JP2951940B2 - アルカリ蓄電池用電極とその製造方法、およびアルカリ蓄電池 - Google Patents
アルカリ蓄電池用電極とその製造方法、およびアルカリ蓄電池Info
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Description
電極およびその製造方法に関し、さらにこの電極を正極
として用いるアルカリ蓄電池に関するものである。
焼結基板は、通常、ニッケルなどの金属粉末を増粘剤と
なる樹脂成分と共にスラリーにして、芯材となる鉄など
の金属板上に塗布・乾燥した後、水素を含む還元雰囲気
中で熱処理して焼結することによって製造される。アル
カリ蓄電池用電極は、このようにして得られた多孔質焼
結基板を硝酸ニッケル溶液に浸漬し、化学的あるいは電
気化学的な手法により基板の空孔内に活物質となる水酸
化ニッケルを充填して製造される。
呼ばれ、多孔質焼結基板を高濃度の硝酸ニッケル溶液に
浸漬し、乾燥した後、アルカリ溶液に浸漬することで空
孔内の硝酸塩を水酸化ニッケルに変化させることにより
行われる。この場合、1回の操作では充分な水酸化ニッ
ケル量が得られないため、通常は数回の繰り返し操作が
行われる。
析含浸法と呼ばれ、高濃度の硝酸ニッケル溶液中で多孔
質焼結基板をカソード電解することにより行われる。電
解により、多孔質焼結基板の空孔内に存在する硝酸ニッ
ケルの硝酸根が下記反応式(1)に示すように還元され
てアンモニウムイオンが生成し、pHが高くなって下記
反応式(2)に示すように水酸化ニッケルが空孔内に沈
殿する。 NO3 -+9H++8e-→NH4OH+2H2O (1) Ni2++2OH-→Ni(OH)2 (2)
高いため、化学含浸および電析含浸工程において多孔質
焼結基板中のニッケル焼結体部分が腐食し、極板が脆弱
化してサイクル特性が低下するという課題がある。そこ
で、ニッケル焼結体の腐食を防ぐために以下の技術が開
示されている。
には、ニッケル焼結体の表面に保護被膜を形成する技術
が記載されている。同公報には、保護被膜を構成する物
質として、珪酸ニッケル、燐酸ニッケル、炭酸ニッケル
が示されている。また、特開昭59−78457号公報
には、酸素を含むガス中を通過させることにより、ニッ
ケル焼結体の表面に酸化ニッケル膜を形成する技術が記
載されている。また、特開昭62−61271号公報、
特開昭63−128555号公報および特開平4−75
255号公報には、酸化コバルト膜をニッケル焼結体の
保護被膜として形成する技術が記載されている。この酸
化コバルト膜は、コバルト塩の熱分解により形成され
る。
ッケル焼結体表面の保護被膜は、耐食性が高く、腐食防
止に効果的である。しかしながら、保護被膜そのものの
導電性が低いために、活物質の利用率が低下するという
課題があった。特に電析含浸法の場合には、導電性の低
い保護被膜上には水酸化ニッケルが析出せず、保護被膜
の破れたニッケルの露出部に偏って水酸化ニッケルが析
出することになる。多孔質焼結基板の搬送や集電時に保
護被膜には破損が発生するからである。また、電解効率
(投入電荷量に対する水酸化ニッケルの析出する効率)
が低下するという課題もあった。
に、活物質の利用率が高く、耐食性にも優れたアルカリ
蓄電池用電極、およびこの電極を利用したサイクル特性
が良好なアルカリ蓄電池を提供することを目的とする。
また活物質充填工程における多孔質焼結基板の腐食量が
少なく、電析含浸法を適用した場合の電界効率が良好で
ありかつ活物質を基板空孔内に偏りなく充填することが
できるアルカリ蓄電池用電極の製造方法を提供すること
を目的とする。
め、上記保護被膜として、コバルトとニッケルとを含む
化合物を含む被膜を形成することとした。この化合物
は、コバルトとニッケルとを含む酸化物およびコバルト
とニッケルとを含む水酸化物から選ばれる少なくとも一
方から構成される。ただし、上記水酸化物は、水酸化物
中の金属元素の酸化数の平均値(以下「平均酸化数」と
いう)は+IIよりも大きいという特徴を有する。
用電極は、多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活物質を
充填したアルカリ蓄電池用電極であって、前記活物質を
充填する前記多孔質基板の表面に、コバルトとニッケル
とを含む酸化物およびコバルトとニッケルとを含む水酸
化物(ただし、平均酸化数は+IIよりも大きい)から選
ばれる少なくとも一方からなり、1S/cm以上の導電
率を有する被膜層が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の第2のアルカリ蓄電池用電極は、多孔質
基板に水酸化ニッケルを含む活物質を充填したアルカリ
蓄電池用電極であって、前記活物質を充填する前記多孔
質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含み、コバル
トとニッケルとのモル比が6:4〜8:2である酸化物
からなる被膜層が形成されていることを特徴とする。
の利用率が高く、耐食性にも優れたアルカリ蓄電池用電
極を実現することができる。また、この電極を正極とし
て用いることにより、サイクル特性が良好なアルカリ蓄
電池を提供することができる。
1の製造方法は、多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活
物質を充填したアルカリ蓄電池用電極の製造方法であっ
て、前記多孔質基板に前記活物質を充填する前に、前記
多孔質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含む酸化
物およびコバルトとニッケルとを含む水酸化物(ただ
し、平均酸化数は+IIよりも大きい)から選ばれる少な
くとも一方からなり、1S/cm以上の導電率を有する
被膜層を形成する工程を含むことを特徴とする。また、
本発明のアルカリ蓄電池用電極の第2の製造方法は、多
孔質基板に水酸化ニッケルを含む活物質を充填したアル
カリ蓄電池用電極の製造方法であって、前記多孔質基板
に前記活物質を充填する前に、前記多孔質基板の表面
に、コバルトとニッケルとを含み、コバルトとニッケル
とのモル比が6:4〜8:2である酸化物からなる被膜
層を形成する工程を含むことを特徴とする。
充填工程における多孔質焼結基板の腐食量を少なくする
ことができる。また、電析含浸法における電解効率が良
好で、しかも活物質を多孔質焼結基板の空孔内に偏りな
く充填することが可能となる。
について説明する。本発明のアルカリ蓄電池用電極は、
活物質である水酸化ニッケルと多孔質焼結基板との界面
に、導電性および耐腐食性に優れた被膜層を備えてい
る。本発明の一形態によれば、上記被膜層はコバルトと
ニッケルとを含む酸化物を含む。また本発明の別の形態
によれば、上記被膜層は、コバルトとニッケルとを含
み、平均酸化数が2価よりも大きい水酸化物を含む。こ
の被膜層は、1S/cm以上、好ましくは10S/cm
以上という高い導電率を有する。このような高い導電率
により、活物質の利用度が改善される。
む酸化物を含むことが好ましい。コバルトとニッケルと
を含む酸化物は、コバルトとニッケルとを含む水酸化物
と比較して、導電性および耐腐食性が高い。従って、活
物質の利用率とサイクル特性をさらに良好にすることが
できる。
平均酸化数が2価よりも大きい水酸化物は、コバルトと
ニッケルとを含む酸化物と比較して、耐腐食性が若干劣
るものの、活物質充填工程における多孔質焼結基板の腐
食防止に対しては効果がある。また、この水酸化物に
は、比較的低温で生成することができるという製法上の
利点がある。
とをモル比が6:4〜8:2となる範囲で含むことが好
ましい。このようなモル比とすれば、特に導電性が高く
活物質の利用率が高い電極とすることができる。
では、多孔質基板に活物質として水酸化ニッケルを充填
する前に、上記被覆層が形成される。この被覆層は、多
孔質基板をコバルトとニッケルとを含む溶液に接触させ
た後に加熱することにより形成することができる。
は、被膜層中のコバルトとニッケルとのモル比を調整す
るために、コバルトとニッケルとをモル比が6:4〜
8:2となる範囲で含む溶液が好ましい。溶液に含まれ
るコバルト塩またはニッケル塩としては、硝酸塩、塩化
物塩、硫酸塩等の無機酸塩、または酢酸塩、ギ酸塩、シ
ュウ酸塩、クエン酸塩、2−エチルヘキサン塩などの有
機酸塩を使用することができるが、熱分解温度が低く、
安価である硝酸塩が好ましい。また、溶媒は、水に限ら
れることなく、用いる溶質の種類に応じてアルコール等
の有機溶媒を用いても構わない。
度が0.01M(mol/L)以上であることが好まし
い。
板を、コバルトとニッケルとを含む溶液に接触させた後
にアルカリ溶液に接触させることが好ましい。アルカリ
溶液に接触させてから加熱すれば、アルカリ溶液に含ま
れている溶存酸素により、コバルト、ニッケルなどの金
属元素を酸化することができるからである。アルカリ溶
液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸
化リチウム等を用いることができる。この場合、多孔質
基板を120℃以上の温度で加熱することが好ましい。
びニッケルを含む塩は、水酸化物に化学的に置換され
る。このように水酸化物に置換することにより、これら
の塩を熱分解する際の腐食性の高い無機酸または有機酸
の分解生成物の発生を抑制することができる。このた
め、加熱処理設備を容易に設計できる。
板を、コバルトとニッケルとを含む溶液に接触させた後
に、アルカリ溶液に接触させ、さらに水洗することとし
てもよい。アルカリ溶液に接触させることにより、コバ
ルトおよびニッケルを含む塩は、水酸化物に化学的に置
換される。このとき、無機酸塩または有機酸塩が副生す
るが、このような副生成物は、水洗工程で余剰のアルカ
リ成分とともに除去される。従って、上記のように多孔
質基板をアルカリ溶液に接触させ、さらに水洗すること
により、加熱時の腐食性の高い無機酸または有機酸の分
解生成物およびアルカリミストの発生を抑制することが
できる。このため、加熱処理設備を容易に設計できる。
るためには、多孔質基板を250℃以上の温度で加熱す
ることが好ましい。
は、従来から一般に用いられてきた多孔質焼結基板を特
に限定されることなく使用することができる。また、本
発明における活物質の充填方法は、化学含浸法、電析含
浸法または電析含浸法と化学含浸法の複合含浸法である
ことが好ましい。
実施例に基づいて説明する。まず、カーボニルニッケル
粉末を、メチルセルローズと水とからなる増粘剤により
スラリーにして、厚さ60μmのニッケルメッキ多孔鋼
板に塗布した。このニッケルメッキ多孔鋼板を100℃
で乾燥した後、水素を含む還元雰囲気中で約1000℃
で熱処理し、多孔質焼結基板を作製した。この多孔質焼
結基板のニッケル焼結体層の厚さは、片面につき約30
0μmであり、約80%の多孔度を有していた。
ニッケルとを含む酸化物または水酸化物からなる被膜層
を以下の3つの方法により形成した。
酸コバルトと硝酸ニッケルとを溶解した水溶液に3分間
浸漬した後、空気中で10分間所定の温度で熱処理し、
被膜層群(1)を形成した。
酸コバルトと硝酸ニッケルとを溶解した水溶液に3分間
浸漬した後、80℃で60分間真空乾燥した。次に、
6.5Mの水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した
後、空気中で10分間所定の温度で熱処理し、被膜層群
(2)を形成した。
酸コバルトと硝酸ニッケルとを溶解した水溶液に3分間
浸漬した後、80℃で60分間真空乾燥した。次に、
6.5Mの水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した
後、流水洗浄を30分間行なった。さらに、空気中で1
0分間所定の温度で熱処理し、被膜層群(3)を形成し
た。なお、上記各方法においては、硝酸コバルトと硝酸
ニッケルとのモル比が異なる水溶液を適用した。
おいて、多孔質焼結基板上に形成された被膜層に含まれ
るコバルトとニッケルとのモル比と、用いた硝酸塩水溶
液中のコバルトとニッケルとのモル比との関係を示して
いる。図1から明らかなように、形成される被膜層中の
コバルトとニッケルとのモル比は、硝酸塩水溶液中のコ
バルトとニッケルとのモル比と、ほぼ同等の値となっ
た。
モル比の測定は、以下の手順で行なった。被膜形成後の
多孔質焼結基板を、80℃で50重量%の酢酸水溶液に
5分間浸漬し、酢酸水溶液中に溶解したコバルト量およ
びニッケル量を、高周波プラズマ発光分光分析装置で測
定し、コバルトとニッケルとのモル比を算出した。
り被膜層をセラミック基板上に形成し、各被膜層の組成
分析と導電率測定を行った。被膜層の組成分析はX線回
折装置により行い、導電率はシート抵抗測定器により測
定した。
より、比較的低温で熱処理するとコバルトとニッケルと
を含む複合水酸化物が形成されることが確認できた。ま
た、この複合水酸化物は、熱処理温度が高くなるにつれ
て水酸化物に含まれている金属の酸化数が高くなる傾向
が認められた。熱処理温度がさらに高くなると、コバル
トとニッケルとを含む酸化物の生成が確認された。特に
250℃以上の熱処理で形成された被膜層からは、酸化
物に起因する回折ピークのみが観察された。
の被膜層形成方法と比較して、比較的低温の熱処理によ
り、酸化数の高い水酸化物および酸化物が生成されるこ
とが確認された。これは、アルカリ溶液中に存在する溶
存酸素の酸化効果によるものである。しかし、第1およ
び第3の被膜層形成方法でも、被膜形成の熱処理時の雰
囲気酸素濃度を高くすれば、第2の被膜層形成方法と同
様に、低温度での酸化が可能となる。
とニッケルとのモル比の影響を示している。被膜層形成
時の熱処理温度は、140℃または250℃とした。図
2に示したように、第1〜第3のいずれの被膜層形成方
法においても、コバルトとニッケルとのモル比が6:4
〜8:2の範囲で高い導電率を得ることができた。
(2)の導電率が相対的に高くなっている。X線による
解析の結果では、熱処理温度140℃の被膜層群(2)に
は、酸化数の高い水酸化物が比較的多く存在していた。
また、熱処理温度250℃では、被膜層群(1)〜
(3)のX線回折パターンが類似していた。従って、被
膜層の導電性と結晶構造の間には強い相関があると考え
られる。
成時の熱処理温度の影響を示している。被膜層の形成に
用いた硝酸塩水溶液中のコバルトとニッケルとのモル比
は7:3とした。熱処理温度の上昇に伴い導電性が向上
する傾向が認められ、250℃以上の熱処理により、い
ずれの被膜層群についても導電率がほぼ一定の最高値を
示した。しかし、被膜層群(2)では比較的低温領域か
ら導電性が向上する傾向が認められ、120℃以上の熱
処理により導電率が10S/cm以上となった。
高くすることによって、酸化数の高いコバルトとニッケ
ルとの複合水酸化物層が形成されることが確認されてい
る。従って、酸化数の高いコバルトとニッケルとの複合
水酸化物層が、導電性の向上に寄与しているものと考え
られる。
れた被膜層からは、Co2NiO4に起因する回折ピーク
のみが得られた。従って、図2に示した結果も併せて考
慮すれば、10S/cmよりも高い導電性は、Co2N
iO4の生成に起因しているものと考えられる。なお、
被膜層群(2)では、比較的低温領域の熱処理で、酸化
数の高いコバルトとニッケルとの複合水酸化物およびC
o2NiO4の生成が確認できた。
形成方法により被膜層を形成した多孔質焼結基板の耐腐
食性試験の結果である。
℃に保持したpH1.0、4.5Mの硝酸ニッケル水溶
液に60分間浸漬した後、水洗、乾燥を行ない、試験前
後での多孔質焼結基板の重量変化から腐食溶解率を算出
することにより実施した。
ぼすコバルトとニッケルとのモル比の影響を示してい
る。図4に示したように、被膜層形成時の熱処理温度は
140℃または250℃とした。コバルトとニッケルと
のモル比が10:0〜2:8の範囲では、耐腐食性に及
ぼす上記モル比の影響は認められなかった。
板の腐食溶解率に及ぼす被膜層形成時の熱処理温度の影
響を示している。被膜層の形成に用いた硝酸塩水溶液中
のコバルトとニッケルとのモル比は7:3とした。図5
に示したように、熱処理温度の上昇に伴い耐腐食性が向
上する傾向が認められ、250℃以上の熱処理により、
腐食溶解率は1%以下になった。また、第2の被膜層形
成方法では比較的低温の領域から耐腐食性が改善され
た。
された平均酸化数の高い水酸化物層が、耐腐食性の向上
に寄与しているものと考えられる。また、この場合も、
250℃以上の熱処理により形成されたCo2NiO4に
より、上記測定方法による腐食溶解率が1%以下という
高い耐腐食性が実現していると考えられる。なお、この
場合も、第2の被膜層形成方法によれば、120℃以上
の熱処理により腐食溶解率が2%以下となった。
ぼす被膜層形成時の硝酸塩水溶液中のコバルトとニッケ
ルとの合計濃度の影響を示している。多孔質焼結基板へ
の被膜形成条件は、硝酸水溶液中のコバルトとニッケル
とのモル比は7:3の一定とし、熱処理温度は250℃
とした。図6に示すように、硝酸塩水溶液中のコバルト
とニッケルとの合計濃度が0.01M以上で、良好な耐
腐食性が得られた。
コバルトとニッケルとを含む酸化物、およびコバルトと
ニッケルとを含み平均酸化数が2価よりも大きい水酸化
物の少なくとも一方を含む被膜層を形成することによ
り、硝酸塩に対する耐腐食性が向上し、さらに導電性も
良好に確保されたアルカリ蓄電池用電極を製造すること
ができた。導電性が良好であるため、活物質を充填する
ための電析工程における電解効率が良好で、かつ焼結基
板の空孔内に、活物質が均一に充填されることが期待で
きる。従って、この電極を正極として利用すれば、耐食
性とサイクル特性とが良好なアルカリ蓄電池を製造する
ことができる。
電池用電極を用いて、アルカリ蓄電池を作製し、電池容
量の測定とサイクル特性の検討を行なった。
る。まず、第2の被膜層形成方法により、多孔質焼結基
板の表面に被膜層を形成した。硝酸塩水溶液のコバルト
とニッケルとのモル比を変えることにより、それぞれの
多孔質焼結基板に組成の異なる被膜層を形成した。被膜
層形成の熱処理温度は140℃または250℃とした。
また、比較のために、未処理の(被膜層を形成しない)
多孔質焼結基板を作製した。
処理の多孔質焼結基板への活物質の充填は化学含浸法に
より行なった。多孔質焼結基板を、80℃に保持され
た、4.5M硝酸ニッケルと0.1M硝酸コバルトとの
混合水溶液に3分間浸漬し、80℃で90分間乾燥させ
た後、80℃、6.5M水酸化ナトリウム水溶液に浸漬
する充填操作を7回繰り返して、アルカリ蓄電池用電極
を作製した。
きい水素吸蔵合金系負極(MmNi 3.55Mn0.4Al0.3
Co0.75)とセパレーター(ポリプロピレン不織布)と
アルカリ電解液(水酸化カリウム)と上記アルカリ蓄電
池用電極とを同一条件で組み合わせて、公称1.3Ah
のアルカリ蓄電池を作製した。
充電/12A放電を行い、容量測定を実施した。また、
12A充電/12A放電サイクルを繰り返すことによ
り、サイクル特性を検討した。このとき、12A充電は
6分間行い、12A放電は電圧が0.8Vとなったとき
に終了することとした。
イクル目および500サイクル目の容量を示している。
なお、図7に示したアルカリ蓄電池(A)〜(F)は、
熱処理温度を110℃とした電極を使用したものであ
り、図8は、アルカリ蓄電池(G)〜(M)は熱処理温
度を250℃とした電極を使用したものである。一方、
被膜層を形成していない正極を用いたアルカリ蓄電池を
アルカリ蓄電池(N)として示す。
ニッケルとのモル比が6:4〜8:2の範囲の被膜層を
有する多孔質焼結基板において、大きな電池容量が得ら
れた。また、250℃で熱処理した電極を使用したアル
カリ蓄電池において、より大きな電池容量が得られた。
このように、コバルトとニッケルとのモル比を被膜層の
導電性が向上するように調整すれば、大きな電池容量が
得られることが確認できた。
ルトとニッケルとのモル比の影響は、ほとんど認められ
なかった。一方、熱処理温度が250℃の電極を使用し
たアルカリ蓄電池において、熱処理温度を110℃とし
た場合よりも、容量の低下は小さくなった。先に述べた
結果との比較から、被膜層の耐食性を向上させれば、ア
ルカリ蓄電池のサイクル特性が向上すると考えられる。
なお、比較のために作製した被膜層を有しないアルカリ
蓄電池(N)は500サイクル後に容量が約65%にま
で大きく低下した。
することにより、活物質の利用率が高く、かつサイクル
特性の良好なアルカリ蓄電池が実現できた。
まず、第2の被膜層形成方法により、硝酸塩水溶液のコ
バルトとニッケルとのモル比を変えて、組成の異なる被
膜層を多孔質焼結基板に形成した。被膜層形成の熱処理
温度は250℃とした。
℃、4.5Mの硝酸ニッケル水溶液に浸漬しカソード電
解することにより、水酸化ニッケルの電析充填を行なっ
た。
ルの詰まり方を確認するために、この多孔質焼結基板の
断面を電子顕微鏡で観察した。その結果、コバルトとニ
ッケルとのモル比が6:4〜8:2の範囲では、水酸化
ニッケルは、多孔質焼結基板の芯材となるニッケルメッ
キ多孔鋼板に近い中心部から表面に至るまで均一に充填
されていた。一方、この範囲外のモル比では、表面が酸
化ニッケル層が形成された多孔質焼結基板と同様、水酸
化ニッケルは表面付近に多く、内部には少ない不均一な
充填になっていた。
バルトとニッケルとのモル比が6:4〜8:2の範囲で
高い値となり、多孔質焼結基板の導電性の影響が現れ
た。さらに、電析工程における腐食は、いずれの多孔質
焼結基板においても発生しておらず、高い耐腐食性を示
した。
析を行なった。未処理の多孔質焼結基板は導電性が良好
なため電解効率が高く、また、水酸化ニッケルは均一に
充填されるが、耐腐食性が低いため、多孔質焼結基板中
のニッケル焼結体部分が脆弱化した。
金系負極として、MmNi3.55Mn 0.4Al0.3Co0.75
を用いたがこれに限ることなく、Mg2Ni、TiMn
1.5などを用いることもできる。また、セパレーターと
してはポリプロピレン不織布に代えてポリアミド不織布
などを用いてもよい。アルカリ電解液としては、水酸化
カリウムに代えて水酸化ナトリウムなどを用いることも
できる。また、アルカリ電解液には、要求特性に応じて
水酸化リチウムなどを添加してもよい。
ニッケル−水素電池であるが、本発明はこれに限ること
なく、ニッケル−カドミウム電池のような他のアルカリ
蓄電池に適用してもよい。
蓄電池用電極によれば、前記活物質を充填する前記多孔
質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含む酸化
物、およびコバルトとニッケルとを含む平均酸化数が+
IIよりも大きい水酸化物から選ばれる少なくとも一方か
らなり、1S/cm以上の導電率を有する被膜層、ある
いはコバルトとニッケルとを含み、コバルトとニッケ
ルとのモル比が6:4〜8:2である酸化物からなる被
膜層を形成することにより、活物質の利用率と耐腐食性
とをともに高くすることができる。この電極を正極とし
て利用した本発明のアルカリ蓄電池は、サイクル特性の
みならず電池容量も向上したものとなる。
造方法によれば、多孔質基板に活物質を充填する前に、
多孔質基板の表面に、上記被膜層を形成する工程を実施
することにより、活物質充填工程における多孔質焼結基
板の腐食量が少なく、かつ電析含浸法における電解効率
が良好でしかも活物質を多孔質基板の空孔内に偏りなく
充填することが可能となる。
のコバルトとニッケルとのモル比と多孔質焼結基板上に
形成される被膜層中のコバルトとニッケルとのモル比と
の関係を示す図である。
に及ぼすコバルトとニッケルとのモル比の影響を示す図
である。
に及ぼす被膜形成時の熱処理温度の影響を示す図であ
る。
の腐食溶解率に及ぼすコバルトとニッケルとのモル比の
影響を示す図である。
の腐食溶解率に及ぼす被膜形成時の熱処理温度の影響を
示す図である。
の腐食溶解率に及ぼす硝酸塩水溶液濃度の影響を示す図
である。
と従来のアルカリ蓄電池の容量変化を示す図である。
と従来のアルカリ蓄電池の容量変化を示す図である。
Claims (19)
- 【請求項1】 多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活物
質を充填したアルカリ蓄電池用電極であって、前記活物
質を充填する前記多孔質基板の表面に、コバルトとニッ
ケルとを含む酸化物およびコバルトとニッケルとを含む
水酸化物(ただし、水酸化物中の金属元素の酸化数の平
均値は+IIよりも大きい)から選ばれる少なくとも一方
からなり、1S/cm以上の導電率を有する被膜層が形
成されていることを特徴とするアルカリ蓄電池用電極。 - 【請求項2】 前記被膜層がコバルトとニッケルとをモ
ル比が6:4〜8:2となる範囲で含む請求項1に記載
のアルカリ蓄電池用電極。 - 【請求項3】 多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活物
質を充填したアルカリ蓄電池用電極であって、前記活物
質を充填する前記多孔質基板の表面に、コバルトとニッ
ケルとを含み、コバルトとニッケルとのモル比が6:4
〜8:2である酸化物からなる被膜層が形成されている
ことを特徴とするアルカリ蓄電池用電極。 - 【請求項4】 前記被膜層が10S/cm以上の導電率
を有する請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ蓄電
池用電極。 - 【請求項5】 前記被膜層がCo2NiO4を含む請求項
1〜4のいずれかに記載のアルカリ蓄電池用電極。 - 【請求項6】 多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活物
質を充填したアルカリ蓄電池用電極の製造方法であっ
て、前記多孔質基板に前記活物質を充填する前に、前記
多孔質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含む酸化
物およびコバルトとニッケルとを含む水酸化物(ただ
し、水酸化物中の金属元素の酸化数の平均値は+IIより
も大きい)から選ばれる少なくとも一方からなり、1S
/cm以上の導電率を有する被膜層を形成する工程を含
むことを特徴とするアルカリ蓄電池用電極の製造方法。 - 【請求項7】 多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活物
質を充填したアルカリ蓄電池用電極の製造方法であっ
て、前記多孔質基板に前記活物質を充填する前に、前記
多孔質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含み、コ
バルトとニッケルとのモル比が6:4〜8:2である酸
化物からなる被膜層を形成する工程を含むことを特徴と
するアルカリ蓄電池用電極の製造方法。 - 【請求項8】 前記被膜層を形成する工程が、前記多孔
質基板をコバルトとニッケルとを含む溶液に接触させた
後に加熱する工程を含む請求項6または7に記載のアル
カリ蓄電池用電極の製造方法。 - 【請求項9】 前記コバルトとニッケルとを含む溶液
が、コバルトとニッケルとをモル比が6:4〜8:2と
なる範囲で含む請求項8に記載のアルカリ蓄電池用電極
の製造方法。 - 【請求項10】 前記コバルトとニッケルとを含む溶液
が、コバルトの硝酸塩およびニッケルの硝酸塩を含む請
求項8に記載のアルカリ蓄電池用電極の製造方法。 - 【請求項11】 前記コバルトとニッケルとを含む溶液
が、コバルトとニッケルとの合計量の濃度が0.01M
以上である請求項8に記載のアルカリ蓄電池用電極の製
造方法。 - 【請求項12】 前記被膜層を形成する工程が、前記多
孔質基板をコバルトとニッケルとを含む溶液に接触させ
る工程と、前記多孔質基板をアルカリ溶液に接触させる
工程と、前記多孔質基板を加熱する工程とをこの順に含
む請求項6または7に記載のアルカリ蓄電池用電極の製
造方法。 - 【請求項13】 前記多孔質基板を120℃以上の温度
で加熱する請求項12に記載のアルカリ蓄電池用電極の
製造方法。 - 【請求項14】 前記被膜層を形成する工程が、前記多
孔質基板をコバルトとニッケルとを含む溶液に接触させ
る工程と、前記多孔質基板をアルカリ溶液に接触させる
工程と、前記多孔質基板を水洗する工程と、前記多孔質
基板を加熱する工程とをこの順に含む請求項6または7
に記載のアルカリ蓄電池用電極の製造方法。 - 【請求項15】 前記多孔質基板を250℃以上の温度
で加熱する請求項8に記載のアルカリ蓄電池用電極の製
造方法。 - 【請求項16】 正極、負極、ならびに前記正極と前記
負極との間に介在するセパレータおよびアルカリ電解液
を含むアルカリ蓄電池であって、 前記正極として、多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活
物質が充填されており、前記活物質を充填する前記多孔
質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含む酸化物お
よびコバルトとニッケルとを含む水酸化物(ただし、水
酸化物中の金属元素の酸化数の平均値は+IIよりも大き
い)から選ばれる少なくとも一方からなり、1S/cm
以上の導電率を有する被膜層が形成されている電極を備
えていることを特徴とするアルカリ蓄電池。 - 【請求項17】 前記被膜層がコバルトとニッケルとを
モル比が6:4〜8:2となる範囲で含む請求項16に
記載のアルカリ蓄電池。 - 【請求項18】 正極、負極、ならびに前記正極と前記
負極との間に介在するセパレータおよびアルカリ電解液
を含むアルカリ蓄電池であって、 前記正極として、多孔質基板に水酸化ニッケルを含む活
物質が充填されており、前記活物質を充填する前記多孔
質基板の表面に、コバルトとニッケルとを含み、コバル
トとニッケルとのモル比が6:4〜8:2である酸化物
からなる被膜層が形成されている電極を備えていること
を特徴とするアルカリ蓄電池。 - 【請求項19】 前記被膜層がCo2NiO4を含む請求
項16〜18のいずれかに記載のアルカリ蓄電池。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP10125591A JP2951940B2 (ja) | 1997-05-15 | 1998-05-08 | アルカリ蓄電池用電極とその製造方法、およびアルカリ蓄電池 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9-125870 | 1997-05-15 | ||
JP12587097 | 1997-05-15 | ||
JP10125591A JP2951940B2 (ja) | 1997-05-15 | 1998-05-08 | アルカリ蓄電池用電極とその製造方法、およびアルカリ蓄電池 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1131505A JPH1131505A (ja) | 1999-02-02 |
JP2951940B2 true JP2951940B2 (ja) | 1999-09-20 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10125591A Expired - Lifetime JP2951940B2 (ja) | 1997-05-15 | 1998-05-08 | アルカリ蓄電池用電極とその製造方法、およびアルカリ蓄電池 |
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JP3429741B2 (ja) | 2000-03-24 | 2003-07-22 | 松下電器産業株式会社 | アルカリ蓄電池用ペースト型正極およびニッケル水素蓄電池 |
JP5029858B2 (ja) * | 2001-07-31 | 2012-09-19 | トヨタ自動車株式会社 | アルカリ二次電池正極材の分離回収方法、アルカリ二次電池正極材の特性分析方法 |
JP2009032597A (ja) * | 2007-07-27 | 2009-02-12 | Sumitomo Electric Ind Ltd | リチウム電池 |
-
1998
- 1998-05-08 JP JP10125591A patent/JP2951940B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH1131505A (ja) | 1999-02-02 |
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