JP3580287B2 - リチウム二次電池およびその非水電解液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の過充電防止などの安全性およびサイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができる新規なリチウム二次電池、および、そのリチウム二次電池の安全性を確保する方法、更には、安全性の高いリチウム二次電池用電解液に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。また、小型ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯用電子・通信機器のみならず、自動車用の電源としての期待も大きい。このリチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用電解液の非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
このようなリチウム二次電池は、通常の作用電圧を上回るような過充電時に、正極からは過剰なリチウムが放出されると同時に、負極では過剰なリチウムの析出が生じて、デンドライトが生じる。そのため、正・負極の両極が化学的に不安定化する。正・負極の両極が化学的に不安定になると、やがては非水電解液中のカーボネート類と作用して分解し、急激な発熱反応が起こる。これによって、電池が異常に発熱し、電池の安全性が損なわれるという問題を生じる。このような状況は、リチウム二次電池のエネルギー密度が増加するほど重要な問題となる。
【0004】
このような問題を解決するため、電解液中に添加剤として少量の芳香族化合物を添加することによって、過充電に対して安全性を確保できるようにしたものが、例えば、特開平7−302614号公報において提案された。この特開平7−302614号公報では、電解液の添加剤として、分子量500以下で満充電時の正極電位よりも貴な電位に可逆性酸化還元電位を有するようなπ電子軌道を持つアニソール誘導体などを使用している。また、特開2000−156243号公報では、ビフェニルや4,4’−ジメチルビフェニルなどを使用している。このようなアニソール誘導体やビフェニル誘導体は、電池内でレドックスシャトルすることにより、過充電に対して電池の安全性を確保している。
【0005】
また、特開平9−106835号公報では、負極に炭素材料を用い、電解液の添加剤として、ビフェニル、3−R−チオフェン、3−クロロチオフェン、フランを約1〜4%使用して、電池の最大作動電圧を超える電圧でビフェニルなどが重合することによって、電池の内部抵抗を大きくして、過充電に対して電池の安全性を確保する方法が提案されている。また、特開平9−171840号公報では、同様に、ビフェニル、3−R−チオフェン、3−クロロチオフェン、フランを使用して、電池の最大作動電圧を超える電圧でビフェニルなどが重合することによって気体を発生させ、内部電気切断装置を作動させることにより内部短絡を生じさせて、過充電に対して電池の安全性を確保する方法が提案されている。また、特開平10−321258号公報では、同様に、ビフェニル、3−R−チオフェン、3−クロロチオフェン、フランを使用して、電池の最大作動電圧を超える電圧でビフェニルなどが重合することによって、導電性ポリマーを発生させることにより、内部短絡を生じさせて過充電に対して電池の安全性を確保する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特開平11−162512号公報では、ビフェニルなどを添加した電池において、4.1Vを越える電圧上限までサイクルが繰り返されたり、40℃以上の高温で長期間暴露される充放電状態では、サイクル特性などの電池特性を悪化させる傾向があり、添加量の増大に伴って、その傾向は顕著になるという問題点があることが記載されている。そこで、2,2−ジフェニルプロパンなどを添加する電解液が提案され、電池の最大作動電圧を超える電圧で2,2−ジフェニルプロパンなどが重合することによって、気体を発生させて内部電気切断装置を作動させたり、導電性ポリマーを発生させることにより、内部短絡を生じさせて、過充電に対して電池の安全性を確保する方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−302614号公報や特開2000−156243号公報に提案されたアニソール誘導体やビフェニル誘導体は、レドックスシャトルにより過充電に対して有効に作用するのに対して、サイクル特性や保存特性に悪影響を及ぼすという問題を生じた。提案されているアニソール誘導体やビフェニル誘導体は、40℃以上の高温や通常作動電圧で使用している場合に、局部的に少し高い電圧にさらされると充放電と共に徐々にアニソール誘導体やビフェニル誘導体が分解し、本来の電池特性が低下するという問題がある。したがって、通常の充放電と共に徐々にアニソール誘導体やビフェニル誘導体が分解して少なくなってしまうために、300サイクル後に過充電試験を行うと、安全を十分確保できないこともある。
【0008】
また、特開平9−106835号公報、特開平9−171840号公報、特開平10−321258号公報に提案されたビフェニル、3−R−チオフェン、3−クロロチオフェン、フランも同様に、過充電に対しては有効に作用するのに対して、前記の特開平11−162512号公報で指摘されているように、サイクル特性や保存特性に悪影響を及ぼし、ビフェニル添加量と共に顕著になるという問題を生じた。これは、ビフェニルなどが4.5V以下の電位で酸化分解されるために、40℃以上の高温や通常作動電圧で使用している場合にも局部的に少し高い電圧にさらされると、徐々にビフェニルなどが分解して少なくなってしまうためにサイクル寿命が低下してしまう。更には、充放電と共に徐々にビフェニルなどが分解して少なくなってしまうために、300サイクル後に過充電試験を行うと、安全を十分確保できないこともある。
【0009】
更には、特開平11−162512号公報に提案された2,2−ジフェニルプロパンを添加した電池は、ビフェニルを添加した電池ほど過充電に対する安全性は良くないものの、何も添加しない電池よりも過充電に対する安全性は良い。また、2,2−ジフェニルプロパンを添加した電池は、ビフェニルを添加した電池より優れたサイクル特性が得られるものの、何も添加しない電池よりもサイクル特性は悪いことが記載されている。よって、ビフェニルを添加した電池よりも良好なサイクル特性を得るためには、安全性の一部を犠牲にすることが許容できることが述べられている。このため、過充電防止などの安全性およびサイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性は必ずしも満足なものではないのが現状である。
【0010】
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、電池の過充電防止などの安全性およびサイクル特性、電気容量などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を構成することができるリチウム二次電池用の非水電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コバルトまたはニッケルを含有するリチウムとの複合酸化物からなる正極、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムを吸蔵、放出可能な材料からなる負極、および非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、該非水電解液中に0.1重量%〜10重量%のtert−アルキルベンゼン誘導体および0.1重量%〜1.5重量%のビフェニル誘導体を含有することを特徴するリチウム二次電池に関する。
【0012】
また、本発明は、コバルトまたはニッケルを含有するリチウムとの複合酸化物からなる正極、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムを吸蔵、放出可能な材料からなる負極、および非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池用電解液において、該非水電解液中に0.1重量%〜10重量%のtert−アルキルベンゼン誘導体および0.1重量%〜1.5重量%のビフェニル誘導体を含有することを特徴するリチウム二次電池用電解液に関する。
【0013】
従来の過充電防止の機構としては、4.5V付近の電位でレドックスシャトルする方法、4.5V以下の電位で重合することによって、電池の内部抵抗を大きくする方法、気体を発生させて内部電気切断装置を作動させることにより内部短絡を生じさせたり、導電性ポリマーを発生させることにより内部短絡を生じさせて、過充電に対する電池の安全性を確保する方法が知られている。
【0014】
一方、本発明の過充電防止の機構は、非水電解液中に含有される前記tert−アルキルベンゼン誘導体が、リチウムに対して+4.6V〜+5.0Vの電位で酸化分解することにより、過充電時に正極中のコバルトまたはニッケルの溶出が促進され、そのコバルトまたはニッケルが負極上に析出することによって、負極上に析出したリチウム金属と非水電解液中のカーボネートとの反応を未然に抑制するものと考えられる。また、本発明において、場合によっては、電池内部でコバルトまたはニッケルが負極に析出することにより内部短絡を起こし、過充電防止効果を発現するものと考えられる。その結果、電池の安全性が十分確保されるものと推定される。さらに、本発明において、tert−アルキルベンゼン誘導体と共に、ビフェニル誘導体を0.1重量%〜1.5重量%と少量添加することによって、前記tert−アルキルベンゼン誘導体の過充電防止作用を助長し、かつ、従来低下することが知られていた電池特性を向上させるという予期しない効果が発現される。
【0015】
さらに、非水電解液中に含有される前記tert−アルキルベンゼン誘導体は、リチウムに対する酸化電位が+4.6V〜+5.0Vと高いために、40℃以上の高温や通常作動電圧で充放電を繰り返しても、電圧が局部的に4.2Vを越えて、前記tert−アルキルベンゼン誘導体が分解することがない。また、0.1重量%〜1.5重量%と少量のビフェニル誘導体のみでは、過充電防止効果は発現しないものの、ビフェニル誘導体の分解がわずかであるために、tert−アルキルベンゼン誘導体と併用することにより、逆に電池特性が向上することを見出した。更には、300サイクル後に過充電試験を行うと、前記tert−アルキルベンゼン誘導体の過充電防止作用により、安全を十分確保できる。これにより、電池の過充電防止などの安全性に優れているだけではなく、サイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができるものと考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
非水溶媒に電解質が溶解されている電解液に含有されるtert−アルキルベンゼン誘導体としては、以下のような化合物が挙げられる。
例えば、tert−ブチルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン、1−クロロ−4−tert−ブチルベンゼン、1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼン、1−ヨード−4−tert−ブチルベンゼン、5−tert−ブチル−m−キシレン、4−tert−ブチルトルエン、3,5−ジ−tert−ブチルトルエン、1,3−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼン、tert−ペンチルベンゼン、(1−エチル−1−メチルプロピル)ベンゼン、(1,1−ジエチルプロピル)ベンゼン、(1,1−ジメチルブチル)ベンゼン、(1−エチル−1−メチルブチル)ベンゼン、(1−エチル−1−エチルブチル)ベンゼン、(1,1,2−トリメチルプロピル)ベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ペンチルベンゼン、1−クロロ−4−tert−ペンチルベンゼン、1−ブロモ−4−tert−ペンチルベンゼン、1−ヨード−4−tert−ペンチルベンゼン、5−tert−ペンチル−m−キシレン、1−メチル−4−tert−ペンチルベンゼン、3,5−ジ−tert−ペンチルトルエン、1,3−ジ−tert−ペンチルベンゼン、1,4−ジ−tert−ペンチルベンゼン、1,3,5−トリ−tert−ペンチルベンゼンなどのtert−アルキルベンゼン誘導体の少なくとも一種以上であることが好ましい。
また、前記ビフェニル誘導体として、ビフェニル、o−テルフェニル、m−テルフェニル、p−テルフェニル、4−メチルビフェニル、4−エチルビフェニル、4−tert−ブチルビフェニルなどを使用することができ、特に酸化電位が4.8〜5.0Vと高い前記tert−ブチルベンゼン等の一部を酸化電位が4.5Vと低いo−テルフェニルに代えることにより、過充電防止効果を向上させることができる。なお、例えばtert−ブチルベンゼンの一部をo−テルフェニルに代える場合、tert−ブチルベンゼンの含有量はo−テルフェニルの重量に対して10倍量以下が好ましく、好ましくは0.3〜5倍量、特に0.5〜3倍量が好ましい。前記したように酸化電位の異なる少なくとも2種類の前記tert−アルキルベンゼン誘導体と前記ビフェニル誘導体とを併用することにより、過充電防止効果を高めることができる上に、電池特性を向上させることもできるようになる。
【0017】
前記tert−アルキルベンゼン誘導体の含有量は、過度に多いと、電解液の電導度などが変わり電池性能が低下することがあり、過度に少ないと、十分な過充電効果が得られないので、電解液の重量に対して0.1重量%〜10重量%、特に1〜5重量%の範囲とするのがよい。
【0018】
また、前記ビフェニル誘導体の含有量は、過度に多いと、通常使用時に電池内でビフェニル誘導体の分解が起こり、電池性能が低下することがあり、過度に少ないと、十分な過充電効果や電池性能が得られないので、電解液の重量に対して0.1重量%〜1.5重量%、特に0.3重量%〜0.9重量%とするのがよい。
【0019】
本発明で使用される非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類や、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸オクチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
【0020】
これらの非水溶媒は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。非水溶媒の組み合わせは特に限定されないが、例えば、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせ、環状カーボネート類とラクトン類との組み合わせ、環状カーボネート類3種類と鎖状カーボネート類との組み合わせなど種々の組み合わせが挙げられる。
【0021】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso−C3F7)3、LiPF5(iso−C3F7)などが挙げられる。これらの電解質は、1種類で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0022】
本発明の電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記tert−アルキルベンゼン誘導体のうち少なくとも1種とビフェニル誘導体のうち少なくとも1種とを溶解することにより得られる。
【0023】
本発明の電解液は、二次電池の構成部材、特にリチウム二次電池の構成部材として好適に使用される。二次電池を構成する電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0024】
例えば、正極活物質としてはコバルトまたはニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiCo1−xNixO2(0.01<x<1)などが挙げられる。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように適当に混ぜ合わせて使用しても良い。
【0025】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に圧延して、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0026】
負極(負極活物質)としては、リチウム金属やリチウム合金、またはリチウムを吸蔵・放出可能な炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛など)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維〕、または複合スズ酸化物などの物質が使用される。特に、格子面(002)の面間隔(d002)が0.335〜0.340nm(ナノメーター)である黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、炭素材料のような粉末材料はエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0027】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、単層又は複層の正極、負極、セパレータを有するコイン型電池やポリマー電池、さらに、ロール状の正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0028】
本発明におけるリチウム二次電池は、最大作動電圧が4.2Vより大きい場合にも長期間にわたり、優れたサイクル特性を有しており、特に最大作動電圧が4.3Vのような場合にも優れたサイクル特性を有している。カットオフ電圧は、2.0V以上とすることができ、さらに2.5V以上とすることができる。電流値については特に限定されるものではないが、通常0.1〜3Cの定電流放電で使用される。また、本発明におけるリチウム二次電池は、−40〜100℃と広い範囲で充放電することができるが、好ましくは0〜80℃である。
【0029】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
〔電解液の調製〕
EC/PC/DEC(容量比)=30/5/65の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらにtert−ブチルベンゼンおよびビフェニルを電解液に対して、それぞれ2.5重量%、0.9重量%となるように加えた。
【0030】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2(正極活物質)を90重量%、アセチレンブラック(導電剤)を5重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にしてアルミ箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成形して正極を調製した。人造黒鉛(負極活物質)を95重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を5重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にして銅箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成形して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を注入して18650サイズの円筒型電池(直径18mm、高さ65mm)を作製した。電池には、圧力開放口および内部電流遮断装置を設けた。
この18650電池を用いて、サイクル試験するために、高温(45℃)下、1.45A(1C)の定電流で4.2Vまで充電した後、終止電圧4.2Vとして定電圧下に合計3時間充電した。次に1.45A(1C)の定電流下、終止電圧2.5Vまで放電し充放電を繰り返した。初期放電容量は、1M LiPF6+EC/PC/DEC(容量比)=30/5/65を電解液として用いた場合(比較例1)と比較して同等であった。300サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は84.4%であった。また、高温保存特性も良好であった。さらに、サイクル試験を300回繰り返した18650電池を用いて、常温(20℃)下、満充電状態から2.9A(2C)の定電流で続けて充電することにより、過充電試験を行った。この時、電流遮断時間は22分、電流遮断後の電池の最高表面温度は67℃であった。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表1に示す。
【0031】
実施例2
ビフェニルの使用量を電解液に対して0.5重量%としたほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0032】
実施例3
ビフェニルの使用量を電解液に対して1.3重量%としたほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0033】
実施例4
ビフェニルに代えてo−テルフェニルを電解液に対して0.9重量%使用したほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0034】
実施例5
tert−ブチルベンゼンに代えてtert−ペンチルベンゼンを電解液に対して2.5重量%使用し、またビフェニルに代えて4−エチルビフェニルを電解液に対して0.9重量%使用したほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0035】
実施例6
tert−アルキルベンゼン誘導体として、tert−ブチルベンゼンおよびtert−ペンチルベンゼンを電解液に対してそれぞれ2重量%ずつ使用し、またビフェニル誘導体として4−メチルビフェニルを電解液に対して0.5重量%使用したほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0036】
比較例1
tert−アルキルベンゼン誘導体およびビフェニル誘導体を全く添加しなかったほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0037】
比較例2
ビフェニルを電解液に対して1.3重量%使用し、tert−アルキルベンゼン誘導体を全く使用しなかったほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0038】
比較例3
ビフェニルを電解液に対して4重量%使用し、tert−アルキルベンゼン誘導体を全く使用しなかったほかは比較例2と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0039】
実施例7
正極活物質として、LiCoO2に代えてLiNi0.8Co0.2O2を使用したほかは実施例5と同様に、18650サイズの円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0040】
比較例4
tert−アルキルベンゼン誘導体およびビフェニル誘導体を全く添加しなかったほかは実施例7と同様に、18650サイズの円筒型電池を作製し、電池性能を測定した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および電池特性を表1に示す。
【0041】
実施例8
tert−ブチルベンゼンに代えて4−フルオロ−tert−ペンチルベンゼンを電解液に対して3.0重量%使用したほかは実施例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0042】
比較例5
トルエンを電解液に対して3.0重量%使用し、ビフェニルを電解液に対して0.5重量%使用したほかは比較例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0043】
比較例6
n−ブチルベンゼンを電解液に対して3.0重量%使用し、ビフェニルを電解液に対して0.5重量%使用したほかは比較例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0044】
比較例7
ジ−n−ブチルフタレートを電解液に対して3.0重量%使用し、ビフェニルを電解液に対して0.5重量%使用したほかは比較例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0045】
比較例8
4−フルオロトルエンを電解液に対して3.0重量%使用し、ビフェニルを電解液に対して0.5重量%使用したほかは比較例1と同様に円筒型電池を作製した。18650サイズの円筒型電池の材料条件および300サイクル後の放電容量維持率、電流遮断時間、電流遮断後の電池の最高表面温度を表1に示す。
【0046】
以上の実施例は、過充電時にいずれも負極上に十分なコバルトまたはニッケルが析出していた。本発明の有機化合物を添加した電池は、比較例の電池よりも過充電に対する安全性およびサイクル特性が良いことがわかる。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例は18650サイズの円筒型電池に関するものであるが、本発明は角型、アルミラミネート型、コイン型の電池にも適用される。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、電池の過充電防止などの安全性およびサイクル特性と電気容量などの電池特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
Claims (8)
- コバルトまたはニッケルを含有するリチウムとの複合酸化物からなる正極、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムを吸蔵、放出可能な材料からなる負極、および非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池用の電解液であって、該非水電解液中に、0.1重量%〜10重量%のtert−アルキルベンゼン誘導体および0.1重量%〜1.5重量%のビフェニル誘導体を含有することを特徴とする非水電解液。
- 前記ビフェニル誘導体が、ビフェニル、o−テルフェニル、m−テルフェニル、p−テルフェニル、4−メチルビフェニル、4−エチルビフェニル、4−tert−ブチルビフェニルから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液。
- 前記tert−アルキルベンゼン誘導体が、tert−ブチルベンゼン、tert−ペンチルベンゼン、もしくは4−フルオロ−tert−ペンチルベンゼンである請求項1に記載の非水電解液。
- 非水溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含有する請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の非水電解液。
- 非水溶媒中に環状カーボネートが二種類もしくは三種類含まれている請求項4に記載の非水電解液。
- 環状カーボネートが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、もしくはビニレンカーボネートである請求項3乃至5のうちのいずれかの項に記載の非水電解液。
- 鎖状カーボネートが、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、もしくはジエチルカーボネートである請求項3乃至5のうちのいずれかの項に記載の非水電解液。
- コバルトまたはニッケルを含有するリチウムとの複合酸化物からなる正極、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムを吸蔵、放出可能な材料からなる負極、および請求項1乃至7のうちのいずれかの項に記載の非水電解液からなるリチウム二次電池。
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