JP3570740B2 - 高ジルコニア質溶融鋳造耐火物 - Google Patents
高ジルコニア質溶融鋳造耐火物 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はガラスの溶融窯用として優れた耐食性を有する高ジルコニア質溶融鋳造耐火物であって、特には低アルカリガラスの溶融窯用またはガラスの電気溶融窯用に好適な高ジルコニア質溶融鋳造耐火物に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融鋳造耐火物は、所定の成分となるように調合された耐火物原料を、通常黒鉛電極を用いる電気アーク炉によって溶融し、溶湯を所定の形状の鋳型に流し込み、これを保温しながら冷却、固化させて得られる。したがって、通常使用されている結合耐火物(たとえばプレス成形後焼成された煉瓦)と比べ、その組織が非常に緻密で優れた耐食性を示す耐火物として知られている。
【0003】
このような溶融鋳造耐火物の中で、特にジルコニア(ZrO2)を主成分とする耐火物は、溶融ガラスに対して優れた耐食性を有しており、ZrO2含有量の多い溶融鋳造耐火物が好んで使用されている。高ジルコニア質溶融鋳造耐火物としては、たとえば特公昭48−32408にはZrO2を62重量%以上含有するジルコニア、アルミナ、シリカ系の耐火物が開示されている。
【0004】
しかし、特公昭48−32408に実施例として示されている溶融鋳造耐火物は、ZrO2含有量の最も多い耐火物でもZrO2が88.7重量%となっており、このことは当時ZrO2成分を90重量%程度含む亀裂のない実用性のある溶融鋳造耐火物を鋳造する技術がなかったことを意味している。
【0005】
その後、特公昭50−39090や特公昭59−12619において、ZrO2を90重量%以上含有する高ジルコニア質溶融鋳造耐火物が提案され、かつ市販されるようになった。それ以降、高ジルコニア質溶融鋳造耐火物が耐食性に優れ、ガラス素地を汚しにくく発泡性も小さいことから、ガラス溶融窯用の耐火物として、ガラス溶融窯の特に耐食性を必要とする箇所に使用されるようになった。最近では、高純度のまたはアルカリ成分の含有量が少ない高融点のファインガラスを溶融するガラス溶融窯の分野にまでその用途が広がりつつある。
【0006】
これらの高ジルコニア質溶融鋳造耐火物中にはシリカ(SiO2)を主成分とする比較的少量のマトリックスガラスが含まれている。この耐火物の主な構成成分であるバデライト(ZrO2)結晶には、バデライト結晶に特有の単斜晶と正方晶の可逆的な結晶転移に伴う体積変化が800〜1250℃の温度域に存在し、耐火物中のマトリックスガラスはこの体積変化を吸収して耐火物中に発生する応力を緩和するように、バデライト結晶の転移温度域である800〜1250℃において適度の軟らかさを有するガラスとなるように調整されている。
【0007】
特公昭50−39090や特公昭59−12619に提案されている高ジルコニア質溶融鋳造耐火物では、耐火物中にマトリックスガラスの粘性を低減する成分としてアルカリ成分(Na2OやK2O)が添加され、これらのアルカリ成分がバデライト結晶の転移温度域において、耐火物中に発生する応力を緩和し得る適度の粘性をマトリックスガラスに付与している。
【0008】
しかしこれらの高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、低アルカリガラスを溶融するガラス溶融窯の内張耐火物として使用されると、アルカリ成分がガラス中に溶け出す傾向がある他、溶融ガラスに直接通電してガラスを加熱溶融しようとすると、これらの耐火物中に存在するアルカリ成分を含むマトリックスガラスがガラスの溶融温度域においてイオン導電性を示し、通電した電気の一部が溶融ガラス中を流れないで溶融ガラスを取り囲んでいる耐火物中を流れて無駄に消耗されることになり、ガラスの電気溶融窯用の耐火物には適していない。
【0009】
特公平2−40018に提案されている高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、Na2O、K2Oなどのアルカリ成分の耐火物中の含有量を0.10重量%未満に制限し、さらには電気抵抗率を小さくしない、イオン半径の大きいイオンになるK2O成分を多く含有させた高温における電気抵抗率が大きい耐火物である。しかし、この高ジルコニア質溶融鋳造耐火物はガラス溶融窯の熱上げ時に耐火物表面が部分的に欠落するチップオフ現象を示す他、800〜1250℃の温度域を通過する熱サイクルを受けると、残存体積膨張が累積して遂には亀裂が生じるという、耐熱サイクル抵抗性の問題がある。
【0010】
特開昭63−285173にも高温の使用温度(1500℃)において電気抵抗率が大きい高ジルコニア質溶融鋳造耐火物が提案されている。この提案では、イオン半径が小さく電気抵抗率を顕著に小さくするNa2O成分を実質的に含まない組成とし、代わりにB2O3を0.5〜1.5重量%とイオン半径が大きいK2Oなどを1.5重量%以下含有せしめてマトリックスガラスの粘性を調整し、電気抵抗率が大きく亀裂がほとんどない高ジルコニア質溶融鋳造耐火物を得ている。
【0011】
しかし、記載されている実施例を見ると、SiO2の含有量がいずれも6.5重量%以下であることから、耐熱サイクル抵抗性のあるものとはいえず、ガラス製品の欠点の原因となるチップオフ現象の有無とその解決方法についてもまったく触れていない。
【0012】
他方、特開平1−100068、特開平3−218980、特開平3−28175などにおいて、アルカリ成分の含有量がそれほど制限されていない高ジルコニア質溶融鋳造耐火物については、チップオフ現象や耐熱サイクル抵抗性を改善した高ジルコニア質溶融鋳造耐火物が提案されている。
【0013】
高温における電気抵抗率が大きい高ジルコニア質溶融鋳造耐火物、すなわちアルカリ成分の含有量を0.10重量%以下に制限した高ジルコニア質溶融鋳耐火物についても、ガラス製品の品質と歩留の向上、さらにはガラス溶融窯の信頼性と耐久性を確保するため、耐火物のチップオフ現象や、熱サイクルによる残存体積膨張の累積によって亀裂が生じる問題の解決が待たれている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高温における電気抵抗率が大きく、昇温時に耐火物表面が部分的に欠落するチップオフ現象を示さず、かつ残存膨張の累積によって亀裂が発生しない、すなわち耐熱サイクル抵抗性も併せて有するガラスの電気溶融窯用に適した高ジルコニア質溶融鋳造耐火物を提供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、耐火物の化学成分として、重量%で(以下の%はいずれも重量%である。)ZrO2を85〜91%、SiO2を7.0〜11.2%、Al2O3を0.85〜3.0%、P2O5を0.05〜1.0%、B2O3を0.05〜1.0%およびK2OとNa2Oをその合量で0.01〜0.12%含み、かつK2OをNa2O以上に含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、化学成分の85〜91%という大部分がジルコニア(ZrO2)からなる耐火物であり、バデライト結晶を主な構成成分としていて、溶融ガラスと接触した状態で使用されるときに優れた耐食性を示すとともに、アルカリ成分の含有量が少なく、しかもアルカリ成分としてイオン半径が大きく移動度が小さいK2Oを主に含んでいるので、耐火物の使用温度域における電気抵抗率が大きい。
【0017】
高ジルコニア質溶融鋳造耐火物としては、耐火物中のZrO2の含有量は多い方が溶融ガラスに対する耐食性が優れているので、85%以上、好ましくは88%以上とする。しかし、ZrO2の含有量が91%より多いと、マトリックスガラスの量が相対的に少なくなってバデライト結晶の転移(すなわち変態)にともなう体積変化を吸収できなくなり、耐熱サイクル抵抗性が劣化するので91%以下とされる。
【0018】
SiO2は、耐火物中に発生する応力を緩和するマトリックスガラスを形成する必須成分であり、亀裂のない実用寸法の溶融鋳造耐火物を得るために、7.0%以上含有している必要がある。しかし、SiO2成分の含有量が11.2%より多いと耐食性が小さくなるので11.2%以下としてあり、好ましくは10.0%以下とする。
【0019】
Al2O3は、マトリックスガラスの温度と粘性の関係を調整する役割を果たす他、マトリックスガラス中のZrO2の含有量を低減する効果を示す。マトリックスガラス中のZrO2の含有量が少ないと、従来の耐火物に認められるジルコン(ZrO2・SiO2)結晶のマトリックスガラス中における析出が抑制され、残存体積膨張の累積傾向が顕著に減少する。
【0020】
マトリックスガラス中のZrO2の含有量を有効に低減せしめるため、耐火物中のAl2O3の含有量は0.85%以上、好ましくは1.0%以上とする。また、耐火物を鋳造したり使用する際に、マトリックスガラス中にムライトなどの結晶が析出してマトリックスガラスが変質し、耐火物に亀裂が発生したりすることがないように、Al2O3の含有量は3.0%以下としてある。
【0021】
したがって、本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物におけるAl2O3の含有量は0.85〜3.0%、好ましくは1.0〜3.0%である。耐火物組成をこのような範囲に調整して鋳造した高ジルコニア質溶融鋳造耐火物では、耐熱サイクル抵抗性、すなわち残存体積膨張の累積による体積増加が実用的に問題のない範囲内に抑制されるとともに、チップオフ現象も顕著に改善される。
【0022】
また、少量のアルカリ成分の他にB2O3とP2O5が含まれていることによってアルカリ成分の含有量が少なくてもマトリックスガラスの800〜1250℃における粘性が適度の大きさに調整されており、使用時にバデライト結晶の転移温度域を通過する熱サイクルを繰り返し受けても、残存体積膨張がわずかとなるので、残存体積膨張の累積によって亀裂を生じる傾向を示さない。
【0023】
B2O3はP2O5とともに主にマトリックスガラス中に含まれ、アルカリ成分の代わりにP2O5と共働してマトリックスガラスを軟らかくするとともに、高温における耐火物の電気抵抗率を小さくしない成分である。
【0024】
B2O3の含有量は、高ジルコニア質溶融鋳造耐火物中のマトリックスガラスの量が少ないので0.05%以上あればマトリックスガラスの粘性を調整する効果を示す。しかし、B2O3の含有量が多すぎると緻密な溶融鋳造耐火物が鋳造できなくなるので、B2O3の含有量は0.05〜1.0%、好ましくは0.10〜1.0%とされる。
【0025】
P2O5はB2O3およびアルカリ成分とともにほとんどがマトリックスガラス中に含有されており、バデライト結晶の転移温度域におけるマトリックスガラスの粘性を調整(軟らかく)してバデライト結晶の転移に伴う体積変化によって生じる応力に起因する亀裂の発生を防止する。また、P2O5とB2O3は耐火物がガラス溶融窯に使用される際、ガラス中に溶け出すことがあってもガラスを着色する恐れのない成分である。さらに、P2O5を耐火物原料に添加すると、耐火物原料の溶融が容易となるので、耐火物を鋳造するのに要する電力の消費量を少なくできる利点もある。
【0026】
ここで、高ジルコニア質溶融鋳造耐火物中にあるマトリックスガラスの量が少ないので、耐火物中のP2O5の含有量が少なくても、マトリックスガラス中におけるP2O5の含有量は相対的に多く、マトリックスガラスの粘性を調整する効果はP2O5が耐火物中に0.05%以上含まれていれば得られる。また、P2O5の含有量が1.0%より多いと、マトリックスガラスの性質が変って耐火物の残存体積膨張とその累積に伴う亀裂の発生を助長する傾向を示すので、マトリックスガラスの粘性の調整に適した耐火物中のP2O5の含有量は0.05〜1.0%であり、好ましくは0.1〜1.0%である。
【0027】
また、高温の使用温度域における耐火物の電気抵抗率が充分大きな値となるように、K2OとNa2Oからなるアルカリ成分の含有量は酸化物としての合計量で0.12%以下とし、さらにアルカリ成分の50%以上、好ましくは70%以上をガラス中におけるイオン移動度が小さいK2Oとしている。しかし、K2OとNa2Oの合量が0.01%より少ないと、溶融鋳造耐火物を亀裂なく製造することが困難となるので、K2OとNa2Oの合量は0.01%以上とする。また、亀裂のない高ジルコニア質溶融鋳造耐火物を安定して鋳造できるようにK2Oの含有量をNa2Oの含有量より多くする。Na2Oの含有量を0.008%以上とし、K2Oの含有量を0.02〜0.10%とするのが好ましい。
【0028】
また、原料中に不純物として含まれるFe2O3とTiO2の含有量は、その合量が0.55%以下であれば通常のガラスの溶融窯において着色の問題はなく、好ましくはその合量が0.30%を超えない量とされる。また、耐火物中にアルカリ土類酸化物を含有せしめる必要はなく、アルカリ土類酸化物の含有量は合計して0.10%未満であることが好ましい。
【0029】
かくして、本発明の好ましい高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、耐火物の化学成分として、ZrO2を88〜91%、SiO2を7.0〜10%、Al2O3を1.0〜3.0%、P2O5を0.10〜1.0%およびB2O3を0.10〜1.0%含有する。
【0030】
本発明の他の好ましい高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、耐火物の1500℃における電気抵抗率が100Ωcm以上、より好ましくは150Ωcm以上である。この条件が満たされることによって、この耐火物をガラスの電気溶融窯の内張耐火物に使用して溶融ガラスに直接電流を流す通電加熱をしても、電流がガラス溶融窯の内張耐火物を流れて電力が無駄に消耗されることがない。
【0031】
本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、高ジルコニア質溶融鋳造耐火物に固有の特徴として溶融ガラスに対する耐食性が優れており、かつ1500℃の高温における電気抵抗率が100Ωcm以上と大きく、ガラス製品中の欠陥の原因となるチップオフ現象を示さず、残存体積膨張の累積により耐火物に亀裂が発生することがない(耐熱サイクル抵抗性に優れている)。かくして、本発明の溶融鋳造耐火物は、ガラスの電気溶融窯用に特に好適な耐火物である。
【0032】
高ジルコニア質溶融鋳造耐火物の耐熱サイクル抵抗性の問題について、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、従来の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物では、マトリックスガラス中に溶けているZrO2が使用時にマトリックスガラス中のSiO2と反応し、ジルコン結晶となってマトリックスガラス中に析出する。
【0033】
その結果、マトリックスガラスのSiO2が減少して相対的にマトリックスガラスの量が減少し、さらに析出したジルコン結晶の存在によってマトリックスガラスの粘性が増大し、マトリックスガラスの粘性がバデライト結晶の転移に起因する応力の緩和を可能とする適切な粘性範囲からはずれてマトリックスガラスがバデライト結晶の転移にともなう体積変化に追随できなくなる。
【0034】
すなわち、マトリックスガラスの相対量が減少して変質すると、バデライト結晶の転移にともなって耐火物中のバデライト結晶の間やバデライト結晶中に生じる隙間や亀裂がマトリックスガラスによって埋められず、隙間や亀裂が空隙となって累積し、その結果耐火物の嵩が増えて残存体積膨張を示す。
【0035】
本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物では、耐火物中のSiO2の含有量を7.0%以上として必要充分な量のマトリックスガラスを耐火物中に確保し、Al2O3を耐火物中に0.85%以上含有せしめてあるのでマトリックスガラス中のZrO2の含有量が少なくなっており、マトリックスガラス中におけるジルコン結晶の析出が抑制され、ジルコン結晶の析出によるマトリックスガラスの減少とマトリックスガラスの粘性の変化が顕著に抑制され、良好な耐熱サイクル抵抗性が確保される。
【0036】
チップオフ現象が改善される理由は今のところよく分からないが、耐火物中のAl2O3の含有量を従来の耐火物より多くしたことによって、マトリックスガラス中に溶けているZrO2の量が減少したことと、使用温度域におけるマトリックスガラスの粘性が適度に小さくなっていることなどが寄与しているものと推定される。
【0037】
【実施例】
以下に本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0038】
ジルコニア原料である脱珪ジルコンに低ソーダアルミナ、シリカ、BPO4、B2O3および炭酸カリウムなどの原料を調合して混合原料とし、この混合原料を2本の黒鉛電極を備えた出力500kVAの単相アーク電気炉に装入して、2200〜2400℃の温度で完全に溶融した。
【0039】
この溶湯を断熱材であるバイヤーアルミナの粉末中に予め埋めておいた内容積160mm×200mm×350mmの黒鉛型中に流し込んで鋳造し、室温付近の温度になるまで放冷した。得られた種々の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物の化学分析値と調べた諸性質を表1と表2に併せて示した。表1と表2には示されていないが、Fe2O3とTiO2の含有量はいずれも0.3%以下であり、MgOとCaOの含有量はいずれも0.1%以下であった。
【0040】
これらのうち例1〜10に示されている耐火物は本発明の実施例であり、例11〜16に示されている耐火物は比較例である。これらの高ジルコニア質溶融鋳造耐火物の溶融鋳造に際して、Na2O、K2O、P2O5およびSiO2は一部分が揮散するため、最初の原料混合物の化学組成と比べて鋳造された高ジルコニア溶融鋳造耐火物中のこれら成分の含有量は若干減少している。
【0041】
鋳造した高ジルコニア質溶融鋳造耐火物の耐熱サイクル抵抗性の評価は次のようにして行った。すなわち、40mm×40mm×40mmの試験片を各溶融鋳造耐火物から切り取り、各試験片を電気炉中に入れて室温から800℃まで300℃/hrの速度で昇温した後、800℃から1250℃まで1時間かけて昇温し、1250℃で1時間保持し、その後800℃まで1時間かけて降温し、800℃で1時間保持する。この800℃と1250℃の間の昇降温を1サイクルとして、40サイクル繰り返した後、室温まで冷却する。
【0042】
このとき耐火物に外観上亀裂が認められず、残存体積膨張が3%以下のものを耐熱サイクル抵抗性が良好な耐火物と判定した。耐食性指数は、15mm×15mm×50mmの棒状試験片を各溶融鋳造耐火物から切り出し、並板ガラス片を入れて1500℃で溶かしてある白金ルツボ中に48時間吊して棒状試験片の最大侵食深さを測定して侵食量(mm)とし、数1によって各溶融鋳造耐火物の耐食性指数を求めた。
【0043】
【数1】
【0044】
砂利の発生やガラスの着色については、上記の耐食性試験を行った白金ルツボ中に残ったガラスの着色の有無により判定した。表には示していないが、本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物によるガラスの着色はいずれについても認められなかった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
例11は現在ガラス溶融窯に多用されているジルコニア質溶融鋳造耐火物であり、本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物の特性を比較するために例示されている。また、例12は、バデライト結晶の転移による体積変化を抑制するため、ジルコニアを安定化する成分として稀土類酸化物が添加された耐火物であるが、熱膨張率が大きくなることによって冷却時に亀裂が生じ、実用性のある耐火物は鋳造できなかった。
【0048】
また、例13〜16の溶融鋳造耐火物ではチップオフ現象が認められたのに対し、本発明の実施例である例1〜10の溶融鋳造耐火物ではチップオフ現象が認められなかった。
【0049】
以上の試験結果から、本発明のアルカリ成分の含有量を少なくして高温における電気抵抗率を大きくした高ジルコニア質溶融鋳造耐火物では、従来のこの種の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物において指摘された耐熱サイクル抵抗性とチップオフ現象の問題が解決されていることがわかる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、使用温度域における電気抵抗率が大きいのでガラスを電気溶融するガラス溶融窯の耐火物として好適であり、溶融ガラスに対する耐食性が良好で、耐熱サイクル抵抗性に優れていて亀裂の発生がほとんど認められず、チップオフ現象も生じないので、本発明の溶融鋳造耐火物をガラス溶融窯に用いれば、亀裂を生じた部分や耐火物の破片から溶融ガラス中に微小破片が遊離してガラス製品中の砂利(欠点)の原因となることもなく、ガラス溶融窯の耐用と信頼性が向上する。
【0051】
アルカリ成分を含まない高融点のガラスや高純度のガラス、たとえばエレクトロニクス用ガラス基板などのファインガラス製品を製造するためのガラス溶融窯に適した高品位の耐火物に対する必要性が増えている現在、本発明による高ジルコニア質溶融鋳造耐火物は、これらハイテク産業の要求に応えることができる高品位の耐火物であり、これらファインガラス製品の品質と歩留を向上せしめるなどの効果を含めると、その産業上の利用効果は多大である。
Claims (5)
- 耐火物の化学成分として、重量%でZrO2 を85〜91%、SiO2 を7.0〜11.2%、Al2 O3 を0.85〜3.0%、P2 O5 を0.05〜1.0%、B2 O3 を0.05〜1.0%およびK2 OとNa2 0をその合量で0.01〜0.12%含み、かつK2 OをNa2 0以上に含むことを特徴とする高ジルコニア質溶融鋳造耐火物。
- 耐火物の化学成分として、重量%でZrO2 を88〜91%、SiO2 を7.0〜10%、Al2 O3 を1.0〜3.0%、P2 O5 を0.10〜1.0%およびB2 O3 を0.10〜1.0%含有する請求項1記載の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物。
- 耐火物の1500℃における電気抵抗率が100Ωcm以上である請求項1または2記載の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物。
- 耐火物がガラスの電気溶融窯用のものである請求項1、2または3記載の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物。
- 残存体積膨張率が3%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の高ジルコニア質溶融鋳造耐火物。
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