JP3577059B2 - 呼吸機能からみた総合的健康管理装置のための気相系呼吸機能検査システム - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、公衆衛生の分野に属し、特に呼吸機能からみた総合的健康管理装置のための気相系呼吸機能検査システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢者人口が21世紀にはさらに増加し、人口の25%を越すと推定され、高齢者の疾病もさらに増加し、寝たきり老人が100万を越すと予想されるため、高齢者に対する保健、医療、福祉の対策が迫られている。したがって、21世紀における高齢者の健康の維持増進を考えるとき、20世紀末から21世紀初頭にかけては、特に中高年者を主体として、ガス交換・酸素消費を含めた呼吸機能(換気、ガス交換、ガス輸送、代謝)からみた健康の維持増進を図る必要がある。
【0003】
従来、呼吸器の分野で進められてきた呼吸機能からみた健康管理として塵肺における対策(職業病対策)があるが、これは呼吸機能障害の進展予防を主体とするものであり、健康の維持増進を主体とするものではない。
【0004】
現在、換気能力、ガス交換機能、呼気ガスを単独で測定する検査機器は、臨床領域では普及している。また、健康・体力づくりのための体力測定システムも開発されている。
【0005】
本発明者は、換気能力の指標であるFEV1%(1秒率とも呼ぶ)とRAT(係数勾配指数とも呼ぶ)とを2次元座標に表示し、その表示位置から気道過敏性と気道閉塞性を総合的に、同時に、正確に評価する方法および装置を完成した。特開平7−222732に、その方法および装置が開示されている。
【0006】
さらに、本発明者は、FEV1%とRATとを2次元座標表示し、その2次元座標上に予め設定した健康管理ゾーンと、座標表示のマッチングから気道閉塞にかかわるライフスタイル管理のための換気能力を評価する方法を見いだした(特願平6−317272)。
【0007】
本発明者は、別途、最大呼気流量気量曲線の下行脚を定量的に表し、ガス交換機能を指標であるCO肺拡散能力と関連づけて3次元表示し、評価できるような換気、ガス交換機能の総合的方法およびそのための立体的表示装置を完成した。特開平6−205761にその方法および装置が開示されている。
【0008】
さらに、本発明者は、FEV1%とRATを求め、呼気データを得る検査体系と実質的に同一の検査体系データからガス交換機能の指標であるP′CO,P′CO(22),D′LCO,D′LCO(22),D′LCO/V′A,D′LCO/V′A(22)およびSPO2を求め、または演算して、これらの指標を3次元座標に立体表示し、ライフスタイル管理のための換気、ガス交換機能を総合的評価する方法および装置を完成した。特願平6−317273にその方法および装置が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように換気能力、ガス交換機能等の呼吸機能を評価してライフスタイル管理に役立てる手法は確立されつつある。しかしながら、換気機能、ガス交換機能に加えて、代謝機能をも評価し、総合的に健康管理を行うシステムおよび方法は未だ知られていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、呼吸機能(特に代謝機能を含めて)からみたライフスタイル管理を主体とする総合的健康管理を行う装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)被験者の換気機能指標および/またはガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、
(b)前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標を測定、演算、表示する第2検査手段と、
(c)被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段とを含み、
(d)第2検査手段は、
(d1)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定する手段と、
(d2)運動モード設定手段によって設定された運動モードを運動負荷量に換算する運動負荷量換算手段と、
(d3)被験者が乗る運動手段であって、運動負荷量換算手段の出力に応答し、被験者に前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させる運動負荷手段を備える運動手段と、
(d4)被験者の口から呼気を採取する呼気採取手段と、
(d5)呼気採取手段からの呼気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
(d6)酸素濃度検出手段の出力に応答し、検出した酸素濃度に基づいて被験者の代謝機能の指標V'02(酸素摂取量)を演算するV'O2演算手段と、
(d7)前記V'O2演算手段の出力に応答し、前記指標V'O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求める運動エネルギー演算手段と、
(d8)運動エネルギー演算手段の出力に応答し、消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算する1日消費推定エネルギー換算手段と、
(d9)1日消費推定エネルギー換算手段の出力に応答し、1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を表示出力する出力手段とを含むことを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理装置のための気相系呼吸機能検査システムである。
【0014】
本発明に従う呼吸機能からみた総合的健康管理のための気相系呼吸機能検査システムを図2〜図5を参照してさらに詳しく説明する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、呼吸機能における換気機能、代謝機能等各機能の相関関係を示す図である。図2は、本発明の気相系呼吸機能検査システムの概略構成を示すブロックダイヤグラムである。図中、1は被験者の換気機能指標およびガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示できる第1検査手段を、2は被験者の代謝機能指標を測定、演算、解析、表示できる第2検査手段を、3は被験者のガス輸送機能指標を測定、演算、表示できる第3検査手段を、4は運動負荷手段を、5は運動時血圧を測定する血圧測定手段を、6は筋力の測定手段を表す。7は換気機能指標を測定、演算、解析、表示できる第4検査手段を表す。図2のブロックダイヤグラムは各手段の接続状態の一例を示すが、他の接続モードも可能である。
【0016】
この例では、被験者から得られた測定データの演算、解析が必要な各手段は、それ自身データを処理する演算処理部を備えていてもよいが、各手段からデータを第1検出手段1の演算処理部1aに転送し、そこで演算処理できる構成となっている。データの表示についても同様に、各手段が表示する表示部を各々備えていてもよいが、データならびにそれから演算された様々な呼吸機能指標を一括して、演算処理部1aが処理後、表示部(あるいは印刷)する構成としてもよい。
【0017】
第1検査手段1が、換気機能手段を測定、演算、解析、表示できるので、同様の機能を有する第4検出手段7は、本発明の気相系呼吸機能検査システムに必須ではないが、後述するように、第1検査手段1と補足的に第4検査手段7を用いることが好ましい。
【0018】
第1検査手段1に対応する検査、測定装置は、エアロメータS/9(商品名)としてミナト医科学株式会社より、第2検査手段2に対応する検査、測定装置はエアロメータAE−280(商品名)としてミナト医科学株式会社より、第3検査手段3に対応する検査、測定装置はパルスオキシメータ(商品名)として日本光学株式会社より、血圧測定手段5に対応する血圧計はEBP−300としてミナト医科学株式会社より市販されている。筋力測定手段5の一例である握力計はディジタル握力背筋測定器および握力用アタッチメントとして竹井機器工業株式会社より市販されている。運動負荷手段4の一例である自転車エルゴメータは、エルゴメーター232CXLとしてコンビ株式会社より市販されている。
【0019】
第4検査手段7の詳細な構成は、前記特願平6−317273に記載されている。後述の実施例、特に図15を参照。すなわち、第4検査手段7は、スパイロメータ、メモリ、各種演算部等から成り、スパイロメータで測定した被験者の呼気データをFV曲線に描き出す。このFV曲線の下行脚、および呼気データに基づいて演算部が、換気機能指標のうち、たとえばFEV1%、RATを演算し、必要ならばこれらを第4検査手段7にグラフ表示する。
【0020】
第1検査手段1の詳細な構成も、特願平6−317273に記載されている。後述の実施例、特に、図19、20を参照。すなわち、第1検査手段1は、スパイロメータ、メモリ、ガスミキシングバック、各種演算部等から成り、第4検査手段7と同様にFEV1%、RATが演算できるとともに、ガス交換機能指標のうち、たとえば、P′CO、D′LCO,D′LCO/V′A、D′LCO/VA、P′CO(22)をガス分析から求めることができる。これらのいずれの指標も第1検査手段1上に表示することができる。
【0021】
第1検査手段1、第4検査手段7を用いて、換気機能指標、ガス交換機能指標を測定、演算する方法も特願平6−317273に詳細に解説されている。後述の実施例を参照。
【0022】
本発明に従えば、さらに、第3検査手段3を用いてV′O2(酸素摂取量)、V′CO2(炭酸ガス排出量)の測定を行うことができる。
【0023】
図3に、breath−by−breath法によるV′O2,V′CO2測定装置の一例の全体の系統図(ブロックダイヤグラム)を示す。このようなV′O2,V′CO2測定装置20は、本発明の気相系呼吸機能検査システムの主要部分を構成する。
【0024】
被験者10は、まず運動手段であるトレッドミル11上に乗り、口にマウスピース12(またはマスク)を加えながら前方進行運動(歩く、または走る)を行う。トレッドミル11には、運動負荷装置13が設けられており、被験者10が選択する運動負荷レベル(運動モード)に基づいて適当な運動負荷を被験者10に供給する。通常、運動モードは被験者10がその上を歩行または走るベルト(図示せず)の回転速度または傾斜角度に反映され、被験者10に負荷される。運動中の被験者10の呼気は、サンプリングチューブ14を経てフローセンサ15と赤外線式CO2センサ16に分配される。赤外線式CO2センサ16において、赤外線吸収法により呼気中の炭酸ガス分子波長域の光が検出され、電気的に増幅されて、炭酸ガス濃度が検出される。赤外線式CO2センサ16を通過した呼気は、続いてジルコニア式O2センサ17に導かれ、そこでジルコニアセンサにより酸素濃度が検出される。前記センサ15,16で実測された酸素濃度、炭酸ガス濃度データは、一旦マイクロコンピュータ18に送られる。一方、呼気の一部は赤外線式CO2センサ16と並列に接続されたフローセンサ15を通過し、そこで呼気の流量が測定され、流量データもマイクロコンピュータ18に送られる。
【0025】
マイクロコンピュータ18は、呼気の流量に対するセンサ16,17の時間遅れを補正し、V′O2およびV′CO2を演算する。V′O2,V′CO2値は、ディスプレイ19に表示されるか、アナログ信号出力、プリンタ出力、シリアルデータ出力等の他の出力手段で出力される。前記と同様な過程を経てV′E(換気量)も算出される。これらの測定値からガス交換比Rも求めることができる。
【0026】
さらに、呼気ガス分析によってAT(嫌気性代謝閾値)も決定できる。ATは「有酸素性エネルギ産生に無酸素性エネルギ産生機構が加わった時点の運動時V′O2のレベル」として定義され、筋肉中や動脈血中における乳酸濃度や、乳酸/ピルビン酸比の増加を反映する。ATは、V′E対V′O2およびV′CO2対V′O2のプロットにより決定できる。ATは特に心不全の重症度、リハビリテーションや運動療法の運動処方、効果判定などに有用な指標でもある。
【0027】
本発明に従って、被験者の呼吸機能(換気、ガス交換、ガス輸送および代謝機能さらに筋力を含めて)を総合的に評価するには、3次元直交座標系を利用して、呼吸機能に関する3次元空間を形成して、これを複数に分割して、被験者の呼吸機能指標を3次元座標表示(プロット)し、被験者の属する分割空間の特性と座標表示の結果に基づいて実施する。
【0028】
この呼吸機能による総合的評価に先立ち、被験者の一群から健康調査表の提出を求めるとともに換気機能を検査する。このためには、第4検査手段7を用いてFV測定後、FV波形の解析を行い、換気機能指標、たとえばFEV1%、RATを求める。この目的のために、第4検査手段7の代わりに第1検査手段1を用いて、換気機能指標を求めることもできる。
【0029】
ここで、このようなFEV1%、RAT等の換気機能指標、加えて筋力の評価を併せて、「1次呼吸機能の評価」と呼ぶ。換気機能指標を用いた2次元的健康管理の方法については、特願平6−317272に詳述されているが、以下に簡単に述べる。詳細については後述の実施例を参照。
【0030】
FV波形の解析の結果、得られたRAT、FEV1%を各々X軸、Y軸にプロット(2次元表示)する。FEV1%としてFEV(g)(努力肺治量1秒率)を採用し、Y軸にプロットした一例が図4に示される。この2次元表示と同一の平面上に、表1に示す健康状態区分(ゾーン)をY軸に沿って表示する。
【0031】
【表1】
【0032】
ここで言うライフスタイルとは、たとえば栄養(食習慣、食事量、緑黄種)、肥満、飲酒、運動、筋力、喫煙、職業、ストレス等が挙げられる。
【0033】
健康状態ゾーン表示は、前記の2次元表示の上に重ねて表示してもよいし、また予めゾーン表示を行い、その上に前記の2次元表示を重ねてもよい。
【0034】
たとえば被験者の2次元表示データがゾーンAにあれば、その被験者は健康であると判定されるので、ガス交換機能、ガス輸送機能、および/または代謝機能を必ずしも検査する必要はない。しかし、念のため、これらの機能をさらに検査してもよい。
【0035】
被験者の2次元表示データがゾーンB以下、すなわちB,C,D1−3にあれば、表1に示すように被験者の健康管理を徹底する必要があり、ガス交換機能(2次呼吸機能とも呼ぶ)、さらにガス輸送機能、代謝機能(併せて3次呼吸機能とも呼ぶ)の検査、評価を行う。2次呼吸機能および/または3次呼吸機能の評価には、前述の3次元的表示を利用する。
【0036】
これにはまず、3次元直交座標のX,Y,Z軸を図5に示すように定義する。すなわち、X軸正方向(X1)に第1換気機能指標を、X軸負方向(X2)にガス輸送機能指標を、Y軸正方向(Y1)に第2換気機能指標を、Y軸負方向(Y2)に代謝機能指標を、Z軸正方向(Z1)にガス交換指標を、Z軸負方向(Z2)に筋力を座標表示する。このように座標表示された3次元空間を座標軸に従って、下記表2のように8分割する。
【0037】
【表2】
【0038】
分割された空間1〜8は各々、表2のように特徴づけられる。さらに、より具体的に第1換気機能指標としてRATを、第2換気機能指標としてFEV1%を、ガス交換指標としてP′CO(22)(一酸化炭素分圧較差、酸素消費量要求度)またはD′LCO/V′A(22)(一酸化炭素拡散能力)をガス輸送指標としてSPO2を、代謝指標としてVO2を、筋力として握力を取ると前記座標軸は、表3のように表される。
【0039】
【表3】
【0040】
なお、図4のような2次元表示を表3の座標軸系に従って、図5に移すには、X1軸上のRATは−1.0(原点)〜1.0としてプロットする必要がある。
【0041】
3次元座標表示の一例として、被験者の2次元表示データがゾーンAにあれば、続いて、被験者の筋力(握力)を筋力測定手段6によって測定する。得られた値をZ2軸にプロットすると、前記FEV1%、RATのプロットと併せてこの被験者は第2空間に位置することがわかる。
【0042】
被験者の2次元表示データがゾーンBにあれば、その被験者はライフスタイル管理が必要であると判定される。そこで、被験者のガス交換機能を第1検査手段1で検査する。このとき、再度換気機能(FEV1%、RAT)を第1検査手段1で検査、評価してもよい。得られたガス交換機能指標、たとえばP′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)をZ1軸にプロットする。なお、P′CO(22)、D′LCO/V′A(22)はそれぞれ標準体重規準化した数値である。したがって、この被験者は前記FEV1%、RATのプロットと合わせて第1空間内で比較、評価が可能となる。さらに筋力(握力)の測定を経て、第2空間内での評価も行う。具体的には、各座標位置により、医師と被験者は、肺の換気機能およびガス交換機能を把握して総合的に評価することが可能となる。すなわち評価結果を素因、病態、環境要因、生活習慣(第1空間)といった人間生態学的観点と関連づけた把握、評価をして保健指導することができる。換気機能のみならずガス交換機能(特に酸素消費を反映する指標)をも採用することにより、酸素消費を基本とする生活習慣を関連づけて評価することが可能ともなる。たとえばP′CO(22)は肥満度、飲酒習慣、運動習慣といった酸素消費を前提とするライフスタイルとの相関が認められる。すなわちライフスタイルの変化に対応してP′CO(22)値が変化する。そこで医師は被験者のP′CO(22)値の変化から、ライフスタイルの改善に対応した有効な指導を行いうる。
【0043】
このように医師にとっては、被験者のための適確な診断および保健指導を行うことができ、たとえば被験者がたばこを止めるべきであるとか、仮にたばこを吸っていても、野菜を多く摂取しているとき、換気機能あるいはガス交換機能は低下しないので、そのような患者の個別的な保健指導を細かく行うことができるようになる。
【0044】
また被験者にとっては、医学的知識がなくても、被験者自身の換気機能およびガス交換機能の把握と理解ができ、主体的、積極的なライフスタイル改善の一助にすることができる。
【0045】
被験者の2次元表示データがゾーンCにあれば、その被験者はスクーニングが必要であると判定される。さらに、2次元表示データがD1−3にあれば、その被験者は疾病管理が必要であると判定される。これらの場合、ゾーンBの場合と同様に、被験者のガス交換機能を第1検査手段1で検査する。ここで、再度換気機能(FEV1%、RAT)を第1検査手段1で検査、評価してもよい。得られたガス交換機能指標P′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)をZ1軸にプロットとし、第1空間内で被験者の位置を評価する。さらに、第3検査手段3で被験者のガス輸送機能(SPO2)を測定し、X2軸にプロットする。そうすると、X2軸(SPO2)、Y1軸(FEV1%)、Z1軸(P′CO(22))で囲まれる第5空間で、その特性(表2)から被験者の評価ができ、適切な指導(治療)も行える。別途、被験者を運動負荷手段4上で運動負荷をかけて運動させ、第2検査手段3を用いて代謝機能を指標、たとえばV′O2を測定し、Y2軸にプロットする。そうすると、X2軸(SPO2)、Y2軸(V′O2)、Z1軸(P′CO(22))、で囲まれる第7空間で、その特性(表2)から被験者の評価ができ、適切な指導(治療)が行える。同様に、X1軸(RAT)、Y2軸(V′O2)、Z1軸(P′CO(22))で囲まれた第3空間で、その特性から被験者の評価を行うことも可能である。さらに、筋力(握力)の測定を経て、第2空間、第4空間、第6空間、第8空間内での評価を行いうる。
【0046】
被験者から得られる各機能指標に時間依存性があるとき、すなわち運動時の指標を経時的に検査、測定すると、得られる3次元座標表示も点ではなく3次元関数となる。
【0047】
以上のように健康管理ゾーンとRAT、FEV1%の2次元表示とのマッチングから段階的に換気、ガス交換機能、さらにはガス輸送機能、代謝機能を評価して、総合的健康管理を行う方法を詳説してきたが、この方法において機能指標の測定、検査の順序を変更することも可能である。また、被験者の1次呼吸機能の2次元表示がゾーンAまたはBにある場合、3次呼吸機能(筋力以外)の検査を行わなかったが、後者の機能を検査し、3次元座標表示を実施し、評価することも可能であり、これら可能なすべての変更、修正を含む方法も本発明の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法の技術的範囲に包含される。
【0048】
本発明の一部には、特定の代謝機能からみた健康管理の方法も含まれる。本発明によれば、前述の代謝機能指標以外に1日消費推定エネルギーを算出して代謝機能指標のうち最も重要な指標として使用する。
【0049】
本発明以前にも、1日消費推定エネルギーの算出の試みは行われてきた。しかしながら、これは主に1日消費推定エネルギーから1日所要の栄養量を逆算し、それを満たすために摂取する食物を決定する、いわゆる栄養指導に関してであった。
【0050】
このような従来技術によれば、1日消費推定エネルギ(E3)は次式(1)で表される。「図説、運動の仕組みと応用」中野昭一編、医歯薬出版(株)、236頁(1993年)参照。
E=B(1.25R+0.95S)+BΣ(RMR)T …(1)
ただし、E:1日消費推定エネルギー(kcal)
B:基礎代謝量(kcal/時間)
S:睡眠時間
R:24次間−睡眠時間
T:それぞれの生活作業時間
RMR:エネルギー代謝量
【0051】
さらに式(1)中の基礎代謝量Bは、式(2)から求められる。
B=b×a(kcal/時間) …(2)
ただし、a:身長、体重によって概算される
b:性、年齢別基礎代謝基準値
【0052】
したがって、式(1)および式(2)中の既知パラメータ値(たとえば、いろいろな運動のエネルギー代謝率)を用いて被験者の特定の1日消費推定エネルギー(E3)が計算できる。前掲の総説によれば、被験者が30歳の男性(身長168cm、体重62kg、基礎代謝63.1kcal/時間)で下記表1のような生活様式で1日を過ごすとすれば、1日消費推定エネルギ(E3)は、E=63.1kcal/時間(1.25×17時間+0.95×7時間)+63.1kcal/時間(0.3×11時間+2.4×1時間+1.0×1.5時間+1.8×0.5時間+0.2×3時間)=2309.5kcalとなる。
【0053】
【表4】
【0054】
このようにして、1日消費推定エネルギー(E3)を計算することの問題点は、計算式中(たとえば式(1)および式(2))のパラメータに概算値がほとんど用いられているということである。また、被験者を身長、体重から仮想、平均的な人間として仮定しているため、代謝機能の低下している疾病者または代謝機能異常者(肥満症、糖尿病患者等)については、被験者の代謝機能の個体差等が考慮に入れられていない。
【0055】
しかしながら、これと対照的に、本発明の気相系呼吸機能検査システムを用いると、被験者の代謝機能を確実に反映した被験者個人に特有の1日消費エネルギー(E2)をかなりの正確度で測定、算出することができる。被験者をトレッドミルまたは自転車エルゴメータ等の運動手段上で運動させると、被験者のV′O2が実測できることは前述のとおりである。このV′O2値の(l/m)単位は、運動消費カロリーとして4.8〜5.0kcal/mに対応する。したがって、運動手段上で運動を行った被験者の単位時間あたりの運動消費エネルギー(E1)が実測V′O2値から計算できる。
【0056】
そこで、本発明の気相系呼吸機能検査システムを使用して、1日消費推定エネルギー(E2)を求めるには、被験者の1日の生活様式に基づく適当な段階数(たとえば4〜6段階)の運動モードを設定し、各モードについてそれぞれに対して適切な運動負荷量を決定する。一例として、前述の表1に得られたように1日の生活様式を各項目に区分し、各々に対応する運動モードを設定してもよい。次いで、このようにして区分化した1日の生活様式に基づいて、各モードの所要時間を割出す。この作業も表1のように区分化された生活様式に対応する時間として算出できる。ここで全てのモードの合計時間を15分〜30分程度の範囲の時間に設定する。このようにして求めた各運動モード、各モードの所要時間、各モードに対して設定される運動負荷量を本発明の気相系呼吸機能検査システム、特に運動手段11および運動負荷装置13にプログラムする。被験者10が運動手段11上で、このプログラムに従い、運動負荷をかけられたまま運動を所定時間行うと、本発明の気相系呼吸機能検査システムは、前述の原理に基づいて被験者10の呼気中の酸素濃度を分析し、運動消費エネルギー(E1)を演算し、これをディスプレイ19に表示する。すなわち、被験者10のプログラムされた1サイクル(所定時間)の運動が終了すると、被験者が所定時間に消費した運動消費エネルギー(E1)が演算、累積され、前記検査システムに表示されるわけである。
【0057】
このようにして表示された運動消費エネルギー(E1)は、被験者の1日の生活様式を短く設定された所定時間(たとえば、20分間)に凝縮したものであり、その運動消費エネルギー(E1)値を24時間として較正すると、被験者の1日消費推定エネルギー(E2)が算出できる。要するに、本発明に従えば、気相系呼吸機能検査システムを用いて、被験者10に運動負荷にかけることにより、被験者の1日の生活様式をシュミレート(模擬試験)することになる。このようにして求められた1日消費推定エネルギー(E2)は、前記の従来技術で求められた1日消費推定エネルギー(E3)に比較して、被験者の実測代謝機能値に基づいて消費エネルギーが算出されているため、格段と信頼性が向上されており、代謝機能の著しく低下している被験者の個体差が1日消費推定エネルギーに充分反映されている。
【0058】
本発明において、得られた被験者の1日消費推定エネルギー(E2)は、被験者のライフスタイルの管理および健康管理等の保健指導を行う上で重要な指標となる。
【0059】
したがって1日消費推定エネルギー(E2)に基づいて栄養、肥満、運動について、たとえば、被験者にとって適切な栄養所要量を助言できるし、また被験者の栄養摂取量が1日消費推定エネルギー(E2)量よりも過多であれば、そのような被験者に対して適切な運動処方を施すこともできる。
【0060】
換気機能指標およびガス交換機能指標を生活習慣と結びつけて健康管理を行う具体的手法について既に解説したが、ガス輸送機能指標、代謝機能指標を含めて総合的に健康管理を行うには、下記の表5にあるように各呼吸機能指標と生活習慣を関連づけて評価すればよい。
【0061】
【表5】
【0062】
本発明に従う気相系呼吸機能検査システムを用いる被験者の呼吸機能の検査は、たとえば検診方式、ドック方式、精検方式、個別検査方式等で実施し得る。これらの検査方式のうち、どれが被験者にとって適切かは、換気機能指標、ガス交換機能指標を予備的に評価して、医師は被験者に対してそれぞれ適切な検査方式を助言することもできる。
【0063】
本発明の呼吸機能からみた健康管理の方法は、被験者(一個人)の管理のみならず、一群の被験者(集団)の管理にも適用可能であり、その場合、検出・測定データを常法に従って統計処理(重回帰分析、判別分析)すればよい。
【0064】
【実施例】
以下実施例でもって本発明に従う、呼吸機能の2次元座標表示、および3次元座標表示の一部についてより具体的に説明する。
【0065】
1.FV波形の合成
図6は、被験者の呼気のFV曲線を求めるためのスパイロメータなどの電気的構成を示すブロック図である。肺機能が検査されるべき被験者は、たとえば立位で、できるだけ多く吸気し、鼻をおさえ口に管121をくわえて、できるだけ早く呼気を流量計122に供給する。マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路123は、流量計122の出力に応答し、その流量と気量とを時間の経過に伴って演算して記憶し、その結果を陰極線管または液晶表示素子などを用いた目視表示手段125に表示するとともに必要があれば記録紙127に記録する。
【0066】
一方、処理回路123は、流量計122から送られるデータの代わりに、予め記録紙127に描かれた流量気量曲線を、デジタイザなどの読取装置128で読取り数値化されたデータを取込むことも可能である。流量は、たとえば気量10ml毎に、それに要する時間が計測され、流量の計算が行われる。
【0067】
図7は、図6に示される処理回路123の動作を説明するためのフローチャートである。ステップm1からステップm2に移り、流量計122によって測定された流量の時間経過を測定し、次のステップm3において気量と流量とを対応付けてメモリ124にストアする。ステップm4で流量、気量をグラフ化し、ステップm5でこれらを記録紙127上に記録する。ステップm6で前記一連の操作を終了する。
【0068】
図8は、上記のようにして求められたFV曲線の模式的な例であり、流量F(l/秒)を縦軸に、気量V(l)を横軸にとる。流量は、初期の短時間に急速に増大し、流量最大値PEFRに達し、その後は比較的緩やかに最大呼気位の残気量点B(RV)まで低下する。この流量最大値PEFRから点Bまでの範囲が下行脚と呼ばれ、被験者の気道の状態によって曲線101〜曲線104のように変化する。たとえば、曲線104を描く被験者は、鼻アレルギー患者であることが多い。
【0069】
本発明に係るFV波形解析のためのFV波形の合成方法について、図9の別な模式的FV曲線を用いて詳しく説明する。
【0070】
曲線101は、図8と同様、最大吸気から最大呼出するときのFV曲線(ここでFVとも略す)を表す。曲線105は安静吸気(通常の状態)から最大呼出するときのFV曲線(ここでGVとも略す)を表す。曲線101と曲線105の交差点106,107間では、流量はGV>FVであり、交差点106,107において、FVとGVが流量において、ほぼ等しい。曲線101上の点108は、呼気が中断され、流量が急速に低下する点を示す。被験者が息切れを起こしたり、咳込むときなどに該当する。終点109は最大呼気位の残気量を表し、点110は安静呼気位の残気量を表すGVの終点で、横軸上FVの終点109より後方にある。
【0071】
したがって、何らかの理由でFVが図9に示すように中断され、滑らかな曲線を描かないとき、GVがあれば、被験者に再度の呼気を強いることなく、FV波形を合成できる。すなわち、曲線101のPEFR位111より点107までの間はFVをトレースし、点107から点108の間はFV,GVのいずれかをトレースし、そして点108から点110の間はGVをトレースする。
【0072】
これら一連の作業は、図9のようなチャート上、FVおよびGVを各々表示し、マニアルでトレースし、理想的な合成FV曲線を描き出すこともできるが、個別に測定したFVおよびGVのためのデータをメモリ124に記憶し、それらを処理回路123で再度演算した後、合成したFV曲線を画面または記録紙等の目視表示手段125に表示することが都合がよい。また既に記録紙に描かれた一方の曲線を読取装置128で読取り、メモリ124にある他方の曲線のデータと合成し、同様に合成FV曲線を得ることも考えられる。
【0073】
本発明に従うFV波形合成方法の利点は、安静呼吸からのGV曲線が得られておれば、最大呼吸からFV曲線を得るための流量、気量、測定中、測定が中断失敗しても、合成FV曲線が描けるところにある。FV曲線を得るために、測定をわざわざ繰返すことなく、FVより被験者が容易に得られるGVからFV曲線が合成できる。したがって、最大呼出測定の回数を少なくすることができ、老人、病人の負担を軽減する。また必ずしも呼出を、最後まで行う必要がなく、測定時間の短縮も望める。
【0074】
実測したFV,GV曲線の一例を図10に示す。図中、XはFVの急速減衰領域でのGVとの交差点で、図9の点108に対応する。YはGVの終点、最大呼気位を表し、図9の点110に対応する。この例では、図9の場合と全く同様にFVに、XにおいてGVを繋げば、合成FV曲線を得ることができる。
【0075】
さらに、合成したFV曲線を基にしてdV(気量)/dF(流量)指標を演算、プロットすると、たとえば図11に示すように、dV/dF分布曲線112を得る。図11は、dV/dF曲線112、実測FV曲線101、近似した2次曲線113(後述)を表す。図10,11に表示されている曲線例は、それぞれ表6、表7に示す実測データに由来する。
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
前記のように、FV波形の合成、さらに解析を行い、各種パラメータ(たとえばdV/dF)を算出し、肺機能を評価、機能不全の要因の同定を通して、究極的には、ライフスタイルを含めた健康管理が可能となる。以下に2,3の実施の形態を挙げてこの概念に基づく本発明の実施について説明する。
【0079】
2.FV波形の2次曲線への近似
図8において、FV曲線の下行脚を示す曲線101〜104は次式(3)を用いて2次曲線に近似することができる。
y = a0 + a1・X + a2・x2 …(3)
【0080】
式(3)において、yは流量であり、xは相対気量Rであり、a0は定数である。式中の定数項a0、1次項の係数a1,2次項の係数a2をそれぞれ計算し、a1を縦軸、a2を横軸としてプロットすれば、図12のようになる。図中、ライン114,115は下記のデータ(表8)に基づくものである。ライン116は気管支喘息発作時の直線を示す。
【0081】
【表8】
【0082】
a1,a2を求める演算を図13に従い、以下に略述する。図13は図6に示される処理回路123を係数決定に応用する場合の動作を説明するためのフローチャートである。ステップn1からステップn2に移り、流量計122によって測定された流量の時間経過を測定し、次のステップn3において気量と流量とを対応付けてメモリ124にストアする。処理回路123はメモリ124にストアされている流量気量曲線の下行脚のピーク位置を検出し、そのときの最大流量PEFRおよびそのときの気量V1(図8参照)を求める。ステップn5では、流量気量曲線の気量に関して、相対気量または絶対気量のいずれかの選択をする。相対気量Rは、式(4)で示される。
R = VCX/VC1 …(4)
【0083】
ここでVC1は、図8において下行脚のピーク時の気量V1から最大呼気位(RV位)までの気量であり、
VC1 = VC−V1 …(5)
VCXは、それらの点A(PEFR位),B(RV位)間におけるRV位からさかのぼる気量を示す。したがって前述の相対気量は、下行脚のピーク時の気量VC1を1.0とし、RV位を零としたときの気量の度合いを表している。このような相対気量を採用することによって、多数の被験者相互間の下行脚の評価を相対的に行うことができる。絶対気量というのは、各被験者固有の気量であって、絶対気量に基づく演算をすることによって、各被験者毎の評価を行うことができる。
【0084】
このようにして相対気量Rと、それに対応する流量との組合わせを求めた後、ステップn6において、求められた相対気量と流量とから、式(3)の2次式のあてはめを行う。
【0085】
ステップn7では、下行脚にあてはめられた2次式の1次項の係数a1と2次項の係数a2とを演算した結果の値を採用して、次のステップn8では、図12に示される表示面上の座標位置+(a2,a1)を表示する。こうしてステップn9では一連の動作を終了する。なお、ステップn5で絶対気量が選択されたときには、式(3)のxは、絶対気量となる。
【0086】
このようにして求めた被験者の2次式曲線を実測のFV曲線と図11中で対比してある。図中、ライン113が計算された2次式曲線を示し、曲線101が実測曲線である。
【0087】
なお、10次式まで高次の回帰式を求めて下行脚にあてはめることが可能であるが、2次回帰式であてはめても、たとえば6次回帰式であてはめても、近似度にほとんど差がないので、実務上、簡便な2次式で近似することが好ましい。
【0088】
3.R AT の算出
次に、係数勾配指数(RAT)を算出する。前記のように式(3)の1次項係数a1と2次項係数a2を計算し、2次元座標軸にa1を縦軸、a2を横軸として表せば図14のようになる。原点O点P(a2,a1)を結ぶ直線OPが横軸(a2軸)となす角をθとすれば
θ = tan−1(a1/a2) …(6)
となる。θを度で表し、a1とa2の正負によって異なる次の式で表されたものを係数勾配指数(RAT)とする。
RAT=θ°/180° (a1>0,a2>0:第I象限)…(7)
RAT=1+(θ°/180°) (a1>0,a2<0:第II象限)…(8)
RAT=−(1−θ°/180°) (a1<0,a2<0:第III象限)…(9)
RAT=θ°/180° (a1<0,a2>0:第IV象限)…(10)
【0089】
1秒率FEV1.0%(FEVとも略する)は、できるだけ多くを呼気し、これをできるだけ速やかに呼気として排出したときの最初の1秒間の呼気量と全呼気量(努力肺活量)との比(百分率)で表示されるので、図6で説明したスパイロメータによって求めることができる。パイロメーターからのデータに基づいて、FEV,RATを求める演算を図15に従い、以下に略述する。
【0090】
図15は、図6に示されるFEV,RATに関する処理回路123の動作を説明するためのフローチャートである。ステップp1でスタートすると、処理回路123内の時計がスタートし、同時に流量計122から呼気10ml毎に信号が送られてくる。ステップp2で気量と時間とから10ml毎の流量を計算し、ステップp3で気量と流量とをメモリ124に記憶する。ステップp4で1秒経過したかどうかを判断し、1秒が経過しておれば、ステップp5でその時までの気量を1秒量として計算し、ステップp6でメモリ124に記憶する。ステップp9で流量が0になったかどうかを判断し、流量が0になっておれば気量が最大呼気位の残量となったと判断し、ステップp10で全呼気量(努力肺活量)を計算し、ステップp11でメモリ124に記憶する。ステップp9で流量が0にならなければ流量が0になるまでステップp7とステップp8とを繰返す。ステップp12でメモリ124に記憶されている流量と気量とからFV曲線を求め、ステップp13でこれを記録紙127上に記録する。ステップp14でFV曲線を2次曲線で近似させ、第1次項と第2次項との係数を求め、さらにRATを求め、ステップp15でこれをメモリ24に記憶する。ステップp16で記憶されている1秒量と努力肺活量とからFEVを求める。ステップp17でこのFEVとRATとをグラフ化し、ステップp18でこれを記録紙127上に記録する。ステップp19で一連の操作を終了する。なお、目視表示手段125には、画面を2分して、一方にFV曲線が、他方にはFEVとRATとの関係を示すグラフが表示され、切換スイッチにより、いずれか一方を拡大表示もできる。
【0091】
4.FEVとR AT との相関関係
こうして求められたFEVとRATとを縦軸、横軸として表示したものが、図16である。この図では、FEVとして努力肺活量の代わりに予測肺活量VCPを用いてあるので、FEV(VCP)として表す。ここで予測肺活量とは実測肺活量とは異なり、被験者の年令、身長から予測した肺活量である。図16中、ライン117は非喫煙者で健康な被験者のものを示し、ライン118,119は非喫煙者で気導閉塞を起こしやすい被験者のものを示す。特に、ライン118は、上気道を主体に閉塞を起こしやすいタイプのものである。一般に、各ラインは左下がりで左下に行くに従って、気道閉塞性の病変が悪化する傾向を示す。さらに、曲線SAは健康人(すなわち、気道変化を起こしにくい人)が喫煙をした場合に該当し、曲線SBは、気道閉塞を起こしやすい人が喫煙をした場合に該当する。
【0092】
第2象眼下方(図16左下)の領域は病変が進行しており、入院して治療が必要な状態である。
【0093】
図16に表されるRATとFEV(VCp)の関係をプロットするのに使用したデータの一例を表9に示す。
【0094】
【表9】
【0095】
縦軸としてFEV(VCp)の代わりにFEV(g)(努力肺活量)を採用し、またはFEV(t)(吸気肺活量)を採用すると、両者ともに図17のようになる。図中、ライン130,131および132は図16においてライン117,118,119にそれぞれ対応する。したがってライン120は非喫煙者で健康な被験者のものを表す。図17に表されるRATとFEV(g)またはFEV(t)との関係をプロットするのに使用したデータの例を表10に示す。
【0096】
【表10】
【0097】
図15において、1秒量としてFEV(g),FEV(t),FEV(VCp)とすべて計算し、ステップl6でメモリに記憶しておけば、随意に各々のFEV,RATグラフを得られる。これはたとえばファンクションキーを押すことにより、FEV(g)→FEV(t)→FEV(VCp)とサイクルするように設定できる。したがって、所望の1秒率(FEV)とRATの関係がグラフ表示でき、詳細な評価、解析が可能である。
【0098】
5.換気機能の評価
本発明に従うライフスタイル管理のためのFEV,RATの相関関係の利用について、さらに説明する。
【0099】
前述のように、本発明の構成に従って、FEV(たとえばFEV(g))とRATとの関係を再度グラフ表示する。図4参照。これ自身は、前述のように気導閉塞性、気道過敏性の評価に有用であり、被験者の病変管理を可能にする。
【0100】
さらに、FEVおよびRATを基準にして、ゾーン化する。ライン20の右上方領域とRAT≧0.2以上から成るゾーンをゾーンAと定義する。このゾーンにある被験者は健康状態にある。FEV80以上、RAT≧0のゾーンの内ゾーンAを除外した部分をゾーンBと定義する。このゾーンにある被験者は、ライフスタイルの変更をした方がよい。FEV70以上80以下、かつRAT≧0のゾーンとFEV70以上、RAT≦0のゾーンを併せ部分をゾーンCと定義する。このゾーンにある被験者は、疾病のスクリーニングが必要である。FEV55以上70以下のゾーンをゾーンD1と定義する。このゾーンにある被験者は疾病の管理を要する。FEV40以上55以下のゾーン,FEV40以下のゾーンを夫々をゾーンD2,D3と定義する。このゾーンにある被験者は入院、通院を要するし、救急処置が必要な場合もある。このようにライフスタイル管理を含めた換気能力評価ができる。
【0101】
6.換気機能・ガス交換機能の総合的評価
次いで、本発明に従うライフスタイル管理による健康管理のための換気機能、ガス交換機能(能力とも呼ぶ)の総合評価について説明する。
【0102】
前記の換気機能の評価はRATとFEV(換気機能)との関係からライフスタイル管理を目指したものであるが、それにガス交換機能(P′co,D′LCO,D′LCO/V′A,P′co(22),D′Lco(22),D′LCO/V′A(22),SPO2)をパラメータとして加え3次元的に評価すると、呼吸機能検査指標と健康管理がより論理的に関連づけられる。
【0103】
図18は、肺のガス交換機能の指標としてのCO肺拡散能力D′LCOまたはDLCOと、そのときの肺胞気量VAまたはHeの稀釈からVA′とを求めて、値D′LCO/VA′またはDLCO/VAを演算して求めるための手法を説明するための図である。
【0104】
CO肺拡散能力D′LCOまたはDLCOの測定方法は、1回呼吸(single breath)法が採用され、これは、息こらえ(breath holding)法ともいわれている。被験者は、最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に混合ガスを吸入し、この位置で吸気の始めから正確に10秒間の呼吸停止をさせる。その後、急速に最大呼出させ、最初の750mLを捨てて、残りの呼気ガスをサンプルバッグ39(次の図19参照)に集めてガス分析を行う。前記混合ガスは、0.3%CO、10%He、20%O2および70%N2の4者混合ガスである。
【0105】
COは肺でとられるのでFACOは時間とともに減少するが、Heは肺でとられないので時間によって変わらない。呼出He濃度をFAHeとすると、t=0におけるFACO(0)は
FACO(0)=FICO・FAHe/FIHe …(11)
として求められる。定義より
DLCO=V″CO/PACO …(12)
である。V″COはVCOの1階微分である。この式に
V″CO=−dVCO(t)/dt PACO=PACO(t) …(13)
を代入すると
dVCO(t)/dt=−DLCO・PACO(t) …(14)
となる。ここで、
VCO(t)=FACO(t)・VA(t) …(15)
であるから、
dVCO(t)/dt=FACO(t)・dVA(t)/dt +VA(t)・dFACO(t)/dt …(16)
であり、
VA(t)=一定 …(17)
なら、
dVA(t)/dt=0 …(18)
であるから
dVCO(t)/dt=VA・dFACO(t)/dt …(19)
また
PACO(t)=(PB−47)FACO(t) …(20)
この2つを上式に代入すると
【0106】
【数1】
【0107】
これがKroghの式である。tを秒にすると、
【0108】
【数2】
【0109】
FACO(0)に上式(10)を代入すると、
【0110】
【数3】
【0111】
VAの単位はmlSTPDで、t=10秒として、DLCO(ml・min−1・torr−1)を計算で求めることができる。
【0112】
DLCOは式(23)で計算されるが、VAの求め方に2通りある。第1の求め方は、DLCO測定時の吸入気量(VI)に予め測定しておいた残気量(RV)を加えて、肺胞気量(VA)を求める。通常RV位からTLC位までの吸入なのでVIは吸気肺活量に、VAは全肺気量(TLC)にほぼ等しい値となる。第2の求め方は、DLCOの測定時のHeの稀釈から次式でVAを測定する方法がある。この場合には通常のVAと区別するために、VA′で表すのが一般的である。
【0113】
FIHe(VI−VD)=FAHe・VA′ …(24)
の関係が成立する。これより、
VA′=FIHe(VI−VD)/FAHe …(25)
となる。この場合VIに比べるとVDはきわめて小さいので、
VI−VD≒VI …(26)
とすることができる。
VA′=VI・FIHe/FAHe …(27)
でVA′を求める。V′を式(23)のVAに代入した場合D′LCOとして、通常のDLCOと区別する。
【0114】
一酸化炭素較差CO分圧P′COおよびP′co(22)が次式(28),(29)で示される。
【0115】
【数4】
【0116】
P′CO(22)=(P′co/BMI)×22 …(29)
前式中、BMIはBody Mass Indexの略で肥満度を表し、体重(kg)/身長(m)2で算出される指標である。したがってP′co(22)は標準体重基準化P′coとも呼ばれる。
【0117】
同様にD′LCO,D′LCO/VAも次式(30),(31)に従い、標準体重基準化することができる。
D′LCO(22)=(D′LCO/BMI)×22 …(30)
D′LCO/V′A(22)=(D′LCO/V′A/BMI)×22 …(31)
D′LCO(22),D′LCO/V′A(22)は夫々標準体重基準化D′LCO(22),D′LCO/V′A(22)とも呼ばれる。
【0118】
式(28)、肺胞におけるガス交換状態の推移を表し、単位時間当りの一酸化炭素の分圧差で、単位はmTorr/secである。式(28)の第1項(0.30/FICO)は、吸気ガス中の一酸化炭素濃度を0.30(%)に補正する項である。第2項(PB−47)は、肺中における全乾ガスの圧力である。第3項の前半{FICO×FAHe/FIHe}は、初期(t=0)における肺中の一酸化炭素の濃度であり、FACOは、終期における肺中の一酸化炭素の濃度である。これらに(PB−47)を掛けたものが肺中の初期と終期との一酸化炭素の分圧である。第4項の分子10は、圧力をTorrからmTorr(ミリトール)にするために1000倍し、ガス濃度が%表示であるので100で割ったもの、すなわち1000/100=10である。
【0119】
前述のように、式(29)は標準体重に基準化した単位時間当たりの一酸化炭素の分圧差で単位はmTorr/secである。
【0120】
式(29)の第1項は単位BMI当たりのP′coで身長(m)と体重(kg)で補正して、他と比較できる利点を有する。
【0121】
図19は、本発明の一部を構成する換気機能、ガス交換機能の測定装置の全体の系統図である。被験者の換気機能およびガス交換機能の同時的な、したがって同一検査体系での測定を行うために、被験者は口に管121をくわえる。混合ガス源140からは第1切換え弁141に前記混合ガスを供給する。第1切換え弁141には呼気の流量を計測する流量計122が接続され、その流量計122の出力は処理回路123に与えられ、流量と気量とが時間経過に伴ってサンプリングされて読取られる。流量計122からの呼気は、管路142から第2切換え弁143に導かれ、この第2切換え弁143は、管路42からの呼気を管路144から大気放散し、または管路145を経て可撓性のあるサンプリングバッグ139に導く。バッグ139内の呼気のCO濃度は、CO濃度検出手段146によって検出され、またHeの濃度はHe濃度検出手段147によって検出され、それらの各濃度検出手段146,147の出力は処理回路123に与えられる。
【0122】
図20は、図19に示される処理回路123の動作を説明するためのフローチャートである。ステップo1からステップo2に移り、第1切換え弁141を第1位置141aから第2位置141bに切換え、被験者は管121を口にくわえた状態で混合ガス源140からの混合ガスを最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入し、この位置で吸気の始めから正確に10秒間の呼吸停止をさせる。次に、ステップo3において第1切換え弁141を第1位置141aに切換え、このとき第2切換え弁143は第1位置143aとしておき、急速に最大呼出させる。このときステップo4では、流量計122による呼気の流量の時間経過を測定し、メモリ124にストアする。ステップo5において呼気の最初から750mLを測定し、その750mL分の呼気は、第2切換え弁143の第1位置143aから管路144を経て大気放散される。次のステップo6では、第2切換え弁143を第2位置143bに切換え、ステップo7では、残りの呼気ガスをバッグ139に管路145を経て1000mLを貯留し、そのときにおいてもまたステップo8では、流量計122の計測値を時間経過に伴って測定してメモリ124にストアしておく。ステップo9では、ステップo7において1000mLの計測後に、第1位置143aに切換えて、残りの呼気を大気放散させ、このときにおいてもまた流量計122の計測値は処理回路123からメモリ124にストアされる。こうして気量と流量とが対応づけてメモリ124にストアされることになる。
【0123】
処理回路123には陰極線管または液晶表示素子などを用いた目視表示手段125が備えられ、その表示面126には、前述の表示図面などを表示することができる。また記録紙127に、既に測定してある流量気量曲線が描かれているときには、その記録紙127を、光学的に読取る読取手段128に供給してその記録紙127に記録されている流量気量曲線を読取り、メモリ124にストアすることもまた可能である。
【0124】
処理回路123は、ステップo10でメモリ124にストアされている流量気量曲線の下行脚のピーク位置を検出し、そのときの最大流量PEFRおよびそのときの気量V1を求める。ステップo11では、流量気量曲線の気量に関して、相対気量または絶対気量のいずれかの選択をする。
【0125】
このようにして相対気量Rと、それに対応する流量との組合わせを求めた後、ステップo12において、求められた相対気量と流量とから、2次式のあてはめを行う。
【0126】
ステップo13では、下行脚にあてはめられた2次式の1次項の係数a1と2次項の係数a2とを演算した結果の値を採用して、係数勾配指数RATを求める。次のステップo14に従って、1秒率FEVを計算する。ステップo11で絶対気量が選択されたときには、2次式変数xは、絶対気量となる。
【0127】
ステップo15では、DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)等パラメータの演算を行い、ステップo16では、図21に示されるような3次元表示を行う。このようにして、図20のステップを用いて時系列的な換気機能とガス交換機能とを測定することによって、図21に示されるように、3次元の表示を行うことができる。このような図21に示される3次元表示は、表示手段125によって達成される。
【0128】
FEV−RATの表示と同様にDLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)をステップo15でメモリに記憶しておけば、随意にそれぞれをZ軸とする3次元表示グラフが得られる。これは、たとえばファンクションキーを押すことにより、DLCO→DLCO/VA→D′LCO/V′A→P′CO(22)→D′LCO/V′A(22)とサイクルするように設定する。
【0129】
本発明の好ましい実施の形態によれば、図20のステップo16で各種パラメータを3次元表示する前にFEVとRATをまず2次元表示して、前記のように被験者の属するゾーンを同定する。ゾーンにより、3次元表示の際のZ軸パラメータとして DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),およびD′LCO/V′A(22)の群の中から最も最適なガス交換機能指標を選び、ステップo16で3次元表示を実施する。
【0130】
したがって、ステップo15で2次元表示の結果から特定のパラメータのみを演算するような構成とすることができるし、またすべてのパラメータを計算後、メモリ124にストアし、所望のZ軸パラメータのみを取出し、3次元表示を完成するような構成とすることができる。いずれにしろ被験者の所属する健康グループにより、所望のZ軸パラメータ(ガス交換機能指標)を選択できる。
【0131】
以上、本発明の方法を実施例を用いて説明したが、本発明の範囲は開示した具体例に限定されない。
【0132】
本発明は、次の実施の形態が可能である。本発明によれば、被験者の換気機能指標および/またはガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標を測定、演算、表示する第2検査手段と、第2検査手段に接続され、被験者がその上で運動する運動負荷手段と、被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段とを含むことを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理のための気相系呼吸機能検査システムが提供される。
【0133】
前記気相系呼吸機能検査システムは、下記の各手段のうち1つ以上をさらに含むことができる。
【0134】
(1)被験者の換気機能指標を測定、演算、解析、表示する第4検査手段;
(2)被験者の筋力を測定する筋力測定手段;
(3)被験者の運動時の血圧を測定する血圧測定手段。
【0135】
好ましくは、被験者の筋力が握力であることを特徴とする。ここで好ましくは、換気機能指標がFEV1%またはRATであり、ガス交換指標がDLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),およびD′LCO/V′A(22)から成る群より選ばれる1種以上であり、代謝機能指標がV′O2,V′CO2,ATおよびRから成る群より選ばれる1種以上であり、そしてガス輸送機能がSPO2である。
【0136】
さらに好ましくは、ガス交換指標が、P′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)である。
【0137】
好ましくは、前記気相系呼吸機能検査システムにおいて、運動負荷手段がトレッドミル負荷装置またはエルゴメータ負荷装置である。
【0138】
また本発明によれば、(a)3次元直交座標系のX軸正方向を第1換気機能指標とし、X軸負方向をガス輸送機能指標とし、Y軸正方向を第2換気機能指標とし、Y軸負方向を代謝機能指標とし、Z軸正方向をガス交換指標とし、Z軸負方向を筋力として呼吸機能の関わる3次元空間を形成すること、(b)前記3次元空間を8分割し、X軸正、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第1空間とし、X軸正、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第2空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第3空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第4空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第5空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第6空間とし、X軸負、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第7空間とし、そしてX軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第8空間とすること、(c)被験者の呼気データから、第1換気機能指標、第2換気機能指標、ガス交換指標、ガス輸送機能指標、代謝機能指標を各々求め、さらに被験者の筋力を測定して前記指標および筋力値を前記3次元直交座標系に3次元座標表示し、被験者の属する空間を同定すること、そして(d)3次元座標表示された結果および前記被験者の属する空間の特性から被験者が呼吸機能を総合的に評価する以上の(a)〜(d)のステップから成ることを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理の方法が提供される。
【0139】
ここで好ましくは、第1換気機能指標がRAT、第2換気機能指標がFEV1%、ガス交換機能指標がDLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22)およびD′LCO/V′A(22)から成る群より選ばれ、代謝機能指標がV′O2,V′CO2,ATおよびRから成る群より選ばれ、ガス輸送機能指標がSPO2である。
【0140】
さらに好ましくは、ガス交換機能指標がP′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)であり、代謝機能指標がV′O2である。好ましくは、被験者の筋力が握力である。
【0141】
本発明に従えば、前記の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法において、前記(c)ステップの代わりに、(C′1)被験者の呼気データからRAT,FEV1%を求めさらに、被験者の筋力を測定し、前記指標をX軸−Y軸平面に2次元表示し、そして(C′2)前記2次元座標面上に予め設定した(A)健康、(B)ライフスタイル管理、(C)スクリーニングおよび(D1−3)疾病管理の各ゾーンから成る健康管理ゾーンとステップ(C′1)で得られる2次元座標表示のマッチングを行い、その結果が(A)ゾーンであるとき、前記指標および筋力値を第2空間に3次元座標表示すること、以上の(C′1)および(C′2)から成るステップを実行することができる。
【0142】
本発明に従えば、前記の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法において、前記(c)ステップの代わりに、(C″1)被験者の呼気データからRAT,FEV1%を求めさらに、被験者の筋力を測定し、前記指標をX軸−Y軸平面に2次元表示し、そして(C″2)前記2次元座標面上に予め設定した(A)健康、(B)ライフスタイル管理、(C)スクリ−ニングおよび(D1−3)疾病管理の各ゾーンから成る健康管理ゾーンとステップ(C′′′1)の2次元座標表示のマッチングを行い、その結果が(B)ゾーンであるとき、さらに被験者の呼気データからP′CO(22)および/またはD′LCO/V′A(22)を求め、いずれか一方の指標を前記指標と合わせて第1空間に3次元座標表示すること、以上の(C″1)および(C″2)から成るステップを実行することができる。
【0143】
前記(C″2)ステップで、さらに筋力値を第2空間に3次元座標表示することができる。
【0144】
本発明に従えば、前記の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法において、前記(C)ステップの代わりに、(C′′′1)被験者の呼気データからRAT,FEV1%を求めさらに、被験者の筋力を測定し、前記指標をX軸−Y軸平面に2次元表示し、そして(C′′′2)前記2次元座標面上に予め設定した(A)健康、(B)ライフスタイル管理、(C)スクリ−ニングおよび(D1−3)疾病管理の各ゾーンから成る健康管理ゾーンとステップ(C′′′1)の2次元座標表示のマッチングを行い、その結果が(C)または(D1−3)ゾーンであるとき、さらに被験者の呼気データからP′CO(22)および/またはD′LCO/V′A(22)、ならびにV′O2および/またはAT、加えてSPO2を求め、各々の指標を(b)ステップで形成した対応する空間に3次元座標表示すること、以上の(C′′′1)および(C′′′2)から成るステップを実行することができる。
【0145】
前記(C′′′2)ステップでさらに筋力値を第2空間、第4空間、第6空間、第8空間の1つ以上の空間に3次元座標表示することもできる。
【0146】
また本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)代謝機能からみた健康管理の方法であって、(a)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定し、(b)設定された運動モードを運動負荷量に換算し、(c)被験者を運動負荷手段を備える運動手段の上で、前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させるとともに、被験者の口から呼気を採取し、(d)呼気中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度に基づいてV′O2を演算し、(e)V′O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求め、(f)消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算し、そして(g)1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を被験者に与え被験者の健康管理を行うことを特徴とする代謝機能からみた健康管理の方法。
【0147】
(2)(a)3次元直交座標系のX軸正方向を第1換気機能指標とし、X軸負方向をガス輸送機能指標とし、Y軸正方向を第2換気機能指標とし、Y軸負方向を代謝機能指標V′O2とし、Z軸正方向をガス交換指標とし、Z軸負方向を筋力として呼吸機能の関わる3次元空間を形成すること、(b)前記3次元空間を8分割し、X軸正、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第1空間とし、X軸正、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第2空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第3空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第4空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第5空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第6空間とし、X軸負、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第7空間とし、そしてX軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第8空間とすること、(c)総合的健康管理のための気相系呼吸機能検査システムを準備し、この気相系呼吸機能検査システムは、被験者の第1換気機能指標およびガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標V′O2を測定、演算、表示する第2検査手段と、第2検査手段に接続され、被験者がその上で運動する運動負荷手段と、被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段と、被験者の第2換気機能指標を測定、演算、解析、表示する第4検査手段と、被験者の筋力を測定する筋力測定手段とを含み、(d)被験者の呼気データから、第1検査手段による第1換気機能指標、第4検査手段による第2換気機能指標、第1検査手段によるガス交換指標、第3検査手段によるガス輸送機能指標、第2検査手段による代謝機能指標V′O2を各々求め、さらに被験者の筋力を筋力測定手段によって測定して前記指標および筋力値を前記3次元直交座標系に3次元座標表示し、被験者の属する空間を同定すること、そして(e)3次元座標表示された結果および前記被験者の属する空間の特性から被験者の呼吸機能を総合的に評価するとともに、(f)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定し、(g)設定された運動モードを運動負荷量に換算し、(h)被験者を運動負荷手段を備える運動手段の上で、前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させるとともに、被験者の口から呼気を採取し、(i)第2検査手段によって呼気中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度に基づいてV′O2を演算し、(j)V′O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求め、(k)消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算し、そして(l)1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を被験者に与え被験者の健康管理を行うこと特徴とする健康管理の方法。
【0148】
本明細書中用いる「呼吸機能」とは大別して、「換気機能」、「ガス交換機能」、「ガス輸送機能」、「代謝機能」に分類される。「換気機能」の指標としては、FV(最大流量気流量曲線)解析およびVT(最大努力性呼出曲線)解析を通して得られる%VC,FEV1%(1秒率),RAT(係数勾配指数),dV/dF等が挙げられる。
【0149】
「ガス交換機能」の指標としては、DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)等が挙げられる。「ガス輸送機能」の指標としては、SPO2が挙げられる。「代謝機能」の指標としては、V′O2,V′CO2,R(ガス交換比、V′CO2/V′O2),AT、さらに運動消費エネルギー(E1)および1日消費推定エネルギー(E2)等が挙げられる。
【0150】
「呼吸機能」における前記の各機能の相関関係は、図1に示されるとおりである。
【0151】
さらに、具体的に「換気機能」は、素因変化(気道過敏性)、形態的変化(気道および肺胞)、過膨張、末梢気道閉塞等の健康管理上の問題点に関連がある。
【0152】
「ガス交換機能」は、総合ガス交換能力を表し、末梢組織における酸素消費要求度と関連がある。「ガス輸送機能」は、末梢組織へのO2の輸送性と関連がある。「代謝機能」は酸素消費量、運動(活動)消費エネルギーと関連がある。
【0153】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、被験者の呼気データに基づき、呼吸機能の空間概念化を図り、各呼吸機能指標(換気機能指標、ガス交換機能指標、ガス輸送機能指標、代謝機能指標)と生活習慣を関連づけて各機能を総合的に評価し、呼吸機能からみた健康管理ができる。
【0154】
さらに本発明によれば、被験者の呼気データに基づき、代謝機能指標を求めるとともに運動消費エネルギー(E1)を算出し、1日消費推定エネルギー(E2)を得るようにしたので、このようにして求められた1日消費推定エネルギー(E2)は従来技術の概算的な1日消費推定エネルギー(E3)と異なって、被験者の代謝機能を正確に反映し、したがってこの値を用いて被験者の栄養、肥満、運動等を含めた健康指導およびライフスタイル管理のための指導を的確に行うことが可能となる。
【0155】
さらに特定的には、中高年の酸素消費能力の改善を図り、代謝機能を含めた呼吸器の健康管理ができ、さらにライフスタイル管理もできる。
【0156】
加えて、アレルギー素因に基づく形態変化、酸素消費供給能について若年者の初期値を把握し、健康危険度の評価が可能となる。
【0157】
さらに本発明は、地域医師会、地域産業保健センター、市町村保健センターを母体とする集団(地域、職域、医療集団)の健康管理活動(健康教育、健康管理、プライマリケア、集団管理)の促進に寄与する。その結果、代謝を含めた呼吸器の健康管理により、中高年者ないしは高齢者に対して疾病予防とともに健康の維持増進に大きく貢献ができ、ひいては国民医療費の削減も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】呼吸機能における換気機能、代謝機能等各機能の相関関係を表す図である。
【図2】本発明の気相系呼吸機能検査システムの主要部のブロックダイヤグラムである。
【図3】V′O2,V′CO2測定装置の一例のブロックダイヤグラムである。
【図4】FEV1%(g)とRATの相関関係図をゾーン化して表示した図である。
【図5】呼吸機能と生活習慣との関係を空間概念化した模式図である。
【図6】FV曲線を得るための装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す処理回路123を作動させFV曲線を表示するときのフローチャートである。
【図8】被験者の呼気のFV曲線を模式的に示す図である。
【図9】本発明に従い、FV曲線を合成する模式図である。
【図10】FV,GV両曲線の一例を示す図である。
【図11】本発明に従いFV波形の解析、合成を行った一例を表示した図である。
【図12】本発明に従う2次回帰式の係数相関図(a1,a2)を示す図である。
【図13】本発明に従って、処理回路123を作動させa1,a2を演算、表示するときのフローチャートである。
【図14】本発明に従う2次曲線の1次項の係数a1と2次項の係数a2と係数勾配指数RATの関係を表す図である。
【図15】本発明に従って、処理回路123を作動させa1,a2,RATを演算、表示するときのフローチャートである。
【図16】本発明に従って、FEV(VCp)とRATTの関係を示す一例を表示した図である。
【図17】本発明に従ってFEV(g)またはFEV(t)とRATの関係を表す一例を表示した図である。
【図18】本発明に従って、1回呼吸法を説明するための模式図である。
【図19】本発明に従う呼吸機能、ガス交換機能測定装置の全体の構成を示す系統図である。
【図20】本発明に従って、処理回路123を作動させ、RAT,FEV,DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)を演算、さらに3次元表示するときのフローチャートである。
【図21】本発明に従って、換気機能指標とガス交換機能指標を3次元表示した図である。
【符号の説明】
11 運動手段
12 マウスピース
13 運動負荷器
14 サンプリングチューブ
15 フローセンサ
16 赤外線式CO2センサ
17 ジルコニア式O2センサ
18 マイクロコンピュータ
19 ディスプレイ
20 被験者
21 V′O2,V′CO2測定装置
121 管
122 流量系統
123 処理回路
124 メモリ
125 表示手段
126 表示面
127 記録紙
128 読取装置
140 混合ガス源
141 第1切換手段
143 第2切換手段
146 CO濃度検出手段
147 He濃度検出手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、公衆衛生の分野に属し、特に呼吸機能からみた総合的健康管理装置のための気相系呼吸機能検査システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢者人口が21世紀にはさらに増加し、人口の25%を越すと推定され、高齢者の疾病もさらに増加し、寝たきり老人が100万を越すと予想されるため、高齢者に対する保健、医療、福祉の対策が迫られている。したがって、21世紀における高齢者の健康の維持増進を考えるとき、20世紀末から21世紀初頭にかけては、特に中高年者を主体として、ガス交換・酸素消費を含めた呼吸機能(換気、ガス交換、ガス輸送、代謝)からみた健康の維持増進を図る必要がある。
【0003】
従来、呼吸器の分野で進められてきた呼吸機能からみた健康管理として塵肺における対策(職業病対策)があるが、これは呼吸機能障害の進展予防を主体とするものであり、健康の維持増進を主体とするものではない。
【0004】
現在、換気能力、ガス交換機能、呼気ガスを単独で測定する検査機器は、臨床領域では普及している。また、健康・体力づくりのための体力測定システムも開発されている。
【0005】
本発明者は、換気能力の指標であるFEV1%(1秒率とも呼ぶ)とRAT(係数勾配指数とも呼ぶ)とを2次元座標に表示し、その表示位置から気道過敏性と気道閉塞性を総合的に、同時に、正確に評価する方法および装置を完成した。特開平7−222732に、その方法および装置が開示されている。
【0006】
さらに、本発明者は、FEV1%とRATとを2次元座標表示し、その2次元座標上に予め設定した健康管理ゾーンと、座標表示のマッチングから気道閉塞にかかわるライフスタイル管理のための換気能力を評価する方法を見いだした(特願平6−317272)。
【0007】
本発明者は、別途、最大呼気流量気量曲線の下行脚を定量的に表し、ガス交換機能を指標であるCO肺拡散能力と関連づけて3次元表示し、評価できるような換気、ガス交換機能の総合的方法およびそのための立体的表示装置を完成した。特開平6−205761にその方法および装置が開示されている。
【0008】
さらに、本発明者は、FEV1%とRATを求め、呼気データを得る検査体系と実質的に同一の検査体系データからガス交換機能の指標であるP′CO,P′CO(22),D′LCO,D′LCO(22),D′LCO/V′A,D′LCO/V′A(22)およびSPO2を求め、または演算して、これらの指標を3次元座標に立体表示し、ライフスタイル管理のための換気、ガス交換機能を総合的評価する方法および装置を完成した。特願平6−317273にその方法および装置が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように換気能力、ガス交換機能等の呼吸機能を評価してライフスタイル管理に役立てる手法は確立されつつある。しかしながら、換気機能、ガス交換機能に加えて、代謝機能をも評価し、総合的に健康管理を行うシステムおよび方法は未だ知られていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、呼吸機能(特に代謝機能を含めて)からみたライフスタイル管理を主体とする総合的健康管理を行う装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)被験者の換気機能指標および/またはガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、
(b)前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標を測定、演算、表示する第2検査手段と、
(c)被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段とを含み、
(d)第2検査手段は、
(d1)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定する手段と、
(d2)運動モード設定手段によって設定された運動モードを運動負荷量に換算する運動負荷量換算手段と、
(d3)被験者が乗る運動手段であって、運動負荷量換算手段の出力に応答し、被験者に前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させる運動負荷手段を備える運動手段と、
(d4)被験者の口から呼気を採取する呼気採取手段と、
(d5)呼気採取手段からの呼気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
(d6)酸素濃度検出手段の出力に応答し、検出した酸素濃度に基づいて被験者の代謝機能の指標V'02(酸素摂取量)を演算するV'O2演算手段と、
(d7)前記V'O2演算手段の出力に応答し、前記指標V'O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求める運動エネルギー演算手段と、
(d8)運動エネルギー演算手段の出力に応答し、消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算する1日消費推定エネルギー換算手段と、
(d9)1日消費推定エネルギー換算手段の出力に応答し、1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を表示出力する出力手段とを含むことを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理装置のための気相系呼吸機能検査システムである。
【0014】
本発明に従う呼吸機能からみた総合的健康管理のための気相系呼吸機能検査システムを図2〜図5を参照してさらに詳しく説明する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、呼吸機能における換気機能、代謝機能等各機能の相関関係を示す図である。図2は、本発明の気相系呼吸機能検査システムの概略構成を示すブロックダイヤグラムである。図中、1は被験者の換気機能指標およびガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示できる第1検査手段を、2は被験者の代謝機能指標を測定、演算、解析、表示できる第2検査手段を、3は被験者のガス輸送機能指標を測定、演算、表示できる第3検査手段を、4は運動負荷手段を、5は運動時血圧を測定する血圧測定手段を、6は筋力の測定手段を表す。7は換気機能指標を測定、演算、解析、表示できる第4検査手段を表す。図2のブロックダイヤグラムは各手段の接続状態の一例を示すが、他の接続モードも可能である。
【0016】
この例では、被験者から得られた測定データの演算、解析が必要な各手段は、それ自身データを処理する演算処理部を備えていてもよいが、各手段からデータを第1検出手段1の演算処理部1aに転送し、そこで演算処理できる構成となっている。データの表示についても同様に、各手段が表示する表示部を各々備えていてもよいが、データならびにそれから演算された様々な呼吸機能指標を一括して、演算処理部1aが処理後、表示部(あるいは印刷)する構成としてもよい。
【0017】
第1検査手段1が、換気機能手段を測定、演算、解析、表示できるので、同様の機能を有する第4検出手段7は、本発明の気相系呼吸機能検査システムに必須ではないが、後述するように、第1検査手段1と補足的に第4検査手段7を用いることが好ましい。
【0018】
第1検査手段1に対応する検査、測定装置は、エアロメータS/9(商品名)としてミナト医科学株式会社より、第2検査手段2に対応する検査、測定装置はエアロメータAE−280(商品名)としてミナト医科学株式会社より、第3検査手段3に対応する検査、測定装置はパルスオキシメータ(商品名)として日本光学株式会社より、血圧測定手段5に対応する血圧計はEBP−300としてミナト医科学株式会社より市販されている。筋力測定手段5の一例である握力計はディジタル握力背筋測定器および握力用アタッチメントとして竹井機器工業株式会社より市販されている。運動負荷手段4の一例である自転車エルゴメータは、エルゴメーター232CXLとしてコンビ株式会社より市販されている。
【0019】
第4検査手段7の詳細な構成は、前記特願平6−317273に記載されている。後述の実施例、特に図15を参照。すなわち、第4検査手段7は、スパイロメータ、メモリ、各種演算部等から成り、スパイロメータで測定した被験者の呼気データをFV曲線に描き出す。このFV曲線の下行脚、および呼気データに基づいて演算部が、換気機能指標のうち、たとえばFEV1%、RATを演算し、必要ならばこれらを第4検査手段7にグラフ表示する。
【0020】
第1検査手段1の詳細な構成も、特願平6−317273に記載されている。後述の実施例、特に、図19、20を参照。すなわち、第1検査手段1は、スパイロメータ、メモリ、ガスミキシングバック、各種演算部等から成り、第4検査手段7と同様にFEV1%、RATが演算できるとともに、ガス交換機能指標のうち、たとえば、P′CO、D′LCO,D′LCO/V′A、D′LCO/VA、P′CO(22)をガス分析から求めることができる。これらのいずれの指標も第1検査手段1上に表示することができる。
【0021】
第1検査手段1、第4検査手段7を用いて、換気機能指標、ガス交換機能指標を測定、演算する方法も特願平6−317273に詳細に解説されている。後述の実施例を参照。
【0022】
本発明に従えば、さらに、第3検査手段3を用いてV′O2(酸素摂取量)、V′CO2(炭酸ガス排出量)の測定を行うことができる。
【0023】
図3に、breath−by−breath法によるV′O2,V′CO2測定装置の一例の全体の系統図(ブロックダイヤグラム)を示す。このようなV′O2,V′CO2測定装置20は、本発明の気相系呼吸機能検査システムの主要部分を構成する。
【0024】
被験者10は、まず運動手段であるトレッドミル11上に乗り、口にマウスピース12(またはマスク)を加えながら前方進行運動(歩く、または走る)を行う。トレッドミル11には、運動負荷装置13が設けられており、被験者10が選択する運動負荷レベル(運動モード)に基づいて適当な運動負荷を被験者10に供給する。通常、運動モードは被験者10がその上を歩行または走るベルト(図示せず)の回転速度または傾斜角度に反映され、被験者10に負荷される。運動中の被験者10の呼気は、サンプリングチューブ14を経てフローセンサ15と赤外線式CO2センサ16に分配される。赤外線式CO2センサ16において、赤外線吸収法により呼気中の炭酸ガス分子波長域の光が検出され、電気的に増幅されて、炭酸ガス濃度が検出される。赤外線式CO2センサ16を通過した呼気は、続いてジルコニア式O2センサ17に導かれ、そこでジルコニアセンサにより酸素濃度が検出される。前記センサ15,16で実測された酸素濃度、炭酸ガス濃度データは、一旦マイクロコンピュータ18に送られる。一方、呼気の一部は赤外線式CO2センサ16と並列に接続されたフローセンサ15を通過し、そこで呼気の流量が測定され、流量データもマイクロコンピュータ18に送られる。
【0025】
マイクロコンピュータ18は、呼気の流量に対するセンサ16,17の時間遅れを補正し、V′O2およびV′CO2を演算する。V′O2,V′CO2値は、ディスプレイ19に表示されるか、アナログ信号出力、プリンタ出力、シリアルデータ出力等の他の出力手段で出力される。前記と同様な過程を経てV′E(換気量)も算出される。これらの測定値からガス交換比Rも求めることができる。
【0026】
さらに、呼気ガス分析によってAT(嫌気性代謝閾値)も決定できる。ATは「有酸素性エネルギ産生に無酸素性エネルギ産生機構が加わった時点の運動時V′O2のレベル」として定義され、筋肉中や動脈血中における乳酸濃度や、乳酸/ピルビン酸比の増加を反映する。ATは、V′E対V′O2およびV′CO2対V′O2のプロットにより決定できる。ATは特に心不全の重症度、リハビリテーションや運動療法の運動処方、効果判定などに有用な指標でもある。
【0027】
本発明に従って、被験者の呼吸機能(換気、ガス交換、ガス輸送および代謝機能さらに筋力を含めて)を総合的に評価するには、3次元直交座標系を利用して、呼吸機能に関する3次元空間を形成して、これを複数に分割して、被験者の呼吸機能指標を3次元座標表示(プロット)し、被験者の属する分割空間の特性と座標表示の結果に基づいて実施する。
【0028】
この呼吸機能による総合的評価に先立ち、被験者の一群から健康調査表の提出を求めるとともに換気機能を検査する。このためには、第4検査手段7を用いてFV測定後、FV波形の解析を行い、換気機能指標、たとえばFEV1%、RATを求める。この目的のために、第4検査手段7の代わりに第1検査手段1を用いて、換気機能指標を求めることもできる。
【0029】
ここで、このようなFEV1%、RAT等の換気機能指標、加えて筋力の評価を併せて、「1次呼吸機能の評価」と呼ぶ。換気機能指標を用いた2次元的健康管理の方法については、特願平6−317272に詳述されているが、以下に簡単に述べる。詳細については後述の実施例を参照。
【0030】
FV波形の解析の結果、得られたRAT、FEV1%を各々X軸、Y軸にプロット(2次元表示)する。FEV1%としてFEV(g)(努力肺治量1秒率)を採用し、Y軸にプロットした一例が図4に示される。この2次元表示と同一の平面上に、表1に示す健康状態区分(ゾーン)をY軸に沿って表示する。
【0031】
【表1】
【0032】
ここで言うライフスタイルとは、たとえば栄養(食習慣、食事量、緑黄種)、肥満、飲酒、運動、筋力、喫煙、職業、ストレス等が挙げられる。
【0033】
健康状態ゾーン表示は、前記の2次元表示の上に重ねて表示してもよいし、また予めゾーン表示を行い、その上に前記の2次元表示を重ねてもよい。
【0034】
たとえば被験者の2次元表示データがゾーンAにあれば、その被験者は健康であると判定されるので、ガス交換機能、ガス輸送機能、および/または代謝機能を必ずしも検査する必要はない。しかし、念のため、これらの機能をさらに検査してもよい。
【0035】
被験者の2次元表示データがゾーンB以下、すなわちB,C,D1−3にあれば、表1に示すように被験者の健康管理を徹底する必要があり、ガス交換機能(2次呼吸機能とも呼ぶ)、さらにガス輸送機能、代謝機能(併せて3次呼吸機能とも呼ぶ)の検査、評価を行う。2次呼吸機能および/または3次呼吸機能の評価には、前述の3次元的表示を利用する。
【0036】
これにはまず、3次元直交座標のX,Y,Z軸を図5に示すように定義する。すなわち、X軸正方向(X1)に第1換気機能指標を、X軸負方向(X2)にガス輸送機能指標を、Y軸正方向(Y1)に第2換気機能指標を、Y軸負方向(Y2)に代謝機能指標を、Z軸正方向(Z1)にガス交換指標を、Z軸負方向(Z2)に筋力を座標表示する。このように座標表示された3次元空間を座標軸に従って、下記表2のように8分割する。
【0037】
【表2】
【0038】
分割された空間1〜8は各々、表2のように特徴づけられる。さらに、より具体的に第1換気機能指標としてRATを、第2換気機能指標としてFEV1%を、ガス交換指標としてP′CO(22)(一酸化炭素分圧較差、酸素消費量要求度)またはD′LCO/V′A(22)(一酸化炭素拡散能力)をガス輸送指標としてSPO2を、代謝指標としてVO2を、筋力として握力を取ると前記座標軸は、表3のように表される。
【0039】
【表3】
【0040】
なお、図4のような2次元表示を表3の座標軸系に従って、図5に移すには、X1軸上のRATは−1.0(原点)〜1.0としてプロットする必要がある。
【0041】
3次元座標表示の一例として、被験者の2次元表示データがゾーンAにあれば、続いて、被験者の筋力(握力)を筋力測定手段6によって測定する。得られた値をZ2軸にプロットすると、前記FEV1%、RATのプロットと併せてこの被験者は第2空間に位置することがわかる。
【0042】
被験者の2次元表示データがゾーンBにあれば、その被験者はライフスタイル管理が必要であると判定される。そこで、被験者のガス交換機能を第1検査手段1で検査する。このとき、再度換気機能(FEV1%、RAT)を第1検査手段1で検査、評価してもよい。得られたガス交換機能指標、たとえばP′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)をZ1軸にプロットする。なお、P′CO(22)、D′LCO/V′A(22)はそれぞれ標準体重規準化した数値である。したがって、この被験者は前記FEV1%、RATのプロットと合わせて第1空間内で比較、評価が可能となる。さらに筋力(握力)の測定を経て、第2空間内での評価も行う。具体的には、各座標位置により、医師と被験者は、肺の換気機能およびガス交換機能を把握して総合的に評価することが可能となる。すなわち評価結果を素因、病態、環境要因、生活習慣(第1空間)といった人間生態学的観点と関連づけた把握、評価をして保健指導することができる。換気機能のみならずガス交換機能(特に酸素消費を反映する指標)をも採用することにより、酸素消費を基本とする生活習慣を関連づけて評価することが可能ともなる。たとえばP′CO(22)は肥満度、飲酒習慣、運動習慣といった酸素消費を前提とするライフスタイルとの相関が認められる。すなわちライフスタイルの変化に対応してP′CO(22)値が変化する。そこで医師は被験者のP′CO(22)値の変化から、ライフスタイルの改善に対応した有効な指導を行いうる。
【0043】
このように医師にとっては、被験者のための適確な診断および保健指導を行うことができ、たとえば被験者がたばこを止めるべきであるとか、仮にたばこを吸っていても、野菜を多く摂取しているとき、換気機能あるいはガス交換機能は低下しないので、そのような患者の個別的な保健指導を細かく行うことができるようになる。
【0044】
また被験者にとっては、医学的知識がなくても、被験者自身の換気機能およびガス交換機能の把握と理解ができ、主体的、積極的なライフスタイル改善の一助にすることができる。
【0045】
被験者の2次元表示データがゾーンCにあれば、その被験者はスクーニングが必要であると判定される。さらに、2次元表示データがD1−3にあれば、その被験者は疾病管理が必要であると判定される。これらの場合、ゾーンBの場合と同様に、被験者のガス交換機能を第1検査手段1で検査する。ここで、再度換気機能(FEV1%、RAT)を第1検査手段1で検査、評価してもよい。得られたガス交換機能指標P′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)をZ1軸にプロットとし、第1空間内で被験者の位置を評価する。さらに、第3検査手段3で被験者のガス輸送機能(SPO2)を測定し、X2軸にプロットする。そうすると、X2軸(SPO2)、Y1軸(FEV1%)、Z1軸(P′CO(22))で囲まれる第5空間で、その特性(表2)から被験者の評価ができ、適切な指導(治療)も行える。別途、被験者を運動負荷手段4上で運動負荷をかけて運動させ、第2検査手段3を用いて代謝機能を指標、たとえばV′O2を測定し、Y2軸にプロットする。そうすると、X2軸(SPO2)、Y2軸(V′O2)、Z1軸(P′CO(22))、で囲まれる第7空間で、その特性(表2)から被験者の評価ができ、適切な指導(治療)が行える。同様に、X1軸(RAT)、Y2軸(V′O2)、Z1軸(P′CO(22))で囲まれた第3空間で、その特性から被験者の評価を行うことも可能である。さらに、筋力(握力)の測定を経て、第2空間、第4空間、第6空間、第8空間内での評価を行いうる。
【0046】
被験者から得られる各機能指標に時間依存性があるとき、すなわち運動時の指標を経時的に検査、測定すると、得られる3次元座標表示も点ではなく3次元関数となる。
【0047】
以上のように健康管理ゾーンとRAT、FEV1%の2次元表示とのマッチングから段階的に換気、ガス交換機能、さらにはガス輸送機能、代謝機能を評価して、総合的健康管理を行う方法を詳説してきたが、この方法において機能指標の測定、検査の順序を変更することも可能である。また、被験者の1次呼吸機能の2次元表示がゾーンAまたはBにある場合、3次呼吸機能(筋力以外)の検査を行わなかったが、後者の機能を検査し、3次元座標表示を実施し、評価することも可能であり、これら可能なすべての変更、修正を含む方法も本発明の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法の技術的範囲に包含される。
【0048】
本発明の一部には、特定の代謝機能からみた健康管理の方法も含まれる。本発明によれば、前述の代謝機能指標以外に1日消費推定エネルギーを算出して代謝機能指標のうち最も重要な指標として使用する。
【0049】
本発明以前にも、1日消費推定エネルギーの算出の試みは行われてきた。しかしながら、これは主に1日消費推定エネルギーから1日所要の栄養量を逆算し、それを満たすために摂取する食物を決定する、いわゆる栄養指導に関してであった。
【0050】
このような従来技術によれば、1日消費推定エネルギ(E3)は次式(1)で表される。「図説、運動の仕組みと応用」中野昭一編、医歯薬出版(株)、236頁(1993年)参照。
E=B(1.25R+0.95S)+BΣ(RMR)T …(1)
ただし、E:1日消費推定エネルギー(kcal)
B:基礎代謝量(kcal/時間)
S:睡眠時間
R:24次間−睡眠時間
T:それぞれの生活作業時間
RMR:エネルギー代謝量
【0051】
さらに式(1)中の基礎代謝量Bは、式(2)から求められる。
B=b×a(kcal/時間) …(2)
ただし、a:身長、体重によって概算される
b:性、年齢別基礎代謝基準値
【0052】
したがって、式(1)および式(2)中の既知パラメータ値(たとえば、いろいろな運動のエネルギー代謝率)を用いて被験者の特定の1日消費推定エネルギー(E3)が計算できる。前掲の総説によれば、被験者が30歳の男性(身長168cm、体重62kg、基礎代謝63.1kcal/時間)で下記表1のような生活様式で1日を過ごすとすれば、1日消費推定エネルギ(E3)は、E=63.1kcal/時間(1.25×17時間+0.95×7時間)+63.1kcal/時間(0.3×11時間+2.4×1時間+1.0×1.5時間+1.8×0.5時間+0.2×3時間)=2309.5kcalとなる。
【0053】
【表4】
【0054】
このようにして、1日消費推定エネルギー(E3)を計算することの問題点は、計算式中(たとえば式(1)および式(2))のパラメータに概算値がほとんど用いられているということである。また、被験者を身長、体重から仮想、平均的な人間として仮定しているため、代謝機能の低下している疾病者または代謝機能異常者(肥満症、糖尿病患者等)については、被験者の代謝機能の個体差等が考慮に入れられていない。
【0055】
しかしながら、これと対照的に、本発明の気相系呼吸機能検査システムを用いると、被験者の代謝機能を確実に反映した被験者個人に特有の1日消費エネルギー(E2)をかなりの正確度で測定、算出することができる。被験者をトレッドミルまたは自転車エルゴメータ等の運動手段上で運動させると、被験者のV′O2が実測できることは前述のとおりである。このV′O2値の(l/m)単位は、運動消費カロリーとして4.8〜5.0kcal/mに対応する。したがって、運動手段上で運動を行った被験者の単位時間あたりの運動消費エネルギー(E1)が実測V′O2値から計算できる。
【0056】
そこで、本発明の気相系呼吸機能検査システムを使用して、1日消費推定エネルギー(E2)を求めるには、被験者の1日の生活様式に基づく適当な段階数(たとえば4〜6段階)の運動モードを設定し、各モードについてそれぞれに対して適切な運動負荷量を決定する。一例として、前述の表1に得られたように1日の生活様式を各項目に区分し、各々に対応する運動モードを設定してもよい。次いで、このようにして区分化した1日の生活様式に基づいて、各モードの所要時間を割出す。この作業も表1のように区分化された生活様式に対応する時間として算出できる。ここで全てのモードの合計時間を15分〜30分程度の範囲の時間に設定する。このようにして求めた各運動モード、各モードの所要時間、各モードに対して設定される運動負荷量を本発明の気相系呼吸機能検査システム、特に運動手段11および運動負荷装置13にプログラムする。被験者10が運動手段11上で、このプログラムに従い、運動負荷をかけられたまま運動を所定時間行うと、本発明の気相系呼吸機能検査システムは、前述の原理に基づいて被験者10の呼気中の酸素濃度を分析し、運動消費エネルギー(E1)を演算し、これをディスプレイ19に表示する。すなわち、被験者10のプログラムされた1サイクル(所定時間)の運動が終了すると、被験者が所定時間に消費した運動消費エネルギー(E1)が演算、累積され、前記検査システムに表示されるわけである。
【0057】
このようにして表示された運動消費エネルギー(E1)は、被験者の1日の生活様式を短く設定された所定時間(たとえば、20分間)に凝縮したものであり、その運動消費エネルギー(E1)値を24時間として較正すると、被験者の1日消費推定エネルギー(E2)が算出できる。要するに、本発明に従えば、気相系呼吸機能検査システムを用いて、被験者10に運動負荷にかけることにより、被験者の1日の生活様式をシュミレート(模擬試験)することになる。このようにして求められた1日消費推定エネルギー(E2)は、前記の従来技術で求められた1日消費推定エネルギー(E3)に比較して、被験者の実測代謝機能値に基づいて消費エネルギーが算出されているため、格段と信頼性が向上されており、代謝機能の著しく低下している被験者の個体差が1日消費推定エネルギーに充分反映されている。
【0058】
本発明において、得られた被験者の1日消費推定エネルギー(E2)は、被験者のライフスタイルの管理および健康管理等の保健指導を行う上で重要な指標となる。
【0059】
したがって1日消費推定エネルギー(E2)に基づいて栄養、肥満、運動について、たとえば、被験者にとって適切な栄養所要量を助言できるし、また被験者の栄養摂取量が1日消費推定エネルギー(E2)量よりも過多であれば、そのような被験者に対して適切な運動処方を施すこともできる。
【0060】
換気機能指標およびガス交換機能指標を生活習慣と結びつけて健康管理を行う具体的手法について既に解説したが、ガス輸送機能指標、代謝機能指標を含めて総合的に健康管理を行うには、下記の表5にあるように各呼吸機能指標と生活習慣を関連づけて評価すればよい。
【0061】
【表5】
【0062】
本発明に従う気相系呼吸機能検査システムを用いる被験者の呼吸機能の検査は、たとえば検診方式、ドック方式、精検方式、個別検査方式等で実施し得る。これらの検査方式のうち、どれが被験者にとって適切かは、換気機能指標、ガス交換機能指標を予備的に評価して、医師は被験者に対してそれぞれ適切な検査方式を助言することもできる。
【0063】
本発明の呼吸機能からみた健康管理の方法は、被験者(一個人)の管理のみならず、一群の被験者(集団)の管理にも適用可能であり、その場合、検出・測定データを常法に従って統計処理(重回帰分析、判別分析)すればよい。
【0064】
【実施例】
以下実施例でもって本発明に従う、呼吸機能の2次元座標表示、および3次元座標表示の一部についてより具体的に説明する。
【0065】
1.FV波形の合成
図6は、被験者の呼気のFV曲線を求めるためのスパイロメータなどの電気的構成を示すブロック図である。肺機能が検査されるべき被験者は、たとえば立位で、できるだけ多く吸気し、鼻をおさえ口に管121をくわえて、できるだけ早く呼気を流量計122に供給する。マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路123は、流量計122の出力に応答し、その流量と気量とを時間の経過に伴って演算して記憶し、その結果を陰極線管または液晶表示素子などを用いた目視表示手段125に表示するとともに必要があれば記録紙127に記録する。
【0066】
一方、処理回路123は、流量計122から送られるデータの代わりに、予め記録紙127に描かれた流量気量曲線を、デジタイザなどの読取装置128で読取り数値化されたデータを取込むことも可能である。流量は、たとえば気量10ml毎に、それに要する時間が計測され、流量の計算が行われる。
【0067】
図7は、図6に示される処理回路123の動作を説明するためのフローチャートである。ステップm1からステップm2に移り、流量計122によって測定された流量の時間経過を測定し、次のステップm3において気量と流量とを対応付けてメモリ124にストアする。ステップm4で流量、気量をグラフ化し、ステップm5でこれらを記録紙127上に記録する。ステップm6で前記一連の操作を終了する。
【0068】
図8は、上記のようにして求められたFV曲線の模式的な例であり、流量F(l/秒)を縦軸に、気量V(l)を横軸にとる。流量は、初期の短時間に急速に増大し、流量最大値PEFRに達し、その後は比較的緩やかに最大呼気位の残気量点B(RV)まで低下する。この流量最大値PEFRから点Bまでの範囲が下行脚と呼ばれ、被験者の気道の状態によって曲線101〜曲線104のように変化する。たとえば、曲線104を描く被験者は、鼻アレルギー患者であることが多い。
【0069】
本発明に係るFV波形解析のためのFV波形の合成方法について、図9の別な模式的FV曲線を用いて詳しく説明する。
【0070】
曲線101は、図8と同様、最大吸気から最大呼出するときのFV曲線(ここでFVとも略す)を表す。曲線105は安静吸気(通常の状態)から最大呼出するときのFV曲線(ここでGVとも略す)を表す。曲線101と曲線105の交差点106,107間では、流量はGV>FVであり、交差点106,107において、FVとGVが流量において、ほぼ等しい。曲線101上の点108は、呼気が中断され、流量が急速に低下する点を示す。被験者が息切れを起こしたり、咳込むときなどに該当する。終点109は最大呼気位の残気量を表し、点110は安静呼気位の残気量を表すGVの終点で、横軸上FVの終点109より後方にある。
【0071】
したがって、何らかの理由でFVが図9に示すように中断され、滑らかな曲線を描かないとき、GVがあれば、被験者に再度の呼気を強いることなく、FV波形を合成できる。すなわち、曲線101のPEFR位111より点107までの間はFVをトレースし、点107から点108の間はFV,GVのいずれかをトレースし、そして点108から点110の間はGVをトレースする。
【0072】
これら一連の作業は、図9のようなチャート上、FVおよびGVを各々表示し、マニアルでトレースし、理想的な合成FV曲線を描き出すこともできるが、個別に測定したFVおよびGVのためのデータをメモリ124に記憶し、それらを処理回路123で再度演算した後、合成したFV曲線を画面または記録紙等の目視表示手段125に表示することが都合がよい。また既に記録紙に描かれた一方の曲線を読取装置128で読取り、メモリ124にある他方の曲線のデータと合成し、同様に合成FV曲線を得ることも考えられる。
【0073】
本発明に従うFV波形合成方法の利点は、安静呼吸からのGV曲線が得られておれば、最大呼吸からFV曲線を得るための流量、気量、測定中、測定が中断失敗しても、合成FV曲線が描けるところにある。FV曲線を得るために、測定をわざわざ繰返すことなく、FVより被験者が容易に得られるGVからFV曲線が合成できる。したがって、最大呼出測定の回数を少なくすることができ、老人、病人の負担を軽減する。また必ずしも呼出を、最後まで行う必要がなく、測定時間の短縮も望める。
【0074】
実測したFV,GV曲線の一例を図10に示す。図中、XはFVの急速減衰領域でのGVとの交差点で、図9の点108に対応する。YはGVの終点、最大呼気位を表し、図9の点110に対応する。この例では、図9の場合と全く同様にFVに、XにおいてGVを繋げば、合成FV曲線を得ることができる。
【0075】
さらに、合成したFV曲線を基にしてdV(気量)/dF(流量)指標を演算、プロットすると、たとえば図11に示すように、dV/dF分布曲線112を得る。図11は、dV/dF曲線112、実測FV曲線101、近似した2次曲線113(後述)を表す。図10,11に表示されている曲線例は、それぞれ表6、表7に示す実測データに由来する。
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
前記のように、FV波形の合成、さらに解析を行い、各種パラメータ(たとえばdV/dF)を算出し、肺機能を評価、機能不全の要因の同定を通して、究極的には、ライフスタイルを含めた健康管理が可能となる。以下に2,3の実施の形態を挙げてこの概念に基づく本発明の実施について説明する。
【0079】
2.FV波形の2次曲線への近似
図8において、FV曲線の下行脚を示す曲線101〜104は次式(3)を用いて2次曲線に近似することができる。
y = a0 + a1・X + a2・x2 …(3)
【0080】
式(3)において、yは流量であり、xは相対気量Rであり、a0は定数である。式中の定数項a0、1次項の係数a1,2次項の係数a2をそれぞれ計算し、a1を縦軸、a2を横軸としてプロットすれば、図12のようになる。図中、ライン114,115は下記のデータ(表8)に基づくものである。ライン116は気管支喘息発作時の直線を示す。
【0081】
【表8】
【0082】
a1,a2を求める演算を図13に従い、以下に略述する。図13は図6に示される処理回路123を係数決定に応用する場合の動作を説明するためのフローチャートである。ステップn1からステップn2に移り、流量計122によって測定された流量の時間経過を測定し、次のステップn3において気量と流量とを対応付けてメモリ124にストアする。処理回路123はメモリ124にストアされている流量気量曲線の下行脚のピーク位置を検出し、そのときの最大流量PEFRおよびそのときの気量V1(図8参照)を求める。ステップn5では、流量気量曲線の気量に関して、相対気量または絶対気量のいずれかの選択をする。相対気量Rは、式(4)で示される。
R = VCX/VC1 …(4)
【0083】
ここでVC1は、図8において下行脚のピーク時の気量V1から最大呼気位(RV位)までの気量であり、
VC1 = VC−V1 …(5)
VCXは、それらの点A(PEFR位),B(RV位)間におけるRV位からさかのぼる気量を示す。したがって前述の相対気量は、下行脚のピーク時の気量VC1を1.0とし、RV位を零としたときの気量の度合いを表している。このような相対気量を採用することによって、多数の被験者相互間の下行脚の評価を相対的に行うことができる。絶対気量というのは、各被験者固有の気量であって、絶対気量に基づく演算をすることによって、各被験者毎の評価を行うことができる。
【0084】
このようにして相対気量Rと、それに対応する流量との組合わせを求めた後、ステップn6において、求められた相対気量と流量とから、式(3)の2次式のあてはめを行う。
【0085】
ステップn7では、下行脚にあてはめられた2次式の1次項の係数a1と2次項の係数a2とを演算した結果の値を採用して、次のステップn8では、図12に示される表示面上の座標位置+(a2,a1)を表示する。こうしてステップn9では一連の動作を終了する。なお、ステップn5で絶対気量が選択されたときには、式(3)のxは、絶対気量となる。
【0086】
このようにして求めた被験者の2次式曲線を実測のFV曲線と図11中で対比してある。図中、ライン113が計算された2次式曲線を示し、曲線101が実測曲線である。
【0087】
なお、10次式まで高次の回帰式を求めて下行脚にあてはめることが可能であるが、2次回帰式であてはめても、たとえば6次回帰式であてはめても、近似度にほとんど差がないので、実務上、簡便な2次式で近似することが好ましい。
【0088】
3.R AT の算出
次に、係数勾配指数(RAT)を算出する。前記のように式(3)の1次項係数a1と2次項係数a2を計算し、2次元座標軸にa1を縦軸、a2を横軸として表せば図14のようになる。原点O点P(a2,a1)を結ぶ直線OPが横軸(a2軸)となす角をθとすれば
θ = tan−1(a1/a2) …(6)
となる。θを度で表し、a1とa2の正負によって異なる次の式で表されたものを係数勾配指数(RAT)とする。
RAT=θ°/180° (a1>0,a2>0:第I象限)…(7)
RAT=1+(θ°/180°) (a1>0,a2<0:第II象限)…(8)
RAT=−(1−θ°/180°) (a1<0,a2<0:第III象限)…(9)
RAT=θ°/180° (a1<0,a2>0:第IV象限)…(10)
【0089】
1秒率FEV1.0%(FEVとも略する)は、できるだけ多くを呼気し、これをできるだけ速やかに呼気として排出したときの最初の1秒間の呼気量と全呼気量(努力肺活量)との比(百分率)で表示されるので、図6で説明したスパイロメータによって求めることができる。パイロメーターからのデータに基づいて、FEV,RATを求める演算を図15に従い、以下に略述する。
【0090】
図15は、図6に示されるFEV,RATに関する処理回路123の動作を説明するためのフローチャートである。ステップp1でスタートすると、処理回路123内の時計がスタートし、同時に流量計122から呼気10ml毎に信号が送られてくる。ステップp2で気量と時間とから10ml毎の流量を計算し、ステップp3で気量と流量とをメモリ124に記憶する。ステップp4で1秒経過したかどうかを判断し、1秒が経過しておれば、ステップp5でその時までの気量を1秒量として計算し、ステップp6でメモリ124に記憶する。ステップp9で流量が0になったかどうかを判断し、流量が0になっておれば気量が最大呼気位の残量となったと判断し、ステップp10で全呼気量(努力肺活量)を計算し、ステップp11でメモリ124に記憶する。ステップp9で流量が0にならなければ流量が0になるまでステップp7とステップp8とを繰返す。ステップp12でメモリ124に記憶されている流量と気量とからFV曲線を求め、ステップp13でこれを記録紙127上に記録する。ステップp14でFV曲線を2次曲線で近似させ、第1次項と第2次項との係数を求め、さらにRATを求め、ステップp15でこれをメモリ24に記憶する。ステップp16で記憶されている1秒量と努力肺活量とからFEVを求める。ステップp17でこのFEVとRATとをグラフ化し、ステップp18でこれを記録紙127上に記録する。ステップp19で一連の操作を終了する。なお、目視表示手段125には、画面を2分して、一方にFV曲線が、他方にはFEVとRATとの関係を示すグラフが表示され、切換スイッチにより、いずれか一方を拡大表示もできる。
【0091】
4.FEVとR AT との相関関係
こうして求められたFEVとRATとを縦軸、横軸として表示したものが、図16である。この図では、FEVとして努力肺活量の代わりに予測肺活量VCPを用いてあるので、FEV(VCP)として表す。ここで予測肺活量とは実測肺活量とは異なり、被験者の年令、身長から予測した肺活量である。図16中、ライン117は非喫煙者で健康な被験者のものを示し、ライン118,119は非喫煙者で気導閉塞を起こしやすい被験者のものを示す。特に、ライン118は、上気道を主体に閉塞を起こしやすいタイプのものである。一般に、各ラインは左下がりで左下に行くに従って、気道閉塞性の病変が悪化する傾向を示す。さらに、曲線SAは健康人(すなわち、気道変化を起こしにくい人)が喫煙をした場合に該当し、曲線SBは、気道閉塞を起こしやすい人が喫煙をした場合に該当する。
【0092】
第2象眼下方(図16左下)の領域は病変が進行しており、入院して治療が必要な状態である。
【0093】
図16に表されるRATとFEV(VCp)の関係をプロットするのに使用したデータの一例を表9に示す。
【0094】
【表9】
【0095】
縦軸としてFEV(VCp)の代わりにFEV(g)(努力肺活量)を採用し、またはFEV(t)(吸気肺活量)を採用すると、両者ともに図17のようになる。図中、ライン130,131および132は図16においてライン117,118,119にそれぞれ対応する。したがってライン120は非喫煙者で健康な被験者のものを表す。図17に表されるRATとFEV(g)またはFEV(t)との関係をプロットするのに使用したデータの例を表10に示す。
【0096】
【表10】
【0097】
図15において、1秒量としてFEV(g),FEV(t),FEV(VCp)とすべて計算し、ステップl6でメモリに記憶しておけば、随意に各々のFEV,RATグラフを得られる。これはたとえばファンクションキーを押すことにより、FEV(g)→FEV(t)→FEV(VCp)とサイクルするように設定できる。したがって、所望の1秒率(FEV)とRATの関係がグラフ表示でき、詳細な評価、解析が可能である。
【0098】
5.換気機能の評価
本発明に従うライフスタイル管理のためのFEV,RATの相関関係の利用について、さらに説明する。
【0099】
前述のように、本発明の構成に従って、FEV(たとえばFEV(g))とRATとの関係を再度グラフ表示する。図4参照。これ自身は、前述のように気導閉塞性、気道過敏性の評価に有用であり、被験者の病変管理を可能にする。
【0100】
さらに、FEVおよびRATを基準にして、ゾーン化する。ライン20の右上方領域とRAT≧0.2以上から成るゾーンをゾーンAと定義する。このゾーンにある被験者は健康状態にある。FEV80以上、RAT≧0のゾーンの内ゾーンAを除外した部分をゾーンBと定義する。このゾーンにある被験者は、ライフスタイルの変更をした方がよい。FEV70以上80以下、かつRAT≧0のゾーンとFEV70以上、RAT≦0のゾーンを併せ部分をゾーンCと定義する。このゾーンにある被験者は、疾病のスクリーニングが必要である。FEV55以上70以下のゾーンをゾーンD1と定義する。このゾーンにある被験者は疾病の管理を要する。FEV40以上55以下のゾーン,FEV40以下のゾーンを夫々をゾーンD2,D3と定義する。このゾーンにある被験者は入院、通院を要するし、救急処置が必要な場合もある。このようにライフスタイル管理を含めた換気能力評価ができる。
【0101】
6.換気機能・ガス交換機能の総合的評価
次いで、本発明に従うライフスタイル管理による健康管理のための換気機能、ガス交換機能(能力とも呼ぶ)の総合評価について説明する。
【0102】
前記の換気機能の評価はRATとFEV(換気機能)との関係からライフスタイル管理を目指したものであるが、それにガス交換機能(P′co,D′LCO,D′LCO/V′A,P′co(22),D′Lco(22),D′LCO/V′A(22),SPO2)をパラメータとして加え3次元的に評価すると、呼吸機能検査指標と健康管理がより論理的に関連づけられる。
【0103】
図18は、肺のガス交換機能の指標としてのCO肺拡散能力D′LCOまたはDLCOと、そのときの肺胞気量VAまたはHeの稀釈からVA′とを求めて、値D′LCO/VA′またはDLCO/VAを演算して求めるための手法を説明するための図である。
【0104】
CO肺拡散能力D′LCOまたはDLCOの測定方法は、1回呼吸(single breath)法が採用され、これは、息こらえ(breath holding)法ともいわれている。被験者は、最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に混合ガスを吸入し、この位置で吸気の始めから正確に10秒間の呼吸停止をさせる。その後、急速に最大呼出させ、最初の750mLを捨てて、残りの呼気ガスをサンプルバッグ39(次の図19参照)に集めてガス分析を行う。前記混合ガスは、0.3%CO、10%He、20%O2および70%N2の4者混合ガスである。
【0105】
COは肺でとられるのでFACOは時間とともに減少するが、Heは肺でとられないので時間によって変わらない。呼出He濃度をFAHeとすると、t=0におけるFACO(0)は
FACO(0)=FICO・FAHe/FIHe …(11)
として求められる。定義より
DLCO=V″CO/PACO …(12)
である。V″COはVCOの1階微分である。この式に
V″CO=−dVCO(t)/dt PACO=PACO(t) …(13)
を代入すると
dVCO(t)/dt=−DLCO・PACO(t) …(14)
となる。ここで、
VCO(t)=FACO(t)・VA(t) …(15)
であるから、
dVCO(t)/dt=FACO(t)・dVA(t)/dt +VA(t)・dFACO(t)/dt …(16)
であり、
VA(t)=一定 …(17)
なら、
dVA(t)/dt=0 …(18)
であるから
dVCO(t)/dt=VA・dFACO(t)/dt …(19)
また
PACO(t)=(PB−47)FACO(t) …(20)
この2つを上式に代入すると
【0106】
【数1】
【0107】
これがKroghの式である。tを秒にすると、
【0108】
【数2】
【0109】
FACO(0)に上式(10)を代入すると、
【0110】
【数3】
【0111】
VAの単位はmlSTPDで、t=10秒として、DLCO(ml・min−1・torr−1)を計算で求めることができる。
【0112】
DLCOは式(23)で計算されるが、VAの求め方に2通りある。第1の求め方は、DLCO測定時の吸入気量(VI)に予め測定しておいた残気量(RV)を加えて、肺胞気量(VA)を求める。通常RV位からTLC位までの吸入なのでVIは吸気肺活量に、VAは全肺気量(TLC)にほぼ等しい値となる。第2の求め方は、DLCOの測定時のHeの稀釈から次式でVAを測定する方法がある。この場合には通常のVAと区別するために、VA′で表すのが一般的である。
【0113】
FIHe(VI−VD)=FAHe・VA′ …(24)
の関係が成立する。これより、
VA′=FIHe(VI−VD)/FAHe …(25)
となる。この場合VIに比べるとVDはきわめて小さいので、
VI−VD≒VI …(26)
とすることができる。
VA′=VI・FIHe/FAHe …(27)
でVA′を求める。V′を式(23)のVAに代入した場合D′LCOとして、通常のDLCOと区別する。
【0114】
一酸化炭素較差CO分圧P′COおよびP′co(22)が次式(28),(29)で示される。
【0115】
【数4】
【0116】
P′CO(22)=(P′co/BMI)×22 …(29)
前式中、BMIはBody Mass Indexの略で肥満度を表し、体重(kg)/身長(m)2で算出される指標である。したがってP′co(22)は標準体重基準化P′coとも呼ばれる。
【0117】
同様にD′LCO,D′LCO/VAも次式(30),(31)に従い、標準体重基準化することができる。
D′LCO(22)=(D′LCO/BMI)×22 …(30)
D′LCO/V′A(22)=(D′LCO/V′A/BMI)×22 …(31)
D′LCO(22),D′LCO/V′A(22)は夫々標準体重基準化D′LCO(22),D′LCO/V′A(22)とも呼ばれる。
【0118】
式(28)、肺胞におけるガス交換状態の推移を表し、単位時間当りの一酸化炭素の分圧差で、単位はmTorr/secである。式(28)の第1項(0.30/FICO)は、吸気ガス中の一酸化炭素濃度を0.30(%)に補正する項である。第2項(PB−47)は、肺中における全乾ガスの圧力である。第3項の前半{FICO×FAHe/FIHe}は、初期(t=0)における肺中の一酸化炭素の濃度であり、FACOは、終期における肺中の一酸化炭素の濃度である。これらに(PB−47)を掛けたものが肺中の初期と終期との一酸化炭素の分圧である。第4項の分子10は、圧力をTorrからmTorr(ミリトール)にするために1000倍し、ガス濃度が%表示であるので100で割ったもの、すなわち1000/100=10である。
【0119】
前述のように、式(29)は標準体重に基準化した単位時間当たりの一酸化炭素の分圧差で単位はmTorr/secである。
【0120】
式(29)の第1項は単位BMI当たりのP′coで身長(m)と体重(kg)で補正して、他と比較できる利点を有する。
【0121】
図19は、本発明の一部を構成する換気機能、ガス交換機能の測定装置の全体の系統図である。被験者の換気機能およびガス交換機能の同時的な、したがって同一検査体系での測定を行うために、被験者は口に管121をくわえる。混合ガス源140からは第1切換え弁141に前記混合ガスを供給する。第1切換え弁141には呼気の流量を計測する流量計122が接続され、その流量計122の出力は処理回路123に与えられ、流量と気量とが時間経過に伴ってサンプリングされて読取られる。流量計122からの呼気は、管路142から第2切換え弁143に導かれ、この第2切換え弁143は、管路42からの呼気を管路144から大気放散し、または管路145を経て可撓性のあるサンプリングバッグ139に導く。バッグ139内の呼気のCO濃度は、CO濃度検出手段146によって検出され、またHeの濃度はHe濃度検出手段147によって検出され、それらの各濃度検出手段146,147の出力は処理回路123に与えられる。
【0122】
図20は、図19に示される処理回路123の動作を説明するためのフローチャートである。ステップo1からステップo2に移り、第1切換え弁141を第1位置141aから第2位置141bに切換え、被験者は管121を口にくわえた状態で混合ガス源140からの混合ガスを最大呼気位RVから最大吸気位TLCまで一挙に吸入し、この位置で吸気の始めから正確に10秒間の呼吸停止をさせる。次に、ステップo3において第1切換え弁141を第1位置141aに切換え、このとき第2切換え弁143は第1位置143aとしておき、急速に最大呼出させる。このときステップo4では、流量計122による呼気の流量の時間経過を測定し、メモリ124にストアする。ステップo5において呼気の最初から750mLを測定し、その750mL分の呼気は、第2切換え弁143の第1位置143aから管路144を経て大気放散される。次のステップo6では、第2切換え弁143を第2位置143bに切換え、ステップo7では、残りの呼気ガスをバッグ139に管路145を経て1000mLを貯留し、そのときにおいてもまたステップo8では、流量計122の計測値を時間経過に伴って測定してメモリ124にストアしておく。ステップo9では、ステップo7において1000mLの計測後に、第1位置143aに切換えて、残りの呼気を大気放散させ、このときにおいてもまた流量計122の計測値は処理回路123からメモリ124にストアされる。こうして気量と流量とが対応づけてメモリ124にストアされることになる。
【0123】
処理回路123には陰極線管または液晶表示素子などを用いた目視表示手段125が備えられ、その表示面126には、前述の表示図面などを表示することができる。また記録紙127に、既に測定してある流量気量曲線が描かれているときには、その記録紙127を、光学的に読取る読取手段128に供給してその記録紙127に記録されている流量気量曲線を読取り、メモリ124にストアすることもまた可能である。
【0124】
処理回路123は、ステップo10でメモリ124にストアされている流量気量曲線の下行脚のピーク位置を検出し、そのときの最大流量PEFRおよびそのときの気量V1を求める。ステップo11では、流量気量曲線の気量に関して、相対気量または絶対気量のいずれかの選択をする。
【0125】
このようにして相対気量Rと、それに対応する流量との組合わせを求めた後、ステップo12において、求められた相対気量と流量とから、2次式のあてはめを行う。
【0126】
ステップo13では、下行脚にあてはめられた2次式の1次項の係数a1と2次項の係数a2とを演算した結果の値を採用して、係数勾配指数RATを求める。次のステップo14に従って、1秒率FEVを計算する。ステップo11で絶対気量が選択されたときには、2次式変数xは、絶対気量となる。
【0127】
ステップo15では、DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)等パラメータの演算を行い、ステップo16では、図21に示されるような3次元表示を行う。このようにして、図20のステップを用いて時系列的な換気機能とガス交換機能とを測定することによって、図21に示されるように、3次元の表示を行うことができる。このような図21に示される3次元表示は、表示手段125によって達成される。
【0128】
FEV−RATの表示と同様にDLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)をステップo15でメモリに記憶しておけば、随意にそれぞれをZ軸とする3次元表示グラフが得られる。これは、たとえばファンクションキーを押すことにより、DLCO→DLCO/VA→D′LCO/V′A→P′CO(22)→D′LCO/V′A(22)とサイクルするように設定する。
【0129】
本発明の好ましい実施の形態によれば、図20のステップo16で各種パラメータを3次元表示する前にFEVとRATをまず2次元表示して、前記のように被験者の属するゾーンを同定する。ゾーンにより、3次元表示の際のZ軸パラメータとして DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),およびD′LCO/V′A(22)の群の中から最も最適なガス交換機能指標を選び、ステップo16で3次元表示を実施する。
【0130】
したがって、ステップo15で2次元表示の結果から特定のパラメータのみを演算するような構成とすることができるし、またすべてのパラメータを計算後、メモリ124にストアし、所望のZ軸パラメータのみを取出し、3次元表示を完成するような構成とすることができる。いずれにしろ被験者の所属する健康グループにより、所望のZ軸パラメータ(ガス交換機能指標)を選択できる。
【0131】
以上、本発明の方法を実施例を用いて説明したが、本発明の範囲は開示した具体例に限定されない。
【0132】
本発明は、次の実施の形態が可能である。本発明によれば、被験者の換気機能指標および/またはガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標を測定、演算、表示する第2検査手段と、第2検査手段に接続され、被験者がその上で運動する運動負荷手段と、被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段とを含むことを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理のための気相系呼吸機能検査システムが提供される。
【0133】
前記気相系呼吸機能検査システムは、下記の各手段のうち1つ以上をさらに含むことができる。
【0134】
(1)被験者の換気機能指標を測定、演算、解析、表示する第4検査手段;
(2)被験者の筋力を測定する筋力測定手段;
(3)被験者の運動時の血圧を測定する血圧測定手段。
【0135】
好ましくは、被験者の筋力が握力であることを特徴とする。ここで好ましくは、換気機能指標がFEV1%またはRATであり、ガス交換指標がDLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),およびD′LCO/V′A(22)から成る群より選ばれる1種以上であり、代謝機能指標がV′O2,V′CO2,ATおよびRから成る群より選ばれる1種以上であり、そしてガス輸送機能がSPO2である。
【0136】
さらに好ましくは、ガス交換指標が、P′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)である。
【0137】
好ましくは、前記気相系呼吸機能検査システムにおいて、運動負荷手段がトレッドミル負荷装置またはエルゴメータ負荷装置である。
【0138】
また本発明によれば、(a)3次元直交座標系のX軸正方向を第1換気機能指標とし、X軸負方向をガス輸送機能指標とし、Y軸正方向を第2換気機能指標とし、Y軸負方向を代謝機能指標とし、Z軸正方向をガス交換指標とし、Z軸負方向を筋力として呼吸機能の関わる3次元空間を形成すること、(b)前記3次元空間を8分割し、X軸正、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第1空間とし、X軸正、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第2空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第3空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第4空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第5空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第6空間とし、X軸負、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第7空間とし、そしてX軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第8空間とすること、(c)被験者の呼気データから、第1換気機能指標、第2換気機能指標、ガス交換指標、ガス輸送機能指標、代謝機能指標を各々求め、さらに被験者の筋力を測定して前記指標および筋力値を前記3次元直交座標系に3次元座標表示し、被験者の属する空間を同定すること、そして(d)3次元座標表示された結果および前記被験者の属する空間の特性から被験者が呼吸機能を総合的に評価する以上の(a)〜(d)のステップから成ることを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理の方法が提供される。
【0139】
ここで好ましくは、第1換気機能指標がRAT、第2換気機能指標がFEV1%、ガス交換機能指標がDLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22)およびD′LCO/V′A(22)から成る群より選ばれ、代謝機能指標がV′O2,V′CO2,ATおよびRから成る群より選ばれ、ガス輸送機能指標がSPO2である。
【0140】
さらに好ましくは、ガス交換機能指標がP′CO(22)またはD′LCO/V′A(22)であり、代謝機能指標がV′O2である。好ましくは、被験者の筋力が握力である。
【0141】
本発明に従えば、前記の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法において、前記(c)ステップの代わりに、(C′1)被験者の呼気データからRAT,FEV1%を求めさらに、被験者の筋力を測定し、前記指標をX軸−Y軸平面に2次元表示し、そして(C′2)前記2次元座標面上に予め設定した(A)健康、(B)ライフスタイル管理、(C)スクリーニングおよび(D1−3)疾病管理の各ゾーンから成る健康管理ゾーンとステップ(C′1)で得られる2次元座標表示のマッチングを行い、その結果が(A)ゾーンであるとき、前記指標および筋力値を第2空間に3次元座標表示すること、以上の(C′1)および(C′2)から成るステップを実行することができる。
【0142】
本発明に従えば、前記の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法において、前記(c)ステップの代わりに、(C″1)被験者の呼気データからRAT,FEV1%を求めさらに、被験者の筋力を測定し、前記指標をX軸−Y軸平面に2次元表示し、そして(C″2)前記2次元座標面上に予め設定した(A)健康、(B)ライフスタイル管理、(C)スクリ−ニングおよび(D1−3)疾病管理の各ゾーンから成る健康管理ゾーンとステップ(C′′′1)の2次元座標表示のマッチングを行い、その結果が(B)ゾーンであるとき、さらに被験者の呼気データからP′CO(22)および/またはD′LCO/V′A(22)を求め、いずれか一方の指標を前記指標と合わせて第1空間に3次元座標表示すること、以上の(C″1)および(C″2)から成るステップを実行することができる。
【0143】
前記(C″2)ステップで、さらに筋力値を第2空間に3次元座標表示することができる。
【0144】
本発明に従えば、前記の呼吸機能からみた総合的健康管理の方法において、前記(C)ステップの代わりに、(C′′′1)被験者の呼気データからRAT,FEV1%を求めさらに、被験者の筋力を測定し、前記指標をX軸−Y軸平面に2次元表示し、そして(C′′′2)前記2次元座標面上に予め設定した(A)健康、(B)ライフスタイル管理、(C)スクリ−ニングおよび(D1−3)疾病管理の各ゾーンから成る健康管理ゾーンとステップ(C′′′1)の2次元座標表示のマッチングを行い、その結果が(C)または(D1−3)ゾーンであるとき、さらに被験者の呼気データからP′CO(22)および/またはD′LCO/V′A(22)、ならびにV′O2および/またはAT、加えてSPO2を求め、各々の指標を(b)ステップで形成した対応する空間に3次元座標表示すること、以上の(C′′′1)および(C′′′2)から成るステップを実行することができる。
【0145】
前記(C′′′2)ステップでさらに筋力値を第2空間、第4空間、第6空間、第8空間の1つ以上の空間に3次元座標表示することもできる。
【0146】
また本発明は、次の実施の形態が可能である。
(1)代謝機能からみた健康管理の方法であって、(a)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定し、(b)設定された運動モードを運動負荷量に換算し、(c)被験者を運動負荷手段を備える運動手段の上で、前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させるとともに、被験者の口から呼気を採取し、(d)呼気中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度に基づいてV′O2を演算し、(e)V′O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求め、(f)消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算し、そして(g)1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を被験者に与え被験者の健康管理を行うことを特徴とする代謝機能からみた健康管理の方法。
【0147】
(2)(a)3次元直交座標系のX軸正方向を第1換気機能指標とし、X軸負方向をガス輸送機能指標とし、Y軸正方向を第2換気機能指標とし、Y軸負方向を代謝機能指標V′O2とし、Z軸正方向をガス交換指標とし、Z軸負方向を筋力として呼吸機能の関わる3次元空間を形成すること、(b)前記3次元空間を8分割し、X軸正、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第1空間とし、X軸正、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第2空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第3空間とし、X軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第4空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第5空間とし、X軸負、Y軸正、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第6空間とし、X軸負、Y軸負、Z軸正方向で囲まれる分割空間を第7空間とし、そしてX軸正、Y軸負、Z軸負方向で囲まれる分割空間を第8空間とすること、(c)総合的健康管理のための気相系呼吸機能検査システムを準備し、この気相系呼吸機能検査システムは、被験者の第1換気機能指標およびガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標V′O2を測定、演算、表示する第2検査手段と、第2検査手段に接続され、被験者がその上で運動する運動負荷手段と、被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段と、被験者の第2換気機能指標を測定、演算、解析、表示する第4検査手段と、被験者の筋力を測定する筋力測定手段とを含み、(d)被験者の呼気データから、第1検査手段による第1換気機能指標、第4検査手段による第2換気機能指標、第1検査手段によるガス交換指標、第3検査手段によるガス輸送機能指標、第2検査手段による代謝機能指標V′O2を各々求め、さらに被験者の筋力を筋力測定手段によって測定して前記指標および筋力値を前記3次元直交座標系に3次元座標表示し、被験者の属する空間を同定すること、そして(e)3次元座標表示された結果および前記被験者の属する空間の特性から被験者の呼吸機能を総合的に評価するとともに、(f)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定し、(g)設定された運動モードを運動負荷量に換算し、(h)被験者を運動負荷手段を備える運動手段の上で、前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させるとともに、被験者の口から呼気を採取し、(i)第2検査手段によって呼気中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度に基づいてV′O2を演算し、(j)V′O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求め、(k)消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算し、そして(l)1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を被験者に与え被験者の健康管理を行うこと特徴とする健康管理の方法。
【0148】
本明細書中用いる「呼吸機能」とは大別して、「換気機能」、「ガス交換機能」、「ガス輸送機能」、「代謝機能」に分類される。「換気機能」の指標としては、FV(最大流量気流量曲線)解析およびVT(最大努力性呼出曲線)解析を通して得られる%VC,FEV1%(1秒率),RAT(係数勾配指数),dV/dF等が挙げられる。
【0149】
「ガス交換機能」の指標としては、DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)等が挙げられる。「ガス輸送機能」の指標としては、SPO2が挙げられる。「代謝機能」の指標としては、V′O2,V′CO2,R(ガス交換比、V′CO2/V′O2),AT、さらに運動消費エネルギー(E1)および1日消費推定エネルギー(E2)等が挙げられる。
【0150】
「呼吸機能」における前記の各機能の相関関係は、図1に示されるとおりである。
【0151】
さらに、具体的に「換気機能」は、素因変化(気道過敏性)、形態的変化(気道および肺胞)、過膨張、末梢気道閉塞等の健康管理上の問題点に関連がある。
【0152】
「ガス交換機能」は、総合ガス交換能力を表し、末梢組織における酸素消費要求度と関連がある。「ガス輸送機能」は、末梢組織へのO2の輸送性と関連がある。「代謝機能」は酸素消費量、運動(活動)消費エネルギーと関連がある。
【0153】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、被験者の呼気データに基づき、呼吸機能の空間概念化を図り、各呼吸機能指標(換気機能指標、ガス交換機能指標、ガス輸送機能指標、代謝機能指標)と生活習慣を関連づけて各機能を総合的に評価し、呼吸機能からみた健康管理ができる。
【0154】
さらに本発明によれば、被験者の呼気データに基づき、代謝機能指標を求めるとともに運動消費エネルギー(E1)を算出し、1日消費推定エネルギー(E2)を得るようにしたので、このようにして求められた1日消費推定エネルギー(E2)は従来技術の概算的な1日消費推定エネルギー(E3)と異なって、被験者の代謝機能を正確に反映し、したがってこの値を用いて被験者の栄養、肥満、運動等を含めた健康指導およびライフスタイル管理のための指導を的確に行うことが可能となる。
【0155】
さらに特定的には、中高年の酸素消費能力の改善を図り、代謝機能を含めた呼吸器の健康管理ができ、さらにライフスタイル管理もできる。
【0156】
加えて、アレルギー素因に基づく形態変化、酸素消費供給能について若年者の初期値を把握し、健康危険度の評価が可能となる。
【0157】
さらに本発明は、地域医師会、地域産業保健センター、市町村保健センターを母体とする集団(地域、職域、医療集団)の健康管理活動(健康教育、健康管理、プライマリケア、集団管理)の促進に寄与する。その結果、代謝を含めた呼吸器の健康管理により、中高年者ないしは高齢者に対して疾病予防とともに健康の維持増進に大きく貢献ができ、ひいては国民医療費の削減も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】呼吸機能における換気機能、代謝機能等各機能の相関関係を表す図である。
【図2】本発明の気相系呼吸機能検査システムの主要部のブロックダイヤグラムである。
【図3】V′O2,V′CO2測定装置の一例のブロックダイヤグラムである。
【図4】FEV1%(g)とRATの相関関係図をゾーン化して表示した図である。
【図5】呼吸機能と生活習慣との関係を空間概念化した模式図である。
【図6】FV曲線を得るための装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す処理回路123を作動させFV曲線を表示するときのフローチャートである。
【図8】被験者の呼気のFV曲線を模式的に示す図である。
【図9】本発明に従い、FV曲線を合成する模式図である。
【図10】FV,GV両曲線の一例を示す図である。
【図11】本発明に従いFV波形の解析、合成を行った一例を表示した図である。
【図12】本発明に従う2次回帰式の係数相関図(a1,a2)を示す図である。
【図13】本発明に従って、処理回路123を作動させa1,a2を演算、表示するときのフローチャートである。
【図14】本発明に従う2次曲線の1次項の係数a1と2次項の係数a2と係数勾配指数RATの関係を表す図である。
【図15】本発明に従って、処理回路123を作動させa1,a2,RATを演算、表示するときのフローチャートである。
【図16】本発明に従って、FEV(VCp)とRATTの関係を示す一例を表示した図である。
【図17】本発明に従ってFEV(g)またはFEV(t)とRATの関係を表す一例を表示した図である。
【図18】本発明に従って、1回呼吸法を説明するための模式図である。
【図19】本発明に従う呼吸機能、ガス交換機能測定装置の全体の構成を示す系統図である。
【図20】本発明に従って、処理回路123を作動させ、RAT,FEV,DLCO,DLCO/VA,D′LCO/V′A,P′CO(22),D′LCO/V′A(22)を演算、さらに3次元表示するときのフローチャートである。
【図21】本発明に従って、換気機能指標とガス交換機能指標を3次元表示した図である。
【符号の説明】
11 運動手段
12 マウスピース
13 運動負荷器
14 サンプリングチューブ
15 フローセンサ
16 赤外線式CO2センサ
17 ジルコニア式O2センサ
18 マイクロコンピュータ
19 ディスプレイ
20 被験者
21 V′O2,V′CO2測定装置
121 管
122 流量系統
123 処理回路
124 メモリ
125 表示手段
126 表示面
127 記録紙
128 読取装置
140 混合ガス源
141 第1切換手段
143 第2切換手段
146 CO濃度検出手段
147 He濃度検出手段
Claims (1)
- (a)被験者の換気機能指標および/またはガス交換機能指標を測定、演算、解析、表示する演算処理部を備える第1検査手段と、
(b)前記演算処理部に接続されていてもよく、被験者の代謝機能指標を測定、演算、表示する第2検査手段と、
(c)被験者のガス輸送機能指標を測定、演算する第3検査手段とを含み、
(d)第2検査手段は、
(d1)被験者の1日の生活様式に対応する運動モードを設定する手段と、
(d2)運動モード設定手段によって設定された運動モードを運動負荷量に換算する運動負荷量換算手段と、
(d3)被験者が乗る運動手段であって、運動負荷量換算手段の出力に応答し、被験者に前記運動負荷量をかけながら所定時間運動させる運動負荷手段を備える運動手段と、
(d4)被験者の口から呼気を採取する呼気採取手段と、
(d5)呼気採取手段からの呼気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
(d6)酸素濃度検出手段の出力に応答し、検出した酸素濃度に基づいて被験者の代謝機能の指標V'02(酸素摂取量)を演算するV'O2演算手段と、
(d7)前記V'O2演算手段の出力に応答し、前記指標V'O2から前記所定時間に被験者の消費した運動エネルギー(E1)を求める運動エネルギー演算手段と、
(d8)運動エネルギー演算手段の出力に応答し、消費した運動エネルギー(E1)を被験者の1日消費推定エネルギー(E2)に換算する1日消費推定エネルギー換算手段と、
(d9)1日消費推定エネルギー換算手段の出力に応答し、1日消費推定エネルギー(E2)を評価し、酸素消費量改善のための運動処方および栄養所要量変更についての処方を表示出力する出力手段とを含むことを特徴とする呼吸機能からみた総合的健康管理装置のための気相系呼吸機能検査システム。
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