JP3553149B2 - 強度と均一加熱性に優れ電気錫めっきを施した軽量2ピースdi缶 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、鋼製容器、特に絞りとしごき加工により缶底と缶胴が一体に成形される電気錫めっきを施した2ピース缶(以下DI缶)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属容器を缶体という観点から分類すると、天蓋、地蓋、胴から成る3ピース缶と、缶胴と地蓋が一体となった2ピース缶に大きく分類される。
2ピースDI缶を形成する加工はDI加工と呼ばれ、2回の絞り加工(Drawing)と2〜 3回のしごき加工(Ironing)によって成形され、缶胴は原板厚みの1/2〜1/3程度にまで加工される。そのため、使用される素材には高度の加工性が要求され、現在アルミニウム板と、鋼板に錫めっきしたぶりきが用いられている。
DI缶は、ビール、炭酸飲料等を充填した飲料缶および制汗剤、シェービングクリーム等を充填したエアゾール缶などがあり、非常に生活に密着した容器で年々製造缶数は増加している。
【0003】
3ピース缶は、炭酸飲料以外の真空巻き締めされる(非内圧)飲料に主として用いられてきたが、缶胴接合部(溶接あるいは接着)での巻き締めトラブルが起り易いこと、使用板厚が厚いため缶重量が重く、缶コスト面での競争力が弱い点に問題がある。
従って、近年3ピース缶に充填されていた内容物が、除々に2ピース缶に充填される傾向にある。
【0004】
3ピース缶に充填されていた内容物が2ピース缶に充填される場合、大きく分けて二つの新しい問題を提起する。
第一の問題としては、缶強度の問題である。非内圧飲料あるいは非内圧食品(3ピース缶)では、缶強度は缶そのものの強度であったがビール、炭酸飲料等を充填する2ピース缶の場合、缶内圧により缶強度を保持しているため、缶そのものの強度は非常に低いことである。従って、缶強度面での対策が必要となり、2ピース缶強度を強くするか、内容物充填時に窒素ガスなどを封入し缶内圧を付与する方策が考えられる。
【0005】
第二の問題は、ビール・炭酸飲料缶等と異なり、多くの加熱・冷却工程が必要とされる点にある。例えば、天然食品を内容物とする場合、内容物充填後に加熱殺菌処理(通常レトルト処理と呼ばれる)が必要であり、その温度は高いものでは130℃近くまで昇温される。
このレトルト処理を行う場合、内容物を均一に短時間で加熱できることが重要である(例えば、上島正八郎著、昭和61年、缶詰技術研究会発行、293〜332頁参照)。
2ピース缶の場合、前述したように、缶胴部の板厚は缶底に比べて極端に薄いことを特徴としており、缶底〜缶胴間の板厚差が大きく、均一加熱に適していない問題点がある。また、急速冷却性に問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非内圧飲料あるいは非内圧食品を2ピースDI缶に充填する場合に発生する缶強度と加熱・冷却時の不均一性問題を解決し、経済的に競争力を十分確保する電気錫めっきを施した2ピースDI缶を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、経済性を最重視し、鋼板素材と缶体、さらには充填法との組合わせにて最も合理的な缶のあり方を提案するものであり、その要旨は、
(1)CとNの含有量が(C+N)で0.02%以下、かつ厚みが0.22mm以下の高純度鋼板を素材とし、缶体の底部板厚と側壁最薄肉部板厚との差が0.15mm以下であることを特徴とする強度と均一加熱性に優れ電気錫めっきを施した軽量2ピースDI缶。および、
(2)缶底部における鋼板が、硬度(HR30T換算)74以上、結晶粒の長軸と短軸の比率が4.0以上であることを特徴とする前項(1)記載の強度と均一加熱性に優れ電気錫めっきを施した軽量2ピースDI缶にある。
【0008】
以下本発明の内容につき詳述する。
従来の2ピース缶の場合、缶強度の保持のため0.24mm以上の比較的厚めの素材を使用していた。本発明の場合、経済性重視のため、素材板厚は0.22mm以下、望ましくは0.14〜0.20mmの鋼板を使用する。0.14mmは窒素充填を行う場合の缶底耐圧強度面での下限であり、上限の0.22mmは経済性面での制約である。
【0009】
真空巻き締めを行う場合、缶内は減圧になるため缶強度そのものが必要であるが、天然食品あるいは非炭酸飲料の場合でも、窒素充填を行えば缶強度が発現する。従って、窒素充填を前提として考えれば、天然食品あるいは非炭酸飲料を肉厚の薄い2ピース缶に充填することが可能になる。
窒素により発現される缶内圧レベルは、缶そのものが外力に対する抵抗力を有すると共に、内圧にも抗する必要あり、そのバランスを見て決定される必要がある。内圧を2kg/cm2とすれば、0.14mm〜0.16mm程度の板厚でも実用的な缶強度を得ることができる。
【0010】
次に、(C+N)含有量を0.02%以下とした理由は、鋼板の加工性を向上させるためである。一般に(C+N)含有量が低減すると共に鋼板の加工性は向上する傾向にあるが0.02%以下、望ましくは0.01%以下に限定することにより著しい加工性の向上が期待できる。さらに、最もこの効果が期待出来る条件は、(C+N)含有量が0.006%以下の場合であり、これで冷間圧延のままでもDI成形が可能となる。
近年の製鋼技術の進歩により、(C+N)含有量が0.006%以下の鋼板を得ることは比較的容易であり、従来の焼鈍・調圧工程が省略可能となれば、最も経済的な素材をベースとした缶体を得ることができる。
【0011】
(C+N)含有量の低い鋼を、熱間圧延後、70%以上の圧下率で圧延すると、硬度(HR30T換算)74以上、結晶粒の長軸と短軸の比率が4.0以上である高強度の鋼板を得ることができる。この鋼板は、引っ張り強さ70kg/mm2以上の強度を有し、より薄い板厚でより高い缶内圧に耐えることができる。従って、より経済的に優れた缶の提供が可能である。
【0012】
また、板厚面からの缶体形状の問題であるが、缶体の底部板厚(t0)と側壁最薄肉部板厚(tmin)の差(t0−tmin)が0.15mm以下、更に望ましくは0.13mm以下の範囲にあることが重要である。一般家庭で冷蔵庫で冷却する場合、ある程度十分な時間をかけることが可能であり比較的問題は少ないが、内容物充填後のレトルト処理は工業的規模の量産が必要であり、短時間で均一な処理が必要とされる。従って、缶体を構成する鋼板板厚は薄くて均一なことが要請される。
【0013】
缶体を構成する鋼板板厚を除々に薄くしていった場合、内容物の加熱あるいは冷却速度が速くなることは当然期待される所であるが、窒素封入による缶内圧に対する強度が不足してくる点は前述の通りである。通常、側壁は円形断面を有し缶内圧に対して優れた耐圧強度を示しているが、缶底部は缶内圧に抗しきれず外部に膨らみ易い弱点を有している。従って、缶底部はある程度の厚みを必要とし側壁より厚めの板厚を必要とされる。
【0014】
缶底部と側壁の板厚差が大きすぎる場合、内容物の加熱あるいは冷却速度に差が生じるため、その程度を出来るだけ小さくする必要がある。その限界を調査した結果、底部板厚(t0)と側壁最薄肉部板厚(tmin)の差(t0−tmin)が0.15mm以下、更にその効果を安定して得るには望ましくは0.13mm以下の範囲にあれば、実用的に均一加熱が可能であることを知見した。
この値は、缶強度と均一加熱・均一冷却のバランスも考慮して決定された値である。
【0015】
【実施例】
以下、実施例にて詳細に説明する。
[実施例1]
C含有量0.0010%、N含有量0.0028%の鋼を溶製し、2.5mmの板厚にまで熱間圧延後、酸洗によりスケールを除去し、0.26mmの板厚にまで冷間圧延した。720℃にて最結晶焼鈍を行い、十分軟化させた後、31%の圧下率で2回目の冷間圧延を行い、C方向(板幅方向)の引っ張り強さ52kg/mm2の鋼板(0.18mm)を製造した。
【0016】
この鋼板の表裏に付着量2.8g/m2の電気錫めっきを行った後、ブランク寸法150mmより出発し、1段目の絞り加工にて85mmφのカップとし、2段目の絞り加工により65mmφのカップに成形した後、合計3回のしごき加工により側壁の厚みを0.065mmにまで加工した。側壁のしごき加工後、缶底形状を図1に示すような形状に加工することにより、内圧に耐え、缶同士を積み重ね可能な缶体とした。
【0017】
この缶を、脱脂・化成処理後、外面塗装および内面塗装し実用品質に関する性能試験を行った。
実用試験として、缶体の耐内圧強度、垂直方向での座屈強度の測定を行った所、耐内圧強度は7.5kg/cm2以上の強度を示し、座屈強度は100kg以上あり、十分な座屈強度を有することが確認された。
【0018】
一方、温度を130℃に設定した加熱炉中に水道水を充填した缶をいれ、時間−温度曲線を缶体中心部と缶底近傍部にて測定し、温度差の最大値を求め、均一加熱性の尺度とした。本実施例の缶体では、最大温度差は6℃以下であり、良好な均一加熱性を示すものであった。
【0019】
[実施例2]
C含有量0.0006%、N含有量0.0026%、B含有量0.0006%の鋼を溶製し、2.3mmの板厚にまで熱間圧延後、酸洗によりスケールを除去し、0.18mmの板厚にまで冷間圧延した。この鋼板は、硬度(HR30T換算)77、結晶粒の長軸と短軸の比率は顕微鏡での正確な測定は困難であるが、理論的には約160程度に成っていると推定される。
又、引っ張り強さは78〜80kg/mm2とかなり高強度の鋼板であった。
【0020】
この鋼板を脱脂・酸洗後、1表裏に付着量2.8g/m2の電気錫めっきを行い、ブランク寸法150mmより出発し、1段目の絞り加工にて85mmφのカップとし、2段目の絞り加工により65mmφのカップに成形した後、合計3回のしごき加工により側壁の厚みを0.065mmにまで加工した。側壁のしごき加工後、缶底形状を図1に示すような形状に加工することにより、内圧に耐え、缶同士を積み重ね可能な缶体とした。
【0021】
この缶を、脱脂・化成処理後、外面塗装および内面塗装し実用品質に関する性能試験を行った。
実用試験として、缶体の耐内圧強度、垂直方向での座屈強度の測定を行った所、耐内圧強度は8.0kg/cm2以上の強度を示し、空缶座屈強度は100kg以上であり、十分な実用強度を有することが確認された。
実施例1と同様の均一加熱性試験を行った所、本実施例の缶体でも、最大温度差は6℃以下であり、良好な均一加熱性を示すものであった。
【0022】
[比較例1]
C含有量0.056%、N含有量0.0032%の鋼を溶製し、2.5mmの板厚にまで熱間圧延後、酸洗によりスケールを除去し、0.26mmの板厚にまで冷間圧延した。680℃にて再結晶焼鈍を行い、十分軟化させた後、1.3%の圧下率で調質圧延を行い、C方向の引張り強さ40kg/mm2の鋼板を製造した。
【0023】
この鋼板の表裏に付着量2.8g/m2の電気錫めっきを行った後、ブランク寸法139mmより出発し、1段目の絞り加工にて85mmφのカップとし、2段目の絞り加工により65mmφのカップに成形した後、合計3回のしごき加工により側壁の厚みを0.080mmにまで加工した。側壁のしごき加工後、缶底形状を図1に示すような形状に加工することにより、内圧に耐え、缶同士を積み重ね可能な缶体とした。
【0024】
この缶を、脱脂・化成処理後、外面塗装および内面塗装し実用品質に関する性能試験を行った。
実用試験として、缶体の耐内圧強度、垂直方向での座屈強度の測定を行った所、耐内圧強度は7.5kg/cm2以上の強度を示し、空缶座屈強度は100kg以上あり、十分な座屈強度を有することが確認された。
加熱炉中での均一試験では、缶体中心部と缶底付近にて10℃以上の温度差を生じ、均一加熱性に劣るものであった。
【0025】
[比較例2]
C含有量0.063%、N含有量0.0035%の鋼を溶製し、2.3mmの板厚にまで熱間圧延後、酸洗によりスケールを除去し、0.18mmの板厚にまで冷間圧延した。この鋼板の引張り強さは93〜96kg/mm2とかなり高強度の鋼板であった。
この鋼板を脱脂・酸洗後、表裏に付着量2.8g/m2の電気錫めっきを行い、ブランク寸法150mmより出発し、1段目の絞り加工にて85mmφのカップとし、2段目の絞り加工により65mmφのカップに成形した後、合計3回のしごき加工により側壁の厚みを0.065mmにまで加工した。
側壁のしごき加工後、実施例1と同様に缶底と缶上端部フランジ加工を行った所、缶底部では“しわ”が多発し、フランジ部では“割れ”が多発し、正常な缶を作成出来なかった。
【0026】
【発明の効果】
本発明の缶体は、極薄素材を使用して、缶体の軽量化をはかり経済性の極限を追求したものとなっている。更に、缶体に置ける板厚差を最小にすることにより、レトルト処理等における不均一加熱問題を解消し、固形分等を含む非内圧食品を軽量2ピース缶に充填可能とする貴重な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】成形缶の底部形状を示す図である。
Claims (2)
- CとNの含有量が(C+N)で0.02%以下、かつ厚みが0.22mm以下の高純度鋼板を素材とし、缶体の底部板厚と側壁最薄肉部板厚との差が0.15mm以下であることを特徴とする強度と均一加熱性に優れ電気錫めっきを施した軽量2ピースDI缶。
- 缶底部における鋼板が、硬度(HR30T換算)74以上、結晶粒の長軸と短軸の比率が4.0以上であることを特徴とする請求項1記載の強度と均一加熱性に優れ電気錫めっきを施した軽量2ピースDI缶。
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