JP3560079B2 - 硬化性組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は硬化性組成物及びその製造方法に関し、さらに詳細には、鉄、ステンレス、アルミニウム及びその他の金属、プラスチック、ガラス、木材、セメントおよびその他の基板、粉粒体、線状物等の製品に適用して耐汚染性、耐擦傷性、透明性、耐熱性、耐候性、密着性に優れた塗膜の形成等に有用な硬化性組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機・無機双方の特性を兼ね備えた塗膜、特にケイ素含有塗膜が様々な分野で注目されており、例えばシリル基含有共重合体によるケイ素成分含有コーティングの他、各種アルコキシシラン等の加水分解縮合可能基を有するケイ素化合物を樹脂成分に配合した組成物を塗布する方法、等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらいずれの方法によっても、耐汚染性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐薬品性に優れており且つ柔軟性をも兼ね備えた厚膜のコーティング膜を提供することはできなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を理論上100%加水分解縮合可能な量以上の水を加え、好ましくはこれらを熟成することで充分加水分解縮合反応を進行させたのち、シリコーン変性アクリル共重合体を添加して得られた組成物を塗布することで、得られた塗膜は高硬度、耐汚染性、耐溶剤性、耐薬品性を保ちながら数μm〜数十μmの膜厚を有することも可能であり、又非常に柔軟性に優れていることを見出し本発明に達した。
【0005】
すなわち本発明は、下記一般式〔A〕で示される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、これを理論上100%加水分解縮合可能な量以上の水、及び下記▲1▼ないし▲4▼の単量体を共重合させて得られるシリコーン変性アクリル共重合体を配合してなる硬化性組成物、
【0006】
【化3】
【0007】
▲1▼ビニル基含有アルコキシシラン
▲2▼ビニル基含有ポリシロキサン
▲3▼水酸基を有するメタクリル酸エステルおよび/又はアクリル酸エステル
▲4▼メタクリル酸エステルおよび/又はアクリル酸エステル
及び一般式〔A〕で示される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物並びにこれを理論上100%加水分解縮合可能な量以上の水を含む液を熟成後、▲1▼ないし▲4▼の単量体を共重合させて得られるシリコーン変性アクリル共重合体と配合することを特徴とする硬化性組成物の製造方法に存する。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明においては、下記一般式〔A〕で示される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を必須成分とする。
【0009】
【化4】
【0010】
一般式〔A〕の、Rは炭素数1〜8の炭化水素基であるが、これらのうち、炭素数1〜3のアルキル基である場合、すなわち一般式〔A〕の有機ケイ素化合物として具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及び/又はテトラプロポキシシランを用いた場合、特に高硬度のコーティング膜とすることができる。これらの有機ケイ素化合物の中でも特にテトラメトキシシランを用いた場合、極めて高硬度のコーティング膜を得ることができる。
【0011】
尚、テトラメトキシシランは、四塩化珪素とメタノールとの反応、金属珪素及びメタノールの反応等の方法により得られるもの、及び/又はこれらの部分加水分解縮合物を用いることができるが、原料を精製することにより容易に不純物を除去できること、及び塩酸が副生せず装置腐食の問題が生じないこと等から、特に不純物を除去する必要のある用途等については、珪素及びメタノールを反応させることにより得られるテトラメトキシシラン、及び/又はその部分加水分解縮合物を用いるのが望ましい。これを用いることにより、例えば塩素含有量が1〜2ppm以下の硬化性組成物をも容易に得ることができる。
【0012】
尚、テトラメトキシシラン以外の有機ケイ素化合物を得る際も、上述の方法に準じ、各種アルコールを用いた反応、又はテトラメトキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を各種アルコールを用いてエステル交換反応させる等の製法を採用できる。
【0013】
また、有機ケイ素化合物としてテトラメトキシシランを用いた場合、テトラメトキシシランのモノマー自体には、眼の角膜を侵し、蒸気でも障害をもたらす等毒性が強いことが示唆されている。また、活性が高いため、作業時に発熱し突沸する場合がある。更に、モノマーを多量に含むコーティング液は保存中にモノマーの反応により徐々に性能が変化する傾向にある。
【0014】
従って、有機ケイ素化合物としてテトラメトキシシランを用いる場合は、これを部分加水分解縮合して得られる部分加水分解縮合物(以下、「テトラメトキシシラン・オリゴマー」と称する)を用いることにより、これらに対処することができ、長期にわたって優れた塗膜特性を発現し、毒性も低減され、また作業性にも優れたコーティング液を供することができる。
【0015】
有機ケイ素化合物の部分加水分解縮合物を得るための加水分解縮合反応自体は、公知の方法によることができ、たとえば、有機ケイ素化合物としてテトラメトキシシランを用いる場合、テトラメトキシシランのモノマーに所定量の水を加えて酸触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら通常、室温程度〜100℃で反応させる。この反応の際、溶媒としてメタノール等のアルコールを用いてもよい。この反応によりメトキシシランは加水分解し、さらに縮合反応により液状のテトラメトキシシラン・オリゴマー(通常平均重合度2〜8程度、大部分は3〜7)が部分加水分解縮合物として得られる。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することができ、有機ケイ素化合物の全ての加水分解可能基すなわちアルコキシ基を加水分解縮合するのに必要な量の水、すなわちこれらの基のモル数の1/2のモル数の水に対する実際の添加水量の百分率で表す。本発明においてテトラメトキシシランの加水分解の程度は通常20〜80%程度、好適には30〜60%程度から選ばれる。20%以下ではモノマー残存率が高く生産性が低い。また80%以上ではテトラメトキシシラン・オリゴマーがゲル化しやすいためである。
【0016】
こうして得られた部分加水分解縮合物にはモノマーが通常2〜10%程度含有されている。このモノマーが含有されているとコーティング液の貯蔵安定性に欠け、保存中に増粘し、塗膜形成が困難となる場合があるので、モノマー含有量が1重量%以下、好ましくは0.3重量%以下になるように、モノマーを除去するとよい。このモノマー除去は、フラッシュ蒸留、真空蒸留、又はイナートガス吹き込み等により行うことができる。
テトラメトキシシラン以外の有機ケイ素化合物を用いて部分加水分解縮合物とする場合も、上述の方法に準じた操作により加水分解反応等を行うことができる。
【0017】
本発明においては、上記の有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物に、これを理論上100%加水分解縮合可能な量(以下、「加水分解100%当量」の水という)以上の水を配合する。すなわち、有機ケイ素化合物の全ての加水分解縮合可能な基すなわちアルコキシ基を加水分解縮合するのに必要な量以上の水である。有機ケイ素化合物の部分加水分解縮合物を用いる場合も同様であり、残存するアルコキシ基を加水分解縮合するのに必要な量以上の水を配合する。
【0018】
このように加水分解100%当量以上であればいずれの量でもよいが、実用的には加水分解100%当量の1〜4倍、更に好ましくは1〜2倍、特に好ましくは1〜1.5倍、中でも特に好ましくは1〜1.2倍がよい。水の量が加水分解100%当量の4倍を超えると、場合によっては硬化性組成物の保存安定性が低下することもある。又、加水分解100%当量未満では、硬度等の塗膜物性が充分でない。
【0019】
本発明で用いる水には特に制限はなく水道水で良いが、目的、用途によっては脱塩素水、超純水を用いるのが望ましいこともあるので、適宜選択すればよい。例えば、酸により特に腐食しやすい軟鋼、銅、アルミニウム等の基材、耐熱皮膜、耐湿皮膜、耐薬品皮膜等耐バリヤー皮膜等の電子基材料、電気絶縁皮膜等の用途に用いる場合は脱塩素水を用いたり、半導体等の用途のように不純物の混入が望ましくない場合は、超純水を用いることができる。
【0020】
本発明では、更に希釈剤を添加することができる。希釈剤の添加により、得られた硬化性組成物の保存安定性が向上する。
希釈剤としては、目的に応じて、水又は有機溶媒を用いることができる。水を用いる場合は、上述した添加水量を増量して希釈してもよいし、得られた硬化性組成物を任意の量の水で希釈してもよい。
【0021】
また、有機溶媒としては、アルコール類、あるいはグリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類等のうちの1種、または2種以上を混合し使用する。
アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nブタノール、イソブタノール、オクタノール、n−プロピルアルコール、アセチルアセトンアルコール等、またグリコール誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0022】
炭化水素類としてはベンゼン、ケロシン、トルエン、キシレン等が使用でき、エステル類として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が使用できる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、エチルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できる。
【0023】
これらの有機溶媒のうち、アルコール、特にC1 〜C4 のメタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノールが取扱いが容易であり液での保存安定性がよく、また得られる塗膜の特性が優れていることから好ましい。更にこれらのうちメタノール又はエタノールを用いることにより、極めて高硬度の塗膜を容易に得ることができる。
【0024】
また、希釈剤としてアルコール等の有機溶媒を用いる場合、溶媒の配合量は有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100重量部に対し50〜5000重量部、好ましくは100〜1000重量部がよい。50重量部以下では硬化性組成物の保存安定性が低下し、ゲル化しやすい。5000重量部を越えると塗膜厚さが極端に薄くなる。
【0025】
希釈剤として水を用いる場合は、配合量は、例えば有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100重量部に対し、先に述べた加水分解100%当量の水と合計して20〜400重量部が適当である。希釈剤として水を用いる場合には、メタノール、エタノール等の有機溶媒を用いた場合に比べ液のゲル化が起こりやすいので、pH3以下、好ましくはpH1〜2に保つことによりゲル化を防ぐ。従って、上記のpHに保つべく、用いる触媒の種類及び添加量を、希釈水量に応じ適宜選択する。
【0026】
本発明では更に必要に応じて硬化触媒を添加することができる。
触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、シュウ酸などの有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等のアルカリ触媒、有機金属、金属アルコキシド、例えばジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属キレート化合物、ホウ素ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物があるが、コーティング液の貯蔵安定性、及び得られるコーティング膜の硬度、可撓性等の性質が優れている点からは、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、フマル酸等の有機酸、金属キレート化合物、ホウ素化合物及び金属アルコキシドのうち1種又は2種以上を用いるのがよい。
【0027】
尚、望ましい触媒の種類は用いる希釈剤、及びコーティングの施される基材の種類、及び用途により適宜選択することができる。
例えば、触媒として塩酸、硝酸等の強酸を用いた場合、液で保存性がよく、また次に述べる熟成に要する時間が短縮できる上得られるコーティング膜の硬度は優れたものとなるが、特に腐食しやすい基材に対しては、避けた方がよいこともある。これに対し例えばマレイン酸は腐食等の畏れが少なく、熟成時間が比較的短時間ですみ、得られる塗膜の硬度、液での貯蔵安定性等の特性が特に優れており望ましい。
【0028】
また、希釈剤としてメタノール又はエタノールを用いた場合は、上述した酸触媒の他、例えばアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)及びジルコニウムビス(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)等の金属アセチルアセトネート化合物等を用いた場合でも、液での保存安定性が損われることもなく、充分な硬度を有する塗膜を得ることができる。
【0029】
これら触媒成分の添加量は、触媒としての機能を発揮し得る量であれば特に制限されるものではないが、通常、有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100重量部に対し、0.1〜10重量部程度の範囲から選択され、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0030】
これらの成分の配合方法は、特に制限されず、例えば触媒成分を予め水に溶解させたものを用いたり、攪拌しながら配合する等の手段により一層均一な配合物とすることもできる。尚、水その他溶媒により分解されやすい触媒を用いる場合は、これを有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と配合しておき、水その他溶媒と、使用に際して配合することが好ましい。また、更には触媒成分を使用に際してその他の成分に添加することもできる。
【0031】
本発明においては、好ましい形態としてこれらの成分を配合して得られる液(以下「配合液」という)を熟成させる。
かかる熟成工程を経ることにより、有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物の加水分解、縮合による部分架橋反応が充分に進み、後述する微小粒子が形成されるため、得られるコーティング膜の特性が優れたものとなることが考えられる。
【0032】
配合液の熟成は、液を放置すればよいが、攪拌してもよい。放置する時間は、上述の部分架橋反応が所望の膜特性を得るのに充分な程度進行するのに充分な時間であり、用いる希釈剤の種類及び触媒の種類にもよる。例えば希釈剤としてメタノール及び/又はエタノールを用いた場合は、塩酸では室温で約1時間以上、マレイン酸では数時間以上、好ましくは8時間〜2日間程度で充分である。
【0033】
又、希釈剤として水を用いた場合は、pH3以下、好ましくはpH1〜2とし、1〜180分、通常5〜20分程度攪拌しながら加水分解することによって、透明で均一な液状物を得ることができる。こうして透明な液を得た後、更に1〜2時間放置し、熟成するのが望ましい。
【0034】
熟成に要する時間はまた周囲の温度にも影響を受け、極寒地では20℃付近まで加熱する等の手段を採った方がよいこともある。一般に高温では熟成が速く進むが100℃以上にも加熱するとゲル化が起こるので、せいぜい50〜60℃までの加熱が適切である。
【0035】
熟成を充分に行なうことにより、得られる膜の白化や、剥離を防止することができる。一般に、加水分解による発熱が終わった後放冷し室温に戻り、部分架橋反応が終了する程度の時間放置すれば、熟成は充分である。このように熟成を経た本発明の配合液(以下、「熟成物」という)中には、慣性半径10Å以下の微小粒子(以下、「反応性超微粒シリカ」という)を形成することができ、例えば小角X線散乱等の手段により容易に確認することができる。すなわち、微小粒子の存在により、入射X線の回折強度分布が、入射線方向に中心散乱と呼ばれる散漫な散乱、すなわち小角X線散乱を示す。散乱強度Iは、次のGuinierの式により与えられる。
【0036】
I=C exp(−H2 Rg2 /3)(I:散乱強度、H:散乱ベクトル(=2πsin2θ/λ)、Rg:微小粒子の慣性半径、C:Const、λ:入射X線波長、2θ:ひろがり角)
上記のGuinierの式の両辺の常用対数を採ると、
logI=logC−(H2 Rg2 /3)となり、従って、微小粒子が存在する場合、散乱強度を測定し、散乱ベクトルに対する両対数グラフをプロットし、傾きを求めることにより、微小粒子の慣性半径を求めることができる。
【0037】
尚、慣性半径の測定に際しては、測定対象液の濃度等により多少測定誤差を生じることもある。本発明の反応性超微粒シリカは、正確を期すためシリカ換算濃度0.3%として測定した際にも慣性半径10Å以下である。特に加水分解100%当量以上の水を加えて加水分解を行う際に希釈剤としてエタノール等の有機溶媒の存在下で行った場合、得られる反応性超微粒シリカは上記測定条件によっても慣性半径6Å以下の、極めて微小なものとすることができる。
【0038】
また、本発明の反応性超微粒シリカは、GPCで測定した重量平均分子量が、標準ポリスチレン換算で1000〜3000程度のものである。また、これらのうち多くは重量平均分子量が1300〜2000程度である。加水分解100%当量の水を加えて加水分解縮合を行う際の条件、特に希釈剤の有無及び種類により得られる反応性超微粒シリカの分子量は多少異なり、例えば希釈剤としてアルコール等の有機溶媒の存在下に加水分解を行った場合、重量平均分子量は1300〜1800、好ましくは1600〜1800程度の範囲で安定に生成できる。
(尚、以上記載した分子量は、GPCによる測定値をもとに標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量である。)
【0039】
以上述べたように、本発明の反応性超微粒シリカは、その分子量に対し相対的に極めて小さな慣性半径を有していることから、超緻密な構造を採っていると推定される、特異な形態のシリカである。また、本発明の反応性超微粒シリカは、ヒドロキシ基、アルコキシ基等の反応性官能基を多数有する。例えば、テトラメトキシシランのオリゴマー又はモノマーを希釈剤としてエタノールの存在下に加水分解100%当量の水を加えて加水分解を行った場合、得られる反応性超微粒シリカは反応性官能基としてヒドロキシル基、メトキシ基、及びエトキシ基を有するものとなる。例えばヒドロキシル基のモル数がメトキシ基及びエトキシ基の合計モル数に対し0.6倍或いは0.7倍、更には0.8倍以上、またエトキシ基のモル数がメトキシ基の1.5倍、更には2倍以上である反応性超微粒シリカとすることも容易にできるのである。このように多種多量の反応性官能基を有する本発明の反応性超微粒シリカは反応性に富み、これを含有する本発明の熟成物は、以下に説明するシリコーン変性アクリル共重合体を配合して得られる硬化性組成物は、成膜に際しては成分間の架橋反応性が優れており、例えば常温でも硬化可能であり、屋外での成膜も可能である。
【0040】
熟成物に、さらに水その他各種溶媒または分散媒を加えることができる。特に、配合液を得る際希釈剤として水を用いpH3以下としている場合は、使用上の便宜の為にこれらを加えpH3〜5程度の弱酸とするのが望ましい。pH3以下の強酸のままでは素材の腐食及び安全上使用に不便であり、また中性〜アルカリ性とした場合は、ゲル化しやすく、液の保存安定性に問題が生ずることがあるからである。希釈剤として水を加え、熟成物に更に水を加える場合は、水の配合量は全部で通常有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100重量部に対して200〜100,000重量部、好ましくは350〜35,000重量部である。200重量部以下では得られた硬化性組成物の保存安定性が低下し、また得られる塗膜が厚膜になりクラックが発生しやすいという傾向にある。また、100,000重量部以上では、得られた塗膜が極端に薄くなる。尚、希釈剤としてアルコール等有機溶媒を用いた場合は、水を希釈剤として用いた場合に比べ微小粒子周囲のOH濃度が低いため保存安定性が一層優れているので、熟成物にそのまま以下に述べるシリコーン変性アクリル共重合体を添加することができる。
【0041】
本発明においては、上述した配合液に、特定シリコーン変性アクリル共重合体を添加する。
このシリコーン変性アクリル共重合体は、下記▲1▼ないし▲4▼の単量体を共重合させることによって製造することができる。
▲1▼ビニル基含有アルコキシシラン
▲2▼ビニル基含有ポリシロキサン
▲3▼水酸基を有するメタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステル
▲4▼メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステル
【0042】
なかでも最善のコーティング物性を得るためには前記▲1▼〜▲4▼の化合物の共重合体製造時の使用割合はビニル基含有アルコキシシラン0.5〜20重量%、ビニル基含有ポリシロキサン0.1〜20重量%、水酸基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル10〜30重量%、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステル40〜80重量%であることが好ましい。▲1▼〜▲3▼の化合物の使用量のいずれか一以上が上記範囲外であると得られたコーティングの特性がやや低下し、▲4▼の化合物の使用量が上記範囲より多い場合も同様であり、上記範囲より少ない場合は場合によっては▲4▼の化合物の使用による効果が充分発揮されないことがある。
【0043】
▲1▼のビニル基含有アルコキシシランとしては、一般式
【0044】
【化5】
【0045】
(式中、R3 は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる1価の基、R2 は重合性二重結合を有する有機残基、Xは加水分解性基、aは1〜3の整数を示す)で表されるシラン化合物である。R2 の具体的な基としては、
【0046】
【化6】
【0047】
などがあげられる。またXの具体的な基としては、
【0048】
【化7】
【0049】
などがあげられる。▲1▼のビニル基含有アルコキシシランの具体例としては、例えばメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどがあげられる。
▲2▼のビニル基含有ポリシロキサンとしては、一般式
【0050】
【化8】
【0051】
で示される片末端ビニル基含有ポリシロキサン、または
【0052】
【化9】
【0053】
で示される両末端ビニル基含有ポリシロキサンである(R2は前記アルコキシシランのR2と同様。mはジメチルシロキシ基の重合の程度を表わす数であり、lは1〜3の数である。)
(2)のビニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、両末端もしくは片末端ビニルジメチルポリシロキサン、及び両末端もしくは片末端メタクリロキシプロピルジメチルポリシロキサンが挙げられる。これらのポリシロキサンの粘度範囲は5〜1000cP程度が好ましい。分子量としては200〜100,000が好ましい。
【0054】
▲3▼の水酸基を含有するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸グリセロール、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸グリセロールなどがあげられる。
【0055】
▲4▼のメタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルのエステル基の炭素数は1〜12が好ましくこれらの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジルがあげられる。▲4▼の化合物は、2種類以上併用しても差し支えない。
【0056】
▲1▼〜▲4▼の化合物(単量体)の共重合にあたっては好ましくは▲5▼炭素数3以上の有機酸を重合用混合物(注.▲1▼〜▲5▼の化合物の使用量合計)の0.1〜5重量%使用する。また、重合触媒として全単量体合計量に対して0.1〜3重量%好ましくは0.2〜2重量%のラジカル開始剤例えば過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルを使用する。重合は、バルク重合、溶液重合の何れでも実施できるが、溶液重合が塗装のための配合工程に最も好ましい。
【0057】
溶液重合に使用する有機溶媒は、重合体に対してある程度親和性があり(反応時、希釈時、粘度調整時)、硬化性組成物塗布時の乾燥性その他特性の良いものから選べばよい。かかる溶媒としてはアルコール類があげられ、その具体例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソアミルアルコール等があげることができる。その他、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類を単独もしくは組み合わせて併用してもよい。
【0058】
シリコーン変性アクリル共重合体の重合条件(温度、時間)は、特に限定しないが通常60〜150℃、2〜10時間で終了する。
重合中の単量体の供給方法は、重合器の除熱形式または溶媒もしくは分散媒の存否によっても異なるが、各単量体を個別にまたは、混合して逐次重合器に供給すればよい。
【0059】
シリコーン変性アクリル共重合体の重合度は、単量体量に対する重合触媒の種類、使用量、もしくは連鎖移動剤の添加によって調整可能であり、有機溶媒を使用した溶液重合においては、単量体合計量に対し、一定比率の溶剤を使用し、重合終了後、そのまま得られるコーティング液の塗工に適した粘度範囲になるように前述の重合度を調整する。
【0060】
このようにして得られたシリコーン変性アクリル共重合体を、前述の配合液に、添加する。
シリコーン変性アクリル共重合体の添加量は、有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100重量部に対し、5〜1900重量部、好ましくは9〜800重量部程度が適当である。
【0061】
5重量部以下では得られるコーティング膜にクラックが発生し易い。また1900重量部以上では得られるコーティング膜の硬度が低い傾向がある。
また、上記のシリコーン変性アクリル共重合体は、単独でも、或いは目的に応じて2種以上を併用することも差し支えない。併用に際しては、2種以上を予め配合しても、各々を、熟成を経た配合液に添加してもよい。
【0062】
この、シリコーン変性アクリル共重合体の、配合液への添加に際しては、必要に応じて、溶媒、分散媒、硬化触媒、その他の添加剤を併せて、又は追って、添加することができる。
例えば後述する成膜に際し、特にスプレー法、ディップ法による場合、塗工条件、膜厚等の目的膜物性に応じた粘度、不揮発成分含有量を有する硬化性組成物を調製するため、これら溶媒又は分散媒の添加を行うことができる。
【0063】
溶媒としては配合液とシリコーン変性アクリル共重合体の双方に相溶性を持つものが好適であり、例えばアルコール類、あるいはグリコール誘導体、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類を1種、または2種以上混合して使用できる。
【0064】
アルコール類としては具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等が挙げられ、グリコール誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0065】
炭化水素類としてはベンゼン、ケロシン、トルエン、キシレン等が使用でき、エステル類として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が使用できる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、エチルエーテル、ブチルエーテル、2−α−メトキシエタノール、2−α−エトキシエタノール、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類が使用できる。
【0066】
場合によっては、分散媒も使用することができる。用いる分散媒としては、たとえば、水−界面活性剤系が好適であり、界面活性剤としてはアニオン、カチオン又はノニオン性のものが一般的である。アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等、カチオン性のものとしては、1〜3級アミンの有機もしくは無機酸の塩、四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩等、さらにはノニオン性のものとしては、ソルビタンジアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルのエチレングリコール縮合物、脂肪族アルコールポリエチレングリコール縮合物、アルキルフェノールポリエチレングリコール縮合物、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコール縮合物等、が挙げられる。
【0067】
これらの界面活性剤は、上記配合液に対して0.1〜5%程度使用するのが一般的であり、分散(乳化)に際しては、適当量の水を用いて、ホモミキサー、コロイドミル、超音波等、公知の方法によることができる。
【0068】
これら溶媒、分散媒のうち、通常は溶媒を用いるのが、得られる塗膜の物性や、硬化性組成物の安定性が優れているので望ましい。また溶媒の種類についても目的とする塗膜の特性、塗工条件等に適したものを選択すればよいが、一般には、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類や、メチルエチルケトン等のケトン類を用いた場合、塗膜硬化時の脱溶媒速度が適切であるため、得られる塗膜の表面光沢が特に優れたものとなる上、所望の膜厚を容易に得ることができる。
【0069】
その他、一般に、使用条件、所望の膜特性等に応じて適宜選択すればよい。
尚、使用条件、シリコーン変性アクリル共重合体の種類、使用量等によっては、官能基が多く、成膜後の硬化速度向上のために触媒を更に添加するのが望ましい場合もあるが、一般には、配合液の熟成の際に添加した触媒で充分である。
尚、これら溶媒及び触媒を使用する際の添加順序は特に限定されず、シリコーン変性アクリル共重合体と同時に熟成物に添加してもよく、あるいは配合し、混合、放置等してから添加してもよい。
【0070】
こうして得られた本発明の硬化性組成物をポリマー、金属、セラミック等の基材や線材に含浸法、スピンコーター法、スプレー法等で造膜したり、粉体と混合して造膜する。室温で脱溶剤処理として1〜10分放置後、20℃以上で加熱硬化する。加熱炉はガス炉、電気炉等汎用炉で良い。
【0071】
また、本発明の硬化性組成物によれば、充分な熟成により有機ケイ素化合物の加水分解縮合物が反応性超微粒シリカを形成することができるため、シリコーン変性アクリル共重合体との相溶性がよく、架橋反応の進行速度、進行程度が極めて優れている。このため特に加熱工程を要さず、常温で乾燥させ脱溶媒過程を進行させれば、液中各成分の架橋反応も進行し、充分な高硬度を有する塗膜を得ることができるので、屋外での使用にも好適である。
【0072】
尚、常温乾燥により膜硬化を行う場合は、加熱する場合よりもやや長時間を要するが、通常半日程度放置すれば充分である。
また、本発明の硬化性組成物は再塗布性が良いため、用途によっては、乾燥後、さらに再塗布し、乾燥してもよいが、本発明の硬化性組成物によれば、一回の塗布で10μm以上の膜厚を得ることができる。
【0073】
塗布自体は常法によることができ、膜厚も適宜選定することができる。
膜厚の選定は、常法によることができ、例えば液中非揮発成分濃度、液の粘度、ディップ法における引上げ速度、スプレー法における噴射時間等を調整したり、再塗布を行ったりすることにより選定できる。更にはシリコーン変性アクリル共重合体の種類、添加量の調整等によっても、得られる膜厚は適宜変化させることができる。
【0074】
本発明の硬化性組成物は液でのポットライフが2週間以上、増粘もなく造膜可能で且つ、造膜後の塗膜硬度も高く、可撓性もある上、撥水性、耐汚染性に極めて優れているという特長を有する。
【0075】
【実施例】
以下、実施例により、更に本発明を詳細に説明する。なお部及び%は特にことわりのない限り重量部及び重量%を示す。
尚、接触角の測定には、協和科学株式会社製“協和接触角計CA−A型”を用いた。
【0076】
実施例1
(オリゴマーの合成)
攪拌機と還流用コンデンサー及び温度計を付けた500mlの四つ口丸底フラスコに、テトラメトキシシラン234gとメタノール74gを加えて混合した後、0.05%塩酸22.2gを加え、内温度65℃、2時間加水分解反応を行った。
【0077】
次いでコンデンサーを留出管に取り換え、内温度が130℃になるまで昇温し、メタノールを留出させた。このようにして部分加水分解縮合物を得た(部分加水分解率40%)。重合度2〜8のオリゴマーが確認され、重量平均分子量は550であった。テトラメトキシシラン・オリゴマー中のモノマー量は5%であった。引き続き130℃に加熱したフラスコにテトラメトキシシラン・オリゴマーを入れ、気化したモノマーを不活性ガスと共に系外に排出しながら、150℃まで昇温し、3時間保持した。こうして得られたモノマー除去後のテトラメトキシシラン・オリゴマー中のモノマー量は0.2%であった。
【0078】
(シリコーン変性アクリル共重合体の合成)
メタクリル酸メチル42.5重量部(以下、部で示す)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル18.0部、メタクリル酸n−ブチル27.5部、アクリル酸n−ブチル5.0部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5.0部、片末端メタクリロキシプロピルジメチルポリシロキサン(Mw=5000)1.0部、メタクリル酸1.0部及びアゾビスイソブチロニトリル1.0部を混合して重合用単量体混合液を調製した。この混合液を80℃に保持したイソプロピルアルコール100.0部に滴下して5時間反応させ、更にアゾビスイソブチロニトリル0.5部を添加して80℃で4時間反応させ、最終的に分子量約70,000のシリコーン変性アクリル樹脂溶液を得た。(註 樹脂分濃度50重量%)この溶液に、イソプロピルアルコールと酢酸エチルの混合液(重量比で3/1)を加え固形分濃度20%になるように調製した。
【0079】
(硬化性組成物の調製)
(オリゴマーの合成)で得られたテトラメトキシシラン・オリゴマー30.8gにエタノール62.4gを添加し、次いでアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)0.3g及び脱塩素水6.57gを添加した。水の添加量はテトラメトキシシラン・オリゴマーを理論上完全に加水分解縮合可能な量に対し114%である。室温で1日放置し熟成した。次いで(シリコーン変性アクリル共重合体の合成)で得られた共重合体を20g添加し、室温で1日放置し、コーティング液を得た。
【0080】
(コーティング膜の作成)
アルミニウム基材(JIS1100、厚さ0.1mm)を得られたコーティング液に含浸し、引き上げ速度3mm/分で引き上げた。次いで電気炉で150℃、2時間加熱硬化した。得られたコーティング膜厚は1μm、鉛筆硬度9H以上、直径10φmmのSUS304棒で180℃曲げ加工してもクラック発生はなかった。水との接触角は96°と高く耐汚染性に優れている。
【0081】
(微小粒子の確認)
(オリゴマーの合成)で得られたテトラメトキシシラン・オリゴマー34.99gにエタノール49.31gを添加し、次いでマレイン酸0.38g及び脱塩素水8.32gを添加した。水の添加量はテトラメトキシシラン・オリゴマーを理論上完全に加水分解縮合可能な量に対し127%である。室温で2日放置し熟成して得られた液(組成物A、SiO2 換算濃度16重量%、8.1vol%)、及びこれをエタノールで約4倍に希釈した液(組成物B、SiO2 換算濃度4.3重量%、2vol%)について、以下の条件で、小角X線散乱による解析を行った。
【0082】
測定装置:アントンパール社製 クラツキコンパクトカメラ
X線源:50kV,200mA,Cu−Kα線をNi−filterで単色化。
光学系条件:サンプル−受光スリット間距離=20cm 内真空path=19cm
エントランス・スリット=80μm、受光スリット=200μm、beam
length=16mm
試料セル:石英キャピラリー(直径約1mm、肉厚10μm)
その他条件:室温。step scan法 操作範囲 2θ=0.086〜8.1deg 90sec/point
データ補正:バックグラウンド補正は石英キャピラリーに水を充填した時の散乱を用いて補正した。X線吸収補正も行った。
解析ソフト:スリット補正及び逆フーリエ変換は解析ソフトITP−81(O.Glatter;J.Appl.Cryst.,10.415−421(1977)による。)を使用した。
【0083】
図−1及び図−2に、組成物A及び組成物Bの、受光スリットにおける散乱X線の移動距離に対する、散乱強度の測定データ(バックグラウンド補正、吸収補正済)を示す。
図−3及び図−4に、組成物A及び組成物Bのスリット補正後のポイントビームデータを示す。
【0084】
これら図−3及び図−4からGuinierの式I=C exp(−H2 Rg2 /3)(I:散乱強度、H:散乱ベクトル(=2πsin2θ/λ)、Rg:慣性半径、C:Const、λ:Cu−Kα線波長、2θ:ひろがり角)
に従って慣性半径の最大値を求めると、図−5及び図−6に示した様に、組成物Aについては7.0Å(球形と仮定すると実半径R=(5/3)1/2 Rgより、半径9.0Å)、組成物Bについては6.0Å(球形と仮定すると半径7.7Å)であった。また、図−3及び図−4を逆フーリエ変換し、半径(球形と仮定)の分布を求めた結果を図−7及び図−8に示す。半径の最大値は、各々約6Å及び7Åであった。
【0085】
なお、上記(オリゴマーの合成)で得られたテトラメトキシシラン・オリゴマーについて、同様の条件下に小角X線散乱による解析を行った。図−9に散乱強度の測定データを示すが、これにより明らかなように、微小粒子等の構造は認められなかった。
【0086】
(分子量の測定)
組成物Aを、以下の条件下、分子量の測定を行った。
脱気装置 :Shodex DEGAS(昭和電工製)
ポンプ :Shimadzu LC6A(島津製作所製)
恒温器 :西尾工業製
カラム :Tosoh TSK−GEL for GPC
G−4000H、G−2000H、G−1000H(東洋ソーダ製)
検出器 :Shodex RI SE−51(屈折率検出器)(昭和電工製)
データ採取器:Shimadzu C−R3A(島津製作所製)
データ処理 :パソコン(PC−9801系)
カラム温度 :40℃
インジェクション温度:室温
ポンプ温度 :室温
溶媒 :テトラヒドロフラン、1.0ml/分
分子量算出方法 :標準ポリスチレン換算
結果を以下に示す。
【0087】
【表1】
この組成物Aの塩素濃度を測定したところ、1.5ppm以下であった。
【0088】
(反応性官能基の量の測定)
また、前述の微小粒子の確認に際し得られた組成物Aを、密閉し13日間室温で放置した後、液中のメタノール及びエタノールをガスクロマトグラフィーにより、また液中の水分をカールフィッシャー分析により測定することにより、熟成物中の反応性超微粒シリカの有する反応性官能基の量を算出した。分析条件は、以下の通りである:
【0089】
ガスクロマトグラフィー分析条件:
インジェクション温度:180℃
カラム温度 :180℃
TCD(検出器) :200℃
キャリアーガス :He 40ml/分
カレント電流 :100mA
充填剤 :Porapaq type Q
【0090】
その結果、液中のメタノール量は18.9%(0.591mol)、エタノール量は57.1%(1.241mol)、水の量は1.15%(0.0639mol)であることから消費された水の量は0.3041molとなった。したがって、熟成物中の反応性超微粒シリカの有する反応性官能基の量を計算すると、メトキシ基13.2mol%、エトキシ基40.3mol%、シラノール基46.0mol%となった。
【0091】
実施例2
シリコーン変性アクリル共重合体を80g添加した以外は実施例1同様に行った。得られたコーティング膜厚は2μm、鉛筆硬度4H、直径6φmmのSUS304棒で180℃曲げ加工してもクラック発生はなかった。水との接触角は98°と高く、耐汚染性に優れている。
【0092】
実施例3
テトラメトキシシラン40.5gにエタノール48.4gを添加し、次いでマレイン酸0.3g及び脱塩素水10.8gを添加した。水の添加量はテトラメトキシシランを理論上完全に加水分解縮合可能な量に対し113%である。室温で5日放置し熟成した。
【0093】
次いで実施例1(シリコーン変性アクリル共重合体の合成)で得られたシリコーン変性アクリル共重合体を149g添加し、室温で2日放置しコーティング液を得た。
アルミニウム基材(JIS1100,厚さ0.1mm)を得られたコーティング液に含浸し、引き上げ速度3mm/分で引き上げた。次いで電気炉で150℃、2時間加熱硬化した。得られたコーティング膜厚は3μm、鉛筆硬度3H、直径3φmmのSUS304棒で180℃曲げ加工してもクラック発生はなかった。水との接触角は98°と高く耐汚染性に優れている。
【0094】
実施例4
実施例1(オリゴマーの合成)で得られたテトラメトキシシラン・オリゴマー30.8gにエタノール62.4gを添加し、次いでマレイン酸0.3g及び脱塩素水6.57gを添加した。水の添加量はテトラメトキシシラン・オリゴマーを理論上完全に加水分解縮合する量に対して114%である。室温で3日放置し熟成した。
【0095】
次いで実施例1(シリコーン変性アクリル共重合体の合成)で得られたシリコーン変性アクリル共重合体を400g添加し、室温で1日放置しコーティング液を得た。
アルミニウム基材(JIS1100,厚さ0.1mm)に250μmアプリケーターを用いて塗布した。次いで電気炉で150℃、2時間加熱硬化した。得られたコーティング膜厚は28μm、鉛筆硬度2H、直径3φmmのSUS304棒で180℃曲げ加工してもクラック発生はなかった。水との接触角は99℃と高く耐汚染性に優れている。
【0096】
【発明の効果】
本発明の硬化性組成物により得られる塗膜は柔軟性に優れ、クラック発生がなく膜厚が厚い上、撥水性、耐汚染性、耐溶剤性にも優れたものであり、自動車塗装用、屋外建材用、ビニールハウス塗膜用等として特に好適である他、各種線材、粉粒体等との密着性にも優れており、様々な用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成物Aの散乱強度の測定データ
【図2】組成物Bの散乱強度の測定データ
【図3】組成物Aのスリット補正後のポイントビームデータ
【図4】組成物Bのスリット補正後のポイントビームデータ
【図5】組成物A中の微小粒子の慣性半径の分布
【図6】組成物B中の微小粒子の慣性半径の分布
【図7】組成物A中の微小粒子の球仮定半径の分布
【図8】組成物Bの微小粒子の球仮定半径の分布
【図9】実施例1(オリゴマーの合成)で得られたテトラメトキシシラン・オリゴマーの散乱強度の測定データ
Claims (7)
- 一般式[A]で表される有機ケイ素化合物がテトラメトキシシランである請求項1又は2記載の硬化性組成物。
- 加水分解縮合物のGPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1000〜3000である請求項1ないし3のいずれかに記載の硬化性組成物。
- シリコーン変性アクリル共重合体が下記(1)ないし(4)の単量体を共重合させて得られるものである請求項1ないし4のいずれかに記載の硬化性組成物。
(1)ビニル基含有アルコキシシラン 0.5〜20重量%
(2)ビニル基含有ポリシロキサン 0.1〜20重量%
(3)水酸基を有するメタクリル酸および/又はアクリル酸エステル 10〜30重量%
(4)メタクリル酸エステルおよび/又はアクリル酸エステル 40〜80重量% - 加水分解縮合物100重量部に対しシリコーン変性アクリル共重合体9〜 800重量部を配合してなる請求項1ないし5のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 硬化触媒を含有する請求項1ないし6のいずれかに記載の硬化性組成物。
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