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JP3452018B2 - 接合方法及び接合ツール - Google Patents

接合方法及び接合ツール

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Publication number
JP3452018B2
JP3452018B2 JP2000085022A JP2000085022A JP3452018B2 JP 3452018 B2 JP3452018 B2 JP 3452018B2 JP 2000085022 A JP2000085022 A JP 2000085022A JP 2000085022 A JP2000085022 A JP 2000085022A JP 3452018 B2 JP3452018 B2 JP 3452018B2
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JP
Japan
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tool
thin plate
plate
stirring pin
plates
Prior art date
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Expired - Lifetime
Application number
JP2000085022A
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English (en)
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JP2001269779A (ja
Inventor
久司 堀
慎也 牧田
治道 樋野
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Nippon Light Metal Co Ltd
Original Assignee
Nippon Light Metal Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
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Publication date
Application filed by Nippon Light Metal Co Ltd filed Critical Nippon Light Metal Co Ltd
Priority to JP2000085022A priority Critical patent/JP3452018B2/ja
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製の厚板と薄
板とを突き合わせ、両板の境界線に沿って摩擦攪拌接合
する接合方法、及び係る接合方法に用いる接合ツールに
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、同種又は異種金属板間の接合に、
固相接合方法の一つである摩擦攪拌接合法が用いられて
いる。また、板厚が異なる一対の金属板間に接合に際し
て、特に好適な摩擦攪拌接合法も提案されている。この
接合法は、図6(A)及び(B)に示すように、例えばアル
ミニウム合金からなる厚板50と薄板52とを突き合わ
せ、両板50,52間の段差55を有する突き合わせ面
54に沿って、大径で円柱状の回転子56とその底面か
ら同心に垂下する小径でピン状のプローブ58とからな
る接合装置60を回転しつつ移動することにより行われ
る。
【0003】上記接合法にて接合する際、接合装置60
の上記回転子56及びプローブ58は、図6(A)乃至
(C)に示すように、移動方向と反対側に傾斜角θ1で傾
け、且つ移動方向と直交して薄板52側に10°以下の
傾斜角θ2で傾けた姿勢に保たれる。この状態で、上記
プローブ58を突き合わせ面54付近に所要の圧力で回
転させつつ押し込む。これにより、厚板50と薄板52
との摩擦攪拌接合が成され、突き合わせ面54付近に欠
陥や熱的悪影響を生じず且つ接合される板の表面を汚さ
ない、という利点が得られる(特開平10−24955
3号公報参照)。
【0004】しかしながら、上記の接合法では、接合装
置60の回転子56とプローブ58を、移動方向と直交
する方向で10°以下とする傾斜角θ2を、その実施例
で傾斜角θ2を1.5°〜10.0°の6つの例を挙げて
いるが、10°以下の範囲でどの傾斜角θ2が上述した
利点を得るのに最適であるか、全く不明である。因み
に、発明者らの実験によれば、板厚が異なる一対の金属
板間で摩擦攪拌接合した際に、上記傾斜角θ2の10°
以下とする範囲内でも、得られた接合部にトンネル欠陥
等を生じるため、所要の接合強度が得られなくなる場合
があることを知見した。換言すれば、上記傾斜角θ2が
10°以下であっても、厚板と薄板とを摩擦攪拌接合す
る際、得られる接合部の特性にバラツキがあった。
【0005】
【発明が解決すべき課題】本発明は、以上に説明した従
来の技術における問題点を解決し、板厚が異なる一対の
金属板を突き合わせ、両板の境界線に沿って摩擦攪拌接
合する際に、接合部に欠陥等が生じにくい接合方法、及
係る接合方法に用いる接合ツールを提案することを課
題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、発明者らの鋭
意研究及び実験に基づき、接合方法に用いる接合ツール
の取り扱い方法及び構造を工夫することにより、得られ
たものである。即ち、本発明の接合方法(請求項1)は、
同一平面上に位置する金属製の厚板と薄板とを突き合わ
せ、両板の境界面に沿って接合ツールを回転させつつ移
動して両板を摩擦攪拌接合するに際し、上記接合ツール
は、略円柱形の本体と、該本体の底面から同心に垂下し
且つ両板の境界面付近に押し込まれる攪拌ピンと、を含
み、平面視において上記接合ツールが時計回り方向に回
転しつつ両板の境界面に沿って移動すると共に、上記厚
板を平面視において上記接合ツールの移動方向における
右側に配置する、ことを特徴とする。
【0007】これによれば、厚板及び薄板の境界面付近
において、上記攪拌ピンにより塑性流動化された金属が
厚板側から薄板側に移行しつつ攪拌され、上記ピンが通
過した跡には攪拌された金属が境界面付近で緻密に固ま
った高強度の接合部が形成される。従って、エア等の巻
き込みやボイドのトンネル欠陥等のない緻密な接合部を
厚板部と薄板部との間に有し、且つ所要の接合強度を有
するテーラードブランク板材を、確実且つ容易に製造す
ることが可能となる。
【0008】また、本発明には、前記接合ツールを薄板
側に傾斜した姿勢とすると共に、当該ツールの移動方向
における側面視において、接合ツールの上記本体におけ
る底面の両端部が上記厚板と薄板の表面にそれぞれ略接
触するように、上記攪拌ピンを両板の境界面付近に押し
込む、接合方法(請求項2)も含まれる。
【0009】これによれば、厚板及び薄板の境界面付近
において、前記攪拌ピンが通過した跡には攪拌された金
属が緻密に固まった高強度の接合部が形成されると共
、前記従来の接合方法のような傾斜角10°以下の範
囲とする曖昧な基準ではなく、例えば作業者が目視やカ
メラで容易に設定でき且つ監視できる。このため、均一
で安定した接合作業を行うこともできる。従って、エア
等の巻き込み欠陥等のない緻密な接合部を厚板部と薄板
部との間に有し、且つ所要の接合強度を有するテーラー
ドブランク板材を、確実且つ一層容易に製造することが
可能となる。尚、上記「略接触する」とは、接触している
か又はその直前の状態を指す。
【0010】更に、前記接合ツールが薄板側に傾斜した
状態において、前記境界面における上記ツールの攪拌ピ
ンの先端と両板の裏面との間に隙間が位置するように、
前記攪拌ピンを両板の境界面付近に押し込む、接合方法
(請求項3)も含まれる。これによれば、厚板と薄板との
境界面の全体に攪拌ピンによる金属の攪拌及び塑性流動
が行われるため、未接合部分が形成されにくく、厚さ方
向の全体に健全な接合を形成できる。従って、上記接合
部を有し且つ強度も安定したテーラードブランク板材
を、一層容易に製造することが可能となる。尚、上記隙
間は、攪拌ピンが1段の場合には0.1〜0.2mmの
範囲が推奨される。0.2mmを越えると未接合部分が
形成され易くなり接合強度がバラツキ始める一方、0.
1mm未満になると攪拌ピンの先端が薄板の裏面側に突
き抜けるおそれがあるためである。また、後述する攪拌
ピンが2段以上で且つ先端側で細径の攪拌ピンの断面が
多角形等の場合には、上記と同様の理由により、隙間は
0.1〜0.5mmの範囲が推奨される。
【0011】また、前記接合ツールが薄板側に傾斜した
状態で、その攪拌ピンを厚板と薄板との境界面付近に押
し込むに際して、上記ツールの本体の底面が薄板の内部
に食い込まないようにする、接合方法(請求項4)も含ま
れる。これによれば、接合後において薄板の表面側のバ
リを除去しても、当該薄板の板厚が減少しないので、接
合部付近の継ぎ手強度を安定させることができる。尚、
前記接合方法には、次述する2段以上の攪拌ピンを有す
る接合ツールが特に推奨されるが、前記接合方法の趣旨
に適合していれば、攪拌ピンを1段のみ設けた接合ツー
ルであっても、各接合方法に適用することが可能であ
る。
【0012】尚、以上の接合方法の何れかにより得られ
且つ前記境界面付近において未接合部がないテーラード
ブランク板材は、種々の金属からなる厚板と薄板とが境
界面に沿って健全な接合部により強固に摩擦攪拌接合さ
れている。従って、各種の用途に容易に活用することが
でき、特に鉄道車両や自動車その他の構造材に対し有効
である。
【0013】一方、以上の接合方法に用いる本発明の接
合ツール(請求項5)は、同一平面上に位置する金属製の
厚板と薄板とを突き合わせ、両板の境界面に沿って摩擦
攪拌接合する接合ツールであって、上記薄板側に傾斜し
た姿勢で回転しつつ移動する略円柱形の本体と、この本
体の底面から同心にして垂下し且つ先端側に行くほど細
径になる2段以上の攪拌ピンと、を含むと共に、前記攪
拌ピンのうち2段目以降のピンの断面形状が四角形以上
の正多角形又は変形多角形、或いは異形形状である、
とを特徴とする。これによれば、厚板及び薄板の境界面
付近において、薄板側に傾斜した姿勢で上記攪拌ピンの
先端を両板の裏面付近まで進入させても、薄板の裏面側
に突き抜けにくくなり、当該攪拌ピンにより塑性流動化
された金属を厚板側から薄板側にスムースに移行しつつ
攪拌することができる。しかも、2段目以降の先端寄り
の上記攪拌ピンの表面積を円柱形の形態に比べて増や
せ、且つ厚さ方向の塑性流動域を約2.5倍程度まで拡
大することができる。このため、係る先端寄りの攪拌ピ
ンと接触し且つ攪拌される金属も増えるので、両板の境
界面における厚さ方向と共に両板の平面方向にも拡大し
た健全な接合部を形成することができる。
【0014】従って、両板の境界面における厚さ方向の
略全体に前述した健全な接合部を確実に形成できるた
め、例えば板厚差が大きい厚板と薄板との接合において
も、高強度の接合部を有するテーラードブランク板材
を、容易且つ安定して製造することができる。尚、上記
複数段の攪拌ピンには、次述する形態の他、互いに同心
の円柱形からなるものが含まれる。尚、記異形形状に
は、断面円形又は多角形の周面に軸心方向に沿った凹溝
や凸条を設けた形状等が含まれる。また、最先端のピン
の底面には、底面視でその中心から放射形状、又は周辺
から中心に向かう渦巻き形の浅い細溝を付設することに
より、ピン先端部に位置する金属の攪拌を一層促進する
ことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下において、本発明の実施に好
適な形態を図面と共に説明する。図1,2は、本発明
合方法とこれに用いる接合ツール10に関する。図1
(A)及び(B)に示すように、アルミニウム合金(JIS:A
5052等)からなる厚板1と薄板2とを同一平面(定
盤)上で突き合わせ、厚・薄板1,2間を上側に段部5
を有する境界面4とした状態で、図示しない治具により
厚・薄板1,2を定盤の表面上で拘束する。係る状態
で、図1(A)〜(C)のように、境界面4付近に回転する
接合ツール10を配置する。この接合ツール10は、工
具鋼(例えばJIS:SKD61)からなり、図1(C)及び図
2(A),(B)に示すように、太い円柱形の本体11、そ
の底面11aから本体11と同心に垂下する基側の攪拌
ピン12、及び該ピン12の底面13から同様に垂下す
る細径の先端側の攪拌ピン14を含む。攪拌ピン14
は、図2(a)に示すように、正六角形の断面を有する六
角柱である。
【0016】接合ツール10の攪拌ピンを上記の2段の
攪拌ピン12,14としたのは、次の理由による。攪拌
ピンは接合中に大きな反力を受けるので、これに耐える
ため特に攪拌ピンの付け根部分を太径にする必要があ
る。しかし、太径の攪拌ピンを有する接合ツールを用い
且つ薄板側に傾斜させて、厚板と薄板とを摩擦攪拌接合
する場合、攪拌ピンの先端が厚・薄板の裏面に突き抜け
ないよう当該ピンの位置を調整すると、境界面における
攪拌ピンの先端と厚・薄板の裏面との隙間が大きくな
り、未接合部を生じるおそれがある。これを防ぐため、
強度が必要な付け根部の攪拌ピン12を太径とし、先端
側の攪拌ピン14を細径とする2段構造の接合ツール1
0を用いることにより、上記隙間を小さくし未接合部を
生じにくくして、健全な接合部を境界面4の略全体に形
成できるようにしたものである。
【0017】図1(A),(B)に示すように、回転する接
合ツール10は、厚・薄板1,2間の境界面4付近に押
し込まれ、且つ境界面4に沿って移動される。該ツール
10の回転速度は500〜15000rpm、送り(移
動)速度は0.05〜2メートル/分、軸心方向に加え
られる押し込み力は1〜30kNの範囲である。この
際、接合ツール10は、移動方向と反対側に数°傾斜す
ると共に、図1(C)に示すように、境界面4と直交し且
つ薄板2側にも数°傾斜する姿勢で保持される。そし
て、図1(A)に示すように、接合ツール10は、平面視
で時計回り方向に回転しつつ厚・薄板1,2間の境界面
4に沿って図示で上側に移動すると共に、平面視におい
て厚板1をその移動方向における右側に配置した状態
で、厚・薄板1,2を境界面4に沿って摩擦攪拌接合す
る接合方法を行う。
【0018】すると、図2(C)に示すように、接合ツー
ル10の攪拌ピン12,14が回転しつつ境界面4付近
に押し込まれ、本体11の底面11aの両端部11b,
11cは厚・薄板1,2の表面1a,2aに略接触す
る。これにより、境界面4付近の厚・薄板1,2を形成
しているアルミニウムは、2段の攪拌ピン12,14の
回転により、摩擦熱を生じて加熱され可塑化される。同
時に、厚・薄板1,2の表面1a,2aが本体11の底
面11aに抑えられているため、厚板1のアルミニウム
は、図2(C)で左側の薄板2内の位置に塑性流動する。
また、薄板2のアルミニウムは流動化され一時的に厚板
1側にも流動するが、本体11の底面11aの抑え作用
により、薄板2側の位置に環流する。以上の結果、攪拌
ピン12,14が通過した跡には攪拌されたアルミニウ
ムが境界面4付近で緻密に固まった高強度の接合部6が
形成される。また、厚・薄板1,2の表面1a,2a上
に、上記攪拌されたアルミニウムが飛散しにくいので、
表面1a,2aを汚す事態をなくすか低減することがで
きる。
【0019】従って、以上の接合方法によれば、エア等
の巻き込みやボイドのトンネル欠陥等のない緻密な接合
部6を厚板部1と薄板部2との間に有し、且つ所要の接
合強度を有するテーラードブランク板材8を、確実且つ
容易に得ることができる。尚、上記接合方法には、前述
した条件による限り、後述する攪拌ピン12のみを1段
有する接合ツール10aを用いることも可能である。ま
た、接合ツール10によれば、図2(C)に示すように、
攪拌ピン14の先端を厚・薄板1,2の裏面1b,2b
付近まで進入させることなく、且つ薄板2の裏面2b側
に突き抜けずに、攪拌ピン12,14により塑性流動化
されたアルミニウムを厚板1側から薄板2側にスムース
に移行しつつ攪拌することができる。従って、第一の接
合方法によれば、厚・薄板1,2の境界面4付近におけ
る厚さ方向の略全体及び幅方向に、健全な接合部6を確
実に形成することができる。
【0020】次に、本発明の応用形態の接合方法を図
3,4により説明する。尚、の接合方法は、前記接
方法を前提として行われるものである。図3(A)に示す
前記同様の接合ツール10を用い、図3(B)に示すよう
に、前記同様に配置された厚・薄板1,2の境界面4に
沿って、前記同様に傾斜した接合ツール10を回転させ
且つ移動させつつ、攪拌ピン12,14を押し込む。こ
の際、接合ツール10の本体11の底面11aは、図3
(B)に示すように、上記ツール10の移動方向における
側面視で左右の端部11b,11cが厚・薄板1,2の
表面1a,2aに略接触すると共に、上記端部11cが
薄板2の内部に食い込まない範囲で、攪拌ピン12,1
4を境界面14付近に押し込む。併せて、境界面4にお
ける攪拌ピン14の先端(底面16)と厚・薄板1,2の
裏面1b,2bとの間には、図3(B)に示すように、
0.1〜0.5mmの隙間sを設定する。この状態で、接
合ツール10を境界面4に沿って移動し、厚・薄板1,
2を摩擦攪拌接合する接合方法を行う。
【0021】これにより、攪拌ピン12,14により塑
性流動化されたアルミニウムは、厚板1側から薄板2側
にスムースに移行しつつ攪拌され、上記ピン12,14
が通過した跡には攪拌されたアルミニウムが緻密に固ま
った接合部6が形成される。また、隙間sを上記範囲内
に設定することにより、攪拌ピン12,14が適切な深
さに保たれ、境界面4の厚さ方向の全体に渉り且つ幅方
向にも一定の広がりを有する前記接合部6を確実に形成
できる。しかも、薄板2の表面2aが本体11の底面1
1aにより凹まず、接合部6の表面における境界面4の
長手方向に沿った一対のバリも容易に除去でき、且つ薄
板2の板厚も減少せず、その付近の強度が接合後も殆ど
低下しない。更に、作業者が目視又はカメラ等でツール
10を容易に設定及び監視できるため、均一で安定した
接合作業を行うこともできる。従って、上記の接合方法
によれば、エアを巻き込むトンネル欠陥等のない緻密な
接合部6を厚板部1と薄板部2との間に有し、且つ所要
の接合強度を有するテーラードブランク板材8を、確実
且つ容易に得ることが可能となる。
【0022】また、図4(A)に示す1段の攪拌ピン12
のみを有する接合ツール10aを用い、図4(B)に示す
ように、厚・薄板1,2の境界面4に沿って、前記同様
に傾斜した接合ツール10aを回転させ且つ移動させて
押し込む。この際、図4(B)に示すように、接合ツール
10aの移動方向における側面視で、当該ツール10a
の本体11の底面11aにおける両端部11b,11c
は厚・薄板1,2の表面1a,2aに略接触すると共
に、上記端部11cが薄板2の内部には食い込まない範
囲で、攪拌ピン12を押し込む。また、境界面4におけ
る攪拌ピン12の先端(底面13)と薄板2の裏面2bと
の間に0.1〜0.2mmの隙間sが位置するように、攪
拌ピン12が境界面4付近に押し込まれる。係る状態
で、接合ツール10aを境界面4に沿って移動し、厚・
薄板1,2を摩擦攪拌接合する接合方法を行う。これに
よっても、境界面4付近の厚さ方向の全体及び幅方向に
もある程度広がった前記接合部6を有し、その表面に形
成されるバリ取りも容易にでき、且つ薄板部2の強度が
接合後でも殆ど低下していないテーラードブランク板材
8を、容易且つ確実に得ることが可能となる。
【0023】
【実施例】以下において、本発明の接合方法の具体的な
実施例を比較例と共に説明する。前記図3(B)及び図4
(B)に示したように、JIS:A5052のアルミニウ
ム合金からなる厚さ1.6mmの厚板1と、同じアルミ
ニウム合金からなる厚さ1.0mmの薄板2を複数組用
意した。また、同じJIS:SKD61の工具鋼からなり、
前記図4(A)に示した本体11の直径d1が全て9mm
の四つの接合ツール10aと、本体11の直径d1が9
mmと10.5mmで且つ2段の攪拌ピンがそれぞれ円
柱形の二つの接合ツール(10)とを用意した。この他
に、前記図3(A)に示した攪拌ピン12,14を有し且
つその本体11の直径d1が9mmの接合ツール10を
一つ用意した。
【0024】更に、接合ツール10a,(10),10の
移動方向の傾斜角は共通とし、表1に示すように、板厚
t1,t2の厚・薄板1,2、これらの境界面4と直交
する方向の傾斜角θ、攪拌ピン12,14の直径(d
2,d3)と長さ、及び、境界面4における接合ツール
10a,(10),10の先端と薄板2の裏面2bとの隙
間sを、それぞれ設定した。表1に示すように、四つの
接合ツール10aを実施例1〜3及び比較例1とし、二
つの接合ツール(10)のうち本体11の直径d1が9m
mのものを実施例4、直径d1が10.5mmのものを
実施例5とした。また、前記攪拌ピン12,14を有す
る接合ツール10を実施例6とした。
【0025】
【表1】
【0026】尚、表1の条件により比較例1では、接合
ツール10aの本体11の底面11aは、厚板1の表面
1aに接触せず、且つ薄板2の表面2aのみに接触して
いる。また、実施例3では、接合ツール10aの本体1
1の底面11aの両端は厚・薄板1,2の表面1a,2a
に略接触するが、攪拌ピン12の先端と厚・薄板1,2
の裏面1b,2bとの隙間sは0.3mmとした。更
に、実施例6では、接合ツール10の先端と裏面1b,
2bとの隙間sは0.5mmとした。尚、各例の接合ツ
ール10a,(10),10は、平面視で時計回り方向に回
転し、厚板1は平面視で上記接合ツール10などの移動
方向における右側に配置した。また、各例の接合ツール
10a,(10),10の回転速度は7000rpm、送り
(移動)速度は0.5m/分、軸心方向に加えられる押し
込み力は2.5kNに全て共通とした。
【0027】係る条件下で、各例の接合ツール10a,
(10),10を用いて、厚・薄板1,2の境界面4に沿
って、それぞれ長さ50cmに渉り摩擦攪拌接合を行っ
た。各例により得られたテーラードブランク板材8を、
それぞれ同じ数字の実施例又は比較例とした。更に、各
例に付き境界面4であった位置で破壊し、各例の接合部
6におけるトンネル欠陥等の有無を、X線透過試験によ
り観察した。そして、1カ所でも欠陥があったか否かの
結果を、前記表1中に示した。表1に示すように、実施
例1〜6で得られたテーラードブランク板材8には、接
合部6に欠陥がなかった。特に、実施例6の板材8で
は、0.5mmの隙間sを設けたにも拘わらず、境界面
4全体に健全な接合部が形成され、前記接合ツール10
における断面六角形の攪拌ピン14の効果が現れた。但
し、実施例3では、接合ツール10aを用いる際の隙間
sが大きめであったため、厚・薄板1,2の裏面1b,
2b寄りに未接合部が僅かに残っていた。
【0028】一方、比較例1で得られたテーラードブラ
ンク板材には、その接合部6にトンネル欠陥が発見され
た。また、その接合ツール10aの傾斜角θを7.6°
と大きくしたため、本体11の底面11aが厚板1の表
面1aから離れ、且つ薄板2の内部に僅かに食い込んで
いた。この結果、その接合部6表面の境界面4の方向に
沿った一対のバリを除去する際、薄板部2上のバリ取り
がしにくく、且つ薄板2の板厚が当初よりも減少したた
め、接合部6付近の継手強度も低下していた。以上の結
果から、本発明の接合方法による作用が理解され、且つ
その効果が裏付けられたことも容易に理解される。ま
た、前記従来の技術の項で述べたように、接合ツール1
0等の傾斜角θは、単に10°以下にすれば良いのでは
なく、上記各実施例のように、厚・薄板1,2の板厚差
や隙間s等を考慮して定めることが重要であることも容
易に理解されよう。
【0029】図5(A),(B)は、異なる形態の接合ツー
ル20の側面と底面を示す。図示のように、接合ツール
20は、円柱形の本体22と、その底面から同心に垂下
する円柱形で基側の攪拌ピン24と、その底面から同様
に垂下する細径で断面が異形形状を有する先端側の攪拌
ピン26とを含む。図5(A),(B)に示すように、先端
側の攪拌ピン26は、その周面に軸心方向に沿った四つ
の凹溝28が対称に形成されている。係る2段の攪拌ピ
ン24,26を有する接合ツール20によれば、各凹溝
28により攪拌ピン26の表面積が拡がるため、前記接
合ツール10と同様に、前記厚板1と薄板2との境界面
4付近の厚さ方向全体及び一定の幅方向に健全な前記接
合部6を有する摩擦攪拌接合を容易に行うことが可能と
なる。尚、攪拌ピン26は、その周面に軸心方向に沿っ
た複数の対称な凸条を突設した形態とすることもでき
る。該凸条には断面矩形、三角形、半円弧形状等が含まれ
る。
【0030】また、図5(C)に底面を示す接合ツール3
0は、円柱形の本体32と、その底面から同心に垂下す
る円柱形で基側の攪拌ピン34と、その底面から同様に
垂下する細径で断面が正五角形の先端側の攪拌ピン36
を含んでいる。更に、図5(D)は上記接合ツール30の
変形形態である接合ツール30aの底面を示す。図示の
ように、接合ツール30aも、円柱形の本体32と、円
柱形で基側の攪拌ピン34とを有し、且つ攪拌ピン34
の底面から同心に垂下する細径で断面が正八角形の先端
側の攪拌ピン38を含んでいる。以上の接合ツール3
0,30aによっても、前記接合ツール10,20と同
様に、前記境界面4付近における厚さ方向全体及びある
程度幅方向に健全な前記接合部6を有する摩擦攪拌接合
を容易に行うことが可能である。尚、攪拌ピン36,3
8の断面形状は、それぞれに倣った変形多角形としても
良い。
【0031】図5(E)〜(G)は、前記接合ツール10等
における攪拌ピンの底面を示す。図5(E)は、前記接合
ツール10における先端側の攪拌ピン14の底面16を
示し、係る底面16において各辺18の中間から中心部
42に向けてカーブした六本の凹溝40を互いに対称に
形成している。これにより、前記厚・薄板1,2の境界
面4付近で、金属を一層広範に塑性流動化し且つ攪拌す
ることができる。また、図5(F)は、前記接合ツール3
0aにおける先端側の攪拌ピン38の底面39を示し、
係る底面39において各辺の中央から中心部46に向け
て八本の凹溝44を放射状に形成している。これによっ
ても、前記厚・薄板1,2の境界面4付近で、金属を一
層広範に塑性流動化させ且つ攪拌することができる。
【0032】更に、図5(G)は、断面円形の攪拌ピン4
7の底面49を示し、その周縁から中心付近に向けて渦
巻き状の凹溝48を形成している。この凹溝48は、前
記第一の接合方法に適用し易くするため、その渦巻きの
向きは平面視で時計回りに形成される。これによって
も、前記厚・薄板1,2の境界面4付近で、金属を一層
広範に塑性流動化し且つ攪拌することができる。尚、一
対の上記凹溝48を形成し、これらを互いに対称で入れ
子状にして底面49に形成しても良い。また、攪拌ピン
47は、2段の攪拌ピンを有する前記接合ツール10の
先端側の他、1段の攪拌ピンを有する前記接合ツール1
0aにも共通して適用することができる。
【0033】本発明は、以上において説明した各形態に
限定されるものではない。例えば、接合すべき厚板と薄
板には、前記アルミニウム合金に限らず、各種の鋼板、
ステンレス鋼板、チタン合金板、及びマグネシウム合金
板も含まれ、且つこれらの間における異種金属同士から
なる組み合わせも含まれ得る。また、接合すべき厚板と
薄板は、互いに一定の板厚のものに限らず、一方又は双
方の板厚が途中で変化する段差を有する金属板、或いは
板厚が徐徐に変化するテーパ面を有する金属板にも、本
発明の接合方法及びツールは適用し得る。この場合、接
合ツールの前記傾斜角θを途中で変更するように制御す
るものとする。
【0034】更に、接合ツールには、3段以上の攪拌ピ
ンを同心にして設けても良い。或いは、複数段の攪拌ピ
ンを有する接合ツールにおいて、断面が前記多角形等の
非円形の攪拌ピンを1段目(基側)にも用いても良く
た、接合すべき厚板と薄板との境界面は、前記各形態の
ような直線状の形態に限らず、途中で異なる方向に方向
転換する境界面や、一定の曲率に沿ったカーブする境界
面も含まれ、接合ツールもこれらに倣って移動するよう
制御される。
【0035】
【発明の効果】本発明の接合方法(請求項1)によれば、
厚板及び薄板の境界面付近において、攪拌ピンにより塑
性流動化された金属が厚板側から薄板側に移行しつつ攪
拌され、上記ピンが通過した跡には攪拌された金属が境
界面付近で緻密に固まった高強度の接合部が形成され
る。従って、エアを巻き込んだトンネル欠陥等のない緻
密な接合部を厚板部と薄板部の間に有し、且つ所要の接
合強度を有するテーラードブランク板材を、確実且つ容
易に製造することが可能となる。また、請求項2〜4
接合方法によれば、両板間の境界面付近において、前記
攪拌ピンが通過した跡には攪拌された金属が緻密に固ま
った高強度の接合部が形成されると共に、例えば作業者
が目視又はカメラ等で容易に接合ツール設定及び監視で
きるため、均一で安定した接合作業を行うこともでき
【0036】更に、本発明の接合ツール(請求項5)によ
れば、厚板及び薄板の境界面付近において、攪拌ピンの
先端が両板の裏面付近まで進入し、且つ薄板の裏面側に
突き抜けずに、当該攪拌ピンにより塑性流動化された金
属を厚板側から薄板側にスムースに移行しつつ攪拌する
ことができる。しかも、2段目以降の先端寄りの上記攪
拌ピンの表面積を円柱形の形態に比べて増やせ、且つ厚
さ方向と幅方向の塑性流動域を拡大すことができるた
め、係る先端寄りのピンと接触し且つ攪拌される金属も
増大する。従って、両板の境界面における厚さ方向と共
に両板の平面方向の略全体にも拡大したに健全な接合部
を確実に形成できるため、例えば板厚差が大きい厚板と
薄板との接合においても、未接合部がなく高い強度の接
合部を有するテーラードブランク板材を、容易且つ安定
して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の接合方法を示す平面図、(B)は
(A)にて矢印B方向から見た側面図、(C)は(A)中のC
−C線に沿った断面図。
【図2】(A)は図1で用いた接合ツールの側面図、(a)
は(A)中のa−a線に沿った断面図、(C)は上記接合ツ
ールの斜視図、(D)は上記接合ツールを用いた接合方法
を示す断面図。
【図3】(A)は図1で用いた接合ツールの側面図、(B)
はこれを用いた応用形態の接合方法を示す概略図。
【図4】(A)は別の接合ツールの側面図、(B)はこれを
用いた応用形態の接合方法を示す概略図。
【図5】(A),(B)は異なる形態の接合ツールの側面図
又は底面図、(C),(D)は更に異なる形態の接合ツール
を示す底面図、(E)乃至(G)は前記接合ツール等の攪拌
ピンの底面図。
【図6】(A)は従来の接合方法を示す平面図、(B)は
(A)にて矢印B方向から見た側面図、(C)は(A)中のC
−C線に沿った断面図。
【符号の説明】
1……………………………………………………厚板 1a,2a…………………………………………表面 1b,2b…………………………………………裏面 2……………………………………………………薄板 4……………………………………………………境界面 8……………………………………………………テーラー
ドブランク板材 10,10a,20,30,30a……………接合ツー
ル 11,22,32…………………………………本体 11a………………………………………………底面 11b,11c……………………………………端部 12,14,24,26,34,36,38,47…攪拌ピン s……………………………………………………隙間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樋野 治道 静岡県庵原郡蒲原町蒲原一丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術セン ター内 (56)参考文献 特開 平10−249553(JP,A) 特開2000−167676(JP,A) 特開2000−246465(JP,A) 特開2001−71156(JP,A) 米国特許6227430(US,A) 英国特許出願公開2306366(GB,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】同一平面上に位置する金属製の厚板と薄板
    とを突き合わせ、両板の境界面に沿って接合ツールを回
    転させつつ移動して両板を摩擦攪拌接合するに際し、 上記接合ツールは、略円柱形の本体と、該本体の底面か
    ら同心に垂下し且つ両板の境界面付近に押し込まれる攪
    拌ピンと、を含み、 平面視において上記接合ツールが時計回り方向に回転し
    つつ両板の境界面に沿って移動すると共に、上記厚板を
    平面視において上記接合ツールの移動方向における右側
    に配置する、ことを特徴とする接合方法。
  2. 【請求項2】記接合ツールを薄板側に傾斜した姿勢と
    すると共に、当該ツールの移動方向における側面視にお
    いて、接合ツールの記本体における底面の両端部が
    記厚板と薄板の表面にそれぞれ略接触するように、
    攪拌ピンを両板の境界面付近に押し込む、ことを特徴と
    する請求項1に記載の接合方法。
  3. 【請求項3】前記接合ツールが薄板側に傾斜した状態に
    おいて、前記境界面における上記ツールの攪拌ピンの先
    端と両板の裏面との間に隙間が位置するように、前記攪
    拌ピンを両板の境界面付近に押し込む、 ことを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
  4. 【請求項4】前記接合ツールが薄板側に傾斜した状態
    で、その攪拌ピンを厚板と薄板との境界面付近に押し込
    むに際して、上記ツールの本体の底面が薄板の内部に食
    い込まないようにする、 ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の
    接合方法。
  5. 【請求項5】同一平面上に位置する金属製の厚板と薄板
    とを突き合わせ、両板の境界面に沿って摩擦攪拌接合す
    る接合ツールであって、 上記薄板側に傾斜した姿勢で回転しつつ移動する略円柱
    形の本体と、 上記本体の底面から同心にして垂下し且つ先端側に行く
    ほど細径になる2段以上の攪拌ピンと、を含むと共に、 上記攪拌ピンのうち2段目以降のピンの断面形状が四角
    形以上の正多角形又は 変形多角形、或いは異形形状であ
    る、ことを特徴とする接合ツール
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