JP3558578B2 - 固定部材およびそれを用いたエレクトロルミネッセンス素子ならびにその背面基板 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロルミネッセンス（以下、「ＥＬ」という）素子内の所定の気体成分を除去する除去剤を上記ＥＬ素子内に固定するための固定部材およびそれを用いたＥＬ素子ならびにその背面基板に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、モバイル機器等の各種機器のディスプレーや発光素子等には、発光体としてＥＬ素子（電界発光素子）が用いられている。しかしながら、ＥＬ素子には、高温条件下や一定期間を経ることにより、発光輝度，発光均一性等の発光性能が初期に比べて著しく劣化するという欠点がある。このような発光性能の劣化は、ＥＬ素子内部において、その構成部品や構成材料の表面等に吸着している水分や外部から浸入した水分，酸素や有機系のガスが原因となって、発光しない部分（ダークスポット）が発生するためであると知られている。
【０００３】
そこで、上記発光性能の劣化（ダークスポットの発生）の原因をなくすために、ＥＬ素子内に、化学的に水分を吸着するとともに吸湿しても固体状態を維持する化合物により形成されている乾燥手段を備えたＥＬ素子が提案されている（特開平９−１４８０６６号公報）。このものは、乾燥手段となる化合物を固形化してＥＬ素子内に固定したものである。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ＥＬ素子では、乾燥手段となる化合物を固形化するための工程が必要となるため、その固形化のための時間や設備を要する。したがって、製造コストが高くなるという問題がある。
【０００５】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ＥＬ素子の製造コストを抑えることができる固定部材およびそれを用いたＥＬ素子ならびにその背面基板の提供をその目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、所定の気体成分を除去する除去剤を固定する固定部材であって、周縁部以外の部分で上記除去剤を被覆する通気部付きのシート材と、このシート材の周縁部に設けられた接着部材とを備えており、上記接着部材が内部に基材層を有する積層体である固定部材を第１の要旨とし、その固定部材を用いたエレクトロルミネッセンス素子を第２の要旨とし、そのエレクトロルミネッセンス素子の背面基板を第３の要旨とする。
【０００７】
すなわち、本発明の固定部材は、周縁部以外の部分で上記除去剤を被覆する通気部付きのシート材と、このシート材の周縁部に設けられた接着部材とを備えている。このため、固定部材は、除去剤をエレクトロルミネッセンス素子の内面との間に被覆して挟持するようにして簡単に接着することができる。したがって、除去剤を固形化する必要がないため、エレクトロルミネッセンス素子の製造コストを抑えることができる。そして、接着部材が内部に基材層を有する積層体であるため、固定部材の弾性率を大きくすることができる。このため、固定部材の固定時の作業性が向上し、エレクトロルミネッセンス素子の製造において自動化に対応することができる。
【０００８】
また、本発明の固定部材において、通気部がポリテトラフルオロエチレンからなる多孔体である場合には、耐熱性に優れた材料であるため、エレクトロルミネッセンス素子が加熱環境に置かれても、安定して使用できる。
【０００９】
また、本発明の固定部材において、通気部が結晶構造を有する高分子からなる多孔体である場合には、その結晶構造を有する高分子が多孔体の孔径制御を容易とする材料であるため、エレクトロルミネッセンス素子内部における所定の気体成分を除去する性能を容易に制御することができる。
【００１０】
また、本発明の固定部材において、通気部が熱可塑性樹脂からなる多孔体である場合には、その熱可塑性樹脂が加工性に優れる材料であるため、通気部の加工を簡単にすることができる。
【００１１】
また、本発明の固定部材において、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、そのポリオレフィン系樹脂が多孔体の孔径制御を容易とする材料であるため、エレクトロルミネッセンス素子内部における所定の気体成分を除去する性能を容易に制御することができる。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、安価であるため、エレクトロルミネッセンス素子の製造コストをより抑えることができる。しかも、リサイクルが容易であるため、使用後はリサイクルすることにより、ごみを減少させることができる。
【００１２】
また、本発明の接着部材に用いる接着剤としては、硬化型接着剤であれば硬化している状態、ホットメルトであれば充分に冷却された状態、感圧性接着剤（粘着剤）であれば貼り合わせて充分に時間が経過した状態である、接着剤が安定した状態において、その接着剤が、トルエン，キシレン，シクロヘキサノン，エタノール，イソプロピルアルコール，ジエチルエーテル，ヘキサン，四塩化炭素，クロロホルム，ジメチルホルムアミド（ＤＭＦ），ｎ−メチル−２−ピロリドン（ＮＭＰ），およびテトラヒドロフランから選ばれる少なくともひとつの有機溶剤に対して、ゲル分率が７０重量％以上あればよい。その理由として、上記のすべての有機溶剤に対して、ゲル分率が７０重量％未満であるような接着剤では、有機溶剤との相溶性が極めてよく、エレクトロルミネッセンス素子内部に組み込んだ際に、接着剤から有機物ガスを放出しやすくなるためである。ここで言う、接着剤のゲル分率の測定方法としては、まず、接着剤試料（約０．１ｇ）の初期重量（Ｗ₁ ）を測定し、つぎに、対象となる有機溶剤（約１００ｍｌ）中に投入し、室温で１６８時間（７日間）浸漬する。このとき、ゲル化していない部分が有機溶剤に溶ける。そして、不溶物を乾燥したのち、残留物（ゲル化物）の重量（Ｗ₂ ）を測定し、下記の数式（１）に基づいてゲル分率を算出する。
【００１３】
【数１】
【００１４】
また、本発明の固定部材において、取扱い等の観点から、接着部材の厚みは、１〜５０００μｍ、好適には５〜１０００μｍの範囲である。
【００１５】
そして、本発明の固定部材を用いたエレクトロルミネッセンス素子は、固定部材が、上記シート材と接着部材とからなる簡単な構造であり、エレクトロルミネッセンス素子の内面に簡単に接着され得るため、エレクトロルミネッセンス素子の製造コストを抑えることができる。
【００１６】
また、本発明の固定部材を用いたエレクトロルミネッセンス素子の背面基板は、予め除去剤を背面基板に取り付けた状態とすることができるため、エレクトロルミネッセンス素子の製造作業を簡単にすることができる。
【００１７】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【００１８】
図１は、本発明の固定部材およびそれを用いたエレクトロルミネッセンス（ＥＬ）素子の一実施の形態を示している。この実施の形態におけるＥＬ素子は有機ＥＬ素子であり、皿状の表面基板１および背面基板２がそれぞれの皿状の凹所を対峙させて封止材３により封止されたものであって、その表面基板１の皿状の凹所上面には、陽極４，有機発光層５および陰極６の順で積層体７が形成され、上記背面基板２の皿状の凹所下面（内面）には、所定の気体成分を除去する除去剤８が固定部材９により固定されている。この固定部材９は、全体が通気性を有する通気部１０ａからなるシート材１０と、このシート材１０の片面の周縁部に形成された接着部材１１とからなっており、その接着部材１１は、内部に１層の基材層１２を有する３層（基材層１２およびこの基材層１２の両面の接着剤層１３）の積層体となっている。そして、上記固定部材９は、上記背面基板２の皿状の凹所下面に接着されてその凹所下面との間に上記除去剤８を被覆して挟持固定しており、上記除去剤８は、シート材１０の通気部１０ａを介して所定の気体成分を除去するようになっている。なお、ここで、表面基板１は積層体７が形成されており、背面基板２はその反対面に位置している。
【００１９】
より詳しく説明すると、上記シート材１０の通気部１０ａは、通気性（透湿性を含む）を有するものであれば特に限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）からなる多孔体，結晶構造を有する高分子からなる多孔体，熱可塑性樹脂からなる多孔体等であることが好ましい。なお、通気度が小さくてもよい場合には、これらからなる非多孔体を通気部１０ａとして用いることもできる。また、上記通気部１０ａは、上記多孔体の材料を２種以上混合して作製してもよいし、複数の層構造としたものでもよいし、２種以上の多孔体を複合したものでもよい。この通気部１０ａの厚みおよび気孔率は、限定されるものではないが、通常、前者は１〜３０００μｍ、後者は２〜９８％である。さらに、上記通気部１０ａの孔径は、上記除去剤８が透過しない大きさであれば限定されるものではないが、０．０１〜１００μｍの範囲であることが好ましい。特に、シート材１０がＥＬ素子の陰極６に接触する可能性がある場合には、シート材１０はクッション性を有することが好ましい。また、通気部１０ａがＰＴＦＥからなる多孔体である場合には、弾性率向上の観点から、その厚みが１０μｍ以上であることが好ましい。そして、上記結晶構造を有する高分子および熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂，ポリプロピレン樹脂，ポリ４−メチル−ペンテン−１，ポリ−１−プテン，ポリフッ化ビニリデン等のポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。また、これらのポリオレフィン系樹脂は、単体で用いてもよいし、共重合体として用いてもよいし、２種以上をブレンドして用いてもよい。
【００２０】
上記接着部材１１を構成する接着剤層１３の接着剤は、特に限定されるものではなく、感圧性接着剤（粘着剤），ホットメルト接着剤，紫外線や熱や湿度等によって硬化する接着剤，２液混合型の接着剤，常温硬化型接着剤等が用いられる。特に、感圧性接着剤としては、シリコーン系，アクリル系およびゴム系材料が好適である。
【００２１】
上記基材層１２は、熱可塑性プラスチックフィルム，熱硬化性プラスチックフィルム，金属箔，不織布等からなっている。
【００２２】
上記除去剤８としては、特に限定するものでなく、例えば、吸着剤，吸湿剤（乾燥剤），脱酸素剤（酸素吸収剤）等として汎用される化合物が用いられる。なかでも、上記除去剤８が、水蒸気，酸素，有機物蒸気からなる群から選ばれた少なくとも一つを除去する化合物が好ましい。そして、上記乾燥剤としては、例えば、物理的に水分を吸着する化合物や化学的に水分と反応する化合物のいずれも使用できる。このような化合物として、例えば、シリカゲル，モレキュラーシーブ（分子ふるい：ゼオライト等），活性アルミナ，アルカリ金属酸化物，アルカリ土類金属酸化物，硫酸塩，金属ハロゲン化物，過塩素酸塩，炭酸塩，五酸化リン，水酸化カルシウム，水酸化アルミニウムリチウム，活性金属，有機物等があげられる。また、上記脱酸素剤としては、例えば、活性炭，シリカゲル，モレキュラーシーブ，酸化マグネシウム，酸化鉄等があげられる。また、有機ガスの吸着剤としては、例えば、活性炭，シリカゲル，モレキュラーシーブがあげられる。さらに、上記除去剤８は、上記に例示した無機化合物を複数混合して用いてもよい。なお、これらは、合成樹脂等をバインダーとして加熱混合し、固形化して用いることもできる。
【００２３】
本発明の固定部材９は、例えば、つぎのようにして作製され、ＥＬ素子内に固定される。すなわち、図２および図３に示すように、長尺のセパレータ１４上に接着部材１１を所定の形状に順次形成したのち、その接着部材１１上に上記シート材１０を接着することにより、上記セパレータ１４上に複数の固定部材９を作製する。そののち、自動装着機により、上記セパレータ１４上の固定部材９をピックアップし、予め上記背面基板２（図１参照）の皿状の凹所に載置された除去剤８（図１参照）を被覆するように接着することによりＥＬ素子に固定される。また、図４に示すように、予め背面基板２上に除去剤８を取り付けた状態とすると、ＥＬ素子の製造作業が簡単になり、より好ましい。
【００２４】
このように、上記実施の形態によれば、通気性を有する通気部１０ａを備えたシート材１０と、このシート材１０の周縁部に形成された接着部材１１とからなる固定部材９が、ＥＬ素子の背面基板２の内面に接着され、背面基板２とその固定部材９との間に除去剤８を被覆して挟持することができる。
【００２５】
また、固定部材９は、上記シート材１０と接着部材１１とからなる簡単な構造であるため、固定部材９の作製を簡単に行なうことができる。したがって、固定部材９の製造コストを抑えることができる。しかも、除去剤８の固定が固定部材９の接着という簡単な作業により行なわれるため、ＥＬ素子の製造コストを抑えることができる。
【００２６】
さらに、固定部材９が背面基板２との間に除去剤８を被覆して挟持しているため、除去剤８の飛散が防止される。その結果、除去剤８によるＥＬ素子への悪影響を抑えることができる。
【００２７】
そして、接着部材１１には、内部に基材層１２を有しているため、接着部材１１の弾性率を大きくすることができる。したがって、セパレータ１４から固定部材９を変形させることなく簡単にピックアップすることができるようになるため、そのピックアップやそれに続く背面基板２への接着を自動装着機を用いて行なうことができる。このように、上記固定部材９を用いることにより、ＥＬ素子の製造において自動化に対応することができるため、ＥＬ素子の製造を短時間に行なうことができ、ＥＬ素子の製造コストを抑えることができる。
【００２８】
特に、通気部１０ａが上記ＰＴＦＥからなる多孔体である場合には、耐熱性に優れた材料であるため、ＥＬ素子が加熱環境に置かれても、安定して使用できる。
【００２９】
また、通気部１０ａが上記結晶構造を有する高分子からなる多孔体である場合には、その結晶構造を有する高分子が多孔体の孔径制御を容易とする材料であるため、ＥＬ素子内部における所定の気体成分を除去する性能を容易に制御することができる。
【００３０】
また、通気部１０ａが上記熱可塑性樹脂からなる多孔体である場合には、その熱可塑性樹脂が加工性に優れる材料であるため、通気部１０ａの加工を簡単にすることができる。特に、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、そのポリオレフィン系樹脂が多孔体の孔径制御を容易とする材料であるため、ＥＬ素子内部における所定の気体成分を除去する性能を容易に制御することができる。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、安価であるため、ＥＬ素子の製造コストをより抑えることができる。しかも、リサイクルが容易であるため、使用後はリサイクルすることにより、ごみを減少させることもできる。
【００３１】
なお、上記実施の形態では、表面基板１の凹所上面に、陽極４，有機発光層５および陰極６の順で積層体７を形成したが、これらの層の他に電子輸送層や正孔輸送層や正孔注入層等が形成されていてもよく、これらの層が複数形成されてもよい。
【００３２】
また、ＥＬ素子内の空間は、密封気体が封入されてもよいし、真空状態にしてもよい。
【００３３】
また、上記熱可塑性樹脂からなる多孔体の製法は、特に限定されるものではなく、例えば押出しフィルムを延伸して作製する方法，良溶媒中に溶かした樹脂を貧溶媒中に析出させて作製する方法，粒状樹脂を加温状態で加圧成形して得られた多孔体成形物を切削してフィルムを作製する方法等があげられる。
【００３４】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【００３５】
【実施例１】
実施例１品は、図１中に示す固定部材９である。そこで、まず、熱溶融押出したポリプロピレンを２５℃において縦軸に１．５倍に延伸したのち、１３０℃において縦軸に延伸してから、寸法規制して１３０℃にて２分間加熱して、ヒートセットし、厚み３５μｍのポリプロピレン多孔体（シート材１０）を作製した。ついで、厚みが２５μｍのポリエステルフィルム（東レ社製、ルミラー）を基材として、その両面に紫外線硬化タイプでアクリル系の感圧性接着剤を表裏とも各厚み４０μｍ設け、接着部材１１を得た。なお、上記感圧性接着剤は、以下のようにして作製した。すなわち、イソノニルアクリレート６０部，ブチルアクリレート２８部，アクリル酸１２部，光重合開始剤としての２・２−ジメトキシ−２−フェニルアセトフェノン（チバガイキ−コーポレーション社製の商品名イルガキュア６５１）０．１部を用いて、プレミックスを調製した。これを窒素雰囲気中で紫外線に暴露することにより、部分的に重合して粘度が約４５００センチポイズのコーティング可能なシロップ（感圧性接着剤）を得た。また、上記接着部材１１を以下のようにして作製した。すなわち、上記部分重合したシロップ１００部に、ラジカル連鎖禁止剤としてのテトラビスメチレン−３−（３’−5'−ジ−ｔ−ブチル−４’−ヒドロキシフェニル）プロピオネートメタン０．４部と、交叉結合剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート０．１部とを添加混合し、この組成物を上記基材の両面にコーティングし、窒素ガス雰囲気下で光強度５ｍｗ／ｃｍ² の高圧水銀ランプより９００ｍＪ／ｃｍ² の紫外線を照射して光重合させ、厚みが４０μｍの光重合物の層を有する接着部材１１を得た。この場合の感圧性接着剤のトルエン溶剤不溶分は９０％であった。このようにして得られたシート材１０および接着部材１１を用いて図１に示す固定部材９を作製し、除去剤８として活性アルミナを用い、図１に示すＥＬ素子を得た。
【００３６】
このようにして得られたＥＬ素子の発光層について、まず、ＥＬ素子作製直後に５０倍の拡大写真を撮影した。つぎに、上記ＥＬ素子を室温で５００時間保存したのち、発光層について５０倍の拡大写真を撮影した。そして、これらの拡大写真を比較観察した。その結果、ダークスポット（黒点）の成長は、面積比で１．１倍であった。また、ＥＬ素子内では、固定部材９の脱落はなかった。さらに、下記ピックアップ性は良好であった。
【００３７】
〔ピックアップ性〕
ピックアップ性は、セパレータ上に順次整列配置された固定部材９の剥離度合いであり、セパレータを１２０度回転させ、固定部材９が自然に剥離すればピックアップ性が良好、剥離しなければピックアップ性が悪いと判断した。
【００３８】
【実施例２】
基材として、上記実施例１における厚み２５μｍのポリエステルフィルムに代えて、厚みが２５μｍのステンレス箔を用いた。それ以外の部分は、上記実施例１と同様とした。そして、同様にして拡大写真をを撮影し、比較観察した。その結果、ダークスポットの成長は、面積比で１．１倍であった。また、ＥＬ素子内では、固定部材９の脱落はなかった。さらに、上記ピックアップ性は良好であった。
【００３９】
【比較例１】
上記実施例１において、固定部材９および除去剤８を用いないものとした。そして、同様にして拡大写真をを撮影し、比較観察した。その結果、ダークスポットの成長は、面積比で５倍であった。
【００４０】
【比較例２】
上記実施例１において、背面基板２に４角形のしきいを作り、そこに活性アルミナを載せ、上記実施例１と同様にしてＥＬ素子を作成した。そして、同様にして拡大写真をを撮影し、比較観察した。その結果、ダークスポットの成長は、面積比で１．３倍であった。また、除去剤８がＥＬ素子内に飛散して陰極にダメージを与えていた。
【００４１】
【発明の効果】
以上のように、本発明の固定部材によれば、周縁部以外の部分で上記除去剤を被覆する通気部付きのシート材と、このシート材の周縁部に設けられた接着部材とを備えている。このため、固定部材は、除去剤をＥＬ素子の内壁面との間に被覆して挟持するようにして簡単に接着することができる。したがって、ＥＬ素子の製造コストを抑えることができる。そして、接着部材が内部に基材層を有する積層体であるため、固定部材の弾性率を大きくすることができる。そのため、長尺のセパレータ上に複数の固定部材を作製し、その固定部材をセパレータから、変形させることなく簡単にピックアップすることができるようになり、ＥＬ素子製造の自動化に対応することができるようになる。その結果、ＥＬ素子の製造時間の短縮およびコストダウンを実現することができる。
【００４２】
また、本発明の固定部材において、通気部がポリテトラフルオロエチレンからなる多孔体である場合には、耐熱性に優れた材料であるため、ＥＬ素子が加熱環境に置かれても、安定して使用できる。また、通気部が結晶構造を有する高分子からなる多孔体である場合には、その結晶構造を有する高分子が多孔体の孔径制御を容易とする材料であるため、ＥＬ素子内部における所定の気体成分を除去する性能を容易に制御することができる。また、通気部が熱可塑性樹脂からなる多孔体である場合には、その熱可塑性樹脂が加工性に優れる材料であるため、通気部の加工を簡単にすることができる。そして、上記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、多孔体の孔径制御が容易となるうえ、ポリオレフィン系樹脂が安価であるため、ＥＬ素子の製造コストをより抑えることができる。しかも、リサイクルが容易であるため、使用後はリサイクルすることにより、ごみを減少させることもできる。
【００４３】
また、本発明の固定部材において、接着部材の厚みが１〜５０００μｍの範囲である場合には、固定部材が取扱いやすくなる。
【００４４】
そして、本発明の固定部材を用いたＥＬ素子は、固定部材が、上記シート材と接着部材とからなる簡単な構造であり、ＥＬ素子の内面に簡単に接着され得るため、安価である。
【００４５】
また、本発明の固定部材を用いたＥＬ素子の背面基板は、予め除去剤を背面基板に取り付けた状態とすることができるため、ＥＬ素子の製造作業を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の固定部材およびそれを用いたＥＬ素子の一実施の形態を示す説明図である。
【図２】上記固定部材の製法を示す説明図である。
【図３】上記製法を上から見た説明図である。
【図４】本発明の固定部材を用いたＥＬ素子の背面基板の一実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
８ 除去剤
９ 固定部材
１０ シート材
１０ａ 通気部
１１ 接着部材

Claims (8)

1. 所定の気体成分を除去する除去剤を固定する固定部材であって、周縁部以外の部分で上記除去剤を被覆する通気部付きのシート材と、このシート材の周縁部に設けられた接着部材とを備えており、上記接着部材が内部に基材層を有する積層体であることを特徴とする固定部材。
2. 通気部がポリテトラフルオロエチレンからなる多孔体である請求項１記載の固定部材。
3. 通気部が結晶構造を有する高分子からなる多孔体である請求項１記載の固定部材。
4. 通気部が熱可塑性樹脂からなる多孔体である請求項１記載の固定部材。
5. 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項４記載の固定部材。
6. 接着部材の厚みが１〜５０００μｍの範囲である請求項１〜５のいずれか一項に記載の固定部材。
7. 請求項１〜６のいずれか一項に記載の固定部材を用いたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
8. 請求項１〜６のいずれか一項に記載の固定部材を用いていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の背面基板。