JP3552587B2 - 複合材料及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低熱膨張性と高熱伝導性・高電気伝導性を有する銅複合材料及びそれを用いた樹脂封止型半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂封止型パッケージは、リードフレームと半導体素子の端子がボンディングワイヤにより接続され、これを樹脂で封止する構造になっている。半導体素子は年々集積度や演算速度が増加し、それに伴い発熱量も増加しており、発生する熱を効率よく放散させるために搭載される放熱板の性能が重要となっている。放熱板を構成する放熱材料として高熱伝導性のCuあるいは軽量性のAl等が使用されているが、半導体素子,リードフレーム,封止樹脂などパッケージ構成材料との熱膨張係数の大きなミスマッチは、熱応力の蓄積からくる樹脂あるいは素子のクラックにつながることから、特に熱膨張係数の点で封止材の樹脂との整合性が良く、熱伝導率の大きな放熱材料が望まれている。
【0003】
現在、半導体封止樹脂はエポキシ樹脂系が主流となっており、熱膨張係数が
10×10−6〜20×10−6/℃のものが開発されている。樹脂の熱膨張係数は溶融シリカに代表される低熱膨張性のフィラーの添加によって調整されるが、フィラーの使用はコストを上げることや他のパッケージ構成材料との整合性を考慮して13×10−6〜18×10−6/℃程度の熱膨張係数を有する樹脂が多用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低熱膨張・高熱伝導性及び易加工性を有し、かつパッケージ封止樹脂との整合性に優れた銅複合材料及びそれを用いた半導体装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属と該金属よりも熱膨張係数が小さい無機化合物粒子とを有し、前記化合物粒子は断面の面積率が前記粒子の全体の50%以下が互いに連なった複雑形状の塊となって分散していることを特徴とする複合材料にある。
【0006】
本発明は、金属と該金属よりも熱膨張係数が小さい無機化合物粒子とを有し、前記化合物粒子は互いに連なった複雑形状の塊が100μm平方内に10個以下であり、残りの前記化合物粒子は単独で存在して分散していることを特徴とする複合材料にある。
【0007】
本発明は、金属と該金属よりも熱膨張係数が小さい5〜20体積%の無機化合物粒子とを有し、前記化合物粒子はヴィッカース硬さが300以下であることを特徴とする複合材料にある。
【0008】
本発明は、金属と該金属よりも熱膨張係数が小さい5〜20体積%の無機化合物粒子とを有し、20℃から300℃における熱膨張係数が13×10−6〜17×10−6/℃、熱伝導率が270〜375W/m・Kであり、また導電率が60〜85%IACSであることを特徴とする銅複合材料にある。
【0009】
本発明は、金属と該金属よりも熱膨張係数が小さい無機化合物粒子とを有し、前記化合物粒子は10%以下が互いに連なり塊となって分散しており、前記塊は塑性加工によって伸ばされた方向に延びていることを特徴とする複合材料にある。
【0010】
本発明は、銅と酸化銅粒子とを有し、前記酸化銅粒子は前記粒子の全体の10%以下が互いに連なった複雑形状の塊となって分散していることを特徴とする複合材料にある。
【0011】
本発明は、第一酸化銅(Cu2O)を5〜20体積%含み、残部が銅(Cu) と不可避的不純物からなり、前記Cu2O 相及びCu相が分散した組織を有し、室温から300℃における熱膨張係数が13×10−6〜17×10−6/℃,熱伝導率が270〜375W/m・Kであり、また導電率が60〜85%IACSであることを特徴とする。
【0012】
本発明は、前述に記載の複合材料よりなることを特徴とする半導体装置用放熱板にある。また、その表面にNiめっき層を有することを特徴とする半導体装置用放熱板にある。
【0013】
本発明は、半導体素子が搭載される電極板と、前記半導体素子と電気的に接合されるリード電極と、前記半導体素子、前記電極板及び前記リード電極が搭載される放熱板と、前記電極板及び前記リード電極と前記放熱板との間に絶縁層を有する構造体を樹脂封止するとともに、前記リード電極の一部及び前記放熱板の少なくとも前記素子の接合面に対して反対面が開放されている半導体装置において、前記放熱板は、前述に記載の放熱板よりなることを特徴とする。
【0014】
即ち、本発明に係る複合材料は金属として電気導電性の高いAu,Cu,Alが用いられ、特にCuは高融点で高強度を有する点で最も優れている。また、複合材を構成する粒子として、ベースの金属に対して極端に硬さの違う従来のSiC,Al2O3等の化合物ではなく、比較的軟かい粒子で焼結後に安定で、20〜150℃の範囲での平均熱膨張係数が好ましくは5.0×10−6/℃ 以下、より好ましくは3.5×10−6/℃ 以下で、ヴィッカース硬さが300以下のものが好ましい。このように粒子として軟かいものを用いることによって焼結後の熱間,冷間による高い塑性加工性が得られ、特にこれらの圧延が可能になることから高い生産性が得られるとともに純銅と同様の薄板を得ることができる。複合化粒子として第一酸化銅(Cu2O ),酸化錫,酸化鉛,酸化ニッケル等が考えられる。しかし、特に熱膨張係数が最も小さく軟らかい第一酸化銅(Cu2O)が好ましい。
更に、本発明の複合材料はSiC、Al2O3,SiO2 等のヴィッカース硬さが1000以上の硬い平均粒径3μm以下の微細なセラミックス粒子を5体積%以下含有させてより強化させるのが好ましい。
【0015】
本発明における放熱板は、焼結後又はその後の圧延等による加工後に型プレスによる塑性加工によって最終形状に形成することができる。
【0016】
本発明に係る複合材料の製造方法は、前述の複合化合粒子の一例として第一酸化銅(Cu2O ),金属の一例として銅(Cu)粉とを有する混合粉末をプレス成形する工程と、800℃〜1050℃で焼結する工程と、冷間もしくは熱間の少なくともいずれか一方で塑性加工する工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る銅複合材料としての製造方法は、第二酸化銅(CuO)を2.7〜10.8体積%含み、残部が銅(Cu)と不可避的不純物からなる混合粉末をプレス成形する工程と、800℃〜1050℃で成形固化とともにCuOをCuと反応させCu2O に変態させる焼結工程と、冷間もしくは熱間の少なくともいずれか一方で塑性加工する工程と、その後の焼鈍工程を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係る塑性加工法としては、冷間もしくは熱間での圧延,鍛造,プレス,押出し等による板材加工あるいは型を用いることによる所望形状への成形加工が可能である。
【0019】
本発明に係る銅複合材料は、17.6×10−6/℃ の熱膨張係数と391W/m・Kの高い熱伝導率を有するCuと12W/m・Kの熱伝導率と2.7×10−6/℃の低熱膨張率を有するCu2O を複合化させた材料であり、樹脂封止型半導体パッケージの放熱板に適用される焼結体組成として、Cu−5〜20体積%
Cu2O の組成範囲で選択され、室温から300℃における熱膨張係数が13×10−6〜17×10−6/℃であり、また熱伝導率が270〜375W/m・Kを有することができる。Cu2O 含有量は、5%以上で放熱板に要求される熱膨張係数が得られ、20体積%以下で十分な熱伝導性や構造体としての強度が得られるためである。
【0020】
本発明において、複合材料は基本的に粉末冶金法によって得られるが、銅複合材料においては、Cu粉末とCu2O 粉末もしくはCuO粉末を原料粉として所定比率で混合し、金型で冷間プレスした後、焼結して作製する。そして、必要に応じて冷間あるいは熱間の少なくともいずれか一方で塑性加工が施される。
【0021】
原料粉の混合は、Vミキサー,ポットミルあるいはメカニカルアロイング等によって行われるが、原料粉末の粒径は、プレス成形性や焼結後のCu2O の分散性に影響を及ぼすのでCu粉末は100μm以下、Cu2O 及びCuO粉末の粒径は10μm以下、特に1〜2μmが好ましい。
【0022】
次に、混合粉末は金型を用い、400〜1000kg/cm2 の圧力で冷間プレス成形されるが、Cu2O 含有量の増加につれて圧力を高めることが望ましい。
【0023】
混合粉末の予備成形体は、アルゴンガス雰囲気中で常圧焼結,HIPあるいはホットプレスにより加圧焼結されるが、800℃〜1050℃で3時間程度が好ましく、Cu2O 含有量の増加につれて温度が高められる。焼結温度はベース金属によって異なるが、特にCuにおいては800℃以下では、密度の高い焼結体が得られず、1050℃以上ではCuとCu2O の共晶反応により部分溶解する危険性があるために好ましくなく、900℃〜1000℃が好適である。
【0024】
本発明の銅複合材料は、構成するCu及びCu2O の硬さが低く、延性に富むため、圧延,鍛造押出しなどの冷間あるいは熱間加工が可能であり、焼結後に必要に応じて施される。加工を付与することによって、材料に熱伝導の異方性が発現するが、強度向上や一定方向への伝熱が必要な用途に対して有効である。
【0025】
本発明においては、原料粉にCuOを用い、Cu粉末と混合・プレス成形した後に焼結過程でCuを内部酸化させて、最終的にCu相とCu2O 相が分散した組織を有する焼結体とすることができる。すなわち、CuOはCuと共存する場合、高温においては(1)式によりCu2O に変態する方が熱的に安定であることを利用している。
【0026】
2Cu+CuO → Cu+Cu2O …(1)
(1)式が平衡に到達するためには所定の時間を要するが、例えば焼結温度が900℃の場合には、3時間程度で十分である。
【0027】
焼結体のCu2O の粒径は密度,強度あるいは塑性加工性に影響するので微細であることが好ましい。しかしながら、粒径は粉末の混合方法に強く影響され、混合エネルギーが大きい方が粉同士の凝集が少なく、焼結後に微細なCu2O 相が得られる。
【0028】
本発明において、焼結後のCu2O 相の粒径は混合エネルギーの小さいVミキサーではCu2O 相の50体積%以下が粒径50〜200μmで、残部が50
μm以下とし、スチールボールを入れたポットミルでは50μm以下、そして、最も混合エネルギーの大きいメカニカルアロイングでは10μm以下と規定される。粒径が200μm以上では、気孔率が増加し、塑性加工性が損なわれ、その量がCu2O 相の50体積%以上になると、熱伝導特性のばらつきの増加を招き、半導体装置の放熱板に不適となる。好ましい組織は、50μm以下のCu2O 相がCu相と均一に分散した組織である。Cu2O 相は10μm以下がより好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
原料粉として、75μm以下の電解Cu粉末と粒径1〜2μmのCu2O 粉末を用いた。Cu粉末とCu2O 粉末を表1に示す比率で1400g調合した後、スチールボールを入れた乾式のポットミル中で10時間以上混合した。混合粉末を直径150mmの金型に注入し、Cu2O 含有量に応じて400〜1000kg/cm2 の圧力で冷間プレスして直径150mm×高さ15〜17mmの予備成形体を得た。その後、予備成形体をアルゴンガス雰囲気中で焼結させて化学分析,組織観察,熱膨張係数,熱伝導率,導電率及びヴィッカース硬さの測定に供した。なお、焼結温度はCu2O 含有量に応じて900℃〜1000℃の間で変化させ、各温度で3時間保持した。熱膨張係数は室温から300℃の温度範囲でTMA
(Thermal Mechanical Analysis)装置を用いて行い、熱伝導率はレーザーフラッシュ法,導電率はシグマテスターを用い測定した。その結果を表1に併記した。また、得られた試料No.3焼結成形体のミクロ組織を図1に示す。
【0030】
焼結体組成は化学分析の結果、配合組成と一致していた。また、熱膨張係数,熱伝導率及び導電率は、表1より明らかなように、CuとCu2O の組成比を調整することによって、広範囲に亘って変化しており、放熱板に求められる熱的特性にコントロールできることがわかった。
【0031】
【表1】
【0032】
一方、ミクロ組織は図1(200倍)より明らかなように、Cu2O は混合工程において凝集,焼結工程において肥大成長するが、粒径は50μm以下であり、Cu相とCu2O 相が均一に分散した緻密な組織となっている。なお、写真中の白い部分がCu相,黒い部分がCu2O 相である。Cu2O 粒子のほとんどが10μm以下の粒径であり、それ以上のものは複数個のCu2O 粒子が連なり、100μm平方当り10個以下の15体積%である。硬さ測定の結果、Cu相はHv75〜80,Cu2O がHv210〜230の硬さであった。また、機械加工性を旋盤及びドリル加工で評価した結果、加工性は非常に良好であり、形状付与が容易であることがわかった。
【0033】
次いで、得られた焼結体を室温で3mmの厚さまでプレスし、組織観察した。鍛造材は、側面に多少の耳割れが観察されたが、それ以外では割れが観察されず健全であり、本発明の銅複合材料は、塑性加工性に優れることが判明した。
【0034】
図2は、鍛造材の鍛伸方向に平行な面のミクロ組織(200倍)を示す。 Cu2O 相は、変形して鍛伸方向に配向する傾向が認められるが、Cu相、 Cu2O 相及びその境界にはクラック等の欠陥は認められない。Cu2O 粒子は95%が20μm以下の粒径である。それ以上の粒径のものは複数個連らなったものである。
【0035】
(実施例2)
粉末の混合をVミキサーで行った以外は、実施例1と同一の条件でNo.3 (Cu−15体積%Cu2O )と同一組成の焼結体を作成し、実施例1と同様に組織観察,熱膨張係数及び熱伝導率の測定に供した。
【0036】
図3にCu−15体積%Cu2O 焼結体のミクロ組織(200倍)を示す。写真から明らかなように、サイズが大きく異なるCu2O が混在した組織となっている。大きなサイズのCu2O 粒子は、Vミキサーによる混合中にCu2O 粒子同士が凝集して生成したものである。熱膨張係数及び熱伝導率の値は、Cu及びCu2O がそれぞれ均一に分散した同一組成の焼結体と明らかな差が認められなかったが、測定場所によるばらつきが若干大きくなる傾向が認められた。1つ大きな塊があるが、50μm以下がほとんどである。分散が不足したものと思われる。他の細かい粒子は10μm以下の粒径である。
【0037】
(実施例3)
原料粉として、74μm以下の電解Cu粉末と粒径1〜2μmのCu2O 粉末を用い、Cu−15体積%Cu2O の組成比で300g調合した後、直径8mmの鋼球を入れた直径120mmの遊星ボールミル容器中で25時間メカニカルアロイング(MA)した。その後、混合粉末を直径80mmの金型に注入し、1000kg/cm2 の圧力で冷間プレスして予備成形体を得た。その後、予備成形体をアルゴンガス雰囲気中で800℃×2時間の焼結を行い、実施例1と同様に組織観察,熱膨張係数及び熱伝導率の測定,酸化物X線回折に供した。
【0038】
ミクロ組織は実施例1あるいは2に比べて、Cu2O 粒子が微細であり、粒径10μm以下のCu2O が均一分散していた。組織の微細化は、強度の向上や冷間圧延性の改善に好適である。
【0039】
(実施例4)
原料粉として、74μm以下の電解Cu粉末と粒径1〜2μmのCuO粉末を用いた。Cu粉末とCuO粉末を表2に示す比率で1400g調合した後、スチールボールを入れた乾式のポットミル中で10時間以上混合した。混合粉末を直径150mmの金型に注入し、CuO含有量に応じて400〜1000kg/cm2 の圧力で冷間プレスして予備成形体を得た。予備成形体をアルゴンガス雰囲気中で焼結させた後、酸化物X線回折,組織観察,熱膨張係数及び熱伝導率の測定に供した。なお、焼結温度はCuO含有量に応じて900℃〜1000℃の間で変化させ、各温度で3時間保持した。熱膨張係数は室温から300℃の温度範囲でTMA(Thermal Mechanical Analysis)装置を用いて行い、熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定した。その結果を表2に併記した。
【0040】
【表2】
【0041】
焼結体について、X線回折により酸化物の同定を行った結果、検出された銅酸化物の回折ピークはCu2O のみであり、焼結中にCuOからCu2O への変態が完全になされたことを確認した。図4に得られた試料No.7のミクロ組織 (200倍)を示すが、実施例1の同一組成のものと同様の組織を呈しており、Cu2O 相はCuとCuOの酸化反応により生成したCu2O とCuOが分解して生成したCu2O からなっている。Cu2O 粒子は5%複数個の粒子が連なったものがあり、他は20μm以下の粒子からなる。
【0042】
次いで、得られた焼結体を900℃で2mmの厚さに熱間圧延及び酸洗後、30μmの厚さまで冷間圧延して塑性加工性を検討した。Cu相中にそれよりも硬さの高いCu2O 相が分散しているために、純Cuに比べて変形抵抗が大きくなり、圧延性が劣る傾向が認められた。組織観察の結果、Cu相,Cu2O 相及びその境界にはクラック等の欠陥は認められず、本発明の銅複合材料は、塑性加工性により薄板化が可能であることが判明した。
【0043】
(実施例5)
実施例1〜4に記載の本発明の銅複合材料を放熱板として、半導体素子が樹脂封止される半導体装置に適用した実施例を述べる。
【0044】
一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子を複数個搭載し、樹脂封止した半導体装置への適用例を示す。図5は本発明による半導体装置の断面構成図を示す。パワー半導体素子11,12がはんだ接着層14を介してCu製のリードフレームの電極板部13の一方の主面上に固着され搭載される。電極板部13の他方の主面すなわち上記部品が搭載された主面の裏面は、絶縁層2を介して実施例1〜4に記載の本発明の係る全表面にNiめっきされたCu−Cu2O 複合材からなる放熱板6に接着される。次いで、パワー半導体素子11,12は、アルミニウムのワイヤボンデイング部15によりリード電極部4,5と電気的に接続され、リード電極部4,5の一部が端子として外部に導出され、主回路を構成する。さらに主回路はエポキシ系樹脂からなる樹脂層1によって被覆され構造体をなし、リード電極部4,5の端子部、並びに放熱板6の裏面を露出する形で構造体全体がエポキシ系樹脂からなる樹脂層3により一体モールド封止される。
【0045】
本実施例では、樹脂層3の材料としてエポキシ系樹脂材料を用いたが、例えばポリフェニレン系樹脂など熱可塑性樹脂であってもよい。また、樹脂層2には良好な熱伝導性を得るために、アルミナ,マグネシア,シリカなどの無機材料フィラーが含まれることが望ましい。
【0046】
放熱板は、モールド樹脂の熱膨張係数を考慮して、室温から300℃における熱膨張係数が14×10−6〜17×10−6/℃の範囲となるように、Cu−5〜20体積%Cu2O の範囲内で組成を変えて作製し、機械加工及びNiめっき処理を施して供した。
【0047】
上記のようにして実装された半導体装置について、反りやモールド樹脂あるいは素子のクラックの有無を観察した。その結果、モールド樹脂と放熱板との熱膨張差が0.5×10−6/℃以下となるように、放熱板のCu2O量を調節することで、問題がなく実装できることがわかった。
【0048】
本実施例ではパワー半導体素子11として、IGBT素子を用いた半導体装置の例について示したが、例えばMOS系トランジスタ,ダイオードなど他の種類の半導体素子であってもよい。さらに、これら複数素子の組み合わせによる特定の回路、例えばインバータ用パワーモジュールなどであっても良い。また回路中に抵抗やコンデンサなどの受動素子が含まれていても良い。これら、電気素子または電子素子はプリント基板のような回路基板上に搭載されていても良い。
【0049】
本実施例では、放熱板がモールド樹脂の外部に露出したタイプについて述べたが、放熱板内蔵型のパッケージであっても良い。
【0050】
【発明の効果】
本発明の複合材料は、低熱膨張で高熱伝導性を有するとともに高い塑性加工性を有することから製造工程が短縮され多量生産が可能となる顕著な効果を有する。
【0051】
また、本発明の複合材料は、特に高熱伝導性を有するCu相と低熱膨張性のCu2O 相からなる混合組織を有するために、両方の特性を兼ね備えている。また、本発明の複合材料は、Cu及びCu2O 両者の含有量を調整することにより、低熱膨張係数で高熱伝導率を得ることができる。本発明の用途として、半導体装置に搭載される放熱板として広い範囲にわたって適用が可能である。
【0052】
また、本発明材料の特性から鑑みて、半導体装置分野以外に熱変形の抑制や熱放散が厳しく要求される精密機械,電子部品などへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る試料No.3(Cu−15体積%Cu2O )焼結体のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真。
【図2】本発明の実施例1に係るCu−15体積%Cu2O の鍛造材の鍛伸方向に平行な面のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真。
【図3】本発明の実施例2に係るCu−15体積%Cu2O 焼結体のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真。
【図4】本発明の実施例4に係る試料No.7(Cu−15体積%Cu2O )焼結体のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真。
【図5】本発明の実施例5に係るパワー半導体装置の断面構成図。
【符号の説明】
6…放熱板。
Claims (6)
- 銅と酸化銅粒子とを有する銅複合材料であって、前記酸化銅粒子を5〜20体積%含み、20℃から300℃における熱膨張係数が13×10−6〜17×10−6/℃、熱伝導率が270〜375W/m・Kであり、また導電率が60〜85%IACSであることを特徴とする銅複合材料。
- 請求項1記載の銅複合材料であって、前記酸化銅粒子のうち粒径が10μm以上の粒子が100μm平方内に10個以下であることを特徴とする銅複合材料。
- 請求項1又は2記載の銅複合材料であって、前記酸化銅粒子のうち粒径が10μm以上の粒子が全体の10%以下であることを特徴とする請求項1記載の銅複合材料。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の複合材料よりなることを特徴とする半導体装置用放熱板。
- 請求項4において、表面にNiめっき層を有することを特徴とする半導体装置用放熱板。
- 半導体素子が搭載される電極板と、前記半導体素子と電気的に接合されるリード電極と、前記半導体素子、前記電極板及び前記リード電極が搭載される放熱板と、前記電極板及び前記リード電極と前記放熱板との間に絶縁層を有する構造体を樹脂封止するとともに、前記リード電極の一部及び前記放熱板の少なくとも前記素子の接合面に対して反対面が開放されている半導体装置において、前記放熱板は、請求項4又は5に記載の放熱板よりなることを特徴とする半導体装置。
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JP12128499A JP3552587B2 (ja) | 1999-04-28 | 1999-04-28 | 複合材料及び半導体装置 |
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