JP3553556B2 - 水性顔料インキ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は水性インキに関し、特に着色剤としてカーボンブラックを含有する水性顔料インキ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来筆記具やインクジェットプリンター用の記録液として、黒色染料を含有する水性染料インキが主に用いられてきた。近年に至り、記録画像に耐光性や耐水性を持たせるためにカーボンブラックのような顔料を用いた水性顔料インキが注目されている。
【0003】
着色剤用として市販されているカーボンブラックは酸化処理されたpH7以下の酸性カーボンブラックであり、水分散性に劣る。
【0004】
そこで、水溶性アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂及びアミンのような分散剤の存在下で、各種分散機を使用して、カーボンブラックを水性媒体中に微細に分散、安定化させている。
【0005】
例えば、特開昭64−6074号及び同64−31881号公報には、pH5以下のカーボンブラックと分散剤(アニオン系界面活性剤や高分子分散剤)とを含む水性顔料インキが記載されている。また、特開平3−210373号公報には、酸性カーボンブラックと水溶性樹脂とを含むインクジェット用インキが記載されている。
【0006】
一般に、インクジェット記録ヘッドの微細な先端から安定に液滴を発生させたり、水性ボールペンの細いペン先でスムーズに筆記するためには、インクジェット記録ヘッドのオリフィスやボールペンチップの乾燥による固化などを防止することが必要である。
【0007】
しかしながら、上述の水性顔料インキのように分散剤を使用する場合には、分散剤を形成する樹脂がオリフィス等に付着した後再溶解されないで、目詰まり及び液滴の不吐出等が生じ得る。また、分散剤を含む水性顔料インキは粘調なので、長時間にわたる連続吐出及び高速印字を行う際にノズル先端までの経路で抵抗をおこし、吐出が不安定になりスムーズな記録が困難となる。更に、水性顔料インキでは、吐出安定性を確保するために顔料濃度を充分高めることができず、水性染料インキに比べて印字濃度が不十分であるという欠点を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、インクジェット記録に用いた場合に吐出安定性に優れ、そして細いペン先からもスムーズに筆記できる充分な濃度の水性顔料インキを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は(a)酸性カーボンブラックを得る工程;(b)前記酸性カーボンブラックを水中で次亜ハロゲン酸塩を用いて酸化する工程;及び(c)酸化して得た生成物を精製及び濃度調節する工程;を、包含する分散剤を含有しない水性顔料インキの製造方法を提供するものであり、そのことによって上記目的が達成される。次亜ハロゲン酸塩を用いて酸化された上記カーボンブラックは1.5mmol/g以上の表面活性水素含有量を有することが好ましい。
【0010】
表面活性水素含有量とはカーボンブラックの粒子の表面に存在する活性水素の量(mmol/g)を意味する。
【0011】
本発明の水性顔料インキに用いるカーボンブラックは高い表面活性水素含有量を有することが好ましい。このようなカーボンブラックは良好な水分散性を示すからである。
【0012】
高い表面活性水素含有量を有するカーボンブラックは活性水素を有する水酸基やカルボキシル基を表面に多く有するため、カーボンブラック自体の親水性が向上している。また、それと同時に表面積も大きくなり、あたかも酸性染料のごとき化学的性質をもつことによって水分散性が良好になると考えられる。
【0013】
カーボンブラックの表面活性水素含有量は1.5mmol/g以上であることが好ましく、2.0mmol/g以上であることがより好ましい。1.5mmol/g以下では水分散性が悪くなり、本発明の効果を達成し難い。5.0mmol/g以上としても良いが適正量に比べて効果に大きな差はなく、製造コストが高くなるため好ましくない。
【0014】
カーボンブラックの表面活性水素含有量はツアイゼル法により以下の如く測定される。即ちカーボンブラックにジアゾメタンのジエチルエーテル溶液を滴下させることによりカーボンブラック上の活性水素を全てメチル基に交換する。この処理をしたカーボンブラックに、比重1.7のヨウ化水素酸を加え、加熱してメチル基をヨウ化メチルとして気化させる。このヨウ化メチルの気体を硝酸銀溶液でトラップしてヨウ化メチル銀として沈澱させる。このヨウ化銀の重量より元のメチル基の量、即ち活性水素の量を測定する。
【0015】
カーボンブラックは、一般には水性顔料インキ全量に対して、0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。カーボンブラックの含有量が1重量%未満では印字又は筆記濃度が不十分となり、20重量%を越えるとカーボンブラックが凝集し易くなり長期保存中に沈澱が発生したり、吐出安定性が悪くなるからである。
【0016】
本発明の水性顔料インキにおけるカーボンブラックの平均粒径は200nm以下、特に150nm以下、さらに100nm以下であることが好ましい。カーボンブラックの平均粒径が200nmを上回ると顔料の沈降が起こり易くなるからである。
【0017】
本発明の水性顔料インキには、必要に応じて、水混和性有機溶媒を含有させ得る。尚、水、水混和性有機溶媒及びこれらの混合物を本明細書では、水性媒体と称する。
【0018】
水混和性有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール及びイソブチルアルコールのような炭素数1〜4のアルキルアルコール;アセトン及びジアセトンアルコールのようなケトンまたはケトンアルコール;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンのようなエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールのようなアルキレングリコール;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノエチルエーテルのような多価アルコールの低級アルキルエーテル;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのような低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;及び2−メチルピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドンのようなピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶媒の使用量は特に限定されないが、一般には3〜50重量%の範囲である。
【0019】
本発明の水性顔料インキは、水とカーボンブラックとを含有する水性顔料インキの製造方法において、(a)酸性カーボンブラックを得る工程と、(b)前記酸性カーボンブラックを水中で次亜ハロゲン酸塩で更に酸化する工程とを、包含する方法により製造されるのが好ましい。
【0020】
本明細書において、「酸性カーボンブラック」とは、その粒子の表面上にカルボキシル基を有するために酸性を示すカーボンブラックをいう。本発明の水性顔料インキには6以下、特に4以下のpHを有する酸性カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0021】
酸性カーボンブラックは、一般に、常套の酸化剤(例えば、硝酸、オゾン、過酸化水素及び窒素酸化物等)を使用する酸化法、又はプラズマ処理等の表面改質法によって、例えばファーネスブラックやチャンネルブラックのようなカラー用のカーボンブラックを適度に酸化することによって得られる。このような酸性カーボンブラックは、三菱化学社から、「MA100」、「2400B」及び「MA8」の商品名で、及びテグサ社から「カラー・ブラック(Color Black)FW200」の商品名で市販されている。
【0022】
得られた酸性カーボンブラックを更に酸化するために、本発明では次亜ハロゲン酸塩を用いる。具体的には次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウムが挙げられ、次亜塩素酸ナトリウムが反応性の点から特に好ましい。酸性カーボンブラックの酸化は、一般に、前述の酸性カーボンブラックと、カーボンブラックの重量に対して有効ハロゲン濃度で10〜30%の次亜ハロゲン酸塩(例えば次亜塩素酸ナトリウム)とを適量の水中に仕込み、5時間以上、好ましくは約10〜15時間、50℃以上、好ましくは95〜105℃で撹拌することにより行う。得られるカーボンブラックは1.5mmol/g以上の表面活性水素含有量を有する。
【0023】
次いで生成物を濾過し、副生塩をイオン交換水で洗浄することにより除去する。更に逆浸透膜や限外瀘過膜のような0.01μm以下の孔径を有する分離膜を用いて精製及び濃縮する。濃縮は、一般にカーボンブラックの含有率が水に対して10〜30重量%程度の濃厚な顔料分散液になるように行う。得られた顔料分散液をそのまま水性顔料インキとして用いうるが、その際には、カーボンブラックの濃度を1〜20重量%とするのが好ましい。濃縮された顔料分散液を更に乾燥して粉末状顔料としてよく、または、更に濃縮して顔料濃度50重量%程度の顔料ペーストとしてもよい。その後これらを水性媒体に分散して適当な濃度に調節することによって本発明の水性顔料インキが得られる。
【0024】
本発明の水性顔料インキは十分に脱塩精製されているため筆記具及びインクジェットプリンター等の腐食は生じない。さらに、カーボンブラックの表面のカルボキシル基の大半もしくは一部が、酸化剤として用いる次亜ハロゲン酸塩由来のアルカリ金属塩となっているので、特にpHを調節する必要はない。しかしながら、本発明の水性顔料インキに長期間にわたる良好な分散安定性を付与するためには通常の水性染料インキと同様に、微酸性〜アルカリ性(pH8〜10)にpHを調節するのが好ましい。
【0025】
使用し得るpH調節剤としては、モノ−、ジ−及びトリエタノールアミンのようなアルカノールアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムのようなアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
【0026】
さらに、本発明の水性顔料インキにはこの種のインキに通常使用される粘度調整剤、防黴剤及び防錆剤のような添加剤を適宜選択して適量使用することもできる。
【0027】
印字物または筆記文字に光沢などを与えるために、必要に応じて水溶性樹脂(例えば、ビニルピロリドンの低縮合物、水溶性アルキッド樹脂または水溶性アクリル樹脂)、アルコール可溶性樹脂(例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂またはケトン樹脂)を添加することもできる。水溶性又はアルコール可溶性樹脂は、水性顔料インキの吐出安定性等の観点より重量比で、カーボンブラックの1/10以下とするのがよい。
【0028】
本発明によれば、着色剤として一般に市販されている酸性カーボンブラックに比べて酸化の程度が非常に高く、水分散性にすぐれたカーボンブラックが提供される。このカーボンブラックでは表面の極性基(例えば、フェノール性水酸基やカルボキシル基)の量が著しく増加しており、同時に表面積が大きくなっている。
【0029】
従って、本発明の記録液は、特に顔料分散樹脂や界面活性剤等を加えないで、或いは機械的な分散処理をしなくても長期間の分散安定性に優れ、カーボンブラックがインキ貯蔵部で沈降することはない。
【0030】
また、本発明の水性顔料インキは、インクジェット方式による記録用や水性ボールペンなどの筆記用インキとして使用した場合も、記録・筆記特性が良好で高速度印字ができ、また、速記した場合も文字がかすれることはない。
【0031】
さらに、紙面に記録された文字や図形の堅牢性(耐光性や耐水性)に優れ、再度水に浸漬してもカーボンブラックは流れ出すことはなく耐水性があり、日光に暴露しても染料インキのように変退色するこがなく耐光性にすぐれる。
【0032】
更にまた、カーボンブラックを高濃度で含有させうるので印字物の濃度にすぐれ、水溶性黒色染料と同等もしくはそれ以上の光学濃度を提供する。
【0033】
【実施例】
実施例1
市販の酸性カーボンブラック「MA−100」(pH3.5)[三菱化学社製]300gを水1000mlに良く混合した後、これに次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で10時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2(東洋濾紙社製)で濾過し、顔料粒子が洩れるまで水洗した。この顔料ウエットケーキを水3000mlに再分散し、電導度0.2μsまで逆浸透膜で脱塩した。さらに、この顔料分散液(pH=8〜10)を、顔料濃度10重量%に濃縮した。
【0034】
得られた顔料分散液を酸処理(塩酸水で酸性とし再度膜精製)、濃縮、乾燥および微粉砕して、酸化カーボンブラックの粉末を得た。得られた酸化カーボンブラックの表面活性水素含有量を前記方法で測定した。結果は約2.8mmol/gであった。
【0035】
実施例2
実施例1で得られた顔料分散液50gに、エタノール5gと2−メチルピロリドン5gを加え、さらに水を加えて全量を100gとすることにより水性顔料インキを得た。このインキの粘度は2cps/25℃以下であり、カーボンブラックの平均粒径は150nmであった。なお、酸化カーボンブラックの平均粒径は、レーザー光拡散方式粒度分布測定機(大塚電子社製、商品名:LPA3000/3100)を用いて測定した。
【0036】
次に、このインキをインキジェット記録装置[商品名HG5130(エプソン社製)]にセットし印字したところ、インキの吐出は安定しており、速やかに印字され、印字物は、乾燥後水に浸漬しても顔料が流れることはなく、耐水性は良好であった。また、用いたノズルは一般的な水性染料インキ用であるがインキが固化することなく、数時間後の印字テストにおいても吐出不良はなかった。また、このインキを50℃で1ヵ月保存しても沈降物は発生せず、平均粒径、粘度も変らず、再度印字テストをしてもインキの吐出は安定しており、スムーズに印字できた。マクベス濃度計TR−927(コルモーゲン社製)でベタ印字部の光学濃度を測定したところ1.34であり、十分に満足できるものであった。
【0037】
実施例3
市販の酸性カーボンブラック「MA8」(pH3.5)[三菱化学社製]300gを水1000mlに良く混合た後に次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で8時間撹拌した。得られたスラリーを東洋濾紙No.2で濾過し、顔料粒子が洩れるまで水洗した。この顔料ウエットケーキを水3000mlに再分散し電導度0.2μsまで逆浸透膜で脱塩した。さらに、この顔料分散液を顔料濃度10重量%に濃縮した。
【0038】
得られた顔料分散液を酸処理(塩酸水で酸性とし再度膜精製)、濃縮、乾燥および微粉砕して、酸化カーボンブラックの粉末を得た。得られた酸化カーボンブラックの表面活性水素含有量を前記方法で測定した。結果は約2.5mmol/gであった。
【0039】
実施例4
実施例3で得られた顔料分散液50gに、エタノール5gと2−メチルピロリドン5gを加え、さらに水を加えて全量を100gにすることによって水性顔料インキを得た。このインキの粘度は1.8cps/25℃以下であり、平均粒径は100nmであった。次に、このインキを実施例2と同様にインキジェット記録装置にセットし印字したところ、インキの吐出は安定で速やかに印字され、印字物は、乾燥後水に浸漬しても顔料が流れることはなく、耐水性は良好であった。また、用いたノズルは、一般的な水性染料インキ用であるが、インキが固化することなく、数時間後の印字テストにおいても吐出不良はなかった。また、このインキを50℃で1ヵ月保存しても沈降物は発生せず、平均粒径、粘度も変らず、再度印字テストをしてもインキの吐出は安定しており、スムーズに印字できた。
【0040】
比較例1
酸性カーボンブラック「MA−100」(pH3.5)[三菱化学社製]5gに水85gとエタノール5gと2−メチルピロリドン5gを加えて全量を100gとし、充分攪拌することによって水性顔料インキを得た。しかしこの酸性カーボンブラックは全く水に分散されず数分の静置により上澄みが出来て印字不可能であった。また、この酸性カーボンブラックの活性水素含有量を測定したところ0.13mmol/gであった。
【0041】
比較例2
酸性カーボンブラック「MA−100」(pH3.5)[三菱化学社製]100gに「ジョンクリルJ−62」(ジョンソンポリマー社製のアクリル樹脂水溶液)100g、水300gを加えこれを横型ビーズミルで5時間分散し、平均粒径150nmまで分散した。
【0042】
この分散液25gにエタノール5gと2−メチルピロリドン5gを加え、水で全量100gとして水性顔料インキを得た。粘度4cps/25℃で分散安定性は良好であった。このインキをインクジェット記録装置にセットし印字したところ、インキの吐出安定性が徐々に悪くなり、印字濃度も薄くなった。また、一般的な水性染料インキ用ノズルでは、インキが乾燥して数時間後の印字テストにおいて更に濃度が下がった。そして、これを繰り返すと不吐出が発生して、全く印字できなくなった。
【0043】
比較例3
エタノール5g、2−メチルピロリドン5g及び水65gの代りに、ジエチレングリコール10g、2−メチルピロリドン10g及び水55gを加えること以外は比較例2と同様にして水性顔料インキを得た。このインキは印字濃度は薄いが繰り返し印字でき、ノズルで吐出不良は生じなかった。しかし、このインキを50℃で1ヵ月保存して後、平均粒径を測定したところ、200nmまで凝集しており、粘度も7cps/25℃に変化していた。再度攪拌分散して印字テストを試みたが、凝集して大きくなった顔料分散物がノズル部で詰まり印字できなかった。
【0044】
比較例4
酸化処理されていない塩基性カーボンブラック「45L」(三菱化学社製)10gを水30mlに分散し、有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ナトリウム5gを添加し、常温(20〜25℃)に24時間放置した。その後、上澄みを取り除き、沈降したカーボンブラックケーキをメタノールに分散し、濾過した。この操作を繰り返すことによって反応母液とメタノールを置換し、完全に反応液及び副生塩を除き、乾燥することによって酸化カーボンブラックの粉末を得た。
【0045】
得られた酸化カーボンブラック(pH8)5gに水85gとエタノール5gと2−メチルピロリドン5gを加え、全量を100gとし、充分撹拌することによって水性顔料インキを得た。このインキは静置によって上澄みができ、印字不可能であった。
【0046】
以下表1に別途総括して示すように、本発明の実施例1および3で得られた酸化カーボンブラック、市販のカーボンブラック「MA100」、「2400B」(三菱化学社製の酸性カーボンブラック)及び「45L」(三菱化学社製の塩基性カーボンブラック)、及び商品名「カラー・ブラック FW200」(デグサ社製の酸性カーボンブラック)について、表面活性水素含有量と水分散性とを比較した。本発明で得られた酸化カーボンブラックの活性水素含有量は、約2.0mmol/g以上であった。これに対して「MA100」、「2400B」及び「45L」では、それぞれ約 0.13mmol/g、約0.58mmol/g、約0.06mmol/g、「カラー・ブラックFW200」は約1.2mmol/gであった。また、水分散性として水親和性及び経時安定性を比較したところ、本発明で得られるカーボンブラックが速やかに微分散され、60日間静置しても安定であったのに対し、前記市販のカーボンブラックは、分散初期でも水面に浮遊していたり、また、時間の経過と共に分散状態が不安定化し沈降する程度のものであった。このように本発明の記録液におけるカーボンブラックの活性水素含有量は従来品に比べて著しく多く、これに比例するように水分散性が驚くほど優れていることが理解できる。
【0047】
また本発明の水性顔料インキに含まれるカーボンブラックの平均粒径は、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂等の水溶性の分散樹脂や分散剤のない単純な水系の状態で測定すると、分散樹脂や分散剤の存在下に各種分散機で強いシェアーを掛けて長時間分散しなくても約150nmという水性顔料インキに好ましい粒径にすることができた。また、2次凝集しているカーボンブラック(いわゆる液中凝集体)が表面の極性基と水と良くなじみ、均一に微分散されていることが認めたれた。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
インクジェット記録用に用いた場合に吐出安定性に優れ、そして細いペン先からもスムーズに筆記できる充分な濃度の水性顔料インキが提供された。
Claims (4)
- (a)酸性カーボンブラックを得る工程;
(b)前記酸性カーボンブラックを水中で次亜ハロゲン酸塩を用いて酸化する工程;及び
(c)酸化して得た生成物を精製及び濃度調節する工程;
を、包含する分散剤を含有しない水性顔料インキの製造方法。 - 前記精製が、水洗処理、及び/又は分離膜を用いる脱塩処理を包含する請求項1記載の方法。
- 前記分離膜が逆浸透膜又は限外濾過膜である請求項2記載の方法。
- 前記酸性カーボンブラックのpH値が3.5〜6である請求項1記載の方法。
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JP2000017185A (ja) | カーボンブラック水性分散液及びこれを用いた水性インキ |
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