JP3589615B2 - Reduction casting method and reduction casting mold - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は還元鋳造方法及び還元鋳造用成形型に関し、更に詳細には溶湯表面の酸化被膜を還元性化合物によって還元しつつ鋳造する還元鋳造方法及び還元鋳造用成形型に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳造方法のうち、アルミニウムの鋳造方法には、重力鋳造法(GDC)、低圧鋳造法(LPDC)、ダイキャスト(DC)、スクイズ(SC)、チクソモールド等がある。これらの鋳造方法は、いずれも成形型のキャビティ内にアルミニウム溶湯を注湯して鋳造するものである。
一般に、アルミニウム又はその合金は、酸化被膜をつくり易い性質があるため、アルミニウム鋳造過程では、アルミニウムの溶湯表面に簡単に酸化被膜が生成される。その結果、アルミニウム溶湯の表面張力が大きくなって、アルミニウム溶湯の流動性、溶融、溶着性が低下し、種々の鋳物欠陥が生じる。このため、成形型塗型剤の使用、成形型への溶湯の注入方法、溶湯を注入する注入速度や圧力等について様々な改良及び手法が検討されてきた。
【0003】
例えば、溶湯表面に生成された酸化被膜の生長に起因する湯周り不良、湯ジワ、湯境等に対応する対応策として、GDCやLPDCの領域では、断熱離型剤の塗布、ゲートの配置方法やオーバーフローの取り方等の手法によって、アルミニウム溶湯の温度低下を遅延させたり、DCの領域では、アルミニウム溶湯の充填速度、圧力、ゲートの配置やオーバーフローの取り方等による高圧短時間充填が行われている。また、SC等の領域では、GDCの領域で高圧に加圧することによって、アルミニウムの溶湯表面の酸化皮膜を強制的に破壊、融合させることが行われている。
【0004】
しかし、従来のアルミニウムの鋳造方法は一長一短があり、特に、アルミニウムの溶湯表面の酸化被膜に起因して鋳造品に発生する湯ジワ、湯境や微少な未充填を解消することは至難のことであった。このため、アルミニウム鋳造物のうち、表面応力、切欠等が問題となるアルミニウム製品、特に、航空機、自動車等に使用されるアルミニウム製の構造物については、その信頼性にバラツキが存在するため、蛍光探傷等による全数検査、或いは鋳造して得られたアルミニウム鋳造品に表面加工を施して最終製品とすることが行われており、アルミニウム製品のコストアップを招いていた。
かかる従来の鋳造方法では解消することが至難であった、溶湯表面の酸化被膜に起因して発生する鋳造品の湯ジワ等を解消すべく、本発明者は、先に特願平11−91445号明細書において、成形型のキャビティ内に注入したアルミニウムの溶湯表面の酸化被膜を、金属ガスと反応性ガスとが反応して生成された還元性化合物によって還元しつつ鋳造する還元鋳造方法を提案した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者が先に提案した還元鋳造方法によれば、成形型のキャビティ内に存在する還元性化合物が、アルミニウムの溶湯表面の酸化皮膜から酸素を奪いとって純粋なアルミニウムとする結果、アルミニウム溶湯の表面張力を低減させて、その流動性、湯周り性、キャビティの内壁面との濡れ性の向上を図ることができ、酸化皮膜に起因して発生する湯ジワ等の解消を図ることができる。
唯、先に提案した還元鋳造方法では、金属ガスと反応性ガスとを成形型外に設けた反応槽で予め反応させて生成した還元性化合物を、キャビティ内に注入していた。このため、反応槽からキャビティ内に還元性化合物を供給する供給配管が還元性化合物によって閉塞され易く、閉塞した供給配管の掃除のために鋳造効率が低下し易い傾向にあることが判明した。
そこで、本発明の課題は、金属の溶湯表面の酸化皮膜を還元性化合物によって還元しつつ鋳造する際に、キャビティ内への供給配管の閉塞を防止して鋳造効率を向上し得る還元鋳造方法及び還元鋳造用成形型を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、金属ガスと反応性ガスとを別々に成形型のキャビティ内に供給し、キャビティ内で両者を反応させて還元性化合物を生成することによって、キャビティ内への供給配管の閉塞を防止できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、金属の溶湯を成形型のキャビティ内に注入して鋳造品を鋳造する際に、該成形型のキャビティ内で金属ガスと反応性ガスとを反応させて還元性化合物を生成すべく、前記成形型として、前記キャビティ内に溶湯を注入する溶湯注入孔、前記金属ガスを注入する金属ガス注入孔、及び前記反応性ガスを注入するガス注入孔が個別に形成された成形型を用い、前記金属ガス注入孔及びガス注入孔の各々からキャビティ内に注入した金属ガスと反応性ガスとを反応させて還元性化合物を生成した後、前記還元性化合物が内壁面に付着しているキャビティ内に、前記溶湯注入孔から溶湯を注入し、溶湯表面の酸化被膜を還元性化合物によって還元しつつ鋳造することを特徴とする還元鋳造方法にある。
また、本発明は、キャビティ内に注入した金属ガスと反応性ガスとが反応して生成された還元性化合物によって、前記キャビティ内に注入した溶湯表面の酸化皮膜を還元して鋳造する還元鋳造用成形型であって、該キャビティ内に溶湯を注入する溶湯注入孔、前記金属ガスを注入する金属ガス注入孔、及び前記反応性ガスを注入するガス注入孔が、前記成形型に個別に形成されていることを特徴とする還元鋳造用成形型でもある。
【0007】
かかる本発明において、キャビティの内壁面に、成形型を形成する金属材を露出させることによって、キャビティの内壁面を還元性化合物と実質的に非反応性とすることができ、溶湯の注入前に還元性化合物が酸化等される事態を防止できる。同様に、金属ガスと反応性ガスとの各々をキャビティ内に注入する際に、前記キャビティ内を実質的に非酸素雰囲気とすることによっても、両者が反応して生成した還元性化合物の酸化等を防止できる。
かかる金属ガス及び反応性ガスとして、気体状のマグネシウム及び窒素ガスを用い、還元性化合物としてマグネシウム窒素化合物(Mg3N2)を生成させることによって、金属ガス及び反応性ガスの取扱を容易とすることができる。
また、金属ガス注入孔を、金属ガスを発生する金属ガス発生装置に連結することによって、成形型のキャビティ内に金属ガスを容易に注入できる。
更に、金属ガス注入孔及び/又はガス注入孔を、キャビティ内にアルミニウムの溶湯を注入する際に、前記キャビティ内の気体を排出する排出孔の役割を兼務させることによって、新たな排出孔を成形型に形成することなくキャビティ内にアルミニウムの溶湯を容易に注入できる。
尚、本発明において「アルミニウム」と言う場合は、純粋なアルミニウムは勿論のこと、アルミニウムを基材に、例えば、シリコン、マグネシウム、銅、ニッケル、錫等を含有するアルミニウム合金も含む。
【0008】
本発明において採用する、金属ガスと反応性ガスとの反応生成物である還元性化合物は、通常、大気中ではそのままの形態で存在し難いため、還元性化合物を供給する供給配管の閉塞対策は充分に明らかになっていない。
この点、本発明では、大気中でもそのままの形態で存在し得る金属ガスと反応性ガスとを別々の経路及び注入孔を経由して成形型のキャビティ内に供給し、キャビティ内で反応させて還元性化合物を生成させている。このため、供給配管の閉塞対策が知られ又は閉塞対策を不要とし得る金属ガスと反応性ガスとを用い、金属ガスと反応性ガスとの各供給配管の閉塞を防止できる。その結果、成形型のキャビティ内への供給配管の閉塞に起因する鋳造効率の低下を防止でき、鋳造効率の向上を図ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る還元鋳造方法について、アルミニウム鋳造方法に適用した例について説明する。かかるアルミニウム鋳造方法を実施するための鋳造装置の一例を図1に示す。図1に示す鋳造装置10に設けられた成形型12には、アルミニウム溶湯18が貯められた注湯槽14に接続され、アルミニウム溶湯18がキャビティ12a内に注湯される溶湯注入孔11が形成されている。
この溶湯注入孔11内には、ほぞ16が上下方向に移動可能に挿入されており、ほぞ16を引き上げることによって、注湯槽14から所要量のアルミニウム溶湯18がキャビティ12a内に注湯される。
図1に示す成形型12は、キャビティ12aの内壁面が、成形型12を形成する金属の金属面が露出して形成されたものである。
【0010】
かかる成形型12には、配管22によって窒素ガスボンベ20と接続され、バルブ24を開放することにより、キャビティ12a内に反応性ガスとしての窒素ガスを注入し、キャビティ12a内を窒素ガス雰囲気として実質的に非酸素雰囲気とすることができる。
また、アルゴンガスボンベ25は、配管26によって金属ガスを発生する発生器としての加熱炉28に接続されており、バルブ30を開放することによって加熱炉28内にアルゴンガスを注入できる。この加熱炉28内は、ヒータ32によって加熱可能に形成されており、炉内温度は、後述する金属ガスとしてマグネシウムガスを発生させるべく、マグネシウム粉末が昇華する800℃以上にされている。
【0011】
かかるアルゴンガスボンベ25は、バルブ33が介装された配管34によって、マグネシウム粉末が収容されているタンク36に接続され、タンク36は配管38によって、バルブ30よりも下流側の配管26に接続されている。この配管38にもバルブ40が介装されている。加熱炉28は、配管42及びほぞ16を貫通して成形型12のキャビティ内に通じるパイプ44を介して成形型12のキャビティ12aに接続している。配管42にはバルブ45が介装されている。
更に、成形型12のキャビティ12aには、キャビティ12a内を減圧状態とすべく、真空ポンプ等の真空発生装置(図示せず)に接続された減圧配管17が接続されている。この減圧配管17にも、バルブ19が設けられている。
【0012】
図1に示す様に、成形型12には、アルミニウム溶湯18が注湯される溶湯注入孔11の他に、マグネシウムガスをキャビティ12a内に注入する金属ガス注入孔44a、窒素ガスをキャビティ12a内に注入する窒素ガス注入孔22a及びキャビティ12a内を減圧する減圧孔17aが形成されている。かかる孔のうちの一孔を、アルミニウム溶湯18をキャビティ12a内に注湯する際に、キャビティ12内の気体を排気する排気孔とすることによって、アルミニウム溶湯18の注湯をスムーズに行うことができる。この排気孔としての役割を兼務させる孔としては、金属ガス注入孔44aと窒素ガス注入孔22aとの一方とすることが好ましく、特に窒素ガス注入孔22aに排気孔の役割を兼務させることが好ましい。
この窒素ガス注入孔22aと減圧孔17aの構造を図2(a)(b)に示す。これらの孔の接続口13は、図2(a)に示すように、成形型12の外壁に外側に向けて広がるテーパ孔に形成され、このテーパ孔に配管22先端に取り付けられた接続プラグ(図示せず)が着脱自在に当接される。接続口13は、図2(b)に示す通路15,15・・を通じてキャビティ12a内に通じている。
【0013】
本発明においては、図1に示す成形型12に代えて図3(a)に示す成形型12を用いることができる。図3(a)に示す成形型12は、アルミニウム溶湯18がキャビティ12a内に注湯される溶湯注入孔11を構成する湯注入口11a内に、ほぞ16が上下方向に移動可能に挿入される。この湯注入口11aとキャビティ12aとは湯注入路11bによって連通されており、ほぞ(栓)16を引き上げることによって、溶湯槽 14 中のアルミニウム溶湯18は、湯注入口11aから湯注入路11bを通過してキャビティ12a内に注入される。かかる湯注入路11bの途中には、金属ガス注入孔44aが接続されている。
更に、成形型12には、キャビティ12aを挟んでヘッダ23a,23bが形成されており、窒素ガスをキャビティ12aに注入する窒素ガス注入孔22a及び/又は減圧孔17aがヘッダ23a,23bに接続されている。かかるヘッダ23a,23bとキャビティ12aとは、図3(b)に示す通路15,15・・によって連結されている。
この様な、図3(a)に示す成形型12においても、金属ガス注入孔44a、窒素ガス注入孔22a及び減圧孔17aの一孔を、アルミニウム溶湯18をキャビティ12a内に注湯する際に、キャビティ12内の気体を排気する排気孔の役割を兼務させることが好ましく、特に、窒素ガス注入孔22aに排気孔の役割を兼務させることが好ましい。
尚、アルミニウム溶湯18をキャビティ12a内に注湯する際に、キャビティ12内の気体を排気する排気孔を、成形型12に新たに形成してもよい。
【0014】
図1に示す鋳造装置10によってアルミニウム鋳造を行う際には、先ず、バルブ24を開放し、窒素ガスボンベ20から配管22を経て成形型12のキャビティ12a内に窒素ガスを注入し、キャビティ12a内の空気を窒素ガスによってパージする。キャビティ12a内の空気は成形型上部の空気抜き孔(図示せず)から排出され、キャビティ12a内を窒素ガス雰囲気とし、実質的に非酸素雰囲気とすることができる。その後、バルブ24を一端閉じる。
【0015】
成形型12のキャビティ12a内の空気をパージしている際に、バルブ30を開放して加熱炉28内に、アルゴンガスボンベ20からアルゴンガスを注入し、加熱炉28内を無酸素状態とする。
次いで、バルブ30を閉じ、バルブ40を開放し、アルゴンガス圧によりタンク36内のマグネシウム粉末をアルゴンガスと共に加熱炉28内に送り込む。加熱炉28は、ヒータ32によりマグネシウム粉末が昇華する800℃以上の炉内温度になるように加熱されている。このため、加熱炉28に送り込まれたマグネシウム粉末は昇華してマグネシウムガスとなる。
【0016】
次に、バルブ40を閉じてバルブ30及びバルブ45を開放し、アルゴンガス圧力、流量を調節しつつ配管42及びパイプ44を経てマグネシウムガスをキャビティ12a内に注入する。
キャビティ12a内にマグネシウムガスを注入した後、バルブ45を閉じ且つバルブ24を開放して成形型内に窒素ガスを注入する。この様に、成形型12内に窒素ガスを注入することによって、マグネシウムガスと窒素ガスとがキャビティ12a内で反応してマグネシウム窒素化合物(Mg3N2)が生成される。このマグネシウム窒素化合物は、キャビティ12a内壁面に粉体として析出する。
窒素ガスをキャビティ12a内に注入する際には、窒素ガスの圧力及び流量を適宜調節して行う。窒素ガスとマグネシウムガスとが反応しやすいように窒素ガスを予熱して成形型12の温度が低下しないようにして注入することも好ましい。反応時間は5秒〜90秒程度(好ましくは15秒〜60秒程度)でよい。反応時間を90秒よりも長くしても、成形型12の型温が低下し反応性が低下する傾向にある。
【0017】
ここで、マグネシウム窒素化合物は、還元性化合物であり、キャビティ12a内に酸素が存在していると、酸化されて酸化マグネシウム(MgO)となるため、キャビティ12a内の酸素を極力排出することが肝心である。
このため、キャビティ12a内の空気をパージする際に、真空ポンプ等の真空発生装置を駆動してバルブ19を開放し、減圧配管17を介してキャビティ12a内を減圧状態とした後、バルブ19を閉じてからバルブ24を開放して成形型12のキャビティ12a内に窒素ガスを注入することが好ましい。
また、キャビティ12a内で生成したマグネシウム窒素化合物は、微粒子状でキャビティ12a内に浮遊しているものも多い。このため、再度、バルブ19を開放して減圧配管17を介してキャビティ12a内を減圧とすることによって、マグネシウム窒素化合物をキャビティ12aの内壁面に積極的に付着させることも好ましい。
【0018】
キャビティ12aの内壁面にマグネシウム窒素化合物が付着した状態で、ほぞ16を引き上げ、注湯槽14中のアルミニウム溶湯18をキャビティ12a内に注入する。
キャビティ12a内に注湯されたアルミニウム溶湯は、キャビティ12aの内壁面に付着しているマグネシウム窒素化合物と接触し、マグネシウム窒素化合物がアルミニウムの溶湯表面の酸化被膜から酸素を奪うことによって、アルミニウムの溶湯表面が純粋なアルミニウムに還元される。
また、キャビティ12a内に残存する酸素は、マグネシウム窒素化合物と反応し酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウムとなって溶湯中に取り込まれる。この様にして生成される酸化マグネシウム等は少量であり、且つ安定な化合物であるため、得られるアルミニウム鋳造品の品質に悪影響は与えない。
【0019】
この様に、マグネシウム窒素化合物がアルミニウムの溶湯表面の酸化皮膜から酸素を奪いとって純粋なアルミニウムを形成するため、溶湯表面に酸化皮膜を形成することなく鋳造できる。このため、鋳造工程中にアルミニウム溶湯の表面張力が酸化皮膜によって増大することを防止でき、アルミニウム溶湯の濡れ性、流動性、湯周り性を良好にできる。その結果、キャビティ12aの内壁面との決めの転写性(平滑性)に優れ、且つ湯ジワ等が生じない良好なアルミニウム鋳造品を得ることができる。
【0020】
本発明においては、成形型12のキャビティ12aの表面に付着したマグネシウム窒素化合物が還元性を有していることが必要である。このため、図1及び図2に示す成形型12のキャビティ12aの内壁面には、成形型12を形成する金属材が露出している。通常、成形型12を形成する金属材は、キャビティ12a内で生成されるマグネシウム窒素化合物に対し、アルミニウム鋳造工程の温度範囲では非反応性である。
ここで、キャビティ12aの内壁面に、アルミニウム鋳造の際に、キャビティの内壁面の処理として一般に用いられている酸化物系の断熱剤又は離型剤を、キャビティ12aの内壁面に塗布すると、マグネシウム窒素化合物は断熱剤等の酸素基と反応して還元機能を喪失する。このため、キャビティ12aの内壁面を、マグネシウム窒素化合物等の還元性化合物に対して非反応性の材料で形成する。
したがって、成形型12のキャビティ12aの内壁面を被覆する場合には、黒鉛等の非酸化物系の材料によって被覆することが好ましい。また、キャビティ12の内壁面に熱処理(四酸化鉄の形成処理)又は窒化処理等の処理を施したものであっても使用できる。
【0021】
これまでの説明では、成形型12のキャビティ12a内の空気をパージするため、窒素ガスボンベ20から窒素ガスをキャビティ12aに注入していたが、窒素ガスに代えてアルゴンガス等の不活性ガスによってパージしてもよい。
この場合、加熱炉28にアルゴンガスを注入し、加熱炉28内を無酸素状態とする際に、バルブ45を開放し、加熱炉28に注入されたアルゴンガスを成形型12のキャビティ12a内に注入することによって行うことができる。
【0022】
図1及び図2に示す鋳造装置は、重力鋳造法によってアルミニウム鋳造をおこなっているが、本発明は従来から実施されているアルミニウム鋳造方法に適用できる。例えば、図4に示す鋳造装置は、加圧鋳造方法によってアルミウム鋳造を行っているいるものである。図4に示す鋳造装置では、成形型12を上成形型50と押圧成形型51とによって構成している。図4に示す成形型12は、図1及び図2に示した重力鋳造法に用いる成形型とくらべて気密性が高いものとなっている。
この図4に示す鋳造装置10では、窒素ガスボンベ20と成形型12のキャビティ12aとを接続する配管22の中途に配管53を分岐して真空ポンプ52を接続している。この配管22の中途には、バルブ54を設けている。更に、成形型12の内外を配管55によって接続し、配管55にバルブ56を設けている。
【0023】
図4に示す鋳造装置10を使用して鋳造する場合は、先ず、バルブ24、56を閉じてバルブ54を開放して真空ポンプ52を駆動し、成形型12のキャビティ12a内を減圧する。かかる減圧によって、キャビティ12a内を実質的に非酸素雰囲気とすることができる。
更に、アルゴンガスボンベ25から加熱炉28にアルゴンガスを注入した後、バルブ33を開放してタンク36にアルゴンガスを注入し、タンク36からマグネシウム粉末を加熱炉28に送り込んでマグネシウム粉末を昇華させてマグネシウムガスを発生させる。発生したマグネシウムガスは、バルブ54、56を閉じた状態で、バルブ45を開放してアルゴンガスによって成形型12のキャビティ12a内に注入する。
次いで、バルブ45を閉じ、バルブ24、54を開放して窒素ガスボンベ20からキャビティ12a内に窒素ガスを注入する。キャビティ12a内では、注入されたマグネシウムガスと窒素ガスとが反応し、キャビティ12aの内壁面にマグネシウム窒素化合物の粉体が生成する。
【0024】
この様に、キャビティ12aの内壁面にマグネシウム窒素化合物の粉体が付着した状態で、押圧成形型51を押し上げることによってアルミニウム溶湯がキャビティ12aに注入される。
この際、キャビティ12aの内壁面にはマグネシウム窒素化合物が付着しているため、前述したと同様の作用によってアルミニウムの溶湯表面に酸化被膜が形成されることを防止して鋳造できる。その結果、良好な品質のアルミニウム鋳造品を得ることができる。
図4に示す成形型12では、キャビティ12aの内壁面を熱処理して四酸化鉄から成る処理膜12bを形成している。四酸化鉄は、マグネシウム窒素化合物との反応性を有しないため、処理膜12bによってマグネシウム窒素化合物の還元機能は損なわれない。
かかるキャビティ12aの内壁面の処理としては、窒化処理も挙げることができる。
また、図4に示す鋳造装置10では、アルミニウム溶湯の注入の際或いは加圧鋳造の際には、バルブ56を開放することによって、アルミニウム溶湯の注入を容易とすることができる。
尚、上述した説明では、アルミニウム及び/又はその合金の鋳造方法を例示したが、本発明はマグネシウムや鉄及び/又はそれらの合金等の鋳造方法にも適用可能である。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、大気中でもそのままの形態で存在し得る金属ガスと反応性ガスとを別々の経路及び注入孔を経由して成形型のキャビティ内に供給し、キャビティ内に供給する供給配管の閉塞を防止できる結果、アルミニウム鋳造を長時間連続して実施でき、工業的にアルミニウム鋳造を行うことを可能とすることができる。
しかも、得られるアルミニウム鋳造品には、湯ジワ、湯境や微少な未充填等の欠陥が極めて少ないため、アルミニウム製品の信頼性を高めることができ、航空機、自動車等に使用されるアルミニウム製の構造物についても、その検査等を解消乃至簡単なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る還元鋳造方法で採用する鋳造装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示す成形型に設けられた接続口の構造を示す部分断面図である。
【図3】図1に示す成形型についての他の例を示す断面図及び部分断面図である。
【図4】本発明に係る還元鋳造方法で採用する鋳造装置の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
10 鋳造装置
12 成形型
12a キャビティ
12b 処理膜
14 注湯槽
17a 減圧孔
18 アルミニウム溶湯
20 窒素ガスボンベ
22a 窒素ガス注入孔
25 アルゴンガスボンベ
28 加熱炉
32、32a ヒータ
36 タンク
44 パイプ
44a 金属ガス注入孔
50 上成形型
51 押圧成形型
52 真空ポンプ[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a reduction casting method and a reduction casting mold, and more particularly to a reduction casting method and a reduction casting mold for casting while reducing an oxide film on a molten metal surface with a reducing compound.
[0002]
[Prior art]
Among the casting methods, aluminum casting methods include gravity casting (GDC), low pressure casting (LPDC), die casting (DC), squeeze (SC), and thixomold. In each of these casting methods, a molten aluminum is poured into a cavity of a mold to perform casting.
In general, aluminum or an alloy thereof has a property of easily forming an oxide film. Therefore, in the aluminum casting process, an oxide film is easily formed on the surface of a molten aluminum. As a result, the surface tension of the molten aluminum increases, and the fluidity, melting and welding properties of the molten aluminum decrease, and various casting defects occur. For this reason, various improvements and techniques have been studied regarding the use of a mold coating agent, a method for injecting a molten metal into a mold, and an injection speed and pressure for injecting the molten metal.
[0003]
For example, in the area of GDC or LPDC, a method of applying an adiabatic release agent, a method of arranging a gate, and the like in a GDC or LPDC region as a countermeasure against a molten metal run-out due to the growth of an oxide film formed on a molten metal surface, a hot water wrinkle, a hot water boundary, and the like. In addition, in the DC region, high-pressure short-time filling is performed by the filling speed, pressure, gate arrangement, overflow taking, etc. of the aluminum melt in the DC area. ing. In the area of SC or the like, the oxide film on the surface of the molten aluminum is forcibly destroyed and fused by applying high pressure in the area of GDC.
[0004]
However, the conventional aluminum casting method has advantages and disadvantages, and in particular, it is extremely difficult to eliminate hot water wrinkles, hot water boundaries and minute unfilling that occur in cast products due to the oxide film on the surface of the molten aluminum. there were. For this reason, among aluminum castings, aluminum products that are problematic in surface stress, notch, etc., especially aluminum structures used in aircraft, automobiles, etc., have variations in reliability, and therefore, fluorescent A 100% inspection by flaw detection or the like, or an aluminum cast product obtained by casting is subjected to surface processing to be a final product, which has led to an increase in cost of the aluminum product.
The inventor of the present invention has previously disclosed Japanese Patent Application No. 11-91445 in order to eliminate wrinkles and the like of a cast product caused by an oxide film on the surface of a molten metal, which was difficult to solve by such a conventional casting method. In the specification, a reduction casting method is proposed in which an oxide film on a surface of a molten aluminum injected into a cavity of a mold is reduced and cast by a reducing compound generated by a reaction between a metal gas and a reactive gas. did.
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
According to the reduction casting method proposed earlier by the present inventors, the reducing compound present in the cavity of the mold deprives the oxide film on the surface of the molten aluminum of oxygen of pure aluminum, resulting in pure aluminum. The surface tension can be reduced to improve the fluidity, the hot-dipability, and the wettability with the inner wall surface of the cavity, and the wrinkles and the like generated due to the oxide film can be eliminated. .
However, in the reduction casting method proposed earlier, a reducing compound generated by previously reacting a metal gas and a reactive gas in a reaction tank provided outside the mold is injected into the cavity. For this reason, it turned out that the supply pipe for supplying the reducing compound from the reaction tank into the cavity is easily blocked by the reducing compound, and the casting efficiency tends to be reduced due to the cleaning of the closed supply pipe.
Accordingly, an object of the present invention is to provide a reduction casting method and a casting method capable of preventing a supply pipe into a cavity from being clogged and improving casting efficiency when casting while reducing an oxide film on a molten metal surface with a reducing compound. An object of the present invention is to provide a reduction casting mold.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
As a result of repeated investigations to solve the above-described problems, the present inventors separately supply a metal gas and a reactive gas into a cavity of a mold, and react the two in the cavity to generate a reducing compound. Thus, the present inventors have found that the blockage of the supply pipe into the cavity can be prevented, and arrived at the present invention.
That is, according to the present invention, when casting a cast product by injecting a molten metal into a mold cavity, a metal compound and a reactive gas are reacted in the cavity of the mold to generate a reducing compound. In order to achieve this, the mold has a molten metal injection hole for injecting molten metal into the cavity, a metal gas injection hole for injecting the metal gas, and a gas injection hole for injecting the reactive gas. Using a metal gas injected into the cavity from each of the metal gas injection hole and the gas injection hole and a reactive gas to generate a reducing compound, the reducing compound adheres to the inner wall surface Wherein the molten metal is injected into the cavity through the molten metal injection hole, and casting is performed while reducing an oxide film on the surface of the molten metal with a reducing compound.
Further, the present invention is directed to a reduction casting for reducing and casting an oxide film on a surface of a molten metal injected into the cavity by a reducing compound generated by a reaction between a metal gas and a reactive gas injected into the cavity. the die, the molten metal injection hole for injecting the dissolved water in the cavity, the metal gas injection hole for injecting the metal gas, and the gas injection holes for injecting the reactive gases, formed individually on the mold It is also a molding die for reduction casting characterized by being performed.
[0007]
In the present invention, by exposing the metal material forming the mold to the inner wall surface of the cavity, the inner wall surface of the cavity can be made substantially non-reactive with the reducing compound, and before the injection of the molten metal. A situation in which the reducing compound is oxidized or the like can be prevented. Similarly, when injecting each of the metal gas and the reactive gas into the cavity, the inside of the cavity is made substantially a non-oxygen atmosphere. Can be prevented.
By using gaseous magnesium and nitrogen gas as such a metal gas and a reactive gas and generating a magnesium nitrogen compound (Mg 3 N 2 ) as a reducing compound, the handling of the metal gas and the reactive gas is facilitated. be able to.
Also, by connecting the metal gas injection hole to a metal gas generator that generates a metal gas, the metal gas can be easily injected into the cavity of the mold.
Further, the metal gas injection hole and / or the gas injection hole can also serve as the discharge hole for discharging the gas in the cavity when the molten aluminum is injected into the cavity, thereby forming a new discharge hole. The molten aluminum can be easily injected into the cavity without forming the mold.
In the present invention, the term “aluminum” includes not only pure aluminum but also an aluminum alloy containing aluminum as a base material, for example, silicon, magnesium, copper, nickel, tin, or the like.
[0008]
The reducing compound employed in the present invention, which is a reaction product of a metal gas and a reactive gas, is usually difficult to exist in the form as it is in the atmosphere. Not fully clarified.
In this regard, in the present invention, the metal gas and the reactive gas, which can exist in the form as they are even in the atmosphere, are supplied into the cavity of the mold via separate paths and injection holes, and are reacted in the cavity to reduce The compound is produced. For this reason, it is possible to prevent the supply pipes of the metal gas and the reactive gas from being clogged by using a metal gas and a reactive gas for which measures to block the supply pipes are known or which may not be required. As a result, a decrease in casting efficiency due to blockage of the supply pipe into the cavity of the molding die can be prevented, and casting efficiency can be improved.
[0009]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
An example in which the reduction casting method according to the present invention is applied to an aluminum casting method will be described. FIG. 1 shows an example of a casting apparatus for carrying out such an aluminum casting method. A molding die 12 provided in the
A
In the molding die 12 shown in FIG. 1, an inner wall surface of the
[0010]
The molding die 12 is connected to the
The
[0011]
The
Further, a
[0012]
As shown in FIG. 1, the
FIGS. 2A and 2B show the structure of the nitrogen
[0013]
In the present invention, the molding die 12 shown in FIG. 3A can be used instead of the molding die 12 shown in FIG. In the
Further,
In the
When the
[0014]
When performing aluminum casting by the
[0015]
While the air in the
Next, the
[0016]
Next, the
After injecting the magnesium gas into the
When the nitrogen gas is injected into the
[0017]
Here, the magnesium nitrogen compound is a reducing compound, and if oxygen is present in the
For this reason, when purging the air in the
In addition, the magnesium nitrogen compound generated in the
[0018]
With the magnesium nitrogen compound attached to the inner wall surface of the
The molten aluminum poured into the
Oxygen remaining in the
[0019]
As described above, since the magnesium nitrogen compound removes oxygen from the oxide film on the surface of the molten aluminum to form pure aluminum, casting can be performed without forming an oxide film on the surface of the molten metal. For this reason, it is possible to prevent the surface tension of the molten aluminum from increasing due to the oxide film during the casting process, and it is possible to improve the wettability, fluidity, and flowability of the molten aluminum. As a result, it is possible to obtain a good aluminum cast product which is excellent in the transferability (smoothness) determined with the inner wall surface of the
[0020]
In the present invention, it is necessary that the magnesium nitrogen compound attached to the surface of the
Here, when an oxide-based heat-insulating agent or mold release agent, which is generally used as a treatment of the inner wall surface of the cavity, is applied to the inner wall surface of the
Therefore, when coating the inner wall surface of the
[0021]
In the above description, nitrogen gas is injected into the
In this case, when the argon gas is injected into the
[0022]
Although the casting apparatus shown in FIGS. 1 and 2 performs aluminum casting by gravity casting, the present invention can be applied to a conventional aluminum casting method. For example, the casting apparatus shown in FIG. 4 performs aluminum casting by a pressure casting method. In the casting apparatus shown in FIG. 4, the forming
In the
[0023]
When casting using the
Further, after injecting argon gas from the
Next, the
[0024]
In this manner, the molten aluminum is injected into the
At this time, since the magnesium nitrogen compound adheres to the inner wall surface of the
In the
As the treatment of the inner wall surface of the
Further, in the
In the above description, a method of casting aluminum and / or an alloy thereof has been exemplified. However, the present invention is also applicable to a method of casting magnesium, iron, and / or an alloy thereof.
[0025]
【The invention's effect】
According to the present invention, a supply pipe for supplying a metal gas and a reactive gas, which can exist in an intact form in the atmosphere, into a cavity of a molding die via separate paths and injection holes, and supplying the supply gas into the cavity. As a result of preventing the blockage, aluminum casting can be continuously performed for a long time, and aluminum casting can be industrially performed.
Moreover, since the obtained aluminum casting has extremely few defects such as hot water wrinkles, hot water borders and minute unfilled, the reliability of the aluminum product can be improved, and the aluminum product used in aircraft, automobiles and the like can be used. Inspection and the like of the structure can be eliminated or simplified.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic view showing an example of a casting apparatus used in a reduction casting method according to the present invention.
FIG. 2 is a partial cross-sectional view showing a structure of a connection port provided in the molding die shown in FIG.
FIG. 3 is a cross-sectional view and a partial cross-sectional view showing another example of the mold shown in FIG.
FIG. 4 is a schematic view showing another example of a casting apparatus employed in the reduction casting method according to the present invention.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF
Claims (8)
該成形型のキャビティ内で金属ガスと反応性ガスとを反応させて還元性化合物を生成すべく、前記成形型として、前記キャビティ内に溶湯を注入する溶湯注入孔、前記金属ガスを注入する金属ガス注入孔、及び前記反応性ガスを注入するガス注入孔が個別に形成された成形型を用い、
前記金属ガス注入孔及びガス注入孔の各々からキャビティ内に注入した金属ガスと反応性ガスとを反応させて還元性化合物を生成した後、
前記還元性化合物が内壁面に付着しているキャビティ内に、前記溶湯注入孔から溶湯を注入し、溶湯表面の酸化被膜を還元性化合物によって還元しつつ鋳造することを特徴とする還元鋳造方法。When casting a cast product by injecting a molten metal into the cavity of the mold,
In order to generate a reducing compound by reacting a metal gas and a reactive gas in a cavity of the mold , a metal injection hole for injecting a molten metal into the cavity and a metal for injecting the metal gas are used as the mold. Gas injection holes, and using a mold in which gas injection holes for injecting the reactive gas are individually formed,
After reacting the metal gas and the reactive gas injected into the cavity from each of the metal gas injection hole and the gas injection hole to generate a reducing compound,
A reduction casting method comprising: injecting a molten metal from a molten metal injection hole into a cavity in which the reducing compound is attached to an inner wall surface; and casting while reducing an oxide film on the surface of the molten metal by the reducing compound.
該キャビティ内に溶湯を注入する溶湯注入孔、前記金属ガスを注入する金属ガス注入孔、及び前記反応性ガスを注入するガス注入孔が、前記成形型に個別に形成されていることを特徴とする還元鋳造用成形型。A reduction casting mold for reducing and casting an oxide film on the surface of a molten metal injected into the cavity by a reducing compound generated by a reaction between a metal gas and a reactive gas injected into the cavity,
Wherein the molten metal injection hole for injecting the dissolved water in the cavity, the metal gas injection hole for injecting the metal gas and that the gas injection hole for injecting the reactive gas is formed individually on the mold Mold for reduction casting.
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