JP2829318B2 - フレームレス，コアレス多孔質骨内インプラント - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は金属もしくは合金の粉粒を焼結してなる多孔
質骨内インプラント、少し詳しくは複数の焼結層を焼結
によって積層一体としたフレームレス，コアレス多孔質
骨内インプラントに関する。

（従来の技術） チタニウム，その合金等生体為害性のないメタル粉粒
もしくは合金粉粒（以下、前者のみを採る）を粉粒冶金
技術によって圧粉成形したものを焼結一体とした骨内イ
ンプラントは各粉粒間に形成された種々の孔径の粒子間
々隙（以下、孔隙とす）内に骨組織、類骨組織及び線維
性組織の夫々が侵入・透過して生体組織による三次元的
なアンカー作用が達成され骨内に於て外力に対する安定
性が良いと云うことでこれ迄各種の応用態様が採られて
きた。

（発明が解決しようとする課題） しかしながら上記先行技術の最大の難点としては機械
的強度に不足すると云う点であり、特に焼結体が板状に
形成されている時は曲げ強度、剪断強度、衝撃強度、圧
縮強度等の機械的強度に不足するため板状焼結体は補強
フレームによって枠支される必要があり、また円柱状焼
結体は同じ補強の意からそのほヾ中心部位に補強コアを
芯通した複合構造が実用化されている（本出願人の既に
提供した特願昭61-260955,同62-277846等参照）。更に
上記のような複合構造を得るについて多孔質体とフレー
ムもしくはコアとを強固に接合し且つその製法の有利な
構造として多孔質体とフレームもしくはコアとを焼結に
よらず溶接もしくは圧接によって複合一体とする技術も
本出願人は特願昭63-20788をもって提供した。

このように金属粉粒を焼結した従来の多孔質骨内イン
プラントに於ては補強のためのフレームもしくはコアを
必然とするため、インプラント部材の厚み、直径等の低
減についても或る程度の限度を余儀なくされて、これが
その適用範囲にも制約を生み出した。

近時、インプラントの臨床報告は世界的規模に於てな
され最も有効なインプラントと生体骨組織とのかヽわり
合いが続々提案されている。最も今日的な報告に従う
と、骨内インプラントについてはインプラントが薄い
程、術后により多くの骨が残余することになり、この際
インプラントの厚みとほヽ同等もしくはそれ以上の厚い
骨を残すことがインプラントの成功率をより高いものに
する、と云うことが判っている。

かくして骨内インプラントは、それ自体が可及的薄く
て強度のあるもので、該インプラントへの生体骨組織の
侵入の旺盛なものが強く望まれる所となった。

本発明は凡そこのような要望に応える骨内インプラン
トをこヽに提供せんとするものである。

（課題を解決する為の手段） 上記目的達成のための本発明の概略的解決手段は金属
粉粒、合金粉粒の単一の多孔質焼結体を得るのではなく
所望の形状（多くは板体、円筒体、円柱体）の焼結体の
肉厚方向に関し、粉粒径の分布を変えた、即ち孔隙（目
開き）に差のある複数個の多孔質焼結金属層に層分け
し、夫々の層を一回の焼結手法によって積層一体とした
もので、生体骨組織（骨組織、類骨組織及び線維性組
織）の侵入・透過に適したような孔隙調整をした焼結金
属層を、それより強度が高くなるような孔隙調整をした
別の焼結金属層をもって層積して補強支持しようとする
ものである。以下に実施例対応図をもって、本発明を詳
述するに、 第１図は本発明骨内インプラントを歯科用骨内インプ
ラントに応用した板状タイプの実施例を示す正面図、第
２図は第１図のII-II線拡大断面図、第３図は同歯科用
骨内インプラントの円筒状タイプの実施例正面図、第４
図は第３図IV-IV線断面図を夫々示す。

図より本発明は、比較的大きな孔隙範囲の多孔質焼結
金属層（２）と、その両側に焼結によって夫々積層一体
とされた比較的小さな孔隙範囲の多孔質焼結金属層
（１），（１）とより成り、上記三層（１），（２），
（１）の夫々の孔隙内には線維性組織、類骨組織及び骨
組織のうち２種以上の侵入・増殖を可能としたフレーム
レス，コアレス多孔質骨内インプラント並びに比較的小
さな孔隙範囲の多孔質焼結金属層（１）と、その両側に
焼結によって夫々積層一体とされた比較的大きな孔隙範
囲の多孔質焼結金属層（２），（２）とより成り、上記
三層（２），（１），（２）の夫々の孔隙内には線維性
組織、類骨組織及び骨組織のうち２種以上の侵入・増殖
を可能としたフレームレス，コアレス多孔質骨内インプ
ラントに夫々関する。

上記構造に於て特定発明のものは弾性係数の小さい柔
軟な線維性組織をインプラントの両面より主体的に侵入
・増殖せしめてインパクトストレスに柔軟に対応せしめ
ようするタイプのもので例えば咬合外力の如きインパク
トストレスに対応出来る構造である。請求項２のものは
之とは逆に線維性組織よりは弾性係数が順次大きい類骨
組織及び骨組織の侵入・増殖を前提としたもので、スタ
ティック（静的）ストレスに対応出来る構造である。多
孔質焼結金属層（１）の平均孔隙範囲は50μｍ以下、層
（２）の孔隙範囲は50〜200μｍ（必要によっては、更
に平均200μｍより大なる範囲を含む）である。もとよ
り生体骨組織の侵入に関する孔隙範囲であるため孔隙の
臨界範囲が夫々の組織の限界的境界をなすものではなく
異なる組織が混然として侵入することがあり得るので、
上記範囲は一応の目安として考えるべきである。層
（２），（２）の孔隙範囲は実質的に同一範囲の場合も
あれば多少ずらせて段階的に設計することも可能であ
る。同じことが層（１），（１）を用いる場合について
も云える。骨組織の侵入・増殖を許容する孔隙は平均10
00μｍ程度迄であるので、粉粒によってこの上の範囲の
孔隙を形成し難き場合は本出願人が別個に提供した特願
昭60-264994の考えに従ってエレクトロビーム法、レー
ザビーム法、放電加工法等により、上記のような孔をイ
ンプラントの厚みを貫いて穿設することも可能である。

粉粒焼結体の強度からみた場合は粗い粉粒を焼結した
ものは孔隙が粗目で強度が比較的小で、細かな粉粒で得
たものは孔隙は小さくて強度は比較的大となる。焼結金
属層（１），（２）の孔隙率（多孔度…ポロシティ）は
孔隙ともども組織の侵入・透過と強度に影響し合うもの
であり、より多くの組織を侵入せしめるには孔隙率が大
である方がよく一方、強度上はその逆である。この点も
併せて考慮決定すべきものである。使用する金属もしく
は合金としてはTi,Zr及びTa等の単体金属やTi系合金,Zr
系合金,Ta系合金,Fe-Ni-Cr系合金,Co-Cr-Mo系合金等の
生体為害性のない材料が選出される。これらの粉粒材料
を用いて異なる孔隙の焼結金属層を得るについては、比
較的細かな粉粒を用いた圧粉成形層及び比較的粗い粉粒
を用いた圧粉成形層を重積しこれらを非酸化性雰囲気下
で焼結一体とすることによって達成される。必要に応じ
て焼結一体の后に寸法精度を出すための機械加工やこの
加工によって目つぶれした焼結金属層の表面を化学エッ
チングによって再び孔隙の目開きをすることもなし得
る。

なお、上記に於て、層（１），（２）の孔隙調整のた
めの各因子と目開きとの相対関係を以下に示す。

（孔隙小） 因子 （孔隙大） 大 ← 成形圧力 → 小 小 ← 粉粒粒径 → 大 高 ← 焼結温度 → 低 長 ← 焼結時間 → 短 （作用） 特定発明のものは両側に配された比較的細かな焼結金
属層（１），（１）と、真中の比較的粗い焼結金属層
（２）とによって全体の機械的強度が改善され比較的薄
い全体厚みでありながらフレームレス，コアレスが保証
され、金属層（１），（１）に対して軟らかい線維性組
織が主体的に侵入して内部で増殖する結果、強いインパ
クトストレスに対しても柔軟に対応することが可能とな
る。

請求項２のものは両側の比較的粗い焼結金属層
（２），（２）の孔隙より類骨組織及び骨組織の主体的
な侵入・増殖がなされインプラントの支持は前例のよう
に柔軟ではないもののスタティックストレスに十分に対
応出来る。この例のものはまた両側の焼結金属層
（２），（２）の持つ高い機械的強度によって全体とし
ては、更に強度アップが見込まれる関係上、全体厚みを
更に薄化出来、また、層（２）の孔隙の設定によっては
線維性組織も内部の層（１）内へ侵入・増殖して柔軟な
支持力を部分的に発揮することも可能となる。

（実施例） （実施例１） 第１〜第２図のものは本発明を歯槽骨（ａ）内に植立
する板状タイプの骨内インプラントを示したもので、義
歯（不図示）を冠着すべき金属製ポスト（４）の下部に
インプラント主体（Ｉ）が焼結，溶接もしくは圧接によ
って接合一体とされている。インプラント主体（Ｉ）は
第２図に示すように三層よりなり、このうち表裏両面に
は比較的細かな孔隙範囲（30〜50μｍ）を有し孔隙率は
約30％の焼結金属層（１），（１）を、真中には比較的
粗い孔隙範囲（50〜200μｍ）の焼結金属層（２）を夫
々配して三層（１），（２），（１）を焼結によって積
層一体としたものである。この例では更にエレクトロビ
ーム法によってアットランダムに管孔（３）…を厚みを
貫いて透設してあり、骨組織の侵入・透過を許容してい
る。金属粉粒は細かな純チタニウム粉粒（50〜100μ
ｍ）を層（１）用に、同純チタニウム粉粒（100〜200μ
ｍ）を層（２）用に夫々用いて、三層（１），（２），
（１）を圧粉成形法によって夫々形成した后真空度１×
10^-4Torr、温度1000℃、処理時間1hrの焼結条件で積層
一体としたものである。これによって層（１），（１）
の孔隙30〜50μｍ、層（２）の孔隙50〜2000μｍが夫々
得られた。このインプラント主体（Ｉ）とチタン合金製
のポスト（４）とを開先（不図示）を介して互いに突き
合せてチタンの溶接棒を用いてアルゴンアーク溶接して
製品とした。

（実施例２） 第３〜第４図のものは本発明を歯槽骨（ａ）内へねじ
込む歯科用円筒状タイプ骨内インプラントに応用した例
であり、（実施例１）と同じ三層構造で円筒状に形成し
たインプラント主体（Ｉ）の上部にポスト（４）を、溶
接によって接合一体とし下部を開放状にしたもので、円
筒状インプラント主体（Ｉ）の内部にはコアが不在で中
空腔所を保有したまヽである。層（１），（２）の材
料、製法、接合法は（実施例１）と全く同じである。な
お、ポスト（４）はインプラント主体（Ｉ）を補強する
意味ではなく、多孔質体が歯槽骨（ａ）より上方に突出
している場合は細歯が突出部位の多孔隙内に侵入して骨
粘膜、軟骨組織に炎症その他の二次感染を与えるからで
ある。

本発明は、叙述の板状タイプ、円筒タイプのインプラ
ントの代りに通常のサブマーシイブル骨内インプラント
に応用することも出来る。

（発明の効果） 特定発明のものは表裏両面の比較的細かな孔隙範囲の
焼結金属層内に主として線維性組織が侵入して内部で増
殖する結果、ストレスに対して柔軟な対応が可能となる
と共にインプラント主体はその中央の比較的粗い孔隙範
囲もった焼結金属層によって厚肉方向に補強される結
果、コアレス、フレームレスによっても必要な強度を維
持出来しかも両外側の層の孔隙率を多く取って多量の線
維性組織へ侵入を許容することが出来る。従って、この
タイプのものは歯科分野、整形外科分野など、術后のイ
ンプラントに対してインパクトストレスが付与されるも
のに用いて好適である。請求項２のものは主として類骨
組織、骨組織の侵入・増殖を意図したものであるのでス
トレスに対するソフトな支持と云う観点からは特定発明
のものとは異なるが逆にハード組織によるストレス抗性
が発現するのでスタティックストレスを前提としたイン
プラントとして適している上に両外側の焼結金属層によ
る強度増大によって厚みの薄化は更に助長される。

加えて、両発明ともども孔隙の調整としては粒径の他
に成形圧力、焼結温度、焼結時間が関与するので、その
調整が容易である上に、製法として圧粉成形技術と焼結
技術を採用しているため、製法も容易で量産的である…
等、本発明は優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明骨内インプラントを歯科用骨内インプラ
ントに応用した板状タイプの実施例を示す正面図、第２
図は第１図のII-II線拡大断面図、第３図は同歯科用骨
内インプラントの円筒状タイプの実施例正面図、第４図
は第３図IV-IV線断面図を夫々示す。 （符号の説明） １……比較的細かい孔隙の焼結金属層、２……比較的粗
い孔隙の焼結金属層、３……管孔、４……ポスト、Ｉ…
…インプラント主体。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 芦浦 保之 神奈川県小田原市酒勾５―１―34 (72)発明者 吉村 元伸 神奈川県高座郡寒川町一之宮166 (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A61C 8/00 A61L 27/00

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】比較的大きな孔隙範囲の多孔質焼結金属層
   （２）と、その両側に焼結によって夫々積層一体とされ
   た比較的小さな孔隙範囲の多孔質焼結金属層（１），
   （１）とより成り、上記三層（１），（２），（１）の
   夫々の孔隙内には線維性組織、類骨組織及び骨組織のう
   ち２種以上の侵入・増殖を可能としたフレームレス，コ
   アレス多孔質骨内インプラント。
2. 【請求項２】比較的小さな孔隙範囲の多孔質焼結金属層
   （１）と、その両側に焼結によって夫々積層一体とされ
   た比較的大きな孔隙範囲の多孔質焼結金属層（２），
   （２）とより成り、上記三層（２），（１），（２）の
   夫々の孔隙内には線維性組織、類骨組織及び骨組織のう
   ち２種以上の侵入・増殖を可能としたフレームレス，コ
   アレス多孔質骨内インプラント。
3. 【請求項３】比較的細小さな孔隙範囲の多孔質焼結金属
   層（１）の孔隙範囲が平均50μｍ以下で孔隙率が平均30
   ％である請求項１もしくは２記載の骨内インプラント。