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JP3075712B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP3075712B2
JP3075712B2 JP10288134A JP28813498A JP3075712B2 JP 3075712 B2 JP3075712 B2 JP 3075712B2 JP 10288134 A JP10288134 A JP 10288134A JP 28813498 A JP28813498 A JP 28813498A JP 3075712 B2 JP3075712 B2 JP 3075712B2
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正昭 二本
信幸 稲葉
義幸 平山
幸雄 本多
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高密度磁気記録に
適する磁性膜を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在実用化されている磁気ディスク装置
は、面内磁気記録方式を採用している。面内磁気記録方
式では、ディスク基板面と平行な方向に磁化し易い面内
磁気記録媒体に、基板と平行な面内磁区を高密度に形成
することが技術課題となっている。この面内磁気記録媒
体の記録密度を伸ばすためには、保磁力を向上するとと
もに磁性膜厚を減少しなければならない。しかし、磁性
膜厚を小さくしすぎると熱の影響で記録磁化が減少した
り、消失する問題に遭遇する。このような磁化の熱揺ら
ぎによる影響が顕著になる磁性膜厚は、Co合金系では
20nm以下とされている。Co合金系磁性膜を用いた
記録媒体の高密度化を進めた場合、これまでのトレンド
を延長すると10Gb/in2以上の記録密度を実現す
るためには磁性膜の厚さを20nm以下にしなければな
らない見通しである。Co合金系磁性膜を用いて10G
b/in2以上の記録密度を実現するためには、一層の
高保磁力化を図るとともに磁性膜を構成する結晶粒の結
晶性を向上しなければならない。さらに望ましくは、結
晶粒径を記録密度の向上に見合って微細化し、かつ結晶
粒径分布を狭くすることが必要である。
【0003】Co合金からなる磁性膜の保磁力を向上す
るために、磁性膜と基板の間にCrやCr合金などの体
心立方(bcc)構造を持つ材料、あるいはNiAlな
どのB2構造を持つ下地層を設ける方法が採用されてい
る(David E. Laughlin, Y.C. Feng, David N. Lambet
h, Li-Lien Lee, Li Tang,“Design and crystallograp
hy of multilayered media" in Journal of Magnetism
and Magnetic Materials, Vol. 155, pp.146-150, 199
6)。また、磁性膜の保磁力を向上するためには、エピ
タキシャル成長するCo合金とbcc下地の格子定数の
条件をあわせるのが有効であることが知られている(N.
Inaba, A. Nakamura, T. Yamamoto, Y, Hosoe, M. Fut
amoto,“Magnetic and crystallographic properties o
f CoCrPt thin films formed on Cr-Ti single crystal
line underlayers" in Journal ofApplied Physics, Vo
l.79, No.8, pp.5354-5356, 1996)。さらにCo合金磁
性膜の結晶性を改善するためには、下地層と磁性膜の間
にCo合金磁性膜と同じ結晶構造を持つ非磁性の六方稠
密(hcp)材料からなる新たな下地を追加することが
有効であり(特開平4−321919号公報)、Co−
35at%Cr下地等がCo−Cr−Pt磁性膜用の下
地として用いられている(M. Futamoto, Y.Honda, Y. H
irayama, K. Itoh, H. Ide, Y. Maruyama, “High Dens
ity Magnetic Recording on Highly Oriented CoCr-All
oy Perpendicular Rigid Disk Media" in IEEE Transac
tions on Magnetics, Vol.32, No.5, pp.3789-3794, 19
96)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】10Gb/in2以上
の高密度磁気記録を可能とするためには、面内磁気記録
媒体においては高保磁力化と耐熱揺らぎ特性の向上が必
要である。本発明は、Co合金系、特にPtを含む磁性
膜を用いた磁気記録媒体で10Gb/in2以上の高密
度磁気記録の実現を容易ならしめることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】従来の面内磁気記録媒体
の耐熱揺らぎ特性を詳細に調べた結果、磁性膜の一部に
磁気異方性エネルギーの低い結晶性の劣る領域が形成さ
れ、この部分から記録磁化の劣化が進行することが判明
した。結晶性の劣る領域が存在すると媒体の保磁力も低
下することが分かった。さらに耐熱揺らぎ特性を改善す
るためには、磁性膜を構成する結晶粒の粒径分布を低減
することが効果的である。本発明は、磁性膜と基板との
間に設ける下地層を多層化し、最終的に磁性膜を構成す
る結晶粒の配向、粒径、及び結晶性を制御することによ
り上記目的を達成するものである。
【0006】面内磁気記録において最も一般的に使用さ
れ、また検討されている媒体の磁性膜材料は六方稠密
(hcp)構造を持つCo合金材料である。Co合金系
面内磁気記録媒体において、結晶性が低い領域は膜の成
長初期領域に存在する。この部分の結晶性は下地層に強
く影響される。本発明は、少なくとも2層からなる下地
層の構造を採用し、特に磁性膜と接する側の上層下地層
に選ばれた材料を用いることによって、磁性膜の結晶性
の問題を解決するものである。
【0007】図を参照して説明する。図1は、本発明を
実現するための媒体構造の一例を示す断面模式図であ
る。非磁性基板11上に、結晶の配向と粒径を制御する
ためのB2構造を持つ下層下地層12を形成する。Ni
Al,FeAl,FeV,CuZn,CoAlあるいは
CuPd規則相はB2構造を持つ材料であるが、これら
の材料からなる膜を基板上に形成すると(100)面が
基板と平行な配向膜が成長し易い性質がある。さらに、
このようなB2構造を持つ材料からなる膜を構成する結
晶粒の分布は、Cr,V,Nbなどの単体金属からなる
膜を形成した場合に比べて小さくなる傾向がある。B2
構造を持つ材料をスパッター法等で非磁性基板上に形成
すると、(112)配向膜が優先的に成長する。この上
にhcp構造を持つCo合金膜を形成すると、エピタキ
シャル成長により、(1 0 -1 0)面が基板と平行に成長
する。本発明では、下層下地層12上に、hcp構造を
持つCo−Rux−Cryの合金材料からなる非磁性もし
くは弱磁性の上層下地層13を形成する。ここで、5a
t%≦x≦65at%,35at%≧y≧0at%とす
る。
【0008】Co,Ruはhcp構造を持つ互いに全率
固溶する金属材料であり、Co中にRuが34at%以
上固溶すると非磁性に変化する。Coの金属原子半径
1.26オングストロームに比べてRuは大きい金属原
子半径1.32オングストロームを持つため、Co中の
Ru添加量を増すと、平均の金属原子半径は増大する。
磁気記録媒体の記録層に用いられるCo合金磁性膜はC
oにCr,Ta,Pt,Nb,B,Yなどの元素を添加
した材料が用いられ、合金磁性膜の平均の金属原子半径
は一般に純Coに比べて大きくなる。上層下地層に用い
る材料はCo合金と同様なhcp構造を持ち、かつエピ
タキシャル成長条件を整えるためには平均の金属原子半
径の差が小さいこと、さらに非磁性もしくは弱磁性であ
ることが必要である。記録層に用いるCo−Cr−T
a,Co−Cr−Pt,Co−Cr−Pt−Ta,Co
−Cr−Pt−Ta−Nb,Co−Cr−Pt−Ta−
Bなどの平均の原子半径は、本発明者の実験によれば
1.265〜1.290オングストロームの範囲にある
ことが分かった。特に、CoにPtを合金元素として添
加した媒体においては、Ptの金属原子半径が1.38
オングストロームと大きいため、Ptの添加量にほぼ比
例して平均の金属原子半径が増大する。Co−Ruの2
元系でこの範囲の原子半径にするためには、Co中にR
uを5〜65at%添加する必要があった。
【0009】Ruの添加量が5〜34at%の少ない領
域では、合金は磁性を示すため、非磁性化もしくは弱磁
性化するためにCrを添加する。Crの金属原子半径は
1.28オングストロームでCoと近い値をとるため、
Co中にCrを添加しても平均の金属原子半径はほとん
ど変化しない。Co中にCrを25at%以上添加する
と、Co−Cr合金は非磁性化する。RuのCoに対す
る添加量が5〜34at%の範囲では、Crを最大35
at%添加することにより、Co−Ru−Cr材料を非
磁性化もしくは弱磁性化する必要がある。下地として許
容できる弱磁性の範囲は、飽和磁化(Ms)が30em
u/cc以下であり、Co−Ru5−Cry合金の場合、
y>19at%に相当する。Coに添加するRu量に対
応して、Cr添加量を調整するのが有効である。Ru添
加量が30at%を超える範囲では、Cr添加量を0a
t%としてもMs<30emu/ccとなるため、Co
−Rux−CryにおけるCrの添加量の範囲としては、
34at%≧y≧0at%となる。ただ、Co−Rux
−Cry合金下地層を構成する結晶粒の粒径を揃えてか
つ結晶粒界を明確化して、下地層としての機能向上を図
るためにはCr添加量は、y≧5at%であることが望
ましい。Crを添加すると、合金中でCrが結晶粒界に
選択的に偏析することにより、上記の望ましい効果が生
ずる。
【0010】Co合金からなる記録磁性膜用の上層下地
層として、上記のCo−Rux−Cry合金を設けること
により、記録磁性膜を構成する結晶粒の結晶性を改善で
き、かつ保磁力の増大を図ることができる。磁性膜と上
層下地層の平均の金属原子半径の差が5%以下となるよ
うに、Co−Rux−CryにおけるRuの添加量の調整
を図ることにより、これらの効果を増幅させることがで
きる。上層下地層としてCo−Rux−Cry合金を設け
る場合、特に有効な記録用の磁性膜材料はPtを含むC
o合金であり、特にPtの添加量範囲として5at%〜
30at%の範囲の材料が好適である。この組成範囲の
Pt量を含むCo合金磁性膜は高い磁気異方性エネルギ
ーを持つ耐熱揺らぎ性の良い高保磁力の磁気記録媒体応
用に適当である。
【0011】Co−Rux−Cry合金膜の厚さは0.5
nm以上100nm以下、特に望ましい範囲は1nm以
上50nm以下である。0.5nm以下では下層下地層
の影響でCo−Rux−Cry合金膜に結晶歪が残るた
め、また100nm以上になると膜厚が厚くなることに
伴って発生する表面起伏が大きくなるため、高密度磁気
記録媒体として必要な媒体表面の平滑性を確保するのが
困難になる。
【0012】図2は、本発明の磁気記録媒体の他の例を
示す断面模式図である。非磁性基板21上に形成する下
層下地層22として、Cr,Vあるいはこれらの合金等
のbcc構造材料を用い、上層下地層23としてhcp
構造を持つCo−Rux−Cry(5at%≦x≦65a
t%,35at%≧y≧0at%)の合金材料を用いる
ことにより、類似の効果が生ずる。また、本発明の別の
応用形態として、下層下地としてbcc構造材料層を設
けた上に、B2構造を持つ材料層、hcp構造を持つC
o−Rux−Cry(5at%≦x≦65at%,35a
t%≧y≧0at%)の合金材料層を設け、その上にC
o合金からなる記録磁性膜層を設けても良い。あるい
は、下層下地層としてB2構造を持つ材料層、その上に
中間下地層としてCr,V及びこれらの合金等のbcc
構造材料層、上層下地層としてhcp構造を持つCo−
Rux−Cry(5at%≦x≦65at%,35at%
≧y≧0at%)の合金材料層を設け、その上にCo合
金からなる記録磁性膜層を設けても良い。
【0013】図3は、上記の効果に加えて、記録磁性膜
を構成する結晶の粒径分布を制御した磁気記録媒体を実
現するための媒体構造断面を示すものである。非磁性基
板31上にMgO,LiF等のNaCl型結晶構造を持
つ下層下地層32を形成する。MgO,LiF等の材料
膜は(100)配向膜が得られ易く、しかも結晶粒径の
分布が狭く粒径が揃いやすい。成膜の条件(基板温度、
成膜速度など)を調整することにより、10Gb/in
2以上の記録密度を実現するのに望ましい結晶粒径10
nm程度の下地層を容易に形成できる。中間下地層33
はB2構造を持つ材料からなり、上層下地層34はhc
p構造を持つCo−Rux−Cry(5at%≦x≦65
at%,35at%≧y≧0at%)の合金材料からな
る。この上に、hcp構造を持つCo合金からなる記録
層用の磁性膜35が形成される。
【0014】図4は、非磁性基板41とMgO,LiF
等のNaCl型結晶構造を持つ下層下地層43の接着力
を増強、あるいはNaCl構造を持つ材料層が(10
0)配向膜を形成しやすい条件を整えるために、Si,
Cr,Ti,Nb,Zr,Hf,Ta,SiOx,Zr
2,SiNもしくはこれらを主成分とする合金からな
る接着強化層42を設けた例を示すものである。接着強
化層としては、上記の材料の他に、例えばSi−30a
t%Cr,Si−15at%Ge,Nb−30at%Z
r,Si02+ZrO2,SiO2+MgOなどの合金や
混合物でも良い。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。 〔実施例1〕直径2.5インチのガラス基板を用いて、
直流マグネトロンスパッタ法によって、図1に示す断面
構造を持つ面内磁気記録媒体を作製した。基板11上
に、下層下地層12、上層下地層13、記録用磁性膜1
4、及び保護膜15をこの順序で形成した。下層下地用
にはNiAlターゲット、上層下地用にCo−Rux
Cryターゲット、記録磁性膜用にCo−21at%C
r−15at%Ptターゲット、保護膜用にカーボンタ
ーゲットを用いた。Co−Rux−Cryターゲット組成
はCo−50at%Ru合金ターゲット上にRuもしく
はCrペレットを置いた混合ターゲットを用いて、成膜
組成が3at%≦x≦70at%,40at%≧y≧0
at%の範囲になるように調整した。
【0016】スパッタのArガス圧力を3mTorr、
スパッターパワー10W/cm2、基板温度250℃の
条件でNiAl膜を15nm、上層下地層を5nm、磁
性膜を16nm、カーボン膜を8nmの厚さ形成した。
潤滑膜としてパーフロロポリエーテル系の膜を塗布し
た。作成した試料の上層下地層の組成として以下の結果
を得た。Co−10at%Ru,Co−20at%R
u,Co−30at%Ru,Co−35at%Ru,C
o−40at%Ru,Co−50at%Ru,Co−6
0at%Ru,Co−65at%Ru,Co−75at
%Ru,Co−85at%Ru,Co−10at%Ru
−5at%Cr,Co−20at%Ru−5at%C
r,Co−30at%Ru−5at%Cr,Co−50
at%Ru−5at%Cr,Co−65at%Ru−5
at%Cr,Co−75at%Ru−5at%Cr,C
o−30at%Ru−10at%Cr,Co−60at
%Ru−10at%Cr,Co−10at%Ru−20
at%Cr,Co−20at%Ru−20at%Cr,
Co−40at%Ru−20at%Cr,Co−10a
t%Ru−30at%Cr,Co−25at%Ru−3
0at%Cr,Co−40at%Ru−30at%C
r,Co−5at%Ru−35at%Cr,Co−25
at%Ru−35at%Cr,Co−5at%Ru−4
0at%Cr,Co−30at%Ru−30at%C
r。
【0017】比較試料として、NiAl下層下地層上に
直接Co−21at%Cr−15at%Pt磁性膜を形
成した試料(比較例1)、及びNiAl下層下地層上に
Co−35at%Crからなる非磁性の上層下地層を設
けてCo−21at%Cr−15at%Pt磁性膜を形
成した試料(比較例2)を作製した。これらの試料にお
いて、上層下地層及び記録用磁性膜の平均の金属原子半
径をX線回折法で、保磁力を振動型磁力計(VSM)で
測定した。また、記録再生特性の評価を記録再生分離型
の磁気ヘッドを用いて行なった。記録ヘッドのギャップ
長は0.2μm、再生用のスピンバルブヘッドのシール
ド間隔は0.2μm、測定時のスペーシングは0.04
μmとした。記録信号の経時変化の測定は、350kF
CIの磁気記録信号の記録直後の再生出力(St=0)と
100時間後の再生出力(St=100)の比として評価し
た。
【0018】図5に、上層下地層のCo−Ru−Cr合
金系のそれぞれ平均の金属原子半径の測定値とCo−2
1at%Cr−15at%Pt磁性膜の平均金属原子半
径の値を示す。Co−Ru−Cr合金系の金属原子半径
は、Ru濃度に依存して増大した。磁性膜の金属原子半
径とほとんど等しくなるRu濃度は20−40at%R
uの範囲となった。
【0019】図6は、Co−Ru−Cr合金系のRu濃
度と媒体保磁力の関係を示す。10Gb/in2以上の
記録密度実現に必要と考えられる保磁力が2.5kOe
以上となるRuの組成範囲は5〜65at%であり、し
かも、この範囲であってもCr濃度が35at%を超え
ると保磁力は2.5kOe以下になることが分かった。
なお、Ruの組成範囲を10〜30at%とすると3.
0kOe以上の保磁力が得られる。これに対し、比較例
1、2の試料の保磁力はいずれも2.5kOe以下であ
り、本発明が高い保磁力を得るのに有効であることが確
認された。
【0020】図7は、350kFCIの記録信号の10
0時間後の出力比率を示す図である。0.9以上の比率
が得られている範囲は、Co−Rux−Cry合金におい
て5at%≦x≦65at%,35at%≧y≧0であ
ることが確認された。なお、10at%≦x≦30at
%とすると、0.95以上の比率が得られることが分か
る。また、図6及び図7の結果を比較することにより、
同じ記録用磁性膜を用いた媒体においては、高い保磁力
を示す媒体は記録信号の安定性も良いことが分かった。
本発明による磁気記録媒体は、比較例1、2のいずれに
比べても記録信号の減少比率が改善されていることが分
かった。
【0021】〔実施例2〕実施例1において、下層下地
層としてbcc構造を持つ材料を用い、かつ記録用の磁
性膜としてCo−17at%Cr−20at%Pt−3
at%Taを用いた以外は、膜厚、組成及び形成プロセ
ス条件を同様にして、図2に示す断面構造を持つ磁気記
録媒体を作成した。ここでbcc構造を持つ材料とし
て、Cr,Cr−50at%V,Cr−5at%Ti,
Cr−10at%Nb,Cr−15at%Moを用い
た。
【0022】比較試料として上層下地層を導入しない試
料を作成した。媒体の保磁力を測定した結果、表1に示
す結果を得た。本発明で提案する下地層を有する磁気記
録媒体は大きな保磁力を有していることが分かる。N
o.9,10,16,27,29の試料のように、下地
層が本発明の提案から外れる場合には、磁気記録媒体の
性能向上への寄与がそれほど大きくならない。
【0023】
【表1】
【0024】〔実施例3〕実施例1において、B2構造
を持つ下層下地層としてFeAl,FeV,CuZn,
CoAl及びCuPd材料を用いた以外の条件を同様に
して磁気記録媒体を作成した。媒体保磁力の向上効果と
記録磁気信号の時間変化に関する安定性を調べた結果、
実施例1と類似の結果を得、本発明の有効性を確認し
た。
【0025】〔実施例4〕下層下地層としてNaCl構
造を持つ材料を、中間下地層としてB2構造を持つ規則
合金層を、上層下地層としてCo−Ru−Cr合金膜を
用い、かつ記録用の磁性膜としてCo−18at%Cr
−15at%Pt−4at%Nbを用いて図3に示す断
面構造を持つ磁気記録媒体を作成した。NaCl構造を
持つ材料としてはMgO及びLiFを用いた。下層下地
層の成膜法として高周波スパッタ法を採用した以外は、
実施例1と同様の膜厚、組成及び形成プロセス条件とし
た。
【0026】比較試料として、NaCl構造を持つ下層
下地層を導入しない試料で、しかも上層下地層としてC
o−30at%Ru−5at%Crを用いた試料(比較
例)を作成した。媒体の保磁力を測定した結果、表2に
示す結果を得た。本発明の磁気記録媒体は比較例に比し
て大きな保磁力を有していることが分かる。なお、N
o.9,10,16,27のように上部下地層の組成範
囲が本発明で提案する範囲から外れる場合には、磁気記
録媒体の性能向上に対する寄与がそれほど大きくならな
い。
【0027】
【表2】
【0028】また、NaCl構造を持つ材料のMgOを
下層下地層に設けてその上に上層下地層としてCo−3
0at%Ru−5at%Crを設けた試料と比較例の記
録用磁性膜を構成する結晶粒の分布を測定し、図8に示
す結果を得た。MgOからなる下層下地を形成した試料
の方が結晶粒の分布が狭く粒径が揃っており、高密度磁
気記録媒体としてより望ましい特性を有していることが
分かった。
【0029】〔実施例5〕直径2.5インチのシリコン
基板を用いて、高周波スパッタ法及び直流マグネトロン
スパッタ法によって、図4に示す断面構造を持つ磁気記
録媒体を作製した。基板41上に、接着強化層42とし
てSi,Cr,Ti,Nb,Zr,Ta,Hf,SiO
2,ZrO2,SiN,Si−25at%Cr,Si−5
at%Ti,SiO2+ZrO2を、下層下地層43とし
てMgOを、中間下地層44としてCrを、上層下地層
45としてCo−20at%Ru−15at%Crを、
記録用磁性膜46としてCo−20at%Cr−13a
t%Pt−2at%Nbを、そして保護膜47としてカ
ーボンをこの順序で形成した。ここで非導電材料のSi
2,SiN,SiO2+ZrO2の膜形成には高周波ス
パッタ法をそれ以外の膜形成には直流マグネトロンスパ
ッタ法を採用した。スパッタのArガス圧力を3mTo
rr、スパッターパワー10W/cm2、基板温度28
0℃の条件で接着強化層を2nm、下層下地層を5n
m、中間下地層を10nm、上層下地層を3nm、磁性
膜を15nm、保護膜を7nmの厚さ形成し、磁気記録
媒体を形成した。比較試料として、接着強下層を設けな
い以外は同様の構造の媒体を作製した。媒体の保磁力を
VSMにより、また接着強度をAl23−TiC球面摺
動子で測定した。摺動回数が105回で媒体の剥離が認
められない場合を○、それ以下で剥離が認められた場合
を×とした。測定した結果をそれぞれ表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、磁気記録媒体の高保磁
力化と耐熱揺らぎ安定性の確保が可能となることによ
り、特に10Gb/in2以上の高密度磁気記録が可能
となり、装置の小型化や大容量化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気記録媒体の一例の断面模式
図。
【図2】本発明による磁気記録媒体の他の例の断面模式
図。
【図3】本発明による磁気記録媒体の他の例の断面模式
図。
【図4】本発明による磁気記録媒体の他の例の断面模式
図。
【図5】上層下地層の組成と平均金属原子半径の関係を
示す図。
【図6】上層下地層の組成と媒体保磁力の関係を示す
図。
【図7】上層下地層の組成と磁気記録信号の出力比率の
関係を示す図。
【図8】媒体の結晶粒の直径の分布を示す図。
【符号の説明】
11…非磁性基板、12…下層下地層、13…上層下地
層、14…磁性膜、15…保護膜、21…非磁性基板、
22…下層下地層、23…上層下地層、24…下磁性
膜、25…保護膜、31…非磁性基板、32…下層下地
層、33…中間下地層、34…上層下地層、35…磁性
膜、36…保護膜、41…非磁性基板、42…接着強化
層、43…下層下地層、44…中間下地層、45…上層
下地層、46…磁性膜、47…保護膜
フロントページの続き (72)発明者 本多 幸雄 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (72)発明者 竹内 輝明 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社 日立製作所 中央研究所内 (56)参考文献 特開 平11−296833(JP,A) 特開2000−99935(JP,A) 特開 平4−321919(JP,A) 特開 昭61−113122(JP,A) 特開 平10−334444(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/738 G11B 5/64

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板と該非磁性基板上に下地層を
    介して形成されたCo合金磁性膜及び保護膜を備える磁
    気記録媒体において、前記下地層は前記基板に近い側の
    下層下地層及び磁性膜に近い側の上層下地層の2層構造
    を有し、前記下層下地層はB2構造を持つ規則合金層か
    らなり、前記上層下地層は六方稠密構造を持つCo−R
    x−Cry(5at%≦x≦65at%,35at%≧
    y≧0at%)の合金材料からなることを特徴とする磁
    気記録媒体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の磁気記録媒体において、
    前記B2構造を持つ規則合金層はNiAl,FeAl,
    FeV,CuZn,CoAl,CuPdから選ばれた材
    料であることを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 非磁性基板と該非磁性基板上に下地層を
    介して形成されたCo合金磁性膜及び保護膜を備える磁
    気記録媒体において、前記下地層は前記基板に近い側の
    下層下地層及び磁性膜に近い側の上層下地層の2層構造
    を有し、前記下層下地層は体心立方構造を持つ金属膜か
    らなり、前記上層下地層は六方稠密構造を持つCo−R
    x−Cry(5at%≦x≦65at%,35at%≧
    y≧0at%)の合金材料からなることを特徴とする磁
    気記録媒体。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の磁気記録媒体において、
    前記体心立方構造を持つ金属膜はCr,Cr−Ti,C
    r−Mo,Cr−Nb,Cr−Vから選ばれた材料であ
    ることを特徴とする磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 非磁性基板と該非磁性基板上に下地層を
    介して形成されたCo合金磁性膜及び保護膜を備える磁
    気記録媒体において、前記下地層は基板に近い側から下
    層、中間、上層の3層構造を有し、前記下層下地層はM
    gOもしくはLiF、前記中間下地層はB2構造を持つ
    規則合金層もしくは体心立方構造を持つ金属膜、前記上
    層下地層は六方稠密構造を持つCo−Rux−Cry(5
    at%≦x≦65at%,35at%≧y≧0at%)
    の合金材料からなることを特徴とする磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の磁気記録媒体において、
    前記基板と前記下層下地層の間にSi,Cr,Ti,N
    b,Zr,Hf,Ta,SiOx,ZrO2,SiNも
    しくはこれらを主成分とする合金からなる接着強化層を
    設けたことを特徴とする磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項記載の磁気
    記録媒体において、前記磁性膜はPtを5at%以上、
    30at%以下含む六方稠密構造を持つCo合金材料か
    らなることを特徴とする磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項記載の磁気
    記録媒体において、前記上層下地層の厚さが1nm以
    上、50nm以下であることを特徴とする磁気記録媒
    体。
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