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JP3555242B2 - インク噴射装置 - Google Patents

インク噴射装置 Download PDF

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JP3555242B2
JP3555242B2 JP12116995A JP12116995A JP3555242B2 JP 3555242 B2 JP3555242 B2 JP 3555242B2 JP 12116995 A JP12116995 A JP 12116995A JP 12116995 A JP12116995 A JP 12116995A JP 3555242 B2 JP3555242 B2 JP 3555242B2
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    • B41J2202/10Finger type piezoelectric elements

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、インク滴を噴射することで印字記録を行なうインク噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日、これまでのインパクト方式の記録装置にとってかわり、その市場を大きく拡大しつつあるノンインパクト方式の記録装置の中で、原理が最も単純で、かつ多階調化やカラー化が容易であるものとして、インクジェット方式の記録装置が挙げられる。中でも記録に使用するインク滴のみを噴射するドロップ・オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、ランニングコストの安さなどから急速に普及している。
【0003】
この種のインク噴射装置としては、特公昭53−12138号公報に開示されているカイザー型、特公昭61−59914号公報に開示されているサーマルジェット型、特開昭63−247051号公報、特公平6−6375号公報及び特開平2−150355号公報に開示されているせん断モード型等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらのうち、せん断モード型のインク噴射装置はインク室の少なくとも一つの壁を圧電セラミックスで構成し、その壁のせん断モードによる変形によりインク室の容積を変化させて、インク室内に圧力波を発生させ、インク滴を吐出するものである。
【0005】
特開平2−150355号公報等に記載されている従来のカンチレバータイプのインク噴射装置は、図8に示すように矢印4で示す方向に分極された圧電セラミックスプレート5に溝15を加工し、側壁11を形成して、側壁11の上半部のみに金属電極13を金属蒸着、スパッタ等で形成する。この圧電セラミックスプレート5にエポキシ系の接着剤等の接合層3によってカバープレート2を接着し、図9に示すようにインク室12を形成する。
【0006】
この場合、側壁11上の金属電極13が形成されている上半部20が電圧を印加されて変形する部分である。1つの側壁11の変形する様子を図10に示す。図10は接合層3がない場合の仮想的な図である。金属電極13に印加された電圧により側壁上半部20の内部に矢印14の方向を向いた電界が発生したとする。側壁11は矢印4の方向に分極されているため、圧電すべり効果により上半部20は同図のように上端よりせん断変形する。そして、上半部20の変形に伴って下半部21も変形させられる。しかし、現実にはこのような理想的な変形は生じない。
【0007】
実際の1つの側壁11の変形する様子を図11に示す。同様に、金属電極13に印加された電圧により側壁上半部20の内部に矢印14の方向を向いた電界が発生したとする。側壁11は矢印4の方向に分極されているため圧電すべり効果によりせん断変形する。このため、側壁上半部20において、その上端では矢印30の方向に、下端では矢印31の方向に力が発生する。そして、前記上端は接合層3でカバープレートに固定されており、前記下端は下半部21につながっている。
【0008】
接合層3は通常樹脂系の接着剤であり、弾性率が側壁11に比べて通常1桁程度小さい。そのため、矢印30の力を受けると変形してしまい、上半部20の前記上端を固定しておくことができない。また、下半部21は上半部20の変形によって強制的に変形させられる部位であるが、下半部21は弾性力により上半部20の変形を妨げる働きを有している。
【0009】
つまり、上半部20はその上端においては接合層3の変形のためにその位置を保持できず、その下端においては下半部21の弾性によって変形を阻まれる。結果、図10のように変形すべき側壁11は、上半部20がほぼ同じ変形をしているにもかかわらず、実際は図11のような変形をすることとなる。図11における側壁11の変形に伴うチャンネルの容積変化は図10の変形容積よりも明らかに少ない。従って、図11の場合は図10の側壁11に同じ電圧を印加したときに比べて、インク滴の噴射に十分な圧力がインク室内に発生しない。よって、吐出速度が速く、且つ体積の大きな理想的なインク滴を噴射させるためには、高い駆動電圧が必要になるという欠点があった。
【0010】
また、上記の従来例においては、チャンネルの容積変化を稼ぐために側壁11の高さを大きくすることも行なわれてきた。確かに、こうすれば側壁11の変位量を大きくしチャンネルの容積変化を大きくすることが出来るが、インク噴射装置全体が大きくなり好ましくない。又、各チャンネルの断面積も大きくなり、チャンネル壁面とノズルプレートとの段差がきつくなる。その為、チャンネル内にエアが混入した際には、このエアがこの段差に滞留し、排出することが困難となる。エアの混入はインク吐出に悪影響を及ぼし、印字品質の悪化につながる。
【0011】
特開平6−218927公報に記載されているインク噴射装置は上記従来例の欠点を改良したものである。上記公報では側壁の上面あるいは下面にシリコーン系接着剤等からなる弾性部材を取り付け、側壁が変形しやすいようにしている。しかし、接着剤の量や厚さを制御することは困難である。接着剤の量が側壁ごとに異なると、吐出されるインク滴の大きさや速度にばらつきが生じてしまい、美しい印字を得ることができない。また、接着剤を弾性部材として使用する手法では、その量にも自ずと限界があり、側壁の幅よりも高く接着剤を盛って固着することは現実的ではない。そのためにインク滴の吐出速度向上に対する効果は小さい。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するために成されたものであり、低電圧での駆動が可能であり、且つインクの吐出特性がよく、印字品質の高いコンパクトなインク噴射装置を提供することを第1の目的とする。また、構成が単純で生産性のよいインク噴射装置を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
これらの問題点を解決するために請求項1に係るインク噴射装置は、分極処理を施した圧電材料からなり複数の溝部及びその溝部を隔てる側壁を有するアクチュエータ板と、前記圧電材料よりも弾性率が小さい低弾性部材からなり且つ複数の溝部及び側壁を有するカバープレートとから構成され、前記アクチュエータ板の溝部とカバープレートの溝部とが対向して噴射チャンネルを形成するように、アクチュエータ板の側壁とカバープレートの側壁とが接合され、前記噴射チャンネルの内面に、前記圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させるための電極が設けられ、前記圧電材料に電圧を印加して前記圧電材料の側壁を変形させて前記噴射チャンネルからインク滴を吐出する。
【0014】
尚、前記低弾性材料は、前記圧電材料の弾性率の30%以下の弾性率を有してもよい。
【0015】
尚、前記カバープレートの上部には補強部材が積層されていてもよい。
【0016】
また請求項4に係るインク噴射装置は、インクを噴射するための噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの一部を構成し、且つその壁面の起立方向に分極された圧電材料と前記圧電材料の弾性率の30%以下の弾性率を有する低弾性材料とを前記起立方向に接合して構成された隔壁と、前記噴射チャンネル内の隔壁表面 に設けられ、前記圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させるための電極とを有し、前記圧電材料に電圧を印加して前記隔壁を変形させて前記噴射チャンネルよりインク滴を吐出する
【0017】
また請求項5に係るインク噴射装置は、インクを噴射するための噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの一部を構成し、且つその壁面の起立方向に分極された圧電材料と前記圧電材料よりも弾性率が小さい低弾性材料とを前記起立方向に接合して構成された隔壁と、前記噴射チャンネル内の圧電材料の隔壁の部分のみの表面に設けられ、その圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させるための電極とを有し、前記圧電材料に電圧を印加して前記隔壁を変形させて前記噴射チャンネルよりインク滴を吐出する
【0018】
【0019】
尚、前記噴射チャンネルの両側には、インクを噴射しない非噴射チャンネルが設けられていてもよい。
【0020】
【作用】
上記の構成を有する本発明の請求項1に係るインク噴射装置は、分極処理を施した圧電材料からなり複数の溝部及びその溝部を隔てる側壁を有するアクチュエータ板と、前記圧電材料よりも弾性率が小さい低弾性部材からなり且つ複数の溝部及び側壁を有するカバープレートとから構成されている。そして、それぞれの前記溝部が対応するように接合させることにより、容易に噴射チャンネルを形成できる。圧電材料の側壁とその圧電材料より弾性率の小さい低弾性材料の側壁とが接合されているため、側壁全体が圧電材料からなるインク噴射装置と比較すると、同じ駆動電圧を印加した場合の壁の変形量が大きくなり、噴射される液滴は速度が速く、体積も大きくなる。
【0021】
さらに、前記低弾性材料を、前記圧電材料の弾性率の30%以下の弾性率を有するものとすることで、圧電材料が変形しようとする力に抗うことなく、しなやかにその動きに追随する。よって、側壁は効率よく変形するようになり、低電圧でも大きな変位が得られるようになる。
【0022】
また、カバープレートの上部に補強部材を積層し、カバープレートの長さ方向の剛性を強化することで、カバープレート上部の変形を抑え、所定の噴射チャンネルが噴射駆動されたときには、圧電材料の変位にカバープレートの側壁部のみ追随して変形するようにし、安定した壁の変形量を確保できる。よって、噴射されるインク液滴の噴射精度を向上させ、高品質の印字を可能とする。また、インク噴射装置の耐久性を向上させ、長時間の連続駆動にも耐えられるようにしている。
【0023】
請求項4に係るインク噴射装置は、噴射チャンネルを構成する隔壁が、圧電材料と、その圧電材料の弾性率の30%以下の弾性率を有する低弾性材料とにより構成されているため、隔壁全体が圧電材料からなるインク噴射装置と比較すると、低弾性材料が圧電材料の変形する力に抗うことなく、しなやかにその動きに追随する。よって、低電圧でも大きな変位が得られるようになる。同じ駆動電圧を印加した場合の壁の変形量が大きくなり、噴射される液滴は速度が速く、体積も大きくなる
【0024】
請求項5に係るインク噴射装置は、噴射チャンネルを構成する隔壁が、圧電材料と、その圧電材料よりも弾性率の小さい低弾性材料とにより構成され、前記噴射チャンネル内の圧電材料の隔壁の部分のみの表面に電極が設けられ、その電極によって圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させているため、隔壁全体が圧電材料からなるインク噴射装置と比較すると、同じ駆動電圧を印加した場合の壁の変形量が大きくなり、噴射される液滴は速度が速く、体積も大きくなる
【0025】
【0026】
【0027】
また、前記噴射チャンネルの両側にインクを噴射しない非噴射チャンネルを設けることで、非噴射チャンネルにて噴射チャンネルが隔離され、直接噴射チャンネル同士が隣接しない。即ち、任意の隔壁の変位は所定の一つの噴射チャンネルの圧力変化を与えるのみであり、その近隣の噴射チャンネルへの相互干渉、所謂クロストークが低減される。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
【0029】
まず、本実施例のインク噴射装置の製法と構造を説明する。図1に示すように、矢印104の方向に分極処理を施したPZT系(チタン酸ジルコン酸鉛)の圧電セラミックスプレート105の片面に、複数の溝115及びその溝115を隔てる側壁111を形成する。側壁111の両側面には、金属蒸着やスパッタ、無電解メッキ等により駆動電圧印加用の金属電極113を形成する。一方、低弾性材料材料からなるカバープレート102は、周知の成形技術等により、予め図1に示すような複数の側壁108と溝109を有する形状に形成される。そして、このカバープレート102の側壁108と圧電セラミックスプレート105の側壁111とをエポキシ系接着剤等からなる接合層103を介して接合する。すると、図2に示すように、隔壁110と、前記隔壁110に隔てられ且つ紙面の横方向に配列された複数のインク室112とを備えるインク噴射装置101が形成される。尚、インク室112が本発明の噴射チャンネルに相当する。
【0030】
インク室112は長方形断面の紙面の垂直な方向に細長い形状であり、側壁111はインク室112のほぼ全長にわたって伸びている。また、図2の紙面に垂直な方向の端にはインク滴を吐出するためのノズル孔があいたノズルプレート(図示せず)が接着され、他端にはインクを供給するためのマニホールド(図示せず)が装着される。全てのインク室112内にはインクが充填される。
【0031】
カバープレート102の材料として用いられる低弾性材料は、耐インク性を呈し、且つ前記圧電セラミックスプレート105の弾性率よりも小さい弾性率を有するものが用いられる。側壁11の変形を阻害せず、隔壁全体が効率のよい変形を行なう為にも、好ましくは、圧電セラミックスプレート105の弾性率の30%以下の弾性率を有するものがよい。具体的な材料としては、加工性のよい樹脂材料が好適であり、特に、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックや、ポリアミド、ポリイミド等の特殊性エンジニアリングプラスチックと呼ばれるものがよく用いられる。その中でも、特に、ポリサルフォンは成形加工における加工性や取扱いに優れている。
【0032】
次に、図2および図3によって、インク噴射装置101の動作を説明する。インク噴射装置101において、与えられた印字データに従って、例えばインク室112bが選択されると、金属電極113d,113gに正の駆動電圧が印加され、金属電極113e,113f及びその他のインク室に対応する金属電極は接地される。これにより側壁111bには矢印114bの方向の駆動電界が、側壁111cには矢印114cの方向の駆動電界が発生する。このとき駆動電界方向114b及び114cと圧電セラミックスプレート105の分極方向104とが直交しているため、側壁111b及び111cは、圧電厚みすべり効果によってインク室112bの内部方向に急速に変形する。
【0033】
カバープレート側の側壁108bと108cは接合層103によって接合されているため、側壁111b、111cに追随してインク室112b内部に向かって変形する。側壁108bと108cの弾性率は側壁111bと111cの弾性率より十分に小さいので、側壁111b、111cの変形は側壁108b、108cによってほとんど妨げられることがない。これらの変形によりインク室112bの容積が減少してインク室112bのインク圧力が急速に増大し、圧力波が発生して、インク室112bに連通するノズル(図示しない)からインク液滴が噴射される。
【0034】
また、駆動電圧の印加を停止すると、側壁111b及び111cが変形前の位置(図2参照)に戻り、それに追随して側壁108b、108cも変形前の位置(図2参照)へ戻るため、インク室112b内のインク圧力が低下し、図示しないインク供給口から図示しないマニホールドを通してインク室112b内にインクが供給される。
【0035】
但し、上記の動作は基本動作に過ぎず、製品として具体化される場合には、まず駆動電圧を容積が増加する方向に印加し、先にインク室112bにインクを供給させた後に駆動電圧の印加を停止して、側壁111b及び111c、108b、108cを変形前の位置(図2参照)に戻してインク液滴を噴射させることもある。さらにインク液滴噴射後にインク室内の圧力波を減衰させるためにキャンセルパルスと呼ばれる駆動電圧パターンをしかるべき時間の後に付随させることもある。
【0036】
このような構成のインク噴射装置101では、隣接する2つのインク室112に連通する2つのノズルから同時にインク液滴を噴射することができないため、例えば、左端から奇数番目のインク室112a、112cに連通するノズルからインク液滴を噴射した後、偶数番目のインク室112b、112dに連通するノズルからインク液滴を噴射し、次に再び奇数番目からインク液滴を噴射するというように、インク室112及びノズルを2つのグループに分割してインク液滴の噴射を行う。さらにインク室112及びノズルを3つ以上のグループに分割してインク液滴の噴射を行うこともある。
【0037】
図2では側壁111は圧電セラミックスプレート105と一体になっており、下端はほぼ完全に固定されている。また側壁111の上部に接合層103を介してつながる側壁108は樹脂等の弾性率が小さい部材で構成されているので、側壁111の変形を妨げることがない。従って、図2で示すインク噴射装置101の隔壁110は、図11に示す従来のカンチレバータイプよりはもちろん、図10に示すカバープレート2と側壁11との間の接合層がない理想化されたカンチレバータイプよりもさらに大きな変形をすることができる。
【0038】
逆に、変形量を同じにするならば、インク噴射装置101の隔壁110はその高さを小さくすることが出来る。その結果、インク噴射装置101を小型にすることが出来る。又、隔壁110の高さを小さくすれば、インク室112とノズルプレートとの段差を小さくできる。そのため、チャンネル内にエアが混入した際には、エアが段差に滞留することなく、容易に排出することが可能となる。
【0039】
また、本実施例では、隣接するインク室112は、側壁111によって隔てられていたが、隣接するインク室の間に、インクが充填されないダミー室を設けてもよい。この場合、隣接するインク室の噴射による相互干渉が防止される。
【0040】
また、樹脂等のカバープレート102を保護するためにカバープレート102の上部に堅固な保護用のプレートを更に接合してもよい。
【0041】
図4は本発明の上記変形例を端的に示したものである。セラミック、金属、ガラス等からなるプレート202に、ポリイミド等よりなる樹脂シート220をエポキシ系等の接着剤221で接合し、複合カバープレート222を構成する。そして複合カバープレート222の樹脂シート220側の面に溝209を加工し、側壁208を形成する。この加工には例えばエキシマレーザが用いられるが、他の方法によってもよい。また、加工の順序は必ずしも上述の通りである必要はなく、樹脂シート220に溝209を加工した後にプレート202を接着してもよい。
【0042】
一方、矢印204の方向に分極処理を施した圧電セラミックスプレート205の片面に、複数の溝215及び該溝215を隔てる側壁211を形成する。側壁211の両側面には、金属蒸着やスパッタ等により駆動電圧印加用の金属電極213を形成する。この圧電セラミックスプレート205の側壁211と複合カバープレート222の側壁208とをエポキシ系接着剤等からなる接合層203を介して接合し、インク噴射装置201を構成する(図5参照)。インク噴射装置201は、隔壁210と、溝209及び溝215より構成され且つ紙面の横方向に互いに間隔を有する複数のインク室212とを備える。
【0043】
樹脂シート220の上部に積層されたプレート202は、カバープレート222の長さ方向の剛性を強化している。これにより、カバープレート222上部の変形を抑え、所定のインク室212が噴射駆動されたときには、圧電セラミックスプレート205の側壁211の変位に樹脂シート220の側壁208のみ追随して変形するようにし、安定した壁の変形量を確保できる。よって、噴射されるインク液滴の噴射精度を向上させ、高品質の印字を可能とする。また、プレート202は、インク噴射装置201の耐久性を向上させ、長時間の連続駆動にも耐えられるようにしている。
【0044】
図6は本発明の第3の実施例を示したものである。構成は図1に示す第1の実施例とほぼ同様であるが、金属電極413が異なる。図1の実施例及び従来例では、側壁の遮蔽効果を利用して金属蒸着やスパッタ等により金属電極113を形成していた。図6では無電界メッキにより、側壁の全面に金属膜を形成する。その後、周知のリフトオフの手法によって不要な部分の金属膜を除去し、金属電極413のみを残して、溝及び側壁408が形成されたカバープレート402を接合層403を介して接着する。あるいはリフトオフを用いる代わりに、あらかじめ電極を必要としない部分にレジストを塗布しておいて、無電界メッキを施し、レジストを除去する方法を用いることもできる。この無電界メッキによって金属電極を形成する方法は図1に示す第1の実施例のみでなく、第2の実施例等にも応用できることはいうまでもない。この方法であると、メッキ処理に係る装置や手間を簡略化でき、製造コストを低減することが可能である。
【0045】
次に、側壁の圧電セラミックスより構成される部分と樹脂等の弾性率が小さい部より構成される部分との比について述べる。図1に示した第1の実施例について樹脂部の高さを変えて構造解析を行った。側壁111の圧電セラミックスの高さは200μm、幅は70μmで一定とし、側壁108の高さのみを変化させ、そのときに側壁111と側壁108の接合部、すなわち接合層103がインク室方向にどれだけ変位するかを計算した。もちろん金属電極113に印加した電圧は一定である。その結果を図7に示す。
【0046】
側壁108と側壁111の高さの比が1:1となる樹脂部高さ200μmまでは変形量が増加しているが、それ以後の増加は極めて小さい。樹脂部の高さが25μm以下になると側壁中央部の変形量が20nm以下となり、インク滴を吐出することが困難となる。この値が樹脂部の高さの限界であるとすると、このときの側壁108、111を合わせた高さは225μmであるから樹脂部の高さは側壁全体のおよそ10分の1である。まとめると、樹脂部の高さは隔壁全体の高さの10%以上であると確実な効果が得られる。このことは第1の実施例のみならず、第2、第3の実施例についても適用できる。
【0047】
尚、本発明は上記実施例に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施例ではカバープレート102に設けられた側壁108の幅と圧電セラミックプレート105に設けられた側壁111の幅とが同一になるように形成されているが、必ずしも両者が同一幅である必要はない。
【0048】
【発明の効果】
上述したように本発明のインク噴射装置によれば、せん断変形する壁の一部を樹脂材料等の弾性率の小さい部材で構成しているため、側壁の変形が大きくでき、インク滴の吐出に要する電圧を低くできる。よって、高効率で、且つインクの吐出特性がよく、印字品質の高いインク噴射装置を提供できる。
【0049】
また、溝部を有するカバープレートを用いることで構成が単純となり、生産性を向上させることが出来る。隔壁に設けられた電極の形成に無電界メッキの手法を用いることができ、製造コストを削減する事も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例のインク噴射装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】前記実施例のインク噴射装置を示す断面図である。
【図3】前記実施例のインク噴射装置の動作を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例のインク噴射装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】前記実施例のインク噴射装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例のインク噴射装置を示す断面図である。
【図7】本発明のインク噴射装置の側壁の樹脂部の高さと側壁の変形量との関係を示す説明図である。
【図8】従来例のインク噴射装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】従来例のインク噴射装置を示す断面図である。
【図10】従来例のインク噴射装置の動作を示す断面図である。
【図11】従来例のインク噴射装置の動作を示す断面図である。
【符号の説明】
101、201、401 インク噴射装置
102、202、402 カバープレート
105、205、405 圧電セラミックスプレート
108、208、408 側壁
110、210、410 隔壁
111、211、411 側壁
112、212、412 インク室
113、213、413 金属電極

Claims (6)

  1. 分極処理を施した圧電材料からなり複数の溝部及びその溝部を隔てる側壁を有するアクチュエータ板と、前記圧電材料よりも弾性率が小さい低弾性部材からなり且つ複数の溝部及び側壁を有するカバープレートとから構成され、
    前記アクチュエータ板の溝部とカバープレートの溝部とが対向して噴射チャンネルを形成するように、アクチュエータ板の側壁とカバープレートの側壁とが接合され、
    前記噴射チャンネルの内面に、前記圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させるための電極が設けられ、
    前記圧電材料に電圧を印加して前記圧電材料の側壁を変形させて前記噴射チャンネルからインク滴を吐出するインク噴射装置。
  2. 前記低弾性材料は、前記圧電材料の弾性率の30%以下の弾性率を有する請求項1に記載のインク噴射装置。
  3. 前記カバープレートの上部には補強部材が積層されている請求項1に記載のインク噴射装置。
  4. インクを噴射するための噴射チャンネルと、
    前記噴射チャンネルの一部を構成し、且つその壁面の起立方向に分極された圧電材料と前記圧電材料の弾性率の30%以下の弾性率を有する低弾性材料とを前記起立方向に接合して構成された隔壁と、
    前記噴射チャンネル内の隔壁表面に設けられ、前記圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させるための電極とを有し、
    前記圧電材料に電圧を印加して前記隔壁を変形させて前記噴射チャンネルよりインク滴を吐出するインク噴射装置。
  5. インクを噴射するための噴射チャンネルと、
    前記噴射チャンネルの一部を構成し、且つその壁面の起立方向に分極された圧電材料と前記圧電材料よりも弾性率が小さい低弾性材料とを前記起立方向に接合 して構成された隔壁と、
    前記噴射チャンネル内の圧電材料の隔壁の部分のみの表面に設けられ、その圧電材料にその分極方向と略直交する方向へ駆動電界を発生させるための電極とを有し、
    前記圧電材料に電圧を印加して前記隔壁を変形させて前記噴射チャンネルよりインク滴を吐出するインク噴射装置。
  6. 前記噴射チャンネルの両側には、インクを噴射しない非噴射チャンネルが設けられている請求項1から5のいずれかに記載のインク噴射装置。
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