JP3543699B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクカートリッジからのインクを受けて印刷データに基づいてインク滴を吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドのノズル形成面を封止して吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッドのノズル開口よりインクを吸引排出させるキャッピング手段を備えたインクジェット式記録装置に関し、特に前記キャッピング手段から排出されたインクを吸収して保持する廃インクタンクの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。このようなインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、記録ヘッドをキャリッジ上で記録用紙の幅方向に移動させながら記録用紙に対してインク滴を吐出させることで記録が行われる。
【0003】
そしてキャリッジ上に、ブラックインクおよびイエロー、シアン、マゼンタの各カラーインクを吐出可能な記録ヘッドを搭載し、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0004】
前記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化により、また塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより、印刷不良を起こすという問題を抱えている。
【0005】
このために、インクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル開口を封止するためのキャッピング手段と、必要に応じてノズル形成面を清掃するワイピング部材を備えている。前記キャッピング手段は、印刷の休止時に前記したノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャップ部材によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引排出させてノズル開口のインク固化による目詰まりや、インク流路内への気泡混入によるインク吐出不良を解消する機能をも備えている。
【0006】
記録ヘッドの目詰まりや、インク流路内への気泡混入を解消させるために行うインクの強制的な吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれ、これは装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、またユーザが記録画像の品質が悪化したのを認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、記録ヘッドのノズル形成面をキャッピング手段によって封止し、記録ヘッドのノズル開口およびその上流に存在する増粘したインクならびに気泡を負圧によって排出させる操作がなされる。
【0007】
そして、クリーニング操作によって記録ヘッドから吸引排出されたインクは、吸引ポンプの駆動によって廃インクタンク内に導入され、廃インクタンク内に収納されたインク吸収材によってインクを保持させるように構成されている。
【0008】
例えば、特開平9−300656号公報に記載の廃インク貯留装置では、廃インク容器に、6枚のインク吸収板を積層したインク吸収材が収容されている。この場合、上部の2枚のインク吸収板にはその端部に切欠き部が形成されており、この切欠き部に臨ませた廃インクチューブの下流端から、廃インクをインク吸収材に滴下(流下)させるようにしている。すなわち、比較的粘性の低い廃インクを、インク吸収材の端部中段からその全域に吸収させるようにしている。これにより、インクジェット式記録装置の耐用年数に見合う十分な量の廃インクを、比較的小さな容器で貯留できるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の廃インク貯留装置では、廃インクが、常にインク吸収材の切欠き部分(切欠き部に面する部位)に滴下され且つこの部分から全域に吸収される。切欠き部分に滴下された廃インクは、いったん切欠き部分に溜まってから徐々に吸収される。このため、廃インクの表面が乾燥し、吸収され難い粘性の高い部分が切欠き部分に付着し、これが繰り返されることで、切欠き部分に目詰まりを生ずる。目詰まりを生ずると、インク吸収材への廃インクの吸収が阻止され、インク吸収材が飽和状態になる前に、廃インクが廃インクタンクから溢れてしまう不具合があった。
【0010】
本発明は、前記したような技術的課題に着目してなされたものであり、インクをインク吸収材に均一に且つ効率よく吸収させることができるインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するために成された本発明にかかるインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからのインクの供給を受けて、ノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止し吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッドのノズル開口よりインクを吸引排出させるキャッピング手段と、吸引ポンプの駆動により前記キャッピング手段から排出されたインクを吸収して保持するインク吸収材を収納した廃インクタンクとを備えたインクジェット式記録装置であって、前記インク吸収材は、前記キャッピング手段から排出されたインクが滴下する貫通孔と、この貫通孔を連通すると共にこの貫通孔から放射状に形成された切欠き溝とを有する複数のインク吸収材からなり、これらのインク吸収材はそれぞれの前記貫通孔を互いに連通させた状態で、且つそれぞれの前記切欠き溝を互いにずらした状態で上下方向に積層された構成とされる。
【0013】
そして、好ましい実施の形態においては、前記切欠き溝は、前記貫通孔を中心として等間隔に奇数個形成された構成とされる。
【0014】
そして、より好ましい実施の形態においては、隣接する前記インク吸収材は、同一の構成を有するインク吸収材を上下または左右を反転させた状態で積層された構成とされる。
【0015】
この場合、好ましくは、前記インク吸収材は、隣接する下層の前記インク吸収材の前記切欠き溝の貫通孔と連通する側とは異なる側の端部を大気に開放するための開放口を隣接する上層のインク吸収材に形成された構成とされる。
【0016】
以上のように構成されたインクジェット式記録装置によると、クリーニング操作によって記録ヘッドより吸引排出されたインクは、吸引ポンプの駆動によって廃インクタンクに送り込まれる。この場合、廃インクタンクに収納されたインク吸収材の一部に形成された貫通孔に滴下する。
【0017】
前記インク吸収材には、前記貫通孔から放射状に切欠き溝が形成されているために、インク吸収材とインクとの間の接触面積が大きくなる。このために、導入されたインクは切欠き溝内に進入しつつ、目詰まりを起こしたらその部分を避けて、インク吸収材に浸透して効率よく吸収される。そして、自然乾燥によってインク溶媒が蒸発することによって、順次新たな廃インクを吸収保持するように作用する。
【0018】
この場合、インク吸収材を複数枚重ねるときには、切欠き溝が重ならないようにずらして重ねることで、インクの吸収効率を良好にすることができる。
【0019】
また、放射状の切欠き溝の個数を奇数にすると、インク吸収材を180度回転させてセットしたときに、それぞれのインク吸収材の切欠き溝が上下方向で重ならず、インク吸収材の形状も1種類で済み、コストの上昇を抑えることができる。
【0020】
さらに、下層の切欠き溝の末端部を大気開放した構成とすることで、貫通孔に滴下したインクは抵抗なく切欠き溝内に流れ込むことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明が適用され得る記録装置の基本構成を示したものである。図1において符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0022】
キャリッジ1の記録用紙6に対向する側には、インクジェット式記録ヘッド7が搭載され、またその上部には前記記録ヘッド7にインクを供給するブラック用インクカートリッジ8、およびカラー用インクカートリッジ9が着脱可能に装填されている。
【0023】
図中符号10は、非印字領域(ホームポジション)に配置されたキャッピング手段であって、前記記録ヘッド7が直上に移動した時に、記録ヘッド7のノズル形成面を封止できるように構成されている。そしてキャッピング手段10の下方には、キャッピング手段10の内部空間に負圧を与えるための吸引ポンプ11が配置されている。
【0024】
前記キャッピング手段10は記録装置の休止期間中における記録ヘッド7のノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する他、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を空吐出させるフラッシング動作時のインク受けとして機能し、さらに前記吸引ポンプ11からの負圧を記録ヘッド7に作用させて、インクを吸引排出させるクリーニング操作の機能も兼ね備えている。
【0025】
そして、キャッピング手段10の近傍には、ゴムなどの弾性板からなるワイピング部材12が配置されていて、キャリッジ1がキャッピング手段10側に往復移動する際に、記録ヘッド7のノズル形成面を払拭するワイピング動作がなされるように構成されている。
【0026】
図2は、図1に示す記録装置に搭載されたキャッピング手段10と、これに接続された吸引ポンプ11等の構成を模式的に示したものである。キャッピング手段10は、上面が開放された方形状のキャップケース10aと、このキャップケース10a内に収納されたゴム素材などの可撓性物質よりなるキャップ部材10bとが具備され、キャップ部材10bはその上側縁がキャップケース10aよりも若干突出した状態に形成されている。そしてキャップ部材10bの内底部には、多孔質材料により形成されたインク吸収材10cが収納されており、このインク吸収材10cはキャップ部材10bに一体に形成された保持体10dにより保持されている。
【0027】
またキャップケース10aの下底部には、キャップケース10aおよびキャップ部材10bをそれぞれ貫通するようにして、吸引口10eおよび大気開放口10fが形成されている。そして、キャップケース10aの吸引口10eにはチューブT1を介して吸引ポンプ11が接続されており、この吸引ポンプ11の排出側端部は後述するように、廃インクタンク13に収納されたインク吸収材に接続されている。さらに、キャップケース10aの大気開放口10fには、チューブT2を介して大気開放バルブ14が接続されている。
【0028】
一方、図2における符号7は、記録ヘッドを示しており、この記録ヘッド7はキャリッジの移動に伴いキャッピング手段10の上部に位置した時、ノズル形成面7aが前記キャップ部材10bによって封止(キャッピング)されるように構成されている。前記ノズル形成面7aには複数のノズル開口7bが形成されており、各ノズル開口7bに対応して配置された圧電振動子7cの振動作用によって、ブラックインク、およびイエロー、シアン、マゼンタなどの各カラーインクが吐出されるように構成されている。
【0029】
以上の構成において、前記記録ヘッドまたはインク供給路内の残留気泡の排出、およびノズル開口の目詰まりを解消させるためのインクの吸引作用は、図2に示すようにキャップ部材10bを記録ヘッド7のノズル形成面7aに密着させると共に、大気開放バルブ10を閉弁した状態で行われる。
【0030】
この状態で吸引ポンプ11を駆動させることで、キャップ部材10bの内部空間に負圧が与えられ、記録ヘッド7のノズル開口7bからインクが吸引排出される。一定時間吸引ポンプ11を駆動した後、停止する。その後、キャップ部材内部の負圧がある程度減少した時点で、前記大気開放バルブ14を開弁させると、キャップ部材内に大気が導入され内部の負圧は解除される。続いて、大気開放バルブ14を開弁させた状態で吸引ポンプ11を再び駆動させることにより、キャップ部材内に排出されたインクはチューブT1を介して廃インクタンク13に送り込む動作がなされる。
【0031】
次に図3乃至図5は、前記吸引ポンプ11の駆動によって排出される廃インクを受け止める廃インクタンク13の実施形態を示したものである。なお、図3は廃インクタンク13を上部から視た状態で示した上面図であり、また図4は図3におけるA−A線を矢印方向に視た状態の断面図であり、図5は廃インクタンク13内に積層されて収納された二層のインク吸収材22の構成を分離して示した斜視図である。
【0032】
まず、廃インクタンク13の外郭を構成するケース部材21は、図3および図4に示すように、その側壁が立ち上げられて上部が開放されたほぼ四辺形の形態になされている。そして、図5に示す形態の二層のインク吸収材22が上下方向に積層されてケース部材21内に収納されている。
【0033】
インク吸収材22には、そのほぼ中央に廃インクを滴下する貫通孔23aと、この貫通孔23aから放射状に延びた切欠き溝23b,23c,23dと、下層のインク吸収材22の切欠き溝23bの末端部を大気に開放するための開放口23eとが形成されている。図3に示すように、各インク吸収材22は、貫通孔23aが互いに連通し、且つ切欠き溝23b,23c,23dが上下方向で重なり合わないように積層されている。本実施形態では、切欠き溝23b,23c,23dは、インク吸収材22を貫通して形成されており、貫通孔23aを中心として等間隔(120度間隔)で3個形成されている。このために、同一構成のインク吸収材22を1層毎に上下および/または左右を反転させた状態で積層することができる。このように、同一の構成でインク吸収材を反転することにより、上下方向で重なり合わないように積層することができ、異なる形状
(構成)のインク吸収材を用いる必要がないため、全体として安価に製作することができる。
【0034】
以上の構成において、記録ヘッド7より吸引排出されたインクが、吸引ポンプ11の駆動により廃インクタンク13に送り込まれると、廃インクタンク13に収納された第一層のインク吸収材22に形成された貫通孔23aに滴下する。この場合、第二層の切欠き溝23eを介して、第一層の切欠き溝23bの末端部を大気開放したことで、インクは抵抗なく貫通孔23a内に流れ込むことができる。なお、大気開放したことで、通風性が向上してインク吸収材に吸収された後のインク溶媒の蒸発が促進され、未蒸発のインクを少なくすることができる。
【0035】
そして、第一層のインク吸収材22に形成された切欠き溝23b,23c,23dに流入し、一部は、第二層のインク吸収材22に形成された切欠き溝23b,23c,23dに流入する。このように、廃インクタンク13に送り込まれたインクは、切欠き溝23b,23c,23dに流入しながら、目詰まりを起こしたらその部分を避けて、各インク吸収材22に効率よく吸収される。
【0036】
そして、自然乾燥によってインク溶媒が蒸発することによって、順次新たな廃インクを吸収保持するようになされる。
【0037】
なお、図3乃至図5図に示した実施の形態においては、第一層と第二層のインク吸収材22において、切欠き溝23b,23c,23dを3個形成しているが、3個以上の奇数個形成してもよい。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明にかかるインクジェット式記録装置によると、廃インクタンク内に収納されたインク吸収材には、貫通孔と、この貫通孔から放射状に切欠き溝とが形成されているので、貫通孔に滴下したインクは切欠き溝内に進入しつつ、インク吸収材に浸透して吸収される。そして、自然乾燥によってインク溶媒が蒸発することによって、順次新たな廃インクを吸収保持するように作用する。したがって、インクの固化物が局部的に蓄積して目詰まり状態となるという問題を回避することができ、長期にわたって安定した機能を発揮することが可能となる。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェット式記録装置の基本構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置に搭載されたキャッピング手段とその周辺装置の例を示す断面図である。
【図3】廃インクタンクを上部から視た状態で示した上面図である。
【図4】図3におけるA−A線を矢印方向に視た状態の断面図である。
【図5】廃インクタンク内に積層されて収納された二層のインク吸収材の構成を分離して示した斜視図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
6 記録用紙
7 記録ヘッド
7a ノズル形成面
7b ノズル開口
8 ブラック用インクカートリッジ
9 カラー用インクカートリッジ
10 キャッピング手段
11 吸引ポンプ
12 ワイピング部材
13 廃インクタンク
14 大気開放バルブ
21 ケース部材
22 インク吸収材
23a 貫通孔
23b〜23d 切欠き溝
23e 開放口
Claims (4)
- インクカートリッジからのインクの供給を受けて、ノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止し吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッドのノズル開口よりインクを吸引排出させるキャッピング手段と、吸引ポンプの駆動により前記キャッピング手段から排出されたインクを吸収して保持するインク吸収材を収納した廃インクタンクとを備えたインクジェット式記録装置であって、
前記インク吸収材は、前記キャッピング手段から排出されたインクが滴下する貫通孔と、この貫通孔を連通すると共にこの貫通孔から放射状に形成された切欠き溝とを有する複数のインク吸収材からなり、これらのインク吸収材はそれぞれの前記貫通孔を互いに連通させた状態で、且つそれぞれの前記切欠き溝を互いにずらした状態で上下方向に積層されていることを特徴とするインクジェット式記録装置。 - 前記切欠き溝は、前記貫通孔を中心として等間隔に奇数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
- 隣接する前記インク吸収材は、同一の構成を有するインク吸収材を上下または左右を反転させた状態で積層されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記インク吸収材は、隣接する下層の前記インク吸収材の前記切欠き溝の貫通孔と連通する側とは異なる側の端部を大気に開放するための開放口を隣接する上層のインク吸収材に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
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