JP3561852B2 - 放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネル - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高画質の放射線増感スクリーン及び高画質の放射線画像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療診断用放射線像および各種物体の非破壊での放射線像を得、これを診断、放射線探傷検査などに用いる手法として、主にハロゲン化銀等の写真感光材料と放射線増感スクリーンの組み合わせである放射線写真法や、放射線エネルギーを吸収した後、可視光や赤外線などの電磁波で励起することにより蓄積していた放射線エネルギーを蛍光の形で放出する蛍光体(以下、輝尽性蛍光体)を用いた放射線画像変換法が挙げられる。
【0003】
放射線写真法は、放射線を放射線増感スクリーンの蛍光体に照射して励起することにより可視光に変換せしめてハロゲン化銀写真感光材料に放射線画像を形成せしめて診断、検査するものである。これらの放射線画像は、支持体の両面または片面にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料(以下、感光材料と言う)に放射線増感スクリーンを両面または片面に密着せしめ、被写体を介して放射線を照射して形成される。
【0004】
得られる画像に対しては感度が高く、鮮鋭性がよく、かつ粒状性に優れていることが誤診、欠陥の見落としを防ぐ意味で要求される。
【0005】
また、放射線増感スクリーンは放射線カセッテまたは自動撮影装置に備え付けられ、撮影時にバネで圧着もしくは吸引されて感光材料に強い密着状態で撮影され、撮影終了後は急激に感光材料と引き剥がされる。通常これらの使用形態で数万回繰り返される。この操作により放射線増感スクリーンの保護層表面には強い荷重が掛り、表面に傷、剥離が発生すると、蛍光層からの発光を散乱させるため画像上にノイズを発生してしまう。
【0006】
例えば血管造影撮影など高速での連続撮影では、放射線増感スクリーンと感光材料との摩擦速度や単位時間当たりの摩擦回数が増加するため保護層への負担が増加し傷が付き易く、放射線増感スクリーンの寿命が著しく低下する。
【0007】
放射線増感スクリーンの感度は、放射線増感スクリーンの総発光量に依存する。発光量を増加せしめるためには蛍光体量を増やすことが挙げられるが、蛍光体量の増加は蛍光体層の膜厚の増加を招来し、蛍光体中での発光光の拡散が増加して鮮鋭性が低下する。この問題を解決するため蛍光体層を圧縮し、蛍光体層中の蛍光体密度を上げ、蛍光体量を増やしても蛍光体層厚を増加させないという技術として特開平3−21899号には蛍光体粒子の結合剤として熱可塑性エラストマーを用いる技術が開示されている。しかし、ここに示されているエラストマーの軟化温度30℃〜50℃では短時間での軟化が困難で十分な圧縮効果が得られず、また、長時間の圧縮では蛍光体の破壊が生じ易く、蛍光体の破壊によって輝度が低下するという問題があった。
【0008】
また、エラストマーの軟化温度が高いことにより蛍光層が硬いため、蛍光層の柔軟性に乏しく、感光材料との摩擦による荷重が保護層に集中するため高速での連続撮影を続ける場合、保護層に傷が生じやすく、放射線スクリーンの寿命が短くなるという欠点があり、更なる改良が望まれていた。
【0009】
一方、輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネル(輝尽性パネルとも称する)を利用するもので、被写体を透過した、或いは被写体から発せられた放射線を前記パネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(輝尽励起光)で時系列的に励起することにより、前記輝尽性蛍光体に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を電気的に読み取り電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体、或いは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。一方、読み取りを終えた前記パネルは、残存する画像の消去が行われた後、次の撮影に備えられる、即ち、放射線画像変換パネルは繰り返し使用される。
【0010】
主に結合剤中に蛍光体を分散含有する蛍光層、支持体から成る放射線画像変換パネルは、感度及び鮮鋭性向上のため蛍光増感スクリーン同様に蛍光体密度を上げる必要があり、また使用法によっては、使用中にパネルを積み重ねたり、またロールでパネルを搬送するため耐傷性も要求され、これらの改善は前記放射線増感スクリーンの課題と同様である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、画像性能と耐久性に優れ、長期使用に耐え得る放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記問題点は下記の本発明により解決された。即ち、
▲1▼ 支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線増感スクリーンにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とガラス転移点が−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)を含有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)とのガラス転移点が10℃以上の温度差を有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)の混合比が95:5乃至10:90の範囲にあることを特徴とする放射線増感スクリーン。
【0013】
▲2▼ 上記エラストマー(B)が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする▲1▼記載の放射線増感スクリーン。
【0014】
▲3▼ 蛍光層の膜密度が蛍光体密度の60%以上であることを特徴とする▲1▼記載の放射線増感スクリーン。
【0015】
▲4▼ 支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線画像変換パネルにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とガラス転移点が−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)を含有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)とのガラス転移点が10℃以上の温度差を有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)の混合比が95:5乃至10:90の範囲にあることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0016】
▲5▼ 上記エラストマー(B)が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする▲4▼記載の放射線画像変換パネル。
【0017】
▲6▼ 蛍光層の膜密度が蛍光体密度の60%以上であることを特徴とする▲4▼記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
以下、本発明を詳述する。
【0019】
熱可塑性エラストマーは常温で弾力性を有し、ガラス転移点以上に過熱されると流動性を持つようになるため圧縮の際に圧力による蛍光体の破損を防止することができる。
【0020】
本発明の結合剤としては、少なくともガラス転移点(以下、Tg)が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とTgが−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種が用いられるが、好ましくはTgが30℃以上、かつ90℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とTgが−15℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種である。
【0021】
本発明の蛍光体層中の蛍光体密度を上げるための蛍光体層の圧縮状態を示すため、図1に蛍光体圧縮概念図で示した。
【0022】
図1(L)はエラストマー(A)のみ単独使用した場合で塗膜(a)を圧縮または圧力除去しても膜が硬く(b),(c)の如く圧縮されず高い圧縮率が得られない。また膜が硬いため応力を緩和する能力に乏しく、圧縮時に表面近傍の蛍光体に高い力がかかり破壊し、発光能力が落ちる場合がある。また放射線増感スクリーンとして使用する場合、放射線増感スクリーンそのままでも、保護層を付けてもハロゲン化銀写真感光材料等との摩擦により傷がつき易い。
【0023】
放射線画像変換パネルとして使用する場合は搬送あるいは積層時に搬送ロールあるいは他のパネルとの摩擦により傷が付きやすい。
【0024】
(M)はエラストマー(B)のみ用いた場合で、塗膜(a)は圧縮により圧縮中は(b)の如く変形するが、圧力除去後に塗膜が元の状態(c)に戻ってしまうため圧縮率は低下する。また、膜が常温でも軟らかいため流動しやすく、放射線増感スクリーンでは感光材料との接触、放射線画像変換パネルでは搬送ロールや他のパネルとの接触によって部分的に膜厚が薄くなったり、保護層を付けた場合、変形によって保護層界面が剥離、破壊しやすく、また傷がつき易い。
【0025】
(N)は本発明に係るエラストマー(A)とエラストマー(B)を用いた場合で、Tgが異なるため加圧圧縮時、塗膜(a)はエラストマー(B)が素早く(b)の如く変形し、圧力除去後、エラストマー(A)が固化するためエラストマー(B)の変形が元に戻るのを阻害し(c)の如く圧縮されて高い圧縮率を得ることができる。また、膜に弾力性があるため、摩擦等の外部からの力を緩和して傷が付きにくく、膜の変形もほとんどない。
【0026】
上記熱可塑性エラストマーの(Tg)は、ブランドラップらによる“ポリマーハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年)(ワイリーアンドサンズ社版)に記載されており、コポリマーのTg(℃)は下記の式で表される。
【0027】
Tg(コポリマー)=v1Tg1+v2Tg2+…+vWTgW
但し上式中v1,v2・・・・vWはコポリマー中の単量体の重量分率を表し、Tg1,Tg2・・・・TgWはコポリマー中の各単量体のホモポリマーのTg(℃)を表す。
【0028】
上式に従って計算されたTgは±5℃の精度である。
【0029】
また、本発明の熱可塑性エラストマー(A)と(B)のTgが10℃以上の差を有しているのが好ましく、さらに好ましくは15℃以上の差を有するものである。
【0030】
熱可塑性エラストマーの例としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジェン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジェンゴム及びシリコンゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、本発明においてはポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましく採用できる。
【0031】
本発明において結合剤エラストマーの混合比としては80:20乃至20:80が最も圧縮に対する効果が高く好ましい。
【0032】
本発明の蛍光層の膜密度は蛍光体密度に対して、好ましくは65%以上、85%以下である。
【0033】
ここで蛍光層の膜密度とは、蛍光体層膜厚がAμmの場合104/Acm2(蛍光体層として1cm3、例えば蛍光層が100μmの場合104/100=100cm2)の放射線増感スクリーン又は放射線画像変換パネルを切り出し、そこから保護層を除去した重量(a)、さらに有機溶剤、若しくは研磨テープを用いて蛍光層を除去した支持体、若しくは支持体と下引き層の重量(b)を測定すれば、この(a)と(b)の差(a−b)g/cm3によって求められる。
【0034】
本発明の放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルに使用する蛍光体の密度は蛍光体単位体積当たりの質量(g/cm3)であり、比重と一致する。蛍光体の比重は各種の比重測定法によって求めることができ、各種蛍光体の比重(密度)としては、
例えば
Gd2O2S:Tb 7.3g/cm3
Y2O2S:Tb 4.9g/cm3
CaWO4 6.1g/cm3
BaFBr:Eu 5.0g/cm3
“蛍光体ハンドブック”蛍光体同学会編(オーム社刊)289頁
本発明の放射線増感スクリーンに用いられる好ましい蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
【0035】
タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体〔Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y.Gd)2O2S:Tb、(Y.Gd)O2S:Tb、Tm等〕、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb、Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb、Tm、LaOCl:Tb、Tm、LaOBr:Tb GdOBr:Tb GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、 BaSO4:Eu2+、(Ba.Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロビウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体〔BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+.Tb、BaFBr:Eu2+.Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba・Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等〕、沃化物系蛍光体(CsI:Na、 CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体〔ZnS:Ag(Zn.Cd)S:Ag、(Zn.Cd)S:Cu、(Zn.Cd)S:Cu.Al等〕、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、タンタル酸塩系蛍光体(YTaO4、YTaO4:Tm、YTaO4:Nb、[Y,Sr]TaO4:Nb、GdTaO4:Tm、Gd2O3・Ta2O5・B2O3:Tb等)、ただし本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視又は近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0036】
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる好ましい輝尽性蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
【0037】
アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(BaFBr:Eu、BaFI:Eu、BaFBr1−xIx:Eu、BaFCl:Eu、BaFBr:Ce、BaBrI:Eu、BaBrCl:Eu、SrFBr:Eu、BaBr2:Eu等)、アルカリハライド系蛍光体(RbBr:Tl、RbI:Tl、CsI:Na、RbBr:Eu、RbI:Eu、CsI:Eu)等、 硫化物系蛍光体(SrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、CaS:Eu,Sm、等)、アルミン酸バリウム系蛍光体(BaO・xAl2O3:Eu等)、アルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体(MgO・xSiO2:Eu等)、希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Bi,Tb,Pr等)、燐酸塩系蛍光体(3Ca3(PO4)2CaF2:Eu等)、ただし、本発明に用いられる輝尽性蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線エネルギーを吸収した後、可視光や赤外線などの電磁波(輝尽励起光)で励起することにより、蓄積していた放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)の形で放出する蛍光体であれば使用できる。
【0038】
放射線増感スクリーン又は放射線画像変換パネルの製造法は、第1の製造法として、
▲1▼結合剤と蛍光体とからなる蛍光体層を支持体上に形成する工程と、▲2▼蛍光体層を前記結合剤の軟化温度もしくは融点以上の温度で圧縮する工程で製造する方法。
【0039】
また、第2の製造法として、
▲1▼結合剤と蛍光体とからなる蛍光体シートを形成する工程、▲2▼前記蛍光体シートを支持体上に載せ、前記結合剤の軟化温度もしくは融点以上の温度で、圧縮しながら前記蛍光体シートを支持体に接着する工程で製造する。
【0040】
第1の製造法の蛍光体層は、結合剤溶液中に蛍光体を均一に分散せしめた塗布液(以下、蛍光体塗料)を支持体上に塗布、乾燥することにより製造できる。
【0041】
また、第2の製造法の蛍光体層となる蛍光体シートは、蛍光体塗料を蛍光体シート形成用仮支持体上に塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥離することで製造できる。
【0042】
すなわち、まず適当な有機溶媒中に、結合剤と蛍光体粒子を添加し、ディスパーやボールミルを使用し撹拌混合して結合剤中に蛍光体が均一に分散した塗布液を調製する。塗布液調製用の溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0043】
蛍光体塗料における結合剤と蛍光体の混合比は、目的とする特性、蛍光体の種類などにより異なるが、一般には結合剤と蛍光体の混合比は1:1乃至1:100(重量比)の範囲から選ばれ、特に1:8乃至1:40(重量比)の範囲から選ぶのが好ましい。
【0044】
なお、蛍光体塗料には塗料中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、又は形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0045】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
【0046】
可塑剤の例としては、燐酸トリフェニール、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0047】
上記のようにして調製された蛍光体と結合剤とを含有する蛍光体塗料を、支持体若しくはシート形成用の仮支持体の表面に均一に塗布することにより塗料の塗膜を形成する。
【0048】
この塗布手段としては、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータ、押し出しコータなどを用いることにより行うことができる。
【0049】
支持体及び仮支持体としては、例えばガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものが使用され得るが、情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポチカーボネートフィルム等のプラスティクフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、もしくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニールアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。
【0050】
第2の製造法では、仮支持体上に蛍光体塗料を塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して蛍光体層となる蛍光体シートとする。従って仮支持体の表面は、予め剥離剤を塗布しておき、形成された蛍光体シートが仮支持体から剥離し易い状態にしておくのが好ましい。
【0051】
支持体と蛍光体層の結合を強化するため支持体表面にゼラチンなどの高分子物質を塗布して接着性を付与する下塗り層を設けたり、感度、画質(鮮鋭性、粒状性)を向上せしめるために二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収物質からなる光吸収層などが設けられてよい。それらの構成は目的、用途などに応じて任意に選択することができる。
【0052】
第1の製造法の場合、蛍光体及び支持体をそのまま圧縮する。
【0053】
第2の製造法の場合、前記▲1▼によって得られた蛍光体シートを支持体上に載せ、結合剤の軟化温度または融点以上の温度で圧縮しながら蛍光体シートとを支持体上に接着する。このようにして、蛍光体シート支持体上に予め固定することなく圧着する方法を利用することによりシートを薄く押し広げることができる。
【0054】
本発明の圧縮処理のために用いられる圧縮装置の例としては、カレンダーロール、ホットプレスなど一般的に知られているものを挙げることができる。例えばカレンダーロールによる圧縮処理は、第1の製造法では前記▲1▼によって得た支持体と蛍光体シートを、また第2の製造法では支持体上に▲1▼によって得た蛍光体シートを載せ、結合剤の軟化温度近く、又は融点以上に加熱したローラの間を一定の速度で通過させることにより行われる。ただし本発明に用いられる圧縮装置はこれらのものに限定されるものではなく、上記シートを加熱しながら圧縮することのできるものであればいかなるものであってもよい。圧縮の際の圧力はプレス機使用の場合は30kg/cm2以上であるのが好ましく、ロールで圧する際は30kg/cm以上であるのが好ましい。
【0055】
通常、放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルには、前述した支持体に接する側と反対側の蛍光体層の表面に、蛍光体層を物理的、化学的に保護するための透明な保護膜が設けられる。このような透明保護膜は、本発明についても設置することが好ましい。保護膜の膜厚は一般に2〜20μmの範囲にある。
【0056】
透明保護層は例えば酢酸セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体、或いはポリメチールメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーなどの合成高分子物質を適当な溶剤に溶解して調製した溶液を蛍光体層の表面に塗布する方法により形成することができる。
これらの高分子物質は、単独でも混合しても使用できる。また、保護層を塗布で形成する場合は塗布の直前に架橋剤を添加することが望ましい。
【0057】
或いはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどからなるプラスチックシート、及び透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に調製して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて接着するなどの方法で形成することができる。
【0058】
本発明で用いられる保護層としては、特に有機溶媒に可溶性の弗素系樹脂を含む塗布膜により形成されることが好ましい。弗素系樹脂とは、弗素を含むオレフィン(フルオロオレフィン)の重合体、もしくは弗素を含むオレフィンを共重合体成分として含む共重合体をいう。弗素系樹脂の塗布膜により形成された保護層は架橋されていてもよい。弗素系樹脂による保護層は、触手や感光材料などとの接触で脂肪分、感光材料などから出る可塑剤などの汚れが保護層内部に染み込みにくいので、拭き取りなどによって容易に汚れを除去することができる利点がある。
【0059】
また、膜強度の改良等の目的で、弗素系樹脂と他の高分子物質を混合してもよい。
【0060】
また、保護層は蛍光体層上に形成された厚さ10μm以下の透明な合成樹脂層であることが好ましい。このような薄い保護層を用いることにより、特に放射線増感スクリーンの場合は蛍光体からハロゲン化銀乳剤までの距離が短くなるため、得られる放射線画像の鮮鋭度の向上に寄与することになる。
【0061】
【実施例】
実施例1
(1)放射線増感スクリーンの製造
上記、処方の蛍光体及び表1に示す結合剤a乃至kをボールミルにて6時間混合分散し、また塗布の前にイソシアネート1重量部を添加した。そしてエラストマー種とその混合比が表2に示されるような蛍光体塗料(1)〜(17)を得た。次にガラス板上に水平にセットした厚さ250μmの二酸化チタンを練り込んだポリエチレンテレフタレート支持体上に上記の蛍光体塗料をナイフコーターを用いて表3に示す乾燥膜厚になるように塗布、乾燥して蛍光層を得た。蛍光層は表3に示す温度にしたカレンダーロールを用いて線圧100kg/cmで圧縮を行った。圧縮後、片面にポリエステル系接着剤が塗布されている厚さ8μmの透明のポリエチレンテレフタレートシートを接着剤面を蛍光層面に接着して保護層を設け、放射線増感スクリーン1〜27を得た。ただし、放射線増感スクリーン14、23〜27はカレンダーロールによる圧縮は行わず未圧縮のまま保護層を設けた。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
(2)放射線増感スクリーンの物性評価
a)圧縮率
圧縮前と圧縮後の蛍光層の厚みを測定し、
(1−圧縮後厚み/圧縮前厚み)×100を圧縮率とした。
【0065】
b)密度比率の測定
密度比率は蛍光層密度と蛍光体密度との比であり、
(蛍光層密度/蛍光体密度)×100で示す。
【0066】
蛍光層密度の測定は以下のように行う。
【0067】
単位面積(1cm2)の放射線増感スクリーンを切り出し、保護層を除去、その時の質量をx(g)、膜厚をa(cm)とする。有機溶剤若しくは研磨テープで蛍光層を除去し、その時の質量をy(g)、膜厚をb(cm)とするとき、
放射線増感スクリーン単位面積当たりの蛍光層質量は
x−y(g)、
蛍光層膜厚は
a−b(cm)
蛍光層密度は(x−y)/{1×(a−b)}=(x−y)/(a−b)である。
【0068】
(3)放射線増感スクリーンの画像の評価
a)鮮鋭度
得られた試料放射線増感スクリーンをX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用い、フンクテストチャートSMS−5853(コニカメディカル[株]販売)矩形波チャートを撮影し、自動現像機SRX−502、処理液SR−DF(共にコニカ[株]製)を用い現像温度35℃、定着温度33℃で45秒処理を行い、コントラスト法によりMTFを測定した。MTF値は空間周波数2.0サイクル/mmの値で示した。従ってMTF値が高いほど鮮鋭性が高いことを示す。
【0069】
b)粒状性
得られた試料放射線増感スクリーンをMTF測定と同様にX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用い、現像処理後の光学濃度が1.0±0.1になるような距離で80kVpでX線を照射し、現像処理は前記MTFと同様の処理を行った。
【0070】
粒状性は48μmのアパチュアー径で測定した「RMS」粒状性で評価した。「RMS」粒状性についてはT.H.James編:The Theory of the Photographic Process 619−620頁 (1977年、Macmillan社)に記載されている。なお、RMS値は値が小さいほど粒状性がよいことを示す。
【0071】
(4)放射線増感スクリーンの耐久性評価
フィルムオートチェンジャCFC−B1000(キャノン[株]製)に試料放射線増感スクリーンを張り付けX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用いて1000回摺擦させた。摺擦後の放射線増感スクリーン表面の傷の発生度合いを目視で評価した。
【0072】
評価規準
な し:目視で放射線増感スクリーン上に傷が確認されない
少 な い:目視で放射線増感スクリーン上に数本程度認められるが、実用上問題なし
やや多い:目視で放射線増感スクリーン上に10本以上確認され、画像上でも傷として確認される
多 い:目視で放射線増感スクリーン上に20本以上確認され、使用できないレベル
これらの評価結果をまとめて表3に示した。
【0073】
【表3】
【0074】
表3から明らかなように、本発明の蛍光体を結合剤中に分散含有せしめた蛍光体層を有する放射線増感スクリーンにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)と−20℃以上30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種を一定条件を満たす比率で含有する放射線増感スクリーンNo.1〜14は、比率条件の異なるNo.15,16、23、24、ガラス転移点の−20℃より低いエラストマーを用いたNo.17、25、130℃より高いエラストマーを用いたNo.19、27、温度差の小さいNo.18、26一種のエラストマーを用いたNo.20,21,22に比して明らかに鮮鋭性、粒状性、耐久性、又は3つの総合特性に優れていることが分かる。
【0075】
実施例2
(1)放射線画像変換パネルの製造
上記、処方の蛍光体及び表1に示す結合剤a乃至kをボールミルにて6時間混合分散し、また塗布の前にイソシアネート1重量部を添加した。そしてエラストマー種とその混合比が表4に示されるような蛍光体塗料(18)〜(34)を得た。次にガラス板上に水平にセットした厚さ250μmの二酸化チタンを練り込んだポリエチレンテレフタレート支持体上に上記の蛍光体塗料をナイフコーターを用いて表4に示す乾燥膜厚になるように塗布、乾燥して蛍光層を得た。蛍光層は表4に示す温度にしたカレンダーロールを用いて線圧100kg/cmで圧縮を行った。圧縮後、片面にポリエステル系接着剤が塗布されている厚さ8μmの透明のポリエチレンテレフタレートシートを接着剤面を蛍光層面に接着して保護層を設け、放射線画像変換パネル28〜54を得た。ただし、放射線画像変換パネル41、50〜54はカレンダーロールによる圧縮は行わず未圧縮のまま保護層を設けた。
【0076】
【表4】
【0077】
(2)放射線画像変換パネルの物性評価
a)圧縮率
実施例1の放射線増感スクリーンの圧縮率と同様な方法で測定した。
【0078】
b)密度比率の測定
実施例1の放射線増感スクリーンの密度比率測定と同様の方法で測定した。
【0079】
(3)放射線画像変換パネルの画像評価
a)感度
放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を10mR(管球からパネルまでの距離;1.5m)照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径:100μmφ)で走査して輝尽励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を読み取り、検出器(光電子増倍管)で光電変換して信号を得、この信号値の相対値で表示して感度とした。
【0080】
b)鮮鋭度
放射線画像変換パネルにCTFチャートを貼り付けた後、管電圧80kVpのX線を10mR(管球からパネルまでの距離;1.5m)照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径:100μmφ)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を読み取り、検出器(光電子増倍管)で光電変換して信号を得た。この信号値より、画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、画像の鮮鋭性を評価した。なお、変調伝達関数(MTF)は空間周波数が2.0サイクル/mmのときの値である。
【0081】
(4)放射線画像変換パネルの耐久性
フィルムオートチェンジャーCFC−B1000(キャノン[株]製)に試料放射線画像変換パネルを貼り付け、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて1000回摺擦させた。摺擦後の放射線画像変換パネル表面の傷の発生度合いを目視で評価した。
【0082】
なし :目視で放射線画像変換パネル上に傷が認められない
少ない :目視で放射線画像変換パネル上に数本程度認められるが実用上問題なし
やや多い:目視で放射線画像変換パネル上に10本程度認められる
多い :目視で放射線画像変換パネル上に20本以上認められ、使用できないレベル
これらの評価結果をまとめて表4に示した。
【0083】
【表5】
【0084】
表5から明らかなように、本発明の輝尽性蛍光体を結合剤中に分散含有せしめた蛍光体層を有する放射線画像変換パネルびおいて結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)と−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種を一定条件を満たす比率で含有する放射線画像変換パネル、パネルNo.28〜41、比率条件の異なるパネルNo.42、43、50、51、ガラス転移点の20℃より低いエラストマーを用いたパネルNo.44、52、130℃より高いエラストマーを用いたパネルNo.46、54、温度差の小さいエラストマーを用いたNo.45、53、一種のエラストマーを用いたNo.47、48、49に比して明らかに感度、鮮鋭性、耐久性、又は総合特性に優れていることがわかる。
【0085】
【発明の効果】
本発明により画像性能と耐久性に優れた放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(L)結合剤に高Tgエラストマー(A)を用いた蛍光体層の圧縮概念図である。
(M)結合剤に低Tgエラストマー(B)を用いた蛍光体層の圧縮概念図である。
(N)本発明の蛍光体層の圧縮概念図である。
【符号の説明】
1 蛍光体
2 高Tgエラストマー(A)
3 低Tgエラストマー(B)
【産業上の利用分野】
本発明は、高画質の放射線増感スクリーン及び高画質の放射線画像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療診断用放射線像および各種物体の非破壊での放射線像を得、これを診断、放射線探傷検査などに用いる手法として、主にハロゲン化銀等の写真感光材料と放射線増感スクリーンの組み合わせである放射線写真法や、放射線エネルギーを吸収した後、可視光や赤外線などの電磁波で励起することにより蓄積していた放射線エネルギーを蛍光の形で放出する蛍光体(以下、輝尽性蛍光体)を用いた放射線画像変換法が挙げられる。
【0003】
放射線写真法は、放射線を放射線増感スクリーンの蛍光体に照射して励起することにより可視光に変換せしめてハロゲン化銀写真感光材料に放射線画像を形成せしめて診断、検査するものである。これらの放射線画像は、支持体の両面または片面にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料(以下、感光材料と言う)に放射線増感スクリーンを両面または片面に密着せしめ、被写体を介して放射線を照射して形成される。
【0004】
得られる画像に対しては感度が高く、鮮鋭性がよく、かつ粒状性に優れていることが誤診、欠陥の見落としを防ぐ意味で要求される。
【0005】
また、放射線増感スクリーンは放射線カセッテまたは自動撮影装置に備え付けられ、撮影時にバネで圧着もしくは吸引されて感光材料に強い密着状態で撮影され、撮影終了後は急激に感光材料と引き剥がされる。通常これらの使用形態で数万回繰り返される。この操作により放射線増感スクリーンの保護層表面には強い荷重が掛り、表面に傷、剥離が発生すると、蛍光層からの発光を散乱させるため画像上にノイズを発生してしまう。
【0006】
例えば血管造影撮影など高速での連続撮影では、放射線増感スクリーンと感光材料との摩擦速度や単位時間当たりの摩擦回数が増加するため保護層への負担が増加し傷が付き易く、放射線増感スクリーンの寿命が著しく低下する。
【0007】
放射線増感スクリーンの感度は、放射線増感スクリーンの総発光量に依存する。発光量を増加せしめるためには蛍光体量を増やすことが挙げられるが、蛍光体量の増加は蛍光体層の膜厚の増加を招来し、蛍光体中での発光光の拡散が増加して鮮鋭性が低下する。この問題を解決するため蛍光体層を圧縮し、蛍光体層中の蛍光体密度を上げ、蛍光体量を増やしても蛍光体層厚を増加させないという技術として特開平3−21899号には蛍光体粒子の結合剤として熱可塑性エラストマーを用いる技術が開示されている。しかし、ここに示されているエラストマーの軟化温度30℃〜50℃では短時間での軟化が困難で十分な圧縮効果が得られず、また、長時間の圧縮では蛍光体の破壊が生じ易く、蛍光体の破壊によって輝度が低下するという問題があった。
【0008】
また、エラストマーの軟化温度が高いことにより蛍光層が硬いため、蛍光層の柔軟性に乏しく、感光材料との摩擦による荷重が保護層に集中するため高速での連続撮影を続ける場合、保護層に傷が生じやすく、放射線スクリーンの寿命が短くなるという欠点があり、更なる改良が望まれていた。
【0009】
一方、輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネル(輝尽性パネルとも称する)を利用するもので、被写体を透過した、或いは被写体から発せられた放射線を前記パネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(輝尽励起光)で時系列的に励起することにより、前記輝尽性蛍光体に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を電気的に読み取り電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体、或いは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。一方、読み取りを終えた前記パネルは、残存する画像の消去が行われた後、次の撮影に備えられる、即ち、放射線画像変換パネルは繰り返し使用される。
【0010】
主に結合剤中に蛍光体を分散含有する蛍光層、支持体から成る放射線画像変換パネルは、感度及び鮮鋭性向上のため蛍光増感スクリーン同様に蛍光体密度を上げる必要があり、また使用法によっては、使用中にパネルを積み重ねたり、またロールでパネルを搬送するため耐傷性も要求され、これらの改善は前記放射線増感スクリーンの課題と同様である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、画像性能と耐久性に優れ、長期使用に耐え得る放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記問題点は下記の本発明により解決された。即ち、
▲1▼ 支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線増感スクリーンにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とガラス転移点が−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)を含有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)とのガラス転移点が10℃以上の温度差を有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)の混合比が95:5乃至10:90の範囲にあることを特徴とする放射線増感スクリーン。
【0013】
▲2▼ 上記エラストマー(B)が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする▲1▼記載の放射線増感スクリーン。
【0014】
▲3▼ 蛍光層の膜密度が蛍光体密度の60%以上であることを特徴とする▲1▼記載の放射線増感スクリーン。
【0015】
▲4▼ 支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線画像変換パネルにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とガラス転移点が−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)を含有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)とのガラス転移点が10℃以上の温度差を有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)の混合比が95:5乃至10:90の範囲にあることを特徴とする放射線画像変換パネル。
【0016】
▲5▼ 上記エラストマー(B)が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする▲4▼記載の放射線画像変換パネル。
【0017】
▲6▼ 蛍光層の膜密度が蛍光体密度の60%以上であることを特徴とする▲4▼記載の放射線画像変換パネル。
【0018】
以下、本発明を詳述する。
【0019】
熱可塑性エラストマーは常温で弾力性を有し、ガラス転移点以上に過熱されると流動性を持つようになるため圧縮の際に圧力による蛍光体の破損を防止することができる。
【0020】
本発明の結合剤としては、少なくともガラス転移点(以下、Tg)が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とTgが−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種が用いられるが、好ましくはTgが30℃以上、かつ90℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とTgが−15℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種である。
【0021】
本発明の蛍光体層中の蛍光体密度を上げるための蛍光体層の圧縮状態を示すため、図1に蛍光体圧縮概念図で示した。
【0022】
図1(L)はエラストマー(A)のみ単独使用した場合で塗膜(a)を圧縮または圧力除去しても膜が硬く(b),(c)の如く圧縮されず高い圧縮率が得られない。また膜が硬いため応力を緩和する能力に乏しく、圧縮時に表面近傍の蛍光体に高い力がかかり破壊し、発光能力が落ちる場合がある。また放射線増感スクリーンとして使用する場合、放射線増感スクリーンそのままでも、保護層を付けてもハロゲン化銀写真感光材料等との摩擦により傷がつき易い。
【0023】
放射線画像変換パネルとして使用する場合は搬送あるいは積層時に搬送ロールあるいは他のパネルとの摩擦により傷が付きやすい。
【0024】
(M)はエラストマー(B)のみ用いた場合で、塗膜(a)は圧縮により圧縮中は(b)の如く変形するが、圧力除去後に塗膜が元の状態(c)に戻ってしまうため圧縮率は低下する。また、膜が常温でも軟らかいため流動しやすく、放射線増感スクリーンでは感光材料との接触、放射線画像変換パネルでは搬送ロールや他のパネルとの接触によって部分的に膜厚が薄くなったり、保護層を付けた場合、変形によって保護層界面が剥離、破壊しやすく、また傷がつき易い。
【0025】
(N)は本発明に係るエラストマー(A)とエラストマー(B)を用いた場合で、Tgが異なるため加圧圧縮時、塗膜(a)はエラストマー(B)が素早く(b)の如く変形し、圧力除去後、エラストマー(A)が固化するためエラストマー(B)の変形が元に戻るのを阻害し(c)の如く圧縮されて高い圧縮率を得ることができる。また、膜に弾力性があるため、摩擦等の外部からの力を緩和して傷が付きにくく、膜の変形もほとんどない。
【0026】
上記熱可塑性エラストマーの(Tg)は、ブランドラップらによる“ポリマーハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年)(ワイリーアンドサンズ社版)に記載されており、コポリマーのTg(℃)は下記の式で表される。
【0027】
Tg(コポリマー)=v1Tg1+v2Tg2+…+vWTgW
但し上式中v1,v2・・・・vWはコポリマー中の単量体の重量分率を表し、Tg1,Tg2・・・・TgWはコポリマー中の各単量体のホモポリマーのTg(℃)を表す。
【0028】
上式に従って計算されたTgは±5℃の精度である。
【0029】
また、本発明の熱可塑性エラストマー(A)と(B)のTgが10℃以上の差を有しているのが好ましく、さらに好ましくは15℃以上の差を有するものである。
【0030】
熱可塑性エラストマーの例としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジェン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジェンゴム及びシリコンゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、本発明においてはポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましく採用できる。
【0031】
本発明において結合剤エラストマーの混合比としては80:20乃至20:80が最も圧縮に対する効果が高く好ましい。
【0032】
本発明の蛍光層の膜密度は蛍光体密度に対して、好ましくは65%以上、85%以下である。
【0033】
ここで蛍光層の膜密度とは、蛍光体層膜厚がAμmの場合104/Acm2(蛍光体層として1cm3、例えば蛍光層が100μmの場合104/100=100cm2)の放射線増感スクリーン又は放射線画像変換パネルを切り出し、そこから保護層を除去した重量(a)、さらに有機溶剤、若しくは研磨テープを用いて蛍光層を除去した支持体、若しくは支持体と下引き層の重量(b)を測定すれば、この(a)と(b)の差(a−b)g/cm3によって求められる。
【0034】
本発明の放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルに使用する蛍光体の密度は蛍光体単位体積当たりの質量(g/cm3)であり、比重と一致する。蛍光体の比重は各種の比重測定法によって求めることができ、各種蛍光体の比重(密度)としては、
例えば
Gd2O2S:Tb 7.3g/cm3
Y2O2S:Tb 4.9g/cm3
CaWO4 6.1g/cm3
BaFBr:Eu 5.0g/cm3
“蛍光体ハンドブック”蛍光体同学会編(オーム社刊)289頁
本発明の放射線増感スクリーンに用いられる好ましい蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
【0035】
タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体〔Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y.Gd)2O2S:Tb、(Y.Gd)O2S:Tb、Tm等〕、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb、Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb、Tm、LaOCl:Tb、Tm、LaOBr:Tb GdOBr:Tb GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、 BaSO4:Eu2+、(Ba.Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロビウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体〔BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+.Tb、BaFBr:Eu2+.Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba・Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等〕、沃化物系蛍光体(CsI:Na、 CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体〔ZnS:Ag(Zn.Cd)S:Ag、(Zn.Cd)S:Cu、(Zn.Cd)S:Cu.Al等〕、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、タンタル酸塩系蛍光体(YTaO4、YTaO4:Tm、YTaO4:Nb、[Y,Sr]TaO4:Nb、GdTaO4:Tm、Gd2O3・Ta2O5・B2O3:Tb等)、ただし本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視又は近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0036】
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる好ましい輝尽性蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
【0037】
アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体(BaFBr:Eu、BaFI:Eu、BaFBr1−xIx:Eu、BaFCl:Eu、BaFBr:Ce、BaBrI:Eu、BaBrCl:Eu、SrFBr:Eu、BaBr2:Eu等)、アルカリハライド系蛍光体(RbBr:Tl、RbI:Tl、CsI:Na、RbBr:Eu、RbI:Eu、CsI:Eu)等、 硫化物系蛍光体(SrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、CaS:Eu,Sm、等)、アルミン酸バリウム系蛍光体(BaO・xAl2O3:Eu等)、アルカリ土類金属珪酸塩系蛍光体(MgO・xSiO2:Eu等)、希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Bi,Tb,Pr等)、燐酸塩系蛍光体(3Ca3(PO4)2CaF2:Eu等)、ただし、本発明に用いられる輝尽性蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線エネルギーを吸収した後、可視光や赤外線などの電磁波(輝尽励起光)で励起することにより、蓄積していた放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)の形で放出する蛍光体であれば使用できる。
【0038】
放射線増感スクリーン又は放射線画像変換パネルの製造法は、第1の製造法として、
▲1▼結合剤と蛍光体とからなる蛍光体層を支持体上に形成する工程と、▲2▼蛍光体層を前記結合剤の軟化温度もしくは融点以上の温度で圧縮する工程で製造する方法。
【0039】
また、第2の製造法として、
▲1▼結合剤と蛍光体とからなる蛍光体シートを形成する工程、▲2▼前記蛍光体シートを支持体上に載せ、前記結合剤の軟化温度もしくは融点以上の温度で、圧縮しながら前記蛍光体シートを支持体に接着する工程で製造する。
【0040】
第1の製造法の蛍光体層は、結合剤溶液中に蛍光体を均一に分散せしめた塗布液(以下、蛍光体塗料)を支持体上に塗布、乾燥することにより製造できる。
【0041】
また、第2の製造法の蛍光体層となる蛍光体シートは、蛍光体塗料を蛍光体シート形成用仮支持体上に塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥離することで製造できる。
【0042】
すなわち、まず適当な有機溶媒中に、結合剤と蛍光体粒子を添加し、ディスパーやボールミルを使用し撹拌混合して結合剤中に蛍光体が均一に分散した塗布液を調製する。塗布液調製用の溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0043】
蛍光体塗料における結合剤と蛍光体の混合比は、目的とする特性、蛍光体の種類などにより異なるが、一般には結合剤と蛍光体の混合比は1:1乃至1:100(重量比)の範囲から選ばれ、特に1:8乃至1:40(重量比)の範囲から選ぶのが好ましい。
【0044】
なお、蛍光体塗料には塗料中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、又は形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0045】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
【0046】
可塑剤の例としては、燐酸トリフェニール、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0047】
上記のようにして調製された蛍光体と結合剤とを含有する蛍光体塗料を、支持体若しくはシート形成用の仮支持体の表面に均一に塗布することにより塗料の塗膜を形成する。
【0048】
この塗布手段としては、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータ、押し出しコータなどを用いることにより行うことができる。
【0049】
支持体及び仮支持体としては、例えばガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものが使用され得るが、情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポチカーボネートフィルム等のプラスティクフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、もしくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許784,615号明細書に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニールアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。
【0050】
第2の製造法では、仮支持体上に蛍光体塗料を塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して蛍光体層となる蛍光体シートとする。従って仮支持体の表面は、予め剥離剤を塗布しておき、形成された蛍光体シートが仮支持体から剥離し易い状態にしておくのが好ましい。
【0051】
支持体と蛍光体層の結合を強化するため支持体表面にゼラチンなどの高分子物質を塗布して接着性を付与する下塗り層を設けたり、感度、画質(鮮鋭性、粒状性)を向上せしめるために二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収物質からなる光吸収層などが設けられてよい。それらの構成は目的、用途などに応じて任意に選択することができる。
【0052】
第1の製造法の場合、蛍光体及び支持体をそのまま圧縮する。
【0053】
第2の製造法の場合、前記▲1▼によって得られた蛍光体シートを支持体上に載せ、結合剤の軟化温度または融点以上の温度で圧縮しながら蛍光体シートとを支持体上に接着する。このようにして、蛍光体シート支持体上に予め固定することなく圧着する方法を利用することによりシートを薄く押し広げることができる。
【0054】
本発明の圧縮処理のために用いられる圧縮装置の例としては、カレンダーロール、ホットプレスなど一般的に知られているものを挙げることができる。例えばカレンダーロールによる圧縮処理は、第1の製造法では前記▲1▼によって得た支持体と蛍光体シートを、また第2の製造法では支持体上に▲1▼によって得た蛍光体シートを載せ、結合剤の軟化温度近く、又は融点以上に加熱したローラの間を一定の速度で通過させることにより行われる。ただし本発明に用いられる圧縮装置はこれらのものに限定されるものではなく、上記シートを加熱しながら圧縮することのできるものであればいかなるものであってもよい。圧縮の際の圧力はプレス機使用の場合は30kg/cm2以上であるのが好ましく、ロールで圧する際は30kg/cm以上であるのが好ましい。
【0055】
通常、放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルには、前述した支持体に接する側と反対側の蛍光体層の表面に、蛍光体層を物理的、化学的に保護するための透明な保護膜が設けられる。このような透明保護膜は、本発明についても設置することが好ましい。保護膜の膜厚は一般に2〜20μmの範囲にある。
【0056】
透明保護層は例えば酢酸セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体、或いはポリメチールメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーなどの合成高分子物質を適当な溶剤に溶解して調製した溶液を蛍光体層の表面に塗布する方法により形成することができる。
これらの高分子物質は、単独でも混合しても使用できる。また、保護層を塗布で形成する場合は塗布の直前に架橋剤を添加することが望ましい。
【0057】
或いはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミドなどからなるプラスチックシート、及び透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に調製して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて接着するなどの方法で形成することができる。
【0058】
本発明で用いられる保護層としては、特に有機溶媒に可溶性の弗素系樹脂を含む塗布膜により形成されることが好ましい。弗素系樹脂とは、弗素を含むオレフィン(フルオロオレフィン)の重合体、もしくは弗素を含むオレフィンを共重合体成分として含む共重合体をいう。弗素系樹脂の塗布膜により形成された保護層は架橋されていてもよい。弗素系樹脂による保護層は、触手や感光材料などとの接触で脂肪分、感光材料などから出る可塑剤などの汚れが保護層内部に染み込みにくいので、拭き取りなどによって容易に汚れを除去することができる利点がある。
【0059】
また、膜強度の改良等の目的で、弗素系樹脂と他の高分子物質を混合してもよい。
【0060】
また、保護層は蛍光体層上に形成された厚さ10μm以下の透明な合成樹脂層であることが好ましい。このような薄い保護層を用いることにより、特に放射線増感スクリーンの場合は蛍光体からハロゲン化銀乳剤までの距離が短くなるため、得られる放射線画像の鮮鋭度の向上に寄与することになる。
【0061】
【実施例】
実施例1
(1)放射線増感スクリーンの製造
上記、処方の蛍光体及び表1に示す結合剤a乃至kをボールミルにて6時間混合分散し、また塗布の前にイソシアネート1重量部を添加した。そしてエラストマー種とその混合比が表2に示されるような蛍光体塗料(1)〜(17)を得た。次にガラス板上に水平にセットした厚さ250μmの二酸化チタンを練り込んだポリエチレンテレフタレート支持体上に上記の蛍光体塗料をナイフコーターを用いて表3に示す乾燥膜厚になるように塗布、乾燥して蛍光層を得た。蛍光層は表3に示す温度にしたカレンダーロールを用いて線圧100kg/cmで圧縮を行った。圧縮後、片面にポリエステル系接着剤が塗布されている厚さ8μmの透明のポリエチレンテレフタレートシートを接着剤面を蛍光層面に接着して保護層を設け、放射線増感スクリーン1〜27を得た。ただし、放射線増感スクリーン14、23〜27はカレンダーロールによる圧縮は行わず未圧縮のまま保護層を設けた。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
(2)放射線増感スクリーンの物性評価
a)圧縮率
圧縮前と圧縮後の蛍光層の厚みを測定し、
(1−圧縮後厚み/圧縮前厚み)×100を圧縮率とした。
【0065】
b)密度比率の測定
密度比率は蛍光層密度と蛍光体密度との比であり、
(蛍光層密度/蛍光体密度)×100で示す。
【0066】
蛍光層密度の測定は以下のように行う。
【0067】
単位面積(1cm2)の放射線増感スクリーンを切り出し、保護層を除去、その時の質量をx(g)、膜厚をa(cm)とする。有機溶剤若しくは研磨テープで蛍光層を除去し、その時の質量をy(g)、膜厚をb(cm)とするとき、
放射線増感スクリーン単位面積当たりの蛍光層質量は
x−y(g)、
蛍光層膜厚は
a−b(cm)
蛍光層密度は(x−y)/{1×(a−b)}=(x−y)/(a−b)である。
【0068】
(3)放射線増感スクリーンの画像の評価
a)鮮鋭度
得られた試料放射線増感スクリーンをX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用い、フンクテストチャートSMS−5853(コニカメディカル[株]販売)矩形波チャートを撮影し、自動現像機SRX−502、処理液SR−DF(共にコニカ[株]製)を用い現像温度35℃、定着温度33℃で45秒処理を行い、コントラスト法によりMTFを測定した。MTF値は空間周波数2.0サイクル/mmの値で示した。従ってMTF値が高いほど鮮鋭性が高いことを示す。
【0069】
b)粒状性
得られた試料放射線増感スクリーンをMTF測定と同様にX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用い、現像処理後の光学濃度が1.0±0.1になるような距離で80kVpでX線を照射し、現像処理は前記MTFと同様の処理を行った。
【0070】
粒状性は48μmのアパチュアー径で測定した「RMS」粒状性で評価した。「RMS」粒状性についてはT.H.James編:The Theory of the Photographic Process 619−620頁 (1977年、Macmillan社)に記載されている。なお、RMS値は値が小さいほど粒状性がよいことを示す。
【0071】
(4)放射線増感スクリーンの耐久性評価
フィルムオートチェンジャCFC−B1000(キャノン[株]製)に試料放射線増感スクリーンを張り付けX線撮影用フィルムSR−G(コニカ[株]製)を用いて1000回摺擦させた。摺擦後の放射線増感スクリーン表面の傷の発生度合いを目視で評価した。
【0072】
評価規準
な し:目視で放射線増感スクリーン上に傷が確認されない
少 な い:目視で放射線増感スクリーン上に数本程度認められるが、実用上問題なし
やや多い:目視で放射線増感スクリーン上に10本以上確認され、画像上でも傷として確認される
多 い:目視で放射線増感スクリーン上に20本以上確認され、使用できないレベル
これらの評価結果をまとめて表3に示した。
【0073】
【表3】
【0074】
表3から明らかなように、本発明の蛍光体を結合剤中に分散含有せしめた蛍光体層を有する放射線増感スクリーンにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)と−20℃以上30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種を一定条件を満たす比率で含有する放射線増感スクリーンNo.1〜14は、比率条件の異なるNo.15,16、23、24、ガラス転移点の−20℃より低いエラストマーを用いたNo.17、25、130℃より高いエラストマーを用いたNo.19、27、温度差の小さいNo.18、26一種のエラストマーを用いたNo.20,21,22に比して明らかに鮮鋭性、粒状性、耐久性、又は3つの総合特性に優れていることが分かる。
【0075】
実施例2
(1)放射線画像変換パネルの製造
上記、処方の蛍光体及び表1に示す結合剤a乃至kをボールミルにて6時間混合分散し、また塗布の前にイソシアネート1重量部を添加した。そしてエラストマー種とその混合比が表4に示されるような蛍光体塗料(18)〜(34)を得た。次にガラス板上に水平にセットした厚さ250μmの二酸化チタンを練り込んだポリエチレンテレフタレート支持体上に上記の蛍光体塗料をナイフコーターを用いて表4に示す乾燥膜厚になるように塗布、乾燥して蛍光層を得た。蛍光層は表4に示す温度にしたカレンダーロールを用いて線圧100kg/cmで圧縮を行った。圧縮後、片面にポリエステル系接着剤が塗布されている厚さ8μmの透明のポリエチレンテレフタレートシートを接着剤面を蛍光層面に接着して保護層を設け、放射線画像変換パネル28〜54を得た。ただし、放射線画像変換パネル41、50〜54はカレンダーロールによる圧縮は行わず未圧縮のまま保護層を設けた。
【0076】
【表4】
【0077】
(2)放射線画像変換パネルの物性評価
a)圧縮率
実施例1の放射線増感スクリーンの圧縮率と同様な方法で測定した。
【0078】
b)密度比率の測定
実施例1の放射線増感スクリーンの密度比率測定と同様の方法で測定した。
【0079】
(3)放射線画像変換パネルの画像評価
a)感度
放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を10mR(管球からパネルまでの距離;1.5m)照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径:100μmφ)で走査して輝尽励起し、輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を読み取り、検出器(光電子増倍管)で光電変換して信号を得、この信号値の相対値で表示して感度とした。
【0080】
b)鮮鋭度
放射線画像変換パネルにCTFチャートを貼り付けた後、管電圧80kVpのX線を10mR(管球からパネルまでの距離;1.5m)照射した後、半導体レーザ光(発振波長680nm、ビーム径:100μmφ)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光を読み取り、検出器(光電子増倍管)で光電変換して信号を得た。この信号値より、画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、画像の鮮鋭性を評価した。なお、変調伝達関数(MTF)は空間周波数が2.0サイクル/mmのときの値である。
【0081】
(4)放射線画像変換パネルの耐久性
フィルムオートチェンジャーCFC−B1000(キャノン[株]製)に試料放射線画像変換パネルを貼り付け、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて1000回摺擦させた。摺擦後の放射線画像変換パネル表面の傷の発生度合いを目視で評価した。
【0082】
なし :目視で放射線画像変換パネル上に傷が認められない
少ない :目視で放射線画像変換パネル上に数本程度認められるが実用上問題なし
やや多い:目視で放射線画像変換パネル上に10本程度認められる
多い :目視で放射線画像変換パネル上に20本以上認められ、使用できないレベル
これらの評価結果をまとめて表4に示した。
【0083】
【表5】
【0084】
表5から明らかなように、本発明の輝尽性蛍光体を結合剤中に分散含有せしめた蛍光体層を有する放射線画像変換パネルびおいて結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)と−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)の2種を一定条件を満たす比率で含有する放射線画像変換パネル、パネルNo.28〜41、比率条件の異なるパネルNo.42、43、50、51、ガラス転移点の20℃より低いエラストマーを用いたパネルNo.44、52、130℃より高いエラストマーを用いたパネルNo.46、54、温度差の小さいエラストマーを用いたNo.45、53、一種のエラストマーを用いたNo.47、48、49に比して明らかに感度、鮮鋭性、耐久性、又は総合特性に優れていることがわかる。
【0085】
【発明の効果】
本発明により画像性能と耐久性に優れた放射線増感スクリーン及び放射線画像変換パネルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(L)結合剤に高Tgエラストマー(A)を用いた蛍光体層の圧縮概念図である。
(M)結合剤に低Tgエラストマー(B)を用いた蛍光体層の圧縮概念図である。
(N)本発明の蛍光体層の圧縮概念図である。
【符号の説明】
1 蛍光体
2 高Tgエラストマー(A)
3 低Tgエラストマー(B)
Claims (6)
- 支持体上に蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線増感スクリーンにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とガラス転移点が−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)を含有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)とのガラス転移点が10℃以上の温度差を有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)の混合比が95:5乃至10:90の範囲にあることを特徴とする放射線増感スクリーン。
- 上記エラストマー(B)が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項1記載の放射線増感スクリーン。
- 蛍光層の膜密度が蛍光体密度の60%以上であることを特徴とする請求項1記載の放射線増感スクリーン。
- 支持体上に輝尽性蛍光体粒子を結合剤中に分散含有する蛍光層を有する放射線画像変換パネルにおいて、結合剤としてガラス転移点が30℃以上、かつ130℃以下の熱可塑性エラストマー(A)とガラス転移点が−20℃以上、かつ30℃未満の熱可塑性エラストマー(B)を含有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)とのガラス転移点が10℃以上の温度差を有し、かつ前記エラストマー(A)とエラストマー(B)の混合比が95:5乃至10:90の範囲にあることを特徴とする放射線画像変換パネル。
- 上記エラストマー(B)が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項4記載の放射線画像変換パネル。
- 蛍光層の膜密度が蛍光体密度の60%以上であることを特徴とする請求項4記載の放射線画像変換パネル。
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