JP2932966B2 - 高純度ガス用フェライト系ステンレス鋼材 - Google Patents
高純度ガス用フェライト系ステンレス鋼材Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高純度ガス用高Crフェ
ライト系ステンレス鋼材、詳述すれば、半導体製造プロ
セスなどで使用される高純度ガス用の配管などの製造に
使用される高Crフェライト系ステンレス鋼材に関する。
ライト系ステンレス鋼材、詳述すれば、半導体製造プロ
セスなどで使用される高純度ガス用の配管などの製造に
使用される高Crフェライト系ステンレス鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体および液晶製造分野においては、
近年、高集積化が進み、超LSIと称されるディバイス
では、幅1μm以下の微細配線パターンの加工が必要と
されている。このような超LSI製造プロセスでは、微
少な塵や微量不純物ガスが配線パターンに付着、吸着し
て回路不良の原因となるため、使用する反応ガスおよび
キャリヤガスは共に、高純度であること、すなわちガス
中の微粒子および不純物ガスの非常に少ないことが必要
とされる。従って、その高純度ガス用配管および部材に
おいては、内面からの微粒子 (パーティクル) およびガ
スの放出が極力少ないことが要求される。
近年、高集積化が進み、超LSIと称されるディバイス
では、幅1μm以下の微細配線パターンの加工が必要と
されている。このような超LSI製造プロセスでは、微
少な塵や微量不純物ガスが配線パターンに付着、吸着し
て回路不良の原因となるため、使用する反応ガスおよび
キャリヤガスは共に、高純度であること、すなわちガス
中の微粒子および不純物ガスの非常に少ないことが必要
とされる。従って、その高純度ガス用配管および部材に
おいては、内面からの微粒子 (パーティクル) およびガ
スの放出が極力少ないことが要求される。
【0003】また、半導体製造用ガスとしては窒素、ア
ルゴン等の不活性ガス以外にいわゆる特殊材料ガスと呼
ばれるものも多数使用される。この特殊材料ガス用の配
管等に求められる性質としては、塩素、塩化水素、臭化
水素などの腐食性ガスに対しては耐食性、シランなど化
学的に不安定なガスに対しては非触媒分解性等が必要と
される。
ルゴン等の不活性ガス以外にいわゆる特殊材料ガスと呼
ばれるものも多数使用される。この特殊材料ガス用の配
管等に求められる性質としては、塩素、塩化水素、臭化
水素などの腐食性ガスに対しては耐食性、シランなど化
学的に不安定なガスに対しては非触媒分解性等が必要と
される。
【0004】すでに従来より、これらの性能は、酸素分
圧を調整した雰囲気中でステンレス鋼を加熱し、鋼表面
にCr酸化物皮膜を生成させることにより向上することが
知られている。「非腐食性・非触媒性Cr2O3 ステンレス
特殊配管技術」、第24回超LSIウルトラクリーンテク
ノロジーワークショップ (半導体基板技術研究会主催、
p.55〜67、1993年6月5日) 参照。なお、この論文にお
ける対象材質はSUS316L と推定される。耐食性および非
触媒性に対する要求は、ガス配管系に限らず、ウェハー
上に微細加工を行う各種半導体製造装置用のステンレス
鋼においても同様である。
圧を調整した雰囲気中でステンレス鋼を加熱し、鋼表面
にCr酸化物皮膜を生成させることにより向上することが
知られている。「非腐食性・非触媒性Cr2O3 ステンレス
特殊配管技術」、第24回超LSIウルトラクリーンテク
ノロジーワークショップ (半導体基板技術研究会主催、
p.55〜67、1993年6月5日) 参照。なお、この論文にお
ける対象材質はSUS316L と推定される。耐食性および非
触媒性に対する要求は、ガス配管系に限らず、ウェハー
上に微細加工を行う各種半導体製造装置用のステンレス
鋼においても同様である。
【0005】このような半導体製造用ガス配管および部
材は、塵や水分、不純物ガス成分の付着および吸着を低
減するため、内面粗さRmax として1μm以下まで平滑
化されている。この内面平滑化の方法としては、冷間抽
伸、機械研磨、化学研磨、電解研磨等およびそれらの組
合せが挙げられるが、Rmax 1μm以下の高平滑材は主
として電解研磨仕上げによって製造されている。表面平
滑化されたステンレス鋼にはその後、高純度水による洗
浄、高純度ガスによる乾燥が施されて、製品となる。
材は、塵や水分、不純物ガス成分の付着および吸着を低
減するため、内面粗さRmax として1μm以下まで平滑
化されている。この内面平滑化の方法としては、冷間抽
伸、機械研磨、化学研磨、電解研磨等およびそれらの組
合せが挙げられるが、Rmax 1μm以下の高平滑材は主
として電解研磨仕上げによって製造されている。表面平
滑化されたステンレス鋼にはその後、高純度水による洗
浄、高純度ガスによる乾燥が施されて、製品となる。
【0006】ここで、特許公開公報によって従来技術を
概観すると次の通りである。特開平4−65144 号公報に
は、ガス放出量の低減化を目的とした電解研磨処理を施
したステンレス鋼材表面に膜厚:75Å以上の非晶質酸化
皮膜が形成されている半導体製造装置用ステンレス鋼部
材が開示されている。
概観すると次の通りである。特開平4−65144 号公報に
は、ガス放出量の低減化を目的とした電解研磨処理を施
したステンレス鋼材表面に膜厚:75Å以上の非晶質酸化
皮膜が形成されている半導体製造装置用ステンレス鋼部
材が開示されている。
【0007】特開平3−274254号公報には、研磨した後
のステンレス鋼を不活性ガス雰囲気または真空中で加熱
前処理した後、所定条件のオゾン含有雰囲気中で加熱
し、緻密な酸化皮膜を形成した半導体製造装置用ステン
レス鋼部材が示されている。
のステンレス鋼を不活性ガス雰囲気または真空中で加熱
前処理した後、所定条件のオゾン含有雰囲気中で加熱
し、緻密な酸化皮膜を形成した半導体製造装置用ステン
レス鋼部材が示されている。
【0008】特開昭64−31956 号公報には、電解研磨し
たステンレス鋼部材を酸素含有量が25容量%以上の雰囲
気中、280 〜580 ℃で加熱し、部材表面に酸化皮膜を形
成することを特徴とする半導体製造装置用ステンレス鋼
部材の製造方法が開示されている。これらの管およびそ
の他の部材の材質は、いずれもオーステナイト系ステン
レス鋼で、なかでもSUS316L が主流となっている。
たステンレス鋼部材を酸素含有量が25容量%以上の雰囲
気中、280 〜580 ℃で加熱し、部材表面に酸化皮膜を形
成することを特徴とする半導体製造装置用ステンレス鋼
部材の製造方法が開示されている。これらの管およびそ
の他の部材の材質は、いずれもオーステナイト系ステン
レス鋼で、なかでもSUS316L が主流となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】すでに説明したよう
に、特殊材料ガスに対する耐食性および非触媒性はステ
ンレス鋼の表面にCr酸化物皮膜を生成させることにより
向上する。半導体製造用ガス配管および部材の製造方法
から考えて、このCr酸化物生成処理は、電解研磨によっ
て接ガス面を平滑化した後に行われるべきである。しか
し、従来のオーステナイトステンレス鋼では、Crの拡散
が遅いため、電解研磨後に酸化処理しても、十分な性能
を発揮するCr酸化皮膜を生成させることは困難である。
このCr酸化皮膜生成の困難さという問題は、非金属介在
物を低減することによっても解決されない。
に、特殊材料ガスに対する耐食性および非触媒性はステ
ンレス鋼の表面にCr酸化物皮膜を生成させることにより
向上する。半導体製造用ガス配管および部材の製造方法
から考えて、このCr酸化物生成処理は、電解研磨によっ
て接ガス面を平滑化した後に行われるべきである。しか
し、従来のオーステナイトステンレス鋼では、Crの拡散
が遅いため、電解研磨後に酸化処理しても、十分な性能
を発揮するCr酸化皮膜を生成させることは困難である。
このCr酸化皮膜生成の困難さという問題は、非金属介在
物を低減することによっても解決されない。
【0010】本発明の目的は、耐食性および非触媒性に
おいて高性能なCr酸化物皮膜を、その表面に有し、高純
度ガス配管等に使用されるステンレス鋼材を提供するこ
とにある。
おいて高性能なCr酸化物皮膜を、その表面に有し、高純
度ガス配管等に使用されるステンレス鋼材を提供するこ
とにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の化
学組成を有するステンレス鋼管の内面を電解研磨により
平滑化し、その後、種々の酸化処理を施して、酸化皮膜
の性状、耐食性および非触媒性を調査した。
学組成を有するステンレス鋼管の内面を電解研磨により
平滑化し、その後、種々の酸化処理を施して、酸化皮膜
の性状、耐食性および非触媒性を調査した。
【0012】その結果、SUS316L ステンレス鋼に比べて
高Crかつ低Niの場合、すなわちフェライト鋼では、電解
研磨した後の適切な酸化処理により、酸素以外の構成元
素において90原子%以上のCrを含有する結晶粒直径200n
m 以下の酸化物皮膜が容易に生成し、耐食性および非触
媒性がともに優れていることを見い出した。
高Crかつ低Niの場合、すなわちフェライト鋼では、電解
研磨した後の適切な酸化処理により、酸素以外の構成元
素において90原子%以上のCrを含有する結晶粒直径200n
m 以下の酸化物皮膜が容易に生成し、耐食性および非触
媒性がともに優れていることを見い出した。
【0013】ここに、本発明の要旨とするところは、重
量%で、 Cr:20〜35%、Mo:0.1 〜5%、Ni:0〜3%、Cu:0
〜0.5 %、 W:0〜0.5 %、Ti:0〜1%、Nb:0〜1%、 残部Feおよび不可避的不純物から成り、上記不可避不純
物中において C:0.03%以下、Si:0.5 %以下、Mn:0.2 %以下、 Al:0.5 %以下、P:0.02%以下、S:0.003 %以下、 O:0.01%以下、N: 0.03%以下 である鋼組成を有し、電解研磨処理を施したフェライト
系ステンレス鋼材表面に、厚さ7nm以上50nm以下で、酸
素以外の構成元素において90原子%以上のCrを含有する
結晶粒直径200nm 以下の酸化物からなる酸化皮膜を備え
たことを特徴とする耐食性、非触媒性にすぐれた、高純
度ガス用高Crフェライト系ステンレス鋼材である。
量%で、 Cr:20〜35%、Mo:0.1 〜5%、Ni:0〜3%、Cu:0
〜0.5 %、 W:0〜0.5 %、Ti:0〜1%、Nb:0〜1%、 残部Feおよび不可避的不純物から成り、上記不可避不純
物中において C:0.03%以下、Si:0.5 %以下、Mn:0.2 %以下、 Al:0.5 %以下、P:0.02%以下、S:0.003 %以下、 O:0.01%以下、N: 0.03%以下 である鋼組成を有し、電解研磨処理を施したフェライト
系ステンレス鋼材表面に、厚さ7nm以上50nm以下で、酸
素以外の構成元素において90原子%以上のCrを含有する
結晶粒直径200nm 以下の酸化物からなる酸化皮膜を備え
たことを特徴とする耐食性、非触媒性にすぐれた、高純
度ガス用高Crフェライト系ステンレス鋼材である。
【0014】
【作用】本発明における鋼材の化学組成、酸化皮膜の性
状の限定理由を説明する。本発明においてステンレス鋼
とは、Crを13%以上含有するFe基合金を指す。ステンレ
ス鋼を酸化処理した際に特にフェライト系ステンレス鋼
でCr酸化皮膜が容易に生成する理由は、次のように考え
られる。
状の限定理由を説明する。本発明においてステンレス鋼
とは、Crを13%以上含有するFe基合金を指す。ステンレ
ス鋼を酸化処理した際に特にフェライト系ステンレス鋼
でCr酸化皮膜が容易に生成する理由は、次のように考え
られる。
【0015】すなわち、Cr酸化皮膜の生成は、ステンレ
ス鋼の内部から酸化反応がおこる表面へのCrの拡散によ
り支配されるが、フェライト中ではCrの拡散速度がオー
ステナイト中に比べて極めて速い。したがって、フェラ
イト系ステンレス鋼中のCrの拡散速度は、オーステナイ
ト単独組織からなるオーステナイト系ステンレス鋼に比
べて速くなるためである。
ス鋼の内部から酸化反応がおこる表面へのCrの拡散によ
り支配されるが、フェライト中ではCrの拡散速度がオー
ステナイト中に比べて極めて速い。したがって、フェラ
イト系ステンレス鋼中のCrの拡散速度は、オーステナイ
ト単独組織からなるオーステナイト系ステンレス鋼に比
べて速くなるためである。
【0016】次に、本発明においてフェライト系ステン
レス鋼の化学組成を上述のように規定した理由を述べ
る。なお、本明細書において「%」は特にことわりがな
い限り、「重量%」を意味する。
レス鋼の化学組成を上述のように規定した理由を述べ
る。なお、本明細書において「%」は特にことわりがな
い限り、「重量%」を意味する。
【0017】Cr:Crはステンレス鋼自体の耐食性を向上
させるが、本発明の目的であるCr酸化物皮膜の生成を容
易にする意味から特に重要である。20%未満ではCr酸化
皮膜の生成が不十分であり、35%超では金属間化合物が
析出しやすく靱性が劣化する。さらに好ましくは24〜30
%である。
させるが、本発明の目的であるCr酸化物皮膜の生成を容
易にする意味から特に重要である。20%未満ではCr酸化
皮膜の生成が不十分であり、35%超では金属間化合物が
析出しやすく靱性が劣化する。さらに好ましくは24〜30
%である。
【0018】Mo:Moは耐食性向上に効果を有する元素で
あり、腐食性ガスに対する耐食性を向上させるために添
加する。Mo:0.1 %未満ではその効果が現われず、5%
超では金属間化合物を生じ靱性を劣化させる。さらに好
ましくは1〜4%である。
あり、腐食性ガスに対する耐食性を向上させるために添
加する。Mo:0.1 %未満ではその効果が現われず、5%
超では金属間化合物を生じ靱性を劣化させる。さらに好
ましくは1〜4%である。
【0019】Ni:Niはフェライト系ステンレス鋼では靱
性を向上するために有効である。しかし、3%超ではオ
ーステナイト相を生じ耐食性が低下するばかりでなく、
オーステナイト相が生じるとその上ではCr酸化皮膜が生
成しない。したがって、Ni含有量は0〜3%である。
性を向上するために有効である。しかし、3%超ではオ
ーステナイト相を生じ耐食性が低下するばかりでなく、
オーステナイト相が生じるとその上ではCr酸化皮膜が生
成しない。したがって、Ni含有量は0〜3%である。
【0020】Cu、W:これらの元素も、ステンレス鋼の耐
食性を改善するために必要に応じて添加することがで
き、それぞれ0.5 %超の添加は却って、靱性、熱間加工
性の劣化を招くことから、本発明においてそれぞれ0 〜
0.5 %と規定する。
食性を改善するために必要に応じて添加することがで
き、それぞれ0.5 %超の添加は却って、靱性、熱間加工
性の劣化を招くことから、本発明においてそれぞれ0 〜
0.5 %と規定する。
【0021】Ti、Nb:フェライト系ステンレス鋼に対し
ては、Cr析出物を生成する有害なCおよびNを安定化す
るために、安定な炭窒化物を生成するTiおよびNbの添加
が有効である。それぞれ1%超では靱性を劣化させる。
さらに好ましくはそれぞれ0.5 %以下である。ここに、
本発明にかかるフェライト系ステンレス鋼において不純
物として各種元素が含有されるが、それらについては次
のように規定される。
ては、Cr析出物を生成する有害なCおよびNを安定化す
るために、安定な炭窒化物を生成するTiおよびNbの添加
が有効である。それぞれ1%超では靱性を劣化させる。
さらに好ましくはそれぞれ0.5 %以下である。ここに、
本発明にかかるフェライト系ステンレス鋼において不純
物として各種元素が含有されるが、それらについては次
のように規定される。
【0022】C:Cは溶接部においてCr炭化物の析出に
より耐食性を低下させるため低減することが必要であ
り、0.03%以下とした。望ましくは0.02%以下である。
より耐食性を低下させるため低減することが必要であ
り、0.03%以下とした。望ましくは0.02%以下である。
【0023】Si:Siは溶製工程において、ステンレス鋼
中Oを低減するいわゆる脱酸作用を有しているが、同時
に鋼中で酸化物系介在物を生成するため、低減する必要
があり、0.5 %以下とした。さらに、望ましくは0.2 %
以下である。
中Oを低減するいわゆる脱酸作用を有しているが、同時
に鋼中で酸化物系介在物を生成するため、低減する必要
があり、0.5 %以下とした。さらに、望ましくは0.2 %
以下である。
【0024】Mn:MnもSiと同様、溶製工程において、ス
テンレス鋼中Oを低減するいわゆる脱酸作用を有してい
る。しかしながら、Mnを含有すると溶接時に多量の発塵
が発生するので低減が必要である。0.2 %超で、発塵量
が顕著に増加するため0.2 %以下とした。さらに望まし
くは0.1 %以下である。
テンレス鋼中Oを低減するいわゆる脱酸作用を有してい
る。しかしながら、Mnを含有すると溶接時に多量の発塵
が発生するので低減が必要である。0.2 %超で、発塵量
が顕著に増加するため0.2 %以下とした。さらに望まし
くは0.1 %以下である。
【0025】S:Sは、極微量でも硫化物系介在物を生
成し耐食性に極めて有害である。S:0.003 重量%以下
とした。さらに望ましくは0.002 %以下である。
成し耐食性に極めて有害である。S:0.003 重量%以下
とした。さらに望ましくは0.002 %以下である。
【0026】P:Pは、熱間加工性に対して有害である
ので低減する必要がある。しかしながら、Pの低減に関
しては、鋼中Pの極低化は実製造上は困難である。低P
のステンレス鋼の製造に必要な、P含有量の低い原料は
高価であるため、経済的でない。従って、Pについては
性能上悪影響のない程度とするのが望ましく、P:0.02
重量%以下とした。
ので低減する必要がある。しかしながら、Pの低減に関
しては、鋼中Pの極低化は実製造上は困難である。低P
のステンレス鋼の製造に必要な、P含有量の低い原料は
高価であるため、経済的でない。従って、Pについては
性能上悪影響のない程度とするのが望ましく、P:0.02
重量%以下とした。
【0027】Al:AlもSi、Mnと同様、溶製工程におい
て、ステンレス鋼中Oを低減するいわゆる脱酸作用を有
しているが、同時に鋼中で酸化物介在物を生成するた
め、低減する必要がある。また、Alは他の合金元素と比
較して極めて酸化し易いため溶接時に、溶融金属表面で
管内雰囲気中の微量酸素と反応してAl酸化物を生成し溶
接時発塵の原因となる。従って0.5 重量%以下に規制す
る。
て、ステンレス鋼中Oを低減するいわゆる脱酸作用を有
しているが、同時に鋼中で酸化物介在物を生成するた
め、低減する必要がある。また、Alは他の合金元素と比
較して極めて酸化し易いため溶接時に、溶融金属表面で
管内雰囲気中の微量酸素と反応してAl酸化物を生成し溶
接時発塵の原因となる。従って0.5 重量%以下に規制す
る。
【0028】O:Oは、鋼中で酸化物系介在物を形成す
る元素であり、極力低減する必要がある。酸化物系介在
物は、溶接時の溶接部で、凝集、粗大化して、発塵の原
因となるため低減する必要があり0.01重量%以下とし
た。さらに望ましくは0.005 %以下である。
る元素であり、極力低減する必要がある。酸化物系介在
物は、溶接時の溶接部で、凝集、粗大化して、発塵の原
因となるため低減する必要があり0.01重量%以下とし
た。さらに望ましくは0.005 %以下である。
【0029】N:Nはフェライトステンレス鋼では微量
含有してもCr窒化物を生じ、靱性を劣化させるため低減
する必要がある。0.03%以下、さらに好ましくは0.01%
以下とする。
含有してもCr窒化物を生じ、靱性を劣化させるため低減
する必要がある。0.03%以下、さらに好ましくは0.01%
以下とする。
【0030】次に、このような鋼組成のフェライト系ス
テンレス鋼は、管、板材など適宜形状の鋼材に加工して
から例えばRmax 1μm以下にまでの電解研磨、乾燥、
そして加熱処理を行い、部材表面に適宜酸化皮膜を形成
してから高純度ガス用に使用されるのである。
テンレス鋼は、管、板材など適宜形状の鋼材に加工して
から例えばRmax 1μm以下にまでの電解研磨、乾燥、
そして加熱処理を行い、部材表面に適宜酸化皮膜を形成
してから高純度ガス用に使用されるのである。
【0031】本発明の上記酸化皮膜は、厚さ7nm以上50
nm以下で、酸素以外の構成元素において90原子%以上の
Crを含有する結晶粒直径200nm 以下の酸化物から構成さ
れる。
nm以下で、酸素以外の構成元素において90原子%以上の
Crを含有する結晶粒直径200nm 以下の酸化物から構成さ
れる。
【0032】ここに、本発明の好適態様によれば、その
ときの加熱処理は、水素ガスに1ないし100ppmのH20 を
含有させた雰囲気中で500 〜700 ℃×30〜200 分加熱す
ることで行ってもよい。
ときの加熱処理は、水素ガスに1ないし100ppmのH20 を
含有させた雰囲気中で500 〜700 ℃×30〜200 分加熱す
ることで行ってもよい。
【0033】本発明において、酸化皮膜の酸化物の結晶
粒の直径が200nm を超える場合、表面性状に凹凸ができ
耐ガス放出性は十分には改善されない。また、皮膜の気
孔化が生じ、腐食性ガスが地金表面に達するため耐食性
も十分には改善されない。
粒の直径が200nm を超える場合、表面性状に凹凸ができ
耐ガス放出性は十分には改善されない。また、皮膜の気
孔化が生じ、腐食性ガスが地金表面に達するため耐食性
も十分には改善されない。
【0034】ステンレス鋼材表面の酸化皮膜の厚さに関
しては、7nm未満では耐食性の改善が十分ではなく、一
方、50nmを超えると水分脱離特性が劣化することがあ
る。これは、7nm未満では酸化皮膜が均一に鋼材表面を
覆えないことがあり、そのためその箇所に欠陥が生じる
ため、この欠陥部から腐食を発生するからである。ま
た、50nmを超えると酸化皮膜のミクロ的表面積が増加す
るため、水分の吸着が生じやすくなる。酸化皮膜中のCr
含有率が90原子%未満では、耐食性、水分脱離特性がと
もに向上しないことがある。
しては、7nm未満では耐食性の改善が十分ではなく、一
方、50nmを超えると水分脱離特性が劣化することがあ
る。これは、7nm未満では酸化皮膜が均一に鋼材表面を
覆えないことがあり、そのためその箇所に欠陥が生じる
ため、この欠陥部から腐食を発生するからである。ま
た、50nmを超えると酸化皮膜のミクロ的表面積が増加す
るため、水分の吸着が生じやすくなる。酸化皮膜中のCr
含有率が90原子%未満では、耐食性、水分脱離特性がと
もに向上しないことがある。
【0035】以下実施例について説明するが、本発明は
以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨
に則って適宜設計変更することは本発明の技術的範囲に
含まれる。
以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨
に則って適宜設計変更することは本発明の技術的範囲に
含まれる。
【0036】
【実施例】表1に示す化学組成を有する外径6.4 mm、肉
厚1mm、長さ4mのフェライト系ステンレス鋼のシーム
レス鋼管の内面を、電解研磨によってRmax が0.5 μm
になるように平滑化し、高純度水によって洗浄後、99.9
99%Arガスを通じながら200 ℃に加熱して乾燥した。
厚1mm、長さ4mのフェライト系ステンレス鋼のシーム
レス鋼管の内面を、電解研磨によってRmax が0.5 μm
になるように平滑化し、高純度水によって洗浄後、99.9
99%Arガスを通じながら200 ℃に加熱して乾燥した。
【0037】これらの鋼管を表2に示す種々の条件で加
熱処理して酸化皮膜を生成後、鋼管中央部から切出した
サンプルを用いて二次イオン質量分析器により、鋼管内
表面から深さ方向の元素分析を行い、最高Cr含有率およ
び皮膜厚さを測定した。
熱処理して酸化皮膜を生成後、鋼管中央部から切出した
サンプルを用いて二次イオン質量分析器により、鋼管内
表面から深さ方向の元素分析を行い、最高Cr含有率およ
び皮膜厚さを測定した。
【0038】酸化皮膜の厚さと皮膜中のCr濃度は、管を
縦半割りし、その内面の深さ方向Cr濃度分布を一次イオ
ンとしてN2 + イオンビームを用いた二次イオン質量分析
法により測定し、厚さについてはその酸素濃化層の厚さ
を、またCr濃度については酸化皮膜中の酸素を除く、全
金属元素に対するCrの濃度の最高値を示してある。
縦半割りし、その内面の深さ方向Cr濃度分布を一次イオ
ンとしてN2 + イオンビームを用いた二次イオン質量分析
法により測定し、厚さについてはその酸素濃化層の厚さ
を、またCr濃度については酸化皮膜中の酸素を除く、全
金属元素に対するCrの濃度の最高値を示してある。
【0039】酸化皮膜において走査型電子顕微鏡で結晶
粒径を求め、結晶構造は、ラマン散乱分光法により求め
た。水分放出性は、酸化処理後の管を20℃、相対湿度50
%の雰囲気中に24時間放置した後、管内に乾燥した (水
分1ppb) Arガスを1リットル/min.で流し、管出側ガ
ス中の水分量を大気圧イオン化質量分析法で測定した。
粒径を求め、結晶構造は、ラマン散乱分光法により求め
た。水分放出性は、酸化処理後の管を20℃、相対湿度50
%の雰囲気中に24時間放置した後、管内に乾燥した (水
分1ppb) Arガスを1リットル/min.で流し、管出側ガ
ス中の水分量を大気圧イオン化質量分析法で測定した。
【0040】測定開始から出側での水分量が1ppb 以下
に低下するまでの所要時間 (表3に示すH2O 脱離時間)
を測定することにより評価した。なお、この所要時間が
短いほど水分放出特性に優れる。
に低下するまでの所要時間 (表3に示すH2O 脱離時間)
を測定することにより評価した。なお、この所要時間が
短いほど水分放出特性に優れる。
【0041】耐食性試験は、臭化水素ガスを5気圧の圧
力で封入し、温度80℃で100 時間保持した後、管内面の
発錆状況を走査型電子顕微鏡で観察する方法で実施し
た。非触媒性は、管内に100 ppm モノシラン(SiH4)を含
むArガスを通じて、管出側でガスクロマトグラフにより
モノシランの分解によって生ずるH2濃度を測定した。こ
の測定を種々の温度で行い、モノシランの分解する最低
の温度により評価した。
力で封入し、温度80℃で100 時間保持した後、管内面の
発錆状況を走査型電子顕微鏡で観察する方法で実施し
た。非触媒性は、管内に100 ppm モノシラン(SiH4)を含
むArガスを通じて、管出側でガスクロマトグラフにより
モノシランの分解によって生ずるH2濃度を測定した。こ
の測定を種々の温度で行い、モノシランの分解する最低
の温度により評価した。
【0042】評価結果を表3にまとめて示す。本発明の
鋼では、従来鋼に比べてCr濃度が高く、かつ厚い酸化皮
膜が生成し、耐食性および非触媒性も優れることが明ら
かとなった。
鋼では、従来鋼に比べてCr濃度が高く、かつ厚い酸化皮
膜が生成し、耐食性および非触媒性も優れることが明ら
かとなった。
【0043】表3からわかるように、本発明で定める範
囲内の化学組成および加熱処理条件のステンレス鋼管で
は、Ar通気後の水分脱離が速い。さらに、HBr ガスに対
する耐食性も良好である。酸化皮膜の厚さが7〜50nmの
範囲の例のように比較的薄くても、表面最外層部でもCr
含有率が高いので優れた特性を有していることがわか
る。
囲内の化学組成および加熱処理条件のステンレス鋼管で
は、Ar通気後の水分脱離が速い。さらに、HBr ガスに対
する耐食性も良好である。酸化皮膜の厚さが7〜50nmの
範囲の例のように比較的薄くても、表面最外層部でもCr
含有率が高いので優れた特性を有していることがわか
る。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【発明の効果】本発明鋼材は、耐食性と非触媒性に優れ
たCr酸化物皮膜を有する鋼材であり、したがって、半導
体製造装置などで使用される高純度ガス用ステンレス鋼
材として好適なものである。本発明で得られたステンレ
ス鋼材は、緻密な結晶粒直径200nm 以下の酸化膜で、素
材の研磨面の平滑性を維持しており、かつ従来品に比べ
優れた水分吸着量低減の効果を有している。
たCr酸化物皮膜を有する鋼材であり、したがって、半導
体製造装置などで使用される高純度ガス用ステンレス鋼
材として好適なものである。本発明で得られたステンレ
ス鋼材は、緻密な結晶粒直径200nm 以下の酸化膜で、素
材の研磨面の平滑性を維持しており、かつ従来品に比べ
優れた水分吸着量低減の効果を有している。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 302 C22C 38/50 C25F 3/24
Claims (1)
- 【請求項1】 重量%で、 Cr:20〜35%、Mo:0.1 〜5%、Ni:0〜3%、Cu:0
〜0.5 %、 W:0〜0.5 %、Ti:0〜1%、Nb:0〜1%、 残部Feおよび不可避的不純物から成り、上記不可避不純
物中において C:0.03%以下、Si:0.5 %以下、Mn:0.2 %以下、 Al:0.5 %以下、P:0.02%以下、S:0.003 %以下、 O:0.01%以下、N: 0.03%以下 である鋼組成を有し、電解研磨処理を施したフェライト
系ステンレス鋼材表面に、厚さ7nm以上50nm以下で、酸
素以外の構成元素において90原子%以上のCrを含有する
結晶粒直径200nm 以下の酸化物からなる酸化皮膜を備え
たことを特徴とする耐食性、非触媒性にすぐれた、高純
度ガス用高Crフェライト系ステンレス鋼材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10966495A JP2932966B2 (ja) | 1995-05-08 | 1995-05-08 | 高純度ガス用フェライト系ステンレス鋼材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10966495A JP2932966B2 (ja) | 1995-05-08 | 1995-05-08 | 高純度ガス用フェライト系ステンレス鋼材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08302448A JPH08302448A (ja) | 1996-11-19 |
JP2932966B2 true JP2932966B2 (ja) | 1999-08-09 |
Family
ID=14516041
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10966495A Expired - Fee Related JP2932966B2 (ja) | 1995-05-08 | 1995-05-08 | 高純度ガス用フェライト系ステンレス鋼材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2932966B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
TW426753B (en) | 1997-06-30 | 2001-03-21 | Sumitomo Metal Ind | Method of oxidizing inner surface of ferritic stainless steel pipe |
JP4491889B2 (ja) * | 2001-08-02 | 2010-06-30 | Jfeスチール株式会社 | 溶接管製造用インピーダ |
-
1995
- 1995-05-08 JP JP10966495A patent/JP2932966B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08302448A (ja) | 1996-11-19 |
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