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JP3554957B2 - 積層セラミック電子部品及びその製造方法 - Google Patents

積層セラミック電子部品及びその製造方法 Download PDF

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JP3554957B2
JP3554957B2 JP23032598A JP23032598A JP3554957B2 JP 3554957 B2 JP3554957 B2 JP 3554957B2 JP 23032598 A JP23032598 A JP 23032598A JP 23032598 A JP23032598 A JP 23032598A JP 3554957 B2 JP3554957 B2 JP 3554957B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、積層セラミック電子部品に関し、詳しくは、セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な積層セラミック電子部品の一つである積層セラミックコンデンサは、通常、図5に示すように、複数の内部電極51がセラミック層52を介して互いに対向して配設された素子53の両端側に、交互に逆側の端面に引き出された内部電極51と導通するように外部電極54a,54bを配設することにより形成されている。
【0003】
そして、このような積層セラミックコンデンサは、図6に示すように、導電ペーストをスクリーン印刷法などの方法で印刷して内部電極パターン61(焼成後に内部電極51(図5)となる)を形成したセラミックグリーンシート62と、その上下両面側に配設される内部電極パターンの形成されていない外層用のセラミックグリーンシート63を積層して圧着した後、所定の条件で焼成し、得られた積層体(素子53(図5))に、導電ペースト(外部電極形成用ペースト)を塗布、焼き付けして外部電極54a,54b(図5)を形成する工程を経て製造されている。
【0004】
なお、実際には、多数の内部電極パターンが印刷されたマザーセラミックグリーンシートを積層、圧着して、複数の素子を含むマザー積層体を形成し、これを所定の位置でカットして個々の素子を切り出した後、焼成し、外部電極を形成することにより、一度に多数の積層セラミックコンデンサを製造する方法が一般的に用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような積層セラミックコンデンサの中には、誘電体として、優れた特性を有するPb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いたものがある。
この、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックは、誘電特性に優れており、それを用いた積層セラミックコンデンサは、大きな静電容量を得ることができるという特徴を有しているが、機械的強度や耐熱衝撃性が、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムなどを用いたものに比べて劣るという問題点があり、外部からの機械的衝撃や、熱的衝撃により、内部にクラックが発生して、絶縁抵抗が低下し、場合によってはショートに至ることがある。
【0006】
なお、上記問題点は、積層セラミックコンデンサの場合に限られるものではなく、積層LC複合部品や積層インダクタなどの種々の積層セラミック電子部品にあてはまるものである。
【0007】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、機械的強度や耐熱衝撃性に優れた積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明(請求項1)の積層セラミック電子部品の製造方法は、
セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
導電成分であるAgを含む金属粉末と、前記金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを、900℃〜930℃の温度条件で焼成して内部電極を形成すること
を特徴としている。
【0009】
また、請求項2の積層セラミック電子部品の製造方法は、
セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
導電成分であるAgを含む金属粉末と、前記金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを用いてセラミックグリーンシートに内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層、圧着して積層体を形成する工程と、
前記積層体を、900℃〜930℃の温度条件で焼成する工程と
を含むことを特徴としている。
【0010】
本願発明の請求項1の積層セラミック電子部品の製造方法は、導電成分であるAgを含む金属粉末と、金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを、900℃〜930℃の温度条件で焼成して内部電極を形成するようにしているので、焼成工程での内部電極の急激な収縮を抑制し、セラミックとの収縮差を緩和して、積層セラミック電子部品の機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することが可能になる。
また、本願発明の請求項2の積層セラミック電子部品の製造方法のように、Agを含む金属粉末と、金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを用いてセラミックグリーンシートに内部電極パターンを形成し、これを積層、圧着して積層体を形成した後、積層体を900℃〜930℃の温度条件で焼成するようにした場合にも、焼成工程での内部電極の急激な収縮を抑制し、セラミックとの収縮差を緩和して、積層セラミック電子部品の機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することが可能になる。
【0011】
また、導電ペースト中のSiO粉末の配合割合を、導電ペースト中のAgを含む金属粉末とSiO粉末の合計量(重量)に対して、40〜6000ppmの割合とすることにより、導電性などの内部電極として要求される性能を損なうことなく、積層セラミック電子部品の強度を向上させることが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。
また、本願発明において用いられるAgを含む金属粉末としては、Ag、Ag−Pdなどを用いることが可能である。
また、有機ビヒクルとしては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、硝化綿、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどを各種の有機溶剤に溶解したものなど、種々のものを用いることが可能である。
【0012】
また、請求項3の積層セラミック電子部品の製造方法は、前記セラミックが、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックであることを特徴としている。
【0013】
Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックは、機械的強度や耐熱衝撃性が必ずしも十分ではないが、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いた積層セラミック電子部品に本願発明を適用することにより、機械的強度や耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、優れた誘電特性を生かした積層セラミック電子部品を得ることが可能になる。
なお、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いた積層セラミック電子部品において、SiO粉末を含有する導電ペーストを用いて内部電極を形成した場合に、機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になるのは、焼結時に、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミック中のPbOとSiOが900℃以上の高温で結びついてガラス化し、内部電極とセラミックの界面に析出して接合強度を高めるためと考えられる。
【0014】
また、請求項4の積層セラミック電子部品の製造方法は、前記導電ペーストを構成する導電成分がAg−Pd粉末であり、Ag−Pd粉末中のAgの割合が70〜85重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0015】
導電ペーストを構成する導電成分として、Agの割合が70〜85重量%の範囲にあるAg−Pd粉末を用いることにより、誘電体として、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックなどを用いた、比較的低温で焼成される積層セラミック電子部品を効率よく製造することができるようになる。
【0016】
また、本願発明(請求項5)の積層セラミック電子部品は、
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造され、セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品であって、
内部電極中に、SiOが、内部電極を構成するAgを含む金属とSiOとの合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合で含有されていること
を特徴としている。
【0017】
内部電極中に、SiOを、内部電極を構成するAgを含む金属とSiOとの合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合で含有させることにより、積層セラミック電子部品の機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、信頼性を高めることができる。
【0018】
また、請求項6の積層セラミック電子部品は、前記セラミックが、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックであることを特徴としている。
【0019】
Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いた積層セラミック電子部品に本願発明を適用することにより、機械的強度や耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、優れた誘電特性を生かした積層セラミック電子部品を得ることが可能になる。
【0020】
また、請求項7の積層セラミック電子部品は、前記内部電極を構成する導電成分がAg−Pd合金であり、Ag−Pd合金中のAgの割合が70〜85重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0021】
内部電極を、Agの割合が70〜85重量%の範囲にあるAg−Pdから形成するようにした場合、例えば、誘電体として、比較的低温で焼成されるPb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックなどを用いた場合にも、機械的強度や耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。なお、この実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例にとって説明する。
【0023】
[積層セラミックコンデンサ]
図1は本願発明の一実施形態にかかる積層セラミックコンデンサの断面図である。この積層セラミックコンデンサは、図1に示すように、複数の内部電極1がセラミック層2を介して互いに対向して配設された素子3の両端側に、交互に逆側の端面に引き出された内部電極1と導通するように外部電極4a,4bが配設された構造を有している。
【0024】
そして、この積層セラミックコンデンサにおいては、素子3がPb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックであるPb(Mg1/3Nb2/3)Oを用いて形成されている。
また、内部電極としては、金属成分(Ag−Pd合金)とSiOの合計量に対して、SiOを40〜6000ppmの割合で含有するAg−Pd合金から形成されている。
また、Ag−Pd合金としては、AgとPdの割合(重量比)が、Ag70〜85%、Pd30〜15%の範囲のものが用いられている。
【0025】
上記の積層セラミックコンデンサは、SiO粉末を40〜6000ppmの割合で含有する内部電極を備えており、それ自体では必ずしも機械的強度や耐熱衝撃性が十分ではないPb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックであるPb(Mg1/3Nb2/3)Oが用いられているにもかかわらず、機械的強度や耐熱衝撃性に優れ、十分な信頼性を備えている。
【0026】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
次に、上記積層セラミックコンデンサを製造する方法について説明する。
まず、Ag−Pd合金とSiOと有機ビヒクル(例えば、エチルセルロースをターピネオールに溶かしたもの)を混練して作製した導電ペーストを、図2に示すように、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いたセラミックグリーンシート(マザーセラミックグリーンシート)12上に、スクリーン印刷法を用いて印刷することにより所定の内部電極パターン11(焼成後に内部電極1(図1)となる)を形成する。
【0027】
それから、内部電極パターン11の形成された複数枚のセラミックグリーンシート12と、その上下両面側に配設される、内部電極パターンの形成されていない外層用のセラミックグリーンシート13を積層、圧着して、図3に示すようなマザー積層体14を形成する。
【0028】
そして、このマザー積層体14を所定の位置でカットして、図4に示すような個々の素子3を切り出し、所定の条件で焼成する。
【0029】
それから、得られた素子3に、導電ペースト(外部電極形成用ペースト)を塗布して焼き付けることにより外部電極4a,4b(図1)を形成する。なお、外部電極4a,4bは、素子3の焼成前に外部電極形成用ペーストを塗布しておき、素子3の焼成と同時に焼付けを行って形成するようにしてもよい。
これにより、図1に示すような積層セラミックコンデンサが得られる。
【0030】
[性能確認試験1]
上記の積層セラミックコンデンサの性能を確認するために、以下の方法で、比較用の試料(比較例)と、本願発明の実施形態にかかる試料(実施例)を作製し、その特性を測定した。
【0031】
(1)試料の作成
まず、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミック材料として、Pb(Mg1/3Nb2/3)Oからなるセラミック材料を粉砕した後、これをセラミックグリーンシートに加工した。
次に、表1に示すように、AgとPdの割合が、Ag70〜85%、Pd30〜15%の範囲にあるAg−Pd粉末に、有機ビヒクルと、表1に示すような添加成分を配合し、混練して導電ペースト(電極ペースト)を作製した。
なお、表1において、試料番号に*印を付したものは本願発明の範囲内の実施例であり、その他は本願発明の範囲外の比較例である。
【0032】
【表1】
Figure 0003554957
【0033】
ただし、Ag−Pd粉末、有機ビヒクル、及び添加成分の配合割合は下記の通りである。
・Ag−Pd粉末:50.0重量%
・有機ビヒクル :49.9重量%
・添加成分 : 0.1重量%
なお、有機ビヒクルとしては、エチルセルロースをターピネオールに溶かしたものを用いた。
また、添加成分としては、本願発明の実施例としては、SiOを用い、比較例では、表1に示すようなPb−B−Siガラス、Pb−B−Si−Caガラス、Pb−B−Si−Naガラスなどを用いた。
【0034】
次に、このようにして作製した導電ペーストを用い、上記の[積層セラミックコンデンサの製造方法]で述べた方法に準じる方法により、導電ペーストのセラミックグリーンシートへの印刷、セラミックグリーンシートの積層、圧着、カット、焼成、外部電極の形成の諸工程を経て試験用の積層セラミックコンデンサ(試料)を作製した。
【0035】
(2)特性の測定
それから、このようにして作製した積層セラミックコンデンサ(試料)について、以下の試験を行った。
【0036】
(a)はんだ浸漬後の絶縁抵抗不良率の測定試験
試料を350℃、及び400℃の溶融はんだに10cm/secの速度で浸漬して引き上げた後、絶縁抵抗を測定して、絶縁抵抗不良率を調べた(n=200)。
【0037】
(b)おもり落下後の絶縁抵抗不良率、静電容量、及び誘電損失の測定試験
試料に3gのおもりを3cmの高さから落下させた後、絶縁抵抗を測定して、絶縁抵抗不良率を調べるとともに、静電容量及び誘電損失を測定した(n=100)。
【0038】
上記試験の結果を表1に併せて示す。
表1より、SiOを添加した本願発明の実施例の試料(試料番号3,4)では、はんだ浸漬後の絶縁抵抗不良率や、おもり落下後の絶縁抵抗不良率、静電容量、及び誘電損失などの諸特性について、他の比較例に比べて良好な結果が得られていることがわかる。
これは、(1)電極中にSiOを添加することにより、焼成工程での内部電極の急激な収縮が抑制され、セラミックとの収縮差が緩和されたためであり、また、(2)焼結時に、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミック中のPbOとSiOが900℃以上の高温で結びついてガラス化し、内部電極とセラミックの界面に析出して接合強度を高めたためであると考えられる。
【0039】
これに対して、試料番号5〜10の比較例のように、最初からガラス材料を添加した場合には、セラミックの焼結領域である900℃以上の温度でガラス材料が素子中に拡散して、誘電体のペロブスカイト構造を破壊してしまうため、特性が劣化するものと考えられる。
【0040】
また、Ag−Pd合金中のAgとPdの割合(重量比)が、Ag/Pd=90/10とAgの割合が高い場合(試料番号13)、セラミック焼結温度である930℃付近でAgがセラミック中に拡散してしまうため、静電容量が低く、電極としての特性がよくないことがわかる。
【0041】
また、Ag−Pd合金中のAgとPdの割合(重量比)が、Ag/Pd=50/50の場合(試料番号14)、はんだ浸漬試験での絶縁抵抗不良率が高く、また、誘電損失も大きくなるため、好ましくない。これは、Pdの比率が高いため、セラミック焼結過程でPdの酸化膨張により、内部にデラミネーションが発生しやすくなるためであると考えられる。
【0042】
上記の結果より、Ag−Pd合金中のAgとPdの割合(重量比)は、Agが70〜85、Pdが30〜15の範囲とすることが好ましい。
【0043】
[性能確認試験2]
(1)試料の作成
上記の性能確認試験1の場合と同様に、誘電体セラミックとしてPb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いて積層セラミックコンデンサ(試料)を作製し、性能を確認した。
なお、ここでは、導電ペーストとして、AgとPdの重量比が、Ag/Pd=70/30と、Ag/Pd=85/15の2種類のAg−Pd粉末(金属粉末)を用い、この金属粉末に有機ビヒクル(ここではエチルセルロースをターピネオールに溶かしたものを使用)と、表2に示すような量のSiO(添加成分)を配合し、混練することにより作製したものを用いた。なお、表2において、試料番号に*印を付したものは本願発明の範囲内の実施例であり、その他は本願発明の範囲外の比較例である。
【0044】
【表2】
Figure 0003554957
【0045】
なお、Ag−Pd粉末、有機ビヒクル、及びSiOの配合割合は下記の通りである。
・Ag−Pd粉末:50.0重量%
・SiO :10〜5000ppm
(但し、金属粉末とSiO粉末の合計量(重量)に対するSiOの割合としては20〜10000ppmである)
・有機ビヒクル :残部
【0046】
(2)特性の測定
それから、このようにして作製した積層セラミックコンデンサ(試料)について、(a)はんだ浸漬後の絶縁抵抗不良率の測定試験、及び(b)おもり落下後の絶縁抵抗不良率、静電容量、及び誘電損失の測定試験を行った。
なお、測定試験の内容については、上記の[性能確認試験1]の場合と同様である。
測定試験の結果を表2に併せて示す。
【0047】
表2より、Ag/Pd(重量比)=70/30の導電ペーストを用いた場合(試料番号21〜27)における、SiOの好ましい添加量範囲(金属粉末(Ag/Pd粉末)とSiO粉末の合計量(重量)に対する割合)は、40〜6000ppmの範囲であることがわかる。
なお、SiOの添加量がこの範囲を下回ると、焼成工程での内部電極の急激な収縮を抑制する効果が不十分になり、耐衝撃性が低下するため好ましくない。
また、SiOの添加量がこの範囲を超えると、静電容量の低下や誘電損失の劣化を引き起こすため好ましくない。なお、これは、SiOが過剰で、セラミック中に拡散し、誘電率を変化させるためであると考えられる。
【0048】
また、Ag/Pd(重量比)=85/15の導電ペーストを用いた場合(試料番号28〜32)における、SiOの好ましい添加量範囲(金属粉末(Ag/Pd粉末)とSiO粉末の合計量(重量)に対する割合)も、40〜6000ppmの範囲であることがわかる。なお、その理由は、上述の、Ag/Pd(重量比)=70/30の導電ペーストを用いた場合と同様である。
【0049】
なお、上記実施形態では、セラミックとして、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いた場合について説明したが、他のセラミックを用いた積層セラミックコンデンサに適用した場合にも、上記実施形態に準じた効果を得ることが可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、内部電極を構成する金属がAg−Pdである場合について説明したが、内部電極が他のAgを含む金属材料から形成されるような積層セラミック電子部品にも適用することが可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、積層セラミックコンデンサを例にとって説明したが、本願発明は、積層LC複合部品や積層インダクタなどの種々の積層セラミック電子部品に適用することが可能である。
【0052】
本願発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0053】
【発明の効果】
上述のように、本願発明(請求項1)の積層セラミック電子部品の製造方法は、導電成分であるAgを含む金属粉末と、金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを、900℃〜930℃の温度条件で焼成して内部電極を形成するようにしているので、焼成工程での内部電極の急激な収縮を抑制し、セラミックとの収縮差を緩和して、積層セラミック電子部品の機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することができる。
また、本願発明の請求項2の積層セラミック電子部品の製造方法のように、Agを含む金属粉末と、金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを用いてセラミックグリーンシートに内部電極パターンを形成し、これを積層、圧着して積層体を形成した後、積層体を900℃〜930℃の温度条件で焼成するようにした場合にも、焼成工程での内部電極の急激な収縮を抑制し、セラミックとの収縮差を緩和して、積層セラミック電子部品の機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することが可能になる。
また、導電ペースト中のSiO粉末の配合割合を、導電ペースト中のAgを含む金属粉末とSiO粉末の合計量(重量)に対して、40〜6000ppmの割合とすることにより、導電性などの内部電極として要求される性能を損なうことなく、積層セラミック電子部品の強度を向上させることが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。
【0054】
また、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックは、機械的強度や耐熱衝撃性が必ずしも十分ではないが、請求項3の積層セラミック電子部品の製造方法のように、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いた積層セラミック電子部品に本願発明を適用することにより、機械的強度や耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、優れた誘電特性を生かした積層セラミック電子部品を得ることが可能になる。
【0055】
また、請求項4の積層セラミック電子部品の製造方法のように、導電ペーストを構成する導電成分として、Agの割合が70〜85重量%の範囲にあるAg−Pd粉末を用いることにより、誘電体として、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックなどを用いた、比較的低温で焼成される積層セラミック電子部品を効率よく製造することができる。
【0056】
また、本願発明(請求項5)の積層セラミック電子部品は、内部電極中に、SiOを、内部電極を構成するAgを含む金属とSiOとの合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合で含有させるようにしているので、積層セラミック電子部品の機械的強度及び耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、信頼性を高めることができる。
【0057】
また、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックは、機械的強度や耐熱衝撃性が必ずしも十分ではないが、請求項6の積層セラミック電子部品のように、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックを用いた積層セラミック電子部品に本願発明を適用することにより、機械的強度や耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、優れた誘電特性を生かした積層セラミック電子部品を得ることが可能になる。
【0058】
また、請求項7の積層セラミック電子部品のように、内部電極を、Agの割合が70〜85重量%の範囲にあるAg−Pdから形成するようにした場合、例えば、誘電体として、比較的低温で焼成されるPb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックなどを用いた場合にも、機械的強度や耐熱衝撃性を向上させることが可能になり、本願発明を実効あらしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態にかかる積層セラミック電子部品(積層セラミックコンデンサ)を示す断面図である。
【図2】本願発明の一実施形態にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法の一工程において、マザーセラミックグリーンシートを積層している状態を示す図である。
【図3】本願発明の一実施形態にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法の一工程において作製されたマザー積層体の要部を示す断面図である。
【図4】図3のマザー積層体を所定の位置でカットすることにより切り出した素子を示す図である。
【図5】従来の積層セラミック電子部品(積層セラミックコンデンサ)を示す断面図である。
【図6】従来の積層セラミック電子部品(積層セラミックコンデンサ)の製造方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 内部電極
2 セラミック層
3 素子
4a,4b 外部電極
11 内部電極パターン
12 セラミックグリーンシート
13 外層用のセラミックグリーンシート
14 マザー積層体

Claims (7)

  1. セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
    導電成分であるAgを含む金属粉末と、前記金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを、900℃〜930℃の温度条件で焼成して内部電極を形成すること
    を特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  2. セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
    導電成分であるAgを含む金属粉末と、前記金属粉末との合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合のSiO粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電ペーストを用いてセラミックグリーンシートに内部電極パターンを形成する工程と、
    前記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層、圧着して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を、900℃〜930℃の温度条件で焼成する工程と
    を含むことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  3. 前記セラミックが、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックであることを特徴とする請求項1又は2記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  4. 前記導電ペーストを構成する導電成分がAg−Pd粉末であり、Ag−Pd粉末中のAgの割合が70〜85重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造され、セラミック中に内部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品であって、
    内部電極中に、SiOが、内部電極を構成するAgを含む金属とSiOとの合計量(重量)に対して40〜6000ppmの割合で含有されていること
    を特徴とする積層セラミック電子部品。
  6. 前記セラミックが、Pb系複合ペロブスカイト誘電体セラミックであることを特徴とする請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
  7. 前記内部電極を構成する導電成分がAg−Pd合金であり、Ag−Pd合金中のAgの割合が70〜85重量%の範囲にあることを特徴とする請求項5又は6に記載の積層セラミック電子部品。
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