JP3141353B2 - アンカー固着用カプセル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、後施工アンカーに
使用するアンカー固着用カプセルに関し、さらに詳しく
は、打込み工法用として好適なアンカー固着用カプセル
に関する。本発明においては、アンカーをハンマーで打
撃することのみで、硬化性樹脂成分と硬化剤成分との良
好な混合が得られ、アンカーホールへのアンカーの良好
な固着力が得られる。

【０００２】

【従来の技術】コンクリート基礎、壁や柱などへアンカ
ーを固着する方法として、従来から、アンカーホール内
にアンカー固着用カプセルを装着し、アンカーボルトや
アンカー用鉄筋を回転を伴わずにハンマーで打撃する打
込み工法が採用されている。

【０００３】このアンカー打込み工法で使用されるアン
カー固着用カプセルは、ガラス容器など破壊し易い容器
に硬化性樹脂成分と硬化剤を分離して収容したもので、
アンカーホールに装着してアンカーを打設することによ
り容器を破壊するとともに、硬化性樹脂成分と硬化剤と
を混合して樹脂を固化させアンカーをアンカーホールに
固着するもので、硬化性樹脂成分と硬化剤との分離方式
に種々の提案がある。

【０００４】例えば、ガラス容器の内部に硬化性樹脂成
分、外部に硬化剤を配置するカプセルとして、ガラス容
器内に硬化性樹脂を収容し、硬化剤をガラス容器の外面
に塗布したカプセル（特開昭６１−１２２４００号公
報）、主剤を収容した容器本体の開口部を硬化剤を含有
する無機質材料で成形したキャップでシールしたカプセ
ル（特開昭６３−１４２１９９号公報）、外面に絞り凹
部を有するガラス円筒容器内に硬化性樹脂成分を収容し
て密封し、外面に硬化剤を配置したカプセル（実開平３
−１０３２３３号、特開平５−１７１６９５号公報）な
どが提案されている。

【０００５】また、ガラス容器内を２分して、一方に硬
化性樹脂成分を、他方に硬化剤を収容したカプセルとし
て、２重のガラス容器の内側容器に硬化性樹脂成分を、
内側容器と外側容器の空隙に硬化剤を内側容器を包むよ
うに充填したカプセル（国際特許出願公開ＷＯ８９／０
８２０２号公報）、ガラス容器内に硬化性樹脂成分と硬
化剤とを分離層を介して二層に配置したカプセル（特開
昭６１−２２５４９９号公報、特開平５−２１４８９９
号公報）などが提案されており、前者には、両層間の分
離層を硬化性樹脂成分と硬化剤とを充填して静置し、そ
れらの反応物により分離層を形成するカプセルの製造方
法が開示されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ガラス容器の外側に硬
化剤を配置したカプセルにおいては、硬化剤の脱落や剥
離の可能性があり、また過酸化物などの硬化剤が施工者
の皮膚に直接触れる危険性もある。さらに、硬化剤が接
着剤などで固められているので、アンカー打設時の硬化
性樹脂成分と硬化剤との混合が不充分となり易く、接着
強度にばらつきを生じる。さらに、変形のガラス容器を
採用する場合には、アンカーの固着強度と直接に関係し
ない容器のコストが高くなる。

【０００７】一方、カプセル内に硬化性樹脂成分と硬化
剤とを充填したカプセルでは、硬化剤の脱落や剥離、お
よび硬化剤の施工者との接触の課題は解決されるもの
の、硬化性樹脂成分および硬化剤が分離層を介して上下
に２分して配置されているため、アンカー打設時の硬化
性樹脂成分と硬化剤との充分な混合が得られるとは限ら
ず、混合不良に起因する固着強度のばらつきなどの課題
は依然として解決されていない。

【０００８】本発明は、アンカー打設時の硬化性樹脂成
分と硬化剤とのばらつきのない良好な混合が得られ、結
果としてアンカーの良好な固着強度の得られるアンカー
固着用カプセルを提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、カプセル
内において粘度範囲が特定範囲にある硬化性樹脂成分お
よび粉末状、顆粒状または粒状の硬化剤成分を層状に積
み重ねることにより、境界に硬化性樹脂と硬化剤との反
応による分離層が容易に形成され、硬化性樹脂成分およ
び硬化剤成分を何層にも交互に充填し得ることを見出
し、本発明を完成した。

【００１０】本発明は、破壊性カプセルならびにカプセ
ル内に分離層を介して充填された硬化性樹脂成分、およ
び粉末状または顆粒状の硬化剤成分からなるアンカー固
着用カプセルであって、前記分離層が、硬化性樹脂と硬
化剤との反応により硬化した樹脂層であり、硬化性樹脂
成分層と硬化剤成分層とがそれぞれ２層以上交互に充填
され、前記硬化性樹脂成分と前記硬化剤成分との反応に
よるゲル化時間が、２５℃において３０秒ないし１０
分、かつ前記硬化性樹脂成分が、３００〜５０，０００
センチポイズの粘度を有するとともに、さらに前記破壊
性カプセル内の最上層に粉末状または粒状の骨材成分層
を有することを特徴とするアンカー固着用カプセルであ
る。なお、硬化性樹脂成分が、不飽和ポリエステル樹脂
またはエポキシアクリレート樹脂の場合、硬化剤成分と
して、過酸化物からなる硬化剤および希釈剤を主成分と
し、必要に応じて平均粒径が１ｍｍ以下の骨材を含むも
のを使用するのが好ましい。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明において、破壊性カプセル
は、アンカーの打設により容易に破壊可能な筒状容器で
あり、例えば、ガラス、陶磁器、セラミック、プラスチ
ックなどの容器を挙げることができる。中でも破壊し易
く、破砕物が固着成分の骨材としても機能する筒状ガラ
ス容器が最も好適に使用される。

【００１２】破壊性カプセルの寸法には、特に制限はな
いが、一般に後施工に用いられるアンカー寸法から、通
常、外径８〜３０ｍｍ、長さ４０〜４００ｍｍ、内容積
２〜２８０ｍｌ程度である。なお、このアンカー内容積
は、ガラス管を含み（空気層を除く）、潰れて孔を満た
す容積をいう。

【００１３】本発明において、硬化性樹脂成分は、本質
的に液状の硬化性樹脂からなり、所望により骨材成分お
よびその他の添加剤を含有していてもよい。硬化性樹脂
としては、硬化剤との反応により硬化する樹脂であれば
特に制限はないが、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ
アクリレート樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく使用さ
れる。

【００１４】また、これらの硬化性樹脂成分として、硬
化剤成分との反応によるゲル化時間が２５℃において
０．５〜１０分、好ましくは１〜５分のものが使用され
る。硬化性樹脂成分のゲル化時間が長すぎると、液状硬
化性樹脂成分の硬化剤成分層中への浸透量が多くなりす
ぎ、一方短すぎると、施工の途中で固化してしまう恐れ
がある。

【００１５】所望により添加される骨材成分としては、
珪砂、石英、ホワイトカーボン、カーボンブラック、タ
ルク、シリカ、炭酸カルシウム、石灰岩、セッコウ、マ
グネシアクリンカー、ガラスビーズ、樹脂粒子、金属粒
子など無機・有機の充填剤を使用することができ、これ
らはシラン系やチタネート系のカップリング剤で表面処
理されていてもよく、また、これらのカップリング剤と
併用してもよい。

【００１６】硬化性樹脂成分の粘度は、好ましくは３０
０〜５０，０００センチポイズ、さらに好ましくは１，
０００〜２０，０００センチポイズ、特に好ましくは
２，０００〜１０，０００センチポイズの範囲である。
硬化性樹脂成分の粘度は、硬化性樹脂の重合度により調
節することができ、また、充填剤の添加により調節して
もよい。

【００１７】硬化性樹脂成分の粘度が高すぎる場合、ア
ンカー打設時の硬化剤との混合が不充分となるばかりで
なく、打設抵抗が大きくなる。一方、粘度が低すぎる場
合には、硬化性樹脂成分層と交互にカプセルに充填され
る硬化剤成分層への浸透量が増大し、硬化剤との反応に
より固化形成される分離層領域が広がり、結果として硬
化性樹脂および硬化剤が共に無駄に消費される。

【００１８】本発明において、硬化剤成分は、粉末状ま
たは顆粒状であり、硬化剤および希釈剤を主成分とし、
必要に応じて骨材を含んでもよい。

【００１９】ここで、硬化剤は、使用する硬化性樹脂の
種類により異なり、例えば、硬化性樹脂が不飽和ポリエ
ステル樹脂またはエポキシアクリレート樹脂の場合に
は、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物類、エポキシ樹脂
の場合には、各種アミン類、酸無水物類、三フッ化ホウ
素などであり、これらを希釈剤で希釈し、必要に応じて
骨材成分を配合し、固形化した粉末または顆粒状で使用
される。硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂またはエ
ポキシアクリレート樹脂の場合には、過酸化ベンゾイル
と硫酸カルシウムまたは炭酸カルシウムとの混合物、過
酸化ベンゾイルのフタル酸ジシクロヘキシルによる希釈
剤などが好適に使用される。

【００２０】なお、硬化剤が過酸化ベンゾイルなどの過
酸化物の場合、このままで用いることは危険なので、希
釈剤で薄めて使用される。ここで、希釈剤としては、炭
酸カルシウム、セッコウなどの粉末状希釈剤、ジシクロ
ヘキシルフタレートなどの顆粒状希釈剤が挙げられる。
これらの希釈剤の使用量は、得られる硬化剤成分が粉末
状、あるいは顆粒状となる範囲で使用される。

【００２１】さらに、硬化剤成分中には、必要に応じて
粉末状または粒状の骨材成分が配合される。骨材成分と
しては、上記硬化性樹脂成分に添加される骨材成分とし
て例示したものと同種のものを使用できるが、その平均
粒径が１ｍｍ以下、より好ましくは０．５ｍｍ以下のも
のを使用することにより、硬化性樹脂の硬化剤成分層へ
の過度の浸透が防止され、硬化性樹脂と硬化剤との反応
により形成される固化した分離層の厚さが調整される。

【００２２】本発明において、分離層は、破壊性カプセ
ル内に硬化性樹脂成分と硬化剤成分とを交互に順次充填
していくことにより、硬化性樹脂成分と硬化剤成分との
境界において硬化性樹脂と硬化剤とが反応して固化した
樹脂層として形成される。この分離層の厚さは、前記し
たように硬化性樹脂のゲル化時間、硬化性樹脂成分の粘
度および硬化剤成分中の希釈剤の種類・量や、骨材成分
の平均粒径を調整することにより、調整することができ
る。

【００２３】本発明において、破壊性カプセルへの硬化
性樹脂成分層および硬化剤成分層の形成順序には特に制
限はないが、両層をそれぞれ２層以上形成する。２層未
満ではアンカー打設時に硬化性樹脂成分と硬化剤との混
合が不充分となり、目的とするアンカーの固着強度が得
られない場合がある。一方、両層の形成数が多ければ硬
化性樹脂成分と硬化剤との混合は良好となるが、分離層
の形成に消費される硬化性樹脂および硬化剤の量が多く
なるので、実用的にはそれぞれ、好ましくは３〜１０
層、より好ましくは４〜５層である。

【００２４】本発明において、破壊性カプセルへの硬化
性樹脂成分層および硬化剤成分層の所望の層数を形成し
た最上層の上に、さらに骨材成分層を形成し、カプセル
内の空隙部を埋めるとともに、各成分を充填後のカプセ
ルの加熱による溶融封止時の熱を硬化性樹脂成分および
／または硬化剤成分から遮断してもよい。

【００２５】本発明のアンカー固着用カプセルは、破壊
性カプセルに、硬化性樹脂成分および硬化剤成分を両成
分の供給ノズルから交互に供給する方法、破壊性カプセ
ルを回転または直進する搬送装置で間欠的にカプセルを
移動させて所定位置で両成分を供給する方法などで両成
分の所望の層数を充填する。骨材成分を最終段階で充填
してもよい。次いで、カプセル上部開口部を加熱溶融し
て封止することにより製造することができる。

【００２６】その後、静置することにより、各層間に分
離層が形成される。分離層が形成されるまでカプセルに
大きな振動、衝撃など付与することは好ましくはない
が、各層を充填するための搬送、工程内移動程度の振動
により分離層の形成が妨げられ、製品に悪影響を及ぼす
ことはほとんどない。

【００２７】

【実施例】以下に、本発明を実施例および比較例により
さらに詳細に説明する。カプセルの製造 実施例１ 直径１３ｍｍ、高さ１３０ｍｍの有底ガラス容器に、硬
化性樹脂成分および硬化剤成分を交互に充填したのち、
最上層に骨材成分を充填して、ガラス容器の開口部を溶
融、封止し、分離層を介して硬化性樹脂成分層および硬
化剤成分層がそれぞれ４層形成された、封止後の高さが
１００ｍｍの、図１に示すような本発明のアンカー固着
用カプセルを製造した。使用した各成分を下記に示す。

【００２８】硬化性樹脂成分：ビスフェノール系不飽和
ポリエステル樹脂（粘度；５，７００センチポイズ） 硬化剤成分： 硬化剤；過酸化ベンゾイル（濃度；５０重量％、フタル
酸ジシクロヘキシルによる希釈顆粒） 骨材；ガラスビーズ（平均粒径；０．２ｍｍ） 硬化剤／骨材＝３／２（重量混合比） 最上層骨材：ガラスビーズ（平均粒径；０．２ｍｍ） ここで、硬化性樹脂成分と硬化剤成分の重量比は、２：
１となるように、各部分の充填量を決めた。

【００２９】比較例１ 実施例１で使用したものと同一寸法の有底ガラス容器
に、最初に硬化剤成分を、次いで、不飽和ポリエステル
樹脂を充填したのち、実施例１と同様にガラス容器の開
口部を溶融、封止して静置し、図２に示すように分離層
を介して硬化性樹脂成分層および硬化剤成分層が存在す
る比較用のアンカー固着用カプセルを製造した。各成分
として、市販のアンカー固着用カプセルに使用されてい
るものと同種の不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤成分
（過酸化ベンゾイルと無水硫酸カルシウムとの混合物）
を使用したが、硬化性樹脂／硬化剤比は本発明品と同一
とした。

【００３０】評価試験 試験例１および比較試験例１ 圧縮強度２１０ｋｇｆ／ｃｍ² の１，０００×１，００
０×６００ｍｍのコンクリートブロックに、直径１５ｍ
ｍ、深さ１１０ｍｍの穿孔を行い、孔をブロワー、ブラ
シ、ブロワーの順で清掃し、実施例１で製造した本発明
のアンカー固着用カプセルおよび比較例１で製造した比
較用のアンカー固着用カプセルを図１および図２に示す
矢印の方向に挿入した。次いで、Ｍ１２×長さ１６０ｍ
ｍの寸切りボルト（ＳＮＢ７）を１．５ｋｇのハンマー
で孔底まで打込み、２４時間後に引張り試験を行った。
それぞれ３点の測定結果および平均値は、表１のとおり
であった。

【００３１】

【表１】

【００３２】試験例２および比較試験例２ 試験例１と同一強度、同一寸法のコンクリートブロック
に、同一寸法の穿孔を行い、同一方法で清掃したのち、
孔に水を満たし、以下試験例１と同一条件の施工を行っ
た。２４時間後に実施した引張り試験結果を表２に示
す。

【００３３】

【表２】

【００３４】

【発明の効果】本発明のアンカー固着用カプセルは、硬
化性樹脂成分と硬化剤成分がカプセル内に分散配置され
ていることにより、従来品に比較して高固着強度が得ら
れるばかりでなく固着強度のばらつきも小さい。さら
に、孔に水を満たした場合においても固着強度の低下は
極めて小さい。本発明は、後施工アンカーにおいて高固
着強度の得られるアンカー固着用カプセルを提供するも
のであり、その産業上、特に土木建築分野における意義
は極めて大きい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施態様のカプセルの断面構成図で
ある。

【図２】従来技術による比較例で製造したカプセルの断
面構成図である。

【符号の説明】

１ 硬化性樹脂成分 ２ 硬化剤成分 ３ 分離層 ４ ガラス容器 ５ 骨材成分 ６ アンカーの打設方向を示す矢印

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宇都宮 徹 福井県坂井郡春江町沖布目第38号３番地 前田工繊株式会社内 (56)参考文献 特開 平６−57219（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−108882（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 破壊性カプセルならびにカプセル内に分
   離層を介して充填された硬化性樹脂成分、および粉末状
   または顆粒状の硬化剤成分からなるアンカー固着用カプ
   セルであって、前記分離層が、硬化性樹脂と硬化剤との
   反応により硬化した樹脂層であり、硬化性樹脂成分層と
   硬化剤成分層とがそれぞれ２層以上交互に充填され、前
   記硬化性樹脂成分と前記硬化剤成分との反応によるゲル
   化時間が、２５℃において３０秒ないし１０分、かつ前
   記硬化性樹脂成分が、３００〜５０，０００センチポイ
   ズの粘度を有するとともに、さらに前記破壊性カプセル
   内の最上層に粉末状または粒状の骨材成分層を有するこ
   とを特徴とするアンカー固着用カプセル。
2. 【請求項２】 硬化性樹脂成分が、不飽和ポリエステル
   樹脂またはエポキシアクリレート樹脂であって、硬化剤
   成分が、過酸化物からなる硬化剤および希釈剤を主成分
   とし、必要に応じて平均粒径が１ｍｍ以下の骨材を含む
   請求項１記載のアンカー固着用カプセル。