JP3573543B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強靱性に優れたビスマレイミド樹脂に関する。さらに、本発明は、その熱硬化性樹脂組成物を含有する硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されてきた有機合成高分子系接着剤としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ビスマレイミド樹脂などを含む接着剤が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂とビスマレイミド樹脂は、耐熱性、機械的強度に優れた樹脂として挙げられるが、脆いという問題がある。
【0003】
そこで、これらの樹脂に改質剤を加えて、強靱化を図る試みがなされている。例えば、エポキシ樹脂を改質する方法として、例えば、ポリエステルをエポキシ樹脂に添加することによりエポキシ樹脂の耐熱性や曲げ弾性率を損なうことなく強靱性化できることが友井らの研究(Eur. Polym. J. 31, 275(1995))で報告されている。また、ポリフタロイルジフェニルエーテル(PPDE)をエポキシ樹脂の改質剤として加えることが有効であることが飯島らの研究(J.Appl.Polym.Sci., 43, 1685(1991))で報告されている。
【0004】
一方、ビスマレイミド(BMI)樹脂およびその硬化物は、エポキシ樹脂よりさらに耐熱性が高く、エポキシ樹脂と同等の取扱作業性を有した優れた樹脂であるが、ビスマレイミド樹脂の応用範囲が高性能複合材料や電子材料などの先端技術分野に広がるにつれ、より高性能なビスマレイミド樹脂、特に耐熱性や機械的特性を維持し、かつ、強靱性に優れるビスマレイミド樹脂が求められ、各種の改良が施されている。
このようなビスマレイミド樹脂の改質方法には、ジフェニルケトンとビスフェノールとのポリエーテル、ポリエーテルスルホン(PES)、アルキルフタレートのポリエステル、熱可塑性ポリイミドを改質剤として添加する方法が報告されている。
また、ビスマレイミド樹脂とアルケニルフェノールとの組成物は、作業性に優れた組成物であることも知られている。
しかし、高耐熱性や機械的強度の本来のビスマレイミド樹脂が有する特性を損なうことなく、しかも高い強靱性が得られる改質剤は知られていない。
さらに、航空材料や電気・電子材料等の先端技術のように、より高い性能を要求される用途においては、まだ満足のいく性質を有するビスマレイミド樹脂は少なく、優れた性能を有する硬化物を得ることができるビスマレイミド樹脂組成物の出現がさらに望まれている。
【0005】
一方、特開平2−165945号公報では、ポリエーテルケトン製の熱可塑性繊維を基材として用い物理的に強度を上げたビスマレイミド樹脂マトリックスのプリプレグが報告されているが、ビスマレイミド樹脂とポリエーテルケトン(PEK)のポリマーブレンドは報告されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性や機械的強度等の本来ビスマレイミド樹脂の硬化物が有する優れた特性を損なうことなく、しかも高い強靱性を有する硬化物が得られる熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を提供することにある。本発明は、上記目的の少なくとも1つを達成するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意努力した結果、ビスマレイミドと下記式(5)で表されるポリエーテルケトンとのポリマーブレンドにより、溶媒を加えることなく、また硬化温度を300℃以上の高温にせずに、耐熱性、機械特性を維持しながら、強靱性を有する熱硬化性樹脂組成物を得ることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)芳香族ビスマレイミド100重量部、(B)アルケニルフェノール58〜100重量部、および、(C)下記式(5)で表されるポリエーテルケトン5〜100重量部を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
そして、ポリエーテルケトンが、オルト位とメタ位とのフタロイル部分を有する重縮合体であるのが好ましい。
上述の熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化してなる硬化物を提供する。
【0009】
以下、本発明の熱硬化樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリエーテルケトンを改質剤としてビスマレイミド樹脂を強靱化してなるものである。
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いる芳香族ビスマレイミド(A)は、対応する芳香族ジアミンと無水マレイン酸とを反応させる公知の方法により得ることができる。
芳香族ビスマレイミド(A)としては、
N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、
N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、
N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ビフェニレンビスマレイミド、
N,N’−4,4’−(3,3’−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、
2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン
および下記一般式(1)で表されるビスマレイミドなどを挙げることができる。
【0011】
【化1】
(式中、Xは、−CH2 −,−C(CH3 )2 −,−SO2 −,−SO−または−O−を示す。)
【0012】
上記一般式(1)で表されるビスマレイミドとしては、例えば、
N,N’−4,4’−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、
N,N’−4,4’−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、
N,N’−4,4’−2,2−ジフェニルプロパンビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、
N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ジフェニルスルホキシドビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ジフェニルスルフィドビスマレイミド、
N,N’−4,4’−ベンゾフェノンビスマレイミド、
等を挙げることができる。
【0013】
中でも、下記式(2)で表されるN,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(BDM)、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ベンゾフェノンビスマレイミド等が硬化後の樹脂の耐熱性の点で好ましい。特に、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。具体的には、チバガイギー社製のマトリミド5292系の上述の式(2)で表されるN,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド等の市販品を使用することができる。
【0014】
【化2】
【0015】
上述の芳香族ビスマレイミド(A)は、単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。アルケニルフェノールとの相溶性がよく、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度を下げることができるなど樹脂の反応性と機械的特性の点から、融点が170℃以下のものを用いることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられるCH2 =CHCH2 −のアリル基を有するアルケニルフェノール(B)は、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0017】
【化3】
(式中、R1 またはR2 は、それぞれ独立にアリル基を表し、Yは、nil(なし)、−C(CH3 )2 −、−CH2 −、−C(CF3 )2 −を表し、nは1〜4の整数を表す。)
【0018】
ここで、R1 またはR2 は、それぞれ独立にアリル基を表す。アリル基は、芳香環上の位置は特に限定されないが、1〜4個が環上で左右対象の位置に存在することが好ましい。この理由は、硬化後の樹脂のガラス転移温度が高くなるからである。
【0019】
具体的には、下記式(4)で表される2,2’−ジアリルビスフェノールA(DBA)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアリルジフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジアリルフェニル)プロパン、2,2−ジアリルビスフェノールF等が挙げられる。また、ポリフェノール類と、塩化アリルまたは臭化アリルとの反応生成物のアリル化率がフェノール性OH基に対して50%以上100%以下で、かつクライゼン転移したアリル基がフェノール性OH基に対して20%以上のアルケニルフェノールも使用することができる。より具体的には、チバガイギー社製のマトリミド5292系の上述の式(4)で表される2,2’−ジアリルビスフェノールA等の市販品を使用することができる。
【0020】
【化4】
【0021】
上述のアルケニルフェノール(B)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2,2’−ジアリルビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジアリルフェニル)プロパン、2,2’−ジアリルビスフェノールF等が硬化後の樹脂のガラス転移温度が高いため好ましく、特に、上述の式(4)の2,2’−ジアリルビスフェノールA、2,2’−ジアリルビスフェノールFが相溶性や硬化物の耐熱温度が高いために好ましい。
【0022】
本発明に使用するアルケニルフェノール(B)の配合量は、ビスマレイミド(A)100重量部に対して58〜100重量部である。アルケニルフェノール(B)の配合量をこの範囲としたのは、58重量部未満では、混練性が低下し、100重量部を越えると機械的強度が低下するためである。
58〜93重量部であることが好ましく、特に、58〜86重量部であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いるポリエーテルケトン(C)は、エーテル部分が、ジフェニルエーテルであって、フタロイル部分のカルボニル基がオルト位、メタ位およびパラ位の少なくとも1種である共重合体であって、下記式(5)で表される構造式を示す。
【0024】
【化5】
【0025】
x/y(モル比)=100/0〜10/90、特に100/0〜20/80である。x/yのモル比が、100/0の場合は、ポリエーテルケトンのフタロイル部分がオルト位のみからなることを意味する。
具体的には、オルトフタロイルジフェニルエーテル重縮合体(PPDE)、オルトフタロイルジフェニルエーテルとメタフタロイルジフェニルエーテルとの共重縮合体(PPIDE)、オルトフタロイルジフェニルエーテルとパラフタロイルジフェニルエーテルとの共重縮合体、オルトフタロイルジフェニルエーテルとメタフタロイルジフェニルエーテルとパラフタロイルジフェニルエーテルとの三元共重縮合体等が挙げられる。
中でも、オルトフタロイルジフェニルエーテルとメタフタロイルジフェニルエーテルの共重縮合体であるのが、硬化物の機械的強度、ガラス転移温度の低下なしで強靱性化するという点で好ましい。
【0026】
フタロイル部分が、オルト位とメタ位とを含む共重縮合体である場合のモル比は、オルト位:メタ位が、90:10〜10:90特に、70:30〜30:70であるのが、硬化物の耐熱性の維持、作業性の向上の点で好ましい。
さらに、フタロイル部分が、オルト位とメタ位とパラ位とを含む三元共重縮合体である場合、オルト位:メタ位:パラ位のモル比は、80:10:10〜20:40:40であるのが、硬化物の耐熱性の向上の点で好ましい。
【0027】
ポリエーテルケトン(C)は、i)フタロイル部分が、オルト位である重縮合体(PPDE)のみである場合、o−フタロイルジクロライドとジフェニルエーテルをほぼ等モル、或いは過剰モルの割合で加え、例えば、塩化アルミニウム、メチレンジクロライドの存在下で、窒素雰囲気中−60℃で1時間攪拌してエーテル化し、温度を徐々に高めて−20℃の温度で6時間程、さらに室温で1日撹拌することで製造する。メタンスルホン酸/五酸化二リン系触媒(上田らMacromolecules, 20, 2675(1987))を用いて、PPDEをカップリングさせて高分子量のPPDEにすることもできる。
【0028】
ii)フタロイル部分がオルト位とメタ位である共重縮合体の場合は、ジフェニルエーテルに、o−フタルロイルジクロライドとm−フタルロイルジクロライドを加え、オルト位の重縮合体のみの場合と同様に反応させて製造する。
【0029】
iii)フタロイル部分がオルト位とパラ位である共重縮合体の場合は、PPDEの場合と同様に製造される。
触媒を用いる場合は、フリーデル−クラフツ(Friedel-Crafts)系触媒やメタンスルホン酸/五酸化二リン系触媒等を用いて反応させて得ることができる。
【0030】
ポリエーテルケトン(C)は少量の低分子量部を含んでいる。数平均分子量(Mn)は、この低分子量部の存在に敏感であり、分子量(Mw)としては、MGPC (標準ポリスチレンを使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピーク値)を用いるのが好ましい。ポリエーテルケトン(C)の平均分子量(MGPC )は、3,000 〜100,000 特に、5,000 〜50,000であるのが、靱性と耐熱性のバランスの点で好ましい。
【0031】
本発明に用いるポリエーテルケトン(C)の配合量は、芳香族ビスマレイミド(A)100重量部に対して、5〜100重量部、特に10〜60重量部であるのが好ましい。5重量部未満では、靱性の向上が見られず、100重量部超では、耐熱性が低下する。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化触媒を用いなくてもよいが、さらに硬化触媒を加えてもよい。
硬化触媒には特に限定はないが、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキシド等が例示される。
中でも特に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等は好適に例示される。
硬化触媒の使用量は、芳香族ビスマレイミド(A)100重量部に対して、0.1〜5重量部、特に0.5〜1重量部であるのが、貯蔵安定性と硬化速度のバランスの点で好ましい。
【0033】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、希望する物性、粘性的な性質等を付与するために、必要に応じて充填材、可塑剤、溶剤等を混合してもよい。
【0034】
このような本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造および硬化方法は、通常のビスマレイミド樹脂と同様でよい。
例えば、所定量のビスマレイミドとアルケニルビスフェノールとポリエーテルケトンと、さらに必要により硬化触媒等の添加物を加えて撹拌・混合し、本発明の熱硬化性樹脂組成物を得る。
得られた組成物は、特別な溶媒を用いなくてもアルケニルフェノールの液相に混練され、均質である。
その後、例えば所定形状のモールドに充填し、ビスマレイミド樹脂(化合物)の種類等に応じて必要に応じて、例えば、180〜250℃程度に加熱して、硬化物を得る。
得られた硬化物は、ミクロ相分離構造を形成し、耐熱性や機械的特性を損なうことなく、靱性に優れている。
【0035】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その優れた耐熱性、強靱性を生かして、電気・電子材料、航空および宇宙材料(あるいは複合材料)、各種接着剤、注型材料、各種成型材料等の各種の用途に好適に使用可能である。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1〜11、および比較例1)
1.ポリエーテルケトン(PPDE1〜7)の合成
1:1〜1:1.2のモル比でジフェニルエーテルとフタロイルクロライドとを仕込み、触媒としてFriedel−Crafts系触媒(塩化アルミニウム)を加え、下記表1に示すポリエーテルケトン(PPDE1〜4)を合成した。
また、メタンスルホン酸/五酸化二リン系触媒によるPPDEのカップリング反応で高分子量のPPDE5〜7を合成した。
重合温度および時間、収率[%]、平均分子量MGPC および数平均分子量Mn(いずれもGPCで測定)、Mw/Mn、ガラス転移温度Tg([℃] DSCで測定)を表1に示す。
【0037】
2.ポリエーテルケトン(PPIDE1および2)の合成
1:0.49:0.49〜1:0.51:0.51のモル比でジフェニルエーテルとo−フタロイルクロライドとm−フタロイルクロライドとを仕込み、触媒としてFriedel-Crafts系触媒(塩化アルミニウム)を加え、下記表1に示すフタロイル部分の全量中のメタ位のモル%を、50モル%(オルト位:メタ位=1:1)としたポリエーテルケトン(PPIDE1および2)の合成を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
3.熱硬化性樹脂組成物の作製および硬化
2,2’−ジアリルビスフェノールA85重量部に、1で得られた各PPDE1〜7、または2.で得られた各PPIDEを改質剤とし表2に示す量加え、130℃に加熱し、混合、攪拌してPPDEまたはPPIDEを溶解した後、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン100重量部を加えて混合、攪拌して、本発明の熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0040】
作製した熱硬化性樹脂組成物を、あらかじめ160℃に加熱しておいた型(予め離型剤を薄く塗布)に注型し、下記の条件によって硬化を行った。
熱硬化性樹脂組成物は、160℃で3時間加熱した後、180℃に昇温して1時間、さらに200℃に昇温して2時間、次いで250℃に昇温して6時間加熱して硬化を行った。さらに、室温までゆっくり冷却し、250℃から50℃まで5時間を要した。
【0041】
得られた硬化物について、破壊靱性値KIC(3点曲げ試験片で測定)、曲げ強度(JIS K6911に準拠)、曲げ弾性率(JIS K6911に準拠)、およびガラス転移温度Tg(℃ DSCで測定)を測定し、また、目視によって性状を観察した。
結果を下記表2に示す。なお、表2において、PPDEを添加せず、ビスマレイミド化合物100重量部、ジアリルビスフェノール85重量部のみからなる組成物の例を「対照」 (比較例1)とし、また表2中のnは試験サンプルの数である。
【0042】
また、図1にPPDEを10wt%添加した場合(図1中○で表示)、およびイソフタロイルを50モル%含有するPPIDEを10wt%添加した場合(図1中□で表示)の、ポリエーテルケトンの分子量と、硬化物の破壊靱性値KIC、曲げ弾性率、曲げ強さ、ガラス転移温度との関係を示す。図1中●は未改質の硬化物の値である。
そして、図2にPPDEの分子量が8,300 (PPDE2 図2中○で表示)およびPPIDEの分子量が21,800(PPIDE1 図2中□で表示)のポリエーテルケトン添加量と、硬化物の破壊靱性値KIC、曲げ弾性率、曲げ強さ、ガラス転移温度との関係をそれぞれ示す。図2中●は未改質硬化物の値である。
【0043】
【表2】
【0044】
表2および図1に示される結果より明らかなように、ポリエーテルケトンの分子量に対する硬化物の特性は、分子量の増大と共に破壊靱性値KICが増加し、曲げ弾性率は、分子量の増加とともにやや低下する傾向が見られたものの、曲げ強度、ガラス転移点ともに優れた機械特性を示している。
【0045】
また、表2および図2に示される結果より明らかなように、ポリエーテルケトンの添加量に対する硬化物の特性は、ポリエーテルケトンの添加量の増加と共に破壊靱性値KICは増加する。曲げ弾性率はやや低下する傾向が見られたものの、曲げ強度、ガラス転移点とともに優れた機械特性を示している。特にPPIDEは曲げ強度、曲げ弾性率の低下を抑えて、破壊靱性値KICを著しく増加させている。また、添加量が増加するにつれて硬化物は不透明になった。なお、各硬化物のTg測定時のDSC曲線において不明確な吸熱ピークは、観測されなかった。
【0046】
図3に、改質剤としてPPDEを10重量%添加したビスマレイミド樹脂から得られた組成物の温度と動的(貯蔵)粘度、損失正接Tanδの関係を示すグラフを示した。
図4に、改質剤としてPPIDEを10重量%または15重量%添加したビスマレイミド樹脂から得られた組成物の温度と動的(貯蔵)粘度、損失正接Tanδの関係を示すグラフを示した。図3、4いずれもポリエーテルケトンに基づくα’−緩和ピークが出現し、硬化物中に相分離構造が存在することを示している。
さらに、硬化物の断面のモルホロジーを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。結果を図5〜図7に示す。
図5〜図6から、本発明のPPDE改質硬化物のモルホロジーは、ビスマレイミドマトリックス中に分散したPPDE粒子を持つ海島構造であり、PPDEの分子量増加と共に粒径は大きくなっている。図7からPPIDE改質硬化物のモルホロジーは共連続相構造であり、ポリエーテルケトンによる改質では共連続相構造による強靱な硬化物が得られていることがわかる。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【0047】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、耐熱性や機械的強度等の本来ビスマレイミド樹脂が有する優れた特性を損なうことなく、しかも高い強靱性を有する熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得ることができる。本発明は、これらの効果の内少なくとも1つを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】PPDE、PPIDEの分子量と得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化物の破壊靱性値KIC、曲げ弾性率、曲げ強度およびTgとの関係を示すグラフである。
【図2】PPDE、PPIDEの添加量と得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化物の破壊靱性値KIC、曲げ弾性率、曲げ強度およびTgとの関係を示すグラフである。
【図3】改質剤としてPPDEを10重量%添加したビスマレイミド樹脂から得られた組成物の温度と貯蔵粘度、Tanδの関係を示すグラフである。
【図4】改質剤としてPPIDE(Mw21,800、IP50モル%)を10重量%または15重量%添加したビスマレイミド樹脂から得られた組成物の温度と貯蔵粘度、Tanδの関係を示すグラフである。
【図5】実施例5の硬化物の走査型電子顕微鏡による断面を示す図面代用写真である。
【図6】実施例7の硬化物の走査型電子顕微鏡による断面を示す図面代用写真である。
【図7】実施例11の硬化物の走査型電子顕微鏡による断面を示す図面代用写真である。
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JPH0987460A (ja) | 1997-03-31 |
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