JP3123761B2 - 表面改良された繊維補強樹脂成形品及びその成形方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、表面特性の改良された
繊維補強熱可塑性樹脂成形品及びその成形方法に関する
もので、より詳細には、表面平滑性と外観特性の顕著に
向上した繊維補強熱可塑性樹脂成形品及びその成形方法
に関する。

【０００２】

【従来の技術】ガラス繊維等の無機繊維で補強された熱
可塑性樹脂成形品は、軽量でありながら、改善された機
械的強度と耐熱性とを有しており、各種の構造部材や部
品として広く使用されている。一例として、ガラス繊維
補強ポリプロピレン（ＧＦＲ−ＰＰ）シートは、加熱軟
化した後、プレス成形することにより、種々の形状の構
造材や部品に成形可能であり、例えば、バッテリートレ
イやエンジンアンダーカバー等に使用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】これらの部品は自動車
のボンネット内や車の下側にあり、一般に人目に触れる
こともないため、その強度等の機能を満足すれば良い。
しかしながら、これらの成形品は、その内部に長繊維の
ガラスファイバー（ＧＦ）を含むため、その表面は凹凸
が激しく、人目に触れる外観部品としては使えない。

【０００４】従って、本発明の目的は、従来の無機繊維
補強樹脂成形品の上記欠点を解消し、優れた外観特性と
表面平滑性とを有し、しかも構造的にも堅固である無機
繊維補強熱可塑性樹脂成形品及びその製造法を提供する
にある。本発明の他の目的は、上記特性の無機繊維補強
熱可塑性樹脂成形品を高い生産性と生産速度で製造し得
る成形法を提供するにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明によれば、無機繊
維補強熱可塑性樹脂製シートと、予め形成された熱可塑
性樹脂フィルムとを接着剤を介して一体化成形して成る
繊維補強樹脂成形品において、 無機繊維補強熱可塑性樹
脂製シートが無機補強繊維の含有量が２０乃至５０重量
％で、厚みが０．５乃至１０ｍｍで、表面に無機繊維に
基づく凹凸を有するシートであり、熱可塑性樹脂フィル
ムが厚みが１０乃至１０００μｍである予め形成された
フイルムであり、前記接着剤が前記シートと同種の熱可
塑性樹脂から成る接着剤であり、且つ一体化成形が、適
度のテンションがかけられて固定された前記フィルムと
溶融状態で供給された接着剤を載せたシートとをプレス
成形することにより行われていることを特徴とする表面
改良された繊維補強樹脂成形品が提供される。

【０００６】本発明によればまた、無機補強繊維の含有
量が２０乃至５０重量％であり且つ厚みが０．５乃至１
０ｍｍである、表面に無機繊維に基づく凹凸を有する加
熱された無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを開閉可能
なプレス型で所定形状に成形する工程と、型を開いた後
前記シートの成形品を下型で支持して、成形品上に前記
シートと同種の熱可塑性樹脂を接着剤として溶融状態で
供給する工程と、厚みが１０乃至１０００μｍである予
め形成された熱可塑性樹脂フイルムを上型に供給して適
度のテンションがかけられた状態で固定する工程と、型
を閉じてシート成形品とフイルムとを接着剤を介して一
体化する工程とから成る繊維補強樹脂シートの成形方法
が提供される。

【０００７】本発明の第一の態様では、シートを構成す
る熱可塑性樹脂及びフイルムを構成する熱可塑性樹脂を
共にポリプロピレン系樹脂とし、接着剤を構成する熱可
塑性樹脂をメルトフローレートが１０乃至１００ｇ／１
０ｍｉｎのポリプロピレン系樹脂とする。本発明の他の
態様では、シートを構成する熱可塑性樹脂をポリプロピ
レン系樹脂とし、フイルムを構成する熱可塑性樹脂をポ
リアミド、ポリエステルまたはポリカーボネートとし、
接着剤を構成する熱可塑性樹脂をメルトフローレートが
１０乃至１００ｇ／１０ｍｉｎの酸変性ポリプロピレン
系樹脂とする。本発明の更に他の態様では、シートを構
成する熱可塑性樹脂及びフイルムを構成する熱可塑性樹
脂を共にポリアミド、ポリエステルまたはポリカーボネ
ートとし、接着剤を構成する熱可塑性樹脂を低融点或い
は高溶融流動性のポリアミド、ポリエステルまたはポリ
カーボネートとする。

【０００８】

【作用】本発明において、成形体の基体として無機繊維
補強熱可塑性樹脂製シートを使用するのは、このものが
優れた成形性を有しながら、無機繊維の補強による優れ
た衝撃性、曲げ強度等の機械的性質及び耐熱性を有する
ことによる。しかしながら、既に指摘した通り、無機繊
維補強熱可塑性樹脂製シートはその内部に無機繊維を含
有するため、これに基く凹凸が成形体表面に必ず表れ、
表面平滑性や外観特性に劣る。この理由は、熱可塑性樹
脂の溶融密度と固体状態の密度との間にはかなり差があ
るのに対して、ガラス繊維等の無機繊維では、対応する
温度差間で密度の差が非常に小さいことによると思われ
る。かくして、無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを熱
成形する限り、上記凹凸模様が表面に形成されるのは避
け得ないことが了解されよう。

【０００９】本発明では、この表面凹凸模様の生成を防
止するため、予め形成された熱可塑性樹脂フイルムを表
面材として用いるのが第一の特徴である。即ち、熱可塑
性樹脂フイルムは、あらゆる熱可塑性樹脂成形品の中で
最も表面平滑性に優れており、しかも厚みが薄いにも関
わらず、連続性及び緻密性にも優れている。かくして、
無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートの表面に予め形成さ
れた熱可塑性樹脂フイルムを設けると、表面平滑性に優
れ、しかも連続性及び緻密性にも優れた成形体が得られ
ることが期待される。しかしながら、無機繊維補強熱可
塑性樹脂製シートの表面に熱可塑性樹脂フイルムを一体
化しただけでは、やはり凹凸模様が表面に形成されるの
を避け得ない。これは、基体である無機繊維補強熱可塑
性樹脂製シートの体積収縮による凹凸模様が、これに密
着する熱可塑性樹脂フイルムの表面にそのまま転写され
るからである。また、シート成形品の表面に、シートの
樹脂と同種の樹脂を施しただけでは、この樹脂自身のフ
ローと合流による、ウェルドマークの発生があり、十分
な表面状態にあるとは言えない。また、このものの表面
に塗装等の後処理を行っても、ウェルドマークが目立っ
て外観特性を向上させることができない。

【００１０】この無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートと
熱可塑性樹脂フイルムとの間に、シートと同種の熱可塑
性樹脂を接着剤として介在させ、これらを一体化成形す
ることが本発明の第二の特徴である。シートとフイルム
の間に介在する熱可塑性樹脂は、シートを構成する熱可
塑性樹脂と同種であるから、シートとよく馴染んで強固
に接着するのみならず、一体化成形時に、平滑なフイル
ムに押圧されて、体積収縮による凹部を充填して全体を
平滑にするように作用する。かくして、本発明によれ
ば、これらが総合されて、無機繊維補強熱可塑性樹脂製
シートの体積収縮による凹凸模様が修正され、しかも、
表面に予め形成された熱可塑性樹脂フイルムが存在する
ことにより、表面平滑性に優れ、しかも連続性及び緻密
性にも優れた成形体が得られることになる。

【００１１】更に、本発明の方法においては、加熱され
た無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを開閉可能なプレ
ス型で所定形状に成形し；型を開いた後前記シートの成
形品上に前記シートと同種の熱可塑性樹脂を接着剤とし
て溶融状態で供給し；予め形成された熱可塑性樹脂フイ
ルムを開いた型の一方に供給して固定し；型を閉じてシ
ート成形品とフイルムとを接着剤を介して一体化するこ
とにより製造上の多くの利点が達成される。即ち、成形
直後の未だ熱いシート成形品に対して、直ちに溶融状態
の接着剤樹脂を供給し、温度の低下が急激に生じないよ
うにすることにより、接着剤樹脂を高温の溶融状態でシ
ート成形品上に存在させ、しかも接着剤樹脂の十分な流
動とフイルムとの熱接着が確保されるようにすることが
出来、これにより小量の接着剤樹脂の施用により、外観
特性を向上させ、且つシート及びフイルムとの接着を強
固にすることができる。また、単一の型により成形、接
着剤施用及び一体化成形が行われるので、設備コストを
低くし、床占有面積を小さくして、精度の高い成形品
を、良好な作業性と生産性とを以て製造することができ
るという利点も得られる。

【００１２】

【発明の好適態様】本発明の成形体の断面構造を示す図
１において、この成形体１は、基体となる無機繊維補強
熱可塑性樹脂製シート２と、表面の熱可塑性樹脂フイル
ム３と、これらの間に介在するシートと同種の熱可塑性
樹脂からなる接着剤層４とから構成されている。中間熱
可塑性樹脂層４は基体シート２と表面フイルム３に強固
に密着している。基体シート表面にはシート内に充填さ
れている無機繊維６に起因する凹凸５が存在するが、中
間樹脂層４がこの凹凸を均す作用を行っている結果とし
て、表面フイルム３は平滑さに特に優れたものとなって
いる。図１に示す具体例では、基体シート一方の表面に
のみ、樹脂接着剤を介してフイルム層が設けられている
が、基体シート両方の表面に、樹脂接着剤を介してフイ
ルム層を設けることもできる

【００１３】（無機繊維補強熱可塑性樹脂製シート）本
発明に用いる無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートは、熱
成形可能な物であれば任意の物を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、汎用の構造材用樹脂、特にオレ
フイン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカ
ーボネート樹脂等を挙げることができる。オレフイン樹
脂としては、中−或いは高−密度のポリエチレン、線状
低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレ
ン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−１、
エチレン−ブテン−１共重合体、プロピレン−ブテン−
１共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−１共重合
体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフ
ィン共重合体（アイオノマー）或いはこれらのブレンド
物等を挙げることができる。

【００１４】ナイロン樹脂としては、例えば、ポリ−ω
−アミノカプロン酸、ポリ−ω−アミノヘプタン酸、ポ
リ−ω−アミノカプリル酸、ポリ−ω−アミノヘプラゴ
イン酸、ポリ−ω−アミノデカン酸、ポリ−ω−アミノ
ウンデカン酸、ポリ−ω−アミノドデカン酸、ポリ−ω
−アミノトリデカン酸、ポリヘキサメチレンアジパミ
ド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレ
ンドデカミド、ポリヘキサメチレントリデカミド、ポリ
デカメチレンアジパミド、ポリデカメチレンセバカミ
ド、ポリデカメチレンドデカミド、ポリデカメチレント
リデカミド、ポリドデカメチレンアジパミド、ポリドデ
カメチレンセバカミド、ポリドデカメチレンドデカミ
ド、ポリドデカメチレントリデカミド、ポリトリデカメ
チレンアジパミド、ポリトリデカメチレンセバカミド、
ポリトリデカメチレンドデカミド、ポリトリデカメチレ
ントリデカミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリ
ドデカメチレンアゼラミド、ポリドデキメチレンアゼラ
ミド、ポリトリデカメチレンアゼラミド、ポリメタキシ
リレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミ
ド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド或いはこれらの
コポリアミドが挙げられる。

【００１５】熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例え
ば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチ
レンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリ
エチレンテレフタレート／イソフタレート、ポリエチレ
ンオキシベンゾエート、或いはこれらの共重合ポリエス
テル等が挙げられる。

【００１６】ポリカーボネート樹脂としては、例えば、
ポリ−ｐ−キシレングリコールビスカボーネート、ポリ
−ジオキシジフェニル−メタンカーボネート、ポリ−ジ
オキシルフェニルエタンカーボネート、ポリ−ジオキシ
ジフェニル１、１−エタンカーボーネ−ト、或いはこれ
らの共重合ポリカーボネート等が挙げられる。

【００１７】上記熱可塑性樹脂は、それ単独で或いは二
種以上の組み合わせで用いることができ、更に他の樹脂
とのブレンド物で用いることができる。例えば、無機繊
維との密着性を向上させるために、酸変性オレフイン樹
脂や、アイオノマー等を用いることができる。

【００１８】本発明における補強用無機繊維としては、
径が０．１μｍ〜１５μｍ程度、長さが５μｍ〜３０ｍ
ｍ程度のものが好ましく、具体例としては、ガラス繊維
（チョップドストランド、ロービング、ミルドガラス繊
維、ガラスフレーク等）、ウォラストナイト、カットフ
ァイバー、ロックファイバー、ミクロファイバー、プロ
セスドミネラルファイバー、炭素繊維、石膏繊維、チタ
ン酸カリウムウイスカ、ボロンウイスカ、金属繊維等を
挙げることができる。これらの中でも中乃至長繊維長の
ガラス繊維（ＧＦ）が好ましい。又、繊維はマトリック
スとなる熱可塑性樹脂との濡れを更によくするために、
シラン系、クロム系、チタン系等の各種カップリング剤
で処理されたものがより好ましい。

【００１９】樹脂シート中における無機補強繊維の含有
量は、所定の機械的特性が得られるように定められ、シ
ート当たり２０乃至５０重量％の範囲にある。シート寸
法は、用途に応じて、種々変更し得るが、その厚みは
０．５乃至１０ｍｍの範囲にある。本発明は、中〜長繊
維長のＧＦ入り熱可塑性樹脂シートに特に有利に適用す
ることができ、これらのシートは市販の製品として入手
することができる。その適当な例は、ポリプロピレンシ
ートの場合、ＥＸＸＯＮ社のＴＡＦＦＥＮ（登録商
標）、宇部日東社のＡＺＤＥＬ、出光 ＮＳＧ社のＸシ
ート等であり、ポリアミドシートの場合、ＧＥ社製 Ｓ
ＴＸ（登録商標）、出光社製 Ｘシート、宇部日東社製
ＡＺＤＥＬ等であり、ポリエステルシートの場合、Ｇ
Ｅ社製 ＡＺＭＥＴ（登録商標）であり、ポリカーボネ
ートシートの場合、ＧＥ社製 ＡＺＬＯＹ（登録商標）
である。

【００２０】（熱可塑性樹脂フイルム） 表面材として使用する熱可塑性樹脂フイルムとしては、
平滑性に優れ、機械的強度に優れたものであることは当
然のことであるが、寸法安定性や耐傷性に優れたものを
用いるべきである。かかる見地からポリオレフインフイ
ルム、特にポリプロピレンフイルム、ナイロンフイル
ム、特にナイロン６フイルム、ナイロン６，６フイル
ム、ポリエステルフイルム、特にポリエチレンテレフタ
レートフイルム等が推奨される。これらの樹脂フイルム
は、未延伸のものでも、一軸延伸のものでもよいが、前
記特性の点で、二軸延伸のものが推奨される。また、延
伸フイルムは、寸法安定性向上及び耐熱性向上のために
熱固定されていてもよい。フイルムの厚みは、１０乃至
１０００μｍの範囲にあり、フイルムが余り薄いと、積
層成形時にしわが発生する原因となる。最も、高度に二
軸延伸したフイルムは、剛性が大きいので、成形時にし
わの発生が防止されるという予想外の利点もある。また
フイルムの厚みが大きすぎると、繊維補強シート成形品
の優れた利点が失われることになる。１００乃至３００
μｍの範囲が最も適当である。

【００２１】（熱可塑性樹脂接着剤）本発明によれば、
無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートと、予め形成された
熱可塑性樹脂フイルムとの間に、前記シートの樹脂と同
種の熱可塑性樹脂を接着剤として介在させる。シートの
樹脂と同種であるとは、シートを構成する熱可塑性樹脂
と接着剤としての熱可塑性樹脂とが主たる反復単位の種
類を共通にしていることを意味する。例えば、シートの
構成樹脂がポリプロピレンである場合には、接着剤樹脂
もプロピレンを主たる反復単位とする樹脂であることを
意味し、シートの構成樹脂がポリアミドである場合に
は、接着剤樹脂もアミドを主たる反復単位とする樹脂で
あることを意味し、一方シートの構成樹脂がポリエステ
ルである場合には、接着剤樹脂もエステルを主たる反復
単位とする樹脂であることを意味する。接着剤を構成す
る樹脂は、シートを構成する樹脂よりも、同一温度にお
いて流動性に富んだ樹脂であることが好ましく、このた
め、接着剤を構成する樹脂はシートを構成する樹脂より
もメルトフローレート（ＭＦＲ）の大きいものである
か、或いは接着剤を構成する樹脂はシートを構成する樹
脂よりも低融点のものであることが好ましい。シート樹
脂がポリプロピレンの場合には、前者の基準で接着用樹
脂を選ぶのがよく、シート樹脂がポリエステル或いはポ
リアミドの場合には、前者の基準で流動性のよいポリエ
ステル或いはポリアミドか、後者の基準でコポリエステ
ル或いはコポリアミドを選択するのがよい。接着剤樹脂
層の厚みは、一般に１０乃至１０００μｍの範囲にある
のがよい。

【００２２】（積層体）本発明において、シートを構成
する熱可塑性樹脂及びフイルムを構成する熱可塑性樹脂
は同種であるのが一般に好ましいが、必ずしも同種であ
る場合に限定されない。例えば、シートを構成する樹脂
よりも耐熱性や機械的性質に優れた樹脂フイルムを表面
に設けることにより、成形品の表面特性を一層向上させ
ることができる。この場合、用いる接着剤樹脂は表面層
のフイルムに対して強い接着力を示すものでなければな
らず、このため、接着用熱可塑性樹脂としては、グラフ
ト共重合、ランダム共重合、ブロック共重合等の手段
で、フイルムに対して官能性乃至親和性を有する単量体
を導入したものや、フイルムに対して接着性を示す樹脂
をブレンドしたものが使用される。シート及びフイルム
が同種の例では、シートを構成する熱可塑性樹脂及びフ
イルムを構成する熱可塑性樹脂を共にポリプロピレン系
樹脂とし、接着剤を構成する熱可塑性樹脂をメルトフロ
ーレートが比較的大きい１０乃至１００ｇ／１０ｍｉｎ
のポリプロピレン系樹脂とする。また別の例では、シー
トを構成する熱可塑性樹脂及びフイルムを構成する熱可
塑性樹脂を共にポリアミドまたはポリエステル或いはポ
リカーボネートとし、接着剤を構成する熱可塑性樹脂を
低融点のコポリアミドまたはコポリエステル或いはポリ
カーボネートとする。シートとフイルムとが別の例で
は、シートを構成する熱可塑性樹脂をポリプロピレン系
樹脂とし、フイルムを構成する熱可塑性樹脂をポリアミ
ドまたはポリエステル或いはポリカーボネートとし、接
着剤を構成する熱可塑性樹脂をメルトフローレートが１
０乃至１００ｇ／１０ｍｉｎの酸変性ポリプロピレン系
樹脂、例えばアドマー（三井石油化学工業株式会社製）
とする。

【００２３】（成形法）本発明によれば、加熱された無
機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを開閉可能なプレス型
で所定形状に成形し、型を開いた後前記シートの成形品
上に前記シートと同種の熱可塑性樹脂を接着剤として溶
融状態で供給し、予め形成された熱可塑性樹脂フイルム
を開いた型の一方に供給して固定し、型を閉じてシート
成形品とフイルムとを接着剤を介して一体化することに
より、表面改良された繊維補強樹脂成形体に成形する。
小量の接着剤樹脂の施用により、外観特性を向上させ、
且つシート及びフイルムとの接着を強固にするには、接
着剤樹脂を高温の溶融状態でシート成形品上に存在さ
せ、接着剤樹脂の十分な流動とフイルムとの熱接着が確
保されるようにすることが重要である。これは、成形直
後の未だ熱いシート成形品に対して、直ちに溶融状態の
接着剤樹脂を供給し、温度の低下が急激に生じないよう
にすることにより可能となる。フイルムとの熱接着を完
全なものとするために、フイルムを供給するに先立っ
て、予備加熱したり、或いは型の表面を若干高めの温
度、例えば、５０乃至１００℃の温度に保つことが有効
である。成形品にフイルムを一体化する際にしわが発生
するのを防止するため、フイルムに適度のテンションを
かけておくことが望ましい。

【００２４】本発明方法を、図２に示す具体例に基ずき
説明する。本発明の実施に用いる装置は、大別して、無
機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを成形可能温度に加熱
するための加熱装置（図示せず）；加熱された無機繊維
補強熱可塑性樹脂製シートを所定形状に成形し、次いで
この成形品とフイルムとを接着剤樹脂を介して一体化す
るためのプレス成形機１２；接着剤としての熱可塑性樹
脂を溶融し、前記成形品に施すための押出機１５、注型
ユニット１７及びダイ１９；フイルムを所望により予備
加熱する予備加熱装置２０からなっている。ダイ１９
は、プレス成形機外の待機位置から、プレス成形機内の
チャージ位置まで移動できるように設けられており、こ
のチャージ位置では、ダイ１９から樹脂が金型１１の全
面にいきわたるように設定されている。

【００２５】押出機１５のホッパー１６から樹脂１４を
供給し、押出機１５内で樹脂を可塑化溶融し、注型ユニ
ット１７のアキュームレーター１８に一定の溶融樹脂１
４ａを計量しておく。熱可塑性樹脂フイルム２１を、予
備加熱装置２０のヒータ２２により所定の温度に予備加
熱する。無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを遠赤外線
ヒータや、ホットプレート等加熱機構（図示せず）によ
り所定の温度（ＰＰの場合、１８０〜２５０℃）に加熱
し、シート中の樹脂を溶融させる。次いで、加熱軟化し
た無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートを上下合わせプレ
ス型１０、１１からなるプレス成形機１２の下型１１の
面上に置き、プレス型を閉じて成形品１３とする。

【００２６】上型１０を開いて直後に、ダイ１９をプレ
ス成形機外の待機位置から、プレス成形機内のチャージ
位置まで移動させ、上記溶融樹脂１４ａを、開いた下型
１１上の成形品１３上に、ダイ１９を通してチャージす
る。チャージ量は成形後の接着用樹脂の厚みで０．０５
〜１．０ｍｍとなるように計算しておく。表面フィルム
２１を、予備加熱装置２０から引き出し、予め上型１１
面に固定治具２３により固定する。

【００２７】接着用溶融樹脂１４ａのチャージングが完
了すると、ダイ１９をプレス成形機外の待機位置へ後退
させ、その後直ちに上型１０を閉じて、無機繊維補強熱
可塑性樹脂製シート成形品１３と、熱可塑性樹脂接着剤
１４と、熱可塑性樹脂フイルム２１とを一体にプレス成
形する。金型１０、１１を樹脂の固化温度に冷却してお
き、樹脂成形体が固化すると、型１０を開いて、成形体
を取り出す。以後、前述した操作を反復して、成形体を
順次製造する。

【００２８】

【実施例】本発明を次の例で更に具体的に説明する。次
の例では、図２に示し、且つ次の諸元の装置を使用し
た。

【００２９】１．モールドスタンピング装置：池貝鉄
工、ＩＳＭ装置、金型・フェインダー型。

【００３０】２．押出機 （池貝鉄工 ＰＣＭ６５II
I／２−２７−２Ｖ）：

【００３１】３．注型ユニット （池貝鉄工 ＯＰ−１
０５−４２０）：ダイサイズ＝ ４５０Ｗ×４ｔｍｍ、

【００３２】４．プレス成形機（アミノ鉄工（株） ８
００ＴＯＮ 油圧プレス）：

【００３３】５．付属装置：（１）表皮（フイルム）加
熱装置：遠赤外線ヒーター、（２）シート加熱装置（ホ
ットプレート）：（３）表皮真空成形ユニット（日本建
鉄（株））：

【００３４】以下の例における表面平滑度の試験は、東
京精密（株）製の表面粗さ試験機を用いて行った。即
ち、先端半径＝０．５μｍＲの針をテストピース表面を
走らせ、表面の凹凸を電気信号から深さとして読みと
り、最大値、最小値、両者の差（Δ）として表した。

【００３５】実施例１ 無機繊維補強樹脂シートとして、ガラス繊維補強ポリプ
ロピレン・シート（ＧＦＲ−ＰＰシート）、ＥＸＸＯＮ
社のＴＡＦＦＥＮ ２．５ｍｍ厚、８００ｇを用いた。
ＧＦＲ−ＰＰシートの加熱は、ホットプレート（設定２
６０℃）で３分間行った。溶融したＧＦＲ−ＰＰシート
をフェンダー金型の下型上に置き、プレス成形する。プ
レス条件は、時間＝１０秒、圧力＝１３３ｋｇ／ｃｍ∧
2とした。

【００３６】型開きの後、モールドスタンピング装置
で、予め可塑化溶融したポリプロピレン（ＰＰ、２４０
℃、Ｊ９４０、ＭＦＲ＝５５ｇ／１０ｍｉｎ）１００ｇ
をＧＦＲ−ＰＰ上にチャージし、上型面に予めセットし
たＰＰフィルム（Ｂ２４０、２００μ厚）を上型と共に
下降させ、下記の条件で、プレス一体化させた。溶融
ＰＰはフィルムとＧＦＲ−ＰＰ成形品との間をフローし
全面に拡がり、両者の接着点となる。

【００３７】成形条件： プレス圧力＝１３３ｋｇ／ｃｍ∧2、 全型温度＝上／下＝７０℃／９０℃、 プレス時間＝２０秒／加圧状態、 ４０秒／無加圧状態。

【００３８】出来上がった製品は、外観が非常になめら
かであり、汚れの浸透や付着に対して耐性があり、商品
価値を有するものであった。表面粗度の測定の結果は、
最大値＝１２μｍ、最小値＝６．５μｍ、Δ＝５．５μ
ｍであった。尚、ポリプロピレンフイルムのみの表面粗
さが最大値＝１３μｍ、最小値＝７μｍ、Δ＝６μｍで
あることから、本実施例の成形体が表面平滑性に特に優
れていることが分かった。

【００３９】比較例１ 比較のため、上記ガラス繊維補強ポリプロピレン・シー
ト（ＧＦＲ−ＰＰシート）、ＥＸＸＯＮ社のＴＡＦＦＥ
Ｎを単独で成形したものは、外観特性が不良であり、表
面粗度の測定の結果は、最大値＝２３μｍ、最小値＝４
μｍ、Δ＝１９μｍであった。

【００４０】比較例２ 比較のため、上記ガラス繊維補強ポリプロピレン・シー
ト（ＧＦＲ−ＰＰシート）、ＥＸＸＯＮ社のＴＡＦＦＥ
Ｎ成形品に溶融状態のＰＰのみを供給して成形したもの
は、フローマークやウエルドマークが存在して外観特性
が不良であり、表面粗度の測定の結果は、最大値＝１３
μｍ、最小値＝７μｍ、Δ＝６μｍであった。

【００４１】実施例２ 上記実施例１において、表面フィルムをナイロンフィル
ム２００μ厚に代え、接着用ＰＰを酸変性ＰＰ（ＡＤＭ
ＥＲ ＱＦ−３０５）に代える以外は、上記実施例１と
同様にして、成形体を製造した。出来上がった製品は、
外観が非常になめらかであり、汚れの浸透や付着に対し
て耐性があり、表面の機械的性質にも優れ、商品価値を
有するものであった。

【００４２】実施例３ 無機繊維補強樹脂シートとして、ガラス繊維補強ナイロ
ン６・シート（ＧＦＲ−Ｎｙシート）、ＧＥ社のＳＴＸ
（登録商標）を用い、ホットプレートでの加熱を２８０
℃で３分間行ない、接着剤樹脂として、ナイロン６、東
レ社製アミランＣＭ１００７を使用して、２８５℃で、
成形後の厚みが５００μｍとなるように溶融押出し、表
面フイルムとして厚み ２００μｍのナイロンフイルム
を用いる以外は実施例１と同様にして、成形体を製造し
た。出来上がった製品は、機械的性質及び耐熱性に特に
優れたものであると共に、外観が非常になめらかであ
り、汚れの浸透や付着に対して耐性があり、表面の機械
的性質にも優れ、商品価値を有するものであった。

【００４３】実施例４ 無機繊維補強樹脂シートとして、ガラス繊維補強ポリブ
チレンテレフタレート・シート（ＧＦＲ−ＰＢＴシー
ト）、ＧＥ社のＡＺＭＥＴ（登録商標）を用い、ホット
プレートでの加熱を２８０℃で３分間行ない、接着剤樹
脂として、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、三
井ＰＥＴ社製 Ｊ１２０（ＩＶ＝０．７４）を使用し
て、２８０℃で、成形後の厚みが５００μｍとなるよう
に溶融押出し、表面フイルムとして厚み ２００μｍの
ＰＥＴフイルム、東レ社製ルミラー（登録商標）を用い
る以外は実施例１と同様にして、成形体を製造した。出
来上がった製品は、機械的性質、特に剛性及び耐熱性に
特に優れたものであると共に、外観が非常になめらかで
あり、汚れの浸透や付着に対して耐性があり、表面の機
械的性質にも優れ、商品価値を有するものであった。

【００４４】実施例５ 無機繊維補強樹脂シートとして、ガラス繊維補強ポリカ
ーボネート・シート（ＧＦＲ−ＰＣシート）、ＧＥ社の
ＡＺＬＯＹ（登録商標）を用い、ホットプレートでの加
熱を２８０℃で３分間行ない、接着剤樹脂として、ポリ
カーボネート（ＰＣ）、帝人社製 パンライト（登録商
標）Ｌ−１２２５を使用して、２８０℃で成形後の厚み
が５００μｍとなるように溶融押出し、表面フイルムと
して厚み２００μｍのＰＣフイルムを用いる以外は実施
例１と同様にして、成形体を製造した。出来上がった製
品は、機械的性質、特に剛性及び耐熱性に特に優れたも
のであると共に、外観が非常になめらかであり、汚れの
浸透や付着に対して耐性があり、表面の機械的性質にも
優れ、商品価値を有するものであった。

【００４５】

【発明の効果】本発明によれば、無機繊維補強熱可塑性
樹脂製シートの成形品と熱可塑性樹脂フイルムとの間
に、シートと同種の熱可塑性樹脂を接着剤として介在さ
せ、これらを一体化成形することにより、シートとフイ
ルムの間に介在する熱可塑性樹脂は、シートを構成する
熱可塑性樹脂と同種であるから、シートとよく馴染んで
強固に接着するのみならず、一体化成形時に、平滑なフ
イルムに押圧されて、体積収縮による凹部を充填して全
体を平滑にするように作用する。かくして、本発明によ
れば、これらが総合されて、無機繊維補強熱可塑性樹脂
製シートの体積収縮による凹凸模様が修正され、しか
も、表面に予め形成された熱可塑性樹脂フイルムが存在
することにより、表面平滑性に優れ、しかも連続性及び
緻密性にも優れた成形体が得られることになる。また、
本発明の方法においては、成形直後の未だ熱いシート成
形品に対して、直ちに溶融状態の接着剤樹脂を供給し、
温度の低下が急激に生じないようにすることにより、接
着剤樹脂を高温の溶融状態でシート成形品上に存在さ
せ、しかも接着剤樹脂の十分な流動とフイルムとの熱接
着が確保されるようにすることが出来、これにより小量
の接着剤樹脂の施用により、外観特性を向上させ、且つ
シート及びフイルムとの接着を強固にすることができ
る。また、単一の型により成形、接着剤施用及び一体化
成形が行われるので、設備コストを低くし、床占有面積
を小さくして、精度の高い成形品を、良好な作業性と生
産性とを以て製造することができるという利点も得られ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の複合複合成形体の一例の断面図であ
る。

【図２】本発明の方法に用いる装置の概略配置図であ
る。

【記号の説明】１は成形体、２は無機繊維補強熱可塑性
樹脂製シート、３は熱可塑性樹脂フイルム、４はシート
と同種の熱可塑性樹脂からなる接着剤層、５は凹凸、６
は無機繊維、１０、１１は金型、１２はプレス成形機、
１５は押出機、１７は注型ユニット、１９はダイ、２０
は予備加熱装置。

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートと、予
   め形成された熱可塑性樹脂フィルムとを接着剤を介して
   一体化成形して成る繊維補強樹脂成形品において、 無機繊維補強熱可塑性樹脂製シートが 無機補強繊維の含
   有量が２０乃至５０重量％で、厚みが０．５乃至１０ｍ
   ｍで、表面に無機繊維に基づく凹凸を有するシートであ
   り、熱可塑性樹脂フィルムが厚みが１０乃至１０００μ
   ｍである予め形成されたフイルムであり、前記接着剤が
   前記シートと同種の熱可塑性樹脂から成る接着剤であ
   り、且つ一体化成形が、適度のテンションがかけられて
   固定された前記フィルムと溶融状態で供給された接着剤
   を載せたシートとをプレス成形することにより行われて
   いることを特徴とする表面改良された繊維補強樹脂成形
   品。
2. 【請求項２】シートを構成する熱可塑性樹脂及びフイル
   ムを構成する熱可塑性樹脂が共にポリプロピレン系樹脂
   であり且つ接着剤を構成する熱可塑性樹脂がメルトフロ
   ーレートが１０乃至１００ｇ／１０ｍｉｎのポリプロピ
   レン系樹脂である請求項１記載の繊維補強樹脂成形品。
3. 【請求項３】シートを構成する熱可塑性樹脂がポリプロ
   ピレン系樹脂であり、フイルムを構成する熱可塑性樹脂
   がポリアミド、ポリエステルまたはポリカーボネートで
   あり且つ接着剤を構成する熱可塑性樹脂がメルトフロー
   レートが１０乃至１００ｇ／１０ｍｉｎの酸変性ポリプ
   ロピレン系樹脂である請求項１記載の繊維補強樹脂成形
   品。
4. 【請求項４】シートを構成する熱可塑性樹脂及びフイル
   ムを構成する熱可塑性樹脂が共にポリアミド、ポリエス
   テルまたはポリカーボネートであり且つ接着剤を構成す
   る熱可塑性樹脂が低融点或いは高溶融流動性のポリアミ
   ド、ポリエステルまたはポリカーボネートである請求項
   １記載の繊維補強樹脂成形品。
5. 【請求項５】無機補強繊維の含有量が２０乃至５０重量
   ％であり且つ厚みが０．５乃至１０ｍｍである、表面に
   無機繊維に基づく凹凸を有する加熱された無機繊維補強
   熱可塑性樹脂製シートを開閉可能なプレス型で所定形状
   に成形する工程と、型を開いた後前記シートの成形品を
   下型で支持して、成形品上に前記シートと同種の熱可塑
   性樹脂を接着剤として溶融状態で供給する工程と、厚み
   が１０乃至１０００μｍである予め形成された熱可塑性
   樹脂フイルムを上型に供給して適度のテンションがかけ
   られた状態で固定する工程と、型を閉じてシート成形品
   とフイルムとを接着剤を介して一体化する工程とから成
   る繊維補強樹脂シートの成形方法。