JP3591502B2 - 加工性に優れた高張力鋼板ならびにその製造方法および加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用部材の素材に適した加工性に優れた高張力鋼板ならびにその製造方法および加工方法に関する。
【0002】
【従来技術】
環境保全につながる燃費向上の観点から、自動車用鋼板の高強度薄肉化が強く求められている。自動車用部材はプレス成形により得られる複雑な形状のものが多く、高強度でありながら加工性の指標である伸びと伸びフランジ性がともに優れた材料が必要である。また、鋼板をより軽量化する観点からさらなる薄肉化が指向されており、板厚2.5mm以下の薄物に対する要望も強くなってきている。
【0003】
従来、この種の鋼板は種々提案されており、例えば、特開平6−172924号公報には、転位密度の高いベイニティック・フェライト組織が生成した伸びフランジ性に優れる鋼板が提案されている。しかし、この鋼板は、転位密度の高いベイニティック・フェライト組織を含むため伸びが乏しいという欠点がある。また、ベイニティック・フェライト生成のためにランナウトテーブル上での強冷却が不可避であり薄物製造時にはランナウトテーブルでのストリップの走行性に問題が生じるため、板厚2.5mm以下といった薄物を生産するには不向きである。
【0004】
特開平6−200351号公報には、組織の大部分をポリゴナルフェライトとし、TiCを中心として析出強化および固溶強化した伸びフランジ性に優れる鋼板が提案されている。しかし、この鋼板に用いられている一般的によく知られた析出物で高張力化するには多量のTi添加が必要とし、寸法の大きい析出物が生成しやすく、特性が不安定になりやすいという欠点がある。また、この鋼は特性向上のために圧延荷重を増大させるSiを積極的に用いているため、薄物の製造において圧延荷重が増大し、鋼板形状確保が難しい。
【0005】
特開平7−11382号公報には、微細なTiCおよび/またはNbCが析出したアシキュラー・フェライト組織を有した伸びフランジ性に優れる鋼板が提案されている。しかし、この鋼板も、先に述べた特開平6−172924号公報に提案された鋼板同様、アシキュラー・フェライトという転位密度の高い組織であるため十分な伸びが得られていない。また、この鋼は特開平6−200351号公報に開示された鋼と同様に、特性向上のために圧延荷重を増大させるSiを積極的に用いているため、薄物の製造において圧延荷重が増大し、鋼板形状確保が難しい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、自動車用部材のようにプレス時の断面形状が複雑な用途に適した、加工性の指標である伸びと伸びフランジ性がともに優れた高張力鋼板ならびにその製造方法および加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。
(1)転位密度が低い組織とし、微細析出物で強化すると、強度−伸びバランスが向上する。
(2)実質的に単相組織とし、微細析出物で強化すると、強度−伸びフランジ性バランスが向上する。
(3)Moを含む複合析出物とすると、析出物が微細に析出する。
(4)複合析出物中のMoの割合が低くなると、析出物が粗大化するため、伸びと伸びフランジ性がともに低下する。
【0008】
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(22)を提供する。
【0009】
(1)実質的にフェライト単相組織であり、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板。
【0010】
(2)上記(1)において、TiおよびMoを含む炭化物は、原子%で表されるTi、Moが、Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たす組成を有することを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0011】
(3)上記(1)または(2)において、鋼中のC,Ti,Moを規定する以下の(1)式を満足することを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …(1)
ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の質量%を表す。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、鋼中に質量%で、C:0.02〜0.06%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含むことを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0013】
(5)質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであり、実質的にフェライト単相組織であり、原子%で表されるTi、Moが、Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たす炭化物組成を有するTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板。
【0014】
(6)質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであり、実質的にフェライト単相組織でかつ鋼中のC,Ti,Moを規定する以下の(1)式を満足し、TiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …(1)
ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の質量%を表す。
【0015】
(7)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであることを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0016】
(8)上記(2)または(5)において、前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含み、原子%で表されるTi、Moが、前記Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たすことに代えて、原子%で表されるTi、Mo、Nb、VがMo/(Ti+Nb+V+Mo)≧0.25を満たす炭化物組成を有することを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0017】
(9)上記(1)において、前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含むことを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板。
【0018】
(10)上記(8)または(9)において、鋼中のC、Ti、Nb、V、Moを規定する以下の(2)式を満足することを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/ 96)}≦1.5 …(2)
ただし、上記(2)式中、C、Ti、Nb、V、Moは各成分の質量%を表す。
【0019】
(11)上記(3)または(6)において、上記(1)式に代えて、鋼中のC、Ti、Nb、V、Moを規定する以下の(2)式を満足し、前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含むことを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}≦1.5 …(2)
ただし、上記(2)式中、C、Ti、Nb、V、Moは各成分の質量%を表す。
【0020】
(12)上記(9)〜(11)のいずれかにおいて、前記炭化物は、原子%で表されるTi、Mo、Nb、VがMo/(Ti+Nb+V+Mo)≧0.25を満たす炭化物組成を有することを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0021】
(13)上記(8)および(10)〜(12)のいずれかにおいて、 鋼中に質量%で、C:0.02〜0.06%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、さらに質量%でNb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含むことを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0022】
(14)上記(8)〜(12)のいずれかにおいて、質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、Nb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含有し、残部が実質的にFeであることを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0023】
(15)上記(4)において、前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含み、鋼中に質量%でNb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含むことを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0024】
(16)上記(1)〜(15)のいずれかにおいて、板厚2.5mm以下の薄物熱延鋼板であることを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0025】
(17)上記(1)〜(16)のいずれかにおいて、表面に溶融亜鉛系めっき皮膜を有することを特徴とする加工性に優れた高張力鋼板。
【0026】
(18)質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeからなる鋼を溶製し、仕上圧延終了温度880℃以上、巻取温度570℃以上の条件で熱間圧延を行い、実質的にフェライト単相組織であり、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出している鋼板を得ることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【0027】
(19)質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、Nb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼を溶製し、仕上圧延終了温度880℃以上、巻取温度570℃以上の条件で熱間圧延を行い、実質的にフェライト単相組織であり、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出している鋼板を得ることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力 鋼板の製造方法。
【0028】
(20)上記(1)〜(17)のいずれかの高張力鋼板からなる部材を準備する第1の工程と、前記部材にプレス成形を施して所望の形状のプレス成形品に加工する第2の工程とを有する高張力鋼板の加工方法。
【0029】
(21)上記(20)において、前記プレス成形品は、自動車用部品、特に自動車用足廻り部材である高張力鋼板の加工方法。
【0030】
(22)上記(1)〜(17)のいずれかの高張力鋼板により製造される自動車用部品。
【0031】
なお、本発明において実質的にフェライト単相組織とは、本発明の析出物以外に、微量の他の相ないしは析出物を許容することをいい、好ましくはフェライトの面積比率が95%以上である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、金属組織、化学成分、および製造方法に分けて具体的に説明する。
【0033】
[金属組織]
本発明に係る高張力鋼板は、実質的にフェライト単相組織であり、TiおよびMoを含む炭化物が分散析出している。
【0034】
・実質的にフェライト単相組織:
マトリックスを実質的にフェライト単相組織としたのは、伸びの向上には転位密度の低いフェライトが有効であり、また、伸びフランジ性の向上には単相組織とすることが有効であり、特に延性に富むフェライト単相組織でその効果が顕著であるためである。ただし、マトリックスは必ずしも完全にフェライト単相組織でなくともよく、実質的にフェライト単相組織、好ましくは面積比率で95%以上フェライトであればよい。
【0035】
・TiおよびMoを含む炭化物:
TiとMoとを含む炭化物は微細となるため鋼を強化するのに有効である。従来は、析出物としてTiCを用いることが主流であったが、Tiは析出物形成傾向が強いためMoを含まない場合、粗大化しやすく、強化に対する効果が低くなることから、必要な強化量を得るには加工性を劣化させるまでの析出物が必要となる。これに対し、TiとMoとを含む複合炭化物は微細に析出して加工性を劣化させずに鋼を強化することができる。これは、Moの析出物形成傾向がTiと比べて弱いため、安定的に微細に存在できることで強化に対する効果が高く、加工性を良好に維持できる析出物量で必要な強化量が得られるためと考えられる。
【0036】
炭化物が安定的に微細に存在できるためには、炭化物の組成が影響し、炭化物の組成が、原子%で表されるMo、Tiが、Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たすようになると、析出物の粗大化を抑制する効果が高くなり、所望の微細析出物を得ることができる。したがって、本発明の第1の観点では、原子%で表されるTi、Moが、Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たす範囲でTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを要件とする。
【0037】
また、この複合炭化物の平均粒径を10nm未満とすることで、析出物周囲の歪みが転位の移動の抵抗にとってより効果的となり、良好な鋼の強化が得られる。このため、本発明の第2の観点では、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを要件とする。さらに好ましくは、平均粒径5nm以下である。
【0038】
さらに、鋼中のCと(Ti+Mo)との原子数比が0.8〜1.5となるように、C、Ti、Moの含有量を調整することにより、TiとMoとを含む炭化物が微細に析出しやすくなり、10nm未満の微細析出物の形成が容易となることから、本発明の第3の観点では、鋼中のCと(Ti+Mo)との原子数比が0.8から1.5であり、TiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを要件とする。上記原子数比は0.8〜1.3がより好ましい。なお、上記Cと(Ti+Mo)との原子数比0.8〜1.5を質量%換算すると、以下の(1)式を満たすこととなる。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …(1)
ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の質量%を表す。
【0039】
炭化物がTiとMoに加え、NbおよびVの1種以上が複合して析出したものであっても、Moの析出物形成傾向はNb、Vと比べて弱いため、その複合析出物はTiとMoの複合炭化物と同様に、安定的に微細に存在できる。このため、炭化物としては、TiとMoの他にNbおよびVの1種以上が複合析出したものであってもかまわない。
【0040】
複合炭化物が、Ti、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含むものである場合、上記第1の観点では、その組成が、原子%で表されるTi、Moが、前記Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たすことに代えて、原子%で表されるTi、Mo、Nb、VがMo/(Ti+Nb+V+Mo)≧0.25を満たすことが好ましい。この範囲であれば、複合析出物の粗大化を抑制する効果が高く、加工性を良好に維持することができる析出物量で必要な強化量を得ることができる。上記第2および第3の観点においても、Mo/(Ti+Nb+V+Mo)≧0.25を満たすことが好ましい。
【0041】
このように、TiとMoに加え、NbおよびVの1種以上が複合して析出した複合炭化物を微細に分散析出させやすくさせるためには、上記第3の観点における、鋼中のCと(Ti+Mo)との原子数比に代えて、Cと(Ti+Nb+V+Mo)との原子数比が0.8〜1.5となるようにすることが好ましい。上記第1および第2の観点においても、Cと(Ti+Nb+V+Mo)との原子数比が0.8〜1.5となるようにすることが好ましい。上記原子数比は0.8〜1.3がより好ましい。なお、上記Cと(Ti+Nb+V+Mo)との原子数比0.8〜1.5を質量%換算すると、以下の(2)式を満たすこととなる。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}≦1.5 …(2)
ただし、上記(2)式中、C、Ti、Nb、V、Moは各成分の質量%を表す。
【0042】
[化学成分]
本発明では、上記金属組織さえ満たしていれば所望の伸びおよび伸びフランジ性および590MPa以上の強度が得られ、化学成分は特に限定されないが、質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであることが好ましい。また、上述のように複合炭化物にNbおよびVの1種以上を含有させる場合には、上記成分に加えNb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含有し、残部が実質的にFeであることが好ましい。以下、これら各成分について説明する。
【0043】
C:0.02〜0.06%
Cは炭化物を形成し、鋼を強化するのに有効である。しかし、0.02%未満では、鋼の強化が不十分であり、0.06%を超えて添加するとパーライトが形成されることと析出物が粗大化することから伸びと伸びフランジ性を損なうおそれがある。このため、C含有量は0.02〜0.06%が好ましい。
【0044】
Si:0.3%以下
Siは固溶強化には有効な元素であるが、0.3%を超えて添加すると、フェライトからのC析出が促進されて粒界に粗大な鉄炭化物が析出しやすくなり、伸びフランジ性が低下する傾向となる。また、本発明においては、従来積極的に用いられてきたSiを低減することによりオーステナイトの圧延荷重を低減し、薄物の製造を容易化することができ、0.3%を超えて添加すると2.5mm以下の材料の圧延が不安定となる。また、Si添加で圧延負荷が増大し、圧延材の形状が悪くなる。これらの理由により、Si含有量は0.3%以下が好ましい。さらに好ましくは0.15%以下であり、望ましくは0.05%以下である。
【0045】
Mn:0.5〜2.0%
Mnは固溶強化により鋼を強化する観点からは0.5%以上が好ましいが、2.0%を超えて添加すると偏析し、かつ硬質相が形成され、伸びフランジ性が低下する。このため、Mn含有量は0.5〜2.0%が好ましい。
【0046】
P:0.06%以下
Pは固溶強化に有効であるが、0.06%を超えて添加すると偏析して伸びフランジ性が低下するおそれがあるため、0.06%以下とすることが好ましい。
【0047】
S:0.005%以下
Sは少ないほど好ましく、0.005%を超えると伸びフランジ性を低下させるおそれがあるため、0.005%以下が好ましい。
【0048】
Al:0.06%以下
Alは脱酸剤として添加される。しかし、0.06%を超えると伸びおよび伸びフランジ性がともに低下する傾向にあるため0.06%以下が好ましい。
【0049】
N:0.006%以下
Nは少ないほど好ましく、0.006%を超えると粗大な窒化物が増え、伸びフランジ性が低下する傾向にあるため0.006%以下が好ましい。
【0050】
Mo:0.05〜0.5%
Moは本発明において重要な元素であり、0.05%以上含有させることで、パーライト変態を抑制しつつ、Tiとの微細な複合析出物、または、Tiに加えNbおよびVのうち1種以上を含む微細な複合析出物を形成し、優れた伸びおよび伸びフランジ性を確保し、かつ鋼を強化することができる。しかし、0.5%を超えて添加すると硬質相が形成され伸びフランジ性が低する傾向にある。このため、Mo含有量は0.05〜0.5%が好ましい。
【0051】
Ti:0.03〜0.14%
Tiは本発明において重要な元素である。Moと複合析出物を形成することで、優れた伸びおよび伸びフランジ性を確保しつつ、鋼を強化することができる。しかし、0.03%未満では、鋼を強化する効果が不十分であり、0.14%を超えると伸びフランジ性が劣化する傾向にある。したがって、Ti含有量は0.03〜0.14%が好ましい。
【0052】
Nb:0.08%以下
Nbは組織の細粒化に有効であり、かつTiおよびMoとともに複合析出して複合析出物を形成し、優れた伸びと伸びフランジ性を得ることに寄与するため、必要に応じて添加する。しかし、Nb量が0.08%を超えると伸びが劣化する傾向にあるため、Nbを含有させる場合には0.08%以下が好ましい。なお、Nbの組織の細粒化効果を得る観点からは0.005%以上が好ましい。
【0053】
V:0.15%以下
Vは組織の微細化に有効であり、かつTiおよびMoとともに複合析出して複合析出物を形成し、優れた伸びと伸びフランジ性を得ることに寄与するため、必要に応じて添加する。しかし、V量が0.15%を超えると伸びが劣化する傾向にあるため、Vを含有させる場合には0.15%以下が好ましい。なお、Vの組織の細粒化効果を得る観点からは0.001%以上が好ましい。
【0054】
なお、Cr:0.15%以下、Cu:0.15%以下、Ni:0.15%以下の1種類以上を含んでいても特性上問題はない。
【0055】
[製造方法]
本発明では、上記高張力鋼を製造するに際し、熱間圧延を、仕上圧延終了温度880℃以上、巻取温度570℃以上の条件で行う。以下、これら条件について説明する。
【0056】
・仕上圧延終了温度880℃以上
仕上圧延終了温度は伸びおよび伸びフランジ性と圧延荷重を低減するのに重要である。880℃未満では、表層が粗大粒となり伸びおよび伸びフランジ性が損なわれ、かつ未再結晶で圧延が進行するために起こる歪みの累積量が増大し、圧延荷重が著しく増大することで薄物の熱間圧延が困難となるため、880℃以上とする。
【0057】
・巻取温度570℃以上
フェライト組織を得るため、およびランナウトテーブル上での注水量を抑えて薄物を安定的に通板させるため、巻取温度を570℃以上とする。これらに加えさらにランナウトテーブル上の鋼板の走行安定性を確保するには600℃以上が好ましい。なお、パーライトの生成を抑制するためには巻取温度は700℃以下とするのが望ましい。
【0058】
本発明の高張力鋼板には、表面に溶融亜鉛系めっき皮膜を形成し、溶融亜鉛系めっき鋼板としたものも含む。本発明の高張力鋼板は良好な加工性を有することから、溶融亜鉛系めっき皮膜を形成しても良好な加工性を維持することができる。ここで、溶融亜鉛系めっきとは、亜鉛および亜鉛を主体とした溶融めっきであり、亜鉛の他にAl、Cr等の合金元素を含んだものを含む。このような溶融亜鉛系めっきを施した本発明の高張力鋼板は、めっきままでもめっき後合金化処理を行ってもかまわない。めっき前焼鈍温度については、450℃未満ではめっきがつかず、750℃超えでは強度低下が生じやすい。そのため、焼鈍温度は450℃以上、750℃以下が好ましい。
【0059】
なお、本発明の鋼板は、黒皮ままでも酸洗材でもその特性に差違はない。調質圧延についても通常行われているものであれば特に規定はない。また、上記溶融亜鉛めっきは酸洗後でも黒皮ままでも問題はない。亜鉛めっきについては電気めっきも可能である。化成処理についても特に問題はない。鋳造後直ちにもしくは補熱を目的とした加熱を施した後にそのまま熱間圧延を行う直送圧延を行っても本発明の効果に影響はない。さらに、粗圧延後に仕上圧延前で、圧延材を加熱しても、粗圧延後、圧延材を接合して行う連続圧延を行っても、さらには圧延材の加熱と連続圧延を同時に行っても本発明の効果は損なわれない。
【0060】
本発明の高張力鋼板は、加工性に優れ、特に伸びフランジ性に優れているのでこれをプレス成形した場合、その特質が活かされ、自動車用部材、特にサスペンションアーム等の足廻り部材のようなプレス時の断面形状が複雑な部材を良好な品質で製造することができ、特に、プレス成形品の軽量化に資することができる。以下に具体的に、本発明に係る高張力鋼板の加工方法、換言すればプレス成形品の製造方法について説明する。
【0061】
図2は、本発明に係る高張力鋼板の加工方法の作業フローの一例を示すフローチャートである。この作業フローは、通常、本発明に係る鋼板を製造することまたはその製造された鋼板を例えばコイルにして目的場所に搬送することを前工程としており、まず、本発明に係る高張力鋼板を準備することから始まる(S0、S1)。この鋼板に対してプレス加工を施す前に、鋼板に対して前処理的な加工を施すこともあれば(S2)、裁断機により所定の寸法や形状に加工することもある(S3)。前者のS2の工程では、例えば鋼板の幅方向の所定箇所に切り込みや穿孔を行い、引き続くプレス加工を終えた段階またはそのプレス加工の過程で、所定の寸法および形状のプレス成形品または被プレス加工部材として切り離すことができるようにしておく。後者のS3の工程では、最終的なプレス成形品の寸法、形状等を予め考慮して、所定の寸法および形状の鋼板部材に加工(したがって裁断)するようにしておく。その後、S2およびS3の工程を経由した部材には、プレス加工が施され、最終的に目的とする寸法・形状の所望のプレス成形品が製造される(S4)。このプレス加工は、通常は多段階で行われ、3段階以上7段階以下であることが多い。
【0062】
S4の工程は、S2およびS3の工程を経由した部材に対してさらに所定の寸法や形状に裁断する工程を含む場合もある。この場合の「裁断」という作業は、例えば、少なくともプレス加工の過程で、S2およびS3の工程を経由した部材の端部のような最終的なプレス成形品には不要部分を切り離す作業であっても構わないし、また、S2の工程で設けられた鋼板の幅方向の切り込みや穿孔に沿って被プレス加工部材を切り離す作業であっても構わない。
【0063】
なお、図2中、N1ないしN3は、鋼板、部材、プレス成形品を、機械的にあるいは作業員による搬送作業である場合がある。
【0064】
こうして製造されるプレス成形品は、必要に応じて次工程に送られる。次工程としては、例えば、プレス成形品にさらに機械加工を施し、寸法や形状を調整する工程、プレス成形品を所定場所に搬送し、格納する工程、プレス成形品に表面処理を施す工程、プレス成形品を用いて自動車のような目的物を組み立てる組立工程がある。
【0065】
図3は、図2に示した作業を実際に行う装置と鋼板、部材、プレス成形品の流れとの関係を示すブロック図である。この図においては、本発明に係る高張力鋼板はコイル状で準備されており、プレス加工機によりプレス成形品が製造される。プレス加工機は多段プレスを行う機種のものであるが、本件発明はこれに限定されない。
【0066】
プレス加工機の前段に、裁断機その他の前処理機械を設置する場合(図3の(a))もあれば、設置しない場合(図3の(b))もある。裁断機が設置される場合には、コイルから供給される長尺の本発明に係る鋼板から、必要な寸法または形状の部材を裁断し、この部材がプレス加工機においてプレス加工され、所定のプレス成形品となる。鋼板の幅方向に切り欠きや穿孔を施す前処理機械が設置される場合には、プレス加工機においてその切り欠きや穿孔に沿って裁断が行われても構わない。前処理機械を設置しない場合には、プレス加工機において鋼板がプレス加工される過程で、裁断が行われ、最終的に所定の寸法、形状を有するプレス成形品が製造される。なお、図3における「裁断」の意味は、図2における裁断と同じである。
【0067】
こうして製造されるプレス成形品は、その原材料として加工性に優れ、特に伸びフランジ性に優れている本発明に係る高張力鋼板を使用しているので、プレス時の断面形状が複雑であっても、良好な品質で製造することができ、軽量なものとなる。このような特長は、プレス成形品が自動車用部材、特にサスペンションアーム等の足廻り部材である場合に特に有用である。
【0068】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学成分を有する鋼片を、1250℃に加熱し、通常の熱間圧延工程によって仕上温度880〜930℃で、板厚3.2mmに仕上げた。この後、600℃を超える巻取温度で、冷却速度と巻取温度を変化させて、種々の組織の鋼板を製造した。
【0069】
得られた鋼板を酸洗後、鋼板から作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)によって組織観察を行うとともに析出物寸法を測定した。析出物中のTi、Nb、V、Moの組成は、TEMに装備されたエネルギー分散型X線分光装置(EDX)による分析から決定した。
【0070】
また、得られた鋼板からJIS5号引張試験片および穴広げ試験片を採取した。引張試験片は圧延垂直方向から採取し、穴広げ試験は、130mm角の鋼板の中央に10mmφのポンチによりクリアランス12.5%で打ち抜いた穴を有する試験片を準備し、60°円錐ポンチにより打抜き穴のバリ側の反対方向から押し上げ、割れが鋼板を貫通した時点での穴径dを測定し、穴広げ率λを次式より算出した。
λ(%)=[(d−10)/10]×100
【0071】
表1に、組織、析出物平均粒径、析出物の組成(Mo比率)、引張強度(TS)、伸び(El)、穴広げ率(λ)を併記する。なお、表1中、A値は、上記(1)式の(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}の値、または上記(2)式の(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}の値を示す。
【0072】
表1に示す通り、本発明鋼のNo.1〜10はいずれもフェライト組織からなり、析出物の平均粒径は10nm未満で、Mo/(Ti+Nb+V+Mo)で表されるMo比率(原子比)が0.25以上となっているため、引張強度(TS)が590MPa以上で優れた伸びと伸びフランジ性を有している。なお、図1に、No.2の鋼板の透過型電子顕微鏡写真を示す。この写真から、微細析出物がフェライト単相組織中に均一に分散していることがわかる。
【0073】
これに対し、比較鋼のNo.11はC量が多すぎることとMo無添加のため、パーライトが生成し、かつ析出物が粗大化しており、伸びおよび伸びフランジ性がともに低く、特に伸びフランジ性が低い。また、No.12はMo無添加のため、析出物が粗大化しており、伸びおよび伸びフランジ性がともに低く、特に伸びフランジ性が低い。No.13はC量が低いため、鋼の強化に必要な析出物量が少ないことから引張強度(TS)が590MPa未満となっている。No.14はMn量が多すぎるため偏析が顕著であり、かつ組織内にマルテンサイトが形成されているため、伸びおよび伸びフランジ性がともに低い。No.15はTi量が少ないため、鋼の強化に必要な析出物が不足して引張強度(TS)が590MPa未満となっている。No.16はTi量が多すぎるため、TiとMoの複合析出物は存在するものの、複合析出物中のMo比率が低く、またSi量が多すぎるため、析出物が粗大化する傾向にあり、伸びと伸びフランジ性がともに低い。
【0074】
【表1】
【0075】
(実施例2)
表2に示す成分の鋼を溶製しスラブとした。次いで、オーステナイト域に加熱後、熱間圧延を行い、880℃以上で圧延を完了した。圧延後は巻取温度まで冷却し、表2に示す巻取温度で巻き取った。表2には板厚も同時に記載した。得られたコイル幅方向中央部からサンプルを採取し、引張方向が圧延方向と垂直になるようにJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行った。また、圧延後の板形状を目視で判定した。その結果も表2に示す。なお、圧延後の板形状の評価基準は、目視でフラットな板の場合を○、波うちが顕著な板を×とした。また、表2中のA値も表1と同様、(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}の値を示す。
【0076】
表2のうち、No.17〜No.23は780MPa級鋼板において板厚を変化させた例と巻取温度を変化させてMo/(Ti+Nb+Mo)比を変化させた例を示す。板厚2.0mmであるNo.17、No.21〜23に注目すると巻取温度の変化にともないMo/(Ti+Nb+Mo)比が変化しており、その値が0.25未満のNo.22、23では、急冷により強度は維持されたものの、低温変態相の増大により伸び(El)は低下した。また、形状も波打ちが顕著であった。Mo/(Ti+Nb+Mo)比が0.25以上のNo.17〜21では、緩冷却、高温巻取を行ってもNo.22、23と比べて強度が維持された。また、板形状についても良好であった。
【0077】
No.24〜No.29は590MPa級鋼板において板厚を変化させた例と巻取温度を変化させてMo/(Ti+Nb+Mo)比を変化させた例を示す。板厚1.4mmであるNo.26、28、29に注目すると巻取温度の変化にともないMo/(Ti+Nb+Mo)比が変化しており、その値が0.25未満のNo.28、29では、急冷により強度は維持されたものの、低温変態相の増大により伸び(El)は低下した。また、形状も波うちが顕著であった。Mo/(Ti+Nb+Mo)比が0.25以上のNo.24〜27では、緩冷却、高温巻取を行ってもNo.28、29とくらべて強度が維持された。また、板形状については、良好であった。
【0078】
【表2】
【0079】
(実施例3)
表3に示す鋼を仕上げ温度910℃、巻き取り温度630℃で熱間圧延を行い、板厚約1.6mmの熱延鋼板を作製した。これら熱延鋼板を酸洗後、合金化溶融亜鉛めっきを行った。得られた鋼板から作製した薄膜について透過型電子顕微鏡(TEM)によって組織観察を行うとともに析出物の寸法を測定し、さらに析出物中のTi、Nb、V、Moの組成をTEMに装備されたEDXによる分析から決定した。また、これらめっき鋼板からJIS5号引張試験片および穴広げ試験片を採取し、引張試験および穴広げ試験を行った。表3に、組織、析出物平均粒径、析出物の組成(Mo比率)、引張強度(TS)、伸び(El)、穴広げ率(λ)を併記する。なお、表3中のA値も表1と同様、(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}の値を示す。
【0080】
表3に示すように、本発明例であるNo.30は、溶融亜鉛系めっきを行ってもElおよびλとも良好な値を示すのに対し、比較例のNo.31は析出物にMoが含まれていないためλが低い値となった。
【0081】
【表3】
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加工性の指標である伸びおよび伸びフランジ性に優れた高張力鋼板を提供することができ、自動車部材の軽量化に寄与する効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高張力鋼板の金属組織を示す透過型電子顕微鏡写真。
【図2】本発明に係る高張力鋼板の加工方法の作業フローの一例を示すフローチャート。
【図3】図2に示した作業を実際に行う装置と鋼板、部材、プレス成形品の流れとの関係を示すブロック図。
Claims (22)
- 実質的にフェライト単相組織であり、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板。
- TiおよびMoを含む炭化物は、原子%で表されるTi、Moが、Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たす組成を有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 鋼中のC,Ti,Moを規定する以下の(1)式を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …(1)
ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の質量%を表す。 - 鋼中に質量%で、C:0.02〜0.06%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであり、実質的にフェライト単相組織であり、原子%で表されるTi、Moが、Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たす炭化物組成を有するTiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板。
- 質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであり、実質的にフェライト単相組織でかつ鋼中のC,Ti,Moを規定する以下の(1)式を満足し、TiおよびMoを含む炭化物が分散析出していることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 …(1)
ただし、上記(1)式中、C、Ti、Moは各成分の質量%を表す。 - 質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含み、原子%で表されるTi、Moが、前記Mo/(Ti+Mo)≧0.25を満たすことに代えて、原子%で表されるTi、Mo、Nb、VがMo/(Ti+Nb+V+Mo)≧0.25を満たす炭化物組成を有することを特徴とする請求項2または請求項5に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 鋼中のC、Ti、Nb、V、Moを規定する以下の(2)式を満足することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}≦1.5 …(2)
ただし、上記(2)式中、C、Ti、Nb、V、Moは各成分の質量%を表す。 - 上記(1)式に代えて、鋼中のC、Ti、Nb、V、Moを規 定する以下の(2)式を満足し、前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含むことを特徴とする請求項3または請求項6に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
0.8≦(C/12)/{(Ti/48)+(Nb/93)+(V/51)+(Mo/96)}≦1.5 …(2)
ただし、上記(2)式中、C、Ti、Nb、V、Moは各成分の質量%を表す。 - 前記炭化物は、原子%で表されるTi、Mo、Nb、VがMo/(Ti+Nb+V+Mo)≧0.25を満たす炭化物組成を有することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 鋼中に質量%で、C:0.02〜0.06%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、さらに質量%でNb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含むことを特徴とする請求項8および請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、Nb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含有し、残部が実質的にFeであることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 前記炭化物はTi、Moに加え、NbおよびVの1種以上を含み、鋼中に質量%でNb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含むことを特徴とする請求項4に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 板厚2.5mm以下の薄物熱延鋼板であることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 表面に溶融亜鉛系めっき皮膜を有することを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板。
- 質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、残部が実質的にFeからなる鋼を溶製し、仕上圧延終了温度880℃以上、巻取温度570℃以上の条件で熱間圧延を行い、実質的にフェライト単相組織であり、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出している鋼板を得ることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.02〜0.06%、Si≦0.3%、Mn:0.5〜2.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、Al≦0.06%、N≦0.006%、Mo:0.05〜0.5%、Ti:0.03〜0.14%を含み、Nb≦0.08%、V≦0.15%のうち1種以上を含有し、残部が実質的にFeからなる鋼を溶製し、仕上圧延終了温度880℃以上、巻取温度570℃以上の条件で熱間圧延を行い、実質的にフェライト単相組織であり、平均粒径10nm未満のTiおよびMoを含む炭化物が分散析出している鋼板を得ることを特徴とする、引張強度が590MPa以上の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
- 請求項1から請求項17のいずれかに記載の高張力鋼板からなる部材を準備する第1の工程と、前記部材にプレス成形を施して所望の形状のプレス成形品に加工する第2の工程とを有する高張力鋼板の加工方法。
- 前記プレス成形品は、自動車用部品である請求項20に記載の高張力鋼板の加工方法。
- 請求項1から請求項17のいずれかに記載の高張力鋼板により製造される自動車用部品。
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