JP3551788B2 - 圧縮着火式内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮着火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
流入する排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOX を吸収し、流入する排気ガスがリッチ又は理論空燃比になると吸収したNOX を放出するNOX 吸収剤を機関排気通路内に配置し、リーン混合気が燃焼せしめられているときに発生するNOX をNOX 吸収剤により吸収し、NOX 吸収剤のNOX 吸収能力が飽和する前に全気筒の燃焼室内における空燃比を一時的にリッチにしてNOX 吸収剤からNOX を放出させると共に放出されたNOX 排気ガス中に含まれる未燃HC,COにより還元するようにした圧縮着火式内燃機関が公知である(国際公開WO93/07363号参照)。この圧縮着火式内燃機関ではNOX 吸収剤からNOX を放出すべきときにはスロットル弁を閉弁すると共に燃料噴射量を増量することにより全気筒の燃焼室内における空燃比をリッチにするようにしている。
【0003】
また排気ガス中にはSOX も含まれており、このSOX もNOX 吸収剤に吸収される。このSOX をNOX 吸収剤から放出させるときにも空燃比をリッチにする必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら圧縮着火式内燃機関においてスロットル弁を閉弁し、燃料噴射量を増量することによって全気筒の燃焼室内における空燃比をリッチにすると多量の未燃HCおよび多量のスモークが発生するという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために1番目の発明では、燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど発生しなくなる圧縮着火式内燃機関において、流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときにはNO X を吸収し、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNO X を放出するNO X 吸収剤を機関排気通路内に配置し、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない第1の燃焼と、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少い第2の燃焼とを選択的に切換える切換手段を具備し、第2の燃焼が行われているときにNO X 吸収剤からNO X を放出すべきときにはNO X 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにしている。
【0007】
2番目の発明では1番目の発明において、上述の一部の気筒では第2の燃焼のもとで空燃比がリッチとされる。
3番目の発明では1番目の発明において、上述の一部の気筒では第2燃焼から第1の燃焼に切換えられた後第1の燃焼のもとで空燃比がリッチとされる。
4番目の発明では1番目の発明において、第1の燃焼が行われているときにNOX 吸収剤からNOX を放出すべきときには全気筒の燃焼室内における空燃比を一時的に理論空燃比又はリッチにするようにしている。
【0008】
5番目の発明では1番目の発明において、燃焼室から排出された排気ガスを機関吸気通路内に再循環させる排気ガス再循環装置を具備し、不活性ガスが再循環排気ガスからなる。
6番目の発明では5番目の発明において、第1の燃焼状態における排気ガス再循環率がほぼ55パーセント以上である。
【0009】
7番目の発明では1番目の発明において、機関の運転領域を低負荷側の第1の運転領域と高負荷側の第2の運転領域に分割し、第1の運転領域では第1の燃焼を行い、第2の運転領域では第2の燃焼を行うようにしている。
8番目の発明では、燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど発生しなくなる圧縮着火式内燃機関において、流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときにはNO X を吸収し、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNO X を放出するNO X 吸収剤を機関排気通路内に配置し、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない第1の燃焼と、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少い第2の燃焼とを選択的に切換える切換手段を具備し、NOX 吸収剤からSOX を放出すべきときには第1の燃焼が行われているときにNOX 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにしている。
【0010】
9番目の発明では8番目の発明において、NOX 吸収剤からSOX を放出すべきときにNOX 吸収剤の温度が予め定められた温度よりも低いときにはNOX 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリーンとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにし、NOX 吸収剤の温度が予め定められた温度よりも高くなったときにNOX 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにしている。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明を4ストローク圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。
図1および図2を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13およびインタークーラ14を介して過給機、例えば排気ターボチャージャ15のコンプレッサ16の出口部に連結される。コンプレッサ16の入口部は空気吸込管17を介してエアクリーナ18に連結され、空気吸込管17内にはステップモータ19により駆動されるスロットル弁20が配置される。
【0012】
一方、排気ポート10は排気マニホルド21および排気管22を介して排気ターボチャージャ15の排気タービン23の入口部に連結され、排気タービン23の出口部は排気管24を介してNOX 吸収剤25および酸化触媒26に連結される。排気マニホルド21内には空燃比センサ27が配置される。
酸化触媒26下流の排気管28とスロットル弁20下流の空気吸込管17とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路29を介して互いに連結され、EGR通路29内にはステップモータ30により駆動されるEGR制御弁31が配置される。また、EGR通路29内にはEGR通路29内を流れるEGRガスを冷却するためのインタークーラ32が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水がインタークーラ32内に導びかれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。
【0013】
一方、燃料噴射弁6は燃料供給管33を介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール34に連結される。このコモンレール34内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ35から燃料が供給され、コモンレール34内に供給された燃料は各燃料供給管33を介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール34にはコモンレール34内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ36が取付けられ、燃料圧センサ36の出力信号に基づいてコモンレール34内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ35の吐出量が制御される。
【0014】
電子制御ユニット40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)42、RAM(ランダムアクセスメモリ)43、CPU(マイクロプロセッサ)44、入力ポート45および出力ポート46を具備する。空燃比センサ27の出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力され、燃料圧センサ36の出力信号も対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、NOX 吸収剤25にはNOX 吸収剤25の温度を検出するための温度センサ37が取付けられ、この温度センサ37の出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。アクセルペダル50にはアクセルペダル50の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ51が接続され、負荷センサ51の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、入力ポート45にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ52が接続される。一方、図1に示される実施例では図2に示されるように内燃機関は1番気筒#1、2番気筒#2、3番気筒#3、4番気筒#4からなる4つの気筒を具備しており、噴射順序は1−3−4−2とされている。図1に示されるように出力ポート46は対応する駆動回路48を介して各気筒の燃料噴射弁6、スロットル弁制御用ステップモータ19、EGR制御弁制御用ステップモータ30および燃料ポンプ35に接続される。
【0015】
ところで従来より内燃機関、例えば圧縮着火式機関においてはNOX の発生を抑制するために機関排気通路と機関吸気通路とをEGR通路により連結し、このEGR通路を介して排気ガス、即ちEGRガスを機関吸気通路内に再循環させるようにしている。この場合、EGRガスは比較的比熱が高く、従って多量の熱を吸収することができるので、EGRガス量を増大するほど、即ちEGR率(EGRガス量/(EGRガス量+吸入空気量)を増大するほど燃焼室内における燃焼温度が低下する。燃焼温度が低下するとNOX の発生量が低下し、従ってEGR率を増大すればするほどNOX の発生量は低下することになる。
【0016】
このように従来よりEGR率を増大すればNOX の発生量を低下しうることはわかっている。しかしながらEGR率を増大させていくとEGR率が或る限度を越えたときに煤の発生量、即ちスモークが急激に増大し始める。この点に関し従来より、それ以上EGR率を増大すればスモークが限りなく増大していくものと考えられており、従ってスモークが急激に増大し始めるEGR率がEGR率の最大許容限界であると考えられている。
【0017】
従って従来よりEGR率はこの最大許容限界を越えない範囲内に定められている。このEGR率の最大許容限界は機関の形式や燃料によってかなり異なるがおおよそ30パーセントから50パーセントである。従って従来の圧縮着火式内燃機関ではEGR率は最大でも30パーセントから50パーセント程度に抑えられている。
【0018】
このように従来ではEGR率に対して最大許容限界が存在すると考えられていたので従来よりEGR率はこの最大許容限界を越えない範囲内においてNOX およびスモークの発生量ができるだけ少くなるように定められていた。しかしながらこのようにしてEGR率をNOX およびスモークの発生量ができるだけ少くなるように定めてもNOX およびスモークの発生量の低下には限度があり、実際には依然としてかなりの量のNOX およびスモークが発生してしまうのが現状である。
【0019】
ところが圧縮着火式内燃機関の燃焼の研究の過程においてEGR率を最大許容限界よりも大きくすれば上述の如くスモークが急激に増大するがこのスモークの発生量にはピークが存在し、このピークを越えてEGR率を更に大きくすると今度はスモークが急激に減少しはじめ、アイドリンク運転時においてEGR率を70パーセント以上にすると、またEGRガスを強力に冷却した場合にはEGR率をほぼ55パーセント以上にするとスモークがほとんど零になる、即ち煤がほとんど発生しないことが見い出されたのである。また、このときにはNOX の発生量が極めて少量となることも判明している。この後この知見に基づいて煤が発生しない理由について検討が進められ、その結果これまでにない煤およびNOX の同時低減が可能な新たな燃焼システムが構築されるに至ったのである。この新たな燃焼システムについては後に詳細に説明するが簡単に言うと炭化水素が煤に成長するまでの途中の段階において炭化水素の成長を停止させることを基本としている。
【0020】
即ち、実験研究を重ねた結果判明したことは燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度が或る温度以下のときには炭化水素の成長が煤に至る前の途中の段階で停止し、燃料およびその周囲のガス温度が或る温度以上になると炭化水素は一気に煤まで成長してしまうということである。この場合、燃料およびその周囲のガス温度は燃料が燃焼した際の燃料周りのガスの吸熱作用が大きく影響しており、燃料燃焼時の発熱量に応じて燃料周りのガスの吸熱量を調整することによって燃料およびその周囲のガス温度を制御することができる。
【0021】
従って、燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制すれば煤が発生しなくなり、燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制することは燃料周りのガスの吸熱量を調整することによって可能となる。一方、煤に至る前に成長が途中で停止した炭化水素は酸化触媒等を用いた後処理によって容易に浄化することができる。これが新たな燃焼システムの基本的な考え方である。
【0022】
図1および図2はこの新たな燃焼システムを採用した圧縮着火式内燃機関を示している。
図3は図1および図2に示される圧縮着火式内燃機関において、機関低負荷運転時にスロットル弁20の開度およびEGR率を変化させることにより空燃比A/F(図3の横軸)を変化させたときの出力トルクの変化、およびスモーク、HC,CO,NOX の排出量の変化を示す実験例を表している。図3からわかるようにこの実験例では空燃比A/Fが小さくなるほどEGR率が高くなり、理論空燃比(≒14.6)以下のときにはEGR率は65パーセント以上となっている。
【0023】
図3に示されるようにEGR率を増大することにより空燃比A/Fを小さくしていくとEGR率が40パーセント付近となり空燃比A/Fが30程度になったときにスモークの発生量が増大を開始する。次いで、更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくするとスモークの発生量が急激に増大してピークに達する。次いで更にEGR率を高め、空燃比A/Fを小さくすると今度はスモークが急激に低下し、EGR率を65パーセント以上とし、空燃比A/Fが15.0付近になるとスモークがほぼ零となる。即ち、煤がほとんど発生しなくなる。このとき機関の出力トルクは若干低下し、またNOX の発生量がかなり低くなる。一方、このときHC,COの発生量は増大し始める。
【0024】
図4(A)は空燃比A/Fが21付近でスモークの発生量が最も多いときの燃焼室5内の燃焼圧変化を示しており、図4(B)は空燃比A/Fが18付近でスモークの発生量がほぼ零のときの燃焼室5内の燃焼圧の変化を示している。図4(A)と図4(B)とを比較すればわかるようにスモークの発生量がほぼ零である図4(B)に示す場合はスモークの発生量が多い図4(A)に示す場合に比べて燃焼圧が低いことがわかる。
【0025】
図3および図4に示される実験結果から次のことが言える。即ち、まず第1に空燃比A/Fが15.0以下でスモークの発生量がほぼ零のときには図3に示されるようにNOX の発生量がかなり低下する。NOX の発生量が低下したということは燃焼室5内の燃焼温度が低下していることを意味しており、従って煤がほとんど発生しないときには燃焼室5内の燃焼温度が低くなっていると言える。同じことが図4からも言える。即ち、煤がほとんど発生していない図4(B)に示す状態では燃焼圧が低くなっており、従ってこのとき燃焼室5内の燃焼温度は低くなっていることになる。
【0026】
第2にスモークの発生量、即ち煤の発生量がほぼ零になると図3に示されるようにHCおよびCOの排出量が増大する。このことは炭化水素が煤まで成長せずに排出されることを意味している。即ち、燃料中に含まれる図5に示されるような直鎖状炭化水素や芳香族炭化水素は酸素不足の状態で温度上昇せしめられると熱分解して煤の前駆体が形成され、次いで主に炭素原子が集合した固体からなる煤が生成される。この場合、実際の煤の生成過程は複雑であり、煤の前駆体がどのような形態をとるかは明確ではないがいずれにしても図5に示されるような炭化水素は煤の前駆体を経て煤まで成長することになる。従って、上述したように煤の発生量がほぼ零になると図3に示される如くHCおよびCOの排出量が増大するがこのときのHCは煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素である。
【0027】
図3および図4に示される実験結果に基づくこれらの考察をまとめると燃焼室5内の燃焼温度が低いときには煤の発生量がほぼ零になり、このとき煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素が燃焼室5から排出されることになる。このことについて更に詳細に実験研究を重ねた結果、燃焼室5内における燃料およびその周囲のガス温度が或る温度以下である場合には煤の成長過程が途中で停止してしまい、即ち煤が全く発生せず、燃焼室5内における燃料およびその周囲の温度が或る温度以上になると煤が生成されることが判明したのである。
【0028】
ところで煤の前駆体の状態で炭化水素の生成過程が停止するときの燃料およびその周囲の温度、即ち上述の或る温度は燃料の種類や空燃比や圧縮比等の種々の要因によって変化するので何度であるかということは言えないがこの或る温度はNOX の発生量と深い関係を有しており、従ってこの或る温度はNOX の発生量から或る程度規定することができる。即ち、EGR率が増大するほど燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度は低下し、NOX の発生量が低下する。このときNOX の発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったときに煤がほとんど発生しなくなる。従って上述の或る温度はNOX の発生量が10p.p.m 前後又はそれ以下になったときの温度にほぼ一致する。
【0029】
一旦、煤が生成されるとこの煤は酸化機能を有する触媒を用いた後処理でもって浄化することはできない。これに対して煤の前駆体又はその前の状態の炭化水素は酸化機能を有する触媒を用いた後処理でもって容易に浄化することができる。このように酸化機能を有する触媒による後処理を考えると炭化水素を煤の前駆体又はその前の状態で燃焼室5から排出させるか、或いは煤の形で燃焼室5から排出させるかについては極めて大きな差がある。本発明において採用されている新たな燃焼システムは燃焼室5内において煤を生成させることなく炭化水素を煤の前駆体又はその前の状態の形でもって燃焼室5から排出させ、この炭化水素を酸化機能を有する触媒により酸化せしめることを核としている。
【0030】
さて、煤が生成される前の状態で炭化水素の成長を停止させるには燃焼室5内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制する必要がある。この場合、燃料およびその周囲のガス温度を抑制するには燃料が燃焼した際の燃料周りのガスの吸熱作用が極めて大きく影響することが判明している。
【0031】
即ち、燃料周りに空気しか存在しないと蒸発した燃料はただちに空気中の酸素と反応して燃焼する。この場合、燃料から離れている空気の温度はさほど上昇せず、燃料周りの温度のみが局所的に極めて高くなる。即ち、このときには燃料から離れている空気は燃料の燃焼熱の吸熱作用をほとんど行わない。この場合には燃焼温度が局所的に極めて高くなるために、この燃焼熱を受けた未燃炭化水素は煤を生成することになる。
【0032】
一方、多量の不活性ガスと少量の空気の混合ガス中に燃料が存在する場合には若干状況が異なる。この場合には蒸発燃料は周囲に拡散して不活性ガス中に混在する酸素と反応し、燃焼することになる。この場合には燃焼熱は周りの不活性ガスに吸収されるために燃焼温度はさほど上昇しなくなる。即ち、燃焼温度を低く抑えることができることになる。即ち、燃焼温度を抑制するには不活性ガスの存在が重要な役割を果しており、不活性ガスの吸熱作用によって燃焼温度を低く抑えることができることになる。
【0033】
この場合、燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制するにはそうするのに十分な熱量を吸収しうるだけの不活性ガス量が必要となる。従って燃料量が増大すれば必要となる不活性ガス量はそれに伴なって増大することになる。なお、この場合、不活性ガスの比熱が大きいほど吸熱作用は強力となり、従って不活性ガスは比熱の大きなガスが好ましいことになる。この点、CO2 やEGRガスは比較的比熱が大きいので不活性ガスとしてEGRガスを用いることは好ましいと言える。
【0034】
図6は不活性ガスとしてEGRガスを用い、EGRガスの冷却度合を変えたときのEGR率とスモークとの関係を示している。即ち、図6において曲線AはEGRガスを強力に冷却してEGRガス温をほぼ90℃に維持した場合を示しており、曲線Bは小型の冷却装置でEGRガスを冷却した場合を示しており、曲線CはEGRガスを強制的に冷却していない場合を示している。
【0035】
図6の曲線Aで示されるようにEGRガスを強力に冷却した場合にはEGR率が50バーセントよりも少し低いところで煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ55パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。一方、図6の曲線Bで示されるようにEGRガスを少し冷却した場合にはEGR率が50パーセントよりも少し高いところで煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ65パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。
【0036】
また、図6の曲線Cで示されるようにEGRガスを強制的に冷却していない場合にはEGR率が55パーセントの付近で煤の発生量がピークとなり、この場合にはEGR率をほぼ70パーセント以上にすれば煤がほとんど発生しなくなる。なお、図6は機関負荷が比較的高いときのスモークの発生量を示しており、機関負荷が小さくなると煤の発生量がピークとなるEGR率は若干低下し、煤がほとんど発生しなくなるEGR率の下限も若干低下する。このように煤がほとんど発生しなくなるEGR率の下限はEGRガスの冷却度合や機関負荷に応じて変化する。
【0037】
図7は不活性ガスとしてEGRガスを用いた場合において燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度にするために必要なEGRガスと空気の混合ガス量、およびこの混合ガス量中の空気の割合、およびこの混合ガス中のEGRガスの割合を示している。なお、図7において縦軸は燃焼室5内に吸入される全吸入ガス量を示しており、鎖線Yは過給が行われないときに燃焼室5内に吸入しうる全吸入ガス量を示している。また、横軸は要求負荷を示している。
【0038】
図7を参照すると空気の割合、即ち混合ガス中の空気量は噴射された燃料を完全に燃焼せしめるのに必要な空気量を示している。即ち、図7に示される場合では空気量と噴射燃料量との比は理論空燃比となっている。一方、図7においてEGRガスの割合、即ち混合ガス中のEGRガス量は噴射燃料が燃焼せしめられたときに燃料およびその周囲のガス温度を煤が形成される温度よりも低い温度にするのに必要最低限のEGRガス量を示している。このEGRガス量はEGR率で表すとほぼ55パーセント以上であり、図7に示す実施例では70パーセント以上である。即ち、燃焼室5内に吸入された全吸入ガス量を図7において実線Xとし、この全吸入ガス量Xのうちの空気量とEGRガス量との割合を図7に示すような割合にすると燃料およびその周囲のガス温度は煤が生成される温度よりも低い温度となり、斯くして煤が全く発生しなくなる。また、このときのNOX 発生量は10p.p.m 前後、又はそれ以下であり、従ってNOX の発生量は極めて少量となる。
【0039】
燃料噴射量が増大すれば燃料が燃焼した際の発熱量が増大するので燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に維持するためにはEGRガスによる熱の吸収量を増大しなければならない。従って図7に示されるようにEGRガス量は噴射燃料量が増大するにつれて増大せしめなければならない。即ち、EGRガス量は要求負荷が高くなるにつれて増大する必要がある。
【0040】
ところで過給が行われていない場合には燃焼室5内に吸入される全吸入ガス量Xの上限はYであり、従って図7において要求負荷がL0 よりも大きい領域では要求負荷が大きくなるにつれてEGRガス割合を低下させない限り空燃比を理論空燃比に維持することができない。云い換えると過給が行われていない場合に要求負荷がL0 よりも大きい領域において空燃比を理論空燃比に維持しようとした場合には要求負荷が高くなるにつれてEGR率が低下し、斯くして要求負荷がL0 よりも大きい領域では燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に維持しえなくなる。
【0041】
ところが図1に示されるようにEGR通路29を介して過給機の入口側即ち排気ターボチャージャ15の空気吸込管17内にEGRガスを再循環させると要求負荷がL0 よりも大きい領域においてEGR率を55パーセント以上、例えば70パーセントに維持することができ、斯くして燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に維持することができる。即ち、空気吸込管17内におけるEGR率が例えば70パーセントになるようにEGRガスを再循環させれば排気ターボチャージャ15のコンプレッサ16により昇圧された吸入ガスのEGR率も70パーセントとなり、斯くしてコンプレッサ16により昇圧しうる限度まで燃料およびその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に維持することができる。従って、低温燃焼を生じさせることのできる機関の運転領域を拡大することができることになる。
【0042】
なお、要求負荷がL0 よりも大きい領域でEGR率を55パーセント以上にする際にはEGR制御弁31が全開せしめられ、スロットル弁20が若干閉弁せしめられる。
前述したように図7は燃料を理論空燃比のもとで燃焼させる場合を示しているが空気量を図7に示される空気量よりも少くしても、即ち空燃比をリッチにしても煤の発生を阻止しつつNOX の発生量を10p.p.m 前後又はそれ以下にすることができ、また空気量を図7に示される空気量よりも多くしても、即ち空燃比の平均値を17から18のリーンにしても煤の発生を阻止しつつNOX の発生量を10p.p.m 前後又はそれ以下にすることができる。
【0043】
即ち、空燃比がリッチにされると燃料が過剰となるが燃焼温度が低い温度に抑制されているために過剰な燃料は煤まで成長せず、斯くして煤が生成されることがない。また、このときNOX も極めて少量しか発生しない。一方、平均空燃比がリーンのとき、或いは空燃比が理論空燃比のときでも燃焼温度が高くなれば少量の煤が生成されるが本発明では燃焼温度が低い温度に抑制されているので煤は全く生成されない。更に、NOX も極めて少量しか発生しない。
【0044】
このように、低温燃焼が行われているときには空燃比にかかわらずに、即ち空燃比がリッチであろうと、理論空燃比であろうと、或いは平均空燃比がリーンであろうと煤が発生されず、NOX の発生量が極めて少量となる。従って燃料消費率の向上を考えるとこのとき平均空燃比をリーンにすることが好ましいと言える。
【0045】
ところで燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制しうるのは燃焼による発熱量が比較的少い機関中低負荷運転時に限られる。従って本発明による実施例では機関中低負荷運転時には燃焼時の燃料およびその周囲のガス温度を炭化水素の成長が途中で停止する温度以下に抑制して第1の燃焼、即ち低温燃焼を行うようにし、機関高負荷運転時には第2の燃焼、即ち従来より普通に行われている燃焼を行うようにしている。なお、ここで第1の燃焼、即ち低温燃焼とはこれまでの説明から明らかなように煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない燃焼のことを言い、第2の燃焼、即ち従来より普通に行われている燃焼とは煤の発生量のピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少い燃焼のことを言う。
【0046】
図8は第1の燃焼、即ち低温燃焼が行われる第1の運転領域Iと、第2の燃焼、即ち従来の燃焼方法による燃焼が行われる第2の運転領域1Iとを示している。なお、図8において縦軸Lはアクセルペダル50の踏込み量、即ち要求負荷を示しており、横軸Nは機関回転数を示している。また、図8においてX(N)は第1の運転領域Iと第2の運転領域IIとの第1の境界を示しており、Y(N)は第1の運転領域Iと第2の運転領域1Iとの第2の境界を示している。第1の運転領域Iから第2の運転領域IIへの運転領域の変化判断は第1の境界X(N)に基づいて行われ、第2の運転領域IIから第1の運転領域Iへの運転領域の変化判断は第2の境界Y(N)に基づいて行われる。
【0047】
即ち、機関の運転状態が第1の運転領域Iにあって低温燃焼が行われているときに要求負荷Lが機関回転数Nの関数である第1の境界X(N)を越えると運転領域が第2の運転領域IIに移ったと判断され、従来の燃焼方法による燃焼が行われる。次いで要求負荷Lが機関回転数Nの関数である第2の境界Y(N)よりも低くなると運転領域が第1の運転領域Iに移ったと判断され、再び低温燃焼が行われる。
このように第1の境界X(N)と第1の境界X(N)よりも低負荷側の第2の境界Y(N)との二つの境界を設けたのは次の二つの理由による。第1の理由は、第2の運転領域IIの高負荷側では比較的燃焼温度が高く、このとき要求負荷Lが第1の境界X(N)より低くなったとしてもただちに低温燃焼を行えないからである。即ち、要求負荷Lがかなり低くなったとき、即ち第2の境界Y(N)よりも低くなったときでなければただちに低温燃焼が開始されないからである。第2の理由は第1の運転領域Iと第2の運転領域II間の運転領域の変化に対してヒステリシスを設けるためである。
【0048】
図9は空燃比センサ27の出力を示している。図9に示されるように空燃比センサ27の出力電流Iは空燃比A/Fに応じて変化する。従って空燃比センサ27の出力電流Iから空燃比を知ることができる。
次に図10を参照しつつ第1の運転領域Iおよび第2の運転領域IIにおける運転制御について概略的に説明する。
【0049】
図10は要求負荷Lに対するスロットル弁20の開度、EGR制御弁31の開度、EGR率、空燃比、噴射時期および噴射量を示している。図10に示されるように要求負荷Lの低い第1の運転領域Iではスロットル弁20の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉近くから2/3開度程度まで徐々に増大せしめられ、EGR制御弁31の開度は要求負荷Lが高くなるにつれて全閉近くから全開まで徐々に増大せしめられる。また、図10に示される例では第1の運転領域IではEGR率がほぼ70パーセントとされており、空燃比はわずかばかりリーンなリーン空燃比とされている。
【0050】
言い換えると第1の運転領域IではEGR率がほぼ70パーセントとなり、空燃比がわずかばかりリーンなリーン空燃比となるようにスロットル弁20の開度およびEGR制御弁31の開度が制御される。なお、このとき空燃比は空燃比センサ27の出力信号に基づいてEGR制御弁31の開度を補正することによって目標リーン空燃比に制御される。また、第1の運転領域Iでは圧縮上死点TDC前に燃料噴射が行われる。この場合、噴射開始時間θSは要求負荷Lが高くなるにつれて遅くなり、噴射完了時期θEも噴射開始時期θSが遅くなるにつれて遅くなる。
【0051】
なお、アイドリング運転時にはスロットル弁20は全閉近くまで閉弁され、このときEGR制御弁31も全開近くまで閉弁せしめられる。スロットル弁20を全閉近くまで閉弁すると圧縮始めの燃焼室5内の圧力が高くなるために圧縮圧力が小さくなる。圧縮圧力が小さくなるとピストン4による圧縮仕事が小さくなるために機関本体1の振動が小さくなる。即ち、アイドリング運転時には機関本体1の振動を抑制するためにスロットル弁20が全閉近くまで閉弁せしめられる。
【0052】
一方、機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに変わるとスロットル弁20の開度が2/3開度程度から全開方向へステップ状に増大せしめられる。このとき図10に示す例ではEGR率がほぼ70パーセントから40パーセント以下までステップ状に減少せしめられ、空燃比がステップ状に大きくされる。即ち、EGR率が多量のスモークを発生するEGR率範囲(図6)を飛び越えるので機関の運転領域が第1の運転領域Iから第2の運転領域IIに変わるときに多量のスモークが発生することがない。
【0053】
第2の運転領域IIでは従来から行われている燃焼が行われる。この第2の運転領域IIではスロットル弁20は一部を除いて全開状態に保持され、EGR制御弁31の開度は要求負荷Lが高くなるほど次第に小さくされる。また、この運転領域IIではEGR率は要求負荷Lが高くなるほど低くなり、空燃比は要求負荷Lが高くなるほど小さくなる。ただし、空燃比は要求負荷Lが高くなってもリーン空燃比とされる。また、第2の運転領域IIでは噴射開始時期θSは圧縮上死点TDC付近とされる。
【0054】
図11は第1の運転領域Iにおける空燃比A/Fを示している。図11において、A/F=15.5,A/F=16,A/F=17,A/F=18で示される各曲線は夫々空燃比が15.5,16,17,18であるときを示しており、各曲線間の空燃比は比例配分により定められる。図11に示されるように第1の運転領域Iでは空燃比がリーンとなっており、更に第1の運転領域Iでは要求負荷Lが低くなるほど空燃比A/Fがリーンとされる。
【0055】
即ち、要求負荷Lが低くなるほど燃焼による発熱量が少くなる。従って要求負荷Lが低くなるほどEGR率を低下させても低温燃焼を行うことができる。EGR率を低下させると空燃比は大きくなり、従って図11に示されるように要求負荷Lが低くなるにつれて空燃比A/Fが大きくされる。空燃比A/Fが大きくなるほど燃料消費率は向上し、従ってできる限り空燃比をリーンにするために本発明による実施例では要求負荷Lが低くなるにつれて空燃比A/Fが大きくされる。
【0056】
なお、空燃比を図11に示す目標空燃比とするのに必要なスロットル弁20の目標開度STが図12(A)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM42内に記憶されており、空燃比を図11に示す目標空燃比とするのに必要なEGR制御弁31の目標開度SEが図12(B)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM42内に記憶されている。
【0057】
図13は第2の燃焼、即ち従来の燃焼方法による普通の燃焼が行われるときの目標空燃比を示している。なお、図13においてA/F=24,A/F=35,A/F=45,A/F=60で示される各曲線は夫々目標空燃比24,35,45,60を示している。空燃比をこの目標空燃比とするのに必要なスロットル弁20の目標開度STが図14(A)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM42内に記憶されており、空燃比をこの目標空燃比とするのに必要なEGR制御弁31の目標開度SEが図14(B)に示されるように要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM42内に記憶されている。
【0058】
一方、排気ターボチャージャ15下流の機関排気通路内に配置されたNOX 吸収剤25は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少くとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されている。機関吸気通路、燃焼室5およびNOX 吸収剤25上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比をNOX 吸収剤25への流入排気ガスの空燃比と称するとこのNOX 吸収剤25は流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOX を吸収し、流入排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNOX を放出するNOX の吸放出作用を行う。
【0059】
このNOX 吸収剤25を機関排気通路内に配置すればNOX 吸収剤25は実際にNOX の吸放出作用を行うがこの吸放出作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もある。しかしながらこの吸放出作用は図15に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて担体上に白金PtおよびバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0060】
図1に示される圧縮着火式内燃機関では通常燃焼室5における空燃比がリーンの状態で燃焼が行われる。このように空燃比がリーンの状態で燃焼が行われている場合には排気ガス中の酸素濃度は高く、このときには図15(A)に示されるようにこれら酸素O2 がO2 − 又はO2−の形で白金Ptの表面に付着する。一方、流入排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 − 又はO2−と反応し、NO2 となる(2NO+O2 →2NO2 )。次いで生成されたNO2 の一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら図15(A)に示されるように硝酸イオンNO3 − の形で吸収剤内に拡散する。このようにしてNOX がNOX 吸収剤25内に吸収される。流入排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2 が生成され、吸収剤のNOX 吸収能力が飽和しない限りNO2 が吸収剤内に吸収されて硝酸イオンNO3 − が生成される。
【0061】
一方、流入排気ガスの空燃比がリッチにされると流入排気ガス中の酸素濃度が低下し、その結果白金Ptの表面でのNO2 の生成量が低下する。NO2 の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 − →NO2 )に進み、斯くして吸収剤内の硝酸イオンNO3 − がNO2 の形で吸収剤から放出される。このときNOX 吸収剤25から放出されたNOX は図15(B)に示されるように流入排気ガス中に含まれる多量の未燃HC,COと反応して還元せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2 が存在しなくなると吸収剤から次から次へとNO2 が放出される。従って流入排気ガスの空燃比がリッチにされると短時間のうちにNOX 吸収剤25からNOX が放出され、しかもこの放出されたNOX が還元されるために大気中にNOX が排出されることはない。
【0062】
なお、この場合、流入排気ガスの空燃比を理論空燃比にしてもNOX 吸収剤25からNOX が放出される。しかしながら流入排気ガスの空燃比を理論空燃比にした場合にはNOX 吸収剤25からNOX が徐々にしか放出されないためにNOX 吸収剤25に吸収されている全NOX を放出させるには若干長い時間を要する。
【0063】
前述したように機関の運転状態が第1の運転領域Iにあって低温燃焼が行われているときには煤はほとんど発生せず、その代り未燃炭化水素が煤の前駆体又はその前の状態の形でもって燃焼室5から排出される。このとき燃焼室5から排出された未燃炭化水素はNOX 吸収剤25の下流に配置された酸化触媒26により良好に酸化せしめられる。なお、上述したようにNOX 吸収剤25は白金Ptのような貴金属を含んでおり、従ってNOX 吸収剤25も酸化機能を有している。従って、低温燃焼が行われているときに燃焼室5から排出された未燃炭化水素はNOX 吸収剤25によっても良好に酸化せしめられることになる。
【0064】
ところでNOX 吸収剤25のNOX 吸収能力には限度があり、NOX 吸収剤25のNOX 吸収能力が飽和する前にNOX 吸収剤25からNOX を放出させる必要がある。そのためにはNOX 吸収剤25に吸収されているNOX 量を推定する必要がある。そこで本発明による実施例では第1の燃焼が行われているときの単位時間当りのNOX 吸収量Aを要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数として図16(A)に示すようなマップの形で予め求めておき、第2の燃焼が行われているときの単位時間当りのNOX 吸収量Bを要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数として図16(B)に示すようなマップの形で予め求めておき、これら単位時間当りのNOX 吸収量A,Bを積算することによってNOX 吸収剤25に吸収されているNOX 量ΣNOXを推定するようにしている。
【0065】
本発明による実施例ではこのNOX 吸収量ΣNOXが予め定められた許容最大値を越えたときのNOX 吸収剤25からNOX を放出させるようにしている。次にこのことについて図17を参照しつつ説明する。
図17を参照すると本発明による実施例では二つの許容最大値、即ち許容最大値MAX1と許容最大値MAX2とが設定されている。許容最大値MAX1はNOX 吸収剤25が吸収しうる最大NOX 吸収量の30パーセント程度とされており、許容最大値MAX2はNOX 吸収剤25が吸収しうる最大吸収量の80パーセント程度とされている。第1の燃焼が行われているときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越えたときにはNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく空燃比がリッチとされ、第2の燃焼が行われているときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越えたときには第2の燃焼から第1の燃焼に切換えられたときにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく空燃比がリッチとされ、第2の燃焼が行われているときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX2を越えたときにはNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく一部の気筒のみの空燃比がリッチとされる。
【0066】
即ち、図17において期間Xは要求負荷Lが第1の境界X(N)よりも低く、第1の燃焼が行われている場合を示しており、このとき空燃比は理論空燃比よりもわずかばかりリーンなリーン空燃比となっている。第1の燃焼が行われているときにはNOX の発生量が極めて少く、従ってこのときには図17に示されるようにNOX 吸収量ΣNOXが極めてゆっくりと上昇する。第1の燃焼が行われているときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越えると全気筒の空燃比A/Fは一時的にリッチとされ、それによってNOX 吸収剤25からNOX が放出される。このときNOX 吸収量ΣNOXは零とされる。
【0067】
前述したように第1の燃焼が行われているときには空燃比がリーンであろうと、理論空燃比であろうと、リッチであろうと煤は発生せず、従って第1の燃焼が行われているときにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく空燃比A/Fがリッチとされてもこのとき煤が発生することはない。
次いで時刻t1 において要求負荷Lが第1の境界X(N)を越えると第1の燃焼から第2の燃焼に切換えられる。図17に示されるように第2の燃焼が行われているときには空燃比A/Fはかなりリーンとなる。第2の燃焼が行われているときには第1の燃焼が行われている場合に比べてNOX の発生量が多く、従って第2の燃焼が行われているときにはNOX 量ΣNOXは比較的急速に上昇する。
【0068】
第2の燃焼が行われているときに全気筒の空燃比A/Fをリッチにすると多量の煤が発生し、従って第2の燃焼が行われているとき全気筒の空燃比A/Fをリッチにすることは好ましくない。従って図17に示されるように第2の燃焼が行われているときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越えたとしてもNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく空燃比A/Fがリッチとされない。この場合には図17の時刻t2 におけるように要求負荷Lが第2の境界Y(N)よりも低くなって第2の燃焼から第1の燃焼に切換えられたときにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく全気筒の空燃比A/Fが一時的にリッチにされる。
【0069】
次いで図17の時刻t3 において第1の燃焼から第2の燃焼に切換えられ、暫らくの間第2の燃焼が継続したとする。このときNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越え、次いで時刻t4 において許容最大値MAX2を越えたとするとこのときにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべくNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比A/Fがリッチとされ、残りの気筒の空燃比がリーンとされる。
【0070】
例えば図18(A)において実線で示される噴射量でもって第2の燃焼が行われているときにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべくNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするときには1番気筒#1における空燃比が例えば8程度のリッチとなるように1番気筒#1への噴射量が破線Q1 で示されるように大巾に増大せしめられる。一方、このとき残りの気筒#2,#3,#4の空燃比ができるだけ小さなリーン空燃比となるようにこれら気筒#2,#3,#4への噴射量も破線Q2 ,Q3 ,Q4 で示されるように増大せしめられる。
【0071】
即ち、一部の気筒、図18(A)に示す例では1番気筒#1の空燃比が大巾にリッチにせしめられると1番気筒#1の出力トルクが低下する。この出力トルクの低下分を補なうために残りの気筒#2,#3,#4への噴射量が増大せしめられる。また、このように残りの気筒#2,#3,#4への噴射量を増大せしめることによって各気筒の空燃比の平均値、即ちNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリッチにしやすくなる。
【0072】
なお、一つの気筒の空燃比を大巾にリッチにしてもNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリッチにしえない場合、又は十分にリッチにしえない場合には図18(B)に示されるように二つの気筒、例えば1番気筒#1と、1番気筒#1に対し噴射時期が360クランク角度ずれている4番気筒#4における空燃比が大巾にリッチになるように1番気筒#1と4番気筒#4への噴射量が破線Q1 ,Q4 で示されるように大巾に増大せしめられる。この場合にも残りの気筒#2,#3の空燃比ができるだけ小さなリーン空燃比となるように残りの気筒#2,#3への噴射量Q2 ,Q3 も増大せしめられる。
【0073】
第2の燃焼が行われているときには機関の運転状態により空燃比がかなり異なっており、従ってNOX 吸収剤25からNOX を放出すべきときの図18(A)又は図18(B)に示す各噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 は機関の運転状態に応じて異なっている。本発明による実施例ではこれらの各噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 は要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM42内に記憶されている。
【0074】
図18(A)に示されるようにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく1番気筒#1における空燃比が大巾にリッチにされると1番気筒#1からは多量の未燃HCおよび煤が排出され、図18(B)に示されるようにNOX 吸収剤25からNOX を放出すべく1番気筒#1および4番気筒#4における空燃比が大巾にリッチにされると1番気筒#1および4番気筒#4からは多量の未燃HCおよび煤が排出される。しかしながらいずれの場合でも全気筒をリッチにした場合に比べれば未燃HCおよび煤の排出量は少く、従って未燃HCおよび煤の排出量を低減できることになる。また、全気筒をリッチにした場合には機関の出力トルクが変動するが図18(A)および図18(B)に示す場合には機関の出力トルクがほとんど変動しないという利点がある。
【0075】
このように一部の気筒のみをリッチにした場合には全筒をリッチにした場合に比べて未燃HCおよび煤の排出量が低減するがそれでも未燃HCおよび煤が排出される。従ってこのように一部の気筒のみをリッチにする機会はできるだけ少くすることが好ましい。従って第2の燃焼が行われたときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越えたときには第2の燃焼から第1の燃焼に切換えられたときに空燃比A/Fを一時的にリッチにし、NOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX2を越えた特別の場合に限って一部の気筒のみをリッチにするようにしている。
【0076】
図19はNOX 吸収剤25からNOX を放出すべきときにセットされるNOX 放出フラグの処理ルーチンを示しており、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図19を参照するとまず初めにステップ100において機関の運転領域が第1の運転領域Iであることを示すフラグIがセットされているか否かが判別される。フラグIがセットされているとき、即ち機関の運転領域が第1の運転領域Iであるときにはステップ101に進んで図16(A)に示すマップから単位時間当りのNOX 吸収量Aが算出される。次いでステップ102ではNOX 吸収量ΣNOXにAが加算される。次いでステップ103ではNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1を越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAX1になるとステップ104に進み、第1の燃焼が行われているときにNOX を放出すべきことを示すNOX 放出フラグIがセットされる。
【0077】
一方、ステップ100においてフラグIがリセットされていると判断されたとき、即ち機関の運転領域が第2の運転領域IIであるときにはステップ106に進んで図16(B)に示すマップから単位時間当りのNOX 吸収量Bが算出される。次いでステップ107ではNOX 吸収量ΣNOXがBに加算される。次いでステップ108ではNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX1に越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAX1になるとステップ109に進み、第2の燃焼から第1の燃焼に切換えられたときにNOX を放出すべきことを示すNOX 放出フラグIがセットされる。
【0078】
一方、ステップ110では、NOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX2を越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAX2になるとステップ111に進み、一部の気筒をリッチにすることによりNOX を放出すべきことを示すNOX 放出フラグIIがセットされる。
次に図20を参照しつつ運転制御について説明する。
【0079】
図20を参照すると、まず初めにステップ200において機関の運転状態が第1の運転領域Iであることを示すフラグIがセットされているか否かが判別される。フラグIがセットされているとき、即ち機関の運転状態が第1の運転領域Iであるときにはステップ201に進んで要求負荷Lが第1の境界X(N)よりも大きくなったか否かが判別される。L≦X(N)のときにはステップ203に進んで低温燃焼が行われる。
【0080】
即ち、ステップ203では図12(A)に示すマップからスロットル弁20の目標開度STが算出され、スロットル弁20の開度がこの目標開度STとされる。次いでステップ204では図12(B)に示すマップからEGR制御弁31の目標開度SEが算出され、EGR制御弁31の開度がこの目標開度SEとされる。次いでステップ205ではNOX 放出フラグIがセットされているか否かが判別される。NOX 放出フラグIがセットされていないときにはステップ206に進んで図11に示される空燃比となるように燃料噴射が行われる。このときリーン空燃比のもとで低温燃焼が行われる。一方、ステップ205においてNOX 放出フラグIがセットされていると判別されたときにはステップ207に進んで図21に示されるリッチ処理Iが行われる。
【0081】
一方、ステップ201においてL>X(N)になったと判別されたときにはステップ202に進んでフラグIがリセットされ、次いでステップ210に進んで第2の燃焼が行われる。
即ち、ステップ210では図14(A)に示すマップからスロットル弁20の目標開度STが算出され、スロットル弁20の開度がこの目標開度STとされる。次いでステップ211では図14(B)に示すマップからEGR制御弁31の目標開度SEが算出され、EGR制御弁31の開度がこの目標開度SEとされる。次いでステップ212ではNOX 放出フラグIIがセットされているか否かが判別される。NOX 放出フラグIIがセットされていないときにはステップ213に進んで図13に示される空燃比となるように燃料噴射が行われる。このときリーン空燃比のもとで第2の燃焼が行われる。一方、ステップ212においてNOX 放出フラグIIがセットされていると判別されたときにはステップ214に進んで図22に示されるリッチ処理IIが行われる。
【0082】
フラグIがリセットされると次の処理サイクルではステップ200からステップ208に進んで要求負荷Lが第2の境界Y(N)よりも低くなったか否かが判別される。L≧Y(N)のときにはステップ210に進み、リーン空燃比のもとで第2の燃焼が行われる。一方、ステップ208においてL<Y(N)になったと判別されたときにはステップ209に進んでフラグIがセットされ、次いでステップ203に進んで低温燃焼が行われる。
【0083】
次に図21を参照しつつリッチ処理Iについて説明する。
図21を参照するとまず初めにステップ300においてNOX 吸収剤25に吸収されていると推定される全NOX ΣNOXを放出させるのに必要なリッチ時間tr が算出される。次いでステップ301ではリッチ処理I開始後の経過時間tがリッチ時間tr を越えたか否かが判別される。t≦tr のときにはステップ302に進んで燃料噴射量が増量され、空燃比がリッチとされる。一方、ステップ301においてt>tr になったと判断されたときにはステップ303に進んでNOX 放出フラグIがリセットされ、次いでステップ304においてΣNOXが零とされる。
【0084】
次に図22を参照しつつリッチ処理IIについて説明する。
図22を参照するとまず初めにステップ400においてNOX 吸収剤25に吸収されていると推定される全NOX ΣNOXを放出させるのに必要なリッチ時間tr が算出される。次いでステップ401ではリッチ処理II開始後の経過時間tがリッチ時間tr を越えたか否かが判別される。t≦tr のときにはステップ402に進んで機関の運転状態から図18(A)又は図18(B)において破線で示される各噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。一方、ステップ401においてt>tr になったと判断されたときにはステップ403に進んでNOX 放出フラグIおよびIIがリセットされ、次いでステップ404においてΣNOXが零とされる。
【0085】
図23に別の実施例を示す。この実施例では例えば1番気筒#1の吸気枝管11の入口部にアクチュエータ60により駆動制御される吸気制御弁61が配置される。また、インタークーラ32とEGR制御弁31間のEGR通路29からはEGR枝通路62が分岐され、このEGR枝通路62は吸気制御弁61下流の吸気枝管11に連結される。このEGR枝管62内にはアクチュエータ63により駆動制御される補助EGR制御弁64が配置される。
【0086】
この実施例では通常、吸気制御弁61は全開せしめられており、補助EGR制御弁64は全閉せしめられている。このときには図1および図2に示される実施例と同様に第1の運転領域Iでは第1の燃焼が行われ、第2の運転領域IIでは第2の燃焼が行われる。
一方、この実施例では第2の燃焼が行われているときにNOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX2を越えたときには一部の気筒、図23に示す実施例では1番気筒#1が第2の燃焼から第1の燃焼に切換えられ、NOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように1番気筒#1の空燃比が大巾にリッチとされる。即ち、具体的に云うと、NOX 吸収量ΣNOXが許容最大値MAX2を越えたときには吸気制御弁61が閉弁せしめられると共に補助EGR制御弁64が開弁せしめられて多量のEGRガスが1番気筒#1に供給され、このとき1番気筒#1ではリッチ空燃比のもとで低温燃焼が行われる。このとき残りの気筒#2,#3,#4への噴射量Q2 ,Q3 ,Q4 が増大せしめられる。
【0087】
この実施例においても1番気筒#1において第1の燃焼を行い、残りの気筒#2,#3,#4において第2の燃焼を行うことによりNOX 吸収剤25からNOX を放出させる場合の各気筒#1,#2,#3,#4への噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 、吸気制御弁61の開度および補助EGR制御弁64の開度は要求負荷Lおよび機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM42内に記憶されている。また、1番気筒#1においてのみリッチ空燃比のもとで低温燃焼してもNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリッチにしえない場合、又は十分にリッチにしえない場合には二つの気筒、例えば1番気筒#1と4番気筒#4においてリッチ空燃比のもとで低温燃焼させることができる。ただし、その場合にはEGR枝通路62を4番気筒#4の吸気枝管11にも連結する必要がある。
【0088】
この実施例においても図19から図21に示すルーチンがそのまま用いられる。ただし、リッチ処理IIについては図22に示すルーチンに代えて図24に示すルーチンが用いられる。従って以下、図24に示すルーチンのみについて説明する。
図24を参照するとまず初めにステップ500においてNOX 吸収剤25に吸収されていると推定される全NOX ΣNOXを放出させるのに必要なリッチ時間tr が算出される。次いでステップ501ではリッチ処理II開始後の経過時間tがリッチ時間tr を越えたか否かが判別される。t≦tr のときにはステップ502に進んで気筒#1,#2,#3,#4への噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。次いでステップ503では吸気制御弁61の開度が機関の運転状態から定まる開度まで閉弁制御され、次いでステップ504では補助EGR制御弁64の開度が機関の運転状態から定まる開度まで開弁制御される。一方、ステップ501においてt>tr になったと判断されたときにはステップ505に進んでNOX 放出フラグIおよびIIがリセットされ、次いでステップ506においてΣNOXが零とされる。
【0089】
ところで排気ガス中にはSOX が含まれており、NOX 吸収剤25にはNOX ばかりでなくSOX も吸収される。このNOX 吸収剤25へのSOX の吸収メカニズムはNOX の吸収メカニズムと同じであると考えられる。
即ち、NOX の吸収メカニズムを説明したときと同様に担体上に白金PtおよびバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明すると、前述したように流入排気ガスの空燃比がリーンのときには酸素O2 がO2 − 又はO2−の形で白金Ptの表面に付着しており、流入排気ガス中のSO2 は白金Ptの表面でO2 − 又はO2−と反応してSO3 となる。次いで生成されたSO3 の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、硫酸イオンSO4 2− の形で吸収剤内に拡散し、安定した硫酸塩BaSO4 を生成する。
【0090】
しかしながらこの硫酸塩BaSO4 は安定していて分解しづらく、流入排気ガスの空燃比を単にリッチにしても硫酸塩BaSO4 は分解されずにそのまま残る。従ってNOX 吸収剤25内には時間が経過するにつれて硫酸塩BaSO4 が増大することになり、斯くして時間が経過するにつれてNOX 吸収剤25が吸収しうるNOX 量が低下することになる。
【0091】
ところがこの硫酸塩BaSO4 はNOX 吸収剤25の温度が一定温度以上、例えば600℃以上になると分解し、このときNOX 吸収剤25への流入排気ガスの空燃比をリッチにするとSOX の形でNOX 吸収剤25から放出される。
そこで以下に説明する実施例ではNOX 吸収剤25からSOX を放出すべきときにはNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチにすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにしている。即ち、一部の気筒の空燃比をリッチにし、残りの気筒の空燃比をリーンにすると空燃比がリッチとされた気筒からは多量の未燃HC,COが排出され、空燃比がリーンとされた気筒からは多量の残存酸素が排出される。
【0092】
このように多量の未燃HC,COおよび多量の残存酸素が同時に排出されると多量の未燃HC,COはNOX 吸収剤25において酸化せしめられ、このときの酸化反応熱によってNOX 吸収剤25の温度は急速に高温となる。その結果、NOX 吸収剤25からSOX が放出されることになる。
なお、NOX 吸収剤25からSOX を放出させるにはNOX 吸収剤25からNOX を放出させる場合に比べてはるかに長い時間を要し、この間一部の気筒の空燃比はリッチにされ続ける。従って以下に述べる実施例では第1の燃焼、即ち低温燃焼が行われているときにNOX 吸収剤25からのSOX 放出制御が行われる。
【0093】
次に図25を参照しつつNOX 吸収剤25からSOX を放出すべきときにセットされるSOX 放出フラグの処理ルーチンについて説明する。
図25を参照するとまず初めにステップ600においてΣQに現在の噴射量Qが加算される。従ってΣQは噴射量の積算値を表している。次いでステップ601では噴射量の積算値ΣQが一定値QMAXを越えたか否かが判別される。ΣQ>QMAXのときにはステップ602に進んでSOX 放出フラグがセットされる。即ち、燃料中には或る割合でイオウ分が含まれているのでΣQ>QMAXになったときにはNOX 吸収剤25に一定量以上のSOX が吸収されていると判断でき、斯くしてこのときSOX 放出フラグがセットされる。
【0094】
次に図26を参照しつつ運転制御について説明する。
図26を参照すると、まず初めにステップ700において機関の運転状態が第1の運転領域Iであることを示すフラグIがセットされているか否かが判別される。フラグIがセットされているとき、即ち機関の運転状態が第1の運転領域Iであるときにはステップ701に進んで要求負荷Lが第1の境界X(N)よりも大きくなったか否かが判別される。L≦X(N)のときにはステップ703に進んで低温燃焼が行われる。
【0095】
即ち、ステップ703では図12(A)に示すマップからスロットル弁20の目標開度STが算出され、スロットル弁20の開度がこの目標開度STとされる。次いでステップ704では図12(B)に示すマップからEGR制御弁31の目標開度SEが算出され、EGR制御弁31の開度がこの目標開度SEとされる。次いでステップ705ではSOX 放出フラグがセットされているか否かが判別される。SOX 放出フラグがセットされていないときにはステップ706に進んでNOX 放出フラグIがセットされているか否かが判別される。NOX 放出フラグIがセットされていないときにはステップ707に進んで図11に示される空燃比となるように燃料噴射が行われる。このときリーン空燃比のもとで低温燃焼が行われる。一方、ステップ706においてNOX 放出フラグIがセットされていると判別されたときにはステップ208に進んで図21に示される既に説明したリッチ処理Iが行われる。
【0096】
一方、ステップ701においてL>X(N)になったと判別されたときにはステップ702に進んでフラグIがリセットされ、次いでステップ712に進んで第2の燃焼が行われる。
即ち、ステップ712では図14(A)に示すマップからスロットル弁20の目標開度STが算出され、スロットル弁20の開度がこの目標開度STとされる。次いでステップ713では図14(B)に示すマップからEGR制御弁31の目標開度SEが算出され、EGR制御弁31の開度がこの目標開度SEとされる。次いでステップ714ではNOX 放出フラグIIがセットされているか否かが判別される。NOX 放出フラグIIがセットされていないときにはステップ715に進んで図13に示される空燃比となるように燃料噴射が行われる。このときリーン空燃比のもとで第2の燃焼が行われる。一方、ステップ714においてNOX 放出フラグIIがセットされていると判別されたときにはステップ716に進んで図22に示される既に説明したリッチ処理IIが行われる。
フラグIがリセットされると次の処理サイクルではステップ700からステップ710に進んで要求負荷Lが第2の境界Y(N)よりも低くなったか否かが判別される。L≧Y(N)のときにはステップ712に進み、リーン空燃比のもとで第2の燃焼が行われる。一方、ステップ710においてL<Y(N)になったと判別されたときにはステップ711に進んでフラグIがセットされ、次いでステップ703に進んで低温燃焼が行われる。
【0097】
一方、低温燃焼が行われているときにステップ705においてSOX 放出フラグがセットされていると判断されたときにはステップ709に進んでリッチ処理III が行われる。このリッチ処理III の第1実施例が図27に示されている。
次に図27を参照しつつリッチ処理III の第1実施例について説明する。
図27を参照するとまず初めにステップ800においてNOX 吸収剤25に吸収されていると推定される全SOX を放出させるのに必要なリッチ時間ts が算出される。次いでステップ801ではリッチ処理III 開始後の経過時間tがリッチ時間ts を越えたか否かが判別される。t≦ts のときにはステップ802に進んでNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチにし、残りの気筒の空燃比をリーンにするのに必要な各気筒#1,#2,#3,#4の噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。
【0098】
この実施例では1番気筒#1および4番気筒#4の空燃比が12とされ、2番気筒#2および3番気筒#3の空燃比が17とされる。このときNOX 吸収剤25への流入排気ガスの空燃比は14程度のリッチ空燃比となる。
従ってこの実施例では1番気筒#1および4番気筒#4からは多量の未燃HC,COが排出され、2番気筒#2および3番気筒#3からは多量の残存酸素が排出されるので酸化反応熱によりNOX 吸収剤25の温度が急速に上昇し、斯くしてNOX 吸収剤25からSOX が放出されることになる。
【0099】
一方、ステップ801においてt>ts になったと判断されたときにはステップ803に進んでSOX 放出フラグがリセットされ、次いでステップ804においてNOX 放出フラグIがリセットされる。次いでステップ805においてΣQおよびΣNOXが零とされる。
次にリッチ制御III の第2実施例について説明する。
【0100】
この実施例ではNOX 吸収剤25からSOX を放出すべきときに温度センサ37により検出されたNOX 吸収剤25の温度Tc が予め定められた温度To 、例えば600℃よりも低いときにはNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリーンとなるように一部の気筒#1,#4の空燃比がリッチにされると共に残りの気筒#2,#3の空燃比がリーンにされ、NOX 吸収剤25の温度Tc が予め定められた温度TC を越えたときにNOX 吸収剤25からSOX を放出すべくNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒#1,#4の空燃比がリッチにされると共に残りの気筒#2,#3の空燃比がリーンとされる。
【0101】
このようにTc >To のときのNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリーンとなるように一部の気筒#1,#4の空燃比をリッチにすると共に残りの気筒#2,#3の空燃比をリーンにすると排気ガス中の酸素濃度が高くなる。その結果、NOX 吸収剤25の温度を一層急速に上昇させることができ、短時間でTc >To となる。
【0102】
次に図28を参照しつつリッチ処理III の第2実施例について説明する。
図28を参照するとまず初めにステップ900においてNOX 吸収剤25の温度Tc が予め定められた温度To よりも高いか否かが判別される。Tc ≦To のときにはステップ901に進んでNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリーンとなるように一部の気筒#1,#4の空燃比をリッチにし、残りの気筒#2,#3の空燃比をリーンにするのに必要な各気筒#1,#2,#3,#4の噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。
【0103】
次いでTc ≦Tc になるとステップ902に進んでNOX 吸収剤25に吸収されていると推定される全SOX を放出させるのに必要なリッチ時間ts が算出される。次いでステップ903ではリッチ処理III 開始後の経過時間tがリッチ時間ts を越えたか否かが判別される。t≦ts のときにはステップ904に進んでNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒#1,#4の空燃比をリッチにし、残りの気筒#2,#3の空燃比をリーンにするのに必要な各気筒#1,#2,#3,#4の噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。
【0104】
一方、ステップ903においてt>ts になったと判断されたときにはステップ905に進んでSOX 放出フラグがリセットされ、次いでステップ906においてNOX 放出フラグIがリセットされる。次いでステップ907においてΣQおよびΣNOXが零とされる。
次に図29を参照しつつリッチ制御III の第3実施例について説明する。
【0105】
この実施例では図29に示されるように2番気筒#2および3番気筒#3に対し共通の第1の排気マニホルド21aが取付けられ、この第1の排気マニホルド21aに酸化触媒又は三元触媒を内蔵した第1の触媒コンバータ38aが連結される。また、1番気筒#1および4番気筒#4に対し共通の第2の排気マニホルド21bが取付けられ、この第2の排気マニホルド21bに酸化触媒又は三元触媒を内蔵した第2の触媒コンバータ38bが連結される。これら触媒コンバータ38a,38bは共通の排気管22を介して図1に示されるようにNOX 吸収剤25に連結される。
【0106】
即ち、NOX 吸収剤25の上流に全気筒#1,#2,#3,#4に対して共通の酸化触媒又は三元触媒を配置するとNOX 吸収剤25からSOX を放出すべく一部の気筒の空燃比がリッチにされ、残りの気筒の空燃比がリーンにされると空燃比がリッチとされている気筒から排出される多量の未燃HC,COおよび空燃比がリーンとされている気筒から排出される多量の酸素が酸化触媒又は三元触媒において反応し、NOX 吸収剤25では未燃HC,COの酸化反応がほとんど行われなくなる。その結果、NOX 吸収剤25の温度を上昇させることができなくなる。
【0107】
しかしながら図29に示す実施例において例えば1番気筒#1と4番気筒#4がリッチにされ、2番気筒#2と3番気筒#3がリーンにされると1番気筒#1および4番気筒#4から排出された多量の未燃HC,COは第2の触媒コンバータ38b内を素通りしてNOX 吸収剤25内に流入し、2番気筒#2および3番気筒#3から排出された多量の残存酸素は第1の触媒コンバータ38a内を素通りしてNOX 吸収剤25内に流入する。その結果、NOX 吸収剤25内において未燃HC,COの酸化反応が行われるのでNOX 吸収剤25の温度が急速に上昇せしめられることになる。
【0108】
なお、酸化触媒又は三元触媒にもSOX が付着する。本発明による実施例ではこれら触媒に付着したSOX を除去するためにNOX 吸収剤25からSOX を放出すべきときには1番気筒#1および4番気筒#4の空燃比と、2番気筒#2および3番気筒#3の空燃比とが交互にリッチとされる。
次に図30を参照しつつリッチ処理III の第3実施例について説明する。
【0109】
図30を参照するとまず初めにステップ1000においてNOX 吸収剤25に吸収されていると推定される全SOX を放出させるのに必要なリッチ時間ts が算出される。次いでステップ1001ではリッチ処理III 開始後の経過時間tがリッチ時間ts を越えたか否かが判別される。t≦ts のときにはステップ1002に進んで1番気筒#1および4番気筒#4の空燃比をリッチにすべきであることを示すフラグXがセットされているか否かが判別される。フラグXがセットされているときにはステップ1003に進んでNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒#1,#4の空燃比をリッチにし、残りの気筒#2,#3の空燃比をリーンにするのに必要な各気筒#1,#2,#3,#4の噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。これに対してフラグXがセットされていないときにはステップ1004に進んでNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒#2,#3の空燃比をリッチにし、残りの気筒#1,#4の空燃比をリーンにするのに必要な各気筒#1,#2,#3,#4の噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 が算出される。
【0110】
一方、ステップ1001においてt>ts になったと判断されたときにはステップ1005に進んでSOX 放出フラグがリセットされ、次いでステップ1006においてNOX 放出フラグIがリセットされる。次いでステップ1007においてΣQおよびΣNOXが零とされる。次いでステップ1008ではフラグXがセットからリセットへ、又はリセットからセットへ反転せしめられる。
【0111】
なお、これまで述べたリッチ制御III の第1実施例から第3実施例においてNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリッチ又はリーンにするときには空燃比センサ27の出力に基づいて各噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 を制御することができる。即ち、各噴射量Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 に夫々フィードバック補正係数FAFを乗算することによって最終的な噴射量Q1 ・FAF,Q2 ・FAF,Q3 ・FAF,Q4 ・FAFを算出するようにする。フィードバック補正係数FAFは図31(A),(B)に示されるように空燃比がリッチになるとスキップ的に減少せしめられた後に一定の積分定数Kでもって徐々に減少し、空燃比がリーンになるとスキップ的に増大せしめられた後に一定の積分定数Kでもって徐々に増大するように制御される。
【0112】
この場合、図31(A)に示されるように空燃比がリッチからリーンになったときのFAFのスキップ量SRを空燃比がリーンからリッチになったときのFAFのスキップ量SLよりも大きくすると図31(A)に示されるようにリッチ時間がリーン時間が長くなり、その結果NOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比はリッチとなる。即ち、SR>SLとすることによってNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリッチにすることができることになる。
【0113】
一方、図31(B)に示されるように空燃比がリッチからリーンになったときのFAFのスキップ量SRを空燃比がリーンからリッチになったときのFAFのスキップ量SLよりも小さくすると図31(B)に示されるようにリーン時間がリッチ時間が長くなり、その結果NOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比はリーンとなる。即ち、SR<SLとすることによってNOX 吸収剤25に流入する排気ガスの空燃比をリーンにすることができることになる。
【0114】
【発明の効果】
未燃HCおよび煤の排出をできる限り抑制しつつNOX 吸収剤からNOX 又はSOX を放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧縮着火式内燃機関の全体図である。
【図2】圧縮着火式内燃機関の平面図である。
【図3】スモークおよびNOX の発生量等を示す図である。
【図4】燃焼圧を示す図である。
【図5】燃料分子を示す図である。
【図6】スモークの発生量とEGR率との関係を示す図である。
【図7】噴射燃料量と混合ガス量との関係を示す図である。
【図8】第1の運転領域Iおよび第2の運転領域IIを示す図である。
【図9】空燃比センサの出力を示す図である。
【図10】スロットル弁の開度等を示す図である。
【図11】第1の運転領域Iにおける空燃比を示す図である。
【図12】スロットル弁等の目標開度のマップを示す図である。
【図13】第2の燃料における空燃比を示す図である。
【図14】スロットル弁等の目標開度のマップを示す図である。
【図15】NOX の放出作用を説明するための図である。
【図16】単位時間当りのNOX 吸収量のマップを示す図である。
【図17】NOX 放出制御を説明するための図である。
【図18】噴射量を説明するための図である。
【図19】NOX 放出フラグを処理するためのフローチャートである。
【図20】機関の運転を制御するためのフローチャートである。
【図21】リッチ処理Iを実行するためのフローチャートである。
【図22】リッチ処理IIを実行するためのフローチャートである。
【図23】圧縮着火式内燃機関の別の実施例を示す平面図である。
【図24】リッチ処理IIを実行するためのフローチャートである。
【図25】SOX 放出フラグを処理するためのフローチャートである。
【図26】機関の運転を制御するためのフローチャートである。
【図27】リッチ処理III の第1実施例を実行するためのフローチャートである。
【図28】リッチ処理III の第2実施例を実行するためのフローチャートである。
【図29】圧縮着火式内燃機関の別の実施例を示す平面図である。
【図30】リッチ処理III の第3実施例を実行するためのフローチャートである。
【図31】フィードバック補正係数の変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
6…燃料噴射弁
15…排気ターボチャージャ
20…スロットル弁
29…EGR通路
Claims (9)
- 燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど発生しなくなる圧縮着火式内燃機関において、流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときにはNO X を吸収し、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNO X を放出するNO X 吸収剤を機関排気通路内に配置し、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない第1の燃焼と、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少い第2の燃焼とを選択的に切換える切換手段を具備し、第2の燃焼が行われているときにNO X 吸収剤からNO X を放出すべきときにはNO X 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにした圧縮着火式内燃機関。
- 上記一部の気筒では第2の燃焼のもとで空燃比がリッチとされる請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関。
- 上記一部の気筒では第2燃焼から第1の燃焼に切換えられた後第1の燃焼のもとで空燃比がリッチとされる請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関。
- 上記第1の燃焼が行われているときにNO X 吸収剤からNO X を放出すべきときには全気筒の燃焼室内における空燃比を一時的に理論空燃比又はリッチにするようにした請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関。
- 燃焼室から排出された排気ガスを機関吸気通路内に再循環させる排気ガス再循環装置を具備し、上記不活性ガスが再循環排気ガスからなる請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関。
- 上記第1の燃焼状態における排気ガス再循環率がほぼ55パーセント以上である請求項5に記載の圧縮着火式内燃機関。
- 機関の運転領域を低負荷側の第1の運転領域と高負荷側の第2の運転領域に分割し、第1の運転領域では第1の燃焼を行い、第2の運転領域 では第2の燃焼を行うようにした請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関。
- 燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達し、燃焼室内の不活性ガス量を更に増大していくと燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度よりも低くなって煤がほとんど発生しなくなる圧縮着火式内燃機関において、流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときにはNO X を吸収し、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸収したNO X を放出するNO X 吸収剤を機関排気通路内に配置し、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が多く煤がほとんど発生しない第1の燃焼と、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量が少い第2の燃焼とを選択的に切換える切換手段を具備し、NO X 吸収剤からSO X を放出すべきときには第1の燃焼が行われているときにNO X 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにした圧縮着火式内燃機関。
- NO X 吸収剤からSO X を放出すべきときにNO X 吸収剤の温度が予め定められた温度よりも低いときにはNO X 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリーンとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにし、NO X 吸収剤の温度が予め定められた温度よりも高くなったときにNO X 吸収剤に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなるように一部の気筒の空燃比をリッチとすると共に残りの気筒の空燃比をリーンにするようにした請求項8に記載の圧縮着火式内燃機関。
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