JP3391514B2 - 銅被覆鋼トロリ線の製造方法 - Google Patents
銅被覆鋼トロリ線の製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電車のパンタグラフ等
が摺動する間にパンタグラフ等を介して電車に給電を行
う銅被覆鋼トロリ線の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】図5は従来の銅被覆鋼トロリ線を示す断
面図である。この種の銅被覆鋼トロリ線は、断面が円形
の鋼芯26の周囲に銅又は銅合金からなる被覆層27を
配置して構成されている。そして、被覆層27の上半部
の両側には、架設時に銅製の取付具で保持するための1
対の溝部28が設けられている。この溝部28により、
トロリ線の周面は、取付具側である小弧面側25aと、
パンタグラフとの接触面側である大弧面側25bとに分
けられる。 【0003】銅被覆鋼トロリ線は、鋼芯の機械的強度が
高いため、銅又は銅合金のみからなるトロリ線に比して
引張強度が高いという長所がある。また、銅被覆鋼トロ
リ線は、被覆層が銅又は銅合金からなるため、導電性も
比較的良好である。更に、銅被覆鋼トロリ線は、パンタ
グラフの摺動によりトロリ線が摩耗して鋼芯が露出する
と、パンタグラフが鋼芯に摺動するようになってトロリ
線の摩耗速度が著しく減少するため、銅又は銅合金のみ
からなるトロリ線に比して耐摩耗性が優れ、寿命が長い
という長所もある。例えば、パンタグラフが鋼芯に摺動
するようになると、銅被覆鋼トロリ線の摩耗速度は銅又
は銅合金からなるトロリ線の約1/10に減少すること
が判明している。 【0004】更にまた、銅又は銅合金のみからなるトロ
リ線では、パンタグラフとの接触面が波状に摩耗して、
パンタグラフがトロリ線から瞬間的に離れる所謂離線現
象が頻繁に発生する。パンタグラフがトロリ線から離線
する際にはアークが発生するため、このような離線現象
は騒音の原因になる。しかし、銅被覆鋼トロリ線の場合
は、鋼芯がパンタグラフと接触するようになると、パン
タグラフとの接触面が平滑となって離線現象が少なくな
ることが知られている。 【0005】このように、銅被覆鋼トロリ線は、銅又は
銅合金からなるトロリ線に比して種々の優れた長所を備
えている。 【0006】従来、銅被覆鋼トロリ線は、以下に示すよ
うな方法により製造されている。即ち、先ず、鋼芯の周
囲に銅又は銅合金からなる被覆層が同心円状に配置され
てなる銅被覆鋼線を複数個の伸線加工ダイスに順次通
し、所定の線径にまで細線化すると共に、図5に示すよ
うに、被覆層27の上半部の両側に、長さ方向に延びる
溝部28を形成する。これにより、銅被覆鋼トロリ線が
完成する。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の銅被覆鋼トロリ線の製造方法には以下に示す問
題点がある。即ち、従来の方法により製造された銅被覆
鋼トロリ線は、図5に示すように、引張強度及び耐摩耗
性の向上に寄与する鋼芯26がトロリ線の中心にあるた
め、パンタグラフによる摺動摩擦により鋼芯26が露出
するまでの初期段階で鋼芯26よりも下方の部分の銅又
は銅合金が多量に摩滅する。このため、鋼芯26が露出
するまでの間にトロリ線の導電率が著しく低下してしま
う。また、パンタグラフとの接触面側の銅被覆層の厚さ
が比較的厚いため、パンタグラフとの接触面が波状に摩
耗して離線現象によるアークが発生する。この離線現象
はパンタグラフが鋼芯と接触するようになれば低減する
ものの、鋼芯がパンタグラフに接触するようになるまで
に長時間かかるため、従来の銅被覆鋼トロリ線では比較
的長期間に亘って離線現象が発生する。 【0008】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、導電性が良好であると共にパンタグラフの
摺動により鋼芯が露出するまでの時間が短く、導電率の
低下及びパンタグラフの離線現象を抑制することができ
る銅被覆鋼トロリ線を製造できる銅被覆鋼トロリ線の製
造方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明に係る銅被覆鋼ト
ロリ線の製造方法は、中心に向けて突出する突出部を備
えたダイスにより銅被覆鋼線を伸線加工してその被覆層
の一部に凹みを形成する異形銅被覆鋼線の形成工程と、
前記異形銅被覆鋼線をその凹み側を大弧面側に対応させ
て大弧面側の被覆層が薄いトロリ線形状に成形する成形
工程とを有することを特徴とする。 【0010】 【作用】本発明においては、先ず、鋼芯の周囲に銅又は
銅合金からなる被覆層が被覆された銅被覆鋼線を素材と
し、中心に向けて突出する突出部を備えたダイスにより
この銅被覆鋼線を伸線加工して、その被覆層の一部に凹
みを有する異形銅被覆鋼線を得る。この異形銅被覆鋼線
は、鋼芯の周囲の被覆層の厚さが不均一であり、凹み部
分の被覆層の厚さがその他の部分の被覆層よりも薄くな
っている。次いで、この異形銅被覆鋼線を、その凹み側
が大弧面側(パンタグラフ等との接触面側)になるよう
にトロリ線形状に成形する。これにより、大弧面側の被
覆層が薄い銅被覆鋼トロリ線を得ることができる。この
場合に、前記異形銅被覆鋼線は伸線加工により成形する
ので、異形銅被覆鋼線を容易に得ることができると共
に、異形状を切削等により成形する場合と異なり、銅又
は銅合金被覆層が無駄に切り捨てられることがないとい
う利点がある。このようにして製造された銅被覆鋼トロ
リ線は、大弧面側の被覆層が薄いため、使用開始から短
時間で鋼芯が露出する。従って、鋼芯が露出するまでに
摩滅する銅又は銅合金の量が少なく導電率の低下を抑制
できると共に、トロリ線の波状の摩耗及び離線現象を抑
制することができる。また、本発明方法によれば、必然
的にトロリ線の小弧面側の銅又は銅合金被覆層が厚くな
るため、導電性も良好に維持される。 【0011】 【実施例】次に、本発明の実施例について添付の図面を
参照して説明する。 【0012】図1は本発明の実施例方法に使用する異型
ダイスを示す平面図である。この異型ダイス1は、その
加工部2が平面視で略円形であり、加工部2の下部には
中心に向かって山状に突出する突出部2aが設けられて
いる。 【0013】本実施例においては、先ず、素材として、
鋼芯の周囲に銅又は銅合金からなる被覆層が同心円状に
配置された銅被覆鋼線を用意する。そして、この銅被覆
鋼線を、図1に示す異型ダイス1に通し伸線加工(引き
抜き加工)する。このように、断面形状が円形の銅被覆
鋼線を異型ダイス1に通すことにより、異型ダイス1の
加工部2の形状に倣った断面形状の異形銅被覆鋼線を得
ることができる。 【0014】図2は、このようにして得た異形銅被覆鋼
線5を示す断面図である。この図2に示すように、異型
ダイス1を通った異形銅被覆鋼線5は、鋼芯6の断面形
状が略円形のままであり、銅被覆層7の一部に凹み8が
形成される。即ち、鋼芯6の周囲の被覆層7の厚さは均
一でなくなり、凹み8部分の被覆層7は他の部分の被覆
層7よりも薄くなる。 【0015】次に、所定の形状の複数個のダイスを用い
て異形銅被覆鋼線を順次伸線加工し、これらのダイスに
より異形銅被覆鋼線を順次円形断面形状に加工する。な
お、伸線加工工程の少なくとも最終段には、図3に示す
ように、その加工部12の形状が略円形でありその上半
部の両側に突起11が設けられたダイス10を配置し、
このダイス10の突起11により、銅被覆鋼線の上半部
の両側に周面を大弧面側と小弧面側とに分ける1対の溝
部を形成する。この伸線加工工程においては、異形銅被
覆鋼線5の凹み8側を各伸線ダイスの大弧面形成部側1
3に配置してダイスに通すことが必要である。そうする
と、図4に示すように、断面形状が略円形であり、その
周面を小弧面側15aと大弧面側15bとに分ける1対
の溝部18を備えた銅被覆鋼トロリ線を得ることができ
る。この銅被覆鋼トロリ線は、大弧面側(パンタグラフ
との接触面側)の被覆層17が薄く、小弧面側の被覆層
17が厚くなっている。なお、鋼芯16は銅被覆層17
を介してダイスの壁面に押圧され、略楕円形の断面形状
となる。 【0016】本実施例方法によれば、中心に向かって突
出する突出部を備えたダイスで銅被覆鋼線を伸線加工す
ることにより被覆層の一部に凹みを有する異形銅被覆鋼
線を得て、この異形銅被覆鋼線を更に伸線加工してトロ
リ線を製造するため、大弧面側の被覆層が極めて薄い銅
被覆鋼トロリ線を容易に製造することができる。また、
本実施例方法により製造された銅被覆鋼トロリ線は、小
弧面側の銅被覆層の厚さが厚いため導電性が良好であ
る。更に、本実施例方法により製造された銅被覆鋼トロ
リ線は、パンタグラフとの接触面側である大弧面側の被
覆層の厚さが薄いため、パンタグラフの摺動により鋼芯
が露出するまでの時間が短く、鋼芯による耐摩耗性の向
上及び離線現象の抑制等の効果を使用開始から比較的短
時間で得ることができると共に、鋼芯が露出するまでに
摩滅する被覆層の量が少ないため導電率の変化が小さ
い。更にまた、本実施例においては、鋼芯がパンタグラ
フとの接触面に直交する方向を長径とする楕円状に変形
するため、鋼芯による耐摩耗性向上効果及び離線現象抑
制効果等の効果を長期間に亘って維持することができ
る。なお、異形銅被覆鋼線を伸線加工する際に、異形銅
被覆鋼線をその両側から圧縮するように突出部が設けら
れたダイスを使用して異型銅被覆鋼線を引き抜くことに
より、鋼芯をより一層確実に楕円形状に変形させること
ができる。 【0017】次に、本実施例方法により実際に銅被覆鋼
トロリ線を製造し、その銅被覆層の厚さを調べた結果に
ついて説明する。 【0018】先ず、素材として、直径が17mmの銅被
覆鋼線を用意した。この銅被覆鋼線の被覆層の厚さは約
3.10mmである。次に、図1に示す形状の異型ダイ
スを使用しこの銅被覆鋼線を引き抜き加工して、図2に
示す形状の異形銅被覆鋼線5を得た。この異形銅被覆鋼
線5の銅被覆層の凹み8の形状は、幅が約6mm、深さ
が約2.5mmである。この異形銅被覆鋼線5の凹み8
以外の部分の被覆層7の厚さは殆ど引き抜き加工前と同
じであり、凹み8部分の被覆層7の厚さは約0.5mm
で引き抜き加工前の約1/6になった。 【0019】次いで、複数個の引き抜きダイス及び溝部
形成用の突起が設けられたダイスに異形銅被覆鋼線を順
次通し伸線加工して、直径が12.34mmであり図4
に示す形状の溝付き銅被覆鋼線トロリ線を得た。なお、
この伸線加工工程においては、異形銅被覆鋼線の凹み側
を各ダイスの大弧面形成部側に配置した。 【0020】このようにして製造した銅被覆鋼トロリ線
(断面積:110mm2 )について、鋼芯の寸法及び銅
被覆層の厚さを測定した。その結果、大弧面側(パンタ
グラフとの接触面側)の銅被覆層の厚さは0.8mm、
小弧面側の銅被覆層の厚さは2.70mmであり、鋼芯
がパンタグラフとの接触面側に偏心していることが確認
できた。なお、従来方法により製造した銅被覆鋼トロリ
線(断面積:110mm2 )の場合は、その大弧面側及
び小弧面側での銅被覆層の厚さはいずれも2.1mmで
ある。また、本実施例方法により製造した銅被覆鋼トロ
リ線の鋼芯は略楕円状に変形しており、その高さは9m
m、幅は6.4mmであった。 【0021】 【発明の効果】以上説明したように本発明方法において
は、先ず、中心に向かって突出する突出部を備えたダイ
スにより銅被覆鋼線を伸線加工し被覆層の一部に凹みを
有する異形銅被覆鋼線を形成して、この異形銅被覆鋼線
を大弧面側の被覆層が薄いトロリ線形状に成形するか
ら、鋼芯がパンタグラフとの接触面側に偏心したトロリ
線を容易に製造することができる。従って、本発明方法
により製造された銅被覆鋼トロリ線は、導電性が良好で
あると共に、鋼芯が露出するまでの時間が短く、導電率
の低下及び波状の摩耗を抑制することができる。
が摺動する間にパンタグラフ等を介して電車に給電を行
う銅被覆鋼トロリ線の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】図5は従来の銅被覆鋼トロリ線を示す断
面図である。この種の銅被覆鋼トロリ線は、断面が円形
の鋼芯26の周囲に銅又は銅合金からなる被覆層27を
配置して構成されている。そして、被覆層27の上半部
の両側には、架設時に銅製の取付具で保持するための1
対の溝部28が設けられている。この溝部28により、
トロリ線の周面は、取付具側である小弧面側25aと、
パンタグラフとの接触面側である大弧面側25bとに分
けられる。 【0003】銅被覆鋼トロリ線は、鋼芯の機械的強度が
高いため、銅又は銅合金のみからなるトロリ線に比して
引張強度が高いという長所がある。また、銅被覆鋼トロ
リ線は、被覆層が銅又は銅合金からなるため、導電性も
比較的良好である。更に、銅被覆鋼トロリ線は、パンタ
グラフの摺動によりトロリ線が摩耗して鋼芯が露出する
と、パンタグラフが鋼芯に摺動するようになってトロリ
線の摩耗速度が著しく減少するため、銅又は銅合金のみ
からなるトロリ線に比して耐摩耗性が優れ、寿命が長い
という長所もある。例えば、パンタグラフが鋼芯に摺動
するようになると、銅被覆鋼トロリ線の摩耗速度は銅又
は銅合金からなるトロリ線の約1/10に減少すること
が判明している。 【0004】更にまた、銅又は銅合金のみからなるトロ
リ線では、パンタグラフとの接触面が波状に摩耗して、
パンタグラフがトロリ線から瞬間的に離れる所謂離線現
象が頻繁に発生する。パンタグラフがトロリ線から離線
する際にはアークが発生するため、このような離線現象
は騒音の原因になる。しかし、銅被覆鋼トロリ線の場合
は、鋼芯がパンタグラフと接触するようになると、パン
タグラフとの接触面が平滑となって離線現象が少なくな
ることが知られている。 【0005】このように、銅被覆鋼トロリ線は、銅又は
銅合金からなるトロリ線に比して種々の優れた長所を備
えている。 【0006】従来、銅被覆鋼トロリ線は、以下に示すよ
うな方法により製造されている。即ち、先ず、鋼芯の周
囲に銅又は銅合金からなる被覆層が同心円状に配置され
てなる銅被覆鋼線を複数個の伸線加工ダイスに順次通
し、所定の線径にまで細線化すると共に、図5に示すよ
うに、被覆層27の上半部の両側に、長さ方向に延びる
溝部28を形成する。これにより、銅被覆鋼トロリ線が
完成する。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の銅被覆鋼トロリ線の製造方法には以下に示す問
題点がある。即ち、従来の方法により製造された銅被覆
鋼トロリ線は、図5に示すように、引張強度及び耐摩耗
性の向上に寄与する鋼芯26がトロリ線の中心にあるた
め、パンタグラフによる摺動摩擦により鋼芯26が露出
するまでの初期段階で鋼芯26よりも下方の部分の銅又
は銅合金が多量に摩滅する。このため、鋼芯26が露出
するまでの間にトロリ線の導電率が著しく低下してしま
う。また、パンタグラフとの接触面側の銅被覆層の厚さ
が比較的厚いため、パンタグラフとの接触面が波状に摩
耗して離線現象によるアークが発生する。この離線現象
はパンタグラフが鋼芯と接触するようになれば低減する
ものの、鋼芯がパンタグラフに接触するようになるまで
に長時間かかるため、従来の銅被覆鋼トロリ線では比較
的長期間に亘って離線現象が発生する。 【0008】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、導電性が良好であると共にパンタグラフの
摺動により鋼芯が露出するまでの時間が短く、導電率の
低下及びパンタグラフの離線現象を抑制することができ
る銅被覆鋼トロリ線を製造できる銅被覆鋼トロリ線の製
造方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明に係る銅被覆鋼ト
ロリ線の製造方法は、中心に向けて突出する突出部を備
えたダイスにより銅被覆鋼線を伸線加工してその被覆層
の一部に凹みを形成する異形銅被覆鋼線の形成工程と、
前記異形銅被覆鋼線をその凹み側を大弧面側に対応させ
て大弧面側の被覆層が薄いトロリ線形状に成形する成形
工程とを有することを特徴とする。 【0010】 【作用】本発明においては、先ず、鋼芯の周囲に銅又は
銅合金からなる被覆層が被覆された銅被覆鋼線を素材と
し、中心に向けて突出する突出部を備えたダイスにより
この銅被覆鋼線を伸線加工して、その被覆層の一部に凹
みを有する異形銅被覆鋼線を得る。この異形銅被覆鋼線
は、鋼芯の周囲の被覆層の厚さが不均一であり、凹み部
分の被覆層の厚さがその他の部分の被覆層よりも薄くな
っている。次いで、この異形銅被覆鋼線を、その凹み側
が大弧面側(パンタグラフ等との接触面側)になるよう
にトロリ線形状に成形する。これにより、大弧面側の被
覆層が薄い銅被覆鋼トロリ線を得ることができる。この
場合に、前記異形銅被覆鋼線は伸線加工により成形する
ので、異形銅被覆鋼線を容易に得ることができると共
に、異形状を切削等により成形する場合と異なり、銅又
は銅合金被覆層が無駄に切り捨てられることがないとい
う利点がある。このようにして製造された銅被覆鋼トロ
リ線は、大弧面側の被覆層が薄いため、使用開始から短
時間で鋼芯が露出する。従って、鋼芯が露出するまでに
摩滅する銅又は銅合金の量が少なく導電率の低下を抑制
できると共に、トロリ線の波状の摩耗及び離線現象を抑
制することができる。また、本発明方法によれば、必然
的にトロリ線の小弧面側の銅又は銅合金被覆層が厚くな
るため、導電性も良好に維持される。 【0011】 【実施例】次に、本発明の実施例について添付の図面を
参照して説明する。 【0012】図1は本発明の実施例方法に使用する異型
ダイスを示す平面図である。この異型ダイス1は、その
加工部2が平面視で略円形であり、加工部2の下部には
中心に向かって山状に突出する突出部2aが設けられて
いる。 【0013】本実施例においては、先ず、素材として、
鋼芯の周囲に銅又は銅合金からなる被覆層が同心円状に
配置された銅被覆鋼線を用意する。そして、この銅被覆
鋼線を、図1に示す異型ダイス1に通し伸線加工(引き
抜き加工)する。このように、断面形状が円形の銅被覆
鋼線を異型ダイス1に通すことにより、異型ダイス1の
加工部2の形状に倣った断面形状の異形銅被覆鋼線を得
ることができる。 【0014】図2は、このようにして得た異形銅被覆鋼
線5を示す断面図である。この図2に示すように、異型
ダイス1を通った異形銅被覆鋼線5は、鋼芯6の断面形
状が略円形のままであり、銅被覆層7の一部に凹み8が
形成される。即ち、鋼芯6の周囲の被覆層7の厚さは均
一でなくなり、凹み8部分の被覆層7は他の部分の被覆
層7よりも薄くなる。 【0015】次に、所定の形状の複数個のダイスを用い
て異形銅被覆鋼線を順次伸線加工し、これらのダイスに
より異形銅被覆鋼線を順次円形断面形状に加工する。な
お、伸線加工工程の少なくとも最終段には、図3に示す
ように、その加工部12の形状が略円形でありその上半
部の両側に突起11が設けられたダイス10を配置し、
このダイス10の突起11により、銅被覆鋼線の上半部
の両側に周面を大弧面側と小弧面側とに分ける1対の溝
部を形成する。この伸線加工工程においては、異形銅被
覆鋼線5の凹み8側を各伸線ダイスの大弧面形成部側1
3に配置してダイスに通すことが必要である。そうする
と、図4に示すように、断面形状が略円形であり、その
周面を小弧面側15aと大弧面側15bとに分ける1対
の溝部18を備えた銅被覆鋼トロリ線を得ることができ
る。この銅被覆鋼トロリ線は、大弧面側(パンタグラフ
との接触面側)の被覆層17が薄く、小弧面側の被覆層
17が厚くなっている。なお、鋼芯16は銅被覆層17
を介してダイスの壁面に押圧され、略楕円形の断面形状
となる。 【0016】本実施例方法によれば、中心に向かって突
出する突出部を備えたダイスで銅被覆鋼線を伸線加工す
ることにより被覆層の一部に凹みを有する異形銅被覆鋼
線を得て、この異形銅被覆鋼線を更に伸線加工してトロ
リ線を製造するため、大弧面側の被覆層が極めて薄い銅
被覆鋼トロリ線を容易に製造することができる。また、
本実施例方法により製造された銅被覆鋼トロリ線は、小
弧面側の銅被覆層の厚さが厚いため導電性が良好であ
る。更に、本実施例方法により製造された銅被覆鋼トロ
リ線は、パンタグラフとの接触面側である大弧面側の被
覆層の厚さが薄いため、パンタグラフの摺動により鋼芯
が露出するまでの時間が短く、鋼芯による耐摩耗性の向
上及び離線現象の抑制等の効果を使用開始から比較的短
時間で得ることができると共に、鋼芯が露出するまでに
摩滅する被覆層の量が少ないため導電率の変化が小さ
い。更にまた、本実施例においては、鋼芯がパンタグラ
フとの接触面に直交する方向を長径とする楕円状に変形
するため、鋼芯による耐摩耗性向上効果及び離線現象抑
制効果等の効果を長期間に亘って維持することができ
る。なお、異形銅被覆鋼線を伸線加工する際に、異形銅
被覆鋼線をその両側から圧縮するように突出部が設けら
れたダイスを使用して異型銅被覆鋼線を引き抜くことに
より、鋼芯をより一層確実に楕円形状に変形させること
ができる。 【0017】次に、本実施例方法により実際に銅被覆鋼
トロリ線を製造し、その銅被覆層の厚さを調べた結果に
ついて説明する。 【0018】先ず、素材として、直径が17mmの銅被
覆鋼線を用意した。この銅被覆鋼線の被覆層の厚さは約
3.10mmである。次に、図1に示す形状の異型ダイ
スを使用しこの銅被覆鋼線を引き抜き加工して、図2に
示す形状の異形銅被覆鋼線5を得た。この異形銅被覆鋼
線5の銅被覆層の凹み8の形状は、幅が約6mm、深さ
が約2.5mmである。この異形銅被覆鋼線5の凹み8
以外の部分の被覆層7の厚さは殆ど引き抜き加工前と同
じであり、凹み8部分の被覆層7の厚さは約0.5mm
で引き抜き加工前の約1/6になった。 【0019】次いで、複数個の引き抜きダイス及び溝部
形成用の突起が設けられたダイスに異形銅被覆鋼線を順
次通し伸線加工して、直径が12.34mmであり図4
に示す形状の溝付き銅被覆鋼線トロリ線を得た。なお、
この伸線加工工程においては、異形銅被覆鋼線の凹み側
を各ダイスの大弧面形成部側に配置した。 【0020】このようにして製造した銅被覆鋼トロリ線
(断面積:110mm2 )について、鋼芯の寸法及び銅
被覆層の厚さを測定した。その結果、大弧面側(パンタ
グラフとの接触面側)の銅被覆層の厚さは0.8mm、
小弧面側の銅被覆層の厚さは2.70mmであり、鋼芯
がパンタグラフとの接触面側に偏心していることが確認
できた。なお、従来方法により製造した銅被覆鋼トロリ
線(断面積:110mm2 )の場合は、その大弧面側及
び小弧面側での銅被覆層の厚さはいずれも2.1mmで
ある。また、本実施例方法により製造した銅被覆鋼トロ
リ線の鋼芯は略楕円状に変形しており、その高さは9m
m、幅は6.4mmであった。 【0021】 【発明の効果】以上説明したように本発明方法において
は、先ず、中心に向かって突出する突出部を備えたダイ
スにより銅被覆鋼線を伸線加工し被覆層の一部に凹みを
有する異形銅被覆鋼線を形成して、この異形銅被覆鋼線
を大弧面側の被覆層が薄いトロリ線形状に成形するか
ら、鋼芯がパンタグラフとの接触面側に偏心したトロリ
線を容易に製造することができる。従って、本発明方法
により製造された銅被覆鋼トロリ線は、導電性が良好で
あると共に、鋼芯が露出するまでの時間が短く、導電率
の低下及び波状の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例方法に使用する異型ダイスを示
す平面図である。 【図2】異型ダイスを用いて伸線加工された異形銅被覆
鋼線を示す断面図である。 【図3】引き抜きダイスを示す平面図である。 【図4】本実施例方法により製造された銅被覆鋼トロリ
線を示す断面図である。 【図5】従来の銅被覆鋼トロリ線を示す断面図である。 【符号の説明】 1;異型ダイス 2,12;加工部 2a;突出部 5;異形銅被覆鋼線 6,16,26;鋼芯 7,17,27;被覆層 8;凹み 10;ダイス 11;突起 15a,25a;小弧面側 15b,25b;大弧面側 18,28;溝部
す平面図である。 【図2】異型ダイスを用いて伸線加工された異形銅被覆
鋼線を示す断面図である。 【図3】引き抜きダイスを示す平面図である。 【図4】本実施例方法により製造された銅被覆鋼トロリ
線を示す断面図である。 【図5】従来の銅被覆鋼トロリ線を示す断面図である。 【符号の説明】 1;異型ダイス 2,12;加工部 2a;突出部 5;異形銅被覆鋼線 6,16,26;鋼芯 7,17,27;被覆層 8;凹み 10;ダイス 11;突起 15a,25a;小弧面側 15b,25b;大弧面側 18,28;溝部
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(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B60M 1/13
H01B 13/00
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 中心に向けて突出する突出部を備えたダ
イスにより銅被覆鋼線を伸線加工してその被覆層の一部
に凹みを形成する異形銅被覆鋼線の形成工程と、前記異
形銅被覆鋼線をその凹み側を大弧面側に対応させて大弧
面側の被覆層が薄いトロリ線形状に成形する成形工程と
を有することを特徴とする銅被覆鋼トロリ線の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23643493A JP3391514B2 (ja) | 1993-09-22 | 1993-09-22 | 銅被覆鋼トロリ線の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23643493A JP3391514B2 (ja) | 1993-09-22 | 1993-09-22 | 銅被覆鋼トロリ線の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0789377A JPH0789377A (ja) | 1995-04-04 |
JP3391514B2 true JP3391514B2 (ja) | 2003-03-31 |
Family
ID=17000701
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23643493A Expired - Fee Related JP3391514B2 (ja) | 1993-09-22 | 1993-09-22 | 銅被覆鋼トロリ線の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3391514B2 (ja) |
-
1993
- 1993-09-22 JP JP23643493A patent/JP3391514B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0789377A (ja) | 1995-04-04 |
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