JP3552063B2 - エンジンの吸気装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複数のシリンダを有するエンジンの吸気装置に関する。
【0002】
【従来技術】
多気筒エンジンの吸気装置として、所定容量を持つサージタンクから気筒数分の吸気管が延出して各吸気ポートに接続され、上記吸気ポートもしくは吸気ポート近傍の吸気管に燃料噴射装置が配置され、上記サージタンクに吸入空気量を制御するスロットルバルブが取り付けられたものが従来知られている。
【0003】
例えば特開平5−60024 号公報にこのような吸気装置が示されている。この吸気装置は船外機の直列4気筒エンジンに適用されており、エンジン本体の一方の側面のクランクケース寄りの位置にサージタンクが配置され、このサージタンクから気筒と同数の4本の吸気管が延出し、シリンダヘッドの各吸気ポートにそれぞれ接続されている。
【0004】
上記4本の吸気管のうち、上から3本目までの吸気管は、サージタンクの側面から一旦上方に向って延びた後、中間部分において下方に向って湾曲し、最下の吸気管は、サージタンクの底面から直線的に斜め下方へ延び、いずれもエンジン本体の上記側面に沿わせて配設されている。
【0005】
【解決しようとする課題】
上記エンジンにおいては、すべての吸気管が1つのサージタンクから延出し、この1つのサージタンクによって吸気の全量をまかなわなければならないので、該サージタンクの容量が大きくなる。
【0006】
この結果、1つのサージタンクの容量を大きくしようとすれば、エンジンルーム内でのコンパクトな収納が難しい。
【0007】
従ってエンジンの周囲に補機類を配設する余地がほとんどなくなり、設計に際して補機の配設位置選択の自由度が小さくなる。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明においては、複数のシリンダを有するエンジンの吸気装置で、前記複数のシリンダにそれぞれ連通する複数の吸気管がエンジン本体の側面に沿ってシリンダヘッドとサージタンク間を直接繋ぐようにしてシリンダヘッド側からクランク室側へ延び、これら吸気管は共通の前記サージタンクに接続されているものにおいて、前記複数の吸気管と該吸気管に接続する前記サージタンクを前記エンジン本体の両側部に振り分けて配設するとともに該吸気管は前記クランク軸の軸線方向一方側に寄せて配置して、該クランク軸の軸線方向他方側である前記軸線方向一方側に寄せて配置された前記吸気管と前記サージタンクの配設により形成される空間に補機を配置するようにし、そして前記サージタンクには前記クランク室の中央部外側に配設したスロットル手段を通じて空気を供給するようにする。
【0009】
本発明によれば、エンジン本体の両側部にそれぞれシリンダの数の半分に相当する比較的少数の吸気管が配設されるので、吸気管の配設が容易であり、また各吸気管の有効長を等しくすることが容易である。
【0010】
エンジン本体の両側部に設けられる各サージタンクは、それぞれ全吸気量の半分に対応する容量の比較的小型のものでよいので、上記吸気管の少数化とあいまって、両側部にそれぞれ充分な補機設置用余地が生じ、補機配設位置選択の自由度が大きくなり、これらの余地に各種補機を適当に配分設置することにより、バランスの良いエンジンを得ることができる。
【0011】
また、各サージタンクには1つのスロットル手段を通じて空気が供給され、各サージタンクにそれぞれ流量調節装置を設ける必要がないので、サージタンクが一層小型化するとともに、その構造が簡単になり、コストが低下する。上記スロットル手段はクランク室の中央部外側すなわちエンジンの左右中心線上に設けられているので、左右対称で均衡のとれた吸気装置が得られる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明をその一実施例である船外機用エンジンについて説明する。
【0013】
図1は本発明によるエンジン1を備えた船外機2の全体側面図である。船外機2は取付装置3を介して船の後舷4に取付けられている。5は下部が水中に没するエクステンションケースおよびギヤケースで、該エクステンションケース5の上部にエンジン1が搭載され、その上方をエンジンカバー6が覆っている。
【0014】
エンジン1については後で詳述するが、そのクランク軸7は上下方向に指向し、該クランク軸7に連結された駆動軸8がエクステンションケース5の内部を下方に延びている。駆動軸8の下端は前後進切換装置9を介してプロペラ軸10に連結され、プロペラ11がクランク軸7,駆動軸8,前後進切換装置9およびプロペラ軸10を経て伝達されるエンジン動力により回転駆動される。
【0015】
図2はエンジン1の右側面図、図3は左側面図、図4は横断面図である。なお、以下、エンジンの左右とは、図1に示すように船の後舷4に取り付けられた船外機を後方から前方へ(図1において左方から右方へ)向って見た時の左右を言う。
【0016】
エンジン1の本体部は、クランクケース12,シリンダブロック13,シリンダヘッド14およびシリンダヘッドカバー15により構成されている。なおシリンダブロック13には、図4に示すように、クランクケースの一部を形成するスカート部分13aが一体に設けられており、該スカート部分13aと前記クランクケース12によってクランク室12Aが形成されている。シリンダブロック13内には左右2組のシリンダ16がV形に配置して形成されており、それぞれのピストン17が連接棒18を介して上下方向に指向した1本のクランク軸7に連結されている。
【0017】
図6はシリンダブロック13のシリンダヘッド14側の端面図であるが、同図から分るように、前記左右2組のシリンダ16は、左側に上下に配列された1組のシリンダ16a,16bと、右側に上下に配列された他の1組のシリンダ16c,16dの4本のシリンダからなり、かつこれらのシリンダは、左側のシリンダ16a,16bを右側のシリンダ16c,16dより高くして、千鳥状に配列されている。このようなシリンダ配列とすることにより、シリンダブロック13の横巾を狭くしてエンジン1を小型化することができる。
【0018】
シリンダヘッド14には、図4に左側(図において下側)のシリンダ16について示してあるように、各シリンダ16に対応してそれぞれ吸気通路19が設けられており、これらの吸気通路19は吸気弁20を介して対応するシリンダ16に通ずるとともに、他端においてシリンダヘッド14の側面に開口している。そしてこの開口部にそれぞれ吸気管21が接続され、シリンダブロック13の側面に沿い後方シリンダヘッド14側から前方クランク室12A側へ向って延びている。図2の吸気管21c,21dは図6のシリンダ16c,16dに対応する吸気管で、図3の吸気管21a,21bは図6のシリンダ16a,16bに対応する吸気管である。
【0019】
エンジン本体の前部すなわちクランク室12A部分の左右両側にそれぞれサージタンク22L,22Rが設けられており、前記吸気管21a,21bはサージタンク22Lに、吸気管21c,21dはサージタンク22Rに連通している。すなわち、4本のシリンダ16に対する吸気管21が両側に振り分けられて、エンジン本体の両側部にそれぞれ2本ずつ配設され、該両側部にそれぞれこれらの吸気管21に接続するサージタンク22が設けられている。
【0020】
クランク室12Aの前方、巾方向中央部にスロットル弁を内蔵したスロットルボディ23が配設され、該スロットルボディ23と前記サージタンク22L,22Rとが、スロットルボディ23から左右に分岐した空気通路24を通じて互いに連通している。スロットルボディ23には空気導入管25を経て上方から空気が導入される。空気導入管25には、図3に示すように、これに並設された空気取入管25aにその下方から取入れられた空気が上方から導かれる。
【0021】
取入管25a,導入管25を通じて取入れられた空気は、スロットルボディ23内において流量を調整された後、左右のサージタンク22L,22Rに分配され、これらのサージタンク22から各吸気管21を通ってそれぞれ対応する各シリンダ16に燃焼用空気として供給されるが、吸気通路19においてこの空気に、燃料噴射ノズル26から燃料が噴射、混合され、この混合気がシリンダ16内において点火栓27により点火され燃焼する。
【0022】
図5は燃料供給系統を示す線図である。28は船外機側に設けられた燃料受入管、29は船側に設けられた燃料送出管で、これら両管を接続することにより、船側に設けられた燃料タンク30から燃料が供給される。31は低圧フィルタ、32は低圧ポンプで、低圧ポンプ32により燃料タンク30から取出された燃料はいったん気液分離器33内に貯溜された後、ストレーナ34,高圧ポンプ49および高圧フィルタ50を経て燃料噴射ノズル26に供給される。
【0023】
前述のように、エンジン本体の両側にはそれぞれシリンダ数の半数に相当する比較的少数の吸気管21が配設されているので、これに応じて各サージタンク22も比較的小容量の小型のもとなり、この小型化したサージタンク22が、図2,3に示すように、エンジン本体の前部両側に上方に寄せて配置されている。従って各吸気管21も上方に寄った位置に配設され、この結果、エンジン本体の両側下部には比較的広い余地が確保されている。
【0024】
前記燃料供給系統の船外機側の諸装置、配管は、図3に示すように、エンジン本体左側下部に確保された上記余地を利用してここに配設されている。さらに、気液分離器33の後方には、オイルフィルタ35が配設されている(図6参照)。
【0025】
図4に右側(図において上側)のシリンダ16について示してあるように、各シリンダ16の前記吸気弁20の下方にはそれぞれ排気弁36が設けられており、これらの排気弁36にそれぞれ連なる排気通路37がシリンダヘッド14内に形成されているが、各排気通路37はシリンダヘッド14の巾方向中央すなわち左側のシリンダ列16a,16bと右側のシリンダ列16c,16dとの中間部分を上下方向に延び、下端において合流してシリンダヘッド14の下面に開口している。
【0026】
シリンダヘッド14にはまた、ロッカアーム38を介して前記吸気弁20および排気弁36を作動させるカム軸39がクランク軸7と平行に上下方向に配設されている(図4)。ただし、図4において排気弁36側のロッカアームは図示を省略してある。
【0027】
図2に示すように、カム軸39の上端はシリンダヘッド14から突出し、この突出端にプーリ40が設けられている。プーリ40はクランク軸7の突出した上端に設けられたプーリ41とベルト42を介して連動しており、カム軸39はクランク軸7により駆動される。通常プーリ41の上方に設けられるフライホイール43は、クランク軸7の下端に取付けられ、エンジン本体の下面に装着されたエンジンマウントケース44内に設けられている。
【0028】
前記したようなサージタンク22の小型化、吸気管21の上方配設により、エンジン本体の右側下部に確保された余地にはスタータモータ45が配設されている。スタータモータ45はフライホイール43のほぼ上方位置に配置されており、その出力軸46はモータ本体から下方に向って延出し、エンジンマウントケース44内に突出している。そして該出力軸46に設けられた駆動ギヤ47が、フライホイール43の外周に設けられたリングギヤ48と噛合っており、エンジン始動に際してはクランク軸7がスタータモータ45により駆動される。
【0029】
上記エンジン1においては、各シリンダ16に対する吸気管21がエンジン本体の左右両側に振り分けられ、各側にはそれぞれ2本の吸気管21が配設されているだけであるので、吸気管の配設が容易であるとともに、各吸気管の有効長を等しくすることが容易である。
【0030】
またサージタンクも左右に分けられ、それぞれ小型なものとなってるので、エンジン本体の左右両側にそれぞれ補機設置用の余地が確保され、左側に確保された余地には気液分離器33等の燃料供給装置やオイルフィルタ35等が、右側に確保された余地にはスタータモータ45等がバランス良く設置されている。なお、上記補機類の配置はこれに限定されず、両側に確保されたこれらの余地を利用して各種補機を任意適当に配分設置することができる。
【0031】
さらに、各サージタンク22L,22Rには共通のスロットルボディ23を通じて空気が供給され、各サージタンク22L,22Rにそれぞれスロットル弁等を設ける必要がないので、サージタンクが一層小型化するとともに、その構造が簡単になり、コストが低下する。しかもスロットルボディ23がエンジンの左右中心線上に設けられているので、吸気装置がほぼ左右対称になり、前記補機類のバランスの良い配置とあいまって、全体として良好な重量配分を持つとともに整った外形を有し、船外機上部のエンジン室のような局限された場所に配置するのに特に適したエンジンとなっている。
【0032】
以上、本発明をその一実施例である船外機用のエンジンについて説明したが、本発明は、船外機用エンジンに限定されるものではなく、またクランク軸が上下方向に指向した縦置き型のエンジンに限らず、横置き型のエンジンにも適用可能であり、その他本発明の範囲内で多くの変形が可能であることは言うまでもない
。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、複数のシリンダを有するエンジンにおいて、吸気管の配設が容易であり、かつ吸気慣性効果を利用するために各吸気管の有効長をほぼ等しくすることが容易である。
【0034】
また、補機配設位置選択の自由度が大きく、エンジン本体の両側に各種補機を適当にバランス良く配分設置でき、さらに吸気装置自体が左右対称となるので、全体として良好な重量配分を持つとともに整った外形を有し、設置に便利なエンジンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるエンジンを備えた船外機の全体側面図である。
【図2】エンジンの右側面図である。
【図3】エンジンの左側面図である。
【図4】エンジンの横断面図である。
【図5】燃料供給系統を示す線図である。
【図6】シリンダブロックのシリンダヘッド側の端面図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…船外機、3…取付装置、4…後舷、5…エクステンションケース、6…エンジンカバー、7…クランク軸、8…駆動軸、9…前後進切換装置、10…プロペラ軸、11…プロペラ、12…クランクケース、13…シリンダブロック、14…シリンダヘッド、15…シリンダヘッドカバー、16…シリンダ、17…ピストン、18…連接棒、19…吸気通路、20…吸気弁、21…吸気管、22…サージタンク、23…スロットルボディ、24…空気通路、25…空気導入管、26…燃料噴射ノズル、27…点火栓、28…燃料受入管、29…燃料送出管、30…燃料タンク、31…低圧フィルタ、32…低圧ポンプ、33…気液分離器、34…ストレーナ、35…オイルフィルタ、36…排気弁、37…排気通路、38…ロッカアーム、39…カム軸、40,41…プーリ、42…ベルト、43…フライホイール、44…エンジンマウントケース、45…スタータモータ、46…出力軸、47…駆動ギヤ、48…リングギヤ、49…高圧ポンプ、50…高圧フィルタ。
Claims (2)
- 複数のシリンダを有するエンジンの吸気装置で、前記複数のシリンダにそれぞれ連通する複数の吸気管がエンジン本体の側面に沿ってシリンダヘッドとサージタンク間を直接繋ぐようにしてシリンダヘッド側からクランク室側へ延び、これら吸気管は共通の前記サージタンクに接続されているものにおいて、前記複数の吸気管と該吸気管に接続する前記サージタンクを前記エンジン本体の両側部に振り分けて配設するとともに該吸気管は前記クランク軸の軸線方向一方側に寄せて配置して、該クランク軸の軸線方向他方側である前記軸線方向一方側に寄せて配置された前記吸気管と前記サージタンクの配設により形成される空間に補機を配置するようにし、そして前記サージタンクには前記クランク室の中央部外側に配設したスロットル手段を通じて空気を供給するようにしたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 前記エンジン本体両側部の一方の側部にはスタータモータを配設し、他方の側部には燃料供給装置を配設した請求項1のエンジンの吸気装置。
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