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JP3304747B2 - 焼付硬化性と延性および常温時効性とのバランスに優れた冷延鋼板ならびにその製造方法 - Google Patents

焼付硬化性と延性および常温時効性とのバランスに優れた冷延鋼板ならびにその製造方法

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JP3304747B2
JP3304747B2 JP05755496A JP5755496A JP3304747B2 JP 3304747 B2 JP3304747 B2 JP 3304747B2 JP 05755496 A JP05755496 A JP 05755496A JP 5755496 A JP5755496 A JP 5755496A JP 3304747 B2 JP3304747 B2 JP 3304747B2
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less
balance
ductility
bake hardenability
steel sheet
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総人 北野
康伸 長滝
佳弘 細谷
豊 堀内
裕 馬場
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JFE Engineering Corp
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JFE Engineering Corp
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Publication date
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用外板など
の使用に適した、焼付硬化性と延性および常温時効性と
のバランスに優れた冷延鋼板ならびにその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】自動車用外板パネルなどに使用される鋼
板は、プレス加工時に成形性が良好なことと、最終製品
時に所定の強度を有していることが要求される。しか
し、一般に鋼板自体を強化すると延性が低下する。この
相反する要求性能を兼備した鋼板として、従来から、極
低炭素系をベースとした塗装焼付硬化性鋼板(BH鋼
板)が知られている。この鋼板は極低炭素鋼であるた
め、成形時には軟質である。また、固溶Cが残留してい
るため、成形、焼付塗装後には硬化する性質すなわち焼
付硬化性(ベークハード性:BH性)を有している。鋼
板のBH性は、鋼中に固溶しているCおよびNのひずみ
時効現象により生じるため、BH性を向上させるために
は鋼中の固溶Cおよび固溶Nを増加させる必要がある。
一方、このように鋼中の固溶Cおよび固溶Nが増加する
と、BH性は向上するものの、延性および耐常温時効性
が劣化する。したがって、BH性と延性および耐常温時
効性とのバランスに優れた鋼板が望まれている。
【0003】このような要求に対して、例えば特公平2
−10855号公報、特開昭57−89437号公報に
はNbまたはTiを添加した極低炭素鋼により深絞り性
に優れた冷延鋼板を製造する技術が提案されている。
【0004】しかし、この技術は、850℃以上の高温
焼鈍を必要とするため、コスト面で不利であるのみなら
ず、板の表面性状および形状の劣化、さらに、結晶粒の
粗大化による肌荒れなどの問題を有している。
【0005】また、特公昭61−45689号公報に
は、Nb,Tiを複合添加した極低炭素鋼によりBH性
に優れた深絞り用冷延鋼板を製造する技術が開示されて
いる。この技術において、TiはNをTiNとして固定
して常温時効性および材質の劣化を回避するために添加
され、NbはCをNbCとして一部固定し、BH性およ
び常温時効性に寄与する固溶Cを制御するために添加さ
れている。
【0006】しかしながら、この技術においても、BH
性と延性および常温時効性とのバランスが未だ十分とは
言い難い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、表面性状および形状の劣
化、肌荒れ等の問題が発生せず、かつ焼付硬化性と延性
および常温時効性とのバランスに優れた冷延鋼板、なら
びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述したような極低炭素
系をベースとしたBH鋼板には、BH性の制御、つまり
固溶C量の制御を目的として、Nb,Ti等の炭窒化物
形成元素が添加される。このため、このようなBH鋼板
には、Nb系、Ti系の析出物と固溶Cとが共存してい
る。このような析出物は、鋳造凝固、熱間圧延冷間圧
延、焼鈍という一連のプロセスにおいて、溶解、析出を
繰り返すため、鋼板の板厚方向および板幅方向で不均一
に分布しやすくなる。一般に、このようなNb,Ti系
の析出物はAlNと同様、フェライトの再結晶および粒
成長に影響を及ぼすことが知られている。このため、フ
ェライトが再結晶する前に、これらの析出物が鋼中に不
均一に分布していると、再結晶後のフェライト粒が不均
一になる。極低炭素鋼は粒界が清浄であるため粒界が弱
く、そのためプレス成形時に粒界近傍に応力が集中しや
すく、局部的な割れを生じやすい。この場合、上述のよ
うにフェライト粒が不均一であると、局部割れを一層助
長し、延性が低下する。
【0009】また、炭窒化物形成元素のように、Cとの
親和力が比較的強い元素が鋼中に固溶状態で存在する
と、Cのひずみ時効に次のような影響を及ぼすことが考
えられる。すなわち、炭窒化物になり得なかった元素の
周囲には、その親和力のために固溶Cが密に分布してい
る。そして、常温時効のようにCの拡散が活性でない雰
囲気では、固溶Cはその親和力のためにトラップされ
る。このため、Cは転位を固着することができない。し
かし、塗装焼き付けのように、C拡散が極めて活性な雰
囲気では、固溶Cは単窒化物形成元素の親和力に影響を
受けることなく運動することが可能となり、転位を固着
する。
【0010】本発明者らは、このような炭窒化物がフェ
ライト組織に及ぼす影響、および炭窒化物形成元素がC
のひずみ時効に及ぼす影響を考慮したうえで鋭意検討を
重ねた結果、Nb,V複合添加極低炭素鋼をベースにす
ることにより、従来技術で製造された極低炭素鋼では得
られなかった焼付硬化性と延性および常温時効性とのバ
ランスに優れた冷延鋼板を安定して製造することができ
ることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】本発明は、このような知見に基づいて完成
されたものであり、 C:0.001〜0.008wt
%未満、Si:0.3wt%以下、Mn:1.5wt%
以下、P:0.1wt%以下、S:0.015wt%以
下、Al:0.1wt%以下、N:0.005wt%以
下、Nb:0.003〜0.06wt%、V:0.03
5〜0.14wt%を含有し、残部実質的にFeからな
り、さらに如何に示す(1)式および(2)式を満足す
ることを特徴とする焼付け硬化性と延性および常温時効
性とのバランスに優れた冷延鋼板を提供するものであ
る。 0.0002≦C−(12/93)Nb≦0.002(wt%)・・・(1) V≧0.55Nb+0.001(wt%)・・・(2)
【0012】また、C:0.001〜0.008wt%
未満、Si:0.3wt%以下、Mn:1.5wt%以
下、P:0.1wt%以下、S:0.015wt%以
下、Al:0.1wt%以下、N:0.005wt%以
下、Nb:0.003〜0.06wt%、V:0.03
5〜0.14wt%を含有し、残部実質的にFeからな
り、さらに如何に示す(1)式および(2)式を満足す
る鋼を溶製した後、熱間圧延し、その後600℃超え7
50℃以下の温度で巻き取り、引き続き冷間圧延および
連続焼鈍を施すことを特徴とする焼付け硬化性と延性お
よび常温時効性とのバランスに優れた冷延鋼板の製造方
法を提供するものである
【0013】 0.0002≦C−(12/93)Nb≦0.002(wt%)…(1) V≧0.55Nb+0.001……(2)
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。
【0015】本発明の鋼板はC:0.001〜0.00
8wt%未満、Si:0.3wt%以下、Mn:1.5
wt%以下、P:0.1wt%以下、S:0.015w
t%以下、Al:0.1wt%以下、N:0.005w
t%以下、Nb:0.003〜0.06wt%、V:
0.035〜0.14wt%を含有する。
【0016】各成分をこのように規定した理由は以下の
とおりである。
【0017】C:0.001〜0.008wt%未満 Cは、焼付硬化性を確保する上で、有効な元素である。
しかし、0.001wt%未満では所望の焼付硬化性が
得られない。また、0.008wt%以上では、後述す
るようなNb,V添加による焼付硬化性−延性および常
温時効性バランスの向上がみられない。したがって、C
含有量を0.001〜0.008wt%未満の範囲とす
る。
【0018】Si:0.3wt%以下 Siは鋼の強化元素であり、強度確保のために添加され
る。しかし、その含有量が0.3wt%を超えると、著
しい延性の劣化や表面性状の悪化を招く。したがって、
Si含有量を0.3wt%以下とする。
【0019】Mn:1.5wt%以下 Mnは、鋼の強度を確保するため、およびSによる熱間
脆性回避のために添加される。しかし、その含有量が
1.5wt%を超えると、著しい延性の劣化を引き起こ
す。したがって、Mn含有量を1.5wt%以下とす
る。
【0020】P:0.1wt%以下 Pは鋼の強化に有効な元素である。しかし、その含有量
が0.1wt%を超えると、延性が著しく劣化する。し
たがって、P含有量を0.1wt%以下とする。
【0021】S:0.015wt%以下 Sは、その含有量が0.015wt%を超えると、著し
い赤熱脆性を引き起こすため、0.015wt%以下と
する。
【0022】Al:0.1wt%以下 Alは鋼の脱酸のために添加される。しかし、0.1w
t%を超えると、延性および表面性状の悪化を招く。し
たがって、Al含有量を0.1wt%以下とする。な
お、本発明では、NはNb,V系の炭窒化物として固定
されるため、AlNは実質的に形成されない。
【0023】N:0.005wt%以下 Nは、Nb,V系の炭窒化物として固定される。しか
し、N量が0.005wt%を超えると、常温時効性の
劣化が懸念されるため、0.005wt%以下とする。
【0024】Nb:0.003〜0.06wt% Nbは、Cとの結合力が強い元素であり、Cを一部固定
し、焼付硬化性を確保するために添加される。この場
合、Vと共存することにより、熱間圧延後、巻取処理お
よび焼鈍加熱の段階で均一にNb,V系の析出物が形成
される。この析出物が焼鈍段階でフェライト粒の再結晶
および粒成長に影響を及ぼし、再結晶後のフェライト粒
を均一にする。その結果、フェライト粒が不均一な場合
において生じるフェライト粒界への局部的な応力集中が
緩和され、延性が改善される。しかし、Nbの含有量が
0.003wt%未満ではこのような効果が得られず、
また、0.06%を超えると析出物が過剰となるため逆
に延性は劣化する。したがって、このような効果を安定
して得るために、Nbの含有量を0.003〜0.06
wt%の範囲とする。
【0025】V:0.035〜0.14wt% Vは、Nbと共存することで、上述したように、焼き付
け硬化性と延性とのバランスを著しく向上させる。ま
た、Vは、Nbに比較してCとの結合力が弱いため、V
のみでCを一部固定して焼き付け硬化性を確保すること
は好ましくない。そこで安定して焼き付け硬化性を確保
するためには、Cとの結合力がVよりも強い元素である
Nbの添加が必要となる。ところで、VはCとの結合力
が弱いため、多くは固溶状態で存在するが、Cとの間に
結合力を有しているため、固溶Vの周囲に炭化物になり
得なかった Cが分布している。この固溶C
は、塗装焼付けのようなCの拡散が活性な雰囲気におい
ては、Vとの結合力を振り切って移動し、転位を固着す
る。従って、焼き付け硬化性が得られる。これに対して
常温時効のように比較的C拡散が活性でない雰囲気にお
いては、CはVにトラップされる。このようにVを添加
することにより、耐常温時効性は劣化せず、焼き付け硬
化性が得られるという効果が得られるのである。しか
し、このような効果はVが0.035wt%未満では得
られる、また0.14wt%を超えるとこのような効果
が得られないばかりか、析出物が過剰となるため、延性
も改善されない。従って、Vの含有量を0.035〜
0.14wt%の範囲とする。
【0026】その他は実質的にFeであるが、不可避的
不純物およびその他の少量添加物は許容される。
【0027】本発明では、上記個々の成分範囲の他、以
下の(1)式および(2)式を満足することも要件とす
る。
【0028】 0.0002≦C−(12/93)Nb≦0.002(wt%)…(1) V≧0.55Nb+0.001(wt%)……(2) 図1は、横軸にC含有量をとり、縦軸にNb含有量をと
って、これらの含有量と、焼付硬化性と延性および常温
時効性とのバランスとの関係を示す図である。この図
は、V:0.01〜0.1wt%の範囲のものと、V:
tr.のものについて、後述する焼付硬化性と延性との
バランスBH+El、および焼付硬化性と常温時効性と
のバランスBH−AIを求めた結果を示すものである。
なお、他の成分については、本発明の範囲内とした。図
中○は、V:0.01〜0.1wt%の範囲でBH+E
lが90〜120、BH−AIが30〜50と両バラン
スが優れていたもの、△はV:0.01〜0.1wt%
であるが、BH+Elが60〜100、BH−AIが1
0〜20と焼付硬化性と延性および常温時効性とのバラ
ンスが悪かったもの、×はV:tr.のものである。こ
の図から、V:0.01〜0.1wt%と本発明の範囲
の場合に、C−(12/93)Nbの値が0.0002
〜0.002wt%であれば焼付硬化性と延性および常
温時効性とのバランスが優れたものとなることが確認さ
れる。
【0029】すなわち、C−(12/93)Nbの値が
0.0002wt%未満の場合には、固溶Cが過少であ
るため、焼付硬化性が得られないばかりか、上述したよ
うなNbおよびVの効果も得られない。また、この値が
0.002wt%を超えると、固溶Cが過剰となるた
め、やはり上述したようなNbおよびVの効果が得られ
ない。したがって、本発明では上記(1)式を満足する
ことを要件とする。
【0030】なお、図1に示すように、V:tr.の場
合には、(1)式を満たしていてもBH−AIの値が1
0〜20と低く、良好な焼付硬化性と常温時効性とのバ
ランスが得られない。
【0031】図2は、横軸にNb含有量をとり、縦軸に
V含有量をとって、これらの含有量と、焼付硬化性と延
性および常温時効性とのバランスとの関係を示す図であ
り、後述する焼付硬化性と延性とのバランスBH+E
l、および焼付硬化性と常温時効性とのバランスBH−
AIを示すものである。なお、他の成分については、本
発明の範囲内とした。図中○は、BH+Elが90〜1
20、BH−AIが30〜50と両バランスが優れてい
たもの、△はBH+Elが60〜100、BH−AIが
10〜20であり焼付硬化性と延性および常温時効性と
のバランスが悪かったものである。この図から、Vがw
t%で0.55Nb+0.001以上で焼付硬化性と延
性および常温時効性とのバランスが優れたものとなるこ
とが確認される。
【0032】すなわち、上述したように、VはNbと共
存することにより、焼付硬化性と延性および常温時効性
とのバランスを良好なものとすることができるが、この
効果はVの含有量がwt%で0.55Nb+0.001
未満では得られない。したがって、上記(2)式を満足
することを要件とする。
【0033】次に、本発明に係る冷延鋼板の製造方法に
ついて説明する。
【0034】本発明では、上述のような組成の鋼を溶製
した後、熱間圧延し、その後600℃超え750℃以下
の温度で巻取り、引き続き冷間圧延および連続焼鈍を施
すことにより、焼付硬化性と延性および常温時効性との
バランスに優れた冷延鋼板を製造する。
【0035】この場合、鋼の溶製方法は、通常用いられ
る転炉法および電気炉法のいずれでもよく、鋼の鋳造は
造塊法、連続鋳造法のいずれでもよい。
【0036】続いて、鋳造スラブを熱間圧延するが、こ
の際の熱間圧延は直送圧延および再加熱後の圧延のいず
れでもよい。仕上温度は、熱延板の組織を均一とする観
点から、Ar3 点以上とすることが望ましい。
【0037】その後の巻取りは600℃超え750℃以
下の温度で行うことが好ましいが、これはNb,V系析
出物を均一に形成させるためであり、750℃を超える
と析出物が粗大化しやすく、また600℃以下であると
析出物が析出しにくくなるからである。
【0038】このような熱延板に対して、酸洗後、冷間
圧延を行うが、その際の圧下率は60〜90%であるこ
とが望ましい。この範囲で冷間圧延することにより、そ
の後の焼鈍の加熱段階で、Nb,V系析出物を均一にひ
ずみ誘起析出させることができる。
【0039】連続焼鈍の際の均熱温度は、再結晶温度以
上900℃以下とすることが望ましい。この温度が90
0℃を超えると、フェライト粒が不均一となるばかりか
粗大化し、肌荒れが懸念されるためである。
【0040】本発明では、このようにして製造された鋼
板に、さらに電気めっき、化成処理等の表面処理を施す
ことは何等妨げられることはなく、このように表面処理
を施しても本発明の効果が損なわれることはない。
【0041】以上説明したような、焼付硬化性、延性お
よび常温時効性に及ぼすNb,V複合添加の効果は、本
発明者らが初めて見出したものであり、Ti,Zr,M
o,Wなどを添加した系では得られないものである。
【0042】また、本発明では、表面性状および形状の
劣化、肌荒れ等の問題が発生せずに焼付硬化性と延性お
よび常温時効性とのバランスに優れた冷延鋼板が得られ
る。
【0043】
【実施例】(実施例1) 表1及び表2に示す組成の鋼を溶製し、連続鋳造により
スラブとした。これらスラブを1250℃に加熱した
後、仕上温度890℃で熱間圧延を行い、板厚2.8m
mの熱延板を作成した。続いて、650℃で巻き取り、
酸洗後、板厚0.7mmまで冷間圧延を行った。この冷
延版に対して、均熱温度830℃、均熱時間60sec
で連続焼鈍を行い、その後、1.0%の調質圧延を施し
た。なお、表1のNo.1〜30(但し、鋼No.2,
3,6,9,13,16は欠番)は本発明例であり、表
2のNo.31〜58は比較例である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】このようにして得られた鋼板を引張試験に
供した。引張試験は、JIS Z2201に規定された
JIS5号試験片を用い、インストロン型試験機にて行
った。
【0047】また焼付硬化性(BH性)および常温時効
性(時効指数AI)の評価も行った。前者については、
2%予ひずみ付与後、170℃×20分間の熱処理を施
し、熱処理後の降伏強度の上昇量で評価し、後者につい
ては、8%予ひずみ付与後、100℃×60分間の熱処
理を施し、熱処理後の降伏強度の上昇量で評価した。
【0048】さらに、フェライト粒の均一性の評価を以
下のようにして行った。まず、焼鈍板の板幅方向および
板の長手方向の各々25箇所、合計50箇所から無作為
抽出的にサンプルを採取し、板の長手方向断面およびこ
れに直角な方向の断面の組織観察を行い、フェライト粒
径を測定した。粒径の測定は、JIS G 0552に
規定された切断法で行い。円相当径で評価した。このよ
うにして得られた100個のデータの度数分布を求め、
100個のデータのうち、平均粒径からの偏差が2μm
以内のものが90個以上の場合を◎、80〜89個の場
合を○、70〜79個の場合を△、69個以下の場合を
×と評価し、◎および○の場合、フェライト粒が均一で
あるとし、△および×の場合、フェライト粒が不均一で
あるとした。
【0049】これら評価結果を表3および表4に示す。
表中、YPは降伏点、TSは引張強度、Elは伸びを示
し、BH、AIはそれぞれ上述のようにしても求めた焼
付硬化性および常温時効指数である。また、焼付硬化性
と延性、および焼付硬化性と常温時効性のバランスを評
価する値としてBH+ElおよびBH−AIの値も求め
た。これらの値の意味は以下のとおりである。すなわ
ち、BHが高く、Elが大きいほど焼付硬化性と延性と
のバランスが優れているのであるから、BH+Elが大
きいほどこれらのバランスに優れていることとなる。ま
た、BHが高く、AIが低いほど焼付硬化性と常温時効
性とのバランスが優れているのであるから、BH−AI
の値が大きいほどこれらのバランスに優れていることと
なる。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】表3に示すように、本発明例であるNo.
1〜30(但し、No.2,3,6,9,13,16は
欠番)の鋼板は、BH+Elが90〜120、BH−A
lが30〜50であり、焼き付け硬化性と延性とのバラ
ンス、および焼付硬化性と常温時効性とのバランスがと
もに良好であることが確認された。また、フェライト粒
の均一性の評価は○または◎であり、フェライト粒が均
一であることが確認された。
【0053】これに対し、表4に示すように、組成が本
発明の範囲から外れている比較例のNo.31〜58は
これらのバランスが悪かった。すなわち、No.31〜
34,36,38,43,46,52はBH+Elが9
0未満、BH−Alが30未満と低く、焼付硬化性と延
性とのバランス、および焼付硬化性と常温時効性とのバ
ランスがともに悪かった。また、No.35,37,3
9〜42,44,45,47〜51,53〜58は、B
H−AIが30未満であり、焼付硬化性と常温時効性と
のバランスが悪かった。また、これらのフェライト粒の
均一性の評価結果はいずれも△または×であり、フェラ
イト粒が不均一であった。
【0054】(実施例2)上記表1および表2のうちN
o.4,44,52,54,58の組成の鋼のスラブを
加熱した後、表5〜表7に示す熱延条件で板厚2.8m
mの熱延板を作製した。続いて、0.7mm厚まで冷間
圧延を行い、表5に示す条件で連続焼鈍を施した後、伸
長率1.0%で調質圧延を行った。得られた鋼板の機械
的性質をこれらの表に併せて示す。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】本発明の範囲内の組成を有するNo.4の
鋼板は、製造条件にかかわらず、BH+Elが90〜1
20、BH−AIが30〜50であり、焼付硬化性と延
性とのバランス、および焼付硬化性と常温時効性とのバ
ランスがともに良好であることが確認された。その中で
も、No.4a〜jは、巻取温度が600℃超〜750
℃の範囲にあるため、両バランスが特に優れていた。ま
た、いずれもフェライト粒の均一性の評価は○または◎
であり、フェライト粒が均一であることが確認された。
【0059】一方、本発明の範囲から外れる組成を有す
るNo.44,52,54,58の鋼板は、製造条件に
かかわらず、BH−AIの値が30未満であり、焼付硬
化性と常温時効性とのバランスが悪かった。また、これ
らのフェライト粒の均一性の評価結果はいずれも△また
は×であり、フェライト粒が不均一であった。
【0060】実施例1および実施例2の結果を図3およ
び図4にまとめて示す。すなわち、図3は各サンプルの
BHとElとの関係を示す図であり、図4はAIとBH
との関係を示す図である。これらの図から、本発明例の
場合にはBH+Elの値が90〜120、BH−AIの
値が30〜50と優れており、特に巻取温度600℃超
〜720℃以下でこれらの値が良好となるが、比較例の
場合にはこれらの値、特にBH−AIの値が低いことが
明確に示されている。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
表面性状および形状の劣化、肌荒れ等の問題が発生せ
ず、かつ焼付硬化性と延性および常温時効性とのバラン
スに優れた冷延鋼板、およびこのような冷延鋼板を安定
して製造することができる製造方法が提供される。この
ため、本発明の冷延鋼板は自動車外板などの用途に好適
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】C,Nb含有量と、焼付硬化性と延性および常
温時効性とのバランスとの関係を示す図。
【図2】Nb,V含有量と、焼付硬化性と延性および常
温時効性とのバランスとの関係を示す図。
【図3】実施例1,2における焼付硬化性と延性とのバ
ランスを示す図。
【図4】実施例1,2における焼付硬化性と常温時効性
とのバランスを示す図。
フロントページの続き (72)発明者 堀内 豊 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 馬場 裕 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−171351(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.001〜0.008wt%未
    満、Si:0.3wt%以下、Mn:1.5wt%以
    下、P:0.1wt%以下、S:0.015wt%以
    下、Al:0.1wt%以下、N:0.005wt%以
    下、Nb:0.003〜0.06wt%、V:0.035〜0.14wt% を含有し、残部実質的
    にFeからなり、さらに如何に示す(1)式および
    (2)式を満足することを特徴とする焼付け硬化性と延
    性および常温時効性とのバランスに優れた冷延鋼板。 0.0002≦C−(12/93)Nb≦0.002(wt%)・・・(1) V≧0.55Nb+0.001(wt%)・・・(2)
  2. 【請求項2】 C:0.001〜0.008wt%未
    満、Si:0.3wt%以下、Mn:1.5wt%以
    下、P:0.1wt%以下、S:0.015wt%以
    下、Al:0.1wt%以下、N:0.005wt%以
    下、Nb:0.003〜0.06wt%、V:0.035〜0.14wt% を含有し、残部実質的
    にFeからなり、さらに如何に示す(1)式および
    (2)式を満足する鋼を溶製した後、熱間圧延し、その
    後600℃超え750℃以下の温度で巻き取り、引き続
    き冷間圧延および連続焼鈍を施すことを特徴とする焼付
    け硬化性と延性および常温時効性とのバランスに優れた
    冷延鋼板の製造方法。 0.0002≦C−(12/93)Nb≦0.002(wt%)・・・(1) V≧0.55Nb+0.001(wt%)・・・(2)
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