JP3570148B2 - エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及び積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば高周波領域で使用されるプリント配線板に用いられる金属箔張り積層板、この金属箔張り積層板の製造に用いられるプリプレグ、及びこのプリプレグの製造に用いられるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
衛星通信などに用いられるXバンド(8〜12GHz)領域、いわゆる超高周波領域で使用するプリント配線板の製造に用いられる積層板には、広い高周波範囲、温度範囲及び湿度範囲で誘電率及び誘電正接がいずれも一定で、かつ、好ましくは誘電正接が小さいことが望まれており、このような用途にエポキシ樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂(以下、PPEと記す)を含有するエポキシ樹脂組成物を用いた積層板が使用されている。
【0003】
従来、このエポキシ樹脂及びPPEを含有するエポキシ樹脂組成物を用いた積層板としては、エポキシ樹脂とPPEを単に配合したエポキシ樹脂組成物を用いた、エポキシ樹脂とPPEの硬化物が化学的に独立して存在する積層板や、エポキシ樹脂のエポキシ基とPPEの末端水酸基とを反応させることにより、PPEとエポキシ樹脂が架橋した硬化物よりなる積層板が検討されている。
【0004】
これらのうち前者の積層板は、アルカリやクロロホルムに浸漬して耐アルカリ性試験や耐溶剤性試験を行うと、エポキシ樹脂とPPEの結合が不十分なために層間剥離が発生する場合があるという問題があり、また、後者の積層板は、用いたPPEが高分子量の場合、PPEの末端フェノール性水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基との反応性が低く、硬化物中に架橋構造に関与しない未反応のPPEが多量存在するため、層間接着強度が低いという問題や、前者の積層板と同様に耐溶剤性試験を行うと、前者の積層板と比較すると優れるが、依然として層間剥離が発生する場合があるという問題があった。
【0005】
そのため、高分子量のPPEとフェノール性化合物を、過酸化物等の反応開始剤存在下で反応させることにより、用いたPPEの数平均分子量より低分子量の、PPEで変成した変成フェノール生成物を製造し、その変成フェノール生成物とエポキシ樹脂を配合したエポキシ樹脂組成物を用いて、耐溶剤性が優れた積層板を製造することが検討されている。この積層板の場合、変成フェノール生成物のフェノール性水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基との反応により、PPEが硬化物中の架橋構造に取り込まれるため、耐溶剤性が優れると考えられている。
【0006】
一方、積層板は、プリント配線板使用時の火災等の発生を防ぐために、難燃性が優れていることが要求されている。そのため、難燃化を達成する手法として、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン化したエポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物に配合して難燃化する方法が一般に行われている。
【0007】
しかし、ハロゲン化したエポキシ樹脂と変成フェノール生成物を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて表面に銅箔等の層を有する金属箔張り積層板を製造した後、半導体チップと接続するために、金線等のボンディングワイヤーを積層板表面の金属箔と接合した場合、加熱時のボンディングワイヤーと金属箔の接着強度の評価において、ボンディングワイヤーと金属箔の接合部が剥がれる場合があり、改良の余地があった。
【0008】
そのため、難燃性や、高周波領域で使用する積層板に要求される特性である、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性を低下することなしに、その表面に有する金属箔にボンディングワイヤーを接合した場合に、その接合部の接着強度が優れる金属箔張り積層板が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を改善するために成されたもので、その目的とするところは、PPEとフェノール性化合物を反応開始剤の存在下で反応させてなる変成フェノール生成物及び臭素化エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物であって、難燃性、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性を低下することなしに、その表面に有する金属箔にボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板が得られるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
また、難燃性、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性を低下することなしに、その表面に有する金属箔にボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板が得られるプリプレグを提供することにある。
【0011】
また、難燃性、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性が優れると共に、その表面に有する金属箔にボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るエポキシ樹脂組成物は、数平均分子量が10000〜30000のポリフェニレンエーテル樹脂とフェノール性化合物を反応開始剤の存在下で再分配反応させて、数平均分子量が用いたポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量の5〜70%になるように反応させた変成フェノール生成物、臭素化エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物において、臭素化エポキシ樹脂として、下記式(a)で表される骨格を有する分子内にエポキシ基を3個以上有する臭素化エポキシ樹脂を、全臭素化エポキシ樹脂100重量部中に1〜50重量部含有することを特徴とする。
【0015】
【化2】
【0016】
本発明の請求項2に係るエポキシ樹脂組成物は、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物において、変成フェノール生成物の数平均分子量が、1000〜3000であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項3に係るプリプレグは、請求項1又は請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を、基材に含浸乾燥してなる。
【0019】
本発明の請求項4に係る金属箔張り積層板は、請求項3記載のプリプレグに金属箔を重ね、加熱・加圧してなる。
【0020】
本発明によると、エポキシ樹脂組成物に、分子内にエポキシ基を3個以上有する臭素化エポキシ樹脂を含有するため、難燃性を低下することなしに、その表面に有する金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた積層板が得られる。また、分子内にエポキシ基を3個以上有する臭素化エポキシ樹脂は、上記変成フェノール生成物と架橋して両者が架橋構造に取り込まれるため、エポキシ樹脂とPPEとの特性が損なわれず、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性等も優れた積層板が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1又は請求項2に係るエポキシ樹脂組成物は、数平均分子量が10000〜30000のPPEとフェノール性化合物を反応開始剤の存在下で再分配反応させて、その数平均分子量が用いたPPEの数平均分子量の5〜70%の数平均分子量になるように反応させてなる変成フェノール生成物、臭素化エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤を、少なくとも含有する。
【0022】
変成フェノール生成物の製造に用いられるPPEは、別名ポリフェニレンオキサイド樹脂とも呼ばれる樹脂であり、その一例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)が挙げられる。このようなPPEは、例えば、USP4059568号明細書に開示されている方法で合成することができる。
【0023】
変成フェノール生成物の製造に用いられるフェノール性化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノ−ルノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。なお、フェノール性水酸基を分子内に2個以上有するフェノール類を用いると好ましい。このフェノール類のフェノール性水酸基数の上限は特に限定するものではないが、分子内に30個以下のものが一般に用いられる。なお、フェノール性化合物の量は、PPE100重量部に対して1〜20重量部が適量であり、反応開始剤と同程度の量が一般的である。
【0024】
変成フェノール生成物の製造に用いられる反応開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシへキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンなどの過酸化物があげられる。また過酸化物ではないが、市販の反応開始剤である日本油脂株式会社製の商品名「ビスクミル」(1分半減温度330℃)を使用することもできる。なお、過酸化ベンゾイルを用いると、反応性が優れ好ましい。なお、反応開始剤の量は、PPE100重量部に対して1〜20重量部が適量である。
【0025】
そして変成フェノール生成物を製造する場合には、有機溶媒中で、上記のPPEとフェノール性化合物を反応開始剤の存在下で再分配反応させて、用いたPPEの数平均分子量より低分子量の変成フェノール生成物を製造する。再分配反応の条件としては、例えば、上記のPPEとフェノール性化合物と反応開始剤を撹拌しながら、80〜120℃で10〜100分程度加熱して行う。なお、用いる有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0026】
反応開始剤の存在下で数平均分子量が10000〜30000のPPEとフェノール性化合物を反応させると、先ずPPEがラジカル化されると考えられ、直鎖が切断される再分配反応が進行してPPEが低分子量化し、この低分子量化したPPEでフェノール性化合物が変成される。
【0027】
そして得られる変成フェノール生成物の構造は、低分子化したPPEの一方又は両方の末端部にフェノール性化合物が結合して、PPEの一方又は両末端にフェノール性水酸基を有する構造となると考えられる。そのため、この末端のフェノール性水酸基がエポキシ樹脂のエポキシ基と反応し、PPEとエポキシ樹脂が強固に架橋すると考えられる。
【0028】
なお、再分配反応して得られる変成フェノール生成物の数平均分子量は、用いたPPEの数平均分子量の5〜70%の数平均分子量であることが重要である。70%を越える場合、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって、基材に含浸するときの含浸性が低下し、得られるプリプレグの樹脂付着量がばらついたり、プリプレグの取り扱い時に樹脂が剥がれて樹脂付着量がばらつき、電気特性のばらつきが発生する場合がある。また、5%未満の場合、得られる積層板の機械的強度や耐熱性が低下する場合がある。なお、数平均分子量が1000〜3000の場合、得られるエポキシ樹脂組成物を基材に含浸するときの含浸性が特に優れ好ましい。なお、変成フェノール生成物の数平均分子量が、用いたPPEの数平均分子量の70%を越える数平均分子量の場合、エポキシ樹脂組成物の保存性が低下して粘度が急激に高くなりやすく、使用可能な時間が短くなって、生産に支障を来しやすいという問題も発生しやすくなる。
【0029】
なお、用いたPPEが複数の数平均分子量のPPEの混合物の場合には、その混合物の平均値に対して、5〜70%の数平均分子量となるように反応させる。また、得ようとする変成フェノール生成物の数平均分子量の調整は、反応開始剤の量を増やすと数平均分子量が低下する傾向があるため、反応開始剤の量で調整すると調整しやすく好ましい。
【0030】
エポキシ樹脂組成物に含有する臭素化エポキシ樹脂には、分子内にエポキシ基を3個以上有する臭素化エポキシ樹脂(以下、多官能臭素化樹脂と記す)を含有することが重要である。多官能臭素化樹脂を含有しない場合は、このエポキシ樹脂組成物を用いて金属箔張り積層板を製造し、ボンディングワイヤーを積層板表面の金属箔に接合した後、ボンディングワイヤーと金属箔との接着強度の評価を行うと、ボンディングワイヤーと金属箔の接合部で剥がれる場合がある。
【0031】
この多官能臭素化樹脂としては、上記式(a)で表される骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。なお、上記式(a)で表される骨格を有するエポキシ樹脂を用いると、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が特に優れた積層板が得られ好ましい。
【0032】
なお、多官能臭素化樹脂の分子内のエポキシ基の数は、3個以上であれは特に限定するものではないが、あまり多いとエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって、基材への含浸性が低下するため、3〜30個の範囲のものを使用すると好ましい。
【0033】
なお、エポキシ樹脂組成物に含有する臭素化エポキシ樹脂は、多官能臭素化樹脂のみに限定するものではなく、分子内にエポキシ基を2個有する臭素化エポキシ樹脂をも含有することにより、多官能臭素化樹脂を、全エポキシ樹脂100重量部中に1〜50重量部含有するようにすると、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れると共に、耐熱性が優れた積層板が得られ好ましい。1重量部未満の場合は、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度を向上させる効果が小さく、50重量部を越えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって、基材への含浸性が低下する場合がある。
【0034】
分子内にエポキシ基を2個有する臭素化エポキシ樹脂としては、例えば、臭素化ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノ−ルS型エポキシ樹脂、臭素化ヒダントイン型エポキシ樹脂、臭素化脂環式エポキシ樹脂、臭素化ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。なお、分子内にエポキシ基を1個有する臭素化エポキシ樹脂をも併用することもできる。
【0035】
なお、エポキシ樹脂組成物に含有するエポキシ樹脂は、臭素化エポキシ樹脂のみに限定するものではなく、難燃性が低下しない範囲内であれば、臭素化していないエポキシ樹脂をも含有することもできる。この臭素化していないエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルS型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
エポキシ樹脂組成物に含有するエポキシ樹脂の硬化剤としては、例えばジシアンジアミド、脂肪族ポリアミド等のアミド系硬化剤や、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン系硬化剤や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、p−キシレン−ノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤や、酸無水物類等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
なお、エポキシ樹脂組成物には硬化反応を促進するために、硬化促進剤の添加が現実的である。含有することができる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
なお、エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填材や、溶剤等を含有することができる。含有することができる無機充填材としては、二酸化チタン系セラミック、チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸鉛系セラミック、チタン酸ストロンチウム系セラミック、チタン酸カルシウム系セラミック、チタン酸ビスマス系セラミック、チタン酸マグネシウム系セラミック、ジルコン酸鉛系セラミック等の、誘電率が100以上の無機充填材や、シリカ粉体、ガラス繊維、タルク等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。誘電率が100以上の無機充填材を含有すると、高周波特性が特に優れ好ましい。また、含有することができる溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ケトン、アルコール類等の有機系溶媒が挙げられる。
【0039】
得られたエポキシ樹脂組成物を、基材に含浸乾燥してプリプレグを製造する。エポキシ樹脂組成物を、基材に含浸乾燥する方法としては特に限定するものではなく、例えばエポキシ樹脂組成物中に基材を浸漬して含浸させた後、加熱して溶剤の除去や、エポキシ樹脂組成物を半硬化させてプリプレグを製造する。基材に含浸する樹脂量は特に限定しないが、乾燥後の樹脂含有量が、プリプレグの重量に対して30〜70重量%となるように含浸すると、特に電気特性が優れた積層板が得られ好ましい。
【0040】
なお、含浸時にエポキシ樹脂組成物を25〜35℃に保つと、基材への含浸性を安定させることができ、積層板の特性を良好にすることができる。また、エポキシ樹脂組成物を含浸後、乾燥するに当たっては、80〜180℃の温度が好ましい。この乾燥が不十分であると、プリプレグ表面部分のみの乾燥に止まり、溶媒が内部に残留する為にプリプレグの表面と内部との間で樹脂の濃度差に起因する歪が生じ、プリプレグ表面に微細なクラックが発生する場合がある。また、過度の乾燥を行うと、プリプレグ表面では乾燥過程で急激な粘度変化が起こるためにプリプレグ表面に筋むらや樹脂垂れが発生し、金属箔とプリプレグとの密着性にばらつきが生じ、その結果金属箔の引き剥がし強さや誘電特性等にばらつきが発生する場合がある。
【0041】
なお、エポキシ樹脂組成物を含浸する基材としては、ガラスクロス、アラミドクロス、ポリエステルクロス、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、パルプ紙、リンター紙等が挙げられる。なお、ガラスクロスを用いると、特に難燃性が優れた積層板が得られ好ましい。基材の厚みとしては0.04〜0.3mmのものが一般的に使用される。
【0042】
得られたプリプレグの所定枚数と金属箔を重ねて被圧体とし、この被圧体を加熱・加圧して金属箔張り積層板を製造する。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が使用され、厚みとしては、0.012〜0.070mmのものが一般的に使用される。なお、銅箔を用いると、電気特性が優れた積層板が得られ好ましい。
【0043】
PPEで変成した変成フェノール生成物とエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤の架橋反応は、主としてエポキシ樹脂の硬化剤の反応温度に依存するため、エポキシ樹脂の硬化剤の種類に応じて加熱温度、加熱時間を選ぶとよい。また加圧は、得られる積層板中に気泡が残留しない程度の圧力に適宜調整して加圧する。なお一般には、温度150〜300℃、圧力1〜6MPa、時間10〜120分程度の条件で加熱・加圧する。
【0044】
このようにして得られた金属箔張り積層板は、エポキシ樹脂とPPEの特性が損なわれないため、誘電特性等の高周波特性や、はんだ耐熱性、接着強度等が優れると共に、難燃性が優れ、かつ、その表面に有する金属箔にボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板となる。
【0045】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の使用形態は、基材に含浸乾燥してプリプレグを製造する形態に限るものではなく、たとえばキャスティング法により基材を含まないシートを作成し、このシートをプリプレグに代用することもできる。このキャステング法による方法は、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどの、エポキシ樹脂組成物が含有する溶媒に不溶のシートに、エポキシ樹脂組成物を5〜700μmの厚みに塗布し、乾燥した後シートを剥離して製造したり、エポキシ樹脂組成物を熱溶融して押出成形により製造する。シートに塗布して製造する方法の場合、押出成形の方法と比較すると比較的低温でより容易にシー卜を作ることができ好ましい。なお、エポキシ樹脂組成物を塗布するシートは、離型剤で表面処理したシートを用いると剥離が容易になるため生産性が優れ好ましい。
【0046】
【実施例】
(変成フェノール生成物の調整)
数平均分子量20000のPPE[日本G.E.プラスチック株式会社製、品番640−111]、フェノール性化合物としてビスフェノ−ルA、反応開始剤として過酸化ベンゾイル及び溶剤としてトルエンを表1に示す割合(単位:重量部)で配合し、90℃で60分間攪拌しながら再分配反応させて、液状の変成フェノール生成物(A)〜(G)を得た。この変成フェノール生成物(A)〜(G)をゲル浸透クロマトグラフ[カラム構成:東ソー株式会社製、SuperHM−M(1本)+SuperHM−H(1本)]にて分子量分布を測定し、数平均分子量を求めた。その結果を表1に示す。なお、表1中、分子量比率は、用いたPPEの数平均分子量に対する、得られた変成フェノール生成物の数平均分子量の比率を表す。
【0047】
【表1】
【0048】
(実施例1〜10、比較例1〜5)
変成フェノール生成物(A)〜(G)と、下記3種類の臭素化エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の硬化剤としてジアミノジフェニルメタンと、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールと、溶剤としてトルエンを表2に示す割合(単位:重量部)でセパラブルフラスコに入れ、室温で30分間攪拌して空冷を行い25℃のエポキシ樹脂組成物を得た。なお、実施例8は、変成フェノール生成物(B)と変成フェノール生成物(C)を共に用いた。
【0049】
なお表2中、変成フェノール生成物の配合重量は固形分としての重量を表す。また多官能臭素化樹脂比率は、全臭素化エポキシ樹脂に対する多官能臭素化樹脂(下記臭素化エポキシ樹脂3)の比率を表す。
【0050】
用いた臭素化エポキシ樹脂としては、
・臭素化エポキシ樹脂1:臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成株式会社製、商品名YDB400](エポキシ当量400、臭素含量48.0重量%)と、
・臭素化エポキシ樹脂2:臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成株式会社製、商品名YDB500](エポキシ当量500、臭素含量20.5重量%)と、
・臭素化エポキシ樹脂3:上記式(a)で表される骨格を有し、分子内にエポキシ基を3個以上有する臭素化エポキシ樹脂[日本化薬株式会社製、商品名BREN−S](エポキシ当量280、臭素含量35.5重量%)と、を用いた。
【0051】
【表2】
【0052】
得られたエポキシ樹脂組成物の、初期粘度及び保存性を評価した。初期粘度の測定は、B型粘度計を用いて25℃で測定し、500cps以下の場合を良好(○)とし、500cpsを越える場合を不良(×)とした。また、保存性の測定は、25℃で24時間保存した後、初期粘度と同様にして測定及び判定を行った。
【0053】
その結果は表2に示したように、各実施例及び比較例1,3,5で得られたエポキシ樹脂組成物は初期粘度も小さく、析出現象もなく保存性に優れていたが、数平均分子量17000の変成フェノール生成物(F)を用いた比較例2及び4は、初期粘度、保存性とも劣ることが確認された。
【0054】
また、得られたエポキシ樹脂組成物を室温で24時間保管した後、厚み0.1mmのガラスクロス[旭シュエーベル株式会社製、商品名2116L]に含浸し、140℃で4分間乾燥して樹脂含有率65重量%のプリプレグを得た。
【0055】
得られたプリプレグの、外観、取り扱い性及び含浸性を評価した。外観は、スジ状や垂れた形状の外観不具合部の有無を目視で観察し、無しの場合を良好(○)、有りの場合を不良(×)とした。また、取り扱い性は、プリプレグを180度折り曲げ、樹脂の脱離の有無を目視で観察し、無しの場合を良好(○)、有りの場合を不良(×)とした。また、含浸性は、切断面を1000倍でSEM観察し、内部に気泡が無い場合を良好(○)、わずかに有る場合を△、多数有る場合を不良(×)とした。
【0056】
その結果は表2に示したように、各実施例及び比較例1,3,5で得られたプリプレグは、比較例2及び4と比較して、外観、取り扱い性及び含浸性が優れることが確認された。また、変成フェノール生成物の数平均分子量が、1000〜3000の範囲内である実施例1〜8は、実施例9,10と比較して、含浸性が特に優れることが確認された。
【0057】
また、得られたプリプレグの両面に18μmの銅箔[日鉱グールドフォイル株式会社製、商品名JTC]を配置して被圧体とし、温度190℃、圧力2MPaの条件で100分加熱・加圧して両面に銅箔が接着された銅張り積層板を得た。
【0058】
得られた銅張り積層板の、誘電率、誘電正接、はんだ耐熱性、難燃性、銅箔の引きはがし強さ、及び、銅箔とボンディングワイヤーとの接着強度の評価としてワイヤープル強度を測定した。誘電率及び誘電正接の測定は、MIL規格に基づき測定した。はんだ耐熱性及び引きはがし強さは、JIS規格C6481に基づき測定した。難燃性は、UL規格サブジェクト94に従い測定した。
【0059】
ワイヤープル強度は、カイジョー社製のワイヤーボンダー[商品名FB−118A]を用いて、φ30μmの金線[田中貴金属工業株式会社製]を積層板表面の銅箔に接合した後、Dage社製のボンドテスター[商品名BT22]を用いて、温度180℃、ヘッドスピード0.3mm/秒の条件で、金線が剥がれる強度を測定した。
【0060】
その結果は表2に示したように、各実施例で得られた積層板は、多官能臭素化樹脂を含有しない比較例1〜3と比較して、ワイヤープル強度が優れることが確認された。また、各実施例で得られた積層板は、変成フェノール生成物の数平均分子量が用いたPPEの数平均分子量の5〜70%の範囲外である比較例2〜5と比較して、はんだ耐熱性が優れることが確認された。また、各実施例で得られた積層板は、誘電率、誘電正接及び難燃性も優れていることが確認された。
【0061】
以上の評価結果より、各実施例は、エポキシ樹脂組成物特性、プリプレグ特性、積層板特性の全てが良好であるが、各比較例は少なくとも1つの特性が劣ることが確認された。
【0062】
【発明の効果】
本発明の請求項1又は請求項2に係るエポキシ樹脂組成物を用いると、難燃性、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性を低下することなしに、その表面に有する金属箔にボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板が得られる。
【0063】
本発明の請求項2に係るエポキシ樹脂組成物を用いると、上記の効果に加え、含浸性の優れたプリプレグが得られる。
【0064】
本発明の請求項3に係るプリプレグを用いると、難燃性、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性を低下することなしに、その表面に有する金属箔とボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板が得られる。
【0065】
本発明の請求項4に係る金属箔張り積層板は、難燃性、誘電率、誘電正接及びはんだ耐熱性が優れると共に、その表面に有する金属箔とボンディングワイヤーを接合した場合に、金属箔とボンディングワイヤーとの接着強度が優れた金属箔張り積層板となる。
Claims (4)
- 変成フェノール生成物の数平均分子量が、1000〜3000であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1又は請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を、基材に含浸乾燥してなるプリプレグ。
- 請求項3記載のプリプレグに金属箔を重ね、加熱・加圧してなる金属箔張り積層板。
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-
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