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JP3369728B2 - 積層型透明導電基材 - Google Patents

積層型透明導電基材

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Publication number
JP3369728B2
JP3369728B2 JP13225894A JP13225894A JP3369728B2 JP 3369728 B2 JP3369728 B2 JP 3369728B2 JP 13225894 A JP13225894 A JP 13225894A JP 13225894 A JP13225894 A JP 13225894A JP 3369728 B2 JP3369728 B2 JP 3369728B2
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transparent
transparent conductive
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film
insulating layer
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一吉 井上
暁 海上
正嗣 大山
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Idemitsu Kosan Co Ltd
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Idemitsu Kosan Co Ltd
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Publication date
Application filed by Idemitsu Kosan Co Ltd filed Critical Idemitsu Kosan Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示素子用等の透
明電極を作製するための材料として好適な積層型透明導
電基材に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示素子やエレクトロルミネッセン
ス表示素子(以下、EL表示素子と略記する)等の駆動
電極、あるいはカラーフィルターを電着法により製造す
る際の電極等としては、従来よりITO等からなる透明
電極が利用されている。これらの透明電極は、一般に、
ガラス基板や透明高分子フィルム等の透明基材の上に透
明電極用の透明導電膜を成膜した後、この透明導電膜を
所定のマスク(レジスト膜)を用いたエッチング法によ
り所望形状に成形することで製造される。そして、この
ような透明電極を得るのに好適な材料として、透明ガラ
ス基板上に透明導電膜を成膜したしたものや(以下、積
層型透明導電ガラスという)、透明高分子フィルム(シ
ートを含む)上に透明導電膜を成膜したもの(以下、積
層型透明導電フィルムという)が開発されている(以
下、これらを積層型透明導電基材と総称する)。
【0003】積層型透明導電基材は、上述のように透明
基材と透明導電膜とを必須部材とするものであるが、必
要に応じて、透明導電膜の上には無機酸化物、有機高分
子等からなる透明保護膜が設けられる。この透明保護膜
は、透明導電膜(透明電極)の耐磨耗性や耐擦過傷性の
向上、あるいは、エッチング時に透明導電膜(透明電
極)に微細なクラックが生じることの防止や、エッチン
グに使用したマスク(レジスト膜)をアルカリ性溶液を
用いて剥離するのに起因して透明導電膜(透明電極)の
導電性が低下することの防止等を目的として設けられる
ものである。
【0004】透明保護層を有する積層型透明導電基材は
上述の目的を達成するうえで有用ではあるが、その一方
で、酸によるエッチングが困難であるためにエッチング
不良等の原因になるという難点を有しているものが多
い。このような難点を有していないものとしては、透明
導電膜上に酸可溶でかつ耐アルカリ性を有する1μ以下
の高分子薄膜からなる保護層(トップコート層)を塗布
法により形成した積層型透明導電基材が知られている
(特開昭61−16851号公報参照)。
【0005】ところで、近年の液晶表示装置の発達は目
覚ましく、現在ではCRT(ブラウン管)に替わる表示
装置としてパーソナルコンピュータやワードプロセッサ
等のOA機器等へ活発に導入されている。この液晶表示
装置においては今日でもその応答性の向上が望まれてお
り、応答性を向上させるための一法として、最近では液
晶セルのセルギャップを小さくする試みがなされてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】液晶表示素子において
互いに対向する2つの透明電極各々の内側(液晶側)に
は、通常、配向膜が配設されており、また、液晶セルの
セルギャップはスペーサー(高分子粒子等)を液晶セル
中に導入することで維持されているが、このスペーサー
を液晶セル内に均一に配置することは困難である。この
ためセルギャップを小さくした場合には、液晶表示素子
において互いに対向する2つの透明電極が直接または配
向膜を介して局所的に互いに接触するということが起き
易くなる。そして、このような接触があった場合には、
配向膜が介在していたとしても前記2つの透明電極間に
無用の導通が生じて、表示不良が起き易くなる。
【0007】上述した表示不良は、透明電極上に無機系
または有機系の透明電気絶縁層を設けることにより防止
することが可能であるが、エッチング法により所望形状
の透明電極を得た後にこの透明電極上に透明電気絶縁層
を設けたのでは、エッチング時に透明導電膜(透明電
極)に微細なクラックが生じることや、エッチングに使
用したマスク(レジスト膜)をアルカリ性溶液を用いて
剥離するのに起因して透明導電膜(透明電極)の導電性
が低下することを防止することができない。
【0008】また、透明導電膜の上に無機酸化物、有機
高分子等からなる透明保護層を設けた従来の積層型透明
導電基材(前記特開昭61−16851号公報に開示の
発明を除く)は、この透明保護層が透明電気絶縁層とし
ても機能し得るという点で好ましいものではあるが、前
述したように酸によるエッチングが困難であるためにエ
ッチング不良等を起し易いという難点を有している。こ
のため、この積層型透明導電基材を用いて上記の表示不
良を防止し得る透明電極(表面に透明電気絶縁層を有す
るもの)を得ることは困難である。
【0009】前記特開昭61−16851号公報に開示
されている積層型透明導電基材には、保護層(トップコ
ート層)が塗布法により形成されることに起因する難点
として、保護層(トップコート層)形成用のコーティン
グ溶液中に存在するイオン性不純物等により透明導電膜
の電気抵抗値が変化してしまったり、駆動中に透明導電
膜が着色してしまい易いという難点や、保護層(トップ
コート層)中にゲルや異物等が不可避的に存在すること
となるために表面精度が比較的低く、液晶表示素子の透
明電極に利用した場合には液晶セルのセルギャップを局
所的に変化させて表示ムラを引き起こし易いという難点
がある。
【0010】本発明の目的は、表面に透明電気絶縁層を
有する透明電極をエッチング法により作製するのに好適
な積層型透明導電基材であって、製造過程での透明導電
膜の電気抵抗値の変化を容易に防止することができ、表
面精度の比較的高いものが得易く、かつ透明電気絶縁層
表面の電気絶縁性が高い積層型透明導電基材を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の積層型透明導電基材は、透明基材と、この透明基材
の一主表面上に直接またはアンダーコート層を介して形
成された透明導電膜と、この透明導電膜上に形成された
透明電気絶縁層とを少なくとも備え、前記透明導電膜
が、主要カチオン元素としてインジウム(In)および
亜鉛(Zn)をInの原子比In/(In+Zn)が
0.55〜0.90の範囲内で含有する非晶質酸化物か
らなり、かつ、前記透明電気絶縁層が酸可溶−耐アルカ
リ性無機化合物からなることを特徴とするものである。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】ず、本発明の積層型透明導電基材につい
て説明すると、この積層型透明導電基材は前述のように
透明基材と、この透明基材の一主表面上に直接またはア
ンダーコート層を介して形成された透明導電膜と、この
透明導電膜上に形成された透明電気絶縁層とを少なくと
も備えている。
【0014】ここで、前記透明基材は所望の透明性およ
び電気絶縁性を有するものであれば特に限定されるもの
ではなく、透明高分子フィルムや透明高分子シート、あ
るいは透明ガラス基板等を用いることができる。透明高
分子フィルムや透明高分子シートの材質の具体例として
は、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ
エーテルスルホン系樹脂、アモルファスポリオレフィン
樹脂等が挙げられる。また、透明ガラス基板の材質の具
体例としては、青板ガラス、白板ガラス、無アルカリガ
ラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
透明基材の厚さは特に限定されるものではなく、透明基
材自体の強度や目的とする積層型透明導電基材の用途等
に応じて適宜選択される。
【0015】この透明基材上に直接またはアンダーコー
ト層を介して設けられる透明導電膜としては、主要カチ
オン元素としてインジウム(In)および亜鉛(Zn)
を含有する非晶質酸化物からなる透明導電膜であって、
Inの原子比In/(In+Zn)が0.55〜0.9
0の範囲内であるものが好ましい。ここで、Inの原子
比In/(In+Zn)を前記の範囲に限定する理由
は、0.55未満では膜の導電性が低くなり、0.9を
超えると膜のエッチング特性あるいは耐湿熱性が低下す
るからである。Inの原子比In/(In+Zn)の好
ましい範囲は0.65〜0.90であり、特に好ましい
範囲は0.82〜0.90である。
【0016】また、上記の非晶質酸化物からなる透明導
電膜の相対酸素含有比は、0.6以上0.99未満であ
ることが好ましい。相対酸素含有比がこの範囲外になる
と、組成にもよるが、導電性や光透過率が低下し易い。
ここで、本明細書でいう「相対酸素含有比」とは、次式
によって定義されるものである。
【数1】 透明導電膜として上述の非晶質酸化物を用いることによ
り、導電性や透明性、エッチング特性、耐湿熱性に優れ
た積層型透明導電基材を得ることが容易になる。
【0017】透明導電膜の膜厚は100〜10000オ
ングストロームとすることが好ましい。100オングス
トローム未満では十分な導電性を得ることが困難であ
り、10000オングストロームを超えると得られた積
層型透明導電基材を取り扱う際に透明導電膜にクラック
等が発生し易くなる。透明導電膜のより好ましい膜厚は
300〜7500オングストロームであり、特に好まし
い膜厚は500〜6000オングストロームである。
【0018】上述した透明導電膜は、前述した透明基材
の一主表面上に直接形成することができるが、透明導電
膜と透明基材との間の接着性が低い場合には、アンダー
コート層を介して形成することが好ましい。このアンダ
ーコート層も所望の透明性および電気絶縁性を有してい
ることが必要であるが、その材質は透明基材および透明
導電膜としてそれぞれどのような物質を用いるかに応じ
て適宜選択される。アンダーコート層の材質の具体例と
しては、エポキシ樹脂、ポリフェノキシエーテル樹脂、
アクリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、
ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩
化ビニリデンおよびポリフッ化ビニリデン等の有機化合
物の1種または複数種や、SiO2 およびTiO2 等の
無機化合物、あるいは、各種シランカップリング剤およ
び各種チタンカップリング剤等が挙げられる。アンダー
コート層の膜厚も特に限定されるものではなく、透明基
材および透明導電膜それぞれの材質ならびにアンダーコ
ート層自体の材質に応じて、また目的とする積層型透明
導電基材の用途等に応じて、適宜選択される。
【0019】本発明の積層型透明導電基材では、前述し
た透明基材上に直接または上述したアンダーコート層を
介して形成された前述の透明導電膜上に透明電気絶縁層
が設けられており、この透明電気絶縁層は酸可溶−耐ア
ルカリ性無機化合物からなる。ここで、「酸可溶−耐ア
ルカリ性」とは、前述した透明導電膜をエッチングする
ためのエッチング溶液として用いられる酸性溶液に対し
ては可溶であり、エッチング時に使用したマスク(レジ
スト膜)を剥離するためのアルカリ性溶液に対しては実
質的に不溶であることを意味する。
【0020】酸可溶−耐アルカリ性無機化合物からなる
上述の透明電気絶縁層は、所望の透明性および電気絶縁
性を有していることが必要であり、特に電気絶縁性につ
いては表面抵抗が1×106 Ω/□以上であることが望
まれる。セルギャップを小さくした液晶表示素子を構成
する2つの透明電極(表面に透明電気絶縁層を有するも
の)の材料として利用する場合、透明電気絶縁層の表面
抵抗が1×106 Ω/□未満では、前記2つの透明電極
が直接または配向膜を介して互いに局所的に接触したと
きにこれらの電極間に電流が流れて表示不良を起こすお
それがある。
【0021】このような透明電気絶縁層を得るのに好適
な酸可溶−耐アルカリ性無機化合物としては、酸化ラン
タン、酸化ケイ素および酸化亜鉛からなる群より選択さ
れた少なくとも1種を主成分とする非晶質酸化物、具体
的には酸化ランタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ケイ
素−酸化亜鉛化合物、酸化ケイ素−酸化ランタン化合
物、酸化亜鉛−酸化ランタン化合物等であって、前述し
た相対酸素含有比が0.9〜0.99の範囲内の非晶質
酸化物が挙げられる。相対酸素含有比が0.99を超え
るものは酸可溶−耐アルカリ性を示さないことがある。
一方、相対酸素含有比が0.9未満のものは表面抵抗が
1×106 Ω/□未満であったり、光透過性が低すぎた
り(特に酸化ランタンの場合)する。
【0022】ここで例示した酸可溶−耐アルカリ性無機
化合物により透明電気絶縁層を形成する場合、その膜厚
は30〜2000オングストロームとすることが好まし
い。30オングストローム未満では十分な電気絶縁効果
を得ることが困難である。一方、2000オングストロ
ームを超えると製造コストの増加をもたらす。また同時
に、得られた積層型透明導電基材から例えば液晶表示素
子用の透明電極を作製したときに、液晶表示素子に作用
する電界強度が低下し過ぎる。
【0023】本発明の積層型透明導電基材は、以上説明
した透明基材、アンダーコート層(任意)、透明導電
膜、および酸可溶−耐アルカリ性無機化合物からなる透
明電気絶縁層を少なくとも備えていればよい。透明基材
上にアンダーコート層(任意)、透明導電膜、および酸
可溶−耐アルカリ性無機化合物からなる透明電気絶縁層
を設けた状態での厚さは、用途等に応じて適宜選択され
るが、アンダーコート層を形成するか否かに拘らず概ね
15〜300μmの範囲内である。また、この状態での
光線透過率は、用途等にもよるが、アンダーコート層を
形成するか否かに拘らず、全可視光あるいは波長550
nmの光に対して概ね75%以上であることが好まし
い。光線透過率は、各層(膜)の厚さや各層(膜)の材
料物質を適宜選択することにより調整することができ
る。
【0024】また、本発明の積層型透明導電基材は、透
明導電膜を形成する側とは反対側の透明基材面上に、耐
環境性を向上させるためのガスバリヤー層、透明基材に
耐擦過傷性等を付与するためのハードコート層、表面反
射を防止するための反射防止膜等を有していてもよい。
このような層ないし膜を形成するか否かは、目的とする
積層型透明導電基材の用途等に応じて適宜選択される。
【0025】ガスバリヤー層を形成する場合、その具体
例としては塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリ
ロニトリル等の高分子および他のモノマーとの共重合体
等からなる厚さ0.1〜10μmの層が挙げられる。ま
た、ハードコート層を形成する場合、その具体例として
はチタン系やシリカ系のハードコート剤、ポリメチルメ
タクリレート等の高分子、ポリフォスファゼン等の無機
高分子等からなる厚さ0.1〜10μmの層が挙げられ
る。そして、反射防止膜を形成する場合、その具体例と
しては低屈折率ポリマーや、MgF2 、CaF2 等のフ
ッ化物、SiO2 、Bi2 3 、Al2 3 等からなる
厚さ100〜1000オングストロームの膜が挙げられ
る。
【0026】本発明の積層型透明導電基材は、基本的に
は種々の方法により製造することが可能である。しかし
ながら、透明基材として透明高分子フィルムや透明高分
子シートを用いる場合には、当該透明基材の耐熱性が比
較的低いことから、製造過程での熱変形等を防止するた
めに透明基材の温度をできるだけ低温に保っておくこと
が好ましく、かつこの基材温度下で所望組成の透明導電
膜および透明電気絶縁層を形成する必要がある。また、
製造過程での透明導電膜の電気抵抗値の変化を防止する
必要がある。このような観点から、本発明の積層型透明
導電基材は以下に詳述する方法により製造することが好
ましい。
【0027】この方法は、前述したように、透明基材の
一主表面上に直接またはアンダーコート層を介して物理
気相堆積法または化学気相堆積法により透明導電膜を形
成する工程と、この透明導電膜上に酸可溶−耐アルカリ
性無機化合物からなる透明電気絶縁層を物理気相堆積法
または化学気相堆積法により形成する工程とを少なくと
も含み、かつ、前記透明電気絶縁層を形成する工程での
雰囲気の酸素分圧が、前記透明電気絶縁層の相対酸素含
有比が0.9〜0.99の範囲内になるように制御され
ていることを特徴とするものである。ここで、前記物理
気相堆積法(PVD法)の具体例としては、スパッタリ
ング法、EB蒸着(電子ビーム加熱蒸着)法、イオンプ
レーティング法、真空蒸着法等が挙げられる。また、前
記化学気相堆積法(CVD法)の具体例としては、プラ
ズマCVD等が挙げられる。
【0028】透明導電膜の成膜条件は、成膜方法、目的
とする透明導電膜の組成、使用原料の種類等に応じて適
宜設定されるが、少なくとも成膜時の雰囲気の酸素分圧
については、得られる透明導電膜の相対酸素含有比が
0.6以上0.99未満になるように制御することが好
ましい。透明導電膜の相対酸素含有比がこの範囲外にな
ると、組成にもよるが、導電性や光透過率が低下し易
い。
【0029】また、透明電気絶縁層の成膜条件も、成膜
方法、目的とする透明電気絶縁層の組成、使用原料の種
類等に応じて適宜設定されるが、少なくとも成膜時の雰
囲気の酸素分圧については、得られる透明電気絶縁層の
相対酸素含有比が0.9〜0.99の範囲内になるよう
に制御する。これは、透明電気絶縁層の相対酸素含有比
が相対酸素含有比が0.99を超えると酸可溶−耐アル
カリ性を示さないことがあり、0.9未満では表面抵抗
が1×106 Ω/□未満となったり、光透過性が低下し
すぎたりする(特に酸化ランタンの場合)からである。
【0030】透明導電膜を形成する工程で利用する成膜
方法と透明電気絶縁層を形成する工程で利用する成膜方
法とは、同じであって異なっていてもよいが、実用上は
同じ成膜方法により透明導電膜と透明電気絶縁層とを形
成したほうが有利である。透明導電膜や透明電気絶縁層
の組成を正確かつ容易に制御するうえからは、特にスパ
ッタリング法が好ましい。
【0031】スパッタリング法により透明導電膜や透明
電気絶縁層を形成する場合、スパッタリングターゲット
は目的とする透明導電膜または透明電気絶縁層の組成に
応じた酸化物または金属が好ましく、一元スパッタでも
多元スパッタでもよい。また、スパッタリング雰囲気に
おける酸素分圧は、目的とする透明導電膜や透明電気絶
縁層の相対酸素含有比が所望の値となるように、スパッ
タリングターゲットの組成に応じて適宜設定される。
【0032】スパッタ条件は使用する装置の特性に大き
く依存することがあるために一概に規定することは困難
であるが、一般に使用されているDCマグネトロンスパ
ッタ装置でのスパッタ条件の一例を挙げるとすれば以下
のようになる。すなわち、スパッタリング雰囲気はアル
ゴンガス等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス、スパ
ッタ時の雰囲気圧(全圧)は1.3×10-2〜6.7×
100Pa程度、ターゲット印加電圧は50〜500V
であり、基板温度は透明基材が熱変形しない温度であ
り、必要に応じて冷却される。この場合、スパッタ時の
雰囲気圧(全圧)すなわち真空度が1.3×10-2Pa
未満ではプラズマの安定性が悪く、6.7×100 Pa
を超えるとターゲットへの印加電圧を高くすることが困
難になる。また、ターゲット印加電圧が500Vを超え
ると良質の膜ができないことがあり、50V未満では成
膜速度が制限される場合がある。
【0033】上記の方法では、上述のようにして透明導
電膜および透明電気絶縁層を形成することにより、前述
した本発明の積層型透明導電基材を得るわけであるが、
本発明の積層型透明導電基材では、前述したように、必
要に応じて透明基材上にアンダーコート層が形成され
る。また、透明導電膜を形成する側とは反対側の透明基
材面上には、必要に応じてガスバリヤー層、ハードコー
ト層、反射防止膜等が形成される。これらの任意構成部
材の形成は、特に限定されるものではないが、以下のよ
うにして行うことが好ましい。なお、透明基材として透
明高分子フィルムや透明高分子シートを用いる場合に
は、透明基材の温度をできるだけ低温に保った状態で形
成することが好ましい。
【0034】アンダーコート層の材料として先に例示し
た有機化合物、各種シランカップリング剤または各種チ
タンカップリング剤を用いる場合には、塗布法、スプレ
ーコート法、スピンコート法等によりアンダーコート層
を形成することが好ましい。また、アンダーコート層の
材料として先に例示した無機化合物を用いる場合には、
上述した物理気相堆積法(CVD法)や化学気相堆積法
(CVD法)により形成することが好ましく、なかでも
スパッタリング法(一元または多元)により形成するこ
とが好ましい。また、ガスバリヤー層、ハードコート層
および反射防止膜についても、上述したアンダーコート
層の形成方法と同様の方法により形成することが好まし
い。
【0035】上で例示した方法等により得ることができ
る本発明の積層型透明導電基材は、前述したように透明
導電膜上に酸可溶−耐アルカリ性無機化合物からなる透
明電気絶縁層が形成されたものであり、この透明導電膜
と透明電気絶縁層とは1回のエッチング工程で所望形状
に容易に成形することができる。また、エッチング時に
使用したマスク(レジスト膜)をアルカリ性溶液を用い
て剥離した場合でも、透明導電膜は前述の透明電気絶縁
層により保護されているため、アルカリ性溶液との接触
に起因する透明導電膜の電気的特性の低下は抑制され
る。このような理由から、本発明の積層型透明導電基材
はエッチング法を利用して透明電極(表面に電気絶縁層
を有するもの)を作製するのに好適な基材である。
【0036】また、透明電気絶縁層は物理気相堆積法や
化学気相堆積法により形成することができる。したがっ
て、これらの方法で透明電気絶縁層を形成することによ
り、高分子薄膜を塗布法により透明導電膜上に形成する
従来の積層型透明導電基材よりも製造過程での透明導電
膜の電気抵抗値の変化を容易に防止することができる。
同時に、前記従来の積層型透明導電基材よりも表面精度
の高いものを容易に得ることができる。さらに、本発明
の積層型透明導電基材において透明導電膜上に形成され
ている透明電気絶縁層は、高い電気絶縁性を有してい
る。
【0037】これらの点から、本発明の積層型透明導電
基材は液晶表示素子用、特に液晶セルのセルギャップを
小さくしたタイプの液晶表示素子用の透明電極(表面に
電気絶縁層を有するもの)をエッチング法により作製す
るための材料として好適である。そして、本発明の積層
型透明導電基材から作製した透明電極(表面に電気絶縁
層を有するもの)を、液晶セルのセルギャップを小さく
したタイプの液晶表示素子の透明電極(表面に電気絶縁
層を有するもの)として用いた場合には、素子を構成す
る2つの電極が局所的に接触しても当該接触箇所での導
通が抑制されるため、応答性が高く、かつ電極間での無
用の導通に起因する表示品質の低下が少ない液晶表示装
置を容易に提供することが可能になる。また本発明の積
層型透明導電基材は、二重絶縁構造の無機EL表示素子
用の電気絶縁層および透明電極を1回のエッチング工程
で作製するための材料等としても好適である。
【0038】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1 透明基材としてポリカーボネートフィルム(厚さ125
μm)を用い、まず、このポリカーボネートフィルム上
にエポキシ系樹脂からなる厚さ5μmのアンダーコート
層を形成した。また、アンダーコート層を形成した面と
反対側のポリカーボネートフィルム面上に接着剤を用い
てポリ塩化ビニリデンを積層した後、このポリ塩化ビニ
リデン上にエポキシアクリレート樹脂プレポリマーを塗
布し、塗布後に前記プレポリマーを熱硬化させることに
よりガスバリヤー層を形成した。次に、アンダーコート
層を設けた上述のポリカーボネートフィルムをDCマグ
ネトロンスパッタ装置に装着し、真空槽内の初期真空度
を5×10-4Paとした後、酸化インジウムと酸化亜鉛
とからなる酸化物焼結体ターゲット(Inの原子比In
/(In+Zn)=0.67,焼結体密度90%)を用
いてスパッタリングを行って、前記のアンダーコート層
上に透明導電膜を形成した(以下、この透明導電膜まで
形成したものをサンプルという)。このときのスパッタ
リング雰囲気は純度99.99%のアルゴンガスと酸素
ガスとの混合雰囲気とし、スパッタリング雰囲気の全圧
は3×10-1Pa、前記全圧に占める酸素分圧の割合は
0.3%とした。また、スパッタ条件はDC出力100
W、スパッタ時間40分、基板温度室温とした。
【0039】このようして形成した透明導電膜の相対酸
素含有比は0.74であり、その膜厚をスローン社製の
DEKTAK3030を用いた触針法により測定したと
ころ、2710オングストロームであった。また、この
透明導電膜は、X線回折測定(使用機種はリガク社製の
ロータフレックスRU−200B)の結果、非晶質であ
ることが確認された。さらに、この透明導電膜における
Inの原子比In/(In+Zn)は、ICP(誘導結
合プラズマ発光分光分析;使用機種はセイコー電子工業
社製のSPS−1500VR)の結果、0.70であっ
た。また、上記のサンプルの表面抵抗(透明導電膜の表
面抵抗)は13Ω/□であり、光線透過率は波長550
nmの光に対しては82.9%、波長400nmの光に
対しては77.9%であった。
【0040】次に、このサンプルをDCマグネトロンス
パッタ装置に装着し、スパッタリングターゲットとして
SiO2 を用いるとともに酸素分圧の割合を3%に、ス
パッタ時間を5分にそれぞれ変更した以外は透明導電膜
形成時と同様にしてスパッタリングを行って、SiO2
からなる厚さ250オングストロームの透明電気絶縁層
を透明導電膜上に形成した。この透明電気絶縁層の相対
酸素含有比は0.97であった。また、この透明電気絶
縁層の結晶性をX線回折により調べたところ、非晶質で
あることが確認された。さらに、この透明電気絶縁層の
硬度を測定したところ、その鉛筆硬度は3Hであった。
ポリカーボネートフィルム上に上述のようにして透明電
気絶縁層まで形成したことにより、目的とする積層型透
明導電フィルムが得られた。
【0041】このようにして得られた積層型透明導電フ
ィルムは、表面抵抗(透明電気絶縁層の表面抵抗)が1
×106 Ω/□以上と高いものであった。また、光線透
過率は波長550nmの光に対しては82.6%、波長
400nmの光に対しては77.4%であり、良好な透
明性を有していた。さらに、この積層型透明導電フィル
ムに変形は認められず、良好な外観を呈していた。
【0042】この積層型透明導電フィルムについて、酸
性溶液によるエッチング速度、透明電気絶縁層の形成に
伴う透明導電膜の導電性の変化、透明電気絶縁層の電気
絶縁性、透明電気絶縁層の耐アルカリ性、および可撓性
を以下のようにして測定ないし評価した。
【0043】a.酸性溶液によるエッチング速度 酸性溶液として塩酸と硝酸と水の混合溶液(塩酸:硝
酸:水=1:0.08:1(体積比))を用い、この酸
性溶液により透明電気絶縁層および透明導電膜をエッチ
ングして、そのエッチング速度を測定した。
【0044】b.透明電気絶縁層の形成に伴う透明導電
膜の導電性の変化 積層型透明導電フィルムの両端の透明電気絶縁層を上記
aで用いた酸性溶液と同じ酸性溶液でエッチングして透
明導電膜を露出させた後、これらの両端間の電気抵抗値
を測定した。そして、この測定値と透明電気絶縁層形成
前の透明導電膜の電気抵抗値とを比較することにより、
透明電気絶縁層の形成に伴う透明導電膜の導電性の変化
の有無を調べた。
【0045】c.透明電気絶縁層の電気絶縁性 上述の積層型透明導電フィルムを2枚用意し、これら2
枚の積層型透明導電フィルムの透明電気絶縁層側の面の
中央部を互いに接触させた状態での導通の有無を調べ、
この結果から透明電気絶縁層の電気絶縁性を評価した。
なお、このときの接触は10g/cm2 の荷重下に行
い、測定電圧は20Vとした。
【0046】d.透明電気絶縁層の耐アルカリ性 2枚の積層型透明導電フィルムを5wt%水酸化ナトリウ
ム水溶液中に5分間浸漬した後、上記cと同様にして2
枚の積層型透明導電フィルム間での導通の有無を調べ、
この結果から透明電気絶縁層の耐アルカリ性を評価し
た。
【0047】e.可撓性 積層型透明導電フィルムを直径40mmの円柱に100
回巻き付けた後の透明導電膜の電気抵抗値を上記bと同
様にして測定し、この測定値と巻き付ける前の測定値と
を比較することにより、積層型透明導電フィルムの可撓
性を評価した。これらa〜eの結果を表1に示す。
【0048】実施例2 実施例1と同様にしてポリカーボネートフィルム上にア
ンダーコート層およびガスバリヤー層を形成した後、ス
パッタリングターゲットとしてIn2 3 −ZnO系焼
結体(Inの原子比In/(In+Zn)=0.85,
焼結体密度90%)を用いた以外は実施例1と同条件の
スパッタリングを行って、前記のアンダーコート層上に
透明導電膜を形成した(以下、この透明導電膜まで形成
したものをサンプルという)。このようして形成した透
明導電膜の相対酸素含有比は0.75であり、その膜厚
を実施例1と同様にして測定したところ2720オング
ストロームであった。また、この透明導電膜は、X線回
折測定(実施例1と同機種使用)の結果、非晶質である
ことが確認された。さらに、この透明導電膜におけるI
nの原子比In/(In+Zn)を実施例1と同様にI
CP分析により測定したところ、0.88であった。ま
た、上記のサンプルの表面抵抗(透明導電膜の表面抵
抗)は12Ω/□であり、光線透過率は波長550nm
の光に対しては83.0%、波長400nmの光に対し
ては78.1%であった。
【0049】次に、このサンプルをDCマグネトロンス
パッタ装置に装着し、実施例1と同条件のスパッタリン
グを行って、SiO2 からなる厚さ250オングストロ
ームの透明電気絶縁層を透明導電膜上に形成した。この
透明電気絶縁層の相対酸素含有比は0.95であった。
また、この透明電気絶縁層の結晶性をX線回折により調
べたところ、非晶質であることが確認された。さらに、
この透明電気絶縁層の硬度を測定したところ、その鉛筆
硬度は3Hであった。ポリカーボネートフィルム上に上
述のようにして透明電気絶縁層まで形成したことによ
り、目的とする積層型透明導電フィルムが得られた。
【0050】このようにして得られた積層型透明導電フ
ィルムは、表面抵抗(透明電気絶縁層の表面抵抗)が1
×106 Ω/□以上と高いものであった。また、光線透
過率は波長550nmの光に対しては82.7%、波長
400nmの光に対しては77.7%であり、良好な透
明性を有していた。この積層型透明導電フィルムについ
て、酸性溶液によるエッチング速度、透明電気絶縁層の
形成に伴う透明導電膜の導電性の変化、透明電気絶縁層
の電気絶縁性、透明電気絶縁層の耐アルカリ性、および
可撓性を実施例1と同様にして測定ないし評価した。こ
れらの結果を表1に示す。
【0051】実施例3 透明基板としてガラス基板(コーニング社製の#705
9)を用い、このガラス基板上に実施例2と同様にして
透明導電膜を形成した(以下、この透明導電膜まで形成
したものをサンプルという)。このようして形成した透
明導電膜の相対酸素含有比は0.75であり、その膜厚
を実施例1と同様にして測定したところ2720オング
ストロームであった。また、この透明導電膜は、X線回
折測定(実施例1と同機種使用)の結果、非晶質である
ことが確認された。さらに、この透明導電膜におけるI
nの原子比In/(In+Zn)を実施例1と同様にI
CP分析により測定したところ、0.88であった。ま
た、上記のサンプルの表面抵抗(透明導電膜の表面抵
抗)は12Ω/□であり、光線透過率は波長550nm
の光に対しては83.2%、波長400nmの光に対し
ては78.2%であった。
【0052】次に、このサンプルをDCマグネトロンス
パッタ装置に装着し、実施例1と同条件のスパッタリン
グを行って、SiO2 からなる厚さ250オングストロ
ームの透明電気絶縁層を透明導電膜上に形成した。この
透明電気絶縁層の相対酸素含有比は0.95であった。
また、この透明電気絶縁層の結晶性をX線回折により調
べたところ、非晶質であることが確認された。さらに、
この透明電気絶縁層の硬度を測定したところ、その鉛筆
硬度は3Hであった。ガラス基板上に上述のようにして
透明電気絶縁層まで形成したことにより、目的とする積
層型透明導電ガラスが得られた。
【0053】このようにして得られた積層型透明導電ガ
ラスは、表面抵抗(透明電気絶縁層の表面抵抗)が1×
106 Ω/□以上と高いものであった。また、光線透過
率は波長550nmの光に対しては82.8%、波長4
00nmの光に対しては77.8%であり、良好な透明
性を有していた。この積層型透明導電ガラスについて、
酸性溶液によるエッチング速度、透明電気絶縁層の形成
に伴う透明導電膜の導電性の変化、透明電気絶縁層の電
気絶縁性、および透明電気絶縁層の耐アルカリ性を実施
例1と同様にして測定ないし評価した。これらの結果を
表1に示す。
【0054】実施例4 実施例2と同様にして、ポリカーボネートフィルム上に
アンダーコート層、ガスバリヤー層および透明導電膜を
形成した(以下、この透明導電膜まで形成したものをサ
ンプルという)。このようして形成した透明導電膜の相
対酸素含有比は0.75であり、その膜厚を実施例1と
同様にして測定したところ2720オングストロームで
あった。また、この透明導電膜は、X線回折測定(実施
例1と同機種使用)の結果、非晶質であることが確認さ
れた。さらに、この透明導電膜におけるInの原子比I
n/(In+Zn)を実施例1と同様にICP分析によ
り測定したところ、0.88であった。また、上記のサ
ンプルの表面抵抗(透明導電膜の表面抵抗)は12Ω/
□であり、光線透過率は波長550nmの光に対しては
83.0%、波長400nmの光に対しては78.1%
であった。
【0055】次に、このサンプルをDCマグネトロンス
パッタ装置に装着し、スパッタリングターゲットとして
ZnO焼結体(焼結体密度80%)を用いた以外は実施
例2と同条件のスパッタリングを行って、ZnOからな
る厚さ250オングストロームの透明電気絶縁層を透明
導電膜上に形成した。この透明電気絶縁層の相対酸素含
有比は0.96であった。また、この透明電気絶縁層の
結晶性をX線回折により調べたところ、非晶質であっ
た。さらに、この透明電気絶縁層の硬度を測定したとこ
ろ、その鉛筆硬度は3Hであった。ポリカーボネートフ
ィルム上に上述のようにして透明電気絶縁層まで形成し
たことにより、目的とする積層型透明導電フィルムが得
られた。
【0056】このようにして得られた積層型透明導電フ
ィルムは、表面抵抗(透明電気絶縁層の表面抵抗)が1
×106 Ω/□以上と高いものであった。また、光線透
過率は波長550nmの光に対しては82.8%、波長
400nmの光に対しては77.8%であり、良好な透
明性を有していた。この積層型透明導電フィルムについ
て、酸性溶液によるエッチング速度、透明電気絶縁層の
形成に伴う透明導電膜の導電性の変化、透明電気絶縁層
の電気絶縁性、透明電気絶縁層の耐アルカリ性、および
可撓性を実施例1と同様にして測定ないし評価した。こ
れらの結果を表1に示す。
【0057】実施例5 実施例2と同様にして、ポリカーボネートフィルム上に
アンダーコート層、ガスバリヤー層および透明導電膜を
形成した(以下、この透明導電膜まで形成したものをサ
ンプルという)。このようして形成した透明導電膜の相
対酸素含有比は0.75であり、その膜厚を実施例1と
同様にして測定したところ2720オングストロームで
あった。また、この透明導電膜は、X線回折測定(実施
例1と同機種使用)の結果、非晶質であることが確認さ
れた。さらに、この透明導電膜におけるInの原子比I
n/(In+Zn)を実施例1と同様にICP分析によ
り測定したところ、0.88であった。また、上記のサ
ンプルの表面抵抗(透明導電膜の表面抵抗)は12Ω/
□であり、光線透過率は波長550nmの光に対しては
83.0%、波長400nmの光に対しては78.1%
であった。
【0058】次に、このサンプルをDCマグネトロンス
パッタ装置に装着し、スパッタリングターゲットとして
酸化ランタン焼結体(焼結体密度80%)を用いた以外
は実施例2と同条件のスパッタリングを行って、酸化ラ
ンタンからなる厚さ250オングストロームの透明電気
絶縁層を透明導電膜上に形成した。この透明電気絶縁層
の相対酸素含有比は0.95であった。また、この透明
電気絶縁層の結晶性をX線回折により調べたところ、非
晶質であることが確認された。さらに、この透明電気絶
縁層の硬度を測定したところ、その鉛筆硬度は3Hであ
った。ポリカーボネートフィルム上に上述のようにして
透明電気絶縁層まで形成したことにより、目的とする積
層型透明導電フィルムが得られた。
【0059】このようにして得られた積層型透明導電フ
ィルムは、表面抵抗(透明電気絶縁層の表面抵抗)が1
×106 Ω/□以上と高いものであった。また、光線透
過率は波長550nmの光に対しては82.8%、波長
400nmの光に対しては77.8%であり、良好な透
明性を有していた。この積層型透明導電フィルムについ
て、酸性溶液によるエッチング速度、透明電気絶縁層の
形成に伴う透明導電膜の導電性の変化、透明電気絶縁層
の電気絶縁性、透明電気絶縁層の耐アルカリ性、および
可撓性を実施例1と同様にして測定ないし評価した。こ
れらの結果を表1に示す。
【0060】比較例1 実施例1と同条件のスパッタリング法でガラス基板上に
透明導電膜を形成した後、基板温度を200℃にして、
TiO2 をスパッタリングターゲットとして用いたRF
マグネトロンスパッタにより透明導電膜上に透明電気絶
縁層を形成した。この透明電気絶縁層の結晶性をX線回
折により調べたところ、TiO2 に基づくピークが認め
られた。このようにして得られた積層型透明導電フィル
ムについて、酸性溶液によるエッチング速度を実施例1
と同様にして測定した。この結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】表1から明らかなように、実施例1〜実施
例5の各積層型透明導電基材(積層型透明導電フィルム
または積層型透明導電ガラス)では、透明電気絶縁層と
透明導電膜とを酸性溶液により容易にエッチングするこ
とができ、かつ、透明電気絶縁層は耐アルカリ性に優れ
ている。したがって、これらの積層型透明導電基材はエ
ッチング法を利用して透明電極(表面に透明電気絶縁層
を有するもの)を作製するための材料として好適であ
る。また、実施例1〜実施例5の各積層型透明導電基材
では透明電気絶縁層の鉛筆硬度が3Hと高いことから、
これらの積層型透明導電基材をエッチングして透明電極
(表面に透明電気絶縁層を有するもの)を得た場合に
は、耐磨耗性や耐擦過傷性に優れた透明電極(表面に透
明電気絶縁層を有するもの)が得られる。
【0063】また、表1から明らかなように、実施例1
〜実施例5の各積層型透明導電基材では透明電気絶縁層
の形成に伴う透明導電膜の導電性の変化が実質的に起き
ていない。さらに、各積層型透明導電基材の透明電気絶
縁層は1×106 Ω/□以上という高い表面抵抗を有し
ており、その電気絶縁性は高い。これら実施例1,2,
4,5の各積層型透明導電基材は可撓性にも優れてい
る。一方、比較例1の積層型透明導電基材(積層型透明
導電フィルム)は、酸性溶液によりエッチングすること
が困難である。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の積層型透
明導電基材では透明電気絶縁層と透明導電膜とを同時
に、かつ容易にエッチングすることができる。また、こ
の積層型透明導電基材は製造過程での透明導電膜の電気
抵抗値の変化を防止することが容易であり、表面精度の
比較的高いものを得易く、かつ表面の電気絶縁性が高
い。したがって本発明によれば、液晶表示素子やEL表
示素子等に利用可能な、表面に透明電気絶縁層を有する
所望電気特性の透明電極を、エッチング法により容易に
作製することが可能になる。
【0065】そして、本発明の積層型透明導電基材から
作製した透明電極(表面に透明電気絶縁層を有するも
の)を、液晶セルのセルギャップを小さくしたタイプの
液晶表示素子の透明電極(表面に透明電気絶縁層を有す
るもの)として利用した場合には、素子を構成する2つ
の電極が局所的に接触しても当該接触箇所での導通が抑
制されるため、応答性が高く、かつ電極間での無用の導
通に起因する表示品質の低下が少ない液晶表示装置を容
易に提供することが可能になる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−274218(JP,A) 特開 平5−43273(JP,A) 特開 平6−290641(JP,A) 特開 平6−234521(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1343 C23C 14/08 H01B 5/14

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基材と、この透明基材の一主表面上
    に直接またはアンダーコート層を介して形成された透明
    導電膜と、この透明導電膜上に形成された透明電気絶縁
    層とを少なくとも備え、前記透明導電膜が、主要カチオン元素としてインジウム
    (In)および亜鉛(Zn)を、Inの原子比In/
    (In+Zn)が0.55〜0.90の範囲内で含有す
    る非晶質酸化物からなり、 かつ、 前記透明電気絶縁層が酸可溶−耐アルカリ性無機化合物
    からなることを特徴とする積層型透明導電基材。
  2. 【請求項2】 酸可溶−耐アルカリ性無機化合物が、酸
    化ランタン、酸化ケイ素および酸化亜鉛からなる群より
    選択された少なくとも1種を主成分とする非晶質酸化物
    であり、かつ、この酸化物における相対酸素含有比が
    0.9〜0.99の範囲内である、請求項1に記載の積
    層型透明導電基材。
  3. 【請求項3】 透明導電膜が、主要カチオン元素として
    インジウム(In)および亜鉛(Zn)を含有する非晶
    質酸化物からなる透明導電膜であって、Inの原子比I
    n/(In+Zn)が0.82〜0.90の範囲内であ
    る、請求項1または請求項2に記載の積層型透明導電基
    材。
  4. 【請求項4】 透明基材がフィルム状またはシート状の
    透明高分子からなる、請求項1〜請求項のいずれか一
    項に記載の積層型透明導電基材。
  5. 【請求項5】 透明基材がガラスからなる、請求項1〜
    請求項3のいずれか一項に記載の積層型透明導電基材。
  6. 【請求項6】 透明導電膜としての非晶質酸化物膜
    パッタリング法により成膜されたものであり、この透明
    導電膜上透明電気絶縁層としての非晶質酸化ケイ素膜
    スパッタリング法により成膜されたものである、請求
    項1〜請求項5のいずれか一項に記載の積層型透明導電
  7. 【請求項7】 透明導電膜としての非晶質酸化物膜
    パッタリング法により成膜されたものであり、この透明
    導電膜上透明電気絶縁層としての非晶質酸化ランタン
    スパッタリング法により成膜されたものである、請
    求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の積層型透明導
    電基
  8. 【請求項8】 透明導電膜としての非晶質酸化物膜
    パッタリング法により成膜されたものであり、この透明
    導電膜上透明電気絶縁層としての非晶質酸化亜鉛膜
    スパッタリング法により成膜されたものである、請求項
    1〜請求項5のいずれか一項に記載の積層型透明導電基
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