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JP3579617B2 - 乳化安定性の良好な栄養組成物 - Google Patents

乳化安定性の良好な栄養組成物 Download PDF

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JP3579617B2
JP3579617B2 JP23140399A JP23140399A JP3579617B2 JP 3579617 B2 JP3579617 B2 JP 3579617B2 JP 23140399 A JP23140399 A JP 23140399A JP 23140399 A JP23140399 A JP 23140399A JP 3579617 B2 JP3579617 B2 JP 3579617B2
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俊和 七野
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳化安定性の良好な流動食、育児用ミルク等の栄養組成物に関する。詳しくは、本発明は、脂肪、乳清蛋白加水分解物、カゼイン加水分解物、及び乳化剤としてコハク酸モノグリセリド及び/又はタピオカ澱粉を含有することを特徴とする乳化安定性の良好な栄養組成物に関する。
【0002】
尚、本明細書において、百分率(%)の表示は、特に断りのない限り重量による値である。
【0003】
【従来の技術】
従来、乳化剤として(i) クエン酸モノグリセリド又はコハク酸モノグリセリド、(ii)脂肪酸モノグリセリド、及び(iii) 酵素処理レシチンの3種の乳化剤を併用することにより、乳化安定性が向上した脂肪、蛋白加水分解物等からなる栄養組成物(特許第2824598号公報。以下、従来技術1と記載する。)、乳化剤及び乳化安定剤として、HLBが10未満のモノグリセリド有機酸エステル、及びHLBが10以上の耐酸耐塩性の界面活性剤、又はこれらと耐塩性の高分子化合物を併用することにより、乳化安定性が向上した脂肪、蛋白加水分解物等からなる液状栄養組成物(特開平9−157179号公報。以下、従来技術2と記載する。)等が知られている。
【0004】
また、タピオカ澱粉及びアルギン酸プロピレングリコールエステル(以下、PGAと記載する。)を併用することにより、乳化安定性が向上した脂肪等からなる蛋白加水分解物を含有しない安定な乳化食品(特開昭47−23575号公報。以下、従来技術3と記載する。)が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの従来技術には、次に記載するとおりの不都合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の技術に開示されているとおり、コハク酸モノグリセリドを他の乳化剤と併用することにより、乳化安定性が向上した脂肪、蛋白加水分解物等からなる栄養組成物が開発されていた。しかしながら、前記従来技術の乳化剤の組合せにおいては、蛋白加水分解物として乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物を使用した場合には、栄養組成物の乳化安定性が不十分であるという問題点があった。
【0007】
即ち、前記従来技術1のコハク酸モノグリセリド、脂肪酸モノグリセリド、及び酵素処理レシチンの3種の乳化剤を併用した場合には、後記する試験例からも明らかなとおり、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性が不十分であるという問題点があった。
【0008】
また、前記従来技術2のHLBが10未満のモノグリセリド有機酸エステルとしてコハク酸モノグリセリド、HLBが10以上の耐酸耐塩性の界面活性剤としてヘキサグリセリンモノミリステート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、並びに耐塩性の高分子化合物としてヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを併用した場合には、後記試験例からも明らかなとおり、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性が不十分であるという問題点があった。
【0009】
更に、前記従来技術3に開示されているとおり、タピオカ澱粉及びPGAを併用することにより、乳化安定性が向上した脂肪等からなる蛋白加水分解物を含有しない安定な乳化食品が開発されていた。しかしながら、蛋白加水分解物を含有する乳化食品にタピオカ澱粉及びPGAを併用した場合には、栄養組成物の乳化安定性が不十分であるという問題点があった。
【0010】
即ち、前記従来技術3のタピオカ澱粉及びPGAを併用した場合には、後記する試験例からも明らかなとおり、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性が不十分であるという問題点があった。
【0011】
本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性の向上を目的とし、後記する試験例に一部示されるとおり、種々の乳化剤及びその組み合わせについて試験した。
【0012】
その結果、本発明者らは、従来技術に開示される乳化剤を併用使用する場合に比較して、乳化剤としてコハク酸モノグリセリド及び/又はタピオカ澱粉を使用した場合に、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性の向上に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明の目的は、母乳の蛋白質組成に近似しており、アレルゲン性が低減され、乳幼児の保育に有用な育児用ミルク等に応用可能な脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物を主要な成分とする新規で乳化安定性の良好な栄養組成物を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明は、脂肪、乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物を主要な成分とする乳化安定性の良好な栄養組成物であって、脂肪、乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物のみからなる蛋白質源、及び乳化剤としてコハク酸モノグリセリド及び/又はタピオカ澱粉を含有することを特徴とする乳化安定性の良好な育児用ミルクである。
【0015】
また、本発明は、乳清蛋白加水分解物が、蛋白質含量が少なくとも70%の乳清蛋白質の加水分解物であって、次のa)〜h)、
a)分子量5000〜10000ダルトンの画分が、全加水分解物の1%未満であること
b)抗乳清蛋白質血清を用いたエライザ抑制試験法により測定した抗原残存活性が10-5以下であること
c)加水分解物の全アミノ酸の量に対する遊離アミノ酸の量の割合が10〜15%であること
d)乳清蛋白質に含まれる全リジンの量に対する遊離リジンの量の割合が12〜20%であること
e)アンモニア含量が0.2%以下であること
f)10%溶液を1cmのセル、540nmで測定した透過率が98%以上であること、g)pH4〜7の5%溶液を120℃で10分間加熱して沈澱を生じないこと、
h)抗酸化活性を有すること
の理化学的性質を有する風味良好な乳清蛋白加水分解物であることを特徴とする上記乳化安定性の良好な育児用ミルク(以下、態様1と記載する。)を望ましい態様としてもいる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明に使用する脂肪は、食品又は医薬品に許容されるものであれば如何なる脂肪であってもよく、具体的には、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、ココヤシ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の植物性油脂、ラード、牛脂、乳脂肪、魚油等の動物性脂肪、MCT、高度不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、リノール酸等)、これらの加工油等を例示することができるが、簡便には、市販の調整脂肪(例えば、太陽油脂社製等。)を使用することができる。
【0018】
本発明に使用する乳清蛋白加水分解物は、ホエー、脱塩ホエー、乳清蛋白濃縮物(WPC)、乳清蛋白分離物(WPI)等の食品又は医薬品に許容される乳清蛋白質原料を加水分解したものであれば如何なる乳清蛋白加水分解物であってもよいが、乳清蛋白加水分解物の風味及び抗原残存活性を考慮すると、本発明者らが先に出願した先願特許1(特開平8−112063号公報)の開示に従って、後記参考例1により製造される本発明の態様1に示す加水分解物が望ましい。
【0019】
即ち、蛋白質含量が少なくとも70%の乳清蛋白質の加水分解物であって、次のa)〜h)、
【0020】
a)分子量5000〜10000ダルトンの画分が、全加水分解物の1%未満であること
b)抗乳清蛋白質血清を用いたエライザ抑制試験法により測定した抗原残存活性が10−5以下であること
c)加水分解物の全アミノ酸の量に対する遊離アミノ酸の量の割合が10〜15%であること
d)乳清蛋白質に含まれる全リジンの量に対する遊離リジンの量の割合が12〜20%であること
e)アンモニア含量が0.2%以下であること
f)10%溶液を1cmのセル、540nmで測定した透過率が98%以上であること
g)pH4〜7の5%溶液を120℃で10分間加熱して沈澱を生じないこと
h)抗酸化活性を有すること
の理化学的性質(以下、特定の理化学的性質と記載する。)を有する風味良好な乳清蛋白加水分解物であることが望ましい。尚、前記特定の理化学的性質を有する風味良好な乳清蛋白加水分解物は、他の乳清蛋白加水分解物と比較して乳化安定性が悪いことから、本発明による乳化安定性の改善効果が著しく、本発明により、該乳清蛋白加水分解物を含有する乳化安定性の良好な栄養組成物の製造が可能となった。
【0021】
本発明に使用するカゼイン加水分解物は、乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等の酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム等のカゼイン塩等の食品又は医薬品に許容されるカゼイン蛋白質原料を加水分解したものであれば如何なるカゼイン加水分解物であってもよく、具体的には、本発明者らが先に出願した先願特許2(特開平8−228692号公報)又は先願特許3(特開平9−28306号公報)の開示に従って、後記参考例2又は参考例3により製造されるカゼイン加水分解物を使用することができる。
【0022】
本発明に使用する乳化剤は、後記試験例から明らかなとおり、食品又は医薬品に許容されるコハク酸モノグリセリド及び/又はタピオカ澱粉である必要があり、これらの市販品であるコハク酸モノグリセリド(花王社製)、タピオカ澱粉(松谷化学工業社製)等を使用することができる。乳化剤の添加量は、栄養組成物の固形分当たり、0.01〜15%である。また、一層乳化安定性を向上させるためには、コハク酸モノグリセリド又はタピオカ澱粉のいずれか一方を単独使用することが必要であり、特にコハク酸モノグリセリドの単独使用が望ましい。
【0023】
本発明の乳化安定性の良好な栄養組成物の蛋白質源としては、主要な成分である乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物が全蛋白質の60%以上使用されるが、これら以外の蛋白質、その分解物、又はアミノ酸を使用することもできる。乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物以外の蛋白質としては、大豆蛋白質、卵蛋白質、魚蛋白質、肉蛋白質、小麦蛋白質、とうもろこし蛋白質、ラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ等の1種又は2種以上の組合せを例示することができる。
【0024】
尚、乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物の蛋白質としての比率は、1:9乃至9:1の範囲で適宜変更可能であるが、乳幼児の哺乳に有用な育児用ミルクに応用する目的で、母乳の乳清蛋白質及びカゼイン蛋白質の比率に近似した1.5:1程度の比率とすることが望ましい。
【0025】
本発明の乳化安定性の良好な栄養組成物の主要な成分である脂肪、乳清蛋白加水分解物、カゼイン加水分解物、及び乳化剤以外の成分としては、食品又は医薬品に許容される糖質、食物繊維、核酸、ビタミン、ミネラル等が例示できる。
【0026】
糖質としては、デキストリン、ラクトース、シュークロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクチュロース、ラフィノース等の1種又は2種以上の組合せを例示することができる。
【0027】
食物繊維としては、セルロース、難消化デキストリン、アラビヤガム等の1種又は2種以上の組合せを例示することができる。
【0028】
核酸としては、ヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、塩基等の1種又は2種以上の組合せを例示することができる。
【0029】
ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB 、ビタミンB 、ビタミン12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、β−カロチン等の1種又は2種以上の組合せを例示することができるが、簡便には、市販のビタミン混合物(例えば、田辺製薬社製等。)を使用することができる。
【0030】
また、ミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、塩素、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン等の塩類の1種又は2種以上の組合せを例示することができるが、簡便には、市販のミネラル混合物(例えば、富田製薬社製等。)を使用することができる。
【0031】
更に、必要に応じて、果汁、フレーバー類、乳酸菌末、ビフィズス菌末等を使用することができる。
【0032】
本発明の乳化安定性の良好な栄養組成物中の全脂肪、全蛋白質、及び全糖質の配合割合は、使用目的により栄養学的観点から種々の割合で配合される。例えば、育児用ミルクの配合割合は、通常、育児用ミルクの固形分当たり、脂肪は10〜30%、蛋白質は10〜20%、糖質は50〜70%程度である。微量成分であるビタミン及びミネラルは栄養上必要な量を適宜添加される。
【0033】
本発明の栄養組成物の調製方法は、栄養組成物の種類に対応する常法によって調製することができるが、代表的な栄養組成物である育児用ミルクの場合には、次のとおり調製される。
【0034】
具体的には、前記乳清蛋白加水分解物、前記カゼイン加水分解物、前記糖質、前記ミネラル混合物、及び前記ビタミン混合物を精製水に溶解し、これに前記乳化剤及び前記脂肪を添加し、均質化し、常法により殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、育児用ミルクを調製する。
【0035】
以上により得られる本発明の栄養組成物は、後記する実施例及び試験例からも明らかなとおり、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性が良好であることから、母乳の蛋白質組成に近似しており、アレルゲン性が低減され、乳幼児の保育に有用な育児用ミルク等に応用可能で有用である。
【0036】
次に、試験例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明においては、次の試験方法を採用した。
【0037】
(1)乳化安定性の評価方法
試料を固形分15%の濃度で蒸留水に溶解し、この10mlを50ml容量遠沈管に分取し、2000rpmで5分間遠心分離し、上層に浮上するクリーム層の容積(ml)を測定し、乳化安定性の評価指標とした。
【0038】
試験例1
この試験は、従来技術により製造した栄養組成物と比較して本発明の栄養組成物が乳化安定性に優れていることを示すために行った。
【0039】
(1)試料の調製
次に示す5種類の試料を調製した。
試料1:本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料2:乳化剤として、本発明のタピオカ澱粉6kgを単独使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料3:乳化剤として、従来技術1のコハク酸モノグリセリド450g、脂肪酸モノグリセリド450g、及び酵素処理レシチン450gを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料4:乳化剤として、従来技術2のコハク酸モノグリセリド1440g、ヘキサグリセリンモノミリステート960g、ヒドロキシエチルセルロース600g、及びヒドロキシプロピルセルロース600gを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料5:乳化剤として、従来技術3のタピオカ澱粉6kg、及びPGA440gを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
【0040】
(2)試験方法
各試料の乳化安定性を、前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0041】
(3)試験結果
この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、従来技術の乳化剤を使用した試料2乃至試料4に比較して本発明の試料1は、クリーム層の浮上量が少なく乳化安定性に優れていることが判明した。
【0042】
尚、栄養組成物の脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物の種類、並びに量を変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0043】
【表1】
Figure 0003579617
【0044】
試験例2
この試験は、乳化安定性を指標として、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の適正な乳化剤の種類及びその組合せを調べるために行った。
【0045】
(1)試料の調製
乳化剤の種類及びその組合せを変更したことを除き、実施例1と同一の方法により次に示す11種類の試料(試料番号6〜16)を調製した。
試料6:本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料7:乳化剤として、本発明のタピオカ澱粉6kgを単独使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料8:乳化剤として、本発明のコハク酸モノグリセリド450g、及びタピオカ澱粉6kgを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料9:乳化剤として、クエン酸モノグリセリド450gを単独使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
【0046】
試料10:乳化剤として、バレイショ澱粉6kgを単独使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料11:乳化剤として、クエン酸モノグリセリド450g、及びタピオカ澱粉6kgを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料12:乳化剤として、コハク酸モノグリセリド450g、及びバレイショ澱粉6kgを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料13:乳化剤として、クエン酸モノグリセリド450g、及びバレイショ澱粉6kgを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料14:乳化剤として、ステアリン酸モノグリセリド450gを単独使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料15:乳化剤として、ステアリン酸モノグリセリド450g、及びタピオカ澱粉6kgを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
試料16:乳化剤として、ステアリン酸モノグリセリド450g、及びバレイショ澱粉6kgを併用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した栄養組成物
【0047】
(2)試験方法
各試料の乳化安定性を、前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0048】
(3)試験結果
この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性を向上させるためには、乳化剤としてコハク酸モノグリセリド及び/又はタピオカ澱粉を使用することが必要であることが判明した。また、一層乳化安定性を向上させるためには、コハク酸モノグリセリド又はタピオカ澱粉のいずれか一方を単独使用することが必要であり、特にコハク酸モノグリセリドの単独使用が望ましいことが判明した。
【0049】
尚、栄養組成物の脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物の種類、並びに量を変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0050】
【表2】
Figure 0003579617
【0051】
参考例1
先願特許1(特開平8−112063号公報)の実施例2と同一の方法により、乳清蛋白加水分解物を次のとおり調製した。
【0052】
市販の乳清蛋白質粉末(蛋白質含量85%。デンマーク・プロテイン社製)1kgを、脱イオン水19kgに溶解し、pHを10に調整し、トリプシン(ノボ・ノルディスク社製)を11万活性単位(乳清蛋白質1g当たり130活性単位)、プロテアーゼNアマノ(天野製薬社製)180万活性単位(乳清蛋白質1g当たり2100活性単位)及びラクトバチルス・ブルガリカス菌体破砕物5.1万活性単位(乳清蛋白質1g当たり60活性単位)を添加し、40℃で加水分解し、バイオテックアナライザー(旭化成工業社製)を用いて経時的に遊離リジンの量を測定し、遊離リジン量が17%に達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活させ、冷却し、のちクエン酸でpHを6.5に調整し、分画分子量3,000の限外瀘過膜(旭化成工業社製)で限外瀘過し、濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白加水分解物約800gを得た。
【0053】
得られた乳清蛋白加水分解物は、分子量5,000〜10000ダルトンの画分が、全加水分解物の0.2%、抗原残存活性が10−6以下、リジンの遊離率が17%、遊離アミノ酸含量13%、アンモニア含有量が0.04%、10%溶液の透過率が99%、5%溶液のpH未調整及びpH4における120℃、10分間の加熱にも安定であり、α−トコフェロールと同等の抗酸化活性を有し、風味も良好であった。
【0054】
参考例2
先願特許2(特開平8−228692号公報)の実施例2と同一の方法により、カゼイン加水分解物を次のとおり調製した。
【0055】
市販のカゼイン(メルク社製)1.5kgに蒸留水8.5kgを加え、よく分散させ、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、溶液のpHを7.0に調整し、カゼインを完全に溶解し、濃度約15%のカゼイン水溶液を調製した。該カゼイン水溶液を85℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加して、pHを9.0に調整した後、ビオプラーゼSP−20(長瀬生化学工業社製)151.2万活性単位(蛋白質1g当たり1200活性単位)、ニュートラーゼ(ノボ・ノルディスク社製)630万活性単位(蛋白質1g当たり5000活性単位)、及びキモトリプシン(ノボ・ノルディスク社製)1008万活性単位(蛋白質1g当たり8000活性単位)を添加して加水分解反応を開始し、経時的にカゼインの分解率及びバイオテックアナライザー(旭化成工業社製)により測定される16種類のアミノ酸のモル数の合計の測定値をそれぞれ測定し、カゼインの分解率が25.5%及びバイオテックアナライザーによる測定値が7.2mMに達した時点で、85℃で5分間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。この加水分解液に活性炭60gを加え、撹拌後20時間静置し、瀘過助剤としてスタンダードスーパーセル(東京珪藻土社製)を加え、吸引瀘過し、次いで、得られた瀘過液を常法により濃縮、噴霧乾燥し、噴霧乾燥品1.32kgを得た。
【0056】
得られたカゼイン加水分解物は、分子量500ダルトン以下の画分が60.9%、500超1000ダルトン以下の画分が22.9%、1000超5000ダルトン以下の画分が16.2%、5000ダルトンを超える画分が0%、抗原残存活性が10−5、及びアミノ酸遊離率が5.9%であり、風味も良好であった。
【0057】
参考例3
先願特許3(特開平9−28306号公報)の実施例2と同一の方法により、カゼイン加水分解物を次のとおり調製した。
【0058】
市販のカゼインナトリウム(蛋白質含量85%。ユニーレ・フランス社製)1kgに蒸留水9kgを加え、よく撹拌混合し、カゼインナトリウムを完全に溶解し、濃度約10%のカゼイン水溶液を調製した。該カゼイン水溶液を80℃で10分間加熱殺菌し、50℃に温度調整し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.0に調整し、ブロメライン(天野製薬社製)1360万活性単位(蛋白質1g当たり16000活性単位)、ニュートラーゼ(ノボ・ノルディスク社製)177万活性単位(蛋白質1g当たり2000活性単位)、及びプロテアーゼS(天野製薬社製)102万活性単位(蛋白質1g当たり1200活性単位)を添加して加水分解反応を開始し、経時的に酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が25.6%に達した時点で、80℃で6分間加熱して酵素を失活させ、酵素反応を停止し、10℃に冷却した。この加水分解液をマイクローザEMP−313(孔径0.25μm:旭化成社製)を用い、膜分離法(マイクロフィルトレーション)により、不溶物を瀘過し、次いで得られた瀘過液を疎水性樹脂[KS−35(北越炭素社製)]に対して、該瀘過液をSV(空間速度)=2h−1、温度10℃の条件で接触処理し、得られたカゼイン加水分解物を含有する溶液を常法により濃縮し、噴霧乾燥し、噴霧乾燥品0.74kgを得た。
【0059】
得られたカゼイン加水分解物は、分子量1000ダルトン以下の画分が82.5%、3500ダルトン以上の画分が0.2%、アミノ酸遊離率が5.3%、1g中に含まれるトリプトファンが3.5mg及び透過率が99.4%であった。また、風味(匂い、呈味)は、ほとんど無味無臭であり、保存安定性(沈澱は無く、着色も無い。)に優れた物質であった。
【0060】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
【実施例】
実施例1
前記参考例1と同一の方法を反復して得られた乳清蛋白加水分解物15kg、前記参考例2と同一の方法を反復して得られたカゼイン加水分解物10kg、ラクトース(メグレ社製)68kg、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)1120g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)14.6kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)35gを精製水300kgに溶解し、これにコハク酸モノグリセリド(花王社製)450g及び調整脂肪(太陽油脂社製)40kgを添加し、均質化し、120℃で2秒間殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、育児用ミルク約145kgを得た。
【0062】
得られた育児用ミルクを前記試験方法により試験した結果、乳化安定性が良好で、風味についても優れた栄養組成物であった。
【0063】
実施例2
前記参考例1と同一の方法を反復して得られた乳清蛋白加水分解物10.8kg、前記参考例2と同一の方法を反復して得られたカゼイン加水分解物5.6kg、ラクチュロース(森永乳業社製)500g、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)500g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)65kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)35gを精製水300kgに溶解し、これにコハク酸モノグリセリド(花王社製)500g及び調整脂肪(太陽油脂社製)20kgを添加し、均質化し、80℃で6分間殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、育児用ミルク約100kgを得た。
【0064】
得られた育児用ミルクを前記試験方法により試験した結果、乳化安定性が良好で、風味についても優れた栄養組成物であった。
【0065】
実施例3
前記参考例1と同一の方法を反復して得られた乳清蛋白加水分解物10kg、前記参考例2と同一の方法を反復して得られたカゼイン加水分解物6kg、ラクチュロース(森永乳業社製)500g、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)500g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)62kg、タピオカ澱粉(松谷化学工業社製)3kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)35gを精製水300kgに溶解し、これに調整脂肪(太陽油脂社製)20kgを添加し、均質化し、80℃で6分間殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、育児用ミルク約100kgを得た。
【0066】
得られた育児用ミルクを前記試験方法により試験した結果、乳化安定性が良好で、風味についても優れた栄養組成物であった。
【0067】
実施例4
7000mlの温水(60℃)に、前記参考例1と同一の方法を反復して得られた乳清蛋白加水分解物2500g、前記参考例3と同一の方法を反復して得られたカゼイン加水分解物2500g、及びデキストリン(参松工業社製)15000gを添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて溶解、分散させ、液状物を調製した。
【0068】
前記液状物に、コハク酸モノグリセリド(花王社製)140g、調整脂肪(太陽油脂社製)2200g、ミネラル混合物(富田製薬社製)400g、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)20gを添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて予備乳化し、水を添加して総量を100lに調整した。
【0069】
次いで、予備乳化物を高圧ホモジナイザー(マントンゴーリン株式会社製)を用いて、一段目5MPa、二段目50MPaの2段階処理を5回反復して均質化し、液状流動食約92lを調製した。
【0070】
得られた液状流動食11lを、200mlずつ塩化ビニル樹脂製軟質容器に無菌充填し、のちオートクレーブにより125℃、15分間滅菌し、無菌高カロリー流動食50個を調製した。
【0071】
この無菌高カロリー流動食を前記試験方法により試験した結果、乳化安定性が良好で、風味についても優れた栄養組成物であった。
【0072】
実施例5
市販の脱塩ホエー粉末(蛋白質含量36%。ドモ社製)2kgを5kgの蒸留水に溶解し、乳清蛋白質1kg当たり、蛋白質分解酵素として、パンクレアチン(天野製薬社製)100万活性単位、バシラス・サチリス由来酵素(長瀬生化学工業社製)3万活性単位、及びパパイン(天野製薬社製)10万活性単位を添加し、酵素反応を51℃で5時間実施し、85℃で6分間加熱し、酵素反応を停止し、得られた乳清蛋白加水分解物含有水溶液を真空凍結乾燥機(共和真空社製)を使用し、凍結乾燥し、分解率17%、平均分子量6000ダルトンの乳清蛋白加水分解物約1.9kg(蛋白質680g含有)を製造した。
【0073】
得られた乳清蛋白加水分解物1kg、前記参考例2と同一の方法を反復して得られたカゼイン加水分解物0.65kg、ラクトース(メグレ社製)4.2kg、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)4.2kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)57g、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)2gを精製水20kgに溶解し、これにコハク酸モノグリセリド(花王社製)28g、タピオカ澱粉(松谷化学工業社製)372g及び調整脂肪(太陽油脂社製)2.5kgを添加し、均質化し、120℃で2秒間殺菌し、濃縮し、噴霧乾燥し、育児用ミルク約9kgを得た。
【0074】
得られた育児用ミルクを前記試験方法により試験した結果、乳化安定性が良好で、風味についても優れた栄養組成物であった。
【0075】
【発明の効果】
以上詳記したとおり、本発明は、乳化安定性の良好な流動食、育児用ミルク等の栄養組成物に関するものであり、本発明により奏される効果は次のとおりである。
1)脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物等からなる栄養組成物の乳化安定性を向上させることができる。
2)得られた脂肪、乳清蛋白加水分解物、及びカゼイン加水分解物を主要な成分とする乳化安定性の良好な栄養組成物は、母乳の蛋白質組成に近似しており、アレルゲン性が低減され、乳幼児の保育に有用な育児用ミルク等に応用可能で有用である。

Claims (2)

  1. 脂肪、乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物を主要な成分とする乳化安定性の良好な栄養組成物であって、脂肪、乳清蛋白加水分解物及びカゼイン加水分解物のみからなる蛋白質源、及び乳化剤としてコハク酸モノグリセリド及び/又はタピオカ澱粉を含有することを特徴とする乳化安定性の良好な育児用ミルク。
  2. 乳清蛋白加水分解物が、少なくとも70(重量)%の蛋白質を含有する乳清蛋白質の加水分解物であって、次のa)〜h)、
    a)分子量5000〜10000ダルトンの画分が、全加水分解物の1(重量)%未満であること
    b)抗乳清蛋白質血清を用いたエライザ抑制試験法により測定した抗原残存活性が10-5以下であること
    c)加水分解物の全アミノ酸の量に対する遊離アミノ酸の量の割合が10〜15(重量)%であること
    d)乳清蛋白質に含まれる全リジンの量に対する遊離リジンの量の割合が12〜20(重量)%であること
    e)アンモニア含量が0.2(重量)%以下であること
    f)10(重量)%溶液を1cmのセル、540nmで測定した透過率が98%以上であること
    g)pH4〜7の5(重量)%溶液を120℃で10分間加熱して沈澱を生じないこと、h)抗酸化活性を有すること
    の理化学的性質を有する風味良好な乳清蛋白加水分解物であることを特徴とする請求項1に記載の乳化安定性の良好な育児用ミルク。
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