JP3456300B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
トロイダル型無段変速機Info
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Description
変速機は、例えば自動車用の変速機として、或は各種産
業機械用の変速機として、それぞれ利用する。 【0002】 【従来の技術】自動車用変速機として、図10〜11に
略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研
究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば
実開昭62−71465号公報に開示されている様に、
入力軸1と同心に入力側ディスク(第一のディスク)2
を支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の
端部に出力側ディスク(第二のディスク)4を固定して
いる。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内
側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位
置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン
6、6が設けられている。 【0003】各トラニオン6、6は、両端部外側面に上
記枢軸5、5を設けている。又、各トラニオン6、6の
中心部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記枢軸
5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させる事
により、各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在として
いる。各トラニオン6、6に支持された変位軸7、7の
周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支
持している。そして、各パワーローラ8、8を、上記入
力側、出力側両ディスク2、4の間に挟持している。 【0004】入力側、出力側両ディスク2、4の互いに
対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢
軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなし
ている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ
8、8の周面8a、8aは、上記内側面2a、4aに当
接させている。 【0005】上記入力軸1と入力側ディスク2との間に
は、ローディングカム式の押圧装置9を設け、この押圧
装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディス
ク4に向け、弾性的に押圧自在としている。この押圧装
置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器
11により保持された複数個(例えば4個)のローラ1
2、12とから構成されている。上記カム板10の片側
面(図10〜11の左側面)には、円周方向に亙る凹凸
面であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の
外側面(図10〜11の右側面)にも、同様のカム面1
4を形成している。そして、上記複数個のローラ12、
12を、上記入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中
心とする回転自在に支持している。 【0006】上述の様に構成されるトロイダル型無段変
速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回
転すると、カム面13によって複数個のローラ12、1
2が、入力側ディスク2外側面のカム面14に押圧され
る。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパ
ワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記1対のカ
ム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付
け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。
そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパ
ワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達さ
れ、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転す
る。 【0007】入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速
比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で
減速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として各トラ
ニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面
8a、8aが図10に示す様に、入力側ディスク2の内
側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4
aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸
7、7を傾斜させる。 【0008】反対に、増速を行なう場合には、上記枢軸
5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動さ
せ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図11に
示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部
分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分と
に、それぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させ
る。各変位軸7、7の傾斜角度を図10と図11との中
間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速
比を得られる。 【0009】更に、図12〜13は、実願昭63−69
293号(実開平1−173552号)のマイクロフィ
ルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段
変速機を示している。入力側ディスク2と出力側ディス
ク4とは円管状の入力軸15の周囲に、それぞれニード
ル軸受16、16を介して回転自在に支持している。
又、カム板10は上記入力軸15の端部(図12の左端
部)外周面にスプライン係合し、鍔部17によって上記
入力側ディスク2から離れる方向への移動を阻止されて
いる。そして、このカム板10とローラ12、12とに
より、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力側ディ
スク2を、出力側ディスク4に向け押圧しつつ回転させ
る、ローディングカム式の押圧装置9を構成している。
上記出力側ディスク4には出力歯車18を、キー19、
19により結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車
18とが同期して回転する様にしている。 【0010】1対のトラニオン6、6の両端部は1対の
支持板20、20に、揺動並びに軸方向(図12の表裏
方向、図13の左右方向)に亙る変位自在に支持してい
る。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成し
た円孔23、23部分に、変位軸7、7を支持してい
る。各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持
軸部21、21と枢支軸部22、22とを、それぞれ有
する。このうちの各支持軸部21、21を上記各円孔2
3、23の内側に、ラジアルニードル軸受24、24を
介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部
22、22の周囲にパワーローラ8、8を、ラジアルニ
ードル軸受25、25を介して回転自在に支持してい
る。 【0011】尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力
軸15に対して180度反対側位置に設けている。又、
これら各変位軸7、7の各枢支軸部22、22が各支持
軸部21、21に対し偏心している方向は、上記入力
側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向
(図13で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、
上記入力軸15の配設方向に対しほぼ直交する方向とし
ている。従って上記各パワーローラ8、8は、上記入力
軸15の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。
この結果、構成各部品の寸法精度や弾性変形等に起因し
て、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方
向(図12の左右方向、図13の表裏方向)に変位する
傾向となった場合でも、構成各部品に無理な力を加える
事なく、この変位を吸収できる。 【0012】又、上記各パワーローラ8、8の外側面と
上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パ
ワーローラ8、8の外側面の側から順に、このパワーロ
ーラ8、8に加わるスラスト荷重を支承する為のスラス
ト転がり軸受であるスラスト玉軸受26、26と、次述
する外輪30、30に加わるスラスト荷重を支承する別
のスラスト軸受であるスラストニードル軸受27、27
とを設けている。このうちのスラスト玉軸受26、26
は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の
荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転
を許容するものである。この様なスラスト玉軸受26、
26はそれぞれ、複数個ずつの玉29、29と、各玉2
9、29を転動自在に保持する円環状の保持器28、2
8と、スラスト軌道輪である円環状の外輪30、30
(パワーローラスラスト軸受外輪)とから構成されてい
る。各スラスト玉軸受26、26の内輪軌道は上記各パ
ワーローラ8、8の外側面に、外輪軌道は上記各外輪3
0、30の内側面に、それぞれ形成している。 【0013】又、上記スラストニードル軸受27、27
は、レース31と保持器32とニードル33、33とか
ら構成される。このうちのレース31と保持器32と
は、回転方向に亙る若干の変位自在に組み合わされてい
る。この様なスラストニードル軸受27、27は、上記
レース31、31を上記各トラニオン6、6の内側面に
当接させた状態で、この内側面と上記外輪30、30の
外側面との間に挟持している。この様なスラストニード
ル軸受27、27は、上記各パワーローラ8、8から上
記各外輪30、30に加わるスラスト荷重を支承しつ
つ、上記枢支軸部22、22及び上記外輪30、30が
上記支持軸部21、21を中心に揺動する事を許容す
る。 【0014】更に、上記各トラニオン6、6の一端部
(図13の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド36、36
を結合し、各駆動ロッド36、36の中間部外周面に駆
動ピストン37、37を固設している。そして、これら
各駆動ピストン37、37を、それぞれ駆動シリンダ3
8、38内に油密に嵌装している。 【0015】上述の様に構成されるトロイダル型無段変
速機の場合には、入力軸15の回転は押圧装置9を介し
て入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側
ディスク2の回転が、1対のパワーローラ8、8を介し
て出力側ディスク4に伝えられ、更にこの出力側ディス
ク4の回転が、出力歯車18より取り出される。 【0016】入力軸15と出力歯車18との間の回転速
度比を変える場合には、上記1対の駆動ピストン37、
37を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピスト
ン37、37の変位に伴って上記1対のトラニオン6、
6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図13の下側の
パワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーロ
ーラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、
これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入
力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4
aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化す
る。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニ
オン6、6が、支持板20、20に枢支された枢軸5、
5を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、
前述の図10〜11に示した様に、上記各パワーローラ
8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの
当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車18との
間の回転速度比が変化する。 【0017】上述の様に構成され作用するトロイダル型
無段変速機の場合、パワーローラ8、8を支持する為の
ラジアルニードル軸受25及びスラスト玉軸受26に潤
滑油を送り込む必要がある。何となれば、トロイダル型
無段変速機の運転時に上記パワーローラ8、8は、大き
な荷重を受けつつ高速回転する。従って、上記ラジアル
ニードル軸受25及びスラスト玉軸受26の耐久性を確
保する為には、これら両軸受25、26に十分量の潤滑
油を送り込む必要がある。 【0018】この為に従来から、例えば実開昭62−1
56658号公報に記載されている様な潤滑油供給装置
が知られている。この従来から知られた潤滑油供給装置
は、図14に示す様に構成されている。この潤滑油供給
装置は、トラニオン6の内部に送り込み側給油通路39
を形成すると共に、スラスト玉軸受26を構成する外輪
30に給油孔40、40を形成して、このスラスト玉軸
受26に潤滑油を送り込み自在としている。又、上記ラ
ジアルニードル軸受25には、変位軸7の先半部を構成
する枢支軸部22の内側に設けられた受入側給油通路4
1を通じて潤滑油を送り込む様にしている。この受入側
給油通路41の上流端は、上記枢支軸部22の基端面3
5の一部で支持軸部21から外れた部分に開口してい
る。 【0019】トロイダル型無段変速機の運転時には、こ
の変速機中に組み込まれた図示しないポンプの作用によ
り、上記送り込み側給油通路39に潤滑油が送り込まれ
る。先ず、この潤滑油は送り込み側給油通路39の下流
端開口から、上記スラスト玉軸受26を構成する外輪3
0の外側面とトラニオン6の内側面との間の隙間空間内
に流出する。更にこの潤滑油は、上記給油孔40、40
を通じて上記スラスト玉軸受26に、上記受入側給油通
路41を通じて上記ラジアルニードル軸受25に、それ
ぞれ送られ、これら両軸受26、25を潤滑する。 【0020】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した様
な従来構造の場合には、給油孔40、40及び受入側給
油通路41を通じてラジアルニードル軸受25に送られ
る潤滑油の量を十分に確保する事が難しかった。これ
は、枢支軸部22の先端部に係止した止め輪42と間座
43とが潤滑油の流れに対する抵抗となり、上記ラジア
ルニードル軸受25を設けた空間内への潤滑油の流入を
妨げる事に起因する。本発明のトロイダル型無段変速機
は、この様な原因による潤滑不良を解消すべく発明した
ものである。 【0021】 【課題を解決するための手段】本発明のトロイダル型無
段変速機は前述した従来のトロイダル型無段変速機と同
様に、互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同
心に、且つ回転自在に支持された第一、第二のディスク
と、これら第一、第二のディスクの中心軸に対し捻れの
位置にある枢軸を中心として揺動するトラニオンと、互
いに偏心した支持軸部及び枢支軸部から成り、このうち
の支持軸部を上記トラニオンに回転自在に支持し、枢支
軸部を上記トラニオンの内側面から突出させた変位軸
と、上記枢支軸部の周囲にラジアルニードル軸受を介し
て回転自在に支持された状態で、上記第一、第二の両デ
ィスクの間に挟持された、中心部に貫通孔を有するパワ
ーローラと、上記枢支軸部の先端部でこのパワーローラ
の内端面から突出する部分に外嵌され、止め輪によりこ
の先端部からの抜け止めを図られた間座と、上記パワー
ローラの外端面に添設されてこのパワーローラに加わる
スラスト荷重を支承するスラスト転がり軸受と、このス
ラスト転がり軸受を構成するスラスト軌道輪の外側面と
上記トラニオンの内側面との間に設けられ、上記パワー
ローラから上記スラスト軌道輪に加わるスラスト方向の
荷重を支承しつつ、上記トラニオンに対するこのスラス
ト軌道輪の変位を許容する別のスラスト軸受と、上記枢
支軸部の内部に設けられた給油通路とを備える。 【0022】特に、本発明のトロイダル型無段変速機に
於いては、上記給油通路の端部に分岐給油通路を、上記
トラニオンの軸方向に対して直角方向に形成する事によ
り上記給油通路の下流端を、上記枢支軸部の一部外周面
で上記間座よりもこの枢支軸部の先端面から離れた部分
で、且つ、上記ラジアルニードル軸受の先端近傍部分に
存在する、このラジアルニードル軸受の負荷圏から外れ
た部分に開口させている。 【0023】 【作用】上述の様に構成される本発明のトロイダル型無
段変速機は、前述した従来のトロイダル型無段変速機と
同様の作用に基づき、第一のディスクと第二のディスク
との間で回転力の伝達を行ない、更にトラニオンの傾斜
角度を変える事で、これら両ディスクの回転速度比を変
える。 【0024】特に、本発明のトロイダル型無段変速機の
場合には、枢支軸部の内部に設けられた給油通路の端部
から流出した潤滑油が、上記枢支軸部の先端側から基端
側に向けて、ラジアルニードル軸受内を流れる。従っ
て、このラジアルニードル軸受に十分量の潤滑油を供給
できる。又、この様にしてラジアルニードル軸受をその
先端部から基端部に向けて流れた潤滑油は、続いてスラ
スト転がり軸受を流れ、このスラスト転がり軸受を潤滑
する。これらにより、上記ラジアルニードル軸受とスラ
スト転がり軸受との双方に、十分な量の潤滑油を供給で
きる。更に、給油通路の下流端を上記ラジアルニードル
軸受の負荷圏から外れた位置に開口させている為、長期
間に亙る使用によっても、上記枢支軸部が損傷を受けに
くい。 【0025】 【実施例】図1は本発明の第一実施例を示している。
尚、本発明の特徴は、変位軸7を構成する枢支軸部22
の内部に設けた給油通路である受入側給油通路41を通
じて送られる潤滑油を、パワーローラ8を支持するラジ
アルニードル軸受25に送り込む部分の構造にある。そ
の他の部分の構造及び作用に就いては、前述した従来構
造と同様である為、重複する説明を省略若しくは簡略に
し、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。 【0026】パワーローラ8を枢支する為の変位軸7の
先半部を構成する枢支軸部22の内側には、特許請求の
範囲に記載した給油通路に対応する受入側給油通路41
を設けている。この受入側給油通路41の上流端は、上
記枢支軸部22の基端面35の一部で支持軸部21から
外れた部分に開口している。トラニオン6内に設けられ
た送り込み側給油通路39を通じて送り込まれる潤滑油
は、上記受入側給油通路41の上流端からこの受入側給
油通路41に流入する。 【0027】上記受入側給油通路41の中間部及び先端
部からは、この受入側給油通路41と共に上記特許請求
の範囲に記載した給油通路を構成する、第一、第二の分
岐給油通路44、45を分岐させている。そして、この
うちの第一の分岐給油通路44、44の下流端を、上記
枢支軸部22の中間部外周面で、スラスト玉軸受26の
内径側に対向する部分に開口させている。 【0028】更に、上記第二の分岐給油通路45、45
の下流端を、上記枢支軸部22の先端部外周面で、ラジ
アルニードル軸受25の先端近傍部分に開口している。
図示の実施例の場合にこれら各第二の分岐給油通路4
5、45は、上記ラジアルニードル軸受25を構成する
ニードル46、46の先端面(図1の下端面)と、上記
枢支軸部22の先端部に止め輪42により係止した間座
43との間部分に開口させている。 【0029】上述の様に構成される本発明のトロイダル
型無段変速機の場合には、上記送り込み側給油通路39
から枢支軸部22内の受入側給油通路41に送り込まれ
た潤滑油は、第一、第二の分岐給油通路44、45を通
じて、上記枢支軸部22の直径方向外方に流出する。そ
して、このうちの第二の分岐給油通路45、45の開口
端部から流出した潤滑油が、上記枢支軸部22の先端側
から基端側に向けて(図1の下から上に)、上記ラジア
ルニードル軸受25内を流れる。従って、このラジアル
ニードル軸受25に十分量の潤滑油を供給できる。 【0030】又、この様にしてラジアルニードル軸受2
5をその先端部から基端部に向けて流れた潤滑油は、続
いて上記第一の分岐給油通路44、44の開口端から流
出した潤滑油と合流して、上記スラスト玉軸受26内を
流れ、このスラスト玉軸受26を潤滑する。これらによ
り、上記ラジアルニードル軸受25とスラスト玉軸受2
6との双方に、十分な量の潤滑油を供給できる。尚、上
記第一、第二の分岐給油通路44、45の内径(断面
積)は、受入側給油通路41の内径(断面積)よりも十
分に小さい(狭い)。従って、受入側給油通路41内に
送り込まれた潤滑油の多くが第一の分岐給油流路44、
44から流出する事はない。言い換えれば、第二の分岐
給油通路45、45からも十分な量の潤滑油が流出する
為、上記ラジアルニードル軸受25に供給する潤滑油の
量を十分に確保できる。 【0031】更に、本実施例の場合には、上記第一、第
二の分岐給油通路44、45のうち、第一の分岐給油通
路44、44をトラニオン6の軸方向に形成し、第二の
分岐給油通路45を、トラニオン6の軸方向に対して直
角方向(図1の表裏方向)に形成している。又、受入側
給油通路41は前述した様に、枢支軸部22の中心軸か
ら少し外れた位置に形成している。従って上記第二の分
岐給油通路45は、この枢支軸部22の中心軸に対して
捩れの位置関係で形成されている。 【0032】この様な方向に第二の分岐給油通路45を
形成した、本実施例の場合には、上記第二の分岐給油通
路45の形成位置を工夫する事で、この第二の分岐給油
通路45、45を枢支軸部22の負荷圏から外してい
る。 【0033】即ち、本発明者の実験により、トロイダル
型無段変速機の運転時に上記枢支軸部22には、パワー
ローラ8からラジアルニードル軸受25を介して、図2
に斜格子で示す範囲(負荷圏)に大きな負荷が加わる事
が分った。この様に大きな負荷が加わる部分に上記第二
の分岐給油通路45、45を形成する事は、変位軸7の
耐久性を損なう原因となる為、好ましくない。そこで本
実施例の場合には、これら第二の分岐給油通路45、4
5を負荷圏から外すべく、上述の位置に形成している。 【0034】尚、負荷圏が図2に斜格子で示した位置に
表われる理由に就いて本発明者が考察したところ、次の
様に考えられる。先ず、トロイダル型無段変速機の運転
時に上記パワーローラ8は、図3に示す様に入力側ディ
スク2と出力側ディスク4との間で強く挟持される。こ
の結果、上記パワーロー8の中心孔が、図4に誇張して
示す様に楕円形に弾性変形し、上記枢支軸部22を、入
力側、出力側両ディスク2、4の配列方向に亙って強く
押圧する。 【0035】一方、上記パワーローラ8を入力側ディス
ク2と出力側ディスク4との間で強く挟持すると、これ
ら入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a
とパワーローラ8の周面8aとの係合に基づき、このパ
ワーローラ8を上記入力側、出力側両ディスク2、4の
直径方向外方に押圧する大きな力が加わる。そしてこの
力に基づいて、上記パワーローラ8をその内側面に支持
しているトラニオン6が、図5(A)に示した状態から
同図(B)に示した状態に弾性変形する。変位軸7の支
持軸部21は、トラニオン6の中央から少しずれた位置
に枢支している為、上記トラニオン6の弾性変形に基づ
いて上記変位軸7が傾斜する。そして、この傾斜に基づ
いて、上記変位軸7の枢支軸部22の外周面とラジアル
ニードル軸受25を構成するニードル46、46とが片
当たりする。より具体的には、図6に斜格子で示す部分
で、これらニードル46、46の転動面と上記枢支軸部
22の外周面とが強く当接する。 【0036】そして、これらパワーローラ8の弾性変形
に基づく片当たりと、上記変位軸7の傾斜に基づく片当
たりとが合成されて、上記枢支軸部22に図2に示す様
な負荷圏が表われるものと考えられる。本実施例の場合
には、図2から明らかな通り、第二の分岐給油通路4
5、45が負荷圏から外れている為、長期間に亙る使用
によっても、これら第二の分岐給油通路45、45の存
在に基づき、上記枢支軸部22が損傷を受けにくい。 【0037】次に、図7〜8は本発明の第二実施例を示
している。尚、本実施例及び後述する図9に示した第三
実施例は、トラニオン6の内部に設けた送り込み側給油
通路39から吐出された潤滑油を枢支軸部22の内側に
設けた受入側給油通路41に効率良く導く為の構造に特
徴がある。本発明の特徴であり、ラジアルニードル軸受
25に十分な潤滑油を送り込む為の第二の分岐給油通路
45に関しては、上述した第一実施例と同様である。 【0038】上記送り込み給油通路39の一端(図7の
左端)は、上記トラニオン6を軸方向(図7の左右方
向)に変位させる為の駆動ロッド36の内部に設けた給
油通路34に通じさせており、この給油通路34を通じ
て上記送り込み側給油通路39内に潤滑油を送り込み自
在としている。又、この送り込み側給油通路39の他端
(図7の右端)開口は、プラグ47により塞いでいる。
更に、上記トラニオン6の内側面(図7の下面)2個所
位置には、それぞれ上記送り込み側給油通路39の途中
から分岐した、主分岐給油通路48の下流端と副分岐給
油通路49の下流端とを開口させている。このうちの主
分岐給油通路48の下流端開口は、変位軸7を構成する
枢支軸部22の基端面35の一部で、支持軸部21から
外れた部分に対向させている。又、上記副分岐給油通路
49の下流端は、スラストニードル軸受27の一部に対
向させている。一方、上記枢支軸部22の内部には受入
側給油通路41を設け、この受入側給油通路41の上流
端を、上記枢支軸部22の基端面35の一部で上記支持
軸部21から外れた部分に開口させている。 【0039】上記トラニオン6の内側面と上記スラスト
ニードル軸受27を構成する外輪30の外側面との間の
隙間空間50内には、図8に示す様な、長円弧形で閉鎖
環状のシール材51を設けている。このシール材51
は、ゴム、ビニル等の弾性材、ナイロン、ポリアセター
ル、ポリ四弗化エチレン等の滑り易い合成樹脂、銅、
銀、含油メタル等の自己潤滑性を有する金属、窒化硼素
等、潤滑性を有する材料の燒結材等により造られてお
り、上記トラニオン6の内側面とスラスト軌道輪である
上記外輪30の外側面とのうちの何れか一方の側面に接
着、溶接等により固定する事で、所定位置に支持してい
る。そして、上記受入側給油通路41の上流端開口及び
上記送り込み側給油通路39の下流端開口となる上記主
分岐給油通路48の下流端開口を、上記シール材51の
内側に位置させている。 【0040】上述の様に構成される第二実施例のトロイ
ダル型無段変速機の場合には、トラニオン6側に設けた
送り込み側給油通路39の下流端である主分岐給油通路
48から上記シール材51の内側に吐出された潤滑油
が、このシール材51に遮られて周囲に流失する事な
く、そのまま受入側給油通路41に、この受入側給油通
路41の上流端開口から送り込まれる。この受入側給油
通路41に送り込まれた潤滑油は、第一、第二の分岐給
油通路44、45を通じて、スラスト玉軸受26及びラ
ジアルニードル軸受25に送られる。従って、上記送り
込み側給油通路39を通じて送られる潤滑油のうちの多
くの部分が(スラストニードル軸受27を構成するニー
ドル33、33の間を通過する事で周囲に流失する事な
く)上記両軸受25、26に送られて、これら両軸受2
5、26の潤滑を十分に行なえる。 【0041】尚、上記送り込み側給油通路39中の潤滑
油の一部は、上記副分岐給油通路49を通じて上記スラ
ストニードル軸受27に送られるが、この副分岐給油通
路49の断面積は狭く、この副分岐給油通路49を通じ
て流れる潤滑油の量は少ない。従って、この副分岐給油
通路49の存在により、上記両軸受25、26に送られ
る潤滑油が不足する事はない。又、上記スラストニード
ル軸受27は、トラニオン6と外輪30との往復揺動を
許容する為に設けたものであり、この往復揺動の速度並
びに回数は、パワーローラ8の回転速度並びに回転数に
比べて遥かに小さい。従って、上記スラストニードル軸
受27に送り込まれる潤滑油の量が少なくても、このス
ラストニードル軸受27の耐久性等に問題が生じる事は
ない。 【0042】次に、図9は本発明の第三実施例を示して
いる。本実施例の場合には、トラニオン6の内側面外周
寄り部分に、スラストニードル軸受27の全周を囲む状
態で閉鎖環状の凹溝52を形成し、この凹溝52に閉鎖
環状のシール材51aを嵌合支持している。そして、こ
のシール材51aによって、トラニオン6の内側面と上
記スラストニードル軸受27を構成する外輪30の外側
面との間の隙間空間50の外周開口を塞いでいる。尚、
上記凹溝52及びシール材51aの形状は、上記スラス
トニードル軸受27の全周を囲むべく、例えば小判形若
しくは長円形とする。本実施例の場合、主分岐給油通路
48の開口は、必ずしも枢支持部22の基端面35に対
向させなくても良い。 【0043】本実施例の場合には、上述した第二実施例
で設けた様な副分岐給油通路49は設けていない。上記
スラストニードル軸受27の潤滑は、主分岐給油通路4
8から上記シール材51aの内側に流入した潤滑油によ
って行なう。その他の構成及び作用は、上述した第二実
施例の場合と同様である。 【0044】尚、前述した第二実施例及び上述した第三
実施例に使用するシール材51、51aは、それぞれの
内側に送り込まれた潤滑油を受入側給油通路41内に効
率良く導ければ足りる。必ずしも、内側に送り込まれた
潤滑油が外部に流失する事を完全に防止する必要はな
い。従って、各実施例のシール材51、51aは、軸方
向(図7、9の上下方向)一端面は対向する面に接着し
たり、或は当該対向する面に形成した凹部の内側にシー
ル材51、51aを嵌合させる等により固定するが、軸
方向他端面とこの他端面が対向する面との間に、潤滑油
の流れに対して十分に大きな抵抗となる微小な隙間が存
在する事は、実用上差し支えない。 【0045】これら第二〜第三実施例の場合には、シー
ル材51、51aを設ける事で、主分岐給油通路48か
ら受入側給油通路41に向け効率良く潤滑油を送り込む
様にしている。これに対して、前述した第一実施例の様
に、トラニオン6の内側面とスラストニードル軸受27
を構成する外輪30の外側面との間の隙間空間50の内
端開口を絞れば、上記シール材51、51aを省略して
も、主分岐給油通路48から受入側給油通路41に向け
効率良く潤滑油を送り込める。即ち、前述した第一実施
例の場合には、ラジアルニードル軸受24を構成する外
輪53の軸方向一端縁(図1の下端縁)をスラスト玉軸
受26を構成する外輪30の外側面に近接させ、上記隙
間空間50の内端開口の面積を絞っている。 【0046】 【発明の効果】本発明のトロイダル型無段変速機は、以
上に述べた通り構成され作用する為、高荷重を受けつつ
高速で回転するパワーローラを支承するラジアルニード
ル軸受に十分量の潤滑油を、枢支軸部が損傷を受けにく
しつつ、送り込む事が可能となる。この結果、トロイダ
ル型無段変速機の耐久性、信頼性の向上に寄与できる。
図。 【図3】トロイダル型無段変速機の運転時にパワーロー
ラに加わる荷重を説明する為の部分断面図。 【図4】図3のA−A断面図。 【図5】トロイダル型無段変速機の運転時に於けるトラ
ニオンの変形状態を示す断面図 。 【図6】枢軸の傾斜に基づく枢支軸部の負荷範囲を示す
為の断面図。 【図7】本発明の第二実施例を示す要部断面図。 【図8】第二実施例に使用するシール材を図7の上方か
ら見た図。 【図9】本発明の第三実施例を示す要部断面図。 【図10】従来から知られたトロイダル型無段変速機の
基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。 【図11】同じく最大増速時の状態で示す側面図。 【図12】従来の具体的構造の1例を示す断面図。 【図13】図12のB−B断面図。 【図14】給油通路を設けた従来構造を示す要部断面
図。 【符号の説明】 1 入力軸 2 入力側ディスク(第一のディスク) 2a 内側面 3 出力軸 4 出力側ディスク(第二のディスク) 4a 内側面 5 枢軸 6 トラニオン 7 変位軸 8 パワーローラ 8a 周面 9 押圧装置 10 カム板 11 保持器 12 ローラ 13、14 カム面 15 入力軸 16 ニードル軸受 17 鍔部 18 出力歯車 19 キー 20 支持板 21 支持軸部 22 枢支軸部 23 円孔 24、25 ラジアルニードル軸受 26 スラスト玉軸受 27 スラストニードル軸受 28 保持器 29 玉 30 外輪 31 レース 32 保持器 33 ニードル 34 給油通路 35 基端面 36 駆動ロッド 37 駆動ピストン 38 駆動シリンダ 39 送り込み側給油通路 40 給油孔 41 受入側給油通路 42 止め輪 43 間座 44 第一の分岐給油通路 45 第二の分岐給油通路 46 ニードル 47 プラグ 48 主分岐給油通路 49 副分岐給油通路 50 隙間空間 51、51a シール材 52 凹溝 53 外輪
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いの内側面同士を対向させた状態で、
互いに同心に、且つ回転自在に支持された第一、第二の
ディスクと、これら第一、第二のディスクの中心軸に対
し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動するトラニオ
ンと、互いに偏心した支持軸部及び枢支軸部から成り、
このうちの支持軸部を上記トラニオンに回転自在に支持
し、枢支軸部を上記トラニオンの内側面から突出させた
変位軸と、上記枢支軸部の周囲にラジアルニードル軸受
を介して回転自在に支持された状態で、上記第一、第二
の両ディスクの間に挟持された、中心部に貫通孔を有す
るパワーローラと、上記枢支軸部の先端部でこのパワー
ローラの内端面から突出する部分に外嵌され、止め輪に
よりこの先端部からの抜け止めを図られた間座と、上記
パワーローラの外端面に添設されてこのパワーローラに
加わるスラスト荷重を支承するスラスト転がり軸受と、
このスラスト転がり軸受を構成するスラスト軌道輪の外
側面と上記トラニオンの内側面との間に設けられ、上記
パワーローラから上記スラスト軌道輪に加わるスラスト
方向の荷重を支承しつつ、上記トラニオンに対するこの
スラスト軌道輪の変位を許容する別のスラスト軸受と、
上記枢支軸部の内部に設けられた給油通路とを備えたト
ロイダル型無段変速機に於いて、上記給油通路の端部に
分岐給油通路を、上記トラニオンの軸方向に対して直角
方向に形成する事により上記給油通路の下流端を、上記
枢支軸部の一部外周面で上記間座よりもこの枢支軸部の
先端面から離れた部分で、且つ、上記ラジアルニードル
軸受の先端近傍部分に存在する、このラジアルニードル
軸受の負荷圏から外れた部分に開口させている事を特徴
とするトロイダル型無段変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09681895A JP3456300B2 (ja) | 1995-04-21 | 1995-04-21 | トロイダル型無段変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09681895A JP3456300B2 (ja) | 1995-04-21 | 1995-04-21 | トロイダル型無段変速機 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08291850A JPH08291850A (ja) | 1996-11-05 |
JP3456300B2 true JP3456300B2 (ja) | 2003-10-14 |
Family
ID=14175168
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP09681895A Expired - Lifetime JP3456300B2 (ja) | 1995-04-21 | 1995-04-21 | トロイダル型無段変速機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3456300B2 (ja) |
Families Citing this family (5)
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---|---|---|---|---|
JP3508391B2 (ja) * | 1996-05-29 | 2004-03-22 | 日本精工株式会社 | トロイダル型無段変速機 |
JP3941275B2 (ja) * | 1998-12-28 | 2007-07-04 | 日本精工株式会社 | トロイダル型無段変速機 |
JP3531607B2 (ja) | 2000-12-28 | 2004-05-31 | トヨタ自動車株式会社 | トロイダル型無段変速機およびフルトロイダル型無段変速機 |
JP3932027B2 (ja) | 2002-04-08 | 2007-06-20 | 日本精工株式会社 | トロイダル型無段変速機 |
US7563192B2 (en) | 2003-06-27 | 2009-07-21 | Nsk Ltd. | Toroidal-type continuously variable transmission |
-
1995
- 1995-04-21 JP JP09681895A patent/JP3456300B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08291850A (ja) | 1996-11-05 |
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