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JP3543863B2 - 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法 - Google Patents

1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法 Download PDF

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JP3543863B2
JP3543863B2 JP33386794A JP33386794A JP3543863B2 JP 3543863 B2 JP3543863 B2 JP 3543863B2 JP 33386794 A JP33386794 A JP 33386794A JP 33386794 A JP33386794 A JP 33386794A JP 3543863 B2 JP3543863 B2 JP 3543863B2
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reaction
hexafluoropropene
hexafluoropropane
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博一 青山
明典 山本
典明 柴田
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Daikin Industries Ltd
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Daikin Industries Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C17/00Preparation of halogenated hydrocarbons
    • C07C17/35Preparation of halogenated hydrocarbons by reactions not affecting the number of carbon or of halogen atoms in the reaction
    • C07C17/354Preparation of halogenated hydrocarbons by reactions not affecting the number of carbon or of halogen atoms in the reaction by hydrogenation

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、冷媒、発泡剤、洗浄剤として使用されているCFCやHCFCの代替化合物となり得る有用な化合物である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法としては、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料としてパラジウム触媒を用いて水素添加を行う方法が知られている(Invest. Akand. Nauk s.s.s.r., Otdel. Kim. Nauk. 1960, 1412−18)。
【0003】
しかしながら、この公知の方法においては、使用されているパラジウム触媒は担体としてアルミナを用いているものであるため、このアルミナ担体は、反応中に微量生成してくるHFのために徐々に侵され、触媒活性の低下を引き起こし、経済的ではない。
【0004】
また、上記の公知の方法における水添反応は大きな発熱を伴うため、単独触媒当たりの生産量を増加させようとして、W/F=(触媒重量(g)/全原料の流量(cc/min))を小さくすると、反応温度のコントロールが困難となり、目的の化合物への選択率の低下や、触媒寿命が短くなるといった問題がある。
【0005】
従って、従来の方法では、反応による発熱を抑える目的で、W/Fを大きく取る必要がある。しかしながら、W/Fを大きくした場合には、単位触媒当たりの生産量が低下し、生産の効率が悪く、経済的に不利であり、工業的に適していない。このような問題を解決する手段については、前記文献には何ら記載されていない。
【0006】
しかも、上記文献には、効率良く生成物を分離する方法についても具体的に記載されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、触媒の活性を長時間に亘って保持でき、触媒の寿命を向上させた経済的な1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、反応による発熱を抑え、生成物の選択率及び触媒の寿命を向上させた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の第3の目的は、生成物をロスなしに経済的に製造若しくは回収できる1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の第1の目的を達すべく、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料とした、パラジウム触媒の存在下での気相法による水素添加反応において、触媒寿命の低下を抑える1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法について鋭意検討した。その結果、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させる際、パラジウム触媒の担体として活性炭を用いると、反応中に微量生成してくるHFに対しても耐性を示し、触媒の活性が長時間に亘って低下しないことを見出し、本発明の第1の発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、第1の発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、前記パラジウム触媒を活性炭に担持する、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法に係るものである。
【0012】
この第1の発明の特徴は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る反応において、パラジウム触媒の担体として活性炭を用いる点である。
【0013】
この水素添加反応では、反応温度を制御することにより、通常98%以上の高い選択率で目的の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンが得られるが、このとき副反応として炭素−フッ素結合の還元反応が進行し、結果としてHFが発生する。このHFは、通常パラジウム触媒の担体として知られているアルミナやシリカ、チタニア、ジルコニアを変質させてしまう。このため、これらアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアに担持されたパラジウム触媒は、長時間の反応において触媒活性を低下させてしまう。
【0014】
しかし、第1の発明に用いる活性炭はHFの影響を受けないため、活性炭に担持されたパラジウム触媒は、長時間の反応においても触媒活性の低下が見られない。
【0015】
活性炭としては、ペレット状のもの、粒状のものや、破砕炭を用いることが可能である。特に、ペレット状、粒状のものが好ましい。
【0016】
また、気相反応の方式としては、固定床型気相反応、流動床型気相反応等の方式をとることができる。
【0017】
また、担体の粒径については反応にほとんど影響を及ぼさないが、好ましくは
0.1〜100mm が好適である。
【0018】
パラジウム触媒の担持濃度としては、0.05〜10%(重量%:以下、同様)と幅広いものが使用可能であるが、通常 0.5〜5%担持品が推奨される。
【0019】
また、反応温度は、通常25〜200 ℃、好ましくは25〜150 ℃であり、更に好ましくは25〜120 ℃の範囲である。 200℃以上で反応を行うと、副生成物が生成し、あまり好ましくない。
【0020】
また、反応温度を制御するために、反応に対して不活性な媒体により触媒を希釈してもよい。不活性な媒体としては、ステンレス、ニッケル等の金属片、金属ビーズやアルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属の酸化物、また活性炭等を用いることができる。更に、触媒を希釈する際、触媒層内で触媒の濃度を変化させても良い。通常、原料の仕込みが開始される側の濃度を薄くし、徐々に、または段階的に濃度を上昇させていく方が反応温度の制御が容易となる。
【0021】
第1の発明による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素添加反応において、水素と原料との割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、高い選択率を得るためには、通常、化学量論量以上(即ち、少なくとも化学量論量:以下、同様)の水素を使用して水素化を行う。出発物質の全モルに対して、化学量論量よりかなり多い量、例えば5モル又はそれ以上の水素を使用し得るが、この場合には、水素の反応へのリサイクル量が増加するため、あまり好ましくない。水素の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対するモル比は1〜3がよく、更に好ましくは 1.1〜2の範囲である。
【0022】
反応の圧力は、加圧下、減圧下、常圧下で可能であるが、減圧下での反応は装置が複雑になるため、加圧下、常圧下で反応を行う方が好ましい。また、加圧下(大気圧以上:以下、同様)の反応では、反応器当たりの生産量が増加するため、更に好ましい。好適な圧力範囲は0〜15Kg/cmGである。この範囲以上でも反応することは可能であるが、高い圧力に耐え得る装置が必要となり、設備がコスト高となる。
【0023】
また、接触時間に相当するW/Fは特に限定されず、生産量に応じて変化させることができるが、通常 0.1〜15、特に好ましくは 0.3〜4である。
【0024】
本発明者はまた、上記の第2の目的を達成すべく、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料とした、パラジウム触媒の存在下での気相法による水素添加反応において、反応の温度を制御し、副生成物の生成を低減させ、触媒寿命の低下を抑える1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法について鋭意検討した。その結果、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させる際、パラジウム触媒を充填する反応管の内径を25mm以下とすることにより、外部からの反応熱の除去を効果的に行え、これによって、生産性を上げるためにW/Fを小さくしても反応の温度制御が容易になることを見出し、本発明の第2の発明を完成するに至った。
【0025】
即ち、第2の発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、前記パラジウム触媒を充填する反応器の反応管の内径(多管式反応器の場合はこの多管式反応器の少なくとも一本の反応管の内径)を25mm以下とする、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法に係るものである。
【0026】
この第2の発明の特徴は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる際、パラジウム触媒を充填する反応管の内径(多管式反応器の場合には特に各々の反応管の内径)を25mm以下としたことにある。
【0027】
触媒を用いる気相反応における固定床式の反応形式においては、一般的には触媒は反応管に充填される。充填する触媒の量が一定の場合には、反応管の内径が大きいほど多管式反応器は小さくでき、経済性に優れるが、反応が発熱反応である場合には、反応管の内径が大きいほど除熱が困難となり、反応温度の制御ができないといった不利な点がある。
【0028】
特に、本発明の反応では、発熱量が大きく、反応温度を適切に制御できない場合には、反応の温度が 200℃を超え、反応の選択率の低下を招いてしますう。しかし、第2の発明によれば、反応管の内径を25mm以下としているので、反応による発熱を効果的に放散若しくは放出でき、反応温度を制御することができる。
【0029】
従って、反応管の内径は25mm以下とすることが重要であり、これより内径の大きいものは触媒当たりの生産性を上げた場合には反応温度の制御が困難となるため、好ましくない。
【0030】
熱交換の効率を高めるためには、反応管の外壁の表面積を増加させることが有効であるため、反応管外壁にフィン状の突起物を設けるなど表面積を増加させる手段を用いることもできる。
【0031】
第2の発明において、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる際、パラジウム触媒としては活性炭を担体としたものが好ましい。活性炭は反応中に少量発生するHFの影響を受けないため、活性炭に担持されたパラジウム触媒は、長時間の反応においても触媒活性の低下が見られない。
【0032】
活性炭としては、ペレット状のもの、粒状のものや、破砕炭を用いることが可能である。
【0033】
気相反応の方式としては、固定床型気相反応方式をとるのが好ましい。
【0034】
また、担体の粒径については反応にほとんど影響を及ぼさないが、好ましくは
0.1〜100mm が好適である。
【0035】
パラジウム触媒の担持濃度としては、0.05〜10%と幅広いものが使用可能であるが、通常 0.5〜5%担持品が推奨される。
【0036】
反応温度は、通常25〜200 ℃、好ましくは25〜180 ℃であり、更に好ましくは25〜160 ℃の範囲である。 200℃以上で反応を行うと、副生成物が生成し、あまり好ましくない。
【0037】
第2の発明による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素添加反応において、水素と原料の割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、高い選択率を得るためには、通常、化学量論量以上の水素を使用して水素化を行う。出発物質の全モルに対して、化学量論量よりかなり多い量、例えば5モル又はそれ以上の水素を使用し得るが、この場合には、水素の反応へのリサイクル量が増加するため、あまり好ましくない。水素の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対するモル比は1〜3、更に好ましくは 1.1〜2の範囲であり、この水素を反応器の前で混合して水素化を行うのがよい。
【0038】
反応の圧力は、加圧下、減圧下、常圧下で可能であるが、減圧下での反応は装置が複雑になるため、加圧下、常圧下で反応を行う方が好ましい。また、加圧下の反応では、反応器当たりの生産量が増加するため、更に好ましい。好適な圧力範囲は0〜15Kg/cmGである。この範囲以上でも反応することは可能であるが、高い圧力に耐え得る装置が必要となり、設備が高くなる。
【0039】
接触時間に相当するW/Fは特に限定されず、生産量に応じて変化させることができるが、通常 0.1〜15、特に好ましくは 0.3〜4である。
【0040】
本発明者はまた、上記の第2の目的を達成すべく、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料とした、パラジウム触媒の存在下での気相法による水素添加反応において、反応の温度を制御し、副生成物の生成を低減させ、触媒寿命の低下を抑える1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法について鋭意検討した。その結果、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させる際、パラジウム触媒を充填した反応管中の触媒層を分割し、その分割された区画ごとに1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを分割して仕込むことにより、反応熱の制御を効果的に行え、これによって、生産性を上げるためにW/Fを小さくしても反応の温度制御が容易になることを見出し、本発明の第3の発明を完成するに至った。
【0041】
即ち、第3の発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、前記パラジウム触媒を充填した反応管中の触媒層を分割し、この分割した区画ごとに前記1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを仕込む、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法に係るものである。
【0042】
この第3の発明の特徴は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる際、パラジウム触媒を充填した反応管への1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの仕込み方法にある。
【0043】
触媒を用いる気相反応における固定床式の反応形式においては、一般的には触媒は反応管に充填され、原料はその反応管中の触媒層の上方、若しくは下方から供給される。このとき、本発明の反応である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる水素添加反応のような、反応が早く、しかも発熱の大きい触媒反応の場合には、供給された原料が触媒層と最初に接触する部分で大半の反応が進行するため、この部分での発熱が激しくなり、除熱が困難となり、反応温度の制御ができない場合がある。特に、触媒当たりの生産性を上げるためにW/Fを小さくした場合には、このことが顕著である。
【0044】
本発明のような反応では、反応温度を適切に制御できない場合には、反応の温度が 200℃を超え、反応の選択率の低下や触媒の活性の低下を招いてしまう。しかし、第3の発明によれば、触媒を分割し、各区画ごとに原料を供給するので、各区画ごとに生じる反応の発熱を少なくでき、反応温度を下げることができる。
【0045】
この第3の発明において、反応管中の触媒層を分割して反応を行うには、一方の原料である水素を触媒層の上方又は下方から、そしてもう一方の原料である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを触媒層へ、適切な間隔を保った複数の仕込み口より仕込むことにより達成される。
【0046】
第3の発明の製造方法により、反応の発熱による触媒層での反応温度の偏りが改善され、反応温度の制御が容易となり、反応の選択率を高く保つことができ、また、触媒の活性も長時間に亘って低下しない。
【0047】
ここで、分割する区画の数、又は1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの仕込み口の数は、原料の仕込量、触媒の量、W/F等により適宜設定することが可能であるが、通常2〜100 、好ましくは2〜70、更に好ましくは2〜50である。
【0048】
また、反応温度の制御を容易に行えるように、分割した区画ごと、若しくは、必要に応じた間隔ごとに熱交換の装置を設置してもよい。
【0049】
第3の発明において、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる際、パラジウム触媒としては活性炭を担体としたものが好ましい。活性炭は反応中に少量発生するHFの影響を受けないため、活性炭に担持されたパラジウム触媒は、長時間の反応においても触媒活性の低下が見られない。
【0050】
活性炭としては、ペレット状のもの、粒状のものや、破砕炭を用いることが可能である。
【0051】
気相反応の方式としては、固定床型気相反応方式をとる。
【0052】
また、担体の粒径については反応にほとんど影響を及ぼさないが、好ましくは0.1〜100mm が好適である。
【0053】
パラジウム触媒の担持濃度としては、0.05〜10%と幅広いものが使用可能であるが、通常 0.5〜5%担持品が推奨される。
【0054】
反応温度は、通常25〜200 ℃、好ましくは25〜180 ℃であり、更に好ましくは25〜160 ℃の範囲である。 200℃以上で反応を行うと、副生成物が生成し、あまり好ましくない。
【0055】
第3の発明による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素添加反応において、水素と、分割して仕込む原料である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン全量との割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、高い選択率を得るためには、通常、化学量論量以上の水素を使用して水素化を行う。出発物質の全モルに対して、化学量論量よりかなり多い量、例えば5モル又はそれ以上の水素を使用し得るが、この場合には、水素の反応へのリサイクル量が増加するため、あまり好ましくない。水素の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対するモル比は1〜3、更に好ましくは 1.1〜2の範囲であり、この水素を反応器の前で混合して水素化を行うのがよい。
【0056】
また、反応の圧力は、加圧下、減圧下、常圧下で可能であるが、減圧下での反応は装置が複雑になるため、加圧下、常圧下で反応を行う方が好ましい。また、加圧下の反応では、反応器当たりの生産量が増加するため、更に好ましい。好適な圧力範囲は0〜15kg/cmGである。この範囲以上でも反応することは可能であるが、高い圧力に耐え得る装置が必要となり、設備が高くなる。
【0057】
接触時間に相当するW/Fは特に限定されず、生産量に応じて変化させることができるが、通常 0.1〜15、特に好ましくは 0.3〜4である。
【0058】
本発明者はまた、上記の第3の目的を達成すべく、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料とした、パラジウム触媒の存在下での気相法による水素添加反応において、工業的に可能でしかも経済性に優れた生成物の精製方法について鋭意検討した。その結果、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの精製方法として精留を採用し、その精留操作に供する1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン中の水素の含有量を1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンに対して1vol%(ガス状態)以下であれば、生成物のロスもなく、経済性に優れることを見出し、また、精留操作において非凝縮ガスとして得られる水素、又は有機生成物を含む水素を反応にリサイクルすれば、更に経済性に優れることを見出し、本発明の第4の発明を完成するに至った。
【0059】
即ち、第4の発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを精留によって精製し、この精留操作に供する1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン中の水素の含有量を1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンに対してガス状態で1vol%以下とする、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法に係るものである。
【0060】
この第4の発明の特徴は、精留操作に供する1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン中の水素の含有量にある。
【0061】
一般的に、精留により精製しようとするものの中に非凝縮ガスが含まれている場合には、大気圧を超える精留操作の時には、この非凝縮ガスが精留塔上部のコンデンサ部に貯まり込み、精留による精製に必要である良好な還流状態が得られないことがある。良好な還流状態を得るためには、この非凝縮ガスを精留系内より抜き出す必要があり、この時、非凝縮ガスに同伴されて、精製しようとしている物質も系外へ抜けてしまい、損失量が多くなる。大気圧下、開放系での精留においては、この非凝縮ガスはコンデンサ部で凝縮することなく、系外へ抜けていくため、この時にも精製しようとしている物質が同伴されて系外へ抜けてしまい、損失量が多くなってしまう。
【0062】
しかし、第4の発明によれば、このような損失を少なくするために、精留操作に供する1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン中の水素の含有量を1vol%(ガス状態)以下としている。この水素量は更に好ましくは 0.5vol%以下である。
【0063】
精留操作を連続して大気圧を超える圧力で行う場合には、第4の発明の要件を満たす条件下でも、時間経過と共に精留の系内に非凝縮ガスの水素が蓄積してくるため、系外へ抜き出す必要が生じてくる。この時、系外へ抜き出したガス(即ち、精留操作において非凝縮ガスとして得られる水素、又は有機生成物を含む水素)は反応へリサイクルすることも可能である。このガスは廃棄しても、損失量が僅かであるため、経済性に影響を与えない。
【0064】
第4の発明において、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる際、パラジウム触媒としては活性炭を担持したものが好ましい。活性炭は反応中に少量発生するHFの影響を受けないため、活性炭に担持されたパラジウム触媒は、長時間の反応においても触媒活性の低下が見られない。
【0065】
活性炭としては、ペレット状のもの、粒状のものや、破砕炭を用いることが可能である。
【0066】
気相反応の方式としては、固定床型気相反応、流動床型気相反応等の方式をとることができる。
【0067】
また、担体の粒径については反応にほとんど影響を及ぼさないが、好ましくは
0.1〜100mm が好適である。
【0068】
パラジウム触媒の担持濃度としては、0.05〜10%と幅広いものが使用可能であるが、通常 0.5〜5%担持品が推奨される。
【0069】
反応温度は、通常25〜200 ℃、好ましくは25〜150 ℃であり、更に好ましくは25〜120 ℃の範囲である。 200℃以上で反応を行うと、副生成物が生成し、あまり好ましくない。
【0070】
第4の発明による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素添加反応において、水素と原料の割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、高い選択率を得るためには、通常、化学量論量以上の水素を使用して水素化を行う。出発物質の全モルに対して、化学量論量よりかなり多い量、例えば5モル又はそれ以上の水素を使用し得るが、この場合には、水素の反応へのリサイクル量が増加するため、あまり好ましくない。水素の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対するモル比は1〜3、更に好ましくは 1.1〜2の範囲であり、この水素を反応器の前で混合して水素化を行うのがよい。
【0071】
また、反応及び/又は精留操作時の圧力は、加圧下、減圧下、常圧下で可能であるが、減圧下での反応は装置が複雑になるため、加圧下、常圧下で反応を行う方が好ましい。また、加圧下の反応では、反応器当たりの生産量が増加するため、更に好ましい。好適な圧力範囲は 0.5〜15Kg/cmGである。この範囲以上でも反応することは可能であるが、高い圧力に耐え得る装置が必要となり、設備が高くなる。
【0072】
接触時間に相当するW/Fは特に限定されず、生産量に応じて変化させることができるが、通常 0.1〜15、特に好ましくは 0.3〜4である。
【0073】
本発明者は更に、上記の第3の目的を達成すべく、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料とした、パラジウム触媒の存在下での気相法による水素添加反応において、工業的に可能でしかも経済性に優れた生成物と水素の分離方法について鋭意検討した。その結果、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させた後、反応終了後の有機生成物と水素の混合ガスを凝縮器にて冷却凝縮し、水素、又は有機生成物を含む水素を非凝縮成分として分離回収し、有機生成物、又は水素を含む有機生成物を凝縮成分として分離回収すれば、生成物と水素を容易に分離できることを見出し、また、回収した水素は反応にリサイクルすれば、経済性にも優れることを見出し、本発明の第5の発明を完成するに至った。
【0074】
即ち、第5の発明は、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、反応終了後の有機生成物と水素の混合ガスを凝縮器にて冷却凝縮し、水素、又は有機生成物を含む水素を非凝縮成分として分離回収し、有機生成物、又は水素を含む有機生成物を凝縮成分として分離回収し、これによって1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造時の水素と1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを分離する、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法に係るものである。
【0075】
この第5の発明の特徴は、水素と生成物の分離方法にあり、反応終了後の有機生成物と水素の混合ガスを、凝縮器にて冷却凝縮することにより、水素、又は有機生成物を含む水素を非凝縮成分として、有機生成物、又は水素を含む有機生成物を凝縮成分として分離することができる。
【0076】
そして、水素、又は有機生成物を含む水素である非凝縮成分はそのまま、または必要に応じてコンプレッサ等で昇圧し、更に必要に応じてタンクに貯めた後、反応へリサイクルできる。凝縮成分である有機生成物、又は水素を含む有機生成物は通常の分離精製方法、例えば精留することにより、目的物の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離できる。
【0077】
また、凝縮器の温度を一定とした場合には、水素と有機生成物との分離の効率は、凝縮器に導入される有機生成物と水素の混合ガスの圧力が高いほど高くなる。従って、必要に応じて有機生成物と水素の混合ガスをコンプレッサにて昇圧した後、或いは、加圧下で1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素をパラジウム触媒存在下に反応させた後、混合ガスを凝縮器へ導入して冷却凝縮することが、分離の効率を高めるためには必要である。
【0078】
更に、加圧下の反応は、反応器当たりの生産量が増加するため、好ましい。好適な圧力範囲は0〜15Kg/cmGである。この範囲以上でも反応することは可能であるが、高い圧力に耐え得る装置が必要となり、設備が高くなる。
【0079】
凝縮器の温度は反応の条件等により最適のものを採り得るが、通常−20℃〜100 ℃、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10〜60℃の温度が採用できる。
【0080】
第5の発明において、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを原料として、パラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させる際、パラジウム触媒としては活性炭を担体としたものが好ましい。活性炭は反応中に少量発生するHFの影響を受けないため、活性炭に担持されたパラジウム触媒は、長時間の反応においても触媒活性の低下が見られない。
【0081】
活性炭としては、ペレット状のもの、粒状のものや、破砕炭を用いることが可能である。
【0082】
気相反応の方式としては、固定床型気相反応、流動床型気相反応等の方式をとることができる。
【0083】
また、担体の粒径については反応にほとんど影響を及ぼさないが、好ましくは
0.1〜100mm が好適である。
【0084】
パラジウム触媒の担持濃度としては、0.05〜10%と幅広いものが使用可能であるが、通常 0.5〜5%担持品が推奨される。
【0085】
反応温度は、通常25〜200 ℃、好ましくは25〜180 ℃であり、更に好ましくは25〜160 ℃の範囲である。 200℃以上で反応を行うと、副生成物が生成し、あまり好ましくない。
【0086】
第5の発明による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素添加反応において、水素と原料の割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、高い選択率を得るためには、通常、化学量論量以上の水素を使用して水素化を行う。出発物質の全モルに対して、化学量論量よりかなり多い量、例えば5モル又はそれ以上の水素を使用し得るが、この場合には、水素の反応へのリサイクル量が増加するため、あまり好ましくない。水素の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対するモル比は1〜3、更に好ましくは 1.1〜2の範囲であり、この水素を反応器の前で混合して水素化を行うのがよい。
【0087】
接触時間に相当するW/Fは特に限定されず、生産量に応じて変化させることができるが、通常 0.1〜15、特に好ましくは 0.3〜4である。
【0088】
更に、本発明は、上記の第2の目的を達成し、反応温度を抑制でき、副生成物の生成を抑え、高収率にて目的物を得るため、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る反応において、反応生成物である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンをリサイクル(循環物質)として前記1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン及び/又は前記水素と同時に反応域に流通させることが望ましい、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法も提供するものである。
【0089】
そして、この水素添加反応は、反応温度を 200℃以下に保つことがよい。また、反応生成物である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを希釈剤として使用すること、具体的には、反応生成物の一部として1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを分離し、反応域に流通させることがよい。
【0090】
この製造方法において、特に、希釈剤として反応の生成物である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを用いると、反応熱の除去を効果的に行え、また、反応混合物からの水素の分離と再使用、更には生成物の分離もロスなく行える、といった利点を有している。
【0091】
通常、希釈剤としては、反応に対して不活性である窒素、アルゴン、ヘリウム等が用いられる。しかし、これらのガスは凝縮させることが困難であり、反応混合物からこれらのガスを除去する際には、通常は精留塔等のコンデンサから抜き出すことになるが、このとき沸点の低い生成物、原料等が同伴されて抜け出してしまうため、経済的に不利である。また、反応による発熱は抑えることが困難である。
【0092】
本発明の反応においては、一方の原料として水素を用いているが、水素を過剰に用いた場合には、抜き出したガスから水素を分離、回収、再使用することは経済的に不利である。そして、希釈剤として原料である水素を用いることも可能であるが、反応熱を除去する能力が小さいため、効果を得るためには大量の水素が必要となり、反応生成物の選択率が低下する上に、反応後の水素のリサイクル設備が大きくなるという不利な点がある。
【0093】
また、もう一方の原料である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを希釈剤として用いることも可能であるが、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンが過剰の場合には、反応の選択率が低下するといった欠点が生じることがある。
【0094】
本発明の製造方法において、気相反応の方式としては、固定床型気相反応、流動床型気相反応等の方式をとることができる。
【0095】
また、使用可能なパラジウム触媒は、活性炭、シリカゲル、酸化チタン及びジルコニア、その他の担体のうちから選ばれた少なくとも一種を用いることができるが、活性炭に担持されたものが好ましい。
【0096】
また、担体の粒径については反応にほとんど影響を及ぼさないが、好ましくは0.1〜100mm が好適である。触媒の担持濃度としては、0.05〜10%と幅広いものが使用可能であるが、通常は 0.5〜5%担持品が推奨される。
【0097】
反応温度は、通常25〜200 ℃、好ましくは25〜150 ℃であり、更に好ましくは25〜120 ℃の範囲である。 200℃を超える温度で反応を行うと、副生成物が生成し易く、あまり好ましくない。
【0098】
本発明による1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンの水素添加反応において、水素と原料との割合は大幅に変動させ得る。しかしながら、高い選択率を得るためには、通常、少なくとも化学量論量(即ち、化学量論量以上)の水素を使用して水素化を行う。
【0099】
出発物質の全モルに対して、化学量論量よりかなり多い量、例えば5モルまたはそれ以上の水素を使用し得るが、この場合には、水素の反応へのリサイクル量が増加するため、あまり好ましくない。水素の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対するモル比は1〜3がよく、更に好ましくは 1.1〜2の範囲である。
【0100】
反応の圧力は特に限定されず、加圧下、減圧下、常圧下で可能であるが、減圧下では装置が複雑になるため、加圧下、常圧下で反応を行う方が好ましい。
【0101】
また、接触時間に相当するW/Fは特に限定されず、生産量に応じて変化させることができるが、通常は 0.1〜15、特に好ましくは 0.3〜4である。
【0102】
【発明の作用効果】
本発明の第1の発明によれば、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させる際、パラジウム触媒の担体として活性炭を用いるので、反応中に微量生成してくるHFに対しても耐性を示し、触媒の活性が長時間に亘って低下しない。
【0103】
また、本発明の第2の発明では、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させる際、パラジウム触媒を充填する反応管の内径を25mm以下とすることにより、外部からの反応熱の除去を効果的に行え、これによって、生産性を上げるためにW/Fを小さくしても反応の温度制御が容易になる。
【0104】
また、本発明の第3の発明では、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させる際、パラジウム触媒を充填した反応管中の触媒層を分割し、その分割された区画ごとに1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを分割して仕込むことにより、反応熱の制御を効果的に行え、これによって、生産性を上げるためにW/Fを小さくしても反応の温度制御が容易になる。
【0105】
また、本発明の第4の発明では、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの精製方法として精留を採用し、その精留操作に供する1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン中の水素の含有量を1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンに対して1 vol%(ガス状態)以下であれば、生成物のロスもなく、経済性に優れることを見出し、また、精留操作において非凝縮ガスとして得られる水素、又は有機生成物を含む水素を反応にリサイクルすれば、更に経済性に優れる。
【0106】
更に、本発明の第5の発明では、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒下で水素添加反応させた後、反応終了後の有機生成物と水素の混合ガスを凝縮器にて冷却凝縮し、水素、又は有機生成物を含む水素を非凝縮成分として分離回収し、有機生成物、又は水素を含む有機生成物を凝縮成分として分離回収すれば、生成物と水素を容易に分離できることを見出し、また、回収した水素は反応にリサイクルすれば、経済性にも優れる。
【0107】
【実施例】
以下、本発明の実施例を更に具体的に説明する。
【0108】
実施例1
中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 400mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒5.12gを充填し、窒素を40cc/minで2時間流通させた。
【0109】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。
【0110】
水素60cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 37cc/min を反応管に流通させた。
【0111】
生成ガスは、水洗後、ガスクロマトグラフィにより分析を行った。5時間後の結果は、転化率 100%、選択率99.5%であり、1000時間反応後も転化率、選択率共に変化なかった。
【0112】
比較例1
実施例1において、触媒をアルミナに3%濃度で担持されたパラジウム触媒 5.5gに変え、同様に反応を行った。5時間後の結果は、転化率 100%、選択率99.1%であったが、 400時間反応後から転化率が低下し始めた。
【0113】
実施例2
中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 400mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒5.12gを充填し、窒素を40cc/minで2時間流通させた。
【0114】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。
【0115】
水素40cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 37cc/min を大気圧下で反応管に流通させた。流通開始に伴い、反応温度が上昇し、 125℃で安定した。
【0116】
大気圧下の反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率 100%、選択率99.5%であった。
【0117】
実施例3
実施例2において、反応圧力を2Kg/cmGとし、反応管を水冷して同様に反応を行った。反応温度は98℃で安定した。
【0118】
反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率
100%、選択率99.6%であった。
【0119】
実施例4
外部からの水冷が可能で、目皿を備えかつ熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ60mmのSUS316製の4本の反応管を一辺30cmの正方形の頂点にそれぞれ配置して、多管式反応器とした。この多管式反応器に、活性炭に1%の濃度で担持されたパラジウム触媒25gを充填した。
【0120】
このとき、4本の反応管のそれぞれに、触媒をほぼ均一となるように充填し、それぞれの反応管ごとの圧力損失がほぼ同一の値となることを確認した。
【0121】
その後、多管式反応器の仕込み口より窒素を 200cc/minで2時間流通させた後、水冷しながら、水素 160cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 140cc/minを2Kg/cmGの圧力下で流通させた。
【0122】
流通開始2時間後、多管式反応器のそれぞれの反応管の触媒層上部の温度を測定したところ、それぞれ85℃、87℃、90℃、90℃であった。反応器の出口ガスをガスクロマトグラフィにより分析した結果、転化率 100%、選択率99.5%であった。
【0123】
実施例5
中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 600mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒 15.40gを充填し、窒素を 100cc/minで2時間流通させた。
【0124】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。
【0125】
反応管上部より、水素 123cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 56cc/min を大気圧下で流通させ、更に反応管中の触媒層の中央部より1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 56cc/min を流通させた。この時、全流量を考慮したW/Fは3.93であった。流通開始に伴い反応温度が上昇し、触媒層上部は 140℃で、触媒層中央部は 155℃で安定した。
【0126】
反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率
100%、選択率99.5%であった。
【0127】
実施例6
中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 600mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒 15.40gを充填し、窒素を 100cc/minで2時間流通させた。
【0128】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。
【0129】
反応管上部より、水素 123cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 37cc/min を大気圧下で流通させ、更に三等分した反応管中の触媒層の1/3の部分より1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 37cc/min 、2/3の部分より同量の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを流通させた。流通開始に伴い反応温度が上昇し、触媒層上部は 110℃で、触媒層の1/3の部分は 115℃で、触媒層の2/3の部分は 116℃で安定した。
【0130】
反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率
100%、選択率99.8%であった。
【0131】
実施例7
実施例5と同様の反応を2Kg/cmGの加圧下で行った結果、触媒層上部は 135℃で、触媒層中央部は 145℃で安定した。
【0132】
反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率
100%、選択率99.7%であった。
【0133】
なお、実施例5において触媒層を分割せず、中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 600mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒 15.36gを充填し、窒素を 100cc/minで2時間流通させた。
【0134】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。
【0135】
水素 123cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 111cc/minを大気圧下で反応管上部から流通させた。このときのW/Fは3.94であった。流通開始に伴い反応温度が上昇し、触媒層上部の温度は 230.5℃で安定した。
【0136】
反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率
100%、選択率98.5%であった。
【0137】
実施例8
6.6Kg/cmGの圧力下で、液中に水素を0.4vol%含む反応生成物(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン99.5%含有)を加圧下で精留した。
【0138】
反応生成物を液状態で加圧精留塔のスチルに仕込み、5Kg/cmGの圧力となるように精留を行った。この圧力下で精留塔の塔頂より、非凝縮ガスを抜き出すことなく還流はスムーズにはじまり、十分な精留の効果が得られた。この時の精留塔の塔頂部の還流液の温度は58〜60℃であった。
【0139】
実施例9
中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 400mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒5.12gを充填し、窒素を40cc/minで2時間流通させた。
【0140】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。
【0141】
水素 40cc/min 、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 37cc/min を大気圧下で流通させた。流通開始に伴い、反応温度が上昇し、 125℃で安定した。
【0142】
大気圧下の反応管出口ガスを水洗後に、−10℃に冷却した凝縮器に導いたところ、非凝縮成分としての1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む水素と、凝縮成分としての1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンとに分離できた。
【0143】
なお、反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率 100%、選択率99.5%であった。
【0144】
実施例 10
実施例9において、反応圧力を2Kg/cmGとし、反応管を水冷して同様に反応を行った。反応温度は98℃で安定した。
【0145】
反応管出口ガスを、圧力を保ったまま水洗後、20℃に冷却した凝縮器に導いたところ、非凝縮成分としての少量の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む水素と、凝縮成分としての少量の水素を含む1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンとに分離できた。
【0146】
なお、反応管出口ガスを、ガスクロマトグラフィにより分析を行った結果は、転化率 100%、選択率99.6%であった。また、非凝縮成分として得られた少量の1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む水素を回収し、再使用したが、反応は通常通り進行し、なんら影響は与えないことを確認した。
【0147】
実施例 11
中央に目皿を備え、熱電対温度計用の内管を備えた内径20mm、長さ 400mmのSUS316製反応管に、活性炭に3%濃度で担持されたパラジウム触媒5.12gを充填し、窒素を40cc/minで2時間流通させた。
【0148】
その後、窒素を水素に変え、同流量で流しながら、電気炉にて 200℃に加熱し、2時間保持した。その後、水素を流しながら室温まで冷却し、外部加熱装置を取り除き、反応管を風冷できるようにした。触媒層の反応温度を測定するために、触媒層の入口、中央、出口に熱電対温度計をセットした。
【0149】
水素 123cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 111cc/minを反応管に流通させると、発熱により触媒層の温度が上昇し始めた。生成ガスは水洗後、ガスクロマトグラフィにより分析を行った。5時間後の結果は、次の表1の通りであった。
【0150】
表1
Figure 0003543863
【0151】
ここで、反応管に、上記流量の原料と共に、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを 200cc/minで流通させた。2時間後の結果は、次の表2の通りであった。
【0152】
表2
Figure 0003543863
これによれば、反応温度(触媒層温度)を 200℃以下に制御でき、選択率も向上していた。
【0153】
比較例2
実施例11において5時間後から、窒素 200cc/minを原料と共に反応管に流通させた。2時間後の結果は、次の表3の通りであった。
【0154】
表3
Figure 0003543863
これによれば、反応温度(触媒層温度)を 200℃以下には制御できず、選択率の向上も僅かであった。
【0155】
比較例3
実施例11において5時間後から、水素 123cc/min、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン 308cc/minを反応管に流通させた。2時間後の結果は、次の表4の通りであった。
【0156】
表4
Figure 0003543863
これによれば、反応温度(触媒層温度)を 200℃以下には制御できるが、選択率が大きく低下していた。

Claims (32)

  1. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、前記パラジウム触媒を活性炭に担持する、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造方法。
  2. 反応を大気圧以上の圧力で行う、請求項1に記載した製造方法。
  3. パラジウム触媒の活性炭担体への担持濃度を0.05〜10重量%とする、請求項1又は2に記載した製造方法。
  4. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対して少なくとも化学量論量の水素を使用して水素化を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載した製造方法。
  5. 反応を0〜15kg/cm2Gの圧力で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載した製造方法。
  6. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、前記パラジウム触媒を充填する反応器の反応管の内径を25mm以下とする、請求項1に記載した製造方法。
  7. 反応器を多管式反応器とし、この反応器の少なくとも一本の反応管の内径を25mm以下とする、請求項1に記載した製造方法。
  8. パラジウム触媒の活性炭担体への担持濃度を0.05〜10重量%とする、請求項6又は7に記載した製造方法。
  9. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対して少なくとも化学量論量の水素を使用して水素化を行う、請求項6又は7に記載した製造方法。
  10. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン1モルに対して1モル以上、3モル以下の水素を反応器の前で混合して水素化を行う、請求項に記載した製造方法。
  11. 反応を0〜15kg/cm2Gの圧力で行う、請求項6〜10のいずれか1項に記載した製造方法。
  12. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、前記パラジウム触媒を充填した反応管中の触媒層を分割し、この分割した区画ごとに前記1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンを仕込む、請求項1に記載した製造方法。
  13. パラジウム触媒の活性炭担体への担持濃度を0.05〜10重量%とする、請求項12に記載した製造方法。
  14. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対して少なくとも化学量論量の水素を使用して水素化を行う、請求項12又は13に記載した製造方法。
  15. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン1モルに対して1モル以上、3モル以下の水素を反応器の前で混合して水素化を行う、請求項14に記載した製造方法。
  16. 反応を0〜15kg/cm2Gの圧力で行う、請求項12〜15のいずれか1項に記載した製造方法。
  17. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを精留によって精製し、この精留操作に供する1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン中の水素の含有量を1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンに対してガス状態で1vol%以下とする、請求項1に記載した製造方法。
  18. 精留操作において非凝縮ガスとして得られる水素、又は有機生成物を含む水素を反応にリサイクルする、請求項17に記載した製造方法。
  19. 精留操作を大気圧以上の圧力で行う、請求項17又は18に記載した製造方法。
  20. 精留操作を0.5〜15kg/cm2Gの圧力で行う、請求項17又は18に記載した製造方法。
  21. パラジウム触媒の活性炭担体への担持濃度を0.05〜10重量%とする、請求項17〜20のいずれか1項に記載した製造方法。
  22. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対して少なくとも化学量論量の水素を使用して水素化を行う、請求項1721のいずれか1項に記載した製造方法。
  23. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン1モルに対して1モル以上、3モル以下の水素を反応器の前で混合して水素化を行う、請求項22に記載した製造方法。
  24. 反応を0〜15kg/cm2Gの圧力で行う、請求項1723のいずれか1項に記載した製造方法。
  25. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンと水素とをパラジウム触媒の存在下にガス状態で反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを製造するに際し、反応終了後の有機生成物と水素の混合ガスを凝縮器にて冷却凝縮し、水素、又は有機生成物を含む水素を非凝縮成分として分離回収し、有機生成物、又は水素を含む有機生成物を凝縮成分として分離回収し、これによって1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの製造時の水素と1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンとを分離する、請求項1に記載した製造方法。
  26. 反応終了後の有機生成物と水素との混合ガスをコンプレッサにて昇圧した後、凝縮器にて冷却凝縮する、請求項25に記載した製造方法。
  27. 非凝縮成分として分離回収した水素、又は有機生成物を含む水素を反応にリサイクルする、請求項25又は26に記載した製造方法。
  28. パラジウム触媒の活性炭担体への担持濃度を0.05〜10重量%とする、請求項25〜27のいずれか1項に記載した製造方法。
  29. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンに対して少なくとも化学量論量の水素を使用して水素化を行う、請求項2528のいずれか1項に記載した製造方法。
  30. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン1モルに対して1モル以上、3モル以下の水素を反応器の前で混合して水素化を行う、請求項29に記載した製造方法。
  31. 反応を0〜15kg/cm2Gの圧力で行う、請求項2530のいずれか1項に記載した製造方法。
  32. 1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペンをパラジウム触媒の存在下にガス状態で水素と反応させて1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る反応において、反応生成物である1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンをリサイクルとして前記1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロペン及び/又は前記水素と同時に反応域に流通させる、請求項1に記載した製造方法。
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