JP3367335B2 - フレア式管継手 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、フレア式管継手に
かかり、特に自動車のエアーやオイルの配管に用いるの
に好適なフレア管継手に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車にはブレーキチューブや燃料パイ
プ等の配管があるが、組み立て作業または配管の取り回
しを容易にする目的で、管継手に朝顔状のフレア部をも
つ管と円錐状フランジ面をもつ一対の管からなるフレア
式管継手を用いる。

【０００３】このフレア式管継手はフレア部と円錐状フ
ランジ面とが当接して、管同士を密封させる機構であ
る。この当接する部分の密封作用の信頼性をあげる技術
については、実開平６−６３９８３、実開平２−１２２
２８８、特開平６−３４０８４などで開示されている。

【０００４】実開平６−６３９８３は円錐状フランジ面
の一部に拡径部を設けて当該フランジ面に機械的な弾性
機構を付与する技術を開示している。実開平２−１２２
２８８では円錐状フランジの管内孔に埋め込むパッキン
を開示している。特開平６−３４０８４では、円錐状フ
ランジ面に溝を設けて、この溝にＯリングを設置する技
術を開示している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記開示技術の記載の
とおり、円錐状フランジ面に弾性部分を設けてフレア部
に当接すれば、密封の信頼性は向上する。しかし、実開
平２−１２２２８８と特開平６−３４０８４ではパッキ
ンまたはＯリングのシール部材を付属させるので部品点
数が増えるという欠点を有する。

【０００６】実開平６−６３９８３では円錐状フランジ
面とフレア部とが直接に当接するので、この両面の加工
面精度を高くしなければならない。また特開平６−３４
０８４ではＯリング用の溝を設けるので、切削加工の工
程がさらに必要となる。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、アクリル樹脂
とポリ塩基性樹脂からなる硬化剤およびフッ素樹脂パウ
ダーとを含むシール材組成物を、フレア部に当接する円
錐状フランジ面に塗布し、ついで加熱処理して前記シー
ル材組成物を架橋反応させて形成した弾性シール層を当
該円錐状フランジ面に設けたことを特徴とするフレア式
管継手に関する。ここで、前記シール材組成物の構成成
分のうちフッ素樹脂パウダーが、焼成工程による結晶化
処理を受けていない未焼成フッ素樹脂パウダーであるこ
とが好ましい。

【０００８】本発明の密封効果の信頼性の高いフレア式
継手は、円錐状フランジ面に特定のシール材組成物を塗
布したのち所定の温度で加熱処理するだけで得られる。
ここで、本発明に好適なシール材組成物とは、熱硬化性
樹脂、その硬化剤およびフッ素樹脂パウダーを構成成分
とする組成物である。

【０００９】本発明のシール材組成中のフッ素樹脂パウ
ダーは、弾性シール層の表面の摩擦係数を下げる働きを
する。例えば、自動車の運転によって配管の継手部分が
異常な高温になっても、円錐状フランジ面の弾性シール
層はフレア部に融着することはない。また定期点検の分
解において、弾性シール層はフレア部と融着していない
ので弾性シール層の表面を損傷することなく管継手の取
外しできる。つまり、円錐状フランジ面の弾性シール層
は損傷していないので、密封効果の信頼性低下が起きて
いないので、繰り返しの再使用が可能となる。

【００１０】前記フッ素樹脂パウダーとしては、ポリテ
トラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンーヘキ
サフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレ
ン−エチレン共重合体、ポリクロロトソフルオロエチレ
ンなどのフッ素樹脂が挙げられる。

【００１１】本発明の好適なフッ素樹脂パウダーとし
て、焼成工程によってポリマー分子の結晶化をしていな
い未焼性フッ素樹脂パウダーがよい。この未焼性フッ素
樹脂パウダーは、結晶化した焼性フッ素樹脂パウダーに
比べて柔らかいので、弾性シール層に圧縮復元率の弾性
を付与することができる。このため、長時間の強い締め
付けによるフレア継手の締結した場合でも、この優れた
圧縮復元率により、繰り返しの再使用ができる。

【００１２】ここで、フッ素樹脂パウダーとは必ずしも
微粒子である必要はなく、短繊維状でもよく、例えば５
００ミクロン以下の短繊維でもよい。

【００１３】本発明のシール材組成物のもう一つの必要
成分である熱硬化性樹脂とその硬化剤とは、アクリル樹
脂とその硬化剤またはエポキシ樹脂とその硬化剤との組
合せをいう。アクリル樹脂の場合の硬化剤では、アクリ
ル樹脂と脱水縮合で架橋反応する多塩基酸化合物があ
り、水素引き抜き反応もしくはラジカル付加反応で架橋
する過酸化物、アゾ化合物、ポリチオール化合物などの
ラジカル種生成化合物がある。またエポキシ樹脂の硬化
剤では、アミン化合物、イミダゾール化合物、アミド化
合物などの活性水素基を有する化合物もしくはこれらの
塩化合物などを挙げることができる。

【００１４】例として、ポリメタアクリル酸メチルなど
のアクリル酸アルキルエステルもしくはアクリル酸エス
テル共重合体などの樹脂に、フタール酸やマレイン酸な
どのジカルボン酸との縮合反応物である多塩基酸化合物
とを組合せする。

【００１５】なお、特開昭５５−１３７１６にフッ素樹
脂パウダーを含むシール剤組成物を開示している。しか
し、この技術のシール剤組成物で円錐状フランジ面にシ
ール層を形成した場合、当該シール層は熱可塑性なの
で、高温になると当該シール層はフレア部に融着してし
まい、フレア式管継手の取り外しが困難となる。

【００１６】本発明では、シール材組成物の一成分であ
る熱硬化性樹脂は加熱処理の焼付け工程でポリマー分子
同士が架橋し再溶融しない熱硬化性プラスックに変成す
るので、フレア部への融着を防止する。つまり、前述の
フッ素樹脂パウダーとこの熱硬化性樹脂との相互作用に
より、フレア部と融着することなく、弾性シール層の表
面を損傷することなく容易に取外しできて、かつ繰り返
しの再使用可能なフレア式継手を提供できる。

【００１７】なお、本発明のシール剤組成物には、必要
に応じて、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル
樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂、
アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、グラファイト、カ
ーボンブラック、酸化チタン、ポリエチレンパウダー、
シリコーンゴムパウダーなどの充填剤や、防錆剤、カッ
プリング剤、粘着付与剤、レベリング剤などの添加する
ことができる。

【００１８】

【発明の実施の形態】本発明は、前記シール材組成物を
図１に示す円錐状フランジに塗布し加熱処理して焼付け
塗布する。この場合、シール層は円錐状フランジの面の
みに形成することが好ましい。

【００１９】シール層の形成は、シール剤組成物を円錐
状フランジに塗布し室温条件で風乾したのち加熱処理し
行う。この加熱温度は、シール材組成物の熱硬化性樹脂
およびその硬化剤の種類によって異なるが、概ね７０〜
１３０℃が好ましい。

【００２０】シール剤組成物の塗布は、転写方式または
ノズル吐出方式により行うことができる。またシール層
の厚さは２００ミクロン以上あることが好ましい。２０
０ミクロン以下では弾性が小さくなり密封の信頼性およ
び繰り返しの再使用が困難になる。

【００２１】

【実施例】

シール材の製造 アクリル樹脂（商品名：ＫＳ−７８６、三菱レーヨン
製）３０重量部をトルエン４０重量部溶解させたのち、
ポリ塩基酸樹脂（商品名：ＳＬ−２０、岡村製油製）５
重量部と未焼成のポリテトラフロオロエチレンのパウダ
ー１５重量部と焼成したポリテトラフルオロエチレンの
パウダー２０重量部を混合し、さらに体質顔料として酸
化チタン、界面活性剤と添加してペースト状のシール材
組成物を得た。

【００２２】円錐状フランジのテストピース製造 前述のシール材組成物をパイプ径１０ｍｍ用のフレア式
管継手の円錐状フランジ面に塗布し、室温で風乾して膜
厚２５０ミクロンの塗膜を得た。この円錐状フランジを
１１０℃で３０分間加熱して、シール材組成物のアクリ
ル樹脂とポリ塩基酸樹脂とを架橋させる。

【００２３】１．耐圧試験 前記の円錐状フランジのテストピースとフレア部の１０
組を径１０ｍｍのパイプにおのおのセットして、４５．
１Ｎ・ｍ｛４６０ｋｇｆ・ｃｍ｝のトルクで締め付け
た。ついで、接続部をエアー洩れチェック液に漬け込み
ながらパイプ内に９８１ｋＰａ｛１０ｋｇｆ・ｃｍ^２｝
のエアー圧にて１０分間保持して、１０組のフレア式管
継手試験パイプのエアーもれの有無を検査した。比較例
として、弾性シール層を設けないフランジ面でも同様に
試験し、その結果を表１に示す。

【００２４】２．耐油試験 耐圧試験と同じパイプ径で同じトルクで締め付けた１０
組のフレア式管継手試験パイプの中に潤滑油を封入し、
ついで、ついで、継手部をエアー洩れチェック液に漬け
込みながらパイプ内に９８１ｋＰａ｛１０ｋｇｆ・ｃｍ
^２｝のエアー圧にて１０分間保持して、１０組のフレア
式管継手試験パイプのエアー洩れの有無を検査した。比
較例として、弾性シール層を設けないフランジ面でも同
様に試験し、その結果を表１に示す。

【００２５】３．ヒートサイクル試験 耐圧試験と同じパイプ径で同じトルクで締め付けた１０
組のフレア式管継手試験パイプを、（−３０℃×４時
間）＋（１２０℃×４時間）を１サイクルと設定したヒ
ートサイクル試験機内に放置した。３０サイクルのヒー
トサイクルを繰り返したのち、継手部をエアー洩れチェ
ック液に漬け込みながらパイプ内に９８１ｋＰａ｛１０
ｋｇｆ・ｃｍ^２｝のエアー圧にて１０分間保持して、１
０組のフレア式管継手試験パイプのエアー洩れの有無を
検査した。比較例として、弾性シール層を設けないフラ
ンジ面でも同様に試験し、その結果を表１に示す。

【００２６】４．耐熱・繰り返し使用性確認試験 耐圧試験と同じパイプ径で同じトルクで締め付けた１０
組のフレア式管継手試験パイプを、１２０℃に設定した
オーブン内に２４時間放置した。常温まで放冷したの
ち、継手部をエアー洩れチェック液に漬け込みながらパ
イプ内に９８１ｋＰａ｛１０ｋｇｆ・ｃｍ^２｝のエアー
圧にて１０分間保持して、１０組のフレア式管継手試験
パイプのエアー洩れの有無を検査した。ついでフレア式
管継手を締め付けを緩めてフランジ面とフレア部に取り
外しフランジ面の弾性シール層を損傷有無について外観
検査をした。さらに、このフランジ面をパイプ外周に沿
って９０度回転させて、先の試験での当接するフレア部
とフランジ面が９０度ずれるように組み付けて、先の試
験と同様に４５．１Ｎ・ｍ｛４６０ｋｇｆ・ｃｍ｝のト
ルクで締め付けた。この当接面が９０度ずれただけフレ
ア式管継手試験パイプを、再度１２０℃で２４時間放置
して耐熱試験を実施したのち、先の試験同様にエアー洩
れと取り外し後のフランジ面の弾性シール層の損傷有無
を検査した。同一のフレア式管継手試験パイプについ
て、９０度毎にずらして、３６０度回転するまで４回、
同様な試験を繰り返した。その結果を表２に示す。

【００２７】

【発明の効果】本発明のフレア式管継手では、優れた復
元率を有する弾性シール層が当節面に介在するので密封
効果の信頼性が格段に向上する。また、弾性シール層は
フレア部と融着することはないので、点検などで当該継
手を分解す場合当該シール層を損傷することなく容易に
取り外しが可能である。さらに、取り外した当該フレア
式管継手の弾性シール層の損傷および劣化は小さいので
複数回の再使用が可能である

【図面の簡単な説明】

【図１】 フレア式継手の円錐状フランジの一部断面図

【図２】 接続時のフレア式継手の断面図

【符号の説明】

１円錐状フランジ ２フレア部 ３弾性シール層 ４ナット ５雄ねじ ６雌ねじ ７管

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アクリル樹脂とポリ塩基性樹脂からなる
   硬化剤およびフッ素樹脂パウダーとを含むシール材組成
   物を、フレア部に当接する円錐状フランジ面に塗布し、
   ついで加熱処理して前記シール材組成物を架橋反応させ
   て形成した弾性シール層を当該円錐状フランジ面に設け
   たことを特徴とするフレア式管継手。
2. 【請求項２】 前記シール材組成物の構成成分のうち、
   フッ素樹脂パウダーが、焼成工程による結晶化処理を受
   けていない未焼成フッ素樹脂パウダーであることを特徴
   とする前記請求項１のフレア式管継手。