JP3587653B2 - コンバイン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圃場内を走行しながら、穀稈を刈り取って脱穀処理するコンバインに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンバインは、刈取部で刈り取った穀稈を脱穀部に搬送して、脱穀部に設けた扱室内において所定の回転数で扱胴を回転させて刈取穀稈を扱き処理し、その扱き処理物から穀粒を選別して回収するようにしている。
一方、エンジンを適切に作動させるために、脱穀部や刈取部等での作業負荷を、例えばエンジン回転数の基準回転数からのダウン量によって検出し、この作業負荷(エンジン負荷)が目標負荷範囲よりも大側に外れると車速を減速させる一方、小側に外れると車速を増速させるように車速制御して、上記作業負荷を目標負荷範囲内に維持する制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、穀粒の状態によって適切な脱穀処理速度(扱胴回転数等)が異なる場合があり、例えば穀粒に含まれる水分値の大きい穀粒に対して扱胴回転数が高過ぎると、扱き処理時に穀粒を損傷させるおそれがあるが、上記従来技術では、扱胴回転数を固定しているために、かかる穀粒の損傷を適切に回避させることができないという不具合がある。
そこで、例えば穀粒の水分値が大きいときは、脱穀処理速度を遅くしてソフトな扱き処理を行うために、扱胴回転数を減少させる等の対応が考えられるが、この場合に、単に脱穀処理速度を遅くすると脱穀作業負荷が軽くなり、車速制御の作動によって車速が速くなり刈取穀稈量が増加する。そして、扱室内で刈取穀稈量の増加に伴って多量の穀粒同士が揉み合って損傷を生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、上記従来技術の不具合を解消させるべく、脱穀処理される穀粒の状態に応じてソフトな脱穀処理を行うようにしながら、ソフト処理時に車速制御が作動して車速が速くなることを適切に防止することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1では、穀粒に対するソフト処理指令が指令されると、脱穀部での脱穀処理速度が自動的に減速されるとともに、検出作業負荷が目標負荷範囲内に維持されるように車速を自動的に変速する変速作動が抑制される。
【0006】
従って、例えば穀粒の状態(水分値等)に基づいて作業員がスイッチを操作してソフト処理を指令すると、脱穀処理速度が減速されてソフトな脱穀処理が行われ、しかも、そのソフト処理時には車速制御の変速作動が抑制されるので、単に脱穀処理速度を遅くする場合には、脱穀作業負荷が軽くなって車速が増速操作されて増加した刈取穀稈量によって、扱室内で多量の穀粒同士が揉み合って損傷を生じるおそれを適切に防止することができる。
また、ソフト処理指令が指令された場合には、車速制御手段の変速作動が停止される。
従って、ソフト処理時には車速の変速作動が停止されるので、脱穀処理速度が減速されて脱穀作業負荷が軽くなっても車速が増速することを確実に回避することができる。
【0007】
請求項2では、請求項1において、穀粒に対するソフト処理指令が指令されると、扱胴回転数が減少されて脱穀処理速度が減速される。
【0008】
従って、扱胴回転数を変更することによって、扱室内で扱き処理される穀粒に対する扱き作用力を弱めて損傷を適切に防止させることができ、もって、請求項1の好適な手段が得られる。
【0009】
請求項3では、請求項1又は2において、ソフト処理指令が指令されないときは脱穀処理速度が通常処理速度に維持され、ソフト処理指令が指令されたときは脱穀処理速度が通常処理速度からソフト処理速度に減速される。
【0010】
従って、脱穀処理速度を通常処理速度とソフト処理速度とに変更するという簡素な制御によって、脱穀処理される穀粒の損傷を適切に防止させることができ、もって、請求項1又は2の好適な手段が得られる。
【0019】
請求項4では、請求項1〜3のいずれか1項において、穀粒の水分率が設定値以上であることが検出されたときに、前記ソフト処理指令が指令される。
【0020】
従って、例えば穀粒の水分率の情報に基づいて作業員がスイッチを操作してソフト処理を指令する場合には、指令操作が面倒であるとともに、操作忘れ等のミスが生じ得るのに比べて、作業員の負担を軽減しながら、より適切な状態でソフト処理を指令することができ、もって、請求項1〜3のいずれか1項の好適な手段が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置2、運転席3、エンジン4、脱穀部5、穀粒タンク7、穀粒排出用オーガ8等を備えた機体の前部に、刈取部1を装着して構成されている。
【0022】
刈取部1は、植立穀稈の引き起こし装置6、引き起こされた植立穀稈の株元を切断する刈刃9、刈取穀稈を横倒し姿勢に変更しながら機体後部側の脱穀用のフィードチェーン11に向けて搬送する搬送装置10などを備えている。搬送装置10には、刈取作業中は刈取穀稈の株元に接当してON状態となり、刈取作業が終了すると刈取穀稈の供給が途絶えてOFF状態となる株元センサS0が設けられている。
【0023】
脱穀部5は、図2に示すように、フィードチェーン11によって機体前方から後方に向かって挟持搬送される穀稈を扱き処理する扱胴24が収納配置された扱室Aと、その扱室Aの下方に配置された受け網25と、その受け網25からの漏下処理物を揺動選別する揺動選別板26と、その揺動選別板26に対して選別風を送風する唐箕27と、脱穀部の内部で発生した塵埃を機外に吸引排出する排塵用ファン29と、揺動選別板26から穀粒を一番物として回収する一番スクリュー30と、藁が混入した穀粒を二番物として回収する二番スクリュー31と、その二番スクリュー31で回収した二番物を揺動選別板26上に還元する二番還元装置32等を備えている。図中、33は一番スクリュー30の上方に配置された精選別部、34はその精選別部33の上方に位置する粗選別部である。
【0024】
図1に示すように、前記一番スクリュー30にて回収された一番物は、スクリュー式の揚穀装置14にて上方に搬送されて穀粒タンク7内に投入されると共に、この揚穀装置14の上端部に設けた単粒式の水分計15にて1粒づつサンプルされて、その電気抵抗値によって水分率が検出される。つまり、この水分計15が、穀粒の水分率を検出する水分率検出手段を構成する。
【0025】
穀粒タンク7内の穀粒は、基底部に設けた横搬送コンベア8aにて横方向に搬送されてから、縦搬送コンベア8bにて上方に向けて搬送され、その縦搬送コンベア8bの搬送終端部から穀粒を排出口8dに向けて搬送するコンベア8cを内装した前記穀粒排出用オーガ8の基端部が、縦搬送コンベア8bの搬送終端部箇所に対して旋回及び昇降操作自在に連結されている。尚、各コンベア8a,8b,8cを作動させるために、基底部の横搬送コンベア8aが一端側に取り付けた入力プーリ13を介してエンジン4の動力にて回転駆動されると共に、横搬送コンベア8aからベベルギア等を介して、縦搬送コンベア8b及びオーガ内のコンベア8cに順次回転力が伝動されている。
【0026】
次に、コンバインの動力伝動系について説明する。図3に示すように、エンジン4の駆動力が無段式の車速変速装置19に伝えられ、この車速変速装置19の変速後の出力がミッションケース18に伝動され、そのミッションケース18を介して左右一対のクローラ走行装置2を駆動するように構成されている。又、車速変速装置19の変速後の出力は、ミッションケース18を経由した後、機体前進時のみ刈取部1が駆動されるように、ワンウェイクラッチ35を介して刈取部1に伝動されている。尚、ミッションケース18には、車速変速装置19からの入力回転数を検出して車速を検出する速度センサS1が設けられている。
【0027】
又、エンジン4の動力は、脱穀部5の各部を駆動するために脱穀クラッチ36を介した後、脱穀部5に伝動されている。脱穀クラッチ36には、その入切状態を検出する脱穀スイッチS3が付設され、エンジン4には、エンジン回転数検出センサS4が設置されている。
【0028】
脱穀部5の扱胴24の回転軸24aに対する動力伝動経路の途中に、割りプーリ式の扱胴変速装置20(ベルト無段変速装置)が配置されると共に、扱胴24の回転軸24aに、扱胴回転数センサS2が付設されている。
【0029】
図4に示すように、マイクロコンピュータ利用の制御装置Hが設けられ、その制御装置Hに、前記株元センサS0、前記速度センサS1、前記扱胴回転数センサS2、前記脱穀スイッチS3、前記エンジン回転数検出センサS4、及び、前記水分計15からの各信号が入力されている。制御装置Hからは、前記車速変速装置19と、前記扱胴変速装置20とに対する各駆動信号が出力されている。
【0030】
ここで、エンジン4の負荷が増加するとその回転数が低下する一方、エンジン4の負荷が減少するとその回転数が高くなることから、エンジン回転数によって、エンジン4の負荷つまり脱穀部5や刈取部1等での作業負荷が検出される。具体的には、株元センサS0及び脱穀スイッチS3がオン状態で車速が0.1m/sec以上のときのエンジン回転数RX(rpm)を基準回転数RSとして記憶すると共に、基準回転数RSからのエンジン回転数RXのダウン量(rpm)をエンジン負荷として検出する。
【0031】
そして、制御装置Hを利用して、前記エンジン回転数検出センサS4によって作業負荷を検出して、その検出作業負荷が目標負荷範囲内に維持されるように、前記車速変速装置19を制御して車速を自動的に変速する車速制御手段100が構成されている。つまり、検出作業負荷が目標負荷範囲よりも大きくなると車速を減速させ、検出作業負荷が目標負荷範囲よりも小さくなると車速を増速させる。ただし、車速制御手段100は、圃場の条件等に応じて、0.3〜2.0m/secの間の所定値に予め制御データとして設定される設定上限車速を越えない範囲で変速制御を実行する。
【0032】
又、制御装置Hを利用して、水分計15にて穀粒の水分率が設定値以上であることが検出されたときに、穀粒に対するソフト処理指令を指令するソフト処理指令手段103と、このソフト処理指令が指令されるに伴って、脱穀部5での脱穀処理速度を自動的に減速させる脱穀変速制御を実行する脱穀制御手段101とが構成されている。
【0033】
具体的には、上記脱穀制御手段101は、扱胴変速装置20を作動させて扱胴24の回転数を変更するように構成されて、前記ソフト処理指令が指令されないときは前記脱穀処理速度を通常処理速度に(つまり、扱胴回転数を通常回転数に)維持し、且つ、前記ソフト処理指令が指令されたときは前記脱穀処理速度を前記通常処理速度からソフト処理速度に(つまり、扱胴回転数を通常回転数からソフト処理用の回転数)に減速させる。
【0034】
又、制御装置Hを利用して、前記ソフト処理指令が指令された場合に、前記車速制御手段100の変速作動を抑制する調整手段102が構成されている。具体的な抑制の形態として、この調整手段102は、前記ソフト処理指令が指令された場合には、前記車速制御手段100の変速作動を停止させる、つまり、その指令時の車速状態を維持するように構成されている。
【0035】
次に、図5及び図6に示すフローチャートに基づいて、前記制御装置Hの制御作動について説明する。尚、この制御は、所定時間毎の割り込み処理によって実行される。ソフト処理制御(図5)では、水分計15にて検出される穀粒の水分率を設定値と比較して、水分率が設定値以上であればソフト処理指令を司令して、扱胴回転数をソフト処理用回転数に変更すると共に、前記車速制御を中止する(つまり、現在の車速に維持する)。一方、水分率が設定値未満であればソフト処理を中止して、扱胴回転数を通常回転数に戻すと共に、後述の車速制御を実行する。
【0036】
車速制御(図6)では、先ず、株元センサS0及び脱穀スイッチS3がON状態で、且つ、車速が0.1m/s以上である起動条件が成立しているかどうかを調べ、この条件が成立していなければ制御は行わない。起動条件が成立していれば、検出したエンジン回転数RXと基準回転数RSを比較して、検出回転数RXが基準回転数RSより大であれば、検出回転数RXの値を基準回転数RSとして更新、記憶する。尚、基準回転数RSの初期値は0にリセットされている。
【0037】
そして、基準回転数RSと検出回転数RXとの差をエンジン負荷として求め、エンジン負荷が目標負荷範囲内にあれば、変速操作は行わない。エンジン負荷が目標負荷範囲より大のときは減速操作を行う。エンジン負荷が目標負荷範囲より小のときは、速度センサS1にて検出される車速が前記設定上限車速より小のときだけ増速操作を行う。
【0038】
〔別実施形態〕
次に、前記調整手段102の別実施形態について説明する。
第1の別実施形態として、調整手段102は、前記ソフト処理指令が指令された場合には、前記車速制御手段100の減速作動のみを許容する。つまり、上記実施例では、ソフト処理指令が指令された場合には車速制御をすべて中止する(図5参照)ようにしたが、この別実施形態では、車速制御をすべて中止するのではなく、図6の車速制御のフローにおいて、増速操作は行わず、減速操作のみを行うものである。
第2の別実施形態として、調整手段102は、前記ソフト処理指令が指令された場合には、前記車速制御手段100における目標負荷範囲を負荷小側に補正する。つまり、この別実施形態では、上記実施例と同様の車速制御を実行する(図6参照)が、エンジン負荷の目標範囲を小さくする補正を行い、その小側に補正された目標範囲と検出されるエンジン負荷とを比較して、変速操作を行うものである。
第3の別実施形態として、調整手段102は、前記ソフト処理指令が指令された場合には、前記車速制御手段100における設定上限車速を低速側に補正する。つまり、この別実施形態では、上記実施例と同様の車速制御を実行する(図6参照)が、予め設定された設定上限車速の値を低速の値(最初の設定値から所定量を減算した値、又は、最初の設定値に1より小さい補正係数をかけた値等)に補正して、その低速側に補正された上限車速を越えない範囲で変速制御を行うものである。
【0039】
尚、調整手段102は、上記各実施形態に示されるものに限らず、車速制御手段100の変速作動を抑制する(つまり、その変速作動の効果を弱める)ための種々の形態を含む。又、上記各実施形態の内容を単独で実行するのではなく、適宜組み合わせて調整手段102を構成するようにしてもよい。
【0040】
上記実施例では、作業負荷をエンジン4の回転数の変化によって検出するようにしたが、例えばエンジン4の出力軸に加わるトルクを検出する等の他の負荷検出手段でもよい。
【0041】
上記実施例では、ソフト処理指令手段103が、穀粒の水分値の検出情報に基づいてソフト処理指令を指令するようにしたが、水分値以外の他の検出情報、例えば、穀粒の食味や、胴割れ率等に基づいて指令するものでもよい。又、自動的にソフト処理指令を指令するのではなく、作業員が穀粒の水分値の検出情報等に基づいてスイッチ等を手動操作して指令するものでもよい。
【0042】
上記実施例では、脱穀制御手段101が、扱胴回転数を変更する(減少させる)ことによって脱穀処理速度を減速させるようにしたが、扱胴回転数以外に、例えば、エンジン回転数又は一番スクリュー等の搬送速度を減少させるようにしてもよい。尚、扱胴変速装置20は、ベルト変速装置の外に油圧式の変速装置でもよい。
【0043】
又、上記実施例では、脱穀制御手段101が、ソフト処理指令が指令されたときと指令されないときとで、ソフト処理速度と通常処理速度の2つの速度に変更するものを例示したが、脱穀処理速度の減速制御は種々の形態が可能である。単一のソフト処理速度に変更するのではなく、例えば、水分値が多いほどソフト処理速度を遅くする等の、より細かい制御を行うようにしてもよい。
【0044】
上記実施例では、本発明を自脱型のコンバインに適用したものを例示したが、全稈投入式コンバインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの脱穀部の側面図
【図3】コンバインの動力系統図
【図4】制御構成のブロック図
【図5】制御作動のフローチャート
【図6】制御作動のフローチャート
【符号の説明】
5 脱穀部
15 水分率検出手段
100 車速制御手段
101 脱穀制御手段
102 調整手段
103 ソフト処理指令手段
Claims (4)
- 作業負荷を検出して、その検出作業負荷が目標負荷範囲内に維持されるように車速を自動的に変速する車速制御手段と、
穀粒に対するソフト処理指令が指令されるに伴って、脱穀部での脱穀処理速度を自動的に減速させる脱穀変速制御を実行する脱穀制御手段と、
前記ソフト処理指令が指令された場合に、前記車速制御手段の変速作動を抑制する調整手段とが設けられ、
前記調整手段は、前記ソフト処理指令が指令された場合には、前記車速制御手段の変速作動を停止させるように構成されているコンバイン。 - 前記脱穀制御手段は、扱胴回転数を変更するように構成されている請求項1記載のコンバイン。
- 前記脱穀制御手段は、前記ソフト処理指令が指令されないときは前記脱穀処理速度を通常処理速度に維持し、且つ、前記ソフト処理指令が指令されたときは前記脱穀処理速度を前記通常処理速度からソフト処理速度に減速させるように構成されている請求項1又は2記載のコンバイン。
- 穀粒の水分率を検出する水分率検出手段が設けられ、
前記水分率検出手段にて穀粒の水分率が設定値以上であることが検出されたときに、前記ソフト処理指令を指令するソフト処理指令手段が設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。
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