従来の電動工具には、作業者の腰ベルト等に電動工具を掛止させるためのフック部が設けられている。このフック部が、例えば電動工具本体から突出した状態で固定配置されていると、フック部が作業中に周辺の部材等に接触してしまう。特に狭い場所で作業を行う場合にはフック部が邪魔になってしまい作業性が低下してしまう不具合があった。また、作業の邪魔になるので必要に応じてフック部を着脱可能な構成にしてしまうとフック部の紛失を引き起こす不具合があった。そこで、フック部を要しない場合には、電動工具内にフック部を収納したり、或いは作業の邪魔にならない位置までフック部を可動可能に設けていた。
特開2000−167785号
特開平6−285774号
特開平9−225861号
特開平9−216171号
上述したフック部の一例を図17を用いて説明する。ネジが切られた棒状の鉄を折り曲げて形成された引っ掛け片2の全周に軟質材3が被覆されたフック4と、フック4を保持する保持ナット5と、フック4を抜け止めするハウジング1内に設けられた図示しない抜け止めナットで構成されている。このフック部の引っ掛け片2は、バッテリー18にほぼ隣接する収納位置から二点破線で示すように、引っ掛け片2bとハンドル9との間に形成されている隙間まで回動可能で、且つこの位置にて掛止可能に突出する。また、フックの先端が重心方向に向いた状態でベルト等に引っ掛けることで安定性が得られることから、連ネジアタッチメント7が電動工具本体から取り外され電動工具の重心位置が変化しても引っ掛け片2bを回動させることで、安定した位置に調整することができる。また、フックの引っ掛け片は、最も側方に張り出している場合が多いため、軟質材3の被覆されたフック4により電動工具を傾斜している屋根等の傾斜面に置いてもこの軟質材3により滑り止め作用が働くと共に、軟質材3により化粧板等の部材上に電動工具を置いた際に部材に傷を付けないように保護作用も働く。
また、特開2000−167785号公報に開示されているように、フック部を突出固定した状態からフック全体を電動工具本体に設けた凹部内にスライド可能に収納するものもある。
また、上述した収納式ではないが、フック部を簡単に可動させる一例として、特開平6−285774号公報に開示されているように、電動工具の略円筒状のモーターハウジングの外周回りに回動可能で、且つフック部を係止することにより複数箇所で位置決め可能なフックもある。
また、特開平9−225861号公報に開示されているように、凸部もしくは凹部を設けたモーターハウジング左側面に嵌合可能な凸部もしくは凹部を設けた回動式のフック部が設けられ、且つこのフック部にワンタッチで着脱可能なものもある。
一方、ビット等の先端工具は、ネジ締め作業で先端を破損させ易いため、ビット交換を行う必要があるが、脚立上や足場上の高所作業でいちいち地上に置いてあるビットに交換するのは煩わしい。また、ポケット内に交換用ビットを入れておくとポケット内からネジ等を取り出す際などに落としてしまい紛失してしまう可能性が高い。このため、特開平9−216171号公報に開示されているように、ハウジングに交換用ビットを収納可能な電動工具が提供されている。このビット収納部は、ハンドルの下部に設けたバッテリー受け部の両側面にビットが衣服等に引っ掛かって落下しないように、ビットの四方全周にリブが突設されており、ビットが略完全に埋没するビット収納部が形成されている。加えてこのビット収納部内には、ビットを一ヶ所で圧着保持する係止金具が設けられており、ビットを取り出す際は係止金具を湾曲させてビット軸半径方向に引き抜けるように構成されている。
本実施例におけるインパクトドライバ等の電動工具を図1〜図16を用いて説明する。図1及び図2は本実施例における電動工具のフック部を示す要部拡大分解斜視図、図3は本実施例におけるフック部の可動状態を示しており、(A)は正面図、(B)は側面図(C)は底面図、図4は図3(A)のA−A線断面図、図5は本実施例におけるフック部をスプリング27を圧縮する方向に移動させた状態を示す図3(A)のA−A線断面図、図6は本実施例におけるフック部を反対側に装着した状態を示す外観斜視図、図7は本実施例におけるフック部の収納状態或いは突出状態を示す図4のB−B線断面図、図8は本実施例におけるフック部の回動部を示しており、(a)は図4のc−c線断面図、(b)はギヤ及びリングギヤを示す部分拡大図、図9は本実施例におけるフック部を用いて電動工具を作業者の腰ベルトに引っ掛けた状態を示す要部拡大図、図10はフック部を用いて電動工具を作業者の腰ベルトに引っ掛けた状態を示しており、(a)は電動工具を作業者の腰ベルトに引っ掛けた状態を示す説明図、(b)は(a)に示す電動工具からビットを取り外してチャックと木工錐を装着した状態を示す説明図、(c)は(a)に示す電動工具に軽量のバッテリーを装着した状態を示す説明図、図11は本実施例におけるフック部を設けた電気丸のこを示しており、(a)は一部縦断側面図、(b)は電気丸のこを梁に引っ掛けた状態を示す状態図、図12は本実施例におけるフック部を設けた電気ドリルを示しており、(a)は一部縦断正面図、(b)は一部省略平面図、(c)は(b)のd−d線断面図、図13は本実施例におけるフック部の他の例を示す要部拡大断面図、図14は本実施例におけるフック部の更に他の例を示す要部拡大断面図、図15は本実施例におけるフック部に設けたビット収納部を示す図3(a)のA−A線断面図、図16はビットを収納するフック部を示す一部外観斜視図である。
図3に示すように、二つ割ハウジング1(以下ハウジングと称す)及びハンマケース8などの外枠を有するインパクトドライバは、略T字形状を成しており、ハウジング1によって形成される本体胴体部には電気式或いは空気式の駆動源であるモータ15や減速機構部を構成する遊星ギヤ部18などを収容し、且つ本体胴体部から垂下するハンドル部にはモータ15に電力を供給するためのトリガスイッチや蓄電池の接続端子と電気的に接続される接点などが収容されている。また、ハウジング1に当接して配置されるハンマケース8内にはモータ15の回転動力を打撃力に変換するための打撃機構部及びビットやレンチ等の先端工具保持部などが収容されている。
このような構成において、モータ15の回転動力は、モータ15の出力軸であるピニオンから減速機構部に伝達され、減速機構部から打撃機構部を介して先端工具17に回転力および打撃力が伝達されている。
上記打撃機構部は、スピンドル16と、スピンドル16に形成したカム溝に挿入されるスチールボール(鋼球)を介して回転可能且つ回転軸軸方向に移動可能なハンマ23と、ハンマ23に設けた複数のハンマ爪により打撃され回転するアンビル爪を有するアンビル22と、ハンマ23をアンビル22側に常に付勢するスプリングとから構成されている。
上記減速機構部である遊星ギヤ部18は、ハウジング1内に回転止めを有し支持されている固定歯車支持治具、固定歯車、遊星歯車、スピンドル16を有し、且つスピンドル16に支持される遊星歯車の回転軸となるニードルピンから構成されている。
先端工具17により締め付けられるネジやナット等に与えるパルス的な衝撃(インパクト)は、トリガスイッチの操作によりモータ15に電力を供給し、モータ15を回転駆動させ、このモータ15の回転動力をモータ15の先端に連結されているピニオンを介して遊星ギヤ部18(遊星歯車遊星歯車,固定歯車)を経てスピンドル16に伝達し、スピンドル16のカム溝とハンマ23のカム溝間に配置されたスチールボールを介して、スピンドル16の回転力をハンマ23に伝達し、ハンマ23とスピンドル16の遊星歯車との間に配されているスプリングによって前方(先端工具側)に付勢されているハンマ23のハンマ爪とアンビル22のアンビル爪とが係合することによりアンビル22が回転するため、先端工具17に回転力が与えられる。先端工具17によるネジ等の締め付けトルクが所定値以上になると、ハンマ爪がアンビル爪を乗り越えるため両爪による係合が一時的に解除される、即ち締め付けトルクが所定値以上になるとハンマ23がスプリングに抗してモータ15側に移動(後退)する。その後、スプリングの圧縮力によってハンマ23がアンビル22方向に押し戻されアンビル爪にハンマ爪が衝突することで打撃力が発生する。このようにハンマ23の回転及び軸方向移動を繰り返すことで、連続的な衝撃トルクが先端工具17に与えている。
また、上記遊星ギヤ部18を有する電動工具のハウジング1の表面には、二層成形によりエラストマーが施されている。このエラストマーを設ける目的は、電動工具を確実に把持するための滑り止め、或いは握り心地を良くし操作性及び作業性を向上させるためのもので、更には地面に落とした時の衝撃を吸収し電動工具が破損してしまうことを防いだり、傾斜面に電動工具を置いた時に傾斜に沿って電動工具が滑り落ちないようにするためものである。そのため、エラストマー15は、主に二つ割ハウジング1のハンドル握り部、本体胴体部周辺に設けられている。
更に上記インパクトドライバには、作業者の腰ベルト等にインパクトドライバ本体を掛止させるため、以下に詳述する回動可能なフック部4が設けられている。フック部4の引っ掛け片2は、バッテリー18を収納可能なハンドル部からバッテリー18の側面に隣接する位置まで延在する円筒状の保持部20に設けられており、保持部20はフック4の基端部28が装着される左右方向((A)の奥側と手前側)に軸長を有している。また、保持部20は、ハンドル9後端からボルト44の支柱29が挿通されており、樹脂製の引っ掛け片2には、ビット11を収納する収容部が設けられている。
図1及び図2において、フック4は、L字状の引っ掛け片2と、引っ掛け片2の後端に連設される略円筒状の基端部28と、この基端部28に装着される抜け止め部29とから構成されている。基端部28は、枢軸30上にそれぞれ連設された、引っ掛け片2から突設し先端にギヤ部31を有する円筒状の回転筒32と、回転筒32からギヤ部31の内径と略同径に突設された横筒33と、横筒33より細径に突設されたボルト受け筒34とから形成されると共に、基端部28内部には図示しない係止め突起の突設された半六面壁のナット収納部35及び枢軸30上にボルト受け筒34の端面からナット収納部35まで貫通するボルト穴36が埋設されている。加えてギヤ部31は、枢軸30方向に面を持ち基端部28から枢軸30の半径方向外側に突出した複数の歯から形成される。38は引っ掛け片2と回転筒32の段差、39は回転筒32から突設しており、引っ掛け片2を反ハンドル側に引っ張りギヤ部31とリングギヤ部47との噛み合いを解除することで回動可能となる引っ掛け片2の回動範囲を所定の角度内に規制する回転抑止板、40〜40はギヤ先端に夫々設けられたC面、54,54は滑り止めである。更に、抜け止め部29は、コイン溝42が埋設されたボルト頭43を備えるボルト44と、緩み止め機構を有するナット45から構成される。
一方、ハウジング1に設けられた保持部20は、ハウジング1a、1bの分割面を中心に対称形状である。保持部20は円筒状であって、合わせて回転支持部を形成しているフック4の回転筒32と当接する回転支持穴46と、フック4のギヤ部31が嵌入可能なリングギヤ部47と、このリングギヤ部47と対称形状であって端面が弾性スプリング27に当接されるスプリング受48と、回転支持穴46と対称形状であってフック4のボルト受け筒34の周囲に隣接されるスプリング27及びボルト頭43が収納可能なスプリング室49とで形成された枢軸30上に夫々連通する貫通穴50を有し、加えてリングギヤ部47は枢軸30方向に面を持ち、貫通穴50から枢軸30の半径方向内側に突出した複数の歯から形成されている。又、回転支持穴46内には、フック4の回転抑止板39が当接し、回転支持穴46と同心筒形状の回転抑止板受け52が埋設されるが、この回転抑止板受け52は、周方向で回転抑止板39より数倍大きく、回転抑止板受け52、回転抑止板39ともフック4を組み付けた際、枢軸30方向でボルト頭43の内面からスプリング受48端面までの距離より長く形成されている。加えて保持部20の端面53には、フック4の段差38が当接され合わせて離脱防止部を形成している。なお、弾性体にはスプリング27以外として弾性ゴムを用いても良い。
以上の如く構成されたインパクトドライバ21において、フック4を組み付ける際は、ナット45をフック4のナット収納部35に挿入し、そのナット45を図示しない係止突起で係止収納したフック4の基端部28を、既にネジ止めされたハウジング1a、1bの保持部20の貫通穴50に、引っ掛け片2がバッテリー18底面と平行になるように装着し、更にスプリング27を太径方向からスプリング室49に挿入した状態で、ボルト44をボルト穴36に挿通し、ナット45にボルト頭43がボルト受け筒34の端面に当接するまでマイナスドライバもしくはコインをコイン溝42に嵌合させて締めれば、フック4がスプリング27を介在させてハウジング1と組み付けられる。また、ナット45は緩み止め機能付ナットであるから、ネジ44が緩んでフック4がハウジング1から離脱する危険性がない。また、この際、保持部20はハウジング1a、1bの分割面を中心に対称形状であるから、図6に示すように作業者の利き腕に合わせてフック4を保持部20の反対方向からも装着可能であり、装着方向が変っても保持部20内の部位の役割はリングギヤ部47を除いて夫々が変わるだけなので、保持部20は、フック4の装着位置を2ヶ所持ち合わせていても略一つで良く、言い換えれば二箇所設ける必要がなく、インパクトドライバ21がコンパクトになる。更にこの際、図1,2に示すようにフック4内のナット収納部35に汎用部品であるナット45を挿入する構成であるため、ナット等を金型に嵌め込み樹脂成形するインサート成形や、基端部28全体を金属で成形し機械加工するといった方法に比べコストがかからなく、ボルト44とナット45で締め付け固定しているため樹脂成形されたハウジング1にネジ止めするといった方法に比べて耐久性が高い。
図4は、フック4の引っ掛け片2がバッテリー18の側面にほぼ隣接する位置で収納されている収納状態を表している。フック4は、スプリング27の圧力が保持部20内のスプリング受48端面を支点に、ボルト頭43を押し出す方向に掛けられると共に、フック4の段差38が保持部20の端面53に当接して支持されるためフック4の離脱が防止され、更にギヤ部31がリングギヤ部47と嵌合状態に保持されるため、基端部28の枢軸30の周方向の回転が防止され、併せて収納時の安定が図られる。
そして、ここからフック4を使用する場合、枢軸30上の滑り止め部54,54を指でつまみ枢軸30方向側方(図の上方)に引き抜けば、図5に示すようにフック4を保持部20から側方に移動できると共に、ギヤ部31とリングギヤ部47の嵌合が解除されるため、フック4を回動させることができる。但しこの状態では、ボルト頭43が圧縮されたスプリング27を介してスプリング受け48の端面に係止するため、フック4の側方への離脱が防止される。また、このフック4の引き抜き時には、スプリング27がすり鉢形状のため線径の厚さまで圧縮可能で、フック4の大きな引き抜き量をかせぐことができ、言い換えれば保持部20を枢軸30方向幅にコンパクトにできる。そして、図5の引抜き状態を指で保持した状態からそのまま、図3(A)に示すように引っ掛け片2先端が上方に向くようにフック4を回転させ、引っ掛け片2がインパクトドライバ21の重心55付近を指す位置2eで指を離せば、図4に示すようにスプリング27の圧力が保持部20内のスプリング受け48端面を支点に、ボルト頭43を押し出す方向に掛けられると共に、ギヤ部31とリングギヤ部47が嵌合し、段差38が端面53に当接して支持され、引っ掛け片2が図1(A)の位置2eで安定して固定される。フック4を回動させる時、図5に示すように回転筒32が回転支持穴46に当接して摺動するためにフック4は常に略枢軸30上を回動でき、更に複数の歯がギヤ部31及びリングギヤ部47に設けられており、加えてギヤ部31のC面40〜40が覗きの役割を果たすため、引き抜き状態から指を外しただけでギヤ部31とリングギヤ部47が嵌合し易くなっている。しかも、C面40〜40はギヤ部31先端部の欠損を防ぐ効果もあり、インパクトドライバ21においては金型分割構造上設けなかったが、リングギヤ部47先端部にC面を設けても良い。万一、指を外しただけでギヤ部31とリングギヤ部47が嵌合しなかった場合もフック4を軽くたたく程度で嵌合可能である。
次にフック4を使用しない場合は、上記手順とは逆に枢軸30上の滑り止め54,54を指でつまみ枢軸30方向側方に引き抜けば、フック4を保持部20から側方に移動できると共に、ギヤ部31とリングギヤ部47の嵌合が解除されるため、フック4を回動させることができる。そして、その引抜き状態を指で保持した状態からそのまま、引っ掛け片2先端が前方に向くようにフック4を回動させ、図7に示すように回転抑止板39の端面が回転抑止板受け52の端面に当接する場所で指を離せば、フック4の引っ掛け片2はバッテリー18側面にほぼ隣接する位置で収納される。
ここで、ギヤ部31とリングギヤ部47の形状について詳述する。図8(A)に示すように、フック4の先端に枢軸30の周方向に作業者の力P1が掛かると勘合部の1点にモーメントM1が働くが、ギヤ部31とリングギヤ部47の歯が枢軸30の略半径方向の面で形成されているため、ギヤ部31の歯に働くモーメントM1をリングギヤ部47の歯で略垂直に受けることができ、フック4の回動抑制に無駄がなく、加えて図8(B)に示すようにギヤ部31とリングギヤ部47に複数の歯が設けられていることによってモーメントM1をモーメントM2に分散できるため、保持部20と基端部28をコンパクトにでき且つ強固に嵌合可能である。また、図1に示すようにギヤ部31とリングギヤ部47の歯が枢軸30方向の面で形成されているため、フック4は回動方向に力を加えても枢軸30方向側方(図の手前側)にスライドしてしまうことがない。加えてギヤ部31とリングギヤ部47の歯が夫々基端部28と貫通穴50から枢軸30の半径方向に突出しているため、歯が基端部28と貫通穴50の端面から枢軸30の軸方向に突出している構成に比べて、歯と基端部28及び貫通穴50の接合面積が広くでき接合強度が強く、また歯が上記枢軸30方向に突出している構成で前記枢軸30半径方向に突出している歯の接合強度と同等の強度を稼ごうとした場合、ギヤ部31とリングギヤ部47が枢軸30の半径方向に大型化してしまい不適切な構成になる。
次に、図9にインパクトドライバ21を腰ベルト76に引っ掛けた状態を示す。図9は作業者の動きに伴い、フック4に引き抜き方向の力P2が掛かった時の図を示すものであるが、基端部28と貫通穴50は嵌合しているため腰ベルト76が引っ掛かる支持点26に力P2がかかると基端部28は回動し、基端部28の端点56,56にその中心57の周方向にモーメントM3、M3が働く。そして、モーメントM3、M3は貫通穴50内壁へ垂直に働く力F1、F1と、枢軸30に平行で夫々反対方向に働く力F2、F3とに分解できるが、力F2、F3は相殺されるため、基端部28は貫通穴50内壁へ垂直に働く力F1、F1によって貫通穴50に圧着される。言い換えれば、基端部28は貫通穴50内でこじれ、引き抜けないから、フック4は枢軸30上を指でまっすぐ引き抜く以外引き抜きようがなく、引っ掛かり時の安定性が良い。更に付け加えるとインパクトドライバ21は、ベルト76に引っ掛けられている状態で常に重力が働いているから、引っ掛け片に力P3が働き基端部28が貫通穴50内でこじれている状態が持続する。
更に、インパクトドライバ21を腰ベルト76に引っ掛けた際は、図10(A)に示すように、インパクトドライバ21の重心55がフック4の支持点26の垂下に位置し、引っ掛け片2は腰ベルト76と垂直関係にあり安定している。しかも、図11(B)に示すように木工錐58とドリルチャック59が取付けられたり、図10(C)に示すように電圧の低い軽量電池60が取付けられるとインパクトドライバ21の重心55が夫々重心61,62に変化するが、引っ掛け片2は周方向の複数位置で保持されるため、引っ掛け片2の位置2eを夫々位置2d、2fに簡単に回動させれば、引っ掛け片2と腰ベルト76の関係は常に垂直で深く引っ掛かっている関係にあるため、引っ掛かり時の安定性は部品を追加変更した場合も良い。加えて上述したようにフック4は回動方向に力を加えても強固に回動不能で、更にフック4が作業者の動きに伴い引き抜かれることはないから、併せて引っ掛かり時の安定性が保たれる。
次に、インパクトドライバ21を落下させた場合のフック4の強度に関して述べる。引っ掛け片2が図3に示した位置2aにあればバッテリー18が衝撃を吸収し、位置2c、2d、2e、2fにあれば引っ掛け片2がハンドル9まで湾曲当接しハンドル9が衝撃を吸収する。しかし、引っ掛け片2が位置2a、2c、2d、2e、2f以外にある場合、例えば、位置2gで落下衝撃を受けた場合、引っ掛け片2自身で衝撃を吸収しなければならず、おのずと引っ掛け片2が大型化してしまうという問題があった。従って、図7に示すように基端部28に回転抑止板39を、保持部20に回転抑止板受け52をそれぞれ設け、引っ掛け片2の回転移動範囲を前記した位置2a、2c、2d、2e、2fの範囲に制御し、フック4をコンパクトにすることができる。
以上説明したフックの構成は、複数の位置選択をスライドして回すだけの簡単な方法であり、且つベルト等に引っ掛けた時の安定性が良く、又コンパクトな構造で携帯用工具に隣接する方法で収納可能であるため、例示したインパクトドライバに限らず、ハウジング内に空きスペースが無い場合や、フックの取付け場所が限定される場合が多い、丸のこ、ドリル、ディスクグラインダ、ドライバ、ハンマ、ジグソー、カッタ、セーバソー、エアツール、釘打ち機等の殆どの携帯用工具に幅広く適用でき汎用性が高い。例えば、図11に示すように、屋根の梁63に引っ掛けるためのフックを丸のこ64に装着する場合であっても、保持部20をモーターハウジング19側面に突設させ引っ掛け片2をコの字形にしモーターハウジング19端面にフック4のスライド量分隙間をあけた状態で隣接する構成にすれば、電気丸のこにも装着可能であり、又、モーター上部に空きスペースが有る図12に示すドリル65もしくはスクリュードライバーに装着する場合であれば、引っ掛け片2を枢軸と平行に突出したL字形にし、フック4及び保持部20全体を収納する構成にでき、装着可能である。図12(C)は図12(B)のD−D断面であるが、このように金型構造上、リングギヤ部47の一部を省いてしまっても構わない。また、上述したように、丸のことドリルどちらにおいても梁やベルト等への引っ掛け時に引っ掛け片2に重力P4が働くが、フック4が保持部20の端面53に抜け止めされ安定しており、更に梁やベルト等から引っ掛け片2を引き抜く時に摩擦によって引っ掛け片2に力P5が働くが、保持部20内でフック4の基端部28がこじれるためフック4がスライドしてしまい抜き辛くなることがなく操作性が良い。
また、図4に示す形態のように、フック4に基端部28を設けハウジング1に保持部20を設けたが、図13に示すようにフック4に保持部20を設けハウジング1に基端部28を設ける構成であっても同等の効果が得られる。更に、図14に示すように、図13の基端部28を含むハウジング1と抜け止め部29を入れ替えた構成でも良く、しかも図13のフック4回動時に回転筒32の回転を支持する回転支持穴46を省き図14に示すようにリングギヤ部47によって回転筒32を支持しても良い。このように部分が入れ代わったり、部分を細分化して動作精度を上げたり、1部分で2つの効果を兼用したりする構成でも構わない。
次にビット収納構成及びその方法について説明する。図1はフックを備えるインパクトドライバの部分説明図であり、フック4の引っ掛け片2には、溝状の収容保持部であるビット収納部66が凹設され、そのビット収納部66に六面体であるビット11が略完全に収納される。67はビット11が嵌合可能な嵌着部、68はビット11の前後に埋設された首部、69は弾性の平板70から突接され首部を弾性係止可能なストッパ、71はビット収納部1の一部側壁が切り欠かれた切り欠き、72,73はビット11の頭部、74は平板70裏面の凹部である。
一方、ビット11を装着する際は、図15に示すようにビット11をビット収納部66後方(図の右側)からビット軸75方向に頭部73を指で押して摺動させれば、嵌着部67に嵌合すると共に、ビット11の首部68にストッパ69が弾性係止し、ビット11がフック4と組み付けられる。更に図4はビット11がフック4に収納された状態を表す図であり、図4(B)は図4(A)のE−E断面図であるが、六面体であるビット11の三面が嵌着部67に嵌合状態に保持され、ビット11はビット軸75の周方向と半径方向の揺動が防止される。加えて首部68にストッパ69が弾性係止されビット軸75の軸方向の揺動が防止されるため、併せて安定性が良い。また、ビット11が、引っ掛け片2の縁部と面位置に収納されるため、即ちビット11の外周がビット収納部66か突出しないよう完全に埋設するため、ビット11を衣服等に引っ掛けてしまい離脱させる危険性がなく、安全性に優れている。次に図15に示すようにビット11を引き出す時は、ビット収納部66の切り欠き71から指を差し込み頭部72を後方(図の右側)に摺動させれば、ストッパ69もしくは平板70が頭部72によって押圧され平板70が湾曲しストッパ69による係止が解かれると共に、頭部73をビット収納部66から後方へ突出させることができ、その頭部73を指で挟んで引き出せば、ビット11がフック4から引き出される。この時、凹部74によって平板70の弾性圧力を低くしており、しかも引っ掛け片2がバッテリー18側面に当接状態であっても、湾曲した平板70とバッテリー18側面とがぶつからない。
よって上述したように、フックとビット収納部を備える携帯用工具において、フックの引っ掛け片をビット収納部に置き換えればスペース効率が良い。更にビットをビット軸方向に摺動させて着脱する方法で、且つビット軸周方向及び半径方向の揺動を防止する係止手段とビット軸方向の揺動を防止する弾性係止手段とに分けることによって、フックの樹脂一体成形が可能であり、コストと組付け手間がかからない。
更に、図16に示すように引っ掛け片4の縁部の1部に、滑り止め用または部材保護用のゴム等の軟性体3〜3を圧入、または接着、或いは2層成形すれば、ビット収納部を備えるフックに軟質材を設けることが可能になる。なお、軟質塗料を塗布する方法でも構わない。
以上のことからビット収納の構成は、スペース効率が良く、コストと組付け手間が掛からない樹脂一体成形の係止手段を用いているため、例示したインパクトドライバーに限らず、ビットを使用する丸のこ、スクリュードライバー、ドライバードリル、エアツールのドライバー等の携帯用工具に幅広く適用することができる。
1aはハウジング、1bはハウジング、2は引っ掛け片、4はフック、11はビット、18はバッテリー、20は保持部、21はコードレスインパクトドライバー、27はスプリング、29は抜け止め部、30は枢軸、31はギヤ部、32は回転筒、35はナット収納部、36はボルト穴、38は段差、39は回転抑止片、44はボルト、45はナット、46は回転支持穴、47はリングギヤ部、48はスプリング受け、49はスプリング室、50は貫通穴、52は回転抑止片受け、53は端面、54は滑り止め、66はビット収納部、67はかん着部、68は首部、69はストッパ、70は平板、71は切り欠き、72,73は頭部、75はビット軸である。