JP3549031B2 - 塗料用組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線吸収能を有し、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性等に優れた塗膜を形成し得る塗料用組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紫外線吸収剤を重合組成物に添加して用いる場合には、その加工時あるいは使用時において、該重合組成物からの紫外線吸収剤のブリードアウトによる性能の劣化、および、生態系への毒性が問題となっている。そこで、上記の問題を改善するため、重合可能な骨格を有する紫外線吸収剤を用い、これを単独重合、あるいは重合性モノマーと共重合させる方法が用いられている。このような方法としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとアクリル酸とのエステル(特公昭 36−6771号公報)を重合性モノマーと共重合させる方法が報告されている。
【0003】
ところが、紫外線吸収性単量体としてのベンゾフェノン系誘導体のアクリル酸エステルは、最大吸収波長が比較的短く、従って、地上における太陽光線の紫外線領域の中で、その積算エネルギーが比較的大きい波長領域(320 nm〜400 nm)を吸収するには不充分である。そのため、長波長領域での紫外線吸収能が高く、より長い最大吸収波長を有し、しかも、重合組成物からの溶出やブリードアウトのないベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が種々提案されている。そして、例えば、特開平6−172742号公報や特開平5−255447号公報等には、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開平6−172742号公報にて開示されている、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル〕−4−t− ブチル−2H−ベンゾトリアゾールを用いた紫外線吸収剤は、長期間にわたって紫外線が照射され続けた場合に、着色するという欠点を有している。また、上記の特開平5−255447号公報にて開示されている紫外線吸収性組成物は、塗料用組成物として用いた場合に、上記紫外線吸収性組成物からなる塗膜の長期耐候性が劣るという問題点を有している。
【0005】
つまり、上記従来の紫外線吸収剤は、塗料用組成物として用いた場合に、紫外線吸収能や長期耐候性に劣るという問題点を有している。そのため、紫外線吸収能や長期耐候性等に優れた塗膜を形成し得る塗料用組成物が望まれている。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、300 nm〜400 nmの波長領域での紫外線吸収能に特に優れ、かつ、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性等に優れた塗膜を形成し得る塗料用組成物、および、その製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記目的を達成すべく、塗料用組成物およびその製造方法について鋭意検討した結果、特定の構造を有する紫外線吸収性単量体と、特定の構造を有する不飽和単量体とを含む単量体組成物を乳化重合してなる塗料用組成物が、300 nm〜400 nmの波長領域での紫外線吸収能に特に優れ、かつ、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性等に優れている塗膜を形成し得ることを見い出すと共に、特定の乳化剤を用いて上記の単量体組成物を乳化重合することにより、上記の性能を有する塗料用組成物を容易に製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、請求項1記載の発明の塗料用組成物は、上記の課題を解決するために、一般式(1)
【0009】
【化5】
【0010】
(式中、R1 は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R2 は炭素数1〜6の直鎖状または枝分れ鎖状のアルキレン基を表し、R3 は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す)
で表される紫外線吸収性単量体を 0.1 重量%〜 30 重量%の範囲内で含み、一般式(2)
【0011】
【化6】
【0012】
(式中、R10は水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、Zは置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す)
で表される不飽和単量体を2重量%〜 95 重量%の範囲内で含む単量体組成物を乳化重合してなることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明の塗料用組成物は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の塗料用組成物において、上記単量体組成物が一般式(3)
【0014】
【化7】
【0015】
(式中、R6 は水素原子またはシアノ基を表し、R7 、R8 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、R9 は水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す)
で表される紫外線安定性単量体および/または一般式(4)
【0016】
【化8】
【0017】
(式中、R6 は水素原子またはシアノ基を表し、R7 、R8 はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す)
で表される紫外線安定性単量体をさらに含むことを特徴としている。
【0018】
また、請求項3記載の発明の塗料用組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合してなる、酸価 200mgKOH/g以上の水溶性若しくは水分散性の、末端アルキル基を有する重合体および/またはその塩を乳化剤として用いて、上記請求項1または2記載の単量体組成物を乳化重合させることを特徴としている。
【0019】
また、請求項4記載の発明の塗料用組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、請求項3記載の塗料用組成物の製造方法において、上記単量体組成物が、カルボキシル基に対する反応性を有する官能基を含有する官能基含有単量体をさらに含んでいることを特徴としている。
【0020】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明にかかる塗料用組成物は、エマルション型塗料用組成物であり、前記一般式(1)で表される紫外線吸収性単量体と、前記一般式(2)で表される不飽和単量体とを含む単量体組成物を乳化重合してなる。上記の単量体組成物は、必要に応じて、前記一般式(3)で表される紫外線安定性単量体および/または前記一般式(4)で表される紫外線安定性単量体を含んでいてもよく、或いはまた、カルボキシル基に対する反応性を有する官能基を含有する単量体を含んでいてもよく、さらに、上記各単量体以外の単量体を含んでいてもよい。
【0021】
本発明にかかる前記一般式(1)で表される紫外線吸収性単量体(以下、紫外線吸収性単量体(1)と記す)は、式中、R1 で示される置換基が水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基で構成され、R2 で示される置換基が炭素数1〜6の直鎖状または枝分れ鎖状のアルキレン基で構成され、R3 で示される置換基が水素原子またはメチル基で構成され、Xで示される置換基が水素原子、ハロゲン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で構成されるベンゾトリアゾール類である。
【0022】
上記の紫外線吸収性単量体(1)としては、具体的には、例えば、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5− クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5− メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5− シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5−t− ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−5− ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら紫外線吸収性単量体(1)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0023】
本発明にかかる前記一般式(2)で表される不飽和単量体は、式中、R10で示される置換基が水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、Zで示される置換基が、置換基を有していてもよいシクロアルキル基で構成される化合物である。上記Zで示される置換基におけるシクロアルキル基とは、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の単環式飽和炭化水素残基である。そして、該シクロアルキル基は、炭素数1〜7のアルキル基を置換基として有していてもよい。該置換基とは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等である。
【0024】
上記の不飽和単量体(以下、シクロアルキル基含有単量体と記す)としては、具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。シクロアルキル基含有単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0025】
本発明にかかる前記一般式(3)で表される紫外線安定性単量体(以下、紫外線安定性単量体(3)と記す)は、式中、R6 で示される置換基が水素原子またはシアノ基で構成され、R7 、R8 で示される置換基がそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、R9 で示される置換基が水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基で構成され、Yで示される置換基が酸素原子またはイミノ基で構成されるピペリジン類である。上記R7 、R8 で示される置換基とは、具体的には、例えば、水素原子、メチル基またはエチル基であり、R9 で示される置換基とは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の、直鎖状または枝分れ鎖状の炭化水素残基である。
【0026】
上記の紫外線安定性単量体(3)としては、具体的には、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6− ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6− ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4− (メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。紫外線安定性単量体(3)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0027】
本発明にかかる前記一般式(4)で表される紫外線安定性単量体(以下、紫外線安定性単量体(4)と記す)は、式中、R6 で示される置換基が水素原子またはシアノ基で構成され、R7 、R8 で示される置換基がそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜2の炭化水素基で構成され、Yで示される置換基が酸素原子またはイミノ基で構成されるピペリジン類である。上記R7 、R8 で示される置換基とは、具体的には、例えば、水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0028】
上記の紫外線安定性単量体(4)としては、具体的には、例えば、1−(メタ)アクリロイル−4− (メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4− シアノ−4− (メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4− クロトノイルオキシ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。紫外線安定性単量体(4)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0029】
また、上記単量体(つまり、紫外線吸収性単量体(1)、シクロアルキル基含有単量体、および、紫外線安定性単量体(3)・(4))以外の単量体、即ち、単量体組成物に必要に応じて含まれるその他の単量体(以下、その他の単量体と記す)は、該単量体組成物を乳化重合してなる塗料用組成物に要求される各種物性を損なわない化合物であればよい。
【0030】
上記その他の単量体としては、具体的には、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製;商品名 プラクセルFM)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3− クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系単量体等の、酸性官能基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N’− ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等の重合性シアン化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。その他の単量体は、必要に応じて一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0031】
単量体組成物における上記各単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、紫外線吸収性単量体(1)は、 0.1重量%〜30重量%の範囲内が好ましく、1重量%〜20重量%の範囲内がさらに好ましく、2重量%〜15重量%の範囲内が特に好ましい。また、シクロアルキル基含有単量体は、2重量%〜95重量%の範囲内が好ましく、5重量%〜85重量%の範囲内がさらに好ましく、10重量%〜75重量%の範囲内が特に好ましい。尚、上記単量体組成物における紫外線吸収性単量体(1)とシクロアルキル基含有単量体との組み合わせは、特に限定されるものではない。
【0032】
紫外線吸収性単量体(1)の含有量を上記の範囲内とすることにより、塗料用組成物からなる塗膜に、紫外線吸収能を付与することができる。また、塗料用組成物に対するカーボンブラック等の酸性顔料の分散性や、複合顔料を用いた場合の混色安定性を向上させることができる。また、シクロアルキル基含有単量体の含有量を上記の範囲内とすることにより、塗料用組成物からなる塗膜に、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性等の性能を付与することができる。また、該塗膜に美麗感を付与することができる。
【0033】
単量体組成物における紫外線吸収性単量体(1)の含有量が 0.1重量%よりも少ない場合には、得られる塗料用組成物、即ち、塗膜の紫外線吸収能が不充分となるので好ましくない。また、含有量が30重量%よりも多い場合には、該塗料用組成物からなる塗膜の外観、例えば光沢や鮮映性等が劣ると共に、耐溶剤性や耐薬品性等の性能が低下するので好ましくない。さらに、含有量が30重量%よりも多い場合には、乳化重合時における重合安定性が不良となり、凝集物が多くなるおそれがある。
【0034】
単量体組成物におけるシクロアルキル基含有単量体の含有量が2重量%よりも少ない場合には、得られる塗料用組成物をエマルション型塗料として用いた場合における塗膜の耐候性や光沢、硬度等の性能が劣るので好ましくない。また、含有量が95重量%よりも多い場合には、該塗料用組成物からなる塗膜の可撓性が乏しくなり、経時変化によって該塗膜にクラックが発生し易くなるので好ましくない。
【0035】
また、単量体組成物が紫外線安定性単量体(3)および/または紫外線安定性単量体(4)を含む場合における、上記紫外線安定性単量体(3)・(4)の合計量は、 0.1重量%〜15重量%の範囲内が好ましく、 0.5重量%〜10重量%の範囲内がさらに好ましく、1重量%〜5重量%の範囲内が特に好ましい。紫外線安定性単量体(3)・(4)の合計量を上記の範囲内とすることにより、塗料用組成物からなる塗膜の紫外線吸収能を長期にわたって維持することができる。尚、これら紫外線安定性単量体(3)・(4)は、得られる塗料用組成物の物性を損なわない範囲内で用いられる。また、上記単量体組成物における紫外線安定性単量体(3)と紫外線安定性単量体(4)とシクロアルキル基含有単量体との重量比は、特に限定されるものではない。
【0036】
単量体組成物における紫外線安定性単量体(3)・(4)の合計量が 0.1重量%よりも少ない場合には、該塗料用組成物からなる塗膜の耐候性が低下するおそれがある。また、合計量が15重量%よりも多い場合には、該塗料用組成物からなる塗膜の耐水性や光沢、鮮映性等の性能が劣るおそれがある。
【0037】
上記の紫外線吸収性単量体(1)、シクロアルキル基含有単量体、紫外線安定性単量体(3)・(4)、その他の単量体、および、官能基含有単量体(後述する)の混合方法は、特に限定されるものではない。例えば、乳化重合させる前に、上記の各単量体を予め混合してもよく、また、上記の各単量体を乳化重合時に反応液中で混合してもよい。要するに、乳化重合時に反応器内に上記の各単量体が仕込まれていればよい。
【0038】
本発明にかかる塗料用組成物の製造方法においては、上記の単量体組成物を乳化重合させる際の乳化剤として、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等、従来公知の全ての界面活性剤が使用できる。また、後述する重合体および/またはその塩を乳化剤として用いることができる。尚、乳化重合の重合方法や反応条件等については後述する。
【0039】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと、脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等が挙げられる。
【0041】
高分子界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;またはこれら重合体の構成単位である重合性単量体の二種類以上の共重合体;またはこれら重合体の構成単位である重合性単量体と、別の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0042】
これら界面活性剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。さらに、クラウンエーテル類等のいわゆる相間移動触媒も、乳化剤として使用することができる。
【0043】
また、本発明にかかる塗料用組成物の製造方法においては、乳化剤として、炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合してなる、酸価 200mgKOH/g以上の水溶性若しくは水分散性の、末端アルキル基を有する重合体(以下、末端アルキル基含有重合体と記す)および/またはその塩を用いることがより好ましい。そして、乳化剤として上記末端アルキル基含有重合体および/または塩を用いる場合には、上記の単量体組成物が、カルボキシル基に対する反応性を有する官能基を含有する官能基含有単量体をさらに含んでいることが好ましい。尚、官能基含有単量体については後述する。
【0044】
上記末端アルキル基含有重合体および/または塩を乳化剤として用いることにより、初期乾燥性に優れると共に、長期耐候性や耐水性、光沢、鮮映性等の性能にさらに一層優れた塗膜を形成し得るエマルション、即ち、塗料用組成物を製造することができる。
【0045】
上記の末端アルキル基含有重合体は、乳化重合時における重合安定性、および、塗料用組成物からなる塗膜の耐水性や耐溶剤性、強度等の性能を満足させるために、酸価が 200mgKOH/g以上であり、かつ、水溶性若しくは水分散性を有している必要がある。末端アルキル基含有重合体の酸価が 200mgKOH/g未満であると、乳化能が充分に得られないので乳化重合時における重合安定性が不良となり、凝集物が発生する。また、得られる塗料用組成物の貯蔵安定性が劣る。
【0046】
また、末端アルキル基含有重合体は、分子量が 300〜7000の範囲内が好ましく、 400〜4000の範囲内がより好ましい。分子量が上記の範囲外であると、乳化能が充分に得られないので乳化重合時における重合安定性が不良となる。
【0047】
末端アルキル基含有重合体の合成に用いられる上記不飽和カルボン酸は、分子内にカルボキシル基および/またはその塩と、重合性不飽和基とを有する化合物であれば、特に限定されるものではない。不飽和カルボン酸としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸;これら化合物のモノエステルまたは塩等が挙げられる。これら不飽和カルボン酸は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0048】
不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合させることにより、末端アルキル基含有重合体にカルボキシル基を導入することができる。これにより、該末端アルキル基含有重合体に親水性を付与することができる。また、上記のカルボキシル基は、塗料用組成物を硬化させる際の官能基として作用する。
【0049】
上記の単量体成分は、不飽和カルボン酸のみを含んでいてもよいが、不飽和カルボン酸以外の単量体を必要に応じて含んでいてもよい。該単量体は、上記の不飽和カルボン酸と共重合可能な化合物であればよく、特に限定されるものではない。該単量体としては、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルメチルスチレン、スチレンスルホン酸またはその塩等のスチレン誘導体類;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル形成反応により合成される(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸−2− ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2− ヒドロキシプロピル;(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール等とのエステル形成反応により合成されるヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸−2− スルホン酸エチルまたはその塩、ビニルスルホン酸またはその塩、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これら単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0050】
上記単量体成分における不飽和カルボン酸以外の単量体は、得られる末端アルキル基含有重合体の酸価が 200mgKOH/g未満とならないような範囲内で使用すればよい。さらに、該単量体は、末端アルキル基含有重合体を用いて乳化重合させたときに生成するポリマー成分と該末端アルキル基含有重合体との相溶性を考慮して、その種類および使用量を選択することが好ましい。
【0051】
末端アルキル基含有重合体の合成に用いられる上記アルキルメルカプタンは、炭素数6〜18であればよい。アルキルメルカプタンとしては、具体的には、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等が挙げられる。これらアルキルメルカプタンは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、炭素数5以下のアルキルメルカプタンを用いて得られる末端アルキル基含有重合体は、乳化重合時における重合安定性が不良となる。また、得られる塗料用組成物の貯蔵安定性が劣る。
【0052】
アルキルメルカプタンは分子量調整剤であり、かつ、単量体成分を重合してなる重合体に末端アルキル基を導入するために用いられる。そして、該アルキルメルカプタンの存在下に単量体成分を重合することにより、末端アルキル基含有重合体の分子量を 300〜7000の範囲内に調整することができると共に、該末端アルキル基含有重合体に界面活性能を付与することができる。
【0053】
アルキルメルカプタンの使用量は、所望する末端アルキル基含有重合体の分子量に基づいて決定されるが、通常、単量体成分 100重量部に対して、2重量部〜300重量部の範囲内とすればよい。
【0054】
単量体成分を重合させる際の重合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の重合方法、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等を採用することができる。
【0055】
また、単量体成分を重合させる際には、従来公知の油溶性または水溶性の重合開始剤、例えばラジカル重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、末端アルキル基含有重合体を効率的に合成することができるように、アルキルメルカプタン1モルに対して1モル以下が好ましく、 0.1モル以下がより好ましい。単量体成分を重合させる場合において用いることができる溶媒は、該単量体成分、アルキルメルカプタン、および重合開始剤を溶解し、かつ、重合反応を阻害しない化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0056】
反応温度は、特に限定されるものではないが、50℃〜 150℃の範囲が好ましい。また、反応時間は、反応温度、或いは、用いる単量体成分の組成や、アルキルメルカプタン、重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように、適宜設定すればよいが、1時間〜8時間の範囲が好ましい。
【0057】
末端アルキル基含有重合体は界面活性能を充分に有しているが、乳化重合時に、該末端アルキル基含有重合体が有するカルボキシル基の一部若しくは全部を中和剤にて中和して、末端アルキル基含有重合体を塩にすることが好ましい。末端アルキル基含有重合体を塩にすることにより、乳化重合時における重合安定性、および、得られる塗料用組成物の貯蔵安定性をさらに一層良好とすることができる。
【0058】
上記の中和剤は、従来公知のものを使用することができる。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられる。これら中和剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0059】
前記の官能基含有単量体は、末端アルキル基含有重合体のカルボキシル基に対する反応性を有する官能基を有する単量体であれば、特に限定されるものではない。該官能基含有単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−2− メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体類;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2− アジリジニルエチル等のアジリジニル基含有単量体類;2−イソプロペニル−2− オキサゾリン、2−ビニル−2− オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体類等が挙げられる。これら中和剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0060】
単量体組成物が官能基含有単量体を含む場合における、該官能基含有単量体の含有量は、 0.5重量%〜40重量%の範囲内が好ましく、 0.5重量%〜15重量%の範囲内がさらに好ましい。単量体組成物における官能基含有単量体の含有量が 0.5重量%よりも少ない場合には、乳化剤として用いた末端アルキル基含有重合体のカルボキシル基の一部が未反応の状態で残留すると共に、得られる重合体の架橋が不充分となる。このため、塗料用組成物からなる塗膜の初期乾燥性、耐水性、耐溶剤性、強度等の性能が劣るので好ましくない。また、含有量が40重量%よりも多い場合には、乳化重合時における重合安定性が不良となる。また、得られる塗料用組成物の貯蔵安定性が劣る。
【0061】
前記の単量体組成物を乳化重合させる際の反応方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法を採用することができる。例えば、重合開始時に、水に単量体組成物や重合開始剤等を一括して混合し、重合する方法;いわゆるモノマー滴下法;プレエマルション法等の方法を用いることができる。また、いわゆシード重合、コア・シェル重合、パワーフィード重合等の多段重合を実施することにより、エマルション粒子の異相構造化を行なうこともできる。
【0062】
単量体組成物を乳化重合させる際には、従来公知の重合開始剤を用いることができる。上記の重合開始剤としては、具体的には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酢酸等の有機過酸化物; 2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のラジカル生成性アゾ化合物;過酸化水素等を挙げることができる。また、これら重合開始剤と共に、還元剤として亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸等を用いることにより、レドックス系開始剤としてもよい。尚、重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではない。
【0063】
反応温度は、特に限定されるものではないが、0℃〜 100℃の範囲が好ましく、40℃〜95℃の範囲が好ましい。また、反応時間は、反応温度、或いは、用いる単量体組成物の組成、乳化剤や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように、適宜設定すればよいが、1時間〜10時間程度が好ましい。
【0064】
また、単量体組成物を乳化重合させる際には、塗膜に要求される各種物性を損なわない範囲において、反応系に、親水性溶媒や添加剤を添加することもできる。尚、乳化重合の反応条件によっては、乳化剤の不存在下に単量体組成物を乳化重合することもできる。
【0065】
上記の乳化重合により得られる重合体組成物は、そのまま塗料用組成物として使用することができるが、該重合体組成物に公知の添加剤、例えば成膜助剤、顔料、充填剤、トナー、湿潤剤、帯電防止剤、消泡剤、粘性調節剤等を必要に応じて配合することもできる。上記の顔料としては、無機顔料、有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白等の白色顔料;カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、ベンガラ、黄色酸化鉄、黄華等の着色顔料が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエロー等のアゾ化合物;フタロシアニンブルー等のフタロシアニン類等が挙げられる。これら顔料は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記の乳化重合により得られる重合体組成物は、顔料分散性に優れている。
【0066】
以上のように、本発明にかかる塗料用組成物は、エマルション型塗料用組成物であり、紫外線吸収性単量体(1)と、シクロアルキル基含有単量体とを含む単量体組成物を乳化重合してなる構成である。
【0067】
本発明の塗料用組成物は、ベンゾトリアゾール系の骨格を有する紫外線吸収性単量体(1)と、シクロアルキル基含有単量体とを含む単量体組成物を乳化重合してなるので、300 nm〜400 nmの波長領域での紫外線吸収能に特に優れ、かつ、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性、耐溶剤性、耐薬品性、耐変色性、耐クラック性、耐ブリスター性等に優れた塗膜を形成することができる。また、塗料用組成物を塗布等する際の作業性に優れている。尚、ここで、「ベンゾトリアゾール系の骨格」とは、ベンゾトリアゾール環の2位の窒素原子にフェノール環が結合した構造を指している。
【0068】
また、本発明にかかる塗料用組成物の製造方法は、炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合してなる、酸価200mgKOH/g以上の水溶性若しくは水分散性の、末端アルキル基を有する重合体および/またはその塩を乳化剤として用いて、上記の単量体組成物を乳化重合させる方法である。上記の方法により、より一層優れた性能を有する塗膜を形成し得る塗料用組成物を容易に製造することができる。
【0069】
上記の塗料用組成物を塗布することができる被塗布物は、特に限定されるものではない。該被塗布物としては、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂等の各種プラスチック;各種金属;ガラス等が挙げられる。これら被塗布物の表面に本発明の塗料用組成物を塗布等し、塗膜を形成することにより、該被塗布物を紫外線から保護することができる。つまり、本発明の塗料用組成物は、プラスチック成形品用、家電製品用、鋼製品用、大型構造物用、自動車用、建材用、木工用等の紫外線吸収性コーティング剤として広範囲に使用することができる。
【0070】
【作用】
上記の構成によれば、300 nm〜400 nmの波長領域での紫外線吸収能に特に優れ、かつ、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性、耐溶剤性、耐薬品性、耐変色性、耐クラック性、耐ブリスター性等に優れた塗膜を形成し得る塗料用組成物を提供することができる。また、上記の方法によれば、より一層優れた性能を有する塗膜を形成し得る塗料用組成物を容易に製造することができる。
【0071】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示し、「%」は、「重量%」を示す。
【0072】
〔実施例1〕
温度計、ガス吹き込み管、滴下ロート、還流冷却器および攪拌機を取り付けた内容積 0.5Lのセパラブルフラスコに、脱イオン水70.0部、乳化剤(界面活性剤)としてのノニポール200(商品名;三洋化成工業株式会社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル) 1.5部およびニューポールPE−68(商品名;三洋化成工業株式会社製、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコール−ポリオキシエチレングリコール・トリブロック共重合体) 0.3部を仕込んだ。その後、この溶液を窒素ガス気流下で攪拌しながら、65℃に昇温した。
【0073】
一方、上記の滴下ロートに、紫外線吸収性単量体(1)としての2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール(以下、ベンゾトリアゾール(A)と記す) 5.0部、シクロアルキル基含有単量体としてのシクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMAと記す)45.0部、その他の単量体としてのアクリル酸 1.0部、メチルメタクリレート14.0部、n−ブチルメタクリレート25.0部および2−エチルヘキシルアクリレート10.0部からなる単量体組成物(100 部)と、上記ノニポール200(3.0 部)と、ニューポールPE−68(0.8 部)とを脱イオン水25.0部に添加してなるプレエマルション混合物を入れた。単量体組成物の組成をまとめて表1に示す。
【0074】
次に、セパラブルフラスコ内の溶液を65℃で攪拌しながら、該溶液に上記のプレエマルション混合物を2時間かけて滴下した。また、該滴下操作が終了するまでの間に、上記の溶液に、レドックス系開始剤を構成する 5.0%過硫酸アンモニウム水溶液 6.0部および5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 3.0部を分割して10分間毎に添加した。
【0075】
滴下終了後、反応液を窒素ガス気流下で攪拌しながら、65℃で1時間熟成した。そして、重合反応終了後、該反応液を冷却し、次いで、25%アンモニア水 0.5部を添加して中和した。これにより、塗料用組成物としての乳化重合体溶液、つまり、水分散液を得た。この水分散液の不揮発分は50%であり、粘度は1500 cpsであった。
【0076】
次に、上記の水分散液を用いて、塗料を調製した。即ち、上記の水分散液 150.0部に、脱イオン水15.0部、消泡剤であるノプコ8034(商品名;サンノプコ株式会社製) 0.3部、成膜助剤であるCS−12(商品名;チッソ株式会社製)10.0部、および、粘性調節剤である5%アデカノールUH−420(商品名;旭電化工業株式会社製) 1.0部を混合することにより、本発明にかかる塗料(176.3 部)を調製した。
【0077】
一方、下地用の塗料として、アロセット5252(商品名;株式会社日本触媒製、酢酸ビニル系樹脂) 100.0部と、無機顔料としての酸化チタン(商品名 タイパークR−820;石原産業株式会社製)50.0部と、溶剤であるトルエン50.0部とを混合することにより、酢酸ビニル系の溶剤型白塗料(200.0 部)を調製した。
【0078】
そして、調製した溶剤型白塗料をセメント等からなるフレキシブルボードに塗布することにより、該塗料を、乾燥膜厚が約20μmとなるように該ボード表面に塗装した。次に、この塗装面に、本発明にかかる塗料を、乾燥膜厚が約25μmとなるように塗装した。その後、このフレキシブルボードを温度23℃、湿度65%の条件下で7日間乾燥することにより、蛍光UV凝縮試験(QUV試験)用の試験片を作成した。
【0079】
そして、この試験片を用いて、60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性を測定した。測定は、JIS K 5400 −1979に基づいて実施した。測定装置として、株式会社東洋精機製作所製;ユウブコン(UVCON)UC−1型を使用した。測定条件として、照射70℃×4時間および湿潤50℃×4時間を1セットとするサイクルを繰り返して行い、QUV 1000 時間後の上記各種物性を測定した。尚、耐クラック性は、目視による4段階評価(優秀、良好、普通、不良)とした。また、初期の60°光沢値は94であった。
【0080】
その結果、光沢保持率は88%であり、耐変色性(ΔE)は<1であり、耐クラック性は良好であった。これら測定結果をまとめて表2に示す。
【0081】
〔実施例2〕
先ず、本発明にかかる末端アルキル基含有重合体を調製した。即ち、温度計、ガス吹き込み管、滴下ロート、還流冷却器および攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、溶媒であるイソプロピルアルコール 180部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら、81℃に昇温して10分間還流させた。
【0082】
一方、上記の滴下ロートに、不飽和カルボン酸(単量体成分)としてのアクリル酸 174部、アルキルメルカプタンとしてのn−ドデシルメルカプタン36部、および、重合開始剤としての 2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.42部からなる混合物を入れた。
【0083】
次に、セパラブルフラスコ内の溶媒を81℃で攪拌しながら、該溶媒に上記の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、反応液を窒素ガス気流下で攪拌すると共に還流させながら1時間熟成した。そして、重合反応終了後、該反応液を冷却して末端アルキル基含有重合体を含む反応液を得た。
【0084】
この反応液の固形分、即ち、末端アルキル基含有重合体の含有量は53.9%であった。また、この末端アルキル基含有重合体は、下記一般式にて代表される構造を有する、酸価 645mgKOH/g、数平均分子量(Mn)1200の白色粉末状の物質であった。
【0085】
【化9】
【0086】
次に、上記の末端アルキル基含有重合体を含む反応液を用いて塗料用組成物を調製した。即ち、温度計、ガス吹き込み管、滴下ロート、還流冷却器および攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、純水70.0部と、上記の末端アルキル基含有重合体を含む反応液 1.4部とを仕込み、さらに、25%アンモニア水 0.6部を添加して中和することにより、乳化剤を得た。その後、この乳化剤を窒素ガス気流下で攪拌しながら、65℃に緩やかに昇温した。
【0087】
一方、上記の滴下ロートに、ベンゾトリアゾール(A)5部、CHMA40部、紫外線安定性単量体(3)としての4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6− テトラメチルピペリジン(以下、ピペリジン(C)と記す) 2.5部、その他の単量体としてのアクリル酸1部、メチルメタクリレート14部、n−ブチルメタクリレート22.5部、2−エチルヘキシルアクリレート10.0部およびグリシジルメタクリレート5部からなる単量体組成物(100 部)と、該末端アルキル基含有重合体を含む反応液4.2部を25%アンモニア水 1.8部で中和してなる乳化剤(6部)とを純水24.5部に添加してなるプレエマルション混合物を入れた。単量体組成物の組成をまとめて表1に示す。
【0088】
次に、セパラブルフラスコ内の乳化剤を65℃で攪拌しながら、該乳化剤に上記のプレエマルション混合物のうちの10%を滴下した。そして、この滴下操作が終了した後、セパラブルフラスコ内の溶液に、重合開始剤としての 2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)二塩酸塩の5%水溶液 4.0部を添加した。そして、添加後、溶液を窒素ガス気流下、65℃で10分間攪拌した。
【0089】
その後、上記の溶液を攪拌しながら、該溶液に上記のプレエマルション混合物の残り(90%)を3時間かけて滴下した。滴下操作中においては、反応温度を65℃〜70℃に保持した。
【0090】
滴下終了後、反応液を窒素ガス気流下で攪拌しながら、65℃〜70℃で1時間熟成した。そして、重合反応終了後、該反応液を冷却した。これにより、塗料用組成物としての乳化重合体溶液、つまり、水分散液を得た。この水分散液の不揮発分は50%であり、粘度は2000 cpsであった。
【0091】
次に、実施例1と同様の操作を行い、塗料を調製した。また、得られた塗料を用いて、実施例1と同様の操作を行い、試験片を作成した。そして、この試験片を用いて、60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性を測定した。これら測定結果をまとめて表2に示す。
【0092】
〔実施例3〕
実施例2における単量体組成物 100部に代えて、ベンゾトリアゾール(A)15.0部、CHMA20.0部、アクリル酸 1.0部、メチルメタクリレート20.0部、n−ブチルメタクリレート21.0部、2−エチルヘキシルアクリレート19.0部およびグリシジルメタクリレート 4.0部からなる単量体組成物(100 部)を用いた以外は、実施例2と同様の反応および操作を行い、塗料用組成物としての水分散液を得た。この水分散液の不揮発分は50%であり、粘度は1200 cpsであった。
【0093】
次に、実施例1と同様の操作を行い、60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性を測定した。これら測定結果をまとめて表2に示す。
【0094】
〔比較例1〕
実施例2における単量体組成物 100部に代えて、CHMA30.0部、アクリル酸1.0部、メチルメタクリレート30.0部、n−ブチルメタクリレート20.0部、2−エチルヘキシルアクリレート15.0部およびグリシジルメタクリレート 4.0部からなる比較用の単量体組成物(100 部)を用いた以外は、実施例2と同様の反応および操作を行い、比較用の塗料用組成物としての水分散液を得た。この水分散液の不揮発分は50%であり、粘度は1700 cpsであった。
【0095】
次に、実施例1と同様の操作を行い、60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性を測定した。これら測定結果をまとめて表2に示す。
【0096】
〔比較例2〕
実施例2における単量体組成物 100部に代えて、ベンゾトリアゾール(A)10.0部、アクリル酸 1.0部、メチルメタクリレート40.0部、n−ブチルメタクリレート26.0部、2−エチルヘキシルアクリレート19.0部およびグリシジルメタクリレート 4.0部からなる比較用の単量体組成物(100 部)を用いた以外は、実施例2と同様の反応および操作を行い、比較用の塗料用組成物としての水分散液を得た。この水分散液の不揮発分は50%であり、粘度は1000 cpsであった。
【0097】
次に、実施例1と同様の操作を行い、60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性を測定した。これら測定結果をまとめて表2に示す。
【0098】
〔比較例3〕
実施例2における単量体組成物 100部に代えて、2−〔 2’−ヒドロキシ−5’−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル〕−4−t− ブチル−2H−ベンゾトリアゾール(以下、ベンゾトリアゾール(B)と記す) 5.0部、CHMA20.0部、アクリル酸 1.0部、メチルメタクリレート30.0部、n−ブチルメタクリレート16.0部、2−エチルヘキシルアクリレート24.0部およびグリシジルメタクリレート 4.0部からなる比較用の単量体組成物(100 部)を用いた以外は、実施例2と同様の反応および操作を行い、比較用の塗料用組成物としての水分散液を得た。この水分散液の不揮発分は50%であり、粘度は1400 cpsであった。
【0099】
次に、実施例1と同様の操作を行い、60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性を測定した。これら測定結果をまとめて表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示された結果から明らかなように、本発明の塗料用組成物からなる塗膜は、QUV 1000 時間後における60°光沢値、光沢保持率、耐変色性(ΔE)、および耐クラック性が何れも優れている。これにより、本発明の塗料用組成物が、300 nm〜400 nmの波長領域での紫外線吸収能に特に優れ、かつ、長期耐候性、光沢、耐変色性、耐クラック性等に優れた塗膜を形成し得ることがわかる。
【0103】
【発明の効果】
本発明の塗料用組成物は、以上のように、前記一般式(1)で表される紫外線吸収性単量体を 0.1 重量%〜 30 重量%の範囲内で含み、前記一般式(2)で表される不飽和単量体を2重量%〜 95 重量%の範囲内で含む単量体組成物を乳化重合してなる構成である。
【0104】
これにより、300 nm〜400 nmの波長領域での紫外線吸収能に特に優れ、かつ、長期耐候性、耐水性、光沢、鮮映性、耐溶剤性、耐薬品性、耐変色性、耐クラック性、耐ブリスター性等に優れた塗膜を形成し得る塗料用組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0105】
また、本発明の塗料用組成物の製造方法は、以上のように、炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合してなる、酸価 200mgKOH/g以上の水溶性若しくは水分散性の、末端アルキル基を有する重合体および/またはその塩を乳化剤として用いて、上記の単量体組成物を乳化重合させる方法である。
【0106】
これにより、より一層優れた性能を有する塗膜を形成し得る塗料用組成物を容易に製造することができるという効果を奏する。
Claims (4)
- 一般式(1)
で表される紫外線吸収性単量体を 0.1 重量%〜 30 重量%の範囲内で含み、一般式(2)
で表される不飽和単量体を2重量%〜 95 重量%の範囲内で含む単量体組成物を乳化重合してなることを特徴とする塗料用組成物。 - 炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合してなる、酸価 200mgKOH/g以上の水溶性若しくは水分散性の、末端アルキル基を有する重合体および/またはその塩を乳化剤として用いて、上記請求項1または2記載の単量体組成物を乳化重合させることを特徴とする塗料用組成物の製造方法。
- 上記単量体組成物が、カルボキシル基に対する反応性を有する官能基を含有する官能基含有単量体をさらに含んでいることを特徴とする請求項3記載の塗料用組成物の製造方法。
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