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JP3592822B2 - 採取尿の保存方法および採尿用キット - Google Patents

採取尿の保存方法および採尿用キット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、尿中溶存成分の変性や増減を防止しつつ採取尿を移送できる採取尿の保存方法に関し、また、この保存方法を実現するのに好適な採尿用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に1日に数回ある排尿行為のうち、ある1回の排尿時に、その一部分の尿(部分尿)を採取して、種々の検査にあてることが多い。この部分尿を対象にした各種測定項目の定量値には、排尿の時々で尿の濃い/薄いがあるなど尿量誤差が大きいことから、種々の補正が行われている。代表的には、クレアチニンを測定対象にしており、検査目的で採取された部分尿について、目的とする成分とクレアチニンとを測定し、クレアチニン1g当たりに換算して目的成分濃度を求めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特に、目的成分を集団検診として測定するような場合には、クレアチニンを測定対象にした補正が正しく機能しない場合があった。
また、従来は、所定量の部分尿を確実に採取できるとともに、尿中溶存成分の変性や増減を防止しつつ採取尿を移送できる適当な採尿用キットも存在しなかった。
本発明は、これらの実情に鑑みたものであって、尿中溶存成分の変性や増減を防止しつつ採取尿を保存または移送できると共に、クレアチニンを測定対象にして目的成分濃度を正確に検出できる方法を提供することを目的とする。また、この方法を実現するのに好適であり、所定量の部分尿を簡易かつ確実に採取できる採尿用キットを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、種々の検討をした結果、採取尿が37℃以上の高温で長時間放置されると、尿中の常在成分が酸化反応を起こし、クレアチニンが酸化されてクレアトールもしくはメチルグアニジンに変化するため、クレアチニン値が低下するという事実を確認した。例えば、目的成分が集団検診として測定されるような場合には採取尿が郵送されることもあり、高温期には郵便ポスト内の温度が50℃〜70℃に達することもあるので、採取尿が37℃以上の高温で長時間放置されることは十分に起こりえる。
そこで、本発明では、かかる事態に対処すべく、pH調整用の酸と、抗菌性薬剤と、フッ素化合物と、抗酸化剤とを採取尿に添加することにした。
採取尿に各種酸を加えてpHを4.5〜6.5に調整すると共に、抗菌性薬剤と所定量のフッ素化合物とを添加して採取尿を保存すると、C−ペプチド、アルブミン、グリシン、尿素、ぶどう糖などの尿中溶存成分の変性や増減を防止することができる(特願平5−5675号参照)。また、本発明では、採取尿に抗酸化剤を更に添加するので、クレアチニンを測定対象にして目的成分濃度を正確に検出することもできる。
【0005】
【発明の実施の態様】
以下、図面に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る採尿用キットについて、その構成要素を図示した斜視図であり、図2は、採尿用キットの使用方法(a)と構成要素の詳細(b)を説明する図面である。
図示の採尿用キットは、略円筒状に形成された採尿ホルダー1と、採尿時に採取ホルダー1に挿入される試験管2と、有底円筒形の採尿コップ3とで構成されており、採尿ホルダー1の先端部1aには、採尿具4が装着されている。
採尿ホルダー1は、試験管2よりやや大きい内径を有する有底円筒形状であり、その開口部1bの外周には、操作用フランジ1cが形成されている。また、ホルダー先端部1aの内周にはネジ溝が形成されていて、採尿具4をネジ込んで装着できるようになっている。なお、ホルダー先端部1aと採尿具4のネジ溝を省略して、ホルダー先端部1aに採尿具4を嵌合させるようにしても良い。
採尿具4は、軸方向の貫通穴を備える採尿具本体5と、前記貫通穴に連通して採尿具本体5に固着される注入針6と、注入針6を被覆する針カバー7とで構成されている。図2(b)に詳細を示すように、採尿具本体5は、円筒状に形成された尿接触部5Aと、尿接触部5Aより大径の装着フランジ5Bと、ホルダー先端部1aの内周に対応したネジ溝を有する螺着部5Cと、断面矢印状に形成された先細部5Dとで構成されている。ここで、針カバー7は、弾性材料で形成されているので、注入針6を被覆した状態では、針カバーの開口部7aは、採尿具本体5の先細部5Dに係止される。また、採尿具4を採尿ホルダー1にネジ込んでゆくと、装着フランジ5Bがホルダー先端部1aに当接されて装着が完了する。なお、尿接触部5Aの外周には、軸方向に延びる突条5aが設けられているので、採尿具4を、容易かつ確実に採尿ホルダー1に装着することができる。
試験管2は、弾性材料からなるキャップ2aによって密封されており、内部は所定の減圧状態に維持されている。また、試験管2の適所には指示帯2bが設けられていて、採尿すべき量を明示している。試験管2は、その内部が採尿コップ3からの採取量に合わせて所定値に減圧されているので、通常、指示帯2bは不要であるが、指示帯2bが採尿量の目印になるので、キャップ2aを誤って開放したような場合にも所定量の採尿が可能となる。
減圧状態の試験管2の中には、pH調整用の酸と抗菌性薬剤とフッ素化合物と抗酸化剤とが予め封入されており、この点にも本発明の特徴がある。pH調整用の酸は、採取尿のpHを4.5〜6.5に調整するものであり、顆粒状のクエン酸が好適であるので、例えば、尿1mlあたり4mg程度のクエン酸を用いることにする。また、抗菌性薬剤として、例えば、尿1mlあたり0.4〜4.0mgのEDTA・2Naを用い、フッ素化合物として、例えば、尿1mlあたり1mg以上のNaFを用いる。抗酸化剤についても同様であり、特に限定されるものではないが、グルタチオンを尿1mlあたり1〜5mg、または、アスコルビン酸を尿1mlあたり1〜5mgを添加することにする。
【0006】
続いて、図1や図2に示す採尿用キットの使用方法について説明する。
先ず、被験者の尿を、採尿コップ3の底から2cm程度まで採取する。
次に、試験管2を採尿ホルダー1に挿入して、試験管2のキャップ2aが針カバー7に当たる手前で停止させる(図2(a)参照)。なお、人指し指と中指の間に採尿ホルダー1を挟み、前記2本の指を操作用フランジ1cに係止させた状態で、試験管2を軽く親指で押せば、上記の作業を完了させることができる。
この状態のまま、採尿具4の尿接触部5Aを採尿カップ3の尿に浸し、親指で試験管2を更に押し込む。すると、キャップ2aと針カバー7とが当接された状態で、注入針6が針カバー7とキャップ2aとを押し破ることになる。この動作に応答して、尿接触部5Aと試験管2とが連通されるので、試験管2の減圧状態に対応した所定量の尿が試験管2に採取されることになる(図3参照)。
続いて、試験管2を採尿ホルダー1から引き抜いた後、試験管2を十分に振る。なお、試験管のキャップ2aは、弾性材料により形成されているので、注入針6を引き抜いた後、キャップ2aの穴から採取尿がこぼれ出ることはない。試験管2を振ることにより、試験管2の薬剤と採取尿とが混ざることになり、尿中溶存成分の変性や増減などを長期間にわたって防止することができる(特開平6−213885号公報参照)。しかも、試験管2には、グルタチオンやアスコルビン酸などの抗酸化剤も含まれているので、試験管2の採取尿が、例え高温下で長時間放置されるようなことがあっても、クレアチニンが変質することはなく、したがって、クレアチニンを測定対象にして目的成分濃度を正確に算出することができる。
以上、図1〜図3に則して、本発明の一例を説明したが、採尿用キットの具体的な構成は図示のものに限定されるものではない。例えば、図4や図5のように、採尿ホルダー1の内周部に、位置決め部材1dを一体的に設けてもよい。この場合には、位置決め部材1dが、試験管2の挿入に対応して漸次押し広げられるので、採尿ホルダー1の内径と、試験管キャップ2aの外径の寸法差に係わらず、試験管2と採尿具4の中心を容易に位置合わせすることができる。
【0007】
【実施例】
図6は、保存剤に抗酸化剤を添加した効果を示す図面であり、試験管2の中に、クエン酸を4mg/ml 、EDTA・2Naを3mg/ml 、NaFを1mg/ml 、抗酸化剤5mg/ml に封入して尿を採取した後、40℃で96時間放置した後のクレアチニン濃度を示している。なお、図7〜図9は、図6と同一の実施例について、コントロール群と加温放置群(図7)、コントロール群と抗酸化剤添加保存剤群(図8、図9)の比較を示したものである。
この実施例では、抗酸化剤としてアスコルビン酸やグルタチオンを添加しているが、抗酸化剤を添加しなかった場合(加温放置群)に比べ、クレアチニン濃度の低下を抑制する効果が顕著である。なお、抗酸化能の点では、抗酸化剤の添加量を増す方が有利であるが、5mg/ml 以上のアスコルビン酸を添加するとクレアチニン濃度が高値を示す影響が認められ、一方、5mg/ml 以上のグルタチオンを添加するとクレアチニン濃度が低値を示す影響が認められるので、アスコルビン酸やグルタチオンの添加量は、1〜5mg/ml とするのが好ましい。
なお、保存剤の効果により、C−ペプチド、グリシン、アルブミン、尿素、ぶどう糖などに殆ど変化が認められない。
【0008】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明では、採取した尿に各種酸を加えてpHを4.5〜6.5に調整すると共に、抗菌性薬剤とフッ素化合物とを採取尿に添加しているので、C−ペプチド、アルブミン、グリシン、尿素、ぶどう糖などの尿中溶存成分の変性や増減を長期間にわたって防止することができる。しかも、本発明では、採取尿に抗酸化剤を更に添加しているので、クレアチニンを測定対象にして目的成分濃度を正確に検出することもできる。
また、請求項3の発明では、pH調整用の酸と抗菌性薬剤とフッ素化合物と抗酸化剤とが投入された試験管が、採尿量に対応して所定の減圧状態に維持されているので、採尿時に、注入針によって試験管キャップを貫通するだけで、所定量の尿を採取することができる。また、採取尿は、その後、尿中溶存成分の変性や増減を防止しつつ長期間にわたって試験管内に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る採尿用キットの一例を図示したものである。
【図2】採尿用キットの使用方法(a)や採尿具本体の形状を図示したものである。
【図3】採尿用キットによる採尿状態を図示したものである。
【図4】採尿ホルダーの別の構成例を図示したものである。
【図5】図4の採尿ホルダーを詳細に図示したものである。
【図6】保存剤に抗酸化剤を添加した効果を図示したものである。
【図7】コントロール群と加温放置群とを比較した図面である。
【図8】コントロール群とアスコルビン酸添加保存剤群とを比較した図面である。
【図9】コントロール群とグルタチオン添加保存剤群とを比較した図面である。
【符号の説明】
1 採尿ホルダー
1c (操作用)フランジ
2 試験管
2a キャップ
4 採尿具
5 採尿具本体
5A 尿接触部
6 注入針

Claims (4)

  1. 37℃以上の高温で保存された採取尿中の溶存成分とクレアチニンを測定し、クレアチニン1g当たりに換算して前記溶存成分濃度を分析測定するに際して、採取した尿に各種酸を加えてpHを4.5〜6.5に調整すると共に、抗菌性薬剤とフッ素化合物と、グルタチオン若しくはアスコルビン酸から選ばれる抗酸化剤とを採取尿に添加することを特徴とする採取尿の保存方法。
  2. 前記抗酸化剤は、尿1mlあたり1〜5mgのグルタチオン、または尿1mlあたり1〜5mgのアスコルビン酸であることを特徴とする請求項1に記載の採取尿の保存方法。
  3. 37℃以上の高温で保存された採取尿中の溶存成分とクレアチニンを測定し、クレアチニン1g当たりに換算して前記溶存成分濃度を分析測定するために用いる採尿用キットであって、
    基端部にフランジを有する筒状の採尿ホルダーと、弾性体からなるキャップにより密封され、前記キャップの方から前記採取ホルダーに挿入される試験管と、前記採尿ホルダーの先端部に装着される採尿具とからなり、
    前記採尿具は、先端部に筒状の尿接触部を設けた採尿具本体と、前記尿接触部に連通して前記採尿具本体に固着される注入針とを備えており、前記試験管は、pH調整用の酸と、抗菌性薬剤と、フッ素化合物と、グルタチオン若しくはアスコルビン酸から選ばれる抗酸化剤とが投入された状態で、採尿量に対応して所定の減圧状態に維持されており、採尿時に、前記注入針が前記キャップを貫通することにより、前記尿接触部と前記試験管の内部とが連通するようになっていることを特徴とする採尿用キット。
  4. 前記抗酸化剤は、尿1mlあたり1〜5mgのグルタチオン、または尿1mlあたり1〜5mgのアスコルビン酸である請求項3に記載の採尿用キット。
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