JP3564631B2 - 情報記録媒体用ガラス基板の製造方法及び情報記録媒体の製造方法、並びに磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法。 - Google Patents
情報記録媒体用ガラス基板の製造方法及び情報記録媒体の製造方法、並びに磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法。 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は情報処理機器等の記録媒体として使用される情報記録媒体の製造方法及びその基板の製造方法と、磁気ディスクの製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の情報記録媒体の一つとして磁気ディスクがある。磁気ディスクは、基板上に磁性層等の薄膜を形成して構成されたものであり、その基板としてはアルミやガラス基板が用いられてきた。しかし、最近では、高記録密度化の追求に呼応して、アルミと比べて磁気ヘッドと磁気記録媒体との間隔(磁気ヘッドの浮上高さ)をより狭くすることが可能なガラス基板の占める比率が次第に高くなってきている。
【0003】
このように増加傾向にあるガラス基板は、磁気ディスクドライバーに装着された際の衝撃に耐えるように一般的に強度を増すために化学強化されて製造されている。また、ガラス基板表面は磁気ヘッドの浮上高さ(フライングハイト)を極力下げることができるように、高精度に研磨して高記録密度化を実現している。他方、ガラス基板だけではなく、磁気ヘッドも薄膜ヘッドから磁気抵抗(MRヘッド)に推移し、高記録密度化にこたえている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように高記録密度化にとって必要な低フライングハイト化のために磁気ディスク表面の高い平坦性は必要不可欠である。加えて、MRヘッドを用いた場合、サーマル・アスペリティー(Thermal Asperity)の問題からも磁気記録媒体の表面には高い平坦性が必要となる。このサーマル・アスペリティーは、磁気ディスクの表面上に突起があると、この突起にMRヘッドが影響をうけてMRヘッドに熱が発生し、この熱によってヘッドの抵抗値が変動し電磁変換に誤動作を引き起こす現象である。
また、磁気ディスク表面の高い平坦性があっても磁気ディスクの表面上にサーマル・アスペリティーの原因となる突起があると、この突起によってヘッドクラッシュが起きたり、このヘッドクラッシュが原因で磁気ディスクを構成する磁性膜などが剥がれるなど、磁気ディスクにも悪影響を及ぼす。
【0005】
このように、低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止にとっても、サーマル・アスペリティーの発生防止のためにも磁気ディスク表面の高い平坦性の要請は日増に高まってきている。このような、磁気ディスク表面の高い平坦性を得るためには結局高い平坦性の基板表面が求められることになるが、もはや、高精度に基板表面を研磨するだけでは、磁気ディスクの高記録密度化を実現できない段階まで来ている。つまり、いくら、高精度に研磨しても基板上に異物が付着していては高い平坦性は得られない。勿論、従来から異物の除去はなされていたが、従来では許容されていた基板上の異物が、今日の高密度化のレベルでは問題視される状況にある。
【0006】
この種の異物としては、例えば、通常の洗浄では除去できない極めて微小な鉄粉、ステンレス片等が挙げられる。例えば、鉄粉などのパーティクルがガラス基板上に付着した状態、あるいは、化学強化処理液中にある鉄粉などのパーティクルが化学強化処理液中でガラス基板上に付着した状態で化学強化処理を行うと、化学強化過程で起こる酸化反応と、この工程で加わる熱によってガラス基板上に鉄が溶けたような凸部(突起)が形成されることがわかった。このような凸部(突起)が形成されたガラス基板上に磁性膜等の薄膜を積層すると、磁気ディスク表面に凸部が形成され、低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止や、サーマル・アスペリティーの防止の阻害要因となっていることがわかった。
このような微小な鉄粉がガラス基板に付着する原因を詳しく調査したところ、化学強化処理が行われる化学強化室内の雰囲気に鉄粉が含まれており、特に化学強化塩自体に数多くの鉄粉が含まれていることがわかった。詳しくは、発生要因毎に鉄粉の個数を調べたところ、化学強化塩(硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなど)を調合して化学強化処理液をつくる前の化学強化塩自体に含まれる鉄粉が圧倒的であることがわかった。さらに、化学強化塩自体には、化学強化工程において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすその他のパーティクルが数多く含まれていることがわかった。
本願出願人は、先に、化学強化処理が行われる化学強化室内の雰囲気に含まれる鉄粉等を除去して、化学強化処理液中への鉄粉等の混入を防止する技術を開発し、既に出願を行っている(特開平10−194785号)。また、化学強化室内の雰囲気から化学強化処理液中へ混入した鉄粉等を、マイクローシーブ(エッチングで孔を開けた金網)などの高温耐食性に優れたフルターで化学強化処理液を濾過して除去する技術を開発し、既に出願を行っている(特開平10−194786号)。ここで、前者の方法は、化学強化処理が行われる化学強化室内の雰囲気に含まれる鉄粉等を除去するのに効果がある。後者の方法は、一定の効果があるものの、上述したように、化学強化処理液をつくる前の化学強化塩自体に含まれる鉄粉の数が圧倒的であるため、鉄粉除去の対策としては効果が十分ではない。また、後者の方法は、化学強化工程において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすその他のパーティクルの除去対策としても十分ではない。
【0007】
本発明は、化学強化工程において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすパーティクルの付着を効果的に抑制できる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、特に、化学強化工程における微小な鉄粉等のガラス基板への付着による凸部の形成を効果的に抑制できる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の提供を目的とする。
さらに、本発明は、化学強化工程において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒に悪影響を及ぼすパーティクルの付着を効果的に抑制でき、したがって欠陥の少ない高品質の情報記録媒体を製造し得る製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止や、サーマル・アスペリティーの防止を達成しうる磁気ディスクの製造方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した目的を達成すべく研究開発を進めた結果、特開平10−194786号記載の方法では、上述した凸部(突起)の形成を十分に抑制できず、さらに、1μm以下(例えば0.2μm)の鉄粉であっても凸部(突起)を形成することがあることがわかった。そして、化学強化塩自体に含まれる鉄粉を事前に除去すると非常に効果的であることを見い出した。また、化学強化塩自体に含まれる情報記録媒に悪影響を及ぼすパーティクルを事前に除去すると非常に効果的であることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成としてある。
【0010】
(構成1)化学強化塩を含有する化学強化処理液にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンより大きなイオン径の処理液中のイオンに置換することによりガラス基板を強化する化学強化工程を含む情報記録媒体用ガラス基板の製造方法において、前記化学強化塩は、サーマル・アスペリティーの発生を防止するようにサーマル・アスペリティーの要因となるパーティクルの量を抑制したものであることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0011】
(構成2)化学強化塩を含有する化学強化処理液にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンより大きなイオン径の処理液中のイオンに置換することによりガラス基板を強化する化学強化工程を含む情報記録媒体用ガラス基板の製造方法において、前記化学強化塩に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量が、12000個/ml以下であることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0012】
(構成3)前記化学強化塩に含まれるパーティクルにおいて、粒径2μm以上のパーティクルの占める割合が、25%以下であることを特徴とする構成2記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0013】
(構成4)前記化学強化塩に含まれる粒径2μm以上のパーティクルの含有量が、4000個/ml以下であることを特徴とする構成2又は3記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0014】
(構成5)前記パーティクルは、鉄のパーティクルを含むものであることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0015】
(構成6)前記情報記録媒体用ガラス基板が、磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0016】
(構成7)磁気ディスク用ガラスが、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)と組み合わせて使用される磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする構成6記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0017】
(構成8)構成1乃至7のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られたガラス基板上に少なくとも記録層を形成することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【0018】
(構成9)構成1乃至7のいずれかに記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られたガラス基板上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【0019】
(構成10)ガラス基板を準備する工程と、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量と、グライド高さとの相関関係を予め求め、この相関関係から所望のグライド特性となる前記パーティクルの量を基準設定値として定め、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量が予め定めた基準設定値以下であることを判別する工程と、前記基準設定値を超える場合、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を予め定めた基準設定値以下とする工程と、パーティクルの量が予め定めた基準設定値以下である化学強化塩を調合して化学強化処理液をつくる工程と、化学強化処理液にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンより大きなイオン径の処理液中のイオンに置換することによりガラス基板を強化する化学強化工程と、を有することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【0020】
(構成11)構成10によって得られた磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【0021】
【作用】
上記構成1によれば、化学強化塩自体に含まれるサーマル・アスペリティーの要因となるパーティクルの量を抑制しているので、化学強化処理液中の微小な鉄粉等がガラス基板へ付着して上述した凸部を形成するのを効果的に抑制できる。したがって、低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止や、サーマル・アスペリティーの防止を達成しうる磁気ディスクを製造できる。
【0022】
上記構成2によれば、化学強化塩自体に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量を12000個/ml以下としているので、化学強化処理液中において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすパーティクルの付着を効果的に抑制できる。特に、化学強化処理液中の微小な鉄粉等がガラス基板へ付着して上述した凸部を形成するのを効果的に抑制できる。ここで、粒径0.2μm以としているのは、それ未満のパーティクルは、サーマル・アスペリティーを引き起こす凸部の形成には影響ないと考えられるからである。
化学強化塩に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量が12000個/mlを超える場合、化学強化処理液中の微小な鉄粉等がガラス基板へ付着して上述した凸部を形成する割合が高く凸部の数が多くなり、しかも凸部の高さや凸部の密度が大きくなる傾向にある。そして、サーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュを起こす割合が高くなるので好ましくない。同様に、化学強化塩に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量が12000個/mlを超える場合、化学強化処理液中において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすパーティクルの付着数が多くなるので好ましくない。これらと同様の観点から、化学強化塩に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量は8000個/ml以下が好ましく、4000個/ml以下がさらに好ましい。これは、化学強化塩に含まれるパーティクルの量が、化学強化処理液中における凸部の発生やパーティクルの付着に直接的に反映されるので、化学強化塩に含まれるパーティクルの量を減らすことによって、凸部を発生させる確率やパーティクルの付着数を減少させることができるからである。
なお、凸部の密度は、0.002/mm2以下が望ましく、0.0003/mm2以下がさらに望ましい。
なお、化学強化塩に含まれるパーティクルの量は、次に示す所定の方法で測定した。すなわち、化学強化塩(例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム)を、それぞれ単独で10gを超純水(十分に清浄で測定に影響を与えるパーティクルを含まない水)90mlに溶解させ、その溶液を、液体用のパーティクルカウンター(リオン社製やPMS社製)を用いて5mlずつ3回連続して測定し、1ml当たりに含まれるパーティクルの数(各パーティクルサイズにおけるパーティクル数の合計(任意に定めた各パーティクルサイズの範囲に存在するパーティクル数の合計))をそれぞれ求め換算し、それらの平均値をパーティクル数とした。
【0023】
上記構成3によれば、化学強化塩に含まれるパーティクルにおいて、凸部(突起)の形成に大きな影響のある大きな粒径(具体的には粒径が2μm以上)のパーティクルの占める割合を25%以下にすることによって、効果的に凸部(突起)の形成を防止することができる。同様の観点からこの値は、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下とすることが望ましい。
【0024】
上記構成4によれば、化学強化塩自体に含まれる粒径2μm以上のパーティクルの量を4000個/ml以下としているので、さらに効果的に凸部等の形成を防止できる。これは、粒径2μm以上のパーティクルの方が、それ未満の粒径のパーティクルに比べ、影響が強いからであることと、サーマル・アスペリティーの発生要因となる例えば鉄のパーティクルの粒径がおよそ2μm以上であることによる。
【0025】
上記構成5は、前記パーティクルは、鉄のパーティクルを含むものであることとしている。これは、化学強化塩自体に含まれるパーティクルを分析したところ、O、Na、Mg、Al、Si、Cl、Fe、Crなどが検出された。特にパーティクルがFe(鉄)の場合であって、そのパーティクル(鉄)が化学強化処理液中でガラス基板に付着した場合、化学強化過程で起こる酸化反応と、この工程で加わる熱によってガラス基板上に鉄が溶けたような凸部(突起)が形成され、この凸部がサーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュを起こす確率が高い。なお、比較的大きなパーティクルの場合、そのパーティクルが溶けて凸部(突起)を形成し、また、比較的小さなパーティクルの場合、パーティクルが凝集して溶け凸部(突起)を形成していることが顕微鏡で確認された。従って、磁気ディスクの場合、特に化学強化塩中に含まれる鉄(パーティクル)の量を制御することによって顕著な効果が現れる。
なお、パーティクルが鉄を含むものにおいては、鉄はもちろんのこと、酸化鉄、SUSなども、鉄のパーティクルのうちに含まれる。また、上述したような酸化反応と加熱によって凸部(突起)が形成されるパーティクルの材質としては、金属(例えばCr、Alなど)等が考えられる。
【0026】
上記構成6によれば、前記情報記録媒体用ガラス基板が、磁気ディスク用ガラス基板であると、ヘッドクラッシュの原因となる上述した凸部が形成されるのを効果的に抑制できる。したがって、低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止を達成しうる磁気ディスクを製造できる。
【0027】
上記構成7によれば、磁気ディスク用ガラスが、磁気抵抗型ヘッドと組み合わせて使用される磁気ディスク用ガラス基板であると、サーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュを起こす原因となる上述した凸部が形成されるのを効果的に抑制でき、この結果低フライングハイト化を実現できる。磁気抵抗型ヘッドを用いる場合、低フライングハイト化が特に要求されるので、特に効果的である。
【0028】
上記構成8によれば、上記構成1乃至7のいずれか一に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られたガラス基板を用いているので、化学強化処理液中において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすパーティクルの付着を効果的に抑制でき、欠陥の少ない高品質の情報記録媒体が得られる。
【0029】
上記構成9によれば、上記1乃至7のいずれか一に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られたガラス基板を用いているので、化学強化処理液中の微小な鉄粉等がガラス基板へ付着して上述した凸部を形成するのを効果的に抑制できる。したがって、低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止や、サーマル・アスペリティーの防止を実現した磁気ディスクが得られる。
【0030】
上記構成10によれば、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量と、グライド高さとの相関関係を予め求め、この相関関係から所望のグライド特性となる前記パーティクルの量を基準設定値として定め、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量が予め定めた基準設定値以下であることを判別する工程と、基準設定値を超える場合、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を予め定めた基準設定値以下とする工程とを有しているので、この化学強化塩を調合して、パーティクルの量が予め定めた基準設定値以下である化学強化処理液をつくることができる。したがって、化学強化処理工程における凸部の発生やパーティクルの付着を減らすことができる。
なお、基準設定値は、情報記録媒体に要求される欠陥の許容レベルに応じて設定できる。
また、前記基準設定値は、例えば、磁気ディスク(又はガラス基板)の主表面に対向して磁気ヘッドを配置し、所定のグライド高さで磁気ヘッドを磁気ディスク(又はガラス基板)に対し相対移動させ、所望のグライド特性となるように決定されたものであること、換言すれば、グライドテストの結果に基づいて前記基準設定値を決定することで、ヘッドクラッシュやサーマル・アスペリティー等を効果的に防止できる。
なお、所望のグライド特性とは、例えば、グライド高さ1.2μインチ以下で、ヒットやクラッシュの発生率が0%となるような特性をいう。
【0031】
上記構成11によれば、上記構成10記載の磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することで、低フライングハイト及びヘッドクラッシュの防止と、サーマル・アスペリティーの防止を実現した磁気ディスクを製造することができる。
【0032】
本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法について説明する。
本発明において、化学強化塩自体に含まれるパーティクルを除去するには、例えば、化学強化塩を水に溶かした状態で、フィルター等の捕捉手段によってパーティクルを除去する。フィルターの性能(最小捕捉粒径)や種類を選択することによって、化学強化塩に含まれるパーティクルの量を所望の量(例えば、粒径0.2μm以上のパーティクルの量を12000個/ml以下や、4000個/ml以下など)に制御できる。また、最小捕捉粒径の異なる複数のフィルターを用い、粒径の大きいパーティクルを最小捕捉粒径の大きなフィルターで除去した後、粒径の小さいパーティクルを最小捕捉粒径の小さなフィルターで除去することもできる。
なお、本発明では化学強化塩以外の成分をすべて高純度に精製した試薬を用いる必要は無く、特に鉄粉や情報記録媒体に悪影響を及ぼすパーティクルだけを除去して清浄化された化学強化塩を用いれば足り、安価で済む。もちろん、このような高純度に精製された試薬を用いることもできるが高価である。
また、本発明で使用する化学強化塩は、固結防止用の添加剤を含まないことが好ましい。これは、固結防止用の添加剤にはパーティクルが多く含まれていると考えられるからである。
【0033】
本発明において、化学強化塩自体に含まれるパーティクルを分析したところ、O、Na、Mg、Al、Si、Cl、Fe、Crなどが検出された。特にパーティクルがFe(鉄)の場合であって、そのパーティクル(鉄)が化学強化処理液中でガラス基板に付着した場合、化学強化過程で起こる酸化反応と、この工程で加わる熱によってガラス基板上に鉄が溶けたような凸部(突起)が形成され、この凸部がサーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュを起こす確率が高い。従って、磁気ディスクの場合、特に化学強化処理液中に含まれる鉄(パーティクル)の量を制御することによって顕著な効果が現れる。
【0034】
化学強化方法としては、ガラス転移温度を超えない領域でイオン交換を行う低温型化学強化が好ましい。化学強化処理溶液として用いるアルカリ溶融塩としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、あるいはそれらを混合した硝酸塩などが使用できる。
ガラス基板としてはアルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。
情報記録媒体用ガラス基板には、磁気記録媒体用ガラス基板、光記録媒体用ガラス基板、光磁気記録媒体用ガラス基板等が挙げられる。本発明は特に磁気抵抗型ヘッド用磁気ディスク及びその基板に関して顕著な効果を奏する。
【0035】
次に、本発明の磁気記録媒体(磁気ディスク)の製造方法について説明する。本発明では、上記本発明の磁気記録媒体用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成して、磁気記録媒体を製造している。
【0036】
本発明では、サーマル・アスペリティーあるいはヘッドクラッシュの原因となるパーティクルの付着を効果的に抑制することができるので、ガラス基板上に磁性層等を形成した磁気記録媒体を製造する際に、ガラス基板の主表面にサーマル・アスペリティーの原因となるパーティクルによって形成される凸部が形成されにくく、より高いレベルでサーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュを防止できる。凸部が形成されないので、例えば、1.2μインチ以下といった低グライドハイトも実現できる。特に、磁気抵抗型ヘッドによって再生を行う磁気記録媒体にとって、磁気抵抗型ヘッドの機能を十分に引き出すことができる。また、磁気抵抗型ヘッドに好適に使用することができるCoPt系等の磁気記録媒体としてもその性能を十分に引き出すことができる。
また、サーマル・アスペリティーの原因となるパーティクルによって、磁性層等の膜に欠陥が発生しエラーの原因となるということもない。
【0037】
磁気記録媒体は、通常、所定の平坦度、表面粗さを有し、必要に応じ表面の化学強化処理を施した磁気ディスク用ガラス基板上に、下地層、磁性層、保護層、潤滑層を順次積層して製造する。
【0038】
磁気記録媒体における下地層は、磁性層に応じて選択される。
【0039】
下地層としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、Niなどの非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料からなる下地層等が挙げられる。Coを主成分とする磁性層の場合には、磁気特性向上等の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。また、下地層は単層とは限らず、同一又は異種の層を積層した複数層構造とすることもできる。例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NIAl/CrV等の多層下地層等が挙げられる。
【0040】
磁気記録媒体における磁性層の材料は特に制限されない。
【0041】
磁性層としては、例えば、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPtや、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtSiOなどの磁性薄膜が挙げられる。磁性層は、磁性膜を非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrVなど)で分割してノイズの低減を図った多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrPtTa/CrMo/CoCrPtTaなど)としてもよい。
【0042】
磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)対応の磁性層としては、Co系合金に、Y、Si、希土類元素、Hf、Ge、Sn、Znから選択される不純物元素、又はこれらの不純物元素の酸化物を含有させたものなども含まれる。
【0043】
また、磁性層としては、上記の他、フェライト系、鉄−希土類系や、SiO2、BNなどからなる非磁性膜中にFe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子が分散された構造のグラニュラーなどであってもよい。また、磁性層は、内面型、垂直型のいずれの記録形式であってもよい。
【0044】
磁気記録媒体における保護層は特に制限されない。
【0045】
保護層としては、例えば、Cr膜、Cr合金膜、カーボン膜、水素化カーボン膜、ジルコニア膜、シリカ膜等が挙げられる。これらの保護膜は、下地層、磁性層等とともにインライン型スパッタ装置で連続して形成できる。また、これらの保護膜は、単層としてもよく、あるいは、同一又は異種の膜からなる多層構成としてもよい。
なお、上記保護層上に、あるいは上記保護層に替えて、他の保護層を形成してもよい。例えば、上記保護層に替えて、Cr膜の上にテトラアルコキシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成して酸化ケイ素(SiO2)膜を形成してもよい。
【0046】
磁気記録媒体における潤滑層は特に制限されない。
【0047】
潤滑層は、例えば、液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈し、媒体表面にディップ法、スピンコート法、スプレイ法によって塗布し、必要に応じ加熱処理を行って形成する。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。
【0049】
実施例1
【0050】
(1)荒ずり工程
まず、ダウンドロー法で形成したシートガラスから、研削砥石で直径96mmφ、厚さ3mmの円盤状に切り出したアルミノシリケイトガラスからなるガラス基板を、比較的粗いダイヤモンド砥石で研削加工して、直径96mmφ、厚さ1.5mmに成形した。
この場合、ダウンドロー法の代わりに、熔融ガラスを、上型、下型、胴型を用いてダイレクト・プレスして、円盤状のガラス体を得てもよい。また、フロート法で形成しても良い。
なお、アルミノシリケイトガラスとしては、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZnO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、LiO2を7〜16%、Na2Oを4〜14%、を主成分として含有する化学強化用ガラス(例えば、モル%表示で、SiO2:67.0%、ZnO2:1.0%、Al2O3:9.0%、LiO2:12.0%、Na2O:10.0%を主成分として含有する化学強化用ガラス)を使用した。
【0051】
次に、上記砥石よりも粒度の細かいダイヤモンド砥石で上記ガラス基板の両面を片面ずつ研削加工した。このときの荷重は100kg程度とした。これにより、ガラス基板両面の表面粗さをRmax(JIS B 0601で測定)で10μm程度に仕上げた。
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を開けるとともに、外周端面も研削して直径を95mmφとした後、外周端面及び内周面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板端面の表面粗さは、Rmaxで4μm程度であった。
【0052】
(2)砂掛け(ラッピング)工程
次に、ガラス基板に砂掛け加工を施した。この砂掛け工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。砂掛け加工は、ラッピング装置を用いて行い、砥粒の粒度を#400、#1000と替えて2回行った。
詳しくは、はじめに、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重Lを100kg程度に設定して、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。次いで、アルミナ砥粒の粒度を#1000に替えてラッピングを行い、表面粗さ(Rmax)2μm程度とした。
上記砂掛け加工を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0053】
(3)端面鏡面加工工程
次に、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面の表面粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度に研磨した。
上記端面鏡面加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0054】
(4)第一研磨工程
次に、第一研磨工程を施した。この第一研磨工程は、上述した砂掛け工程で残留したキズや歪みの除去を目的とするもので、研磨装置を用いて行った。
詳しくは、ポリシャ(研磨粉)として硬質ポリシャ(セリウムパッドMHC15:スピードファム社製)を用い、以下の研磨条件で第一研磨工程を実施した。
研磨液:酸化セリウム+水
荷重:300g/cm2(L=238kg)
研磨時間:15分
除去量:30μm
下定盤回転数:40 rpm
上定盤回転数:35 rpm
内ギア回転数:14 rpm
外ギア回転数:29 rpm
上記第一研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0055】
(5)第二研磨工程
次に、第一研磨工程で使用した研磨装置を用い、ポリシャを硬質ポリシャから軟質ポリシャ(ポリラックス:スピードファム社製)に替えて、第二研磨工程を実施した。研磨条件は、荷重を100g/cm2、研磨時間を5分、除去量を5μmとしたこと以外は、第一研磨工程と同様とした。
上記第二研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
【0056】
(6)化学強化処理液の準備工程
次に、化学強化塩自体に含まれるパーティクルを除去して、十分に清浄化された硝酸カリウムと硝酸ナトリウムをそれぞれ用意した。具体的には、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムをそれぞれ超純水に溶解させ、液体用フィルターを用いて化学強化塩自体に含まれるパーティクルを除去した。
この硝酸カリウムと硝酸ナトリウムにそれぞれ含まれるパーティクルをそれぞれ液体用のパーティクルカウンターを用いて測定した。詳しくは、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムをそれぞれ単独で10gを超純水(十分に清浄で測定に影響を与えるパーティクルを含まない水)90mlに溶解させ、その溶液を、液体用のパーティクルカウンター(粒径0.2μm以上2.0μm未満のものはリオン社製、粒径2.0μm以上のものはPMS社製のパーティクルカウンターをそれぞれ使用)を用いて5mlずつ3回連続して測定し、1ml当たりに含まれるパーティクルの数(各パーティクルサイズにおけるパーティクル数の合計)をそれぞれ求め換算し、それらの平均値をパーティクル数とした。その結果、硝酸カリウムに含まれるパーティクルよりも、硝酸ナトリウムに含まれるパーティクルの方が多かった。硝酸ナトリウムに含まれるパーティクルの量は、粒径0.2μm以上0.3μm未満が1912個/ml、粒径0.3μm以上0.5μm未満が1192個/ml、粒径0.5μm以上1.0μm未満が161個/ml、粒径1.0μm以上2.0μm未満が10個/ml、粒径2.0μm以上3.0μm未満が310個/ml、粒径3.0μm以上4.0μm未満が111個/ml、粒径4.0μm以上5.0μm未満が60個/ml、粒径5.0μm以上6.0μm未満が36個/ml、粒径6.0μm以上が169個/mlであり、粒径2.0μm以上のパーティクルは686個/ml、粒径0.2μm以上2.0μm未満のパーティクルは3275個/mlで、粒径0.2μm以上の合計のパーティクルの量は3961個/mlであり、そのうち、粒径2.0μm以上のパーティクルの占める割合は17.3%であった。
この硝酸カリウムと硝酸ナトリウムをそれぞれ60%、40%(合計73.5kg)を混合、溶解し、化学強化処理液を得た。
【0057】
(7)化学強化工程
上記(6)の工程で得られた化学強化処理液を化学強化処理槽で400℃に加熱し、300℃に予熱された洗浄済みのガラス基板を約3時間浸漬して行った。なお、この浸漬の際に、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるようにホルダーに収納した状態で行った。
このように、化学強化処理液に浸漬処理することによって、ガラス基板表層のリチウムイオン、ナトリウムイオンは、化学強化処理液中のナトリウムイオン、カリウムイオンにそれぞれ置換されガラス基板は強化される。
ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100〜200μmであった。
上記化学強化を終えたガラス基板を、20℃の水槽に浸漬して急冷し約10分間維持した。
上記急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した硫酸に浸漬し、超音波をかけながら洗浄を行った。
【0058】
上記の工程を経て得られたガラス基板の表面粗さRaは0.5〜1nmであった。
また、このガラス表面を光学顕微鏡で観察したところ、サーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュの原因となる凸部は認められなかった。
【0059】
(8)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板の両面に、インライン式のスパッタリング装置を用いて、NiAl(Ni:50at%、Al:50at%)のシード層(膜厚40nm)、CrMo(Cr:94at%、Mo:6at%)下地層(膜厚25nm)、CoCrPtTa(Co:75at%、Cr:17at%、Pt:5at%、Ta:3at%)磁性層(膜厚27nm)、水素化カーボン保護層(膜厚10nm)を順次成膜し、この保護層上にディップ法によってパーフロロポリエーテルからなる液体潤滑剤層(膜厚1nm)を形成して、MRヘッド用磁気ディスクを得た。
【0060】
得られた磁気ディスクについてグライドテスト(グライド高さ:1.2μインチ、周速:8m/s)(1500枚)を実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。また、サーマル・アスペリティーの原因となるパーティクルによって、磁性層等の膜に欠陥が発生していないことも確認できた。
【0061】
また、グライドテストを終えた本実施例の磁気ディスクについて、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったが、複数のサンプル(500枚)の全数についてサーマル・アスペリティーによる再生の誤動作は認められなかった。
【0062】
実施例2〜4、比較例1
次に、パーティクルの量が異なる化学強化塩を用意し、化学強化処理液を作ったこと以外は実施例1と同様にして、磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを作製し、同様の評価を行った。なお、比較例1では清浄化がなされていない化学強化塩を使用した。
化学強化塩(硝酸ナトリウム)のパーティクルの量(粒径2.0μm以上、粒径0.2μm以上2.0μm未満、これらの合計)、凸部の高さ(平均値)、凸部の密度(平均値)、及び磁気ディスクのグライドテスト結果(不良率)(5000枚)を表1に示す。
なお、実施例2〜4及び比較例1において、粒径0.2μm以上の合計のパーティクルのうち、粒径2.0μm以上のパーティクルの占める割合は、それぞれ、18.2%(実施例2)、15.0%(実施例3)、22.1%(実施例4)、25.3%(比較例1)であった。
【0063】
【表1】
【0064】
表1からわかるように、清浄化された化学強化塩を使用する(その結果として、化学強化処理液中に含まれるパーティクルの量を減少させる)ことによって、効果的にガラス基板表面に形成される凸部を減少させることができるとともに、グライドテストでは磁気抵抗型ヘッドによる再生試験の結果も良好になることがわかる。特に、粒径0.2μm以上のパーティクルの量が4000個/ml以下(粒径2.0μm以上のパーティクルの量が700個/ml以下)の場合、凸部が形成されることなく、したがってグライドテストで不良が発生しないので好ましい。
一方、化学強化塩に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量が12000個/mlを超える場合、中でも粒径2.0μm以上のパーティクルの占める割合が25%を超える場合、化学強化工程の際、凸部が形成される割合が高くなるとともに、凸部の高さも30nmを超え、凸部の密度も0.002/mm2を超えるので、1.2μインチ高のグライドテストにおける不良率(ヒットやヘッドクラッシュの割合)が高く、また、再生試験(500枚)を行ったが、グライドテストの不良率が高くなるにつれて、サーマル・アスペリティーによる再生の誤動作の確率も高くなった。また、清浄化がなされていない化学強化処理液で化学強化した比較例1では、化学強化塩に含まれる粒径0.2μm以上のパーティクルの量は19320個/mlであり、化学強化工程の際、凸部が形成される割合が非常に高くなるとともに、凸部の高さが100nm、凸部の密度が0.007/mm2となり、1.2μインチ高のグライドテスト(5000枚)における不良率は10%と高く、また、再生試験(500枚)を行ったがサーマル・アスペリティーによる再生の誤動作の確率も高かった。
なお、実施例3〜4及び比較例1で形成された凸部を分析、観察したところ、凸部の成分は鉄を含むものであって、固形状のパーティクルが付着したものや、化学強化工程における酸化反応と、加わる熱によりパーティクル(鉄)が溶けたような凸部が観察された。
【0065】
また、表1に示すグライドテストの結果に基づいて、所望のグライド特性が得られるように、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を基準設定値として予め定め決定することで、所望のグライド特性が得られる磁気ディスク用ガラス基板、さらにはこのガラス基板上に少なくとも磁性層を形成することによって磁気ディスクを製造することができることがわかる。
すなわち、例えば、グライド高さが1.2μインチを満足する化学強化された磁気ディスク用ガラス基板を得るには、化学強化処理液にする前の化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を、粒径0.2μm以上のパーティクルの量が4000個/ml以下であるものを使用して化学強化処理液(溶融塩)を得、この化学強化処理液を使って化学強化処理することで得られる。以上実施例では、グライド高さが1.2μインチとして例に挙げたが、これに限定されず、上述したように、グライド高さと化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量との相関関係を予め求めておき、所望のグライド高さが得られるように、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を制御すれば良い。
【0066】
以上好ましい実施例を上げて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されない。
例えば、本発明は化学強化工程を経て製造される情報記録媒体用ガラス基板であれば適用でき、光ディスク用ガラス基板、光磁気ディスク用ガラス基板等が各種情報記録媒体用ガラス基板に広く応用できる。この場合、光ディスク用ガラス基板や光磁気ディスク用ガラス基板では、凸部の密度が多いと記録・再生に悪影響を及ぼすので、凸部の密度に着目して化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を制御するとよい。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を制御しているので、化学強化処理液中において情報記録媒体用ガラス基板に付着して情報記録媒体に悪影響を及ぼすパーティクルの付着を効果的に抑制できる。特に、化学強化処理液中の微小な鉄粉等がガラス基板へ付着してサーマル・アスペリティーやヘッドクラッシュの原因となる凸部が形成されるのを効果的に抑制できる。
したがって、欠陥の少ない高品質の情報記録媒体が得られ、特に低フライングハイト化及びヘッドクラッシュの防止や、サーマル・アスペリティーによる再生機能の低下防止を達成しうる磁気ディスクが得られる。また、1.2μインチ以下の低フライングハイト化を実現できる。
Claims (6)
- 化学強化塩を含有する化学強化処理液にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンより大きなイオン径の処理液中のイオンに置換することによりガラス基板を強化する化学強化工程を含む磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、
前記化学強化塩は、サーマル・アスペリティーの発生を防止するようにサーマル・アスペリティーの要因となるパーティクルの量を抑制したものであることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 前記パーティクルは、鉄のパーティクルを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 磁気ディスク用ガラス基板が、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)又は大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)と組み合わせて使用される磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって得られたガラス基板上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
- ガラス基板を準備する工程と、
化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量と、グライド高さとの相関関係を予め求め、この相関関係から所望のグライド特性となる前記パーティクルの量を基準設定値として定め、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量が予め定めた基準設定値以下であることを判別する工程と、
前記基準設定値を超える場合、化学強化塩自体に含まれるパーティクルの量を予め定めた基準設定値以下とする工程と、
パーティクルの量が予め定めた基準設定値以下である化学強化塩を調合して化学強化処理液をつくる工程と、
化学強化処理液にガラス基板を接触させることにより、ガラス基板の中に含まれる一部のイオンを、そのイオンより大きなイオン径の処理液中のイオンに置換することによりガラス基板を強化する化学強化工程と、
を有することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。 - 請求項5によって得られた磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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