の表面積を前記高温超電導体において磁束がピン止めされている領域の面積より小さくすることにより行い、これにより前記所定の空隙以下では前記磁束の絞り込みがピン止め力により妨げられることにより前記吸引力の減少が発生するようにし、高温超電導体と強磁性体との組み合わせのみで、無制御かつ非接触で安定な浮上を行うようにしたことを特徴とする磁気浮上装置。 - 前記強磁性体が前記高温超電導体表面上の前記磁束のピン止めされた領域から別の領域に前記磁束をバイパスする構造となっており、前記バイパスされた磁束の一部が前記高温超電導体の反磁性で反発され、前記所定の空隙以下では前記反発する力が強くなることにより前記吸引力の減少が発生することを特徴とする請求項1記載の磁気浮上装置。
- 前記強磁性体が、前記ピン止めされた磁束を前記高温超電導体表面上に位置する位置空隙内で絞り込み、かつ前記ピン止めされた領域から別の領域に前記磁束をバイパスする構造となっており、これにより前記所定の空隙以下では前記磁束を絞り込み、かつ前記バイパスされた磁束の一部が前記高温超電導体の別の表面での反磁性で反発され、前記吸引力の減少が発生することを特徴とする請求項1記載の磁気浮上装置。
- 前記高温超電導体の前記強磁性体と対向する面と反対の面側に、前記ピン止めされた磁束と同じ方向の磁束を発生するバイアス用の永久磁石を配置することにより、前記高温超電導体にピン止めされる磁束を増やし、前記高温超電導体と前記強磁性体との間の吸引力、及び前記所定の空隙以下での吸引力の減少の傾向を高め、前記可動部の浮上力及び安定性を向上させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の磁気浮上装置。
- 前記バイアス用の磁石が、前記永久磁石ではなく前記高温超電導体の外側あるいは側面に配置した電磁石からなる請求項4記載の磁気浮上装置。
- 前記可動部が浮上状態にあるとき、前記バイアス用の電磁石に流す電流を変化させることにより前記高温超電導体内にピン止めされる磁束量を増減し、前記可動部の浮上力及び前記空隙を制御することを特徴とする請求項5記載の磁気浮上装置。
- 前記バイアス用の電磁石を、前記高温超電導体の磁場中冷却時の磁界発生源としても使用することを特徴とする請求項5又は6記載の磁気浮上装置。
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1994
- 1994-01-25 JP JP615494A patent/JP3595567B2/ja not_active Expired - Lifetime
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